(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109838
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】ポリエステル組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 63/00 20060101AFI20220721BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20220721BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20220721BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20220721BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C08G63/00
C08G63/12
C08L27/06
C08L67/02
C08L101/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021026013
(22)【出願日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】110101690
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン、マイヨ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002AA00W
4J002AA00X
4J002BD04W
4J002BD05W
4J002BD08W
4J002BD09W
4J002CF03X
4J002FD02X
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD02
4J029AD03
4J029AD10
4J029AE15
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA08
4J029BA09
4J029BA10
4J029CA02
4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029KB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な保存性(すなわち、少ない沈殿物)と熱耐性を有するポリエステル組成物を提供する。
【解決手段】ポリエステル組成物は、ポリエステル及び第1成分を含み、ポリエステル組成物をガスクロマトグラフィー(GC)で特徴づける場合、第1成分が36.38分~36.98分の範囲の保持時間で流出され、GCスペクトルにおける前記の保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第1成分が、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、1.5%~7.0%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル及び第1成分を含むポリエステル組成物であって、
ポリエステル組成物をガスクロマトグラフィー(GC)で特徴づける場合、第1成分が36.38分~36.98分の範囲の保持時間で流出され、GCスペクトルにおける前記の保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第1成分が、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、1.5%~7.0%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する、ポリエステル組成物。
【請求項2】
更に第2成分を含む、請求項1に記載のポリエステル組成物であって、
ポリエステル組成物をGCで特徴づける場合、第2成分が37.56分~38.29分の範囲の保持時間で流出され、GCスペクトルにおける前記の保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第2成分が、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、3.5%~7.7%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する、ポリエステル組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエステル組成物であって、
ガスクロマトグラフィー(GC)において、ポリエステル組成物が、長さ60m、内径530μm及びフィルム厚さ3μmのSGE BPIキャピラリーカラムに装填され、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速12ml/分の窒素のキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から300℃への昇温、300℃で40分間の連続の段階的温度、入口温度340℃、ポリエステル組成物のサンプル注入量1μl、及び340℃で操作される水素炎イオン化検出器の使用で特徴づけられる、ポリエステル組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のポリエステル組成物であって、
ポリエステル組成物をガスクロマトグラフィー-マススペクトロメトリー(GC-MS)で特徴づける場合、第1成分が28.900分~29.000分の範囲の保持時間で流出され、第1成分のフラグメントパターンが29、41、42、43、55、56、83、84、101、111、114、127、129、141、154、156、183、201、273及び400からなる群から選択される質量/電荷数(m/z)の1以上のシグナルを含む、ポリエステル組成物。
【請求項5】
第1成分のフラグメントパターンが、41、55、56、83、111、114、127、129、141及び201のm/zのシグナルを含む、請求項4に記載のポリエステル組成物。
【請求項6】
請求項2に記載のポリエステル組成物であって、
ポリエステル組成物をGC-MSで特徴づける場合、第2成分が29.101分~29.200分の範囲の保持時間で流出され、第2成分のフラグメントパターンが29、41、43、55、56、69、83、101、111、127、129、141、147、155、168、197、215、216、343及び428からなる群から選択されるm/zの1以上のシグナルを含む、ポリエステル組成物。
【請求項7】
第2成分のフラグメントパターンが41、55、56、69、83、111、129、141、155及び215のm/zのシグナルを含む、請求項6に記載のポリエステル組成物。
【請求項8】
請求項4~7のいずれかに記載のポリエステル組成物であって、
GC-MSにおいて、ポリエステル組成物が、長さ30m、内径250μm及びフィルム厚さ0.25μmのZB-1キャピラリーカラムに装填され、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速1.8ml/分のヘリウムのキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から330℃への昇温、330℃で27分間の連続の段階的温度、入口温度340℃、電子エネルギー70eV(電子ボルト)、イオン源温度250℃、四重極質量フィルターの使用、界面温度340℃、29.0m/z~900m/zの質量スキャン範囲、及び1.5分間の溶媒遅延時間で特徴づけられる、ポリエステル組成物。
【請求項9】
第1成分が以下の式(I)で示される化合物である、請求項1~8のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【化1】
〔式中、R
1は、以下の基である。
【化2】
*は、結合位置を示す。〕
【請求項10】
第2成分が以下の式(II)で示される化合物である、請求項2~8のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【化3】
〔式中、R
2は、以下の基である。
【化4】
*は、結合位置を示す。〕
【請求項11】
ポリエステルがポリアジピン酸エステルである、請求項1~10のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【請求項12】
ポリエステル組成物が25℃で2000cps~4000cpsの範囲の粘度を有する、請求項1~11のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【請求項13】
ポリエステル組成物が0.1mgKOH/g~0.7mgKOH/gの範囲の酸価を有する、請求項1~12のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【請求項14】
ポリエステル組成物が5.0mgKOH/g~15.0mgKOH/gの範囲の水酸基価を有する、請求項1~13のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【請求項15】
更に第3成分を含む、請求項1~14のいずれかに記載のポリエステル組成物であって、
ポリエステル組成物をガスクロマトグラフィー(GC)で特徴づける場合、第3成分が36.99分~37.55分の範囲の保持時間で流出され、GCスペクトルにおける前記の保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第3成分が、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、8.0%~10.0%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する、ポリエステル組成物。
【請求項16】
第3成分が以下の式(III)で示される化合物である、請求項15に記載のポリエステル組成物。
【化5】
〔式中、R
3は、以下の基である。
【化6】
R
4は、以下の基である。
【化7】
*は、結合位置を示す。〕
【請求項17】
請求項15又は16に記載のポリエステル組成物であって、
ポリエステル組成物をGC-MSで特徴づける場合、第3成分が29.001分~29.100分の範囲の保持時間で流出され、第3成分のフラグメントパターンが29、41、55、56、69、83、101、111、114、127、129、141、155、183、201、215、287、319及び414からなる群から選択されるm/zの1以上のシグナルを含む、ポリエステル組成物。
【請求項18】
第3成分のフラグメントパターンが41、55、56、69、111、127、129、141、201及び215のm/zのシグナルを含む、請求項17に記載のポリエステル組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載のポリエステル組成物を含む可塑剤と熱可塑性高分子とを含む、熱可塑性高分子材料。
【請求項20】
熱可塑性高分子が、塩化ビニルのホモポリマー又は塩化ビニルのコポリマーである、請求項19に記載の熱可塑性高分子材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル組成物、特に特定の成分を特定の量で含むポリエステル組成物に関する。本願発明のポリエステル組成物は熱可塑性高分子のための可塑剤として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性高分子の物理的特性、例えば、可塑性、柔軟性、屈曲性、靱性等を改良するために、可塑剤を用いることができる。熱可塑性高分子の例として、フタレート、脂肪族エステル、カルボン酸エステル、ホスフェート、エポキシド及びポリエステル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0003】
一般に、二酸とジオールを反応させることで、ポリエステルが得られる。しかし、これらから得られたポリエステルは、通常、副生物の存在のために、沈殿の問題を有する。沈澱は、ポリエステルから得られる製品の外観、物理的特性及び機械的特性に悪影響を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明は、良好な保存性(すなわち、少ない沈殿物)と熱耐性を有するポリエステル組成物を提供する。本願発明のポリエステル組成物は、熱可塑性高分子のための可塑剤として用いて、熱可塑性高分子に、引張強度、伸長率、100%引張応力等の適切な特性を与えることができる。
【0005】
従って、本願発明の課題は、ポリエステル及び第1成分を含むポリエステル組成物を提供することにある。それによって、ポリエステル組成物をガスクロマトグラフィー(GC)で特徴づける場合、第1成分は36.38分~36.98分の範囲の保持時間で流出され、GCスペクトルにおける前記の保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第1成分が、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、1.5%~7.0%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する。
【0006】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物は更に第2成分を含む。ポリエステル組成物をGCで特徴づける場合、第2成分は37.56分~38.29分の範囲の保持時間で流出され、GCスペクトルにおける前記の保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第2成分は、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、3.5%~7.7%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する。
【0007】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物をガスクロマトグラフィー-マススペクトロメトリー(GC-MS)で特徴づける場合、第1成分は28.900分~29.000分の範囲の保持時間で流出され、第1成分のフラグメントパターンは、29、41、42、43、55、56、83、84、101、111、114、127、129、141、154、156、183、201、273及び400からなる群から選択される質量/電荷数(m/z)の1以上のシグナルを含む。
【0008】
本願発明のいくつかの実施態様において、第1成分のフラグメントパターンは、41、55、56、83、111、114、127、129、141及び201のm/zのシグナルを含む。
【0009】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物をGC-MSで特徴づける場合、第2成分は29.101分~29.200分の範囲の保持時間で流出され、第2成分のフラグメントパターンは、29、41、43、55、56、69、83、101、111、127、129、141、147、155、168、197、215、216、343及び428からなる群から選択されるm/zの1以上のシグナルを含む。
【0010】
本願発明のいくつかの実施態様において、第2成分のフラグメントパターンは、41、55、56、69、83、111、129、141、155及び215のm/zのシグナルを含む。
【0011】
本願発明のいくつかの実施態様において、第1成分は、以下の式(I)で示される化合物であり、第2成分は、以下の式(II)で示される化合物である。
【化1】
〔式中、R
1は、以下の基である。
【化2】
R
2は、以下の基である。
【化3】
*は、結合位置を示す。〕
【0012】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステルは、ポリアジピン酸エステルである。
【0013】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物は、25℃で2000cps~4000cpsの範囲の粘度を有する。
【0014】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物は、0.1mgKOH/g~0.7mgKOH/gの範囲の酸価を有する。
【0015】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物は、5.0mgKOH/g~15.0mgKOH/gの範囲の水酸基価を有する。
【0016】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物は更に第3成分を含む。ポリエステル組成物をGCで特徴づける場合、第3成分は36.99分~37.55分の範囲の保持時間で流出され、GCスペクトルにおける前記の保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第3成分は、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、8.0%~10.0%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する。
【0017】
本願発明のいくつかの実施態様において、第3成分は、以下の式(III)で示される化合物である。
【化4】
〔式中、R
3は、以下の基である。
【化5】
R
4は、以下の基である。
【化6】
*は、結合位置を示す。〕
【0018】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物をGC-MSで特徴づける場合、第3成分は29.001分~29.100分の範囲の保持時間で流出され、第3成分のフラグメントパターンは、29、41、55、56、69、83、101、111、114、127、129、141、155、183、201、215、287、319及び414からなる群から選択されるm/zの1以上のシグナルを含む。
【0019】
本願発明のいくつかの実施態様において、第3成分のフラグメントパターンは、41、55、56、69、111、127、129、141、201及び215のm/zのシグナルを含む。
【0020】
本願発明のいくつかの実施態様において、前述のGCにおいて、ポリエステル組成物が、長さ60m、内径530μm及びフィルム厚さ3μmのSGE BPIキャピラリーカラムに装填され、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速12ml/分の窒素のキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から300℃への昇温、300℃で40分間の連続の段階的温度、入口温度340℃、ポリエステル組成物のサンプル注入量1μl、及び340℃で操作される水素炎イオン化検出器の使用で特徴づけられる。
【0021】
本願発明のいくつかの実施態様において、前述のGC-MSにおいて、ポリエステル組成物が、長さ30m、内径250μm及びフィルム厚さ0.25μmのZB-1キャピラリーカラムに装填され、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速1.8ml/分のヘリウムのキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から330℃への昇温、330℃で27分間の連続の段階的温度、入口温度340℃、電子エネルギー70eV(電子ボルト)、イオン源温度250℃、四重極質量フィルターの使用、界面温度340℃、29.0m/z~900m/zの質量スキャン範囲、及び1.5分間の溶媒遅延時間で特徴づけられる。
【0022】
本願発明の他の課題は、上記ポリエステル組成物を含む可塑剤と熱可塑性高分子とを含む熱可塑性高分子材料を提供することにある。
【0023】
本願発明のいくつかの実施態様において、熱可塑性高分子は、塩化ビニルのホモポリマー、又は塩化ビニルのコポリマーである。
【0024】
本願発明の上記の課題、技術的特徴及び利点をより明らかにするために、以下にいくつかの実施態様を参照して本願発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本願発明のポリエステル組成物の実施態様のGCスペクトルである。
【
図3】
図3は、本願発明のポリエステル組成物の実施態様のGC-MSスペクトルである。
【
図5】
図5は、クロマトグラフィーのピークの面積の分割の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本願発明のいくつかの実施態様を、詳細に説明する。しかし、本願発明は、様々な実施態様で具現化されてよく、本明細書に記載された実施態様に限定されるべきではない。
【0027】
追加的に説明されていなければ、本明細書及び請求項に記載された表現「1つの(a)」、「その(the)」等は単数及び複数の形態の両方を含むべきである。
【0028】
追加的に説明されていなければ、本明細書及び請求項に記載された表現「第1の」、「第2の」等は、特別な意味が無く、示された要素又は成分を区別するために単に用いられる。これらの表現は、如何なる優先を示すことが意図されていない。
【0029】
追加的に説明されていなければ、本明細書及び請求項に記載された表現「粘度」は、25℃で測定された粘度を意味する。
【0030】
追加的に説明されていなければ、本明細書及び請求項に記載された表現「常圧」は、1気圧(すなわち、760トル)を意味する。
【0031】
本明細書で用いられる、特定の成分が特定の保持時間の範囲で流出するとは、特定の成分を示すクロマトグラフィーのピークの波のピーク(ピーク値)が特定の保持時間の範囲に入ることを意味する。すなわち、もし、ピーク値がその保持時間の範囲に入れば、そのクロマトグラフィーのピークを、その特定の成分を示すクロマトグラフィーのピークとして決定することができる。
【0032】
本明細書で用いられる、GCスペクトルにおいて、クロマトグラフィーのピークの面積は、以下の通り、決定される。
図5に示すように、B-V-B(ベースライン-谷底点-ベースライン)アプローチを用いる。同じベースラインをすべてのクロマトグラフィーのピークに設定し、特定のクロマトグラフィーのピークの谷底点を、ベースラインに垂直に線を描き下げて、積分される特定のクロマトグラフィーのピークの面積を決定する。ベースラインは、試験サンプルが検出器を通過しない時に検出されるキャリアガスのシグナルを意味する。
【0033】
本願発明の効果は、良好な保存性(すなわち、少ない沈殿物)と熱耐性を有するポリエステル組成物に基づく。本願発明及び関係する出願のポリエステル組成物を以下に詳細に説明する。
【0034】
1.ポリエステル組成物
本願発明のポリエステル組成物は、GCスペクトルの特定の特徴を有し、ポリエステル及び第1成分を含む。本願発明のポリエステル組成物は、任意に他の成分、例えば、第2成分及び/又は第3成分を含むことができる。本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物はまた、GC-MSスペクテルの特定の特徴を有する。
【0035】
ポリエステルの例には、ポリアジピン酸エステル、ポリコハク酸エステル、ポリグルタル酸エステル、ポリピメリン酸エステル、ポリスベリン酸エステル、ポリセバシン酸エステル、ポリウンデカン酸エステル及びポリデカン酸エステルが含まれるが、これらに限定されない。本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステルは、ポリアジピン酸エステル、例えば、アジピン酸、ネオペンチルグリコール及びプロピレングリコールに由来するポリエステルである。ポリエステルの分子量は、特に限定されない。一般には、ポリエステルの数平均分子量は、1200~4000であることができ、例えば、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、2950、3000、3050、3100、3150、3200、3250、3300、3350、3400、3450、3500、3550、3600、3650、3700、3750、3800、3850、3900若しくは3950、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内である。
【0036】
1.1.ポリエステル組成物のスペクトルの分析
ポリエステル組成物をGCで特徴づける場合、第1成分は36.38分~36.98分の範囲の保持時間で流出される。すなわち、第1成分のクロマトグラフィーの波のピーク(ピーク値)は、36.38分、36.39分、36.40分、36.41分、36.42分、36.43分、36.44分、36.45分、36.46分、36.47分、36.48分、36.49分、36.50分、36.51分、36.52分、36.53分、36.54分、36.55分、36.56分、36.57分、36.58分、36.59分、36.60分、36.61分、36.62分、36.63分、36.64分、36.65分、36.66分、36.67分、36.68分、36.69分、36.70分、36.71分、36.72分、36.73分、36.74分、36.75分、36.76分、36.77分、36.78分、36.79分、36.80分、36.81分、36.82分、36.83分、36.84分、36.85分、36.86分、36.87分、36.88分、36.89分、36.90分、36.91分、36.92分、36.93分、36.94分、36.95分、36.96分、36.97分若しくは36.98分、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。加えて、第1成分は、GCスペクトルの対応する保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される。第1成分は、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、1.5%~7.0%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する。
図1は、本願発明のポリエステル組成物の実施態様のGCスペクトルであり、より具体的には、合成例4のポリエステル組成物のGCスペクトルである。
図2は、34.5分~40.5分の範囲の保持時間での
図1の部分拡大概略図である。
【0037】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物は更に第2成分を含む。ポリエステル組成物をGCで特徴づける場合、第2成分は37.56分~38.29分の範囲の保持時間で流出される。すなわち、第2成分のクロマトグラフィーの波のピーク(ピーク値)は、37.56分、37.57分、37.58分、37.59分、37.60分、37.61分、37.62分、37.63分、37.64分、37.65分、37.66分、37.67分、37.68分、37.69分、37.70分、37.71分、37.72分、37.73分、37.74分、37.75分、37.76分、37.77分、37.78分、37.79分、37.80分、37.81分、37.82分、37.83分、37.84分、37.85分、37.86分、37.87分、37.88分、37.89分、37.90分、37.91分、37.92分、37.93分、37.94分、37.95分、37.96分、37.97分、37.98分、37.99分、38.00分、38.01分、38.02分、38.03分、38.04分、38.05分、38.06分、38.07分、38.08分、38.09分、38.10分、38.11分、38.12分、38.13分、38.14分、38.15分、38.16分、38.17分、38.18分、38.19分、38.20分、38.21分、38.22分、38.23分、38.24分、38.25分、38.26分、38.27分、38.28分若しくは38.29分、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。加えて、第2成分は、GCスペクトルの対応する保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される。第2成分は、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、3.5%~7.5%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する。
【0038】
上述のGC分析は、以下の通り、行われる。最初に、ポリエステル組成物が、長さ60m、内径530μm及びフィルム厚さ3μmのSGE BPIキャピラリーカラムに装填される。次に、GC分析が、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速12ml/分の窒素のキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から300℃への昇温、300℃で40分間の連続の段階的温度、入口温度340℃、ポリエステル組成物のサンプル注入量1μl、及び340℃で操作される水素炎イオン化検出器の使用で行われる。
【0039】
GC分析を行う前に、分析されるポリエステル組成物のサンプルを以下の方法の前処理に供することが好ましい。最初に、ポリエステル組成物のサンプルを、1時間、70℃のオーブン中で加熱して、サンプルを均一にする。次に、サンプルをアセトン(溶媒)と混合して、5重量%の濃度の溶液を調製する。
【0040】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物をGC-MSで特徴づける場合、第1成分は28.900分~29.000分の範囲の保持時間で流出される。第1成分のフラグメントパターンは、29、41、42、43、55、56、83、84、101、111、114、127、129、141、154、156、183、201、273及び400からなる群から選択される質量/電荷数(m/z)の1以上のシグナルを含む。第1成分のフラグメントパターンは、41、55、56、83、111、114、127、129、141及び201のm/zのシグナルを含むことが好ましい。第2成分は29.101分~29.200分の範囲の保持時間で流出される。第2成分のフラグメントパターンは、29、41、43、55、56、69、83、101、111、127、129、141、147、155、168、197、215、216、343及び428からなる群から選択されるm/zの1以上のシグナルを含む。第2成分のフラグメントパターンは、41、55、56、69、83、111、129、141、155及び215のm/zのシグナルを含むことが好ましい。
図3は、本願発明のポリエステル組成物の1つの実施態様のGC-MSスペクトルであり、より具体的には、合成例4のポリエステル組成物のGC-MSスペクトルである。
図4は、26.5分~32分の範囲の保持時間での
図3の部分拡大概略図である。
【0041】
上述のGC-MS分析は、以下の通り、行われる。最初に、ポリエステル組成物が、長さ30m、内径250μm及びフィルム厚さ0.25μmのZB-1キャピラリーカラムに装填される。次に、GC分析が、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速1.8ml/分のヘリウムのキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から330℃への昇温、330℃で27分間の連続の段階的温度、入口温度340℃、電子エネルギー70eV(電子ボルト)、イオン源温度250℃、四重極質量フィルターの使用、界面温度340℃、29.0m/z~900m/zの質量スキャン範囲、及び1.5分間の溶媒遅延時間で行われる。
【0042】
GC-MS分析を行う前に、分析されるポリエステル組成物のサンプルを以下の方法の前処理に供することが好ましい。最初に、ポリエステル組成物のサンプルを、1時間、70℃でのオーブン中で加熱して、サンプルを均一にする。次に、サンプルをアセトン(溶媒)と混合して、1重量%の濃度の溶液を調製する。
【0043】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物は更に第3成分を含む。ポリエステル組成物をGCで特徴づける場合、第3成分は36.99分~37.55分の範囲の保持時間で流出される。すなわち、第3成分のクロマトグラフィーの波のピーク(ピーク値)は、36.99分、37.00分、37.01分、37.02分、37.03分、37.04分、37.05分、37.06分、37.07分、37.08分、37.09分、37.10分、37.11分、37.12分、37.13分、37.14分、37.15分、37.16分、37.17分、37.18分、37.19分、37.20分、37.21分、37.22分、37.23分、37.24分、37.25分、37.26分、37.27分、37.28分、37.29分、37.30分、37.31分、37.32分、37.33分、37.34分、37.35分、37.36分、37.37分、37.38分、37.39分、37.40分、37.41分、37.42分、37.43分、37.44分、37.45分、37.46分、37.47分、37.48分、37.49分、37.50分、37.51分、37.52分、37.53分、37.54分若しくは37.55分、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。加えて、第3成分は、GCスペクトルの対応する保持時間のクロマトグラフィーのピークで示され、第3成分は、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、8.0%~10.0%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する。更に、ポリエステル組成物をGC-MSで特徴づける場合、第3成分は29.001分~29.100分の範囲の保持時間で流出される。第3成分のフラグメントパターンは、29、41、55、56、69、83、101、111、114、127、129、141、155、183、201、215、287、319及び414からなる群から選択されるm/zの1以上のシグナルを含む。第3成分のフラグメントパターンは、41、55、56、69、111、127、129、141、201及び215のm/zのシグナルを含むことが好ましい。GC分析及びGC-MS分析の方法は、上述の方法と同じである。
【0044】
1.1.1.第1成分
本願発明のポリエステル組成物に良好な保存性と熱耐性を与えるために、及び熱可塑性高分子に、引張強度、伸長率、100%引張応力等の適切な特性を与えるために、ポリエステル組成物中の第1成分の量は、特定の範囲に制御される。従って、上記の通り、本願発明のポリエステル組成物を上述のGC分析で特徴づける場合、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、GCスペクトルの保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第1成分は、1.5%~7.0%の範囲内、例えば、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%若しくは6.9%、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内のクロマトグラフィーのピークの面積パーセントを有する。他の成分と比べて、第1成分の構造は、熱耐性が不十分である。第1成分の量が上述の範囲より高い場合、ポリエステル組成物を用いる熱可塑性高分子は、低い熱エージング後の残留伸長率を有するかもしれない。加えて、第1成分の量が上述の範囲より低い場合、第1成分の構造は柔らかく、ポリエステル組成物を用いる熱可塑性高分子は、有効に可塑化されず、その結果、過剰に高い100%引張応力となる。
【0045】
本願発明のいくつかの実施態様において、第1成分は以下の式(I)で示される化合物であることができる。
【化7】
【0046】
式(I)中、R
1は、以下の基である。
【化8】
R
1は、好ましくは以下の基である。
【化9】
*は、結合位置を示す。式(I)で示される化合物は、アジピン酸を2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール又は1,3-プロパンジオールと反応させることで得ることができる。
【0047】
1.1.2.第2成分
良好な保存性と熱耐性を有する本願発明のポリエステル組成物を提供するために、及びポリエステル組成物を用いる熱可塑性高分子に、引張強度、伸長率、100%引張応力等の適切な特性を与えるために、ポリエステル組成物中の第2成分の量は、特定の範囲に制御される。従って、上記の通り、本願発明のポリエステル組成物を上述のGC分析で特徴づける場合、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、GCスペクトルの保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第2成分は、3.5%~7.5%の範囲内、例えば、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7.0%、7.1%、7.2%、7.3%若しくは7.4%、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内のクロマトグラフィーのピークの面積パーセントを有する。第2成分の構造は、ポリエステル組成物の耐移行性を改善するために有用な分岐を有する。第2成分の量が上述の範囲より低い場合、ポリエステル組成物の耐移行性は低い。第2成分の量が上述の範囲より高い場合、結晶の沈殿が起こり、ポリエステル組成物の耐移行性は低くなる。
【0048】
本願発明のいくつかの実施態様において、第2成分は以下の式(II)で示される化合物であることができる。
【化10】
【0049】
式(II)中、R
2は、以下の基である。
【化11】
R
2は、好ましくは以下の基である。
【化12】
*は、結合位置を示す。式(II)で示される化合物は、アジピン酸をネオペンチルグリコール又は1,4-ブタンジオールと反応させることで得ることができる。
【0050】
1.1.3.第3成分
本願発明のいくつかの実施態様において、本願発明のポリエステル組成物は更に第3成分を含む。良好な保存性と熱耐性を有する本願発明のポリエステル組成物を提供するために、及びポリエステル組成物を用いる熱可塑性高分子に、引張強度、伸長率、100%引張応力等の適切な特性を与えるために、ポリエステル組成物中の第3成分の量は、特定の範囲に制御される。従って、上記の通り、本願発明のポリエステル組成物を上述のGC分析で特徴づける場合、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、GCスペクトルの保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第3成分は、8.0%~10.0%の範囲内、例えば、8.1%、8.2%、8.3%、8.4%、8.5%、8.6%、8.7%、8.8%、8.9%、9.0%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%若しくは9.9%、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内のクロマトグラフィーのピークの面積パーセントを有する。
【0051】
本願発明のいくつかの実施態様において、第3成分は、以下の式(III)で示される化合物である。
【化13】
【0052】
式(III)中、R
3は、以下の基である。
【化14】
R
4は、以下の基である。
【化15】
*は、結合位置を示す。式(III)で示される化合物は、アジピン酸をネオペンチルグリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールと反応させることで得ることができる。
【0053】
1.2.ポリエステル組成物の調製
本願発明のポリエステル組成物は、1つ以上の脂肪族二酸及び1つ以上の脂肪族ジオールをエステル化ポリマー化反応に供することで得ることができる。脂肪族二酸の例には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ウンデカン酸及びデカン酸が含まれるが、これらに限定されない。上記の脂肪族二酸は、単独で、又は2以上を組み合せて用いることができる。脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチルー1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルー1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール及び2,2,4-トリメチル-1,5-プロパンジオールが含まれるが、これらに限定されない。上記の脂肪族ジオールは、単独で、又は2以上を組み合せて用いることができる。本願発明のいくつかの実施態様において、エステル化ポリマー化反応は、アジピン酸をネオペンチルグリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールと反応させることで実施される。
【0054】
加えて、エステル化ポリマー化反応は、通常、混合型反応終了剤を加えることで終了される。混合型反応終了剤には、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族飽和一価アルコールが含まれるが、これらに限定されない。脂肪族モノカルボン酸の例には、n-ブタン酸、イソブタン酸、n-ペンタン酸、イソペンタン酸、n-ヘキサン酸、イソヘキサン酸、n-ヘプタン酸、イソヘプタン酸、n-オクタン酸、イソオクタン酸、2-エチルヘキサン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸が含まれるが、これらに限定されない。上記の脂肪族モノカルボン酸は、単独で、又は2以上を組み合せて用いることができる。脂肪族飽和一価アルコールの例には、n-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、イソヘキシルアルコール、n-オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、2-エチルヘキサノール、2,2-ジメチルペンタノール、n-ノニルアルコール、イソノニルアルコール、n-デシルアルコール、イソデシルアルコール、2,2,4-トリメチルペンタノール及びラウリルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。上記の脂肪族飽和一価アルコールは、単独で、又は2以上を組み合せて用いることができる。本願発明のいくつかの実施態様において、ラウリン酸及び2-エチルヘキサン酸の混合物が用いられる。
【0055】
本願発明のポリエステル組成物を、触媒の不存在で、調製することができる。しかし、反応時間を減らすために、触媒を用いることもできる。本願発明のポリエステル組成物を調製するために用いることができる触媒の例には、硫酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソオクチルチタネート及びチタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本願発明のいくつかの実施態様において、本願発明のポリエステル組成物は以下の様にして調製される。最初に、反応容器に反応物質を加え、窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、140℃~200℃で常圧エステル化反応を行って、脱水反応が開始する。続いて、触媒を加え、窒素雰囲気下、210℃~230℃で常圧エステル化反応を行う。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、210℃~240℃で減圧エステル化反応を行う。反応中間体の酸価が5mgKOH/gより低くなった時に、エステル化反応を終了する。次に、圧力を0トルに下げて、210℃~230℃で減圧重縮合反応を行う。反応生成物の水酸基価が1.0mgKOH/gと15.0mgKOH/gの間になった時に、重縮合反応を終了する。最後に、生成物を冷却し、ろ過して、ポリエステル組成物を得る。
【0057】
ポリエステル組成物において、加える原料の量比、エステル化温度、エステル化時間及び重縮合時間を制御して、各々の成分の理想的な量を達成することで、第1成分、第2成分及び第3成分の量を調整することができる。
【0058】
1.3.ポリエステル組成物の特性
本願発明のいくつかの実施態様において、本願発明のポリエステル組成物は以下の特性を有する。しかし、本願発明は、以下の特性に限定されない、当業者は必要に応じてポリエステル組成物の特性を調整することができる。ポリエステル組成物は、2000cps~4000cpsの範囲内、例えば、2050cps、2100cps、2150cps、2200cps、2250cps、2300cps、2350cps、2400cps、2450cps、2500cps、2550cps、2600cps、2650cps、2700cps、2750cps、2800cps、2850cps、2900cps、2950cps、3000cps、3050cps、3100cps、3150cps、3200cps、3250cps、3300cps、3350cps、3400cps、3450cps、3500cps、3550cps、3600cps、3650cps、3700cps、3750cps、3800cps、3850cps、3900cps若しくは3950cps、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内の25℃の粘度を有する。ポリエステル組成物は、0.1mgKOH/g~0.7mgKOH/gの範囲内、例えば、0.15mgKOH/g、0.2mgKOH/g、0.25mgKOH/g、0.3mgKOH/g、0.35mgKOH/g、0.4mgKOH/g、0.45mgKOH/g、0.5mgKOH/g、0.55mgKOH/g、0.6mgKOH/g若しくは0.65mgKOH/g、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内の酸価を有する。ポリエステル組成物は、5.0mgKOH/g~15.0mgKOH/gの範囲内、例えば、5.5mgKOH/g、6.0mgKOH/g、6.5mgKOH/g、7.0mgKOH/g、7.5mgKOH/g、8.0mgKOH/g、8.5mgKOH/g、9.0mgKOH/g、9.5mgKOH/g、10.0mgKOH/g、10.5mgKOH/g、11.0mgKOH/g、11.5mgKOH/g、12.0mgKOH/g、12.5mgKOH/g、13.0mgKOH/g、13.5mgKOH/g、14.0mgKOH/g若しくは14.5mgKOH/g、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内の水酸基価を有する。
【0059】
2.熱可塑性高分子材料
本願発明のポリエステル組成物は、熱可塑性高分子のための可塑剤として使用することができる。従って、本願発明は、本願発明の前記ポリエステル組成物を含むことができる可塑剤と熱可塑性高分子とを含む、熱可塑性高分子材料をも提供する。あるいは、可塑剤は、実質的に本願発明の前記ポリエステル組成物からなることができるか、又は可塑剤は、本願発明の前記ポリエステル組成物からなる。前記熱可塑性高分子の例には、塩化ビニルのホモポリマー、及び塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル-ジクロロエチレンコポリマー、塩化ビニル-メタアクリル酸メチルコポリマー等の塩化ビニルのコポリマーを含むが、これらに限定されない。本願発明の熱可塑性高分子材料は、良好な引張強度、伸長率、100%引張応力等を有し、従って、様々な加工処理の適用に有用である。
【0060】
本願発明の熱可塑性高分子材料において、ポリエステル組成物の量は、熱可塑性高分子の100重量部に対して、10重量部~120重量部であることができ、例えば、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部、19重量部、20重量部、21重量部、22重量部、23重量部、24重量部、25重量部、26重量部、27重量部、28重量部、29重量部、30重量部、31重量部、32重量部、33重量部、34重量部、35重量部、36重量部、37重量部、38重量部、39重量部、40重量部、41重量部、42重量部、43重量部、44重量部、45重量部、46重量部、47重量部、48重量部、49重量部、50重量部、51重量部、52重量部、53重量部、54重量部、55重量部、56重量部、57重量部、58重量部、59重量部、60重量部、61重量部、62重量部、63重量部、64重量部、65重量部、66重量部、67重量部、68重量部、69重量部、70重量部、71重量部、72重量部、73重量部、74重量部、75重量部、76重量部、77重量部、78重量部、79重量部、80重量部、81重量部、82重量部、83重量部、84重量部、85重量部、86重量部、87重量部、88重量部、89重量部、90重量部、91重量部、92重量部、93重量部、94重量部、95重量部、96重量部、97重量部、98重量部、99重量部、100重量部、101重量部、102重量部、103重量部、104重量部、105重量部、106重量部、107重量部、108重量部、109重量部、110重量部、111重量部、112重量部、113重量部、114重量部、115重量部、116重量部、117重量部、118重量部若しくは119重量部、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内であることができる。
【0061】
本願発明の熱可塑性高分子材料は、加工処理の間に熱可塑性高分子材料の加工性を最適に改良するために、又は最終生成物に特定の特性を与えるために、任意に他の添加物を含むことができる。添加物には、安定剤、充填剤、染料、顔料、抗酸化剤、難燃剤、発泡剤及び帯電防止剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本願発明のいくつかの実施態様において、熱可塑性高分子材料は更に安定剤を含む。安定剤の例には、エポキシ化大豆油、カルシウム/亜鉛系安定剤、バリウム/亜鉛系安定剤及び鉛径安定剤が含まれるが、これらに限定されない。本願発明の熱可塑性高分子材料において、安定剤の量は、熱可塑性高分子の100重量部に対して、0重量部~10重量部であることができ、例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部若しくは9重量部、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内であることができる。
【実施例0063】
3.実施例
3.1.試験方法
[GCスペクトル分析]
ポリエステル組成物のサンプルを、1時間、70℃のオーブン中で加熱して、サンプルを均一にする。続いて、サンプルをアセトン(溶媒)と混合して、5重量%の溶液を調製して、試験するサンプルの前処理を終える。
【0064】
前処理したサンプルを、長さ60m、内径530μm及びフィルム厚さ3μmのSGE BPIキャピラリーカラムに装填する。続いて、サンプルをガスクロマトグラフ質量分析計(モデル:QP 2020,株式会社島津製作所)を用いて分析する。GC分析は、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速12ml/分の窒素のキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から300℃への昇温、300℃で40分間の連続の段階的温度、入口温度340℃、ポリエステル組成物のサンプル注入量1μl、及び340℃で操作される水素炎イオン化検出器の使用で、行われる。
【0065】
[GC-MS分析]
ポリエステル組成物のサンプルを、1時間、70℃のオーブン中で加熱して、サンプルを均一にする。続いて、サンプルをアセトン(溶媒)と混合して、5重量%の溶液を調製して、試験するサンプルの前処理を終える。
【0066】
前処理したサンプルを、長さ30m、内径250μm及びフィルム厚さ0.25μmのZB-1キャピラリーカラムに装填する。続いて、サンプルをガスクロマトグラフ質量分析計(モデル:QP 2020,株式会社島津製作所)を用いて分析する。100%ジメチルポリシロキサンを固定相として用い、流速1.8ml/分のヘリウムをキャリアガスとして用い、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から330℃への昇温、330℃で27分間の連続の段階的温度を行う。その後、GC-MS分析を、以下の条件:入口温度340℃、電子エネルギー70eV(電子ボルト)、イオン源温度250℃、四重極質量フィルターの使用、界面温度340℃、29.0m/z~900m/zの質量スキャン範囲、及び1.5分間の溶媒遅延時間で、行われる。
【0067】
[酸価分析]
最初に、KOH溶液を以下の通り、調製する。0.7gのKOHを量り、少量の蒸留水に溶解し、続いて、中性エタノールで1000mlに希釈して、KOH溶液を得る。0.4gの試薬用フタル酸水素カリウム(KHP)を量り、250mlコニカルフラスコに加える。100mlの蒸留水を加えて、KHPを溶解し、KHP溶液を得る。その後、2滴のフェノールフタレイン指示薬をKHP溶液に加え、続いて、KHP溶液を、KOH溶液で滴定して、KOH溶液の規定度Nを計算する。
【0068】
次に、10gの試験するサンプルを量り、250mlコニカルフラスコに加え、そこに100mlの中性2-プロパノール溶液と3~4滴のフェノールフタレイン指示薬を加える。フラスコを振り動かし、僅かに加熱してサンプルが完全に溶解することを確かめる。溶液が赤みがかり、赤みがかった色が30秒間維持され、滴定の終点に至るまで、サンプルをKOH溶液で滴定する。サンプルの酸価を、以下の式(1)に従って、計算する。
【0069】
[水酸基価分析]
最初に、アセチル化試薬を以下の通り、作成する。10mlの無水酢酸をストローで吸って、100mlフラスコに加え、50mlのピリジンをフラスコに加え、結果として得られる混合物を攪拌して、アセチル化試薬を得る。
【0070】
次に、KOH溶液を以下の方法に従って調製する。0.7gのKOHを量り、少量の蒸留水に溶解し、続いて、中性エタノールで1000mlに希釈して、KOH溶液を得る。0.4gの試薬用フタル酸水素カリウム(KHP)を量り、250mlコニカルフラスコに加える。100mlの蒸留水を加えて、KHPを溶解し、KHP溶液を得る。その後、2滴のフェノールフタレイン指示薬をKHP溶液に加え、続いて、KHP溶液を、KOH溶液で滴定する。KOH滴定量(すなわち、ブランク滴定量)を記録し、KOH溶液の規定度Nを計算する。
【0071】
その後、10gの試験するサンプルを量り、栓をしたコニカルフラスコに加え、そこに10mlのアセチル化試薬を加える。フラスコの上部にエアークーラーを設置し、フラスコを振り動かし、水蒸気(98±2℃)で加熱する。反応終了後、フラスコを室温に冷却し、フラスコに25mlのn-ブタノールを加え、フラスコを激しく振る。その後、2~3滴のフェノールフタレイン指示薬を加える。溶液が赤みがかり、赤みがかった色が30秒間維持され、滴定の終点に至るまで、サンプルをKOH溶液で滴定する。KOH滴定量(すなわち、試験滴定量)を記録し、サンプルの水酸基価を、以下の式(2)に従って、計算する。
【0072】
[粘度分析]
試験するサンプルを、高さ180mm及び直径50mmの容積測定用シリンダーに加える。続いて、容積測定用シリンダーを25±1℃の恒温水浴に設置する。適した軸と回転速度でBrookfield Viscometer model LVを用いて、サンプルを試験する。
【0073】
最初に、ホットプレスを170℃で5分間、予熱する。次に、熱可塑性高分子材料を170℃及び50kg/cm3の圧力で5分間、ホットプレスして、長さ20cm、幅20cm及び厚さ1mmの試験片を得る。その後、試験片を60kg/cm3の圧力下、室温に冷却する。続いて、JIS-6301-3 model die-cut moldを用いて、試験片をダンベル型試験片に切断する。ASTM D638に従って、universal testing machine(モデル:3366,Instron)を用いて、ダンベル型試験片を試験して、最初の引張強度、最初の伸長率及び最初の100%引張応力を得る。
【0074】
[揮発率分析]
最初に、ホットプレスを170℃で5分間、予熱する。次に、熱可塑性高分子材料を170℃及び50kg/cm
3の圧力で5分間、ホットプレスして、長さ20cm、幅20cm及び厚さ1mmの試験片を得る。その後、試験片を60kg/cm
3の圧力下、室温に冷却する。試験片の重量を測定する。続いて、試験片を、168時間、136℃に設置し、熱エージングを受け、熱エージング後の試験片の重量を測定する。試験片の揮発率を、以下の式(3)に従って、計算する。
【0075】
[熱エージング後の引張強度、熱エージング後の伸長率、熱エージング後の100%引張応力の分析]
最初に、ホットプレスを170℃で5分間、予熱する。次に、熱可塑性高分子材料を170℃及び50kg/cm3の圧力で5分間、ホットプレスして、長さ20cm、幅20cm及び厚さ1mmの試験片を得る。続いて、JIS-6301-3 model die-cut moldを用いて、試験片をダンベル型試験片に切断する。ダンベル型試験片を、168時間、136℃に設置し、熱エージングを受ける。熱エージングされた試験片を、ASTM D638に従って、universal testing machine 3366を用いて試験して、熱エージング後の引張強度、熱エージング後の伸長率及び熱エージング後の100%引張応力を得る。引張強度の残留率(以下、「残留引張率」と言う)を、熱エージング後の引張強度を最初の引張強度で割ることで得ることができる。伸長率の残留率(以下、「残留伸長率」と言う)を、熱エージング後の伸長率を最初の伸長率で割ることで得ることができる。
【0076】
[耐移行性試験]
熱可塑性高分子材料を、長さ38mm、幅6mm及び厚さ1mmの試験片にプレスする。試験片をそれぞれ、2枚のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂板(モデル:TAIRILAC AG15E1,FORMOSA CHEMICALS & FIBRE CORPORATION)の間、及び2枚の高衝撃ポリスチレン樹脂坂(モデル:TAIRIREX HP8250,FORMOSA CHEMICALS & FIBRE CORPORATION)の間に設置して、積層体を生成する。積層体をサンドイッチクランプを用いて挟み、1kgの釣り合い重りを積層体の上に載せて、積層体を72時間、70℃のオーブン中に設置する。その後、樹脂板を観察して、熱可塑性高分子材料から製造した試験片から樹脂板に、ポリエステル組成物が移行し、エッチングするか否かを確認する。樹脂板の表面を損傷について目視で確認する。評価基準は、以下の通りである。数字「1」は表面に痕跡が観察されないことを表す。数字「2」は表面に押しつけられた影が観察されることを表す。数字「3」は表面に明らかなくぼみが観察されることを表す。数字「4」は表面に明らかな膨らみ及びへこみが観察されることを表す。数字「5」は表面に著しい損傷及びべたつきが観察されることを表す。数字が小さいほど、耐移行性が良い。
【0077】
3.2.ポリエステル組成物の調製及び特性分析
3.2.1.ポリエステル組成物の調製
[合成例1]
撹拌機、温度計、蒸留管及び濃縮メーターを備えた3L丸底フラスコに、1000gのアジピン酸、240.53gのネオペンチルグリコール、485.63gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、155.95gの2-エチルヘキサノール及び274.02gのラウリル酸を加えた。窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、150℃で常圧エステル化反応を行い、脱水反応が開始した。続いて、触媒として0.22gのテトライソプロピルチタネートを加え、窒素雰囲気下、220℃で常圧エステル化反応を行った。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、210℃で減圧エステル化反応を行った。全部で298分間、エステル化反応を行った。エステル化の終了時を示す酸価は、4.79mgKOH/gである。次に、圧力を0トルに下げて、397分間、230℃で減圧重縮合反応を行った。その後、反応生成物を105℃に冷却して、0.05重量%(生成物の総重量に対する)の珪藻土(モデル:HYFLO)を加えた。続いて、枠フィルターを用いて生成物をろ過して、合成例1のポリエステル組成物を得た。
【0078】
[合成例2]
撹拌機、温度計、蒸留管及び濃縮メーターを備えた3L丸底フラスコに、1000gのアジピン酸、320.70gのネオペンチルグリコール、416.25gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、155.95gの2-エチルヘキサノール及び274.02gのラウリル酸を加えた。窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、150℃で常圧エステル化反応を行い、脱水反応が開始した。続いて、触媒として0.22gのテトライソプロピルチタネートを加え、窒素雰囲気下、220℃で常圧エステル化反応を行った。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、220℃で減圧エステル化反応を行った。全部で318分間、エステル化反応を行った。エステル化の終了時を示す酸価は、4.69mgKOH/gである。次に、圧力を0トルに下げて、465分間、220℃で減圧重縮合反応を行った。その後、反応生成物を105℃に冷却して、0.05重量%(生成物の総重量に対する)の珪藻土(モデル:HYFLO)を加えた。続いて、枠フィルターを用いて生成物をろ過して、合成例2のポリエステル組成物を得た。
【0079】
[合成例3]
撹拌機、温度計、蒸留管及び濃縮メーターを備えた3L丸底フラスコに、1000gのアジピン酸、400.88gのネオペンチルグリコール、346.88gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、155.95gの2-エチルヘキサノール及び274.02gのラウリル酸を加えた。窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、150℃で常圧エステル化反応を行い、脱水反応が開始した。続いて、触媒として0.22gのテトライソプロピルチタネートを加え、窒素雰囲気下、220℃で常圧エステル化反応を行った。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、210℃で減圧エステル化反応を行った。全部で310分間、エステル化反応を行った。エステル化の終了時を示す酸価は、4.87mgKOH/gである。次に、圧力を0トルに下げて、450分間、220℃で減圧重縮合反応を行った。その後、反応生成物を105℃に冷却して、0.05重量%(生成物の総重量に対する)の珪藻土(モデル:HYFLO)を加えた。続いて、枠フィルターを用いて生成物をろ過して、合成例3のポリエステル組成物を得た。
【0080】
[合成例4]
撹拌機、温度計、蒸留管及び濃縮メーターを備えた3L丸底フラスコに、1000gのアジピン酸、481.05gのネオペンチルグリコール、277.50gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、155.95gの2-エチルヘキサノール及び274.02gのラウリル酸を加えた。窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、150℃で常圧エステル化反応を行い、脱水反応が開始した。続いて、触媒として0.22gのテトライソプロピルチタネートを加え、窒素雰囲気下、230℃で常圧エステル化反応を行った。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、220℃で減圧エステル化反応を行った。全部で271分間、エステル化反応を行った。エステル化の終了時を示す酸価は、3.9mgKOH/gである。次に、圧力を0トルに下げて、510分間、210℃で減圧重縮合反応を行った。その後、反応生成物を105℃に冷却して、0.05重量%(生成物の総重量に対する)の珪藻土(モデル:HYFLO)を加えた。続いて、枠フィルターを用いて生成物をろ過して、合成例4のポリエステル組成物を得た。
【0081】
[合成例5]
撹拌機、温度計、蒸留管及び濃縮メーターを備えた3L丸底フラスコに、1000gのアジピン酸、481.05gのネオペンチルグリコール、277.50gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、155.95gの2-エチルヘキサノール及び274.02gのラウリル酸を加えた。窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、150℃で常圧エステル化反応を行い、脱水反応が開始した。続いて、触媒として0.22gのテトライソプロピルチタネートを加え、窒素雰囲気下、220℃で常圧エステル化反応を行った。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、235℃で減圧エステル化反応を行った。全部で235分間、エステル化反応を行った。エステル化の終了時を示す酸価は、2.4mgKOH/gである。次に、圧力を0トルに下げて、413分間、225℃で減圧重縮合反応を行った。その後、反応生成物を105℃に冷却して、0.05重量%(生成物の総重量に対する)の珪藻土(モデル:HYFLO)を加えた。続いて、枠フィルターを用いて生成物をろ過して、合成例5のポリエステル組成物を得た。
【0082】
[比較合成例1]
撹拌機、温度計、蒸留管及び濃縮メーターを備えた3L丸底フラスコに、1000gのアジピン酸、160.35gのネオペンチルグリコール、555.00gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、155.95gの2-エチルヘキサノール及び274.02gのラウリル酸を加えた。窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、150℃で常圧エステル化反応を行い、脱水反応が開始した。続いて、触媒として0.21gのテトライソプロピルチタネートを加え、窒素雰囲気下、220℃で常圧エステル化反応を行った。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、230℃で減圧エステル化反応を行った。全部で325分間、エステル化反応を行った。エステル化の終了時を示す酸価は、3.21mgKOH/gである。次に、圧力を0トルに下げて、524分間、210℃で減圧重縮合反応を行った。その後、反応生成物を105℃に冷却して、0.05重量%(生成物の総重量に対する)の珪藻土(モデル:HYFLO)を加えた。続いて、枠フィルターを用いて生成物をろ過して、比較合成例1のポリエステル組成物を得た。
【0083】
[比較合成例2]
撹拌機、温度計、蒸留管及び濃縮メーターを備えた3L丸底フラスコに、1000gのアジピン酸、561.23gのネオペンチルグリコール、208.13gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、155.95gの2-エチルヘキサノール及び274.02gのラウリル酸を加えた。窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、150℃で常圧エステル化反応を行い、脱水反応が開始した。続いて、触媒として0.22gのテトライソプロピルチタネートを加え、窒素雰囲気下、220℃で常圧エステル化反応を行った。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、220℃で減圧エステル化反応を行った。全部で310分間、エステル化反応を行った。エステル化の終了時を示す酸価は、4.70mgKOH/gである。次に、圧力を0トルに下げて、492分間、220℃で減圧重縮合反応を行った。その後、反応生成物を105℃に冷却して、0.05重量%(生成物の総重量に対する)の珪藻土(モデル:HYFLO)を加えた。続いて、枠フィルターを用いて生成物をろ過して、比較合成例2のポリエステル組成物を得た。
【0084】
[比較合成例3]
撹拌機、温度計、蒸留管及び濃縮メーターを備えた3L丸底フラスコに、1000gのアジピン酸、641.41gのネオペンチルグリコール、138.75gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、155.95gの2-エチルヘキサノール及び274.02gのラウリル酸を加えた。窒素を導入し、反応物質を攪拌する条件下、150℃で常圧エステル化反応を行い、脱水反応が開始した。続いて、触媒として0.22gのテトライソプロピルチタネートを加え、窒素雰囲気下、220℃で常圧エステル化反応を行った。その後、圧力を460トル~200トルに下げて、225℃で減圧エステル化反応を行った。全部で271分間、エステル化反応を行った。エステル化の終了時を示す酸価は、4.98mgKOH/gである。次に、圧力を0トルに下げて、300分間、230℃で減圧重縮合反応を行った。その後、反応生成物を105℃に冷却して、0.05重量%(生成物の総重量に対する)の珪藻土(モデル:HYFLO)を加えた。続いて、枠フィルターを用いて生成物をろ過して、比較合成例3のポリエステル組成物を得た。
【0085】
3.2.2.ポリエステル組成物の特性分析
合成例1~5及び比較合成例1~3のポリエステル組成物の、GCスペクトル、GC-MSスペクトル、酸価、水酸基価及び粘度を含む特性を、前記の試験方法に従って、測定した。第1成分、第2成分及び第3成分のクロマトグラフィーのピークの面積を計算した。結果を表1に記す。
【0086】
【0087】
3.3.熱可塑性高分子材料の調製及び特性分析
3.2.2.熱可塑性高分子材料の調製
[実施例1]
100重量部の塩化ポリビニル(モデル:S-70,Formosa Plastics Group)、50重量部の合成例1のポリエステル組成物、2重量部のエポキシ化大豆油(モデル:B-22,Chang Chun Petrochemical)、及び2.5重量部のカルシウム/亜鉛系安定剤(モデル:Mark 37W,Chang Chiang Chemical)を、Laboratory Mill(モデル:MT22615,YITZUNG Precision Machinery)に加え、7分間、172℃で粉砕して、実施例1の熱可塑性高分子材料を得た。
【0088】
[実施例2]
100重量部の塩化ポリビニルS-70、50重量部の合成例2のポリエステル組成物、2重量部のエポキシ化大豆油B-22、及び2.5重量部のカルシウム/亜鉛系安定剤Mark 37Wを、Laboratory Mill MT22615に加え、7分間、172℃で粉砕して、実施例2の熱可塑性高分子材料を得た。
【0089】
[実施例3]
100重量部の塩化ポリビニルS-70、50重量部の合成例3のポリエステル組成物、2重量部のエポキシ化大豆油B-22、及び2.5重量部のカルシウム/亜鉛系安定剤Mark 37Wを、Laboratory Mill MT22615に加え、7分間、172℃で粉砕して、実施例3の熱可塑性高分子材料を得た。
【0090】
[実施例4]
100重量部の塩化ポリビニルS-70、50重量部の合成例4のポリエステル組成物、2重量部のエポキシ化大豆油B-22、及び2.5重量部のカルシウム/亜鉛系安定剤Mark 37Wを、Laboratory Mill MT22615に加え、7分間、172℃で粉砕して、実施例4の熱可塑性高分子材料を得た。
【0091】
[実施例5]
100重量部の塩化ポリビニルS-70、50重量部の合成例5のポリエステル組成物、2重量部のエポキシ化大豆油B-22、及び2.5重量部のカルシウム/亜鉛系安定剤Mark 37Wを、Laboratory Mill MT22615に加え、7分間、172℃で粉砕して、実施例5の熱可塑性高分子材料を得た。
【0092】
[比較例1]
100重量部の塩化ポリビニルS-70、50重量部の比較合成例1のポリエステル組成物、2重量部のエポキシ化大豆油B-22、及び2.5重量部のカルシウム/亜鉛系安定剤Mark 37Wを、Laboratory Mill MT22615に加え、7分間、172℃で粉砕して、比較例1の熱可塑性高分子材料を得た。
【0093】
[比較例2]
100重量部の塩化ポリビニルS-70、50重量部の比較合成例2のポリエステル組成物、2重量部のエポキシ化大豆油B-22、及び2.5重量部のカルシウム/亜鉛系安定剤Mark 37Wを、Laboratory Mill MT22615に加え、7分間、172℃で粉砕して、比較例2の熱可塑性高分子材料を得た。
【0094】
[比較例3]
100重量部の塩化ポリビニルS-70、50重量部の比較合成例3のポリエステル組成物、2重量部のエポキシ化大豆油B-22、及び2.5重量部のカルシウム/亜鉛系安定剤Mark 37Wを、Laboratory Mill MT22615に加え、7分間、172℃で粉砕して、比較例3の熱可塑性高分子材料を得た。
【0095】
3.3.2.熱可塑性高分子材料の特性分析(I)
実施例1~5及び比較例1~3の熱可塑性高分子材料の、最初の引張強度、最初の伸長率、最初の100%引張応力、熱エージング後の揮発率、残留引張率、残留伸長率及び100%引張応力を含む特性を、前記の試験方法に従って、測定した。結果を表2に記す。
【0096】
【0097】
表2に示される通り、本願発明のポリエステル組成物を可塑剤として用いる熱可塑性高分子材料は、良好な最初の引張強度、最初の伸長率及び最初の100%引張応力、並びに良好な熱エージング後の残留引張率、残留伸長率及び100%引張応力を、同時に備える。それに対して、表2に示される通り、本願発明のポリエステル組成物を可塑剤として用いない熱可塑性高分子材料は、良好な最初の引張強度、最初の伸長率及び最初の100%引張応力を、同時に備えず、また良好な熱エージング後の残留引張率、残留伸長率及び100%引張応力を、同時に備えない。具体的には、比較例1に示すように、第1成分のクロマトグラフィーのピークの面積パーセントが規定範囲より高ければ、熱可塑性高分子材料は、低下した熱エージング後の残留伸長率を備える。比較例2及び3に示すように、第1成分のクロマトグラフィーのピークの面積パーセントが規定範囲より低ければ、熱可塑性高分子材料の熱可塑性高分子は、有効に可塑化せず、低下した最初の100%引張応力を与えることになる。
【0098】
3.3.3.熱可塑性高分子材料の特性分析(II)
実施例2~5及び比較例1と3の熱可塑性高分子材料の耐移行性を、前記の試験方法に従って、測定した。結果を表3に記す。
【0099】
【0100】
表3に示される通り、本願発明のポリエステル組成物を可塑剤として用いる熱可塑性高分子材料は、良好な耐移行性を備え、すなわち、ポリエステル組成物は、移行し、樹脂板の表面をエッチングして損傷を引き起こしそうにない。それに対して、表3に示される通り、本願発明のポリエステル組成物を可塑剤として用いない熱可塑性高分子材料は、良好な耐移行性を備えることができない。具体的には、比較例1及び3に示すように、可塑剤として用いられるポリエステル組成物中の第2成分のクロマトグラフィーのピークの面積パーセントが規定範囲から外れれば、ポリエステル組成物は低下した耐移行性を有し、樹脂坂の表面に明らかなくぼみを観察することができる。
【0101】
上記の実施例は、本願発明の原理及び効果を説明し、その発明的特徴を示すために用いられており、本願発明の範囲を限定するために用いられない。当業者は、記載された発明の開示及び提案に基づいて、様々な変更及び交換を行うことができる。従って、本願発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲で定義されたものである。
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステル組成物は更に第2成分を含む。ポリエステル組成物をGCで特徴づける場合、第2成分は37.56分~38.29分の範囲の保持時間で流出され、GCスペクトルにおける前記の保持時間のクロマトグラフィーのピークで示される第2成分は、ポリエステル組成物のクロマトグラフィーのピークの全面積に対して、3.5%~7.5%の範囲のクロマトグラフィーのピークの面積を有する。
本願発明のいくつかの実施態様において、前述のGC-MSにおいて、ポリエステル組成物が、長さ30m、内径250μm及びフィルム厚さ0.25μmのZB-1キャピラリーカラムに装填され、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速1.8ml/分のヘリウムのキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から330℃への昇温、330℃で27分間の連続の段階的温度、入口温度350℃、電子エネルギー70eV(電子ボルト)、イオン源温度250℃、四重極質量フィルターの使用、界面温度340℃、29.0m/z~900m/zの質量スキャン範囲、及び1.5分間の溶媒遅延時間で特徴づけられる。
上述のGC-MS分析は、以下の通り、行われる。最初に、ポリエステル組成物が、長さ30m、内径250μm及びフィルム厚さ0.25μmのZB-1キャピラリーカラムに装填される。次に、GC分析が、以下の条件:100%ジメチルポリシロキサンの固定相、流速1.8ml/分のヘリウムのキャリアガス、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から330℃への昇温、330℃で27分間の連続の段階的温度、入口温度350℃、電子エネルギー70eV(電子ボルト)、イオン源温度250℃、四重極質量フィルターの使用、界面温度340℃、29.0m/z~900m/zの質量スキャン範囲、及び1.5分間の溶媒遅延時間で行われる。
前処理したサンプルを、長さ30m、内径250μm及びフィルム厚さ0.25μmのZB-1キャピラリーカラムに装填する。続いて、サンプルをガスクロマトグラフ質量分析計(モデル:QP 2020,株式会社島津製作所)を用いて分析する。100%ジメチルポリシロキサンを固定相として用い、流速1.8ml/分のヘリウムをキャリアガスとして用い、50℃で5分間、10℃/分の速度での50℃から330℃への昇温、330℃で27分間の連続の段階的温度を行う。その後、GC-MS分析を、以下の条件:入口温度350℃、電子エネルギー70eV(電子ボルト)、イオン源温度250℃、四重極質量フィルターの使用、界面温度340℃、29.0m/z~900m/zの質量スキャン範囲、及び1.5分間の溶媒遅延時間で、行われる。