(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109840
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】放射性汚染水の処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/06 20060101AFI20220721BHJP
B01D 59/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G21F9/06 Z
B01D59/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021029213
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】521081159
【氏名又は名称】嵜山 生幸
(72)【発明者】
【氏名】嵜山 生幸
(57)【要約】
【課題】放射性汚染水の処理方法として海洋放出が有力視されているが、これには沿海の海産物への風評問題等があり、夛くの漁業関係者や消費者が心配等をしているが、汚染水を放出せず、再利用する放射性汚染水の処理方法を提供する。
【解決手段】放射性汚染水(1)を貯溜タンクに入れて靜置し、地球の引力や外気温度の変化に從って分離する現象を利用し、分離した水の層(3,4)を汲み取り、仕分けを行ない、それぞれの水に適した用途で再利用する放射性汚染水の処理方法を特長とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
復数の水素同位体より成る水分子の混合体はタンク内に靜置すると、自然に分離する。この現象を利用する放射性汚染水の処理方法。
【請求項2】
タンク内の各水分子の比重に働く重力、浮力及び外気温による分離現象を利用する単離方法。
【請求項3】
単離した水分子の利用方法。
【請求項4】
プロチウム水(純地下水)以外は自然環境に放出しない管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トリチウムを含む放射性汚染水を貯溜タンク内に靜置し、汚染水が、分子量の差に応じて分離する自然現象を利用し、各水分子の分別を行なう放射性汚染水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
從来、放射性汚染水の処理方法は少量であれば、環境に影響をおよぼさないとされる基準値以下に薄めて海洋等に放出するのが一般的方法であった、しかし、福島第一原発事故後、地下水が、破れた原子炉の冷却水等、高濃度の汚染水やデブリなどに接触して、大量の汚染水となり建屋の地下に溜り、これが海洋に流れ出て一時、福島の漁穫物に風評被害が発生した。これを抑えるため、政府は汚染水の貯溜タンクを設置したり、建屋周辺の土壌を凍結させる遮水壁を造ったりしたが、回収されずに海に流れ込む汚染水もあり、政府の規制委は福島の沖合で海水中の放射性物▲質▼の濃度測定を行ないホームページに公開している。汚染水の発生が止まらないのは主として自然現象である地下水の流入によるもので、問題はこの汚染水が事故の収束の妨げとなっていることである。政府は企業数社に汚染水処理の技術的解決法の提案を求めたが、現実的に利用可能な処理方法が発見されず、貯溜タンクの汚染水を基準値以下に薄めて行なう海洋放出を有力視する提案が経済産業省の小委員会を通じて公表された。政府は現在も処理方法に関する努力を続けているが、現実にはこの方法以外まだ発見されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これには次のような課題があった。
(イ)汚染水の放出は現在停止しているが、2022年夏頃には基準値以下に薄めて海洋に放出する提案が有力視されて風評による影響が人々の心を不安にしている。周辺の住民や一般消費者の反対の声が起きる風評の問題がある。
(ロ)政府は民間企業に技術的解決法の提案を求めたが、処理に用いる資材や蒸溜法及び電解法に用する大量のエネルギーや大きな処理コストは放射性汚染水処理技術分野の大きな課題である。
(ハ)処理技術を確立しなければ、貯溜タンク増設や、そのための敷地拡張が必要となる。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(I)この放射性汚染水処理技術に用いる基礎技術は水分子に作用する浮力と重力及び融点を利用する分離技術である。(
図1)は汚染水を構成する水素同位体と酸素の組合わせを順に表示したものである。(
図2)は放射性汚染水(1)が貯溜タンク内の各水分子の比重に働く浮力と重力の経時変化(2)を表したものである。
(II)汚染されていない地下水(
図1のA)をポンプで汲み取り、海洋に放出する。そのタイミングは外気温が1.5℃近傍で(B以下)が氷結(4)するので、氷結せずに液状(3)を保っている(A)を空のタンクに移送して、こゝで安全を確め、海洋に放出する(
図3)。
(III)プロチウム水(
図1のA:常用水)以外も、外気温の変化とそれぞれの融解点に合わせてタイミングを取り、デユートリウム水クループ(B,C),トリチウムグループ(D,E,F,G,H)とその他の重水グループ(I,J,K)をそれぞれ3棟のタンクに分別する(
図4)。
(IV)単離プロセスを行なう(
図5)では、沈殿した汚染物▲質▼(K)はアルプスで処理し、現在行なわれているプロセスに從がう。(C)と(F)は有用な資源なので保管し、その他(B、D、E、G、H、I、J)はデブリや使用済核燃料の冷却材として使用する。その後回集して、(C)と(F)及び高重水の製造原料として再利用する。
本発明は、以上の構成よりなる放射性汚染水の処理方法である。
【発明の効果】
【0006】
(イ)自然エネルギーを利用するので、コストはほとんどかゝらない(
図2)。タンク内の最上部(A:プロチウム水)は温度0.0℃以上では凍結せず液状であり、(B:デユートリウム水)が1.5℃近傍で凍結するのでタイミングを計って(A)を新しいタンクに移送し、こゝで安全を確めて海洋に放出する(
図3)。(A)は常用水なので、風評問題は発生しない。
(ロ)分子量の近似値に從って分割した3部のグループを新しい3棟のタンクに移送して靜置分離する(
図4)。空タンクが発生するので、次の貯溜タンクとして再利用すれば、タンクの増設やそのための敷地拡張の問題は解消する。
(ハ)汚染水中の水分子はそれぞれの物性に応じて単離し(
図5)、産業発展に資する用途を探求する。例えば、(A)は海洋に放出せず、一時集積場に保管している汚染した表面土などの洗浄水として使用できる。こゝで汚染した水は(
図3,4,5)で処理すればよい。又、(C)は原子炉の冷却材や減速材として利用できる。(F)は自然に分解して放射能を失い、ヘリウム(
3He)や酸素(O
2)に変わる。酸素は燃料電池の燃料となり、ヘリウムは高価なヘリウム(
4He)の代替品として、気球や飛行船の浮揚材として利用可能である。
(ニ)その他の水分子(B、D、E、G、H、I、J)はデブリや使用済核燃料の冷却材として使用すれば、(C)や(F)の増産や高重水の原料となる。(
図3、4、5)を利用すれば、それぞれの水の単離も可能である。
(ホ)本処理法は現行の原子力発電所における汚染水にも応用可能である。また、使用済核燃料をトリチウム水等の製造原材料とする新しい産業の出発点ともなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】各水分子の物理化学的物性とそれらのグループを表したものである。
【
図2】本発明における水分子の経時変化のイラストである。
【
図3】本発明の海洋放出を行なう場合のイラストである。
【
図5】各グループを単体に分離するときのイラストである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の基本技術は分離技術である。本技術は自然力である重力、比重(分子量に比例する)及び融点を利用した分離方法である(
図1,2,3,4,5)。建屋の地下に溜った汚染水を貯溜タンクに移送し、靜置する。比重の違いにより、自然に分離した汚染水を4棟のタンクに分別して靜置する分離形態である。
(イ)水素同位体で構成された水分子(AからJまで)は、それらの物理的性▲質▼に從って単離し、保管して利用する。
(ロ)I J Kは(
図5)で単離し、K(放射性物▲質▼)はAを加えて、アルプスで処理し、現在定められたプロセスに從う。
本発明は以上のような構造である。この分離方法を使う時は、サイフオンを使用することもできるが、電動ポンプを利用して放射線によるリスクを避ければよい。
【符号の説明】
【0009】
1 汚染水がタンク内に移送された状態。
2 時間が経過して、汚染水が分離安定した状態。
3 1.5℃近傍で液状のA(プロチウム水:常用水)。
4 1.5℃近傍で氷結したA以外の汚染水。
5 分離移送用ポンプ。
6 海洋放出用バルブ。