(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109845
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】粉体かに風味かまぼこの製造方法及び粉体かに風味かまぼこ
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20220721BHJP
【FI】
A23L17/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021033924
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】592014746
【氏名又は名称】株式会社ビンショー
(72)【発明者】
【氏名】堀田 幸子
【テーマコード(参考)】
4B034
【Fターム(参考)】
4B034LB03
4B034LK02X
4B034LK10X
4B034LK13X
4B034LK14X
4B034LK17X
4B034LK20X
4B034LK25X
4B034LK35X
4B034LK38X
4B034LP01
4B034LP11
4B034LP14
4B034LP20
(57)【要約】
【課題】粉体状のかに風味かまぼこを市販に供することを目的とする。
【解決手段】スケソウ鱈等の潰擂肉に澱粉、卵白、大豆加工品、食塩、調味料、色素等を加えて混練し、これを圧延成形機により厚さが0.5~3mmの薄板状に加熱形成した後、焙焼機で加熱して焼き上げ、乾燥工程を経て水分量10%以下にすることで得られた色彩の異なる2種の乾燥魚肉シートをそれぞれ粉砕して色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこを得る工程、及び該色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこを混合する工程を包含する。色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこは平均粒径が3.0mm以下である赤色の粉体乾燥かまぼこ及び白色の粉体乾燥かまぼこである。本発明の粉体かに風味かまぼこは、赤色の粉体乾燥かまぼこ及び白色の粉体乾燥かまぼこの混合割合が重量比で3部:97部~15部:85部である混合物からなり、かつ水分活性が0.65以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色彩の異なる2種の乾燥魚肉シートを調製する工程、調製して得られた色彩の異なる2種の乾燥魚肉シートを粉砕する工程、粉砕して得られた色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこを混合する工程を包含する粉体かに風味かまぼこの製造方法。
【請求項2】
色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこが、赤色粉体乾燥かまぼこ及び白色粉体乾燥かまぼこであり、赤色粉体かまぼこ及び白色かまぼこの平均粒径が3.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粉体かに風味かまぼこの製造方法。
【請求項3】
前記赤色粉体乾燥かまぼこ及び前記白色粉体乾燥かまぼことの混合割合が重量比で3対97~15対85であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体かに風味かまぼこの製造方法。
【請求項4】
色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこの混合物からなり、かつ水分活性が0.65以下であることを特徴とする粉体かに風味かまぼこ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体かに風味かまぼこの製造方法及び粉体かに風味かまぼこに関する。
【背景技術】
【0002】
かに風味の魚肉練製品は、「かに風味かまぼこ」として広く世間に知られており、繊維状の筋目を入れた白色のシート状の魚肉すり身ゲルをフィルムで巻いて棒状にしたスティックタイプ、かまぼこを繊維に似せて裁断した刻みタイプ、刻みタイプを魚肉摺り上がり身で繋ぎ合わせたチャンクタイプがあり、いずれもかに肉に似せて紅白となるよう着色してある(非特許文献1)。
【0003】
かに風味かまぼこを、そのまま噛り付く場合は良いが、炒め物に混ぜたりサラダのトッピングにするには、細かく裁断しなければならなかった。
【0004】
また、従来のかに風味かまぼこは水分含有量が50~80重量%と多いので基本的に冷蔵や冷凍流通であり輸送コストがかかる上に長期保存が難しいことが難点であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
粉体あるいは粒状の魚肉練製品が提案されているが、これらは、従来の蒲鉾を細かく刻んだもの(特許文献1)、従来の魚肉すり身の生地を湯中へ滴下して粒状に加熱成型したもの(特許文献2)、魚肉すり身と副原料を混錬した生地を凍結乾燥して粉砕したもの(特許文献3、特許文献4)、具体的な手段や形態が明記されていないが粒状にしたかまぼこ(特許文献5)がある。
【特許文献1】特開昭62-228256
【特許文献2】特開昭58-94374
【特許文献3】特開昭52-3858
【特許文献4】特開昭62-14767
【特許文献5】実用新案登録第3194371号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社紀文食品、”[練り物]教室 基礎:練り物図鑑 カニカマ”、紀文アカデミー、[online]、[令和2年10月14日検索]、インターネット<https://www.kibun.co.jp/knowledge/neri/basics/zukan/kanikama/>
【0007】
一方、輸送コストがかからず日持ちのする粉体のかに風味かまぼこについての文献は見つからなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1及び特許文献2に記載の粒状かまぼこは、従来のかまぼこと同様に長期保存に向かない。また、特許文献3及び特許文献4に記載の粉末かまぼこは、水や湯を加えることで生のすり身戻して再度加熱成形することを前提とした「乾燥かまぼこの素」であるので、本発明とは趣旨が異なる。特許文献5に記載の粒状かまぼこは、おそらく従来のかまぼこを粒状にしたものと思われ、特許文献1及び特許文献2と同様に長期保存には不向きである。
【0009】
また、従来のかに風味かまぼこを細かく刻むと、着色した赤色の色素がかまぼこの白色部に滲み、紅白がはっきりとしないので見た目が美しくない。
【0010】
また、従来のかに風味かまぼこを乾燥した場合、水分が蒸発することで組織の収縮がおこり、粉体に加工しても好ましい食感を得られない。
【0011】
本発明は、上記の欠点を解消するためになされたものであり、長期保存が可能で、見た目が美しく、食べた時の食感が良い粉体かに風味かまぼこ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(1)~(3)の粉体かに風味かまぼこの製造方法、及び(4)の粉体かに風味かまぼこを要旨とする。
(1)色彩の異なる2種の乾燥魚肉シートを調製する工程、調製して得られた色彩の異なる2種の乾燥魚肉シートを粉砕する工程、粉砕して得られた色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこを混合する工程を包含する粉体かに風味かまぼこの製造方法。
(2)色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこが、赤色粉体乾燥かまぼこ及び白色粉体乾燥かまぼこであり、赤色粉体乾燥かまぼこ及び白色粉体乾燥かまぼこの平均粒径が3.0mm以下であることを特徴とする(1)の粉体かに風味かまぼこの製造方法。
(3)前記赤色粉体かまぼこ及び前記白色かまぼことの混合割合が重量比で3対97~15対85であることを特徴とする(1)又は(2)の粉体かに風味かまぼこの製造方法。
(4)色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこの混合物からなり、かつ水分活性が0.65以下であることを特徴とする粉体かに風味かまぼこ。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る粉体かに風味かまぼこは水分活性0.65以下であることを特徴とする。水分活性が0.65以下の場合では、カビの増殖を防ぐことが知られており、常温で長期保存が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る粉体かに風味かまぼこは粉体であるので、一般のかに風味かまぼこ類よりも嵩張ることがないことから輸送コストの抑制が可能等の利点がある。
【0015】
さらに、本発明おける粉体かに風味かまぼこは粉体という形状により、細挽きかに肉様の食感や外観を得た。本発明おける粉体かに風味かまぼこはそのまま食べられるばかりではなく、揚物に振りかけたり、汁物の浮き実にしたり、米飯やパン生地等に混ぜ込む等のあらゆる利用方法が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、乾燥魚肉シートを粉砕して得られた色彩の異なる2種の粉体乾燥かまぼこを混合する。粉体乾燥かまぼこの素材となる乾燥魚肉シートは既存の方法で魚肉を原料にして製造された薄板状で、後述する粉砕工程における粉砕加工のしやすさを考慮すると、乾燥工程を経て10重量%以下としたものが好ましい。乾燥方法としては、熱風乾燥機により乾燥する方法、凍結乾燥機により乾燥する方法、乾熱式乾燥機により乾燥する方法等、既存の方法が挙げられる。
【0017】
本発明に係る赤色粉体乾燥かまぼこの素材となる乾燥魚肉シートを赤く着色する方法は特に制限がなく、例えば乾燥魚肉シート調製時に魚肉すり身等の原料と共に赤色の色素を練りこんで着色する方法や、無着色の魚肉シートの片面または両面に赤色の色素を塗布して染色する方法が挙げられる。また、使用する赤色色素は、食品用であるならば特に制限されない。
【0018】
本発明に係る乾燥魚肉シートを粉砕する方法は特に制限がなく、例えばハンマーミル等の粉砕機やパワーミル等の粉砕型造粒機の他、裁断機を用いて微細な裁断をすることで粉体乾燥かまぼこを調製できる。粉体乾燥かまぼこの平均粒径は、細挽きかに肉を連想させる食感を求めると3.0mm以下が好ましく、さらに好ましくは2.0mm以下である。
【0019】
本発明に係る赤色粉体乾燥かまぼこと、白色粉体乾燥かまぼことの混合割合は、細挽きかに肉を連想させる外観を求めると重量比で1対99~10対90が好ましい。さらに好ましくは、重量比で3対97~8対92である。
【0020】
本発明の調味に使用する調味料は、添加する調味料の種類は食品製造で一般的に使用されているものであれば粉末、液体、水溶性、あるいは油溶性であるかも含めて特に制限はない。
【0021】
また、本発明の調味方法は、乾燥魚肉シートを調製する際に魚肉すり身等の原料と一緒に練り込む方法、調製した乾燥前あるいは乾燥後の魚肉シートに吸着させる、あるいはその表面に塗布する方法、乾燥魚肉シートを粉砕して得た粉体乾燥かまぼこと混合する方法がある。調味料を練り込んだり混ぜ合わせたりする場合は既存の混合機あるいは手作業でかき混ぜれば良く、特に制限されない。また、調味料の組み合わせや調味料を添加する順番も特に制限されない。
【0022】
本発明の粉体かに風味かまぼこの水分活性値を0.65以下に調製するにあたり、方法として特に制限はない。例えば、水分活性値が0.65以下となるように水分含有量を調節する方法、水分活性を下げる作用がある調味料を添加する方法が挙げられる。
【0023】
水分活性を下げる作用がある調味料を添加することで本発明の粉体かに風味かまぼこの水分活性値を0.65以下に調製するならば、糖アルコールまたは糖類または食塩などの水分活性を下げる作用のある調味料を用いることが好ましい。例えば食塩、砂糖、みりん、水飴、糖アルコールなどが挙げられる。また、水分活性を下げる作用がある調味料の添加は、本発明におけるいかなる工程においても可能である。水分活性を下げる作用がある調味料は、(0021)で述べた方法で添加することが可能であり、それらの組み合わせや調味料を添加する順番も特に制限されない。
【0024】
以上の工程を経て得られる本発明を実施するための形態に係る粉体かに風味かまぼこは、細挽きかに肉を連想させる食感及び外観を有し、微生物が繁殖しないとされる水分活性0.65以下に調製されているので長期保存が可能である。
【0025】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0026】
本発明に係る粉体かに風味かまぼこの粒径について検討した。
スケソウ鱈等の擂潰肉100重量部、澱粉30重量部、大豆加工品1重量部、食塩4重量部、旨味調味料2重量部、食用油5重量部、ソルビトール20重量部、砂糖15重量部、酵母エキス等3重量部を加えてサイレントカッターで擂潰し混合生地とした。
【0027】
この混合生地をこのまま圧延成形機により厚さが0.5~3mmの薄板状に加熱形成した後、焙焼機で加熱して焼き上げることで得られた魚肉シートを、熱風乾燥機を用いて水分量10%以下に乾燥し、白色乾燥魚肉シートを得た。
【0028】
前記白色乾燥魚肉シートを、丸穴スクリーンサイズが0.5~7mmのパワーミル(不二パウダル株式会社製)を用いて、篩分けによる平均粒径がそれぞれ0.5mm以下、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、4mm、5mmとなるように粉砕し、白色粉体乾燥かまぼこを得た。また、この時の白色粉体乾燥かまぼこの水分含有量は5.3重量%、水分活性は0.36であった。
【0029】
糖アルコール30部、みりん30部、かにエキス5部、香料2部を予め混合した液体調味料を、各粒径別の前記白色粉体乾燥かまぼこ100部に添加し、前記白色粉体乾燥かまぼこが液体調味料を吸収して全体に馴染むまでかき混ぜて混合する。これらに食塩20部、かに風味調味料粉末10部、かに粉末0.5部、旨味調味料粉末18部を予め混合した粉末調味料を各粒径別の前記液体調味料を吸収した白色粉体乾燥かまぼこ167部にそれぞれ添加し、前記液体調味料を吸収した白色粉体乾燥かまぼこと前記混合粉体調味料の全体がなじむように混ぜ合わせる。以上の手順を調味工程とし、平均粒径が0.5mm以下、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mmである、それぞれの粉体かに風味かまぼこを得た。また、得られた6サンプルの水分含有量は9.8~10.5重量%、水分活性は0.44~0.48であった。
【0030】
次に、パネル5名が前記の方法で得られた6サンプルの粉体かに風味かまぼこを食し、食感について官能試験を行った。評価は、細挽きかに肉様の食感が優であれば3点、良であれば2点、可良であれば1点、不可であれば0点とし、それらの平均値で評価した。その結果、白色粉体乾燥かまぼこの平均粒径が1~3mmの時に優れた評価を得た。その結果を表1に示す。
【0031】
他方の混合生地100重量部に紅麹色素4重量部を添加してサイレントカッターで擂潰して混合生地を赤色に着色し、前記白色乾燥魚肉シートと同様に圧延成形機を用いて厚さが0.5~3mmの薄板状に加熱形成した後、焙焼機で加熱して焼き上げ、さらに熱風乾燥機を用いて水分量10%以下に乾燥し、赤色乾燥魚肉シートを得た。
篩分けによる粒径が表1の官能試験で最も評価が高かった平均粒径が1.5mmとなるように、パワーミル(不二パウダル株式会社製)を用いて前記赤色乾燥魚肉シート及び前記白色乾燥魚肉シートを別々に粉砕し、赤色粉体乾燥かまぼこ及び白色粉体乾燥かまぼこを得た。
前記赤色乾燥かまぼこ及び前記白色乾燥かまぼことの混合割合が重量比で1対99、3対97、5対95、8対92、10対90、15対95となるように混合し、赤白粉体乾燥かまぼこ混合物とした。また、この時の赤白粉体乾燥かまぼこ混合物の水分含有量は5.4重量%、水分活性は0.35であった。
前記赤白粉体乾燥かまぼこ混合物を各混合割合別に実施例1と同じ方法で調味を行い、赤色粉体乾燥かまぼこ及び前記白色粉体乾燥かまぼことの混合割合が重量比で1対99、3対97、5対95、8対92、10対90、15対95である粉体かに風味かまぼこを得た。また、得られた6サンプルの水分含有量は9.7~10.5重量%、水分活性は0.44~0.47であった。
得られた各混合割合別の粉体かに風味かまぼこの色味についてパネル5名が官能試験を行った。評価は、細挽きかに肉様の色味として優であれば3点、良であれば2点、可良であれば1点、不可であれば0点とし、それらの平均値で評価した。その結果、前記赤色粉体乾燥かまぼこ及び前記白色粉体乾燥かまぼことの混合割合が重量比で3対97~8対92の時に優れた評価を得た。その結果を表2に示す。