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特開2022-109870Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法
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  • 特開-Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109870
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/00 20210101AFI20220721BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220721BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20220721BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20220721BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20220721BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20220721BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20220721BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20220721BHJP
   C22C 9/00 20060101ALN20220721BHJP
   C22C 28/00 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
B22F3/00 E
B22F1/00 W
B22F1/17 100
B22F3/24 B
C22C33/02 H
H01F41/02 G
H01F1/057 170
C22C38/00 303D
C22C38/00 304
C22C9/00
C22C28/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196606
(22)【出願日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】202110052347.0
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】310005618
【氏名又は名称】煙台東星磁性材料株式有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】楊昆昆
(72)【発明者】
【氏名】王伝申
(72)【発明者】
【氏名】彭衆傑
(72)【発明者】
【氏名】丁開鴻
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K018AA27
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA09
4K018BA18
4K018BA20
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC12
4K018BC22
4K018BD01
4K018CA02
4K018CA04
4K018CA11
4K018CA23
4K018DA32
4K018FA08
4K018KA42
5E040AA04
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB17
5E040NN01
5E040NN06
5E062CD04
5E062CG02
5E062CG03
(57)【要約】
【課題】高い保磁力を有するNd-Fe-B系焼結磁性体の2合金製造方法を提供する。
【解決手段】(ステップ1)主合金粉末となるNd-Fe-B系合金粉末を作成し、(ステップ2)金属Mのナノ粉末をコアとし、前記金属Mの前記粉末の表面にシェルとなるR-H希土類合金の粉末をコーティングしてコアシェル構造を有する補助合金粉末を作成し、前記金属Mの融点>前記R-H希土類合金の融点であり、(ステップ3)前記補助合金粉末を前記Nd-Fe-B系合金粉末に添加して均一に混合した後、磁場配向加圧プレス、焼結処理、時効処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法であって、
(ステップ1)主合金粉末となるNd-Fe-B系合金粉末を作成し、
(ステップ2)金属Mの粉末をコアとし、前記金属Mの前記粉末の表面にシェルとなるR-H希土類合金の粉末をコーティングしてコアシェル構造を有する補助合金粉末を作成し、前記金属Mの融点>前記R-H希土類合金の融点であり、
(ステップ3)前記補助合金粉末を前記Nd-Fe-B系合金粉末に添加して均一に混合した後、磁場配向加圧プレス、焼結処理、時効処理を行う、
ことを特徴とするNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項2】
前記Nd-Fe-B系合金粉末は、さらにRx及び/又はTを含み、RxはPr、La、Ce、Dy、Tb、Hoの内の一つ又は複数の組み合わせであり、TはAl、Cu、Co、Ga、Zr、Nb、Mn、Tiの内の一つ又は複数の組合せである、
ことを特徴とする請求項1に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項3】
前記Nd-Fe-B系合金粉末のNd+Rxの含有量は28重量%~32重量%、Bの含有量は0.8重量%~1.2重量%、Tの含有量は0~5重量%、その他の成分はFeである、
ことを特徴とする請求項2に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項4】
前記Nd-Fe-B系合金粉末の平均粒子径は2~6μmであり、前記金属Mの前記粉末の平均粒子径は5~200nmである、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項5】
前記金属Mは、Mo、W、Zr、Ti、Nbの内の一つ又は複数の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項6】
前記R-H希土類合金のRは、Dy、Tb、Pr、Nd、La、Ceの内の一つ又は複数の組み合わせであり、Hは、Cu、Al、Gaの内の一つ又は複数の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項7】
前記補助合金の平均粒子径は12~250nmであり、前記補助合金の前記コアと前記シェルの体積比は1:1~1:20である、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項8】
前記Nd-Fe-B系合金粉末に対する前記補助合金粉末の添加比率は0.1重量%~5重量%である、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項9】
前記焼結処理の温度は、950℃~1100℃、焼結時間は6~12時間である、
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項10】
前記時効処理は、第1次焼き戻し処理及び第2次焼き戻し処理を含み、前記第1次焼き戻し処理の温度は800℃~900℃、焼き戻し時間は3~15時間であり、前記第2次焼き戻し処理の温度は450℃~650℃、焼き戻し時間は3~10時間である、
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Nd-Fe-B系永久磁性体の製造技術分野に属し、特に高い保磁力を有するNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Nd-Fe-B系永久磁性体は、中国希土類業界において最も注目される応用産業である。科学技術の発展及び進歩に伴い、高性能なNd-Fe-B系永久磁性体に対する需要は日増しに高まっている。Nd-Fe-B系焼結磁性体の保磁力は極めて重要な磁気パラメータであり、且つその組織構造は保磁力に敏感であり、主に磁性体の主相結晶粒子のHA及び主相結晶粒子間の結晶粒界に関係し、主相結晶粒子のHAが大きくなるほど保磁力も強まり、主相結晶粒子間の結晶粒界が広いほど、より連続的となって磁性体の保磁力はさらに強まる。
【0003】
従来の2合金法は、希土類合金からなる補助合金粉末をNd-Fe-B系合金粉末に添加し、その後、磁場配向加圧プレス、焼結及び時効処理を経るものである。この方法は焼結及び時効処理工程中において、補助合金粉末を結晶粒界に拡散及び流動させて硬化したNd-Fe-B系磁性体結晶粒子を作り、結晶粒界の幅を広げて結晶粒界組織を改善することにより、Nd-Fe-B系磁性体の保磁力を向上させるものである。
【0004】
例えば、中国特許CN102237166A公報には、NdFe14B系合金粉末を主合金粉末とし、ジスプロシウム/テルビウム-銅/アルミニウム/ニッケル合金の粉末を補助合金粉末として混合することにより、高残留磁気・高保磁力のNd-Fe-B系磁性体を製造する方法が開示されている。しかしながら、当該2合金法では、焼結工程において同一のNd-Fe-B系主相結晶粒子は結晶粒界相の流動に伴って移動するものの、異なるNd-Fe-B系主相結晶粒子は接触してしまい、結晶粒子が成長し、且つ結晶粒界相の連続性が損なわれ、結晶粒界相の主相結晶粒子による完全な分割を実現することができず、Nd-Fe-B系磁性体の保磁力の増加幅は僅かなものであった。
【0005】
また中国特許CN102237166A公報には、Nd-Fe-B系合金粉末にナノ炭化ケイ素を添加した後、磁場配向成型、焼結及び時効処理を行い、高保磁力のNd-Fe-B系焼結磁性体を製造する技術が開示されている。さらに中国特許CN105321699A公報には、Nd-Fe-B系合金粉末にナノタングステン粉末/ナノ窒化物粉末/タングステンカーバイド粉末又はその混合粉末を添加した後、磁場配向成型、焼結及び時効処理を行い、高保磁力なNd-Fe-B系焼結磁性体を製造する技術が開示されている。
【0006】
上記二つの技術は、いずれも焼結工程において高融点のナノサイズ補助合金粉末を添加し、結晶粒界において支持及びピン打ち効果を奏させ、結晶粒子の異常成長を防止して高残留磁気・高保磁力のNd-Fe-B系磁性体を製造する方法であるが、ナノサイズの補助合金粉末とミクロンサイズのNd-Fe-B系合金粉末とでは、大きさの差が著しく、且つナノサイズ粉末の凝集が深刻であるため、Nd-Fe-B系合金粉末との均一な混合が困難となり、製造されたNd-Fe-B系磁性体内部の補助合金成分の分布は不均一で、磁気特性の偏りが大きくなる。また、高融点のナノサイズ補助合金粉末のリッチ化により結晶粒界が拡大する一方、新たな結晶粒界相が追加されないため、結晶粒界に空洞が形成され易くなり、Nd-Fe-B系磁性体の耐食性及び力学的特性が悪化してしまうという欠陥があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許CN102237166A公報
【特許文献2】中国特許CN102237166A公報
【特許文献3】中国特許CN105321699A公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、Nd-Fe-B系磁性体の内部に均一且つ連続した網状結晶粒界相構造を形成し難く、保磁力の向上幅が小さい従来の2合金法の課題を解決するものであって、コアシェル構造を有する補助合金をNd-Fe-B系粉末に添加することによって高い保磁力を有するNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本願発明は、Nd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法であって、
(ステップ1)主合金粉末となるNd-Fe-B系合金粉末を作成し、
(ステップ2)金属Mの粉末をコアとし、前記金属Mの前記粉末の表面にシェルとなるR-H希土類合金の粉末をコーティングしてコアシェル構造を有する補助合金粉末を作成し、前記金属Mの融点>前記R-H希土類合金の融点であり、
(ステップ3)前記補助合金粉末を前記Nd-Fe-B系合金粉末に添加して均一に混合した後、磁場配向加圧プレス、焼結処理、時効処理を行う、
ことを特徴とする。
【0010】
前記Nd-Fe-B系合金粉末は、さらにRx及び/又はTを含み、RxはPr、La、Ce、Dy、Tb、Hoの内の一つ又は複数の組み合わせであり、TはAl、Cu、Co、Ga、Zr、Nb、Mn、Tiの内の一つ又は複数の組合せである、ことを特徴とする。
【0011】
前記Nd-Fe-B系合金粉末のNd+Rxの含有量は28重量%~32重量%、Bの含有量は0.8重量%~1.2重量%、Tの含有量は0~5重量%、その他の成分はFeである、ことを特徴とする。
【0012】
前記Nd-Fe-B系合金粉末の平均粒子径は2~6μm、前記金属Mの前記粉末の平均粒子径は5~200nmである、ことを特徴とする。
【0013】
前記金属Mは、Mo、W、Zr、Ti、Nbの内の一つ又は複数の組み合わせである、ことを特徴とする。
【0014】
前記R-H希土類合金のRは、Dy、Tb、Pr、Nd、La、Ceの内の一つ又は複数の組み合わせであり、Hは、Cu、Al、Gaの内の一つ又は複数の組み合わせである、ことを特徴とする。
【0015】
前面の前記補助合金の平均粒子径は12~250nmであり、前記補助合金の前記コアと前記シェルの体積比は1:1~1:20である、ことを特徴とする。
【0016】
前記Nd-Fe-B系合金粉末に対する前記補助合金粉末の添加比率は0.1重量%~5重量%である、ことを特徴とする。
【0017】
前記焼結処理の温度は、950℃~1100℃、焼結時間は6~12時間である、ことを特徴とする。
【0018】
前記時効処理は、第1次焼き戻し処理及び第2次焼き戻し処理を含み、前記第1次焼き戻し処理の温度は800℃~900℃、焼き戻し時間は3~15時間であり、前記第2次焼き戻し処理の温度は450℃~650℃、焼き戻し時間は3~10時間である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コアシェル構造を有する補助合金粉末をNd-Fe-B系粉末に添加し、焼結工程において、シェルより高融点の金属Mナノ粉末をコアとして用い、焼結工程における異なる主相結晶粒子間の接触と成長を阻止するための支持点とするとともに、更に結晶粒界での金属Mナノ粉末の支持は、焼結及び時効工程の際に、結晶粒界での補助合金粉末の希土類合金シェル層の溶融物の流動および拡散を促進し、粒子境界相を広げ、Nd-Fe-B系磁性体の結晶粒子を硬化させることにより、従来の非コアシェル構造の補助合金粉末を添加する方法で製造されたとNd-Fe-B系磁性体と対比して、その保磁力を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】コアシェル構造を有する補助合金粉末材料の断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明の実施形態について詳細に説明する。下記実施例は、本発明の解釈のみに用いるものであり、本願発明に係る構成を限定するものではない。
【0022】
<実施例1>
(1)製錬法によって(PrNd)32CoAl0.38Cu0.1Ti0.151.0Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径2μmの主合金粉末を作成した。
【0023】
(2)平均粒子径5nmのMo粉末をコア材料とし、Mo粉末表面に真空蒸着法によってシェル材料となるDy70Cu30合金粉末をコーティングし、図1に示すコアシェル構造を有する補助合金粉末を作成した。補助合金の平均粒子径は12nmであり、コアとシェル層の体積比は1:10である。補助合金粉末を主合金粉末に対して0.5重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。なお、Moの融点>Dy70Cu30合金の融点である。
【0024】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0025】
(4)真空環境下において、素地を950℃で12時間焼結した。続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、実施例1となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0026】
<比較例1>
(1)製錬法によって(PrNd)32CoAl0.38Cu0.1Ti0.151.0Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径2μmの主合金粉末を作成した。
【0027】
(2)実施例1の補助合金粉末と平均粒子径が同じDy70Cu30合金粉末を、そのまま補助合金粉末(非コアシェル構造)とした。補助合金粉末を主合金粉末に対して0.5重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。
【0028】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0029】
(4)真空環境下において、素地を950℃で12時間焼結した。続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、比較例1となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0030】
比較例1で使用した補助合金粉末は従来の非シェル構造であり、実施例1で使用した補助合金粉末は本発明のコアシェル構造を有する補助合金粉末である。実施例1及び比較例1として作成した各Nd-Fe-B系磁性体の磁気特性を測定した(温度20℃±3℃)。その測定結果を表1に示す。
【0031】
<表1>
【0032】
表1に示すとおり、コアシェル構造を有するDy70Cu30補助合金粉末を主合金粉末に添加して作成した実施例1のNd-Fe-B系磁性体は、比較例1であるDy70Cu30補助合金粉末を主合金粉末に添加したNd-Fe-B系磁性体に対し、その保磁力Hcjは2.49kOe向上しており、顕著な保磁力増強効果を奏することが分かる。
【0033】
<実施例2>
(1)製錬方によってNd30Co0.9Al0.75Cu0.1Ti0.150.9Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径4μmの主合金粉末を作成した。
【0034】
(2)平均粒子径50nmのW粉末をコア材料とし、W粉末表面に真空蒸着法によってシェル材料となるPr60Nd10Al20Cu10合金粉末をコーティングし、コアシェル構造を有する補助合金粉末を作成した。補助合金の平均粒子径は140nmであり、コアとシェル層の体積比は1:20である。補助合金粉末を主合金粉末に対して5重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。なお、Wの融点>Pr60Nd10Al20Cu10合金の融点である。
【0035】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0036】
(4)真空環境下において、素地を1000℃で10時間焼結し、続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、実施例2となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0037】
<比較例2>
(1)製錬法によってNd30Co0.9Al0.75Cu0.1Ti0.150.9Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径4μmの主合金粉末を作成した。
【0038】
(2)実施例2の補助合金粉末と平均粒子径が同じPr60Nd10Al20Cu10合金粉末をそのまま補助合金粉末(非コアシェル構造)とした。補助合金粉末を主合金粉末に対して5重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。
【0039】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0040】
(4)真空環境下において、素地を1000℃で10時間焼結し、続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、比較例2となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0041】
比較例2で使用した補助合金粉末は従来の非コアシェル構造であり、実施例2で使用した補助合金粉末は本発明のコアシェル構造を有する補助合金粉末である。実施例2及び比較例2として作成した各Nd-Fe-B系磁性体の磁気特性を測定した(温度20℃±3℃)。その測定結果を表2に示す。
【0042】
<表2>
【0043】
表2に示すとおり、コアシェル構造を有するPr60Nd10Al20Cu10補助合金粉末を主合金粉末に添加して作成した実施例2のNd-Fe-B系磁性体は、比較例2のPr60Nd10Al20Cu10補助合金粉末を添加したNd-Fe-B系磁性体に対し、その保磁力Hcjは2.80kOe向上しており、顕著な保磁力増強効果を奏することが分かる。
【0044】
<実施例3>
(1)製錬法によって(PrNd)29.5CoGa0.2Cu0.1Ti0.151.0Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径4μmの主合金粉末を作成した。
【0045】
(2)平均粒子径100nmのNb粉末をコア材料とし、Nb粉末表面に真空蒸着法によってシェル材料となるPr65Dy20Ga15合金粉末をコーティングし、コアシェル構造を有する補助合金粉末を作成した。補助合金の平均粒子径は180nmであり、コアとシェル層の体積比は1:5である。補助合金粉末を主合金粉末に対して1重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。なお、Nbの融点>Pr65Dy20Ga15合金の融点である。
【0046】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0047】
(4)真空環境下において、素地を1100℃で6時間焼結し、続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、実施例3となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0048】
<比較例3>
(1)製錬法によって(PrNd)29.5CoGa0.2Cu0.1Ti0.151.0Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径4μmの主合金粉末を作成した。
【0049】
(2)実施例3の補助合金粉末と平均粒子径が同じPr65Dy20Ga15合金粉末をそのまま補助合金粉末(非コアシェル構造)とした。補助合金粉末を主合金粉末に対し1重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。
【0050】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0051】
(4)真空環境下において、素地を1100℃で6時間焼結し、続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、比較例3となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0052】
比較例3で使用した補助合金粉末は従来の非コアシェル構造であり、実施例3で使用した補助合金粉末は本発明のコアシェル構造を有する補助合金粉末である。実施例3及び比較例3として作成した各Nd-Fe-B系磁性体の磁気特性を測定した(温度20℃±3℃)。その測定結果を表3に示す。
【0053】
<表3>
【0054】
表3に示すとおり、コアシェル構造を有するPr65Dy20Ga15補助合金粉末を主合金粉末に添加して作成した実施例3のNd-Fe-B系磁性体は、比較例3のPr65Dy20Ga15補助合金粉末を添加したNd-Fe-B系磁性体に対し、その保磁力Hcjは2.10kOe向上しており、顕著な保磁力増強効果を奏することが分かる。
【0055】
<実施例4>
(1)製錬法によって(PrNd)31CoTb1.1Al0.2Ga0.3Cu0.1Ti0.151.0Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径6μmの主合金粉末を作成した。
【0056】
(2)平均粒子径200nmのZr粉末をコア材料とし、Zr粉末表面に真空蒸着法によってシェル材料となるNd80Al10Ga10合金粉末をコーティングし、コアシェル構造を有する補助合金粉末を作成した。補助合金の平均粒子径は250nmであり、コアとシェル層の体積比は1:1である。補助合金粉末を主合金粉末に対し4重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。なお、Zrの融点>Nd80Al10Ga10合金の融点である。
【0057】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0058】
(4)真空環境下において、素地を1000℃で10時間焼結し、続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、実施例4となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0059】
<比較例4>
(1)製錬法によって(PrNd)31CoTb1.1Al0.2Ga0.3Cu0.1Ti0.151.0Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径6μmの主合金粉末を作成した。
【0060】
(2)実施例4の補助合金粉末と平均粒子径が同じNd80Al10Ga10合金粉末をそのまま補助合金粉末(非コアシェル構造)とした。補助合金粉末を主合金粉末に対し4重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。
【0061】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0062】
(4)真空環境下において、素地を1000℃で6時間焼結し、続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、比較例4となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0063】
比較例4で使用した補助合金粉末は従来の非コアシェル構造であり、実施例4で使用した補助合金粉末は本発明のコアシェル構造を有する補助合金粉末である。実施例4及び比較例4として作成した各Nd-Fe-B系磁性体の磁気特性を測定した(温度20℃±3℃)。その測定結果を表4に示す。
【0064】
<表4>
【0065】
表4に示すとおり、コアシェル構造を有するNd80Al10Ga10補助合金粉末を主合金粉末に添加して作成した実施例4のNd-Fe-B系磁性体は、比較例4のNd80Al10Ga10補助合金粉末を添加したNd-Fe-B系磁性体に対し、その保磁力Hcjは2.60kOe向上しており、顕著な保磁力増強効果を奏することが分かる。
【0066】
<実施例5>
(1)製錬法によって(PrNd)31CoDy0.5Al0.1Ga0.25Cu0.1Hо0.10.9Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径5μmの主合金粉末を作成した。
【0067】
(2)平均粒子径200nmのW粉末をコア材料とし、W粉末の表面に真空蒸着法によってシェル材料となるCe40Cu60合金粉末をコーティングし、コアシェル構造を有する補助合金粉末を作成した。補助合金の平均粒子径は45nmであり、コアとシェル層の体積比は1:10である。補助合金粉末を主合金粉末に対して0.1重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。なお、Wの融点>Ce40Cu60合金の融点である。
【0068】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0069】
(4)真空環境下において、素地を1000℃で10時間焼結し、続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、実施例5となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0070】
<比較例5>
(1)製錬法によって(PrNd)31CoDy0.5Al0.1Ga0.25Cu0.1Hо0.10.9Febalからなるストリップキャスト薄片を作成した。その後、水素粉砕し、ジェットミルを用いて更に粉砕し、平均粒子径5μmの主合金粉末を作成した。
【0071】
(2)実施例5の補助合金粉末と平均粒子径が同じCe40Cu60合金粉末をそのまま補助合金粉末(非コアシェル構造)とした。補助合金粉末を主合金粉末に対し0.1重量%の割合で添加し、主合金粉末と補助合金粉末を均一に混合した。
【0072】
(3)均一に混合した主合金粉末及び補助合金粉末を1.8Tの磁場で配向して成型し、続いて180MPaで冷間等静圧プレスして素地を作成した。
【0073】
(4)真空環境下において、素地を1000℃で10時間焼結し、続いて第1次焼き戻しを850℃で6時間行い、第2次焼き戻しを500℃で5時間行って、比較例5となるNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0074】
比較例5で使用した補助合金粉末は従来の非コアシェル構造であり、実施例5で使用した補助合金粉末は本発明のコアシェル構造を有する補助合金粉末である。実施例5及び比較例5として作成した各Nd-Fe-B系磁性体の磁気特性を測定した(温度20℃±3℃)。その測定結果を表5に示す。
【0075】
<表5>
【0076】
表5に示すとおり、コアシェル構造を有するCe40Cu60補助合金粉末を主合金粉末に添加して作成した実施例5のNd-Fe-B系磁性体は、比較例5のCe40Cu60補助合金粉末を添加したNd-Fe-B系磁性体に対し、その保磁力Hcjは1.60kOe向上しており、顕著な保磁力増強効果を奏することが分かる。
【0077】
以上説明した各実施例は、いずれも本発明の好ましい実施形態の一例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の技術思想の範囲内で行われる修正、同等の置換、改良等は、全て本発明の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0078】
1 補助合金粉末
2 コア材料
3 シェル材料
図1