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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109877
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/037 20060101AFI20220721BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220721BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220721BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20220721BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220721BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G03F7/037
G03F7/027 502
G03F7/004 501
C08F2/50
C08G73/10
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206454
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021005200
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆信
(72)【発明者】
【氏名】宮仲 健人
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J011
4J043
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA05
2H197CE01
2H197HA03
2H197JA22
2H225AC33
2H225AC35
2H225AC64
2H225AD06
2H225AE06P
2H225AM77P
2H225AM92P
2H225AM99P
2H225AN33P
2H225AN54P
2H225AN71P
2H225AN82P
2H225BA05P
2H225BA11P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J011PA43
4J011PA47
4J011PA86
4J011PA97
4J011PB30
4J011PB40
4J011QA13
4J011QA23
4J011QA24
4J011RA10
4J011SA61
4J011SA65
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J043PA04
4J043PA08
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA54
4J043SA62
4J043TA03
4J043TA22
4J043UA131
4J043UA142
4J043UA672
4J043UB011
4J043UB172
4J043UB401
4J043XA16
4J043YA06
4J043ZB22
(57)【要約】
【課題】限界解像性に優れ、現像時膜厚減少が少なく、熱膨張係数が低く、伸び率は高く、反り量が抑制され、さらに誘電特性に優れる硬化物を得ることができるネガ型感光性組成物等の提供。
【解決手段】(A)分子内にヒドロキシカルボニル基を有するポリイミド樹脂、(B)光ラジカル発生剤、及び(C)2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物、を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内にヒドロキシカルボニル基を有するポリイミド樹脂、
(B)光ラジカル発生剤、及び
(C)2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物、を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)増感剤を含有する、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分が、下記一般式(C-1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(C-1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表し、Zは、それぞれ独立に、酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子を含んでもよいアリーレン基、又はプロペニレン基を表し、Aは、炭素原子数1~10の直鎖状、環状もしくは分岐状のnc価の炭化水素基、ビスフェノールに由来するnc価の基、フルオレンに由来するnc価の基、トリシクロデカンに由来nc価の基、又はイソシアヌル基に由来するnc価の基を表す。ncは2~6の正の整数を示す。)
【請求項4】
(C)成分が、下記一般式(C-2)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(C-2)中、R12は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。)
【請求項5】
(E)密着助剤を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(F)2以上のエポキシ基を有する化合物を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(A)成分が、下記一般式(A-1)で表される構造単位、及び下記一般式(A-2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化3】
(式(A-1)、式(A-2)中、Xは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数7~20のアリーレン基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、Y、Yは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、トリメチルシリルオキシ基、又はヒドロキシ基を表す。m、nはその合計が90から100となる任意の正の整数である。)
【請求項8】
(A)成分が、一般式(A-1)で表される構造単位、及び一般式(A-2)で表される構造単位を含む共重合体を含有し、一般式(A-1)で表される構造単位、及び一般式(A-2)で表される構造単位の共重合比率(一般式(A-1)で表される構造単位m/一般式(A-2)で表される構造単位n)が、5/95以上50/50以下である、請求項7に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
(A)成分が、下記一般式(A-3)で表される構造単位、及び下記一般式(A-4)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化4】
(式(A-3)、(A-4)中、m1、n1はその合計が90から100となる任意の正の整数である。)
【請求項10】
(A)成分が、一般式(A-3)で表される構造単位、及び一般式(A-4)で表される構造単位を含む共重合体を含有し、一般式(A-3)で表される構造単位、及び一般式(A-4)で表される構造単位の共重合比率(一般式(A-3)で表される構造単位m1/一般式(A-4)で表される構造単位n1)が、5/95以上50/50以下である、請求項9に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む半導体パッケージ基板。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体パッケージ基板を含む、半導体装置。
【請求項13】
回路基板上に、請求項1~10のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程と、
感光性樹脂組成物層を現像する工程と、を含む、半導体パッケージ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物に関する。さらには、当該ネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる、半導体パッケージ基板、半導体装置、及び半導体パッケージ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には、優れた耐熱性と絶縁特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。例えば、特許文献1では、ポリイミド前駆体にエステル結合を導入する方法、光重合性オレフィンを有する可溶性ポリイミド、ベンゾフェノン骨格を有し、かつ窒素原子が結合する芳香環のオルソ位にアルキル基を有する自己増感型ポリイミドなどが記載されている。
【0003】
また、最近ではアルカリ水溶液で現像ができるポジ型の感光性樹脂の提案がなされている。このような樹脂として、例えば、特許文献2にはポジ型では可溶性ポリベンゾオキサゾール前駆体が記載されており、特許文献3には、ヒドロキシフェニル基置換イミドにナフトキノンジアジド化合物を混合する方法、可溶性ポリイミドにエステル結合を介しナフトキノンジアジドを導入する方法などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-197863号公報
【特許文献2】特開2011-128358号公報
【特許文献3】国際公開第2010/047271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年通信機器における通信の高速化、大容量化に伴い、通信機器の半導体パッケージ基板に使用される感光性樹脂組成物においても、硬化物の誘電率が低く且つ誘電損失が低いという、優れた誘電特性が求められてきている。また、パッケージの再配線に使用される積層数も2層から4層、5層へと多数積層化が求められることから、積層基板の反りを抑制するための感光性樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数(CTE)を低くし、さらにはパッケージ自体の機械的強度、信頼性、衝撃耐性を増すための高い引っ張り強度(伸び率)と高い弾性率が要求される。
【0006】
特許文献1~3に記載された感光性樹脂組成物は、5G通信用途に要求される低誘電率、低誘電損失の特性が満足できるものではなく、さらにパッケージの多層膜製造時や、熱や衝撃などによって生じた応力により基板に反りが生じることがある。
【0007】
また、特許文献1のネガ型感光性ポリイミドでは、現像液に有機溶剤を使用する必要があり、半導体パッケージ製造時の環境負荷が大きい上、感光性組成物樹脂がポリイミド前駆体であるため、イミド化に必要な硬化温度が250℃以上必要であり、また得られる機械的物性や誘電特性も、不完全なイミド化により、硬化後のフィルムの性能は十分なものとは言えない。
【0008】
特許文献2、3は、アルカリ水溶液での現像性能を確保するためにヒドロキシフェニル基を導入する必要があるが、これにより誘電特性、機械的特性の劣化が避けられない。また、絶縁層パターン形成時の解像力、パターン形状、ポジ型特有の現像時の膜厚減少なども満足できるものではない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、アルカリ水溶液現像により、絶縁層を適切なパターン形状で形成することが可能、即ち限界解像性や現像時の残膜性に優れ、熱膨張係数が低く、伸び率は高く、反り量が抑制され、さらに誘電特性に優れる硬化物を得ることができるネガ型感光性樹脂組成物、当該ネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる、半導体パッケージ基板、半導体装置、及び半導体パッケージ基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、ネガ型感光性樹脂組成物に特定のポリイミド樹脂、光ラジカル発生剤及び2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有させることで上記課題が達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)分子内にヒドロキシカルボニル基を有するポリイミド樹脂、
(B)光ラジカル発生剤、及び
(C)2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物、を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
[2] (D)増感剤を含有する、[1]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[3] (C)成分が、下記一般式(C-1)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(C-1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表し、Zは、それぞれ独立に、酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子を含んでもよいアリーレン基、又はプロペニレン基を表し、Aは、炭素原子数1~10の直鎖状、環状もしくは分岐状のnc価の炭化水素基、ビスフェノールに由来するnc価の基、フルオレンに由来するnc価の基、トリシクロデカンに由来nc価の基、又はイソシアヌル基に由来するnc価の基を表す。ncは2~6の正の整数を示す。)
[4] (C)成分が、下記一般式(C-2)で表される化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(C-2)中、R12は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。)
[5] (E)密着助剤を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[6] (F)2以上のエポキシ基を有する化合物を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[7] (A)成分が、下記一般式(A-1)で表される構造単位、及び下記一般式(A-2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化3】
(式(A-1)、式(A-2)中、Xは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数7~20のアリーレン基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、Y、Yは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、トリメチルシリルオキシ基、又はヒドロキシ基を表す。m、nはその合計が90から100となる任意の正の整数である。)
[8] (A)成分が、一般式(A-1)で表される構造単位、及び一般式(A-2)で表される構造単位を含む共重合体を含有し、一般式(A-1)で表される構造単位、及び一般式(A-2)で表される構造単位の共重合比率(一般式(A-1)で表される構造単位m/一般式(A-2)で表される構造単位n)が、5/95以上50/50以下である、[7]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[9] (A)成分が、下記一般式(A-3)で表される構造単位、及び下記一般式(A-4)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂を含む、[1]~[8]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化4】
(式(A-3)、(A-4)中、m1、n1はその合計が90から100となる任意の正の整数である。)
[10] (A)成分が、一般式(A-3)で表される構造単位、及び一般式(A-4)で表される構造単位を含む共重合体を含有し、一般式(A-3)で表される構造単位、及び一般式(A-4)で表される構造単位の共重合比率(一般式(A-3)で表される構造単位m1/一般式(A-4)で表される構造単位n1)が、5/95以上50/50以下である、[9]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む半導体パッケージ基板。
[12] [11]に記載の半導体パッケージ基板を含む、半導体装置。
[13] 回路基板上に、[1]~[10]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程と、
感光性樹脂組成物層を現像する工程と、を含む、半導体パッケージ基板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、限界解像性に優れ、現像時膜厚減少が少なく、熱膨張係数が低く、伸び率は高く、反り量が抑制され、さらに誘電特性に優れる硬化物を得ることができるネガ型感光性樹脂組成物、当該ネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる、半導体パッケージ基板、半導体装置、及び半導体パッケージ基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のネガ型感光性樹脂組成物、当該ネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる、半導体パッケージ基板、半導体装置、及び半導体パッケージ基板の製造方法ついて詳細に説明する。
【0014】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
ネガ型感光性樹脂組成物は、(A)分子内にヒドロキシカルボニル基を有するポリイミド樹脂、(B)光ラジカル発生剤、及び(C)2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する。(A)~(C)成分を組み合わせてネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、熱膨張係数を低くして反りを抑制し、伸び率を向上させて機械的強度を向上することをバランスよく達成した硬化物を得ることできる。また、誘電特性に優れる硬化物を得ることもできる。さらに、このネガ型感光性樹脂組成物は、限界解像性に優れ、現像時の膜厚減少も少ない。
【0015】
ネガ型感光性樹脂組成物は、(A)~(C)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(D)増感剤、(E)密着助剤、(F)2以上のエポキシ基を有する化合物、(G)溶剤、及び(H)その他の添加剤等が挙げられる。以下、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0016】
<(A)分子内にヒドロキシカルボニル基を有するポリイミド樹脂>
ネガ型感光性樹脂組成物は、(A)成分として、分子内にヒドロキシカルボニル基を有するポリイミド樹脂を含有する。(A)成分をネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで限界解像性に優れ、熱膨張係数が低く、伸び率は高く、反り量が抑制され、さらに誘電特性に優れる硬化物を得ることができる。(A)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
(A)成分は、ヒドロキシカルボニル基を有し、且つ、複数のイミド構造を有する樹脂を用いることができる。ヒドロキシカルボニル基は、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A)成分分子1つあたり1つ以上有することが好ましく、2つ以上有することがさらに好ましい。また、上限としては、4つ以下有することが好ましい。ヒドロキシカルボニル基は、(A)成分分子に含まれる芳香環と結合していることが好ましい。また、ヒドロキシカルボニル基は(A)成分の末端に有していてもよい。
【0018】
(A)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、以下の構造単位(1)を有することが好ましい。
【化5】
(式中、A及びAは、それぞれ独立に3価の炭化水素基を表し、A及びAは、それぞれ独立にアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、酸素原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。)
【0019】
及びAは、それぞれ独立に3価の炭化水素基を表す。3価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状、もしくはそれらを組み合わせたものが挙げられる。3価の炭化水素基の炭素原子数は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。3価の炭化水素基としては、3価の脂肪族炭化水素基、3価の芳香族炭化水素基、3価の脂環式炭化水素基が挙げられる。3価の炭化水素基としては、例えば、以下の構造で表される基が挙げられる。
【化6】
式中、*は結合手を表す。
【0020】
及びAは、それぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、酸素原子、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。アルキレン基の炭素原子数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3である。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。アリーレン基の炭素原子数としては、好ましくは6~20、より好ましくは6~15、さらに好ましくは6~10である。アリーレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基(-C-C-)等が挙げられ、中でもフェニレン基が好ましい。
【0021】
これらの組み合わせからなる2価の基としては、アリーレン基、カルボニル基、及び酸素原子の組み合わせからなる基が好ましい。このような2価の基としては、例えば以下の構造で表される2価の基が挙げられる。
【化7】
*は結合手を表す。
【0022】
及びAが表す3価の炭化水素基、並びにAが表すアルキレン基、アリーレン基及びこれらの組み合わせからなる2価の基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1~10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素原子数1~10のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン原子置換アルキル基等が挙げられる。上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。置換基は、単独で含んでいても、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0023】
(A)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、下記一般式(A-1)で表される構造単位、及び下記一般式(A-2)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂を含むことが好ましい。
【化8】
(式(A-1)、式(A-2)中、Xは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数7~20のアリーレン基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、Y、Yは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、トリフルオロメチル基、トリメチルシリルオキシ基、又はヒドロキシ基を表す。m、nはその合計が90から100となる任意の正の整数である。)
【0024】
Xは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数6~20のアリーレン基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。
【0025】
アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3である。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
【0026】
アリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6~15、より好ましくは6~10、さらに好ましくは6である。アリーレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基(-C-C-)等が挙げられる。
【0027】
これらの組み合わせからなる2価の基としては、例えば、エステル結合と炭素原子数1~20のアルキレン基との組み合わせからなる2価の基、エステル結合と炭素原子数6~20のアリーレン基との組み合わせからなる2価の基、等が挙げられる。このような基としては、例えば、カルボニルオキシメチレン基、カルボニルオキシエチレン基、カルボニルオキシプロピレン基、カルボニルオキシフェニレン基、カルボニルオキシナフチレン基、カルボニルオキシビフェニレン基等が挙げられる。
【0028】
これらの中でもXとしては単結合を表すことが好ましい。
【0029】
、Yは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、トリメチル基、トリフルオロメチル基、トリメチルオキシ基、又はヒドロキシ基を表し、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0030】
m、nはその合計が90から100となる任意の正の整数である。mとしては、好ましく5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下である。nとしては、好ましくは40以上、より好ましくは50以上、さらに好ましくは60以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下である。
【0031】
(A)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-1)で表される構造単位と(A-2)で表される構造単位とを含む共重合体を含有することが好ましい。一般式(A-1)で表される構造単位、及び一般式(A-2)で表される構造単位の共重合比率(一般式(A-1)で表される構造単位m/一般式(A-2)で表される構造単位n)としては、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、さらに好ましくは15/85以上であり、好ましくは50/50以下、さらに好ましくは40/60以下、より好ましくは30/70以下である。
【0032】
(A)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、下記一般式(A-3)で表される構造単位、及び下記一般式(A-4)で表される構造単位を有するポリイミド樹脂を含むことが好ましい。
【化9】

式(A-3)、(A-4)中、m1、n1は合計が90から100となる任意の正の整数である。
【0033】
m1は、式(A-1)中のmと同じである。また、n1は、式(A-2)中のnと同じである。
【0034】
(A)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-3)で表される構造単位と(A-4)で表される構造単位とを含む共重合体を含有することが好ましい。一般式(A-3)で表される構造単位、及び一般式(A-4)で表される構造単位の共重合比率(一般式(A-3)で表される構造単位m1/一般式(A-4)で表される構造単位n1)としては、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、さらに好ましくは15/85以上であり、好ましくは50/50以下、さらに好ましくは40/60以下、より好ましくは30/70以下である。
【0035】
(A)成分の重量平均分子量としては、現像液溶解性や硬化膜の物性の観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、さらに好ましくは4万以上であり、好ましくは50万以下、より好ましくは20万以下、さらに好ましくは10万以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0036】
(A)成分は、例えば、アミド酸をイミド化反応によりポリイミドを合成し、ポリイミドをカルボン酸等のヒドロキシカルボニル基を有する化合物を共重合反応させることにより合成することができる。
【0037】
(A)成分の含有量としては、限界解像性と硬化膜の物性の観点から、ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは93質量%以下である。なお、本発明において、ネガ型感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、ネガ型感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0038】
<(B)光ラジカル発生剤>
ネガ型感光性樹脂組成物は、(B)成分として、光ラジカル発生剤を含有する。(B)成分は、活性光線の照射を受けてラジカルを生じ、ネガ型感光性樹脂組成物中において、ラジカルによる架橋反応等が生じた部分はアルカリ溶液に溶解しない。よって、現像時に、架橋反応が進行した部分以外において感光性樹脂組成物を選択的に除去することが可能となり、ネガ型のパターンを有利に形成することができる。(B)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
(B)成分としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体;1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム等のオキシム類;N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類;ベンゾイルパークロライド等の過酸化物類;芳香族ビイミダゾール類;チタノセン類;α-(n-オクタンスルフォニルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニド;等が挙げられる。中でも、(B)成分としては、光感度の観点でオキシム類が好ましい。
【0040】
(B)成分の含有量としては、光感度又はパターニング性を向上させ、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化後の感光性樹脂組成物層の物性を向上させる観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0041】
(B)成分の含有量としては、光感度又はパターニング性を向上させ、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化後の感光性樹脂組成物層の物性を向上させる観点から、ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0042】
ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、(B)成分の含有量をb1とし、(A)成分の含有量をa1としたとき、a1/b1としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上であり、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは45以下である。
【0043】
<(C)2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物>
ネガ型感光性樹脂組成物は、(C)成分として、2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する。活性光線の照射を受けて光ラジカル発生剤からラジカルが生じると、(C)成分の架橋反応等が生じてアルカリ溶液に溶解しなくなる。よって、現像時に、架橋反応が進行した部分以外において感光性樹脂組成物を選択的に除去することが可能となり、ネガ型のパターンを有利に形成することができる。(C)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
(C)成分としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を用いることができる。エチレン性不飽和結合は、炭素-炭素二重結合を有し、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、光ラジカル重合の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基、アクリロイル基及びこれらの組み合わせを包含する。(C)成分は、エチレン性不飽和基を含むため、光ラジカル重合が可能である。(C)成分の1分子当たりのエチレン性不飽和基の数は、好ましくは1つ以上、より好ましくは2つ以上である。また、(C)成分が1分子当たり2個以上のエチレン性不飽和基を含む場合、それらのエチレン性不飽和基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0045】
(C)成分としては、エチレン性不飽和結合を有していれば特に限定はされないが、下記一般式(C-1)で表される化合物が好ましい。
【化10】
(式(C-1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表し、Zは、それぞれ独立に、酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子を含んでもよいアリーレン基、又はプロペニレン基を表し、Aは、炭素原子数1~10の直鎖状、環状もしくは分岐状のnc価の炭化水素基、ビスフェノールに由来するnc価の基、フルオレンに由来するnc価の基、トリシクロデカンに由来nc価の基、又はイソシアヌル基に由来するnc価の基を表す。ncは2~6の正の整数を示す。)
【0046】
は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。中でも、Rとしては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0047】
Zは、それぞれ独立に、酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子を含んでもよいアリーレン基、又はプロペニレン基を表す。炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基がより好ましい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられる。また、アルキレン基は酸素原子を含むオキシアルキレン基でもよく、このような基の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。式中、「*」は結合手を表し、aは1~23の整数を表す。
【化11】
【0048】
酸素原子を含んでもよいアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~15のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。また、アリーレン基は酸素原子を含んでいてもよく、このような基の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。式中、「*」は結合手を表し、aは1~23の整数を表す。
【化12】
【0049】
中でも、Zとしては、酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましく、オキシアルキレン基がより好ましい。
【0050】
Aは、炭素原子数1~10の直鎖状、環状もしくは分岐状のnc価の炭化水素基、ビスフェノールに由来するnc価の基、フルオレンに由来するnc価の基、トリシクロデカンに由来nc価の基、又はイソシアヌル基に由来するnc価の基を表す。nc価の炭化水素基とはては、nc価の脂肪族炭化水素基、nc価の芳香族炭化水素基が挙げられ、nc価の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えばncが2の場合、アルキレン基が好ましい。Aが表す基の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。式中、「*」は結合手を表す。
【化13】
【0051】
ncは2~6の正の整数を示し、好ましくは2~5の正の整数を示し、より好ましくは2~4の正の整数を示し、さらに好ましくは2又は3を示す。
【0052】
(C)成分としては、下記一般式(C-2)で表される化合物が好ましい。
【化14】
(式(C-2)中、R12は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。)
【0053】
12は、水素原子、メチル基を表し、メチル基が好ましい。
【0054】
(C)成分の具体例としては、以下の(CL-1)~(CL-10)の化合物を挙げることができる。
【化15】
【化16】
【0055】
(C)成分は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、新中村化学社製のNKエステル‐4G,9G,14G,23G,DCP等が挙げられる。
【0056】
(C)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0057】
(C)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0058】
ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、(C)成分の含有量をc1とし、(A)成分の含有量をa1としたとき、a1/c1としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。
【0059】
<(D)増感剤>
ネガ型感光性樹脂組成物は、任意の成分として、(D)増感剤を含有していてもよい。(D)増感剤を含有することで、ネガ型感光性樹脂組成物の光感度を向上させることが可能となる。(D)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
(D)成分は、ネガ型感光性樹脂組成物の光感度を向上させることが可能な化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-モルホリノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等の環状アルカン類;4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン等のカルコン類;p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン等のインダノン類;2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール等のチアゾール類;1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン等のアセトン類;3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン等のクマリン類;N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン類;2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、1-p-ヒドロキシフェニル-5-メルカプトテトラゾール等の複素環類;2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン等のスチレン類が挙げられる。
【0061】
中でも、(D)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、複素環類が好ましく、下記一般式(D-1)で表される化合物がより好ましい。
【化17】
(式(D-1)中、Rは、水素原子、炭素原子数1~7の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、又はt-ブトキシ基を表す。)
【0062】
は、水素原子、炭素原子数1~7の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、又はt-ブトキシ基を表す。炭素原子数1~7の直鎖状もしくは分岐状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基等が挙げられる。中でも、Rとしては、酸素原子を有するヒドロキシ基、メトキシ基、又はt-ブトキシ基を表すことが好ましく、水素原子、ヒドロキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0063】
の結合位置としては、メルカプトテトラゾールの窒素原子と結合しているフェニレン基の部位を基準としてオルト位、メタ位、及びパラ位のいずれであってもよいが、本発明の効果を顕著に得る観点から、パラ位が好ましい。
【0064】
(D-1)で表される化合物は、下記(D-2)で表される化合物及び下記(D-3)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【化18】
【0065】
(D)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0066】
<(E)密着助剤>
ネガ型感光性樹脂組成物は、任意の成分として、(E)密着助剤を含有していてもよい。(E)密着助剤をネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、基板とネガ型感光性樹脂組成物の硬化物との間の密着強度を向上させることができる。(E)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
(E)密着助剤としては、基板とネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成される膜との間の密着強度を向上させる化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル-3-ピペリジノプロピルシラン、ジエトキシ-3-グリシドキシプロピルメチルシラン、N-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミド、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-[3-トリエトキシシリル]プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4-ビス(N-3-トリエトキシシリル]プロピルアミド)-2,5-ジカルボン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピルスクシニックアンハイドライド、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)プロピルスクシン酸無水物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシメトキシシラン、3-メルカプトプロピルエトキシジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルエトキシジプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメトキシジプロポキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルジエトキシメトキシシラン、2-メルカプトエチルエトキシジメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2-メルカプトエチルエトキシジプロポキシシラン、2-メルカプトエチルジメトキシプロポキシシラン、2-メルカプトエチルメトキシジプロポキシシラン、4-メルカプトブチルトリメトキシシラン、4-メルカプトブチルトリエトキシシラン、4-メルカプトブチルトリプロポキシシラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、アミノトリアジン環とエトキシシリル基を有する化合物等のシランカップリング剤;アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系接着助剤等が挙げられる。中でも、(E)密着助剤としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、シランカップリング剤が好ましい。
【0068】
(E)密着助剤は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、「LS1375」(3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン)、「LS3610」(N-(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア);チッソ社製の「サイラエースS810」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン);アズマックス社製の「SIM6475.0」(3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン)、「SIM6474.0」(3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン)、「SIM6473.5C」(メルカプトメチルトリメトキシシラン)、「SIM6473.0」(メルカプトメチルメチルジメトキシシラン)、「SIU9055.0」(N-(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア)、「SIU9058.0」(N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア);四国化成社製の「VD-5」(アミノトリアジン環とエトキシシリル基を有する化合物)等が挙げられる。
【0069】
(E)成分の含有量は、基板密着性と機械的強度の観点から、ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0070】
<(F)2以上のエポキシ基を有する化合物>
ネガ型感光性樹脂組成物は、任意の成分として、(F)2以上のエポキシ基を有する化合物を含有していてもよい。(F)2以上のエポキシ基を有する化合物をネガ型感光性樹脂組成物に含有させることで、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の強度を向上させることができる。(F)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
(F)成分1分子中に含まれるエポキシ基の数は、ネガ型感光性樹脂組成物の限界解像性、及びネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の機械的強度の観点から、2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下である。
【0072】
(F)成分としては、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAF型エポキシ化合物、トリスフェノール型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、tert-ブチル-カテコール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ナフトール型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物等の芳香族エポキシ化合物;ブタジエン構造を有するエポキシ化合物、シクロヘキサン型エポキシ化合物、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ化合物、トリメチロール型エポキシ化合物、テトラフェニルエタン型エポキシ化合物等の脂肪族エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物;複素環式エポキシ化合物;グリシジルエーテル型エポキシ化合物;グリシジルアミン型エポキシ化合物;等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、芳香族エポキシ化合物が好ましく、芳香族エポキシ化合物の中でも、ナフタレン型エポキシ化合物が好ましい。
【0073】
芳香族エポキシ化合物の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ化合物);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ化合物とビスフェノールF型エポキシ化合物の混合品);DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ化合物);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ化合物);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ化合物);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ化合物);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ化合物);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ化合物);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ化合物);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ化合物);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ化合物);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ化合物);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ化合物)等が挙げられる。
【0074】
2以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq~5000g/eq、より好ましくは50g/eq~3000g/eq、さらに好ましくは80g/eq~2000g/eq、さらにより好ましくは110g/eq~1000g/eqである。この範囲となることで、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0075】
(F)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0076】
(F)成分の含有量は、限界解像性と機械的強度の観点から、ネガ型感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0077】
<(G)溶剤>
ネガ型感光性樹脂組成物は、任意の成分として、(G)溶剤を含んでいてもよい。(G)溶剤は、揮発成分であり、(A)~(F)成分、及び(H)成分の少なくともいずれかの成分を均一に溶解させうるものを用いることができる。このような溶剤としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びトリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物;アセトン、及びメチルエチルケトンのような炭素数2以上炭素数6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びデカリンのような炭素数5以上炭素数10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、及びテトラリンのような炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、及び安息香酸メチルのような炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、及び1,2-ジクロロエタンのような炭素数1以上炭素数10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンのような炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物;並びにジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。
【0078】
また、(G)成分としては、例えば、N-エチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、シクロペンタノン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、酢酸エチル、乳酸エチル、及び乳酸ブチルなどが挙げられる。(G)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
(G)成分の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物全体を100質量%とした場合、通常1質量%以上であり、好ましくは150質量%以上、より好ましくは200質量%以上であり、500質量%以下であり、好ましくは400質量%以下であり、より好ましくは300質量%以下である。(G)成分の含有量を斯かる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能となる。
【0080】
<(H)その他の添加剤>
ネガ型感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない程度に、(H)その他の添加剤を更に含有してもよい。(H)その他の添加剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;熱可塑性樹脂;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤;エポキシ樹脂、アンチモン化合物、リン系化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤;フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等の熱硬化樹脂等の各種添加剤を添加することができる。
【0081】
ネガ型感光性樹脂組成物は、(C)成分、(F)成分以外の架橋性の化合物を含有していてもよい。このような架橋性の化合物としては、2個以上のメチロール基及び/又はアルコキシメチル基を含む、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物等の含窒素化合物、又はこれらの縮合物、2個以上のメチロール基又はアルコキシメチル基を有するフェノール化合物等が挙げられる。
【0082】
ネガ型感光性樹脂組成物は、必須成分として上記(A)~(C)成分を混合し、任意成分として上記(D)~(H)成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌することにより製造することができる。
【0083】
<ネガ型感光性樹脂組成物の物性、用途>
ネガ型感光性樹脂組成物は、限界解像性に優れるという特性を示す。例えば、露光パターンの開口径が10μm、15μm、20μm、25μm、30μmの丸穴を描画させるマスクを用いて露光、現像を行う。この場合、開口可能な最小サイズである限界解像性は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。限界解像性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0084】
ネガ型感光性樹脂組成物は、残膜性(膜厚減少率)に優れるという特性を示す。例えば、シリコンウエハ上に塗布したネガ型感光性樹脂組成物の膜厚を測定し、現像後のネガ型感光性樹脂組成物の膜厚を測定する。この場合、膜厚減少率=現像後膜厚/塗布後膜厚×100(%)の式にあてはめると、膜厚減少率は好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。残膜性は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0085】
ネガ型感光性樹脂組成物を200℃で2時間熱硬化させた硬化物は、伸び率が高いという特性を示す。この伸び率は、硬化物を引っ張って破断するまでの伸び率を表し、その値が大きいほど引張強度に優れることを表す。この伸び率が高いことにより、機械強度が高く、サーモサイクル試験、落下衝撃試験などに対して信頼性の高い硬化物を得ることが可能となる。伸び率としては、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは7%以上である。上限は特に限定されないが、20%以下等とし得る。伸び率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0086】
ネガ型感光性樹脂組成物を200℃で2時間熱硬化させた硬化物は、弾性率が低いという特性を示す。これにより反りの発生を抑制することが可能となる。弾性率としては、好ましくは20GPa以下、より好ましくは10GPa以下、さらに好ましくは6GPa以下である。下限は特に限定されないが、0.1GPa以上等とし得る。弾性率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0087】
ネガ型感光性樹脂組成物を200℃で2時間熱硬化させた硬化物は、熱膨張係数(CTE)が低いという特性を示す。熱膨張係数としては、好ましくは35ppm/℃以下、より好ましくは30ppm/℃以下、さらに好ましくは25ppm/℃以下である。下限は特に限定されないが、0.1ppm/℃以上等とし得る。熱膨張係数は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0088】
ネガ型感光性樹脂組成物を200℃で120分間熱硬化させた硬化物は、反り量が小さいという特性を示す。8インチシリコンウエハ上での反り量としては、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。下限は特に限定されないが、0.1μm以上等とし得る。反り量は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0089】
ネガ型感光性樹脂組成物を200℃で120分間熱硬化させた硬化物は、誘電率(Dk)が低いという特性を示す。誘電率は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。下限は特に限定されないが、0.01以上等とし得る。誘電率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0090】
ネガ型感光性樹脂組成物を200℃で120分間熱硬化させた硬化物は、誘電正接(Df)が低いという特性を示す。誘電正接は、好ましくは0.03以下、より好ましくは0.02以下、さらに好ましくは0.01以下である。下限は特に限定されないが、0.0005以上等とし得る。誘電正接は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0091】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、シリコンウェハ、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、バッファーコート膜、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、ネガ型感光性樹脂組成物が用いられる用途の広範囲に使用できる。なかでも、プリント配線板の絶縁層用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層としたプリント配線板)、層間絶縁層用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層としたプリント配線板)、メッキ形成用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成されたプリント配線板)、及びソルダーレジスト用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物をソルダーレジストとしたプリント配線板)、ウェハレベルパッケージの再配線形成層用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を再配線形成層としたウェハレベルパッケージ)、ファンアウトウェハレベルパッケージの再配線形成層用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を再配線形成層としたファンアウトウェハレベルパッケージ)、ファンアウトパネルレベルパッケージの再配線形成層用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を再配線形成層としたファンアウトパネルレベルパッケージ)、バッファーコート用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物をバッファーコートとした半導体装置)、ディスプレイ用絶縁層用感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を絶縁層としたディスプレイ)として好適に使用することができる。
【0092】
[半導体パッケージ基板]
本発明の半導体パッケージ基板は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。該絶縁層は、再配線形成層、層間絶縁層、バッファーコート膜またはソルダーレジストとして使用することが好ましい。
【0093】
詳細には、本発明の第1実施形態の半導体パッケージ基板は、上述のネガ型感光性樹脂組成物を用いて製造することができ、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物は絶縁層として用いられる。具体的には、半導体パッケージ基板の製造方法は、
(I)回路基板上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂組成物層を形成する工程、
(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程、及び
(III)感光性樹脂組成物層を現像する工程
をこの順に含む。
【0094】
<工程(I)>
感光性樹脂組成物層の形成方法としては、ネガ型感光性樹脂組成物を含む樹脂ワニスを直接的に回路基板上に塗布する方法が挙げられる。
【0095】
ネガ型感光性樹脂組成物を含む樹脂ワニスを直接的に回路基板上に塗布する場合、(F)成分を乾燥、揮発させることにより、回路基板上に感光性樹脂組成物層を形成する。
【0096】
樹脂ワニスの塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スピンコート方式、スリットコート方式、スプレーコート方式、ディップコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、オフセット印刷方式、刷毛塗り方式、スクリーン印刷法による全面印刷方式等が挙げられる。
【0097】
樹脂ワニスは、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0098】
樹脂ワニスを塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃~120℃で3分間~13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性樹脂組成物層が形成される。
【0099】
回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような支持基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0100】
<工程(II)>
回路基板上に感光性樹脂組成物層が設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射する露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm~1000mJ/cmである。露光方法にはマスクパターンを回路基板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。
【0101】
工程(II)では、マスクパターンとして、例えば、丸穴パターン等のビアパターンを用いてビアを形成することができる。ビア径(開口径)としては、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。下限は特に限定されないが、0.1μm以上、0.5μm以上等としうる。
【0102】
<工程(III)>
露光工程後、感光性樹脂組成物層の露光されなかった部分を現像液により除去する現像工程を行うことにより、パターンを形成することができる。現像は、通常ウェット現像により行う。
【0103】
上記ウェット現像の場合、現像液としては、アルカリ性溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられ、なかでもアルカリ水溶液等のアルカリ性溶液による現像工程が好ましい。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0104】
現像液として使用されるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられ、金属イオンを含有せず、半導体チップに影響を与えないという点で水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が好ましい。
【0105】
これらのアルカリ性水溶液には、現像効果の向上のため、界面活性剤、消泡剤等を含むことができる。上記アルカリ性水溶液のpHは、例えば、8~12の範囲であることが好ましく、9~11の範囲であることがより好ましい。また、上記アルカリ性水溶液の塩基濃度は、0.1質量%~10質量%とすることが好ましい。上記アルカリ性水溶液の温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、20℃~50℃とすることが好ましい。
【0106】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノンである。
【0107】
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%~90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0108】
パターン形成においては、必要に応じて、2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0109】
<熱硬化(ポストベーク)工程>
上記工程(III)終了後、必要に応じて、熱硬化(ポストベーク)工程を行う。上述した工程(I)~(III)において感光性樹脂組成物層の硬化が進行することはありえるが、熱硬化工程により感光性樹脂組成物の硬化を更に進行させて、機械的強度も優れる絶縁層を得ることができる。ポストベーク工程としては、クリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。熱硬化時の雰囲気は、空気中であっても良いし、窒素などの不活性気体雰囲気下でも良い。また加熱の条件は、ネガ型感光性樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃~250℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~230℃で30分間~120分間の範囲で選択される。
【0110】
<その他の工程>
半導体パッケージ基板の製造方法は、硬化した感光性樹脂組成物層として絶縁層を形成後、さらに穴あけ工程、デスミア工程を含んでもよい。これらの工程は、半導体パッケージ基板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0111】
絶縁層を形成した後、所望により、回路基板上に形成された絶縁層に穴あけ工程を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
【0112】
デスミア工程は、デスミア処理する工程である。穴あけ工程において形成された開口部内部には、一般に、樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、電気接続不良の原因となるため、この工程においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。
【0113】
デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。
【0114】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、半導体パッケージ基板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0115】
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホール等の形成された基板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の基板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0116】
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0117】
絶縁層を、再配線形成層、層間絶縁層、及びソルダーレジストのいずれとして形成する場合でも、熱硬化工程後に、穴あけ工程及びデスミア工程を行ってもよい。また、半導体パッケージ基板の製造方法では、更に、メッキ工程を行ってもよい。
【0118】
メッキ工程は、絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層は、絶縁層形成後にスパッタにより導体層を形成してもよく、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよく、また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0119】
本発明の第2実施形態に係る半導体パッケージ基板は、上述のネガ型感光性樹脂組成物を用いて製造することができ、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物は再配線形成層として用いられる。具体的には、半導体パッケージ基板の製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(H)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0120】
<工程(A)>
工程(A)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃~140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm~11kgf/cm、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0121】
基材としては、例えば、シリコンウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0122】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0123】
<工程(B)>
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体パッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0124】
<工程(C)>
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができ、上述したネガ型感光性樹脂組成物を用いてもよい。封止層は、通常、半導体チップ上に封止用樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成する。
【0125】
封止用樹脂組成物層の形成は、圧縮成型法によって行うことが好ましい。圧縮成型法では、通常、半導体チップ及び封止用樹脂組成物を型に配置し、その型内で封止用樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、半導体チップを覆う封止用樹脂組成物層を形成する。
【0126】
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにし得る。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、前記のように仮固定フィルム上に仮固定された半導体チップに、封止用樹脂組成物を塗布する。封止用樹脂組成物を塗布された半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、封止用樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0127】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、封止用樹脂組成物を載せる。また、上型に、半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に取り付ける。その後、下型に載った封止用樹脂組成物が上型に取り付けられた半導体チップに接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0128】
成型条件は、封止用樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、封止用樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、封止用樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、封止用樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0129】
圧縮成型法は、カートリッジ内に充填した封止用樹脂組成物を下型に吐出させることによって行ってもよい。
【0130】
<工程(D)>
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0131】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃~250℃で1秒間~90秒間又は5分間~15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm~1000mJ/cmである。
【0132】
<工程(E)>
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。再配線形成層は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いる。再配線形成層の形成方法は、第1実施形態における工程(I)の感光性樹脂組成物層の形成方法と同様である。
【0133】
再配線形成層を形成するとき、半導体チップと再配線層とを層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。
【0134】
ビアホールは、通常、再配線形成層の形成のための感光性樹脂組成物層の表面に、マスクパターンを通して活性光線を照射する露光工程と、活性光線が照射されていない非露光部をアルカリ水溶液により除去する現像工程と、を行うことで形成することができる。活性光線の照射量及び照射時間は、感光性樹脂組成物層に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを感光性樹脂組成物層に密着させて露光する接触露光法、マスクパターンを感光性樹脂組成物層に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法等が挙げられる。活性光線、アルカリ水溶液、露光現像方法は上記したとおりである。
【0135】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線形成層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0136】
<工程(F)>
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、第1実施形態における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0137】
<工程(G)>
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いてもよい。
【0138】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行うことができる。
【0139】
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(A)~(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0140】
[半導体装置]
上述した半導体チップパッケージが実装される半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0141】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0142】
<合成例1:ポリイミドA-1の合成>
p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)45.2gを2L容量のセパラブルフラスコに入れ、N-メチル-2-ピロリドン500mLを入れて室温下で撹拌し、さらに4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビスフェニル(TFMB)6.32g、5,5’-メチレンビス(2-アミノ安息香酸)(MBAA)22.6gを加えて、同時に反応容器をオイルバスで内温が50℃になるまで加温し、20時間重合した。次に3,5-ジヒドロキシ安息香酸2.3g、トルエン185gを加え、オイルバスに溶剤の還流が始まるまで加熱、攪拌を5時間行い、トルエン共沸脱水により反応系中から水を約4.8g取り出し、イミド化反応を行った。
【0143】
次に、得られた反応液を6Lの超純水に滴下して、ポリマーを析出させることでポリマーを生成した。生成したポリマーを濾別した後、真空乾燥にて80℃加熱下乾燥させポリイミドA-1を71g得た。
【0144】
ポリイミドA-1の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は55,000であった。また、H-NMRから確認したところ、ポリイミドA-1は下記2つの構造単位を有する共重合体であり、共重合比率はm:n=20.5:79.5であった。
ポリイミドA-1:
【化19】
【0145】
<合成例2:ポリイミドA-2の合成>
p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)45.2gを2L容量のセパラブルフラスコに入れ、N-メチル-2-ピロリドン500mLを入れて室温下で撹拌し、さらに4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビスフェニル(TFMB)8.84g、5,5’-メチレンビス(2-アミノ安息香酸)(MBAA)20.3gを加えて、同時に反応容器をオイルバスで内温が50℃になるまで加温し、20時間重合した。次に3,5-ジヒドロキシ安息香酸2.2g、トルエン185gを加え、オイルバスに溶剤の還流が始まるまで加熱、攪拌を5時間行い、トルエン共沸脱水により反応系中から水を約4.5g取り出し、イミド化反応を行った。
【0146】
次に、得られた反応液を6Lの超純水に滴下して、ポリマーを析出させることでポリマーを生成した。生成したポリマーを濾別した後、真空乾燥にて80℃加熱下乾燥させポリイミドA-2を73g得た。
【0147】
ポリイミドA-1の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は63,000であった。また、H-NMRから確認したところ、ポリイミドA-1は下記2つの構造単位を有する共重合体であり、共重合比率はm:n=28.0:72.0であった。
ポリイミドA-2:
【化20】
【0148】
<合成例3:ポリイミドA-3の合成>
p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)45.2gを2L容量のセパラブルフラスコに入れ、N-メチル-2-ピロリドン500mLを入れて室温下で撹拌し、さらに4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビスフェニル(TFMB)5.05g、5,5’-メチレンビス(2-アミノ安息香酸)(MBAA)23.7gを加えて、同時に反応容器をオイルバスで内温が50℃になるまで加温し、20時間重合した。次に3,5-ジヒドロキシ安息香酸2.2g、トルエン185gを加え、オイルバスに溶剤の還流が始まるまで加熱、攪拌を5時間行い、トルエン共沸脱水により反応系中から水を約4.3g取り出し、イミド化反応を行った。
【0149】
次に、得られた反応液を6Lの超純水に滴下して、ポリマーを析出させることでポリマーを生成した。生成したポリマーを濾別した後、真空乾燥にて80℃加熱下乾燥させポリイミドA-3を71g得た。
【0150】
ポリイミドA-3の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は38,000であった。また、H-NMRから確認したところ、ポリイミドA-1は下記2つの構造単位を有する共重合体であり、共重合比率はm:n=13.7:86.3であった。
ポリイミドA-3:
【化21】
【0151】
<比較合成例1:ポリマーA-4の合成>
p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)(TAHQ)42.0gを2L容量のセパラブルフラスコに入れ、N-メチル-2-ピロリドン550mLを入れて室温下で撹拌し、さらに4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビスフェニル(TFMB)6.13g、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)28.0gを加えて、同時に反応容器をオイルバスで内温が45℃になるまで加温し、20時間重合した。次に3,5-ジヒドロキシ安息香酸2.2g、トルエン185gを加え、オイルバスに溶剤の還流が始まるまで加熱、攪拌を5時間行い、トルエン共沸脱水により反応系中から水を約3.9g取り出し、イミド化反応を行った。
【0152】
次に、得られた反応液を6Lの超純水に滴下して、ポリマーを析出させることで生成した。生成したポリマーを濾別した後、真空乾燥にて80℃加熱下乾燥させポリマーA-4を66g得た。
【0153】
ポリマーA-4の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は74,000であった。また、H-NMRから確認した下記構造式A-4の共重合比率はm:n=19.4:80.6であった。
ポリマーA-4:
【化22】
【0154】
<比較合成例2:ポリマーA-5の合成>
1,2,4-ベンゼントリカルボン酸1,2-無水物エチレンエステル(TAEOL)39.3gを2L容量のセパラブルフラスコに入れ、N-メチル-2-ピロリドン540mLを入れて室温下で撹拌し、さらに4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビスフェニル(TFMB)6.13g、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン28.0gを加えて、同時に反応容器をオイルバスで内温が45℃になるまで加温し、20時間重合した。次に3,5-ジヒドロキシ安息香酸2.2g、トルエン185gを加え、オイルバスに溶剤の還流が始まるまで加熱、攪拌を5時間行い、トルエン共沸脱水により反応系中から水を約4.1g取り出し、イミド化反応を行った。
【0155】
次に、得られた反応液を6Lの超純水に滴下して、ポリマーを析出させることで生成した。生成したポリマーを濾別した後、真空乾燥にて80℃加熱下乾燥させポリマーA-5を55g得た。ポリマーA-5の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は59,000であった。また、H-NMRから確認した下記構造式A-5の共重合比率はm:n=21.8:78.2であった。
ポリマーA-5:
【化23】
【0156】
<実施例1~10及び比較例1~2:ネガ型感光性組成物の調製>
合成例1~3で合成したポリイミド、及び比較合成例1~2で合成したポリマー、(B)光ラジカル発生剤、(C)2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物、(D)増感剤、(E)密着助剤、及び(F)2以上のエポキシ基を有する化合物を下記表に示すようにそれぞれ配合し、γ-ブチロラクトンに溶解して、ネガ型感光性組成物を調製した。
【0157】
なお、下記表において、(B)~(E)成分の含有量は(A)成分100質量部に対する添加量(質量部)を示す。溶剤(γ-ブチロラクトン)の使用量は、いずれも(A)成分100質量部に対して280質量部とした。
【0158】
【表1】
【0159】
表中の略語等は以下のとおりである。
・光ラジカル発生剤B-1: Irgacure OXE 02(BASF社製)
・光ラジカル発生剤B-2: Irgacure OXE 04(BASF社製)
・2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物CL-2:下記構造式で表される化合物
【化24】
・2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物CL-5:下記構造式で表される化合物
【化25】
・2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物CL-7:下記構造式で表される化合物
【化26】
・増感剤D-1:下記構造式で表される化合物
【化27】
・密着助剤E-1:下記構造で表される化合物(信越化学工業社製、KBM-403)
【化28】
・密着助剤E-2:VD-5(四国化成社製)
・2以上のエポキシ基を有する化合物F-1:下記構造式で表される化合物(HP-4032D、DIC社製)
【化29】
・2以上のエポキシ基を有する化合物F-2:下記構造式で表される化合物
【化30】
【0160】
<限界解像性及び、残膜性(現像時膜厚減少)の評価>
シリコンウエハ上に5μm膜厚で銅めっきを積層し、1%塩酸水溶液で10秒間粗化処理した基板上に、スピンコーターを用いて膜厚が15μmになるに適した回転数で実施例及び比較例で配合したネガ型感光性組成物を塗布後、ホットプレート上で120℃5分間加熱し感光性樹脂組成物層を作製した。これを積層体という。
【0161】
作製した積層体を、紫外線(波長365nm、強度40mW/cm)で露光を行った。露光量は50mJ/cmから1000mJ/cmの範囲の最適値を設定した。露光パターンは開口径5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μmの丸穴(ビア)を描画させる石英ガラスマスクを使用した。
【0162】
次に、該積層体の感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として50℃の2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒から600秒の間の最適時間でスプレー現像を行い、続いて、水をスプレー圧0.1MPaにて30秒間スプレーリンスを行った。さらに200℃、120分間の加熱処理を行って感光性樹脂組成物層を硬化させた。
【0163】
露光パターンの開口5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μmのビアの底部の径をSEMで観察(倍率1000倍)して測定した。開口可能な最小サイズを限界解像性とした。
【0164】
さらに、現像後の膜厚を測定、残膜性を下記の計算方法で膜厚減少率として算出し、以下の基準で評価した。
膜厚減少率=現像後膜厚/塗布後膜厚×100(%)
◎:膜厚減少率が90%以上
〇:膜厚減少率が70%以上90%未満
×:膜厚減少率が70%未満
【0165】
<伸び率、弾性率、線熱膨張係数、誘電率、及び誘電正接の測定>
(1)物性測定用感光性樹脂組成物フィルムの作製
実施例及び比較例で配合したネガ型感光性組成物を、剥離処理されたPETフィルム(製品名NS-80A:藤森工業社製)上に膜厚が140μmになるようにブレードを用いてコートした。このPETフィルム上の溶液を、加温機を用いて80℃で20分間加熱後、感光性樹脂組成物層を得た。感光性樹脂組成物層をPETフィルムから剥離し、金属枠に感光性樹脂組成物層を耐熱性テープを用いて貼り付け、200℃で2時間硬化を行い、物性測定用感光性樹脂組成物フィルムを作製した。
【0166】
(2)伸び率、及び弾性率の測定
物性測定用感光性樹脂組成物フィルムをダンベル状1号形に切り出し、試験片を得た。該試験片を、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、25℃における伸び率、及び弾性率を求めた。測定は、JIS K7127に準拠して実施した。この操作を3回行いその平均値を表に示した(単位:伸び率=%:弾性率=GPa)。
【0167】
(3)線熱膨張係数(CTE)の測定
物性測定用感光性樹脂組成物フィルムを、幅5mm、長さ15mmに切断して、試験片を得た。この試験片について、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を用いて、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて、連続して2回測定を行った。そして、25℃から150℃までの範囲における平面方向の線熱膨張係数(ppm/℃)を算出した。
【0168】
(4)誘電率、誘電正接(誘電特性)の測定
物性測定用感光性樹脂組成物フィルムから、幅2mm、長さ80mmの試験片を切り取った。切り出した試験片について、アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製の測定装置「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。
【0169】
<反りの評価>
8インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で配合した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて膜厚が25μmになるに適した回転数で塗布後、ホットプレート上で120℃5分間加熱した。さらに200℃、120分間の加熱処理を行って感光性樹脂組成物層を熱硬化させた。これにより、シリコンウエハと感光性樹脂組成物の硬化物層とを含む試料基板を得た。シャドウモアレ測定装置(Akorometrix社製「ThermoireAXP」)を用いて、前記の試料基板を25℃での反り量を測定した。測定は、電子情報技術産業協会規格のJEITA EDX-7311-24に準拠して行った。具体的には、測定領域の基板面の全データの最小二乗法によって算出した仮想平面を基準面として、その基準面から垂直方向の最小値と最大値との差を反り量(μm)として求めた。
【0170】
【表2】
【0171】
実施例1~10は、限界解像性や現像時の残膜性に優れ、熱膨張係数及び弾性率が低く、伸び率は高く、反り量が抑制され、さらに誘電特性に優れる硬化物を得ることができた。一方、比較例1~2は、限界解像性は悪く、現像時の残膜性も不良であり、得られた硬化物の機械的強度、誘電特性のいずれも満足できるものではなかった。