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特開2022-109888ポリアミドイミド樹脂、それを含むポリアミドイミドフィルム、およびウィンドウカバーフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109888
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】ポリアミドイミド樹脂、それを含むポリアミドイミドフィルム、およびウィンドウカバーフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/14 20060101AFI20220721BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220721BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220721BHJP
   G02B 1/04 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
C08G73/14
B32B27/34
C08J5/18 CFG
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002820
(22)【出願日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0006050
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0001086
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒェ リ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン ヒュン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60X
4F071AA81X
4F071AF20Y
4F071AF21
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AG28
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK50A
4F100BA02
4F100CC00B
4F100GB41
4F100JA07A
4F100JG03B
4F100JK07A
4F100JK11B
4F100JK12B
4F100JK17
4F100JL06B
4F100JN01A
4F100JN06B
4F100JN18B
4F100YY00A
4J043PA09
4J043PA19
4J043PC145
4J043PC146
4J043QB15
4J043QB23
4J043QB26
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SA54
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA26
4J043TA70
4J043TA71
4J043TB04
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA151
4J043UA662
4J043UA672
4J043UB062
4J043UB231
4J043UB401
4J043VA021
4J043VA031
4J043XA16
4J043XB33
4J043YA06
4J043ZA32
4J043ZA33
4J043ZA52
4J043ZB23
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高強度、高い耐衝撃性などの機械的物性に優れるとともに、高い全光線透過率および低い黄色度などの光学的物性に優れたポリアミドイミド樹脂、およびそれを用いたポリアミドイミドフィルムを提供する。
【解決手段】芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含み、前記芳香族ジアミンは、化学式1で表される化合物を含み、前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライドを含む、ポリアミドイミド樹脂とする。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含み、
前記芳香族ジアミンは、下記化学式1で表される化合物を含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライドを含む、ポリアミドイミド樹脂。
[化学式1]
【化1】
【請求項2】
前記芳香族ジアミンは、前記化学式1で表される化合物とは異なる第2芳香族ジアミンをさらに含む、請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項3】
前記第2芳香族ジアミンは、トリフルオロアルキル基で置換された芳香族環を含む、請求項2に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項4】
前記第2芳香族ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジンを含む、請求項2または3に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項5】
前記二無水物は、芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上を含む、請求項1から4の何れか一項に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項6】
前記二無水物は、1つまたは2つ以上の芳香族二無水物、および1つまたは2つ以上の環状脂肪族二無水物を含む、請求項5に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項7】
前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項5または6に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項8】
前記環状脂肪族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含む、請求項5から7の何れか一項に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項9】
前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位は、前記芳香族ジアミンから誘導された構造単位の全体モル数を基準に50モル%以下で含まれる、請求項1から8の何れか一項に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項10】
前記芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位は、前記芳香族ジアミンから誘導された構造単位100モルに対して50モル%以上で含まれる、請求項1から9の何れか一項に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項11】
前記芳香族ジアミンから誘導された構造単位:前記芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位および前記二無水物から誘導された構造単位の和の当量比は、1:0.9~1.1である、請求項1から10の何れか一項に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項12】
200,000g/mol以上の重量平均分子量を有する、請求項1から11の何れか一項に記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載のポリアミドイミド樹脂を含むポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1から12の何れか一項に記載のポリアミドイミド樹脂を含むポリアミドイミドフィルム。
【請求項15】
6GPa以上のモジュラスを有する、請求項14に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項16】
ASTM D1003に準じて400~700nmの波長で測定された全光線透過率が87%以上であり、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下であり、ASTM E313に準じた黄色度が5以下である、請求項14または15に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項17】
1~500μmの厚さを有する、請求項14から16の何れか一項に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項18】
請求項14から17の何れか一項に記載のポリアミドイミドフィルムを含むウィンドウカバーフィルム。
【請求項19】
前記ポリアミドイミドフィルムの少なくとも一面に、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層から選択される何れか1つ以上のコーティング層を有する、請求項18に記載のウィンドウカバーフィルム。
【請求項20】
請求項14から17の何れか一項に記載のポリアミドイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂、それを含むポリアミドイミドフィルム、およびウィンドウカバーフィルムに関する。より具体的に、互いにトレードオフ(trade-off)関係にある光学的物性と機械的物性が同時に満たされ、既存のポリアミドイミドフィルムに比べて機械的物性がさらに向上したポリアミドイミドフィルムを製造するためのポリアミドイミド樹脂、それを用いたポリアミドイミドフィルム、およびそれを含むウィンドウカバーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
薄型表示装置は、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)の形態で実現され、スマートフォン(smart phone)、タブレット型(tablet)PC、各種ウェアラブルデバイス(wearable device)に至るまで、各種スマートデバイス(smart device)に用いられている。
【0003】
かかるタッチスクリーンパネルを用いる表示装置は、スクラッチまたは外部衝撃からディスプレイパネルを保護するために、ディスプレイパネル上に強化ガラスやプラスチックフィルムを含むウィンドウカバーを備えている。
【0004】
かかるウィンドウカバーは、ディスプレイ装置の最も外部に形成された構成であるため、耐熱性、機械的特性、および光学的特性が満たされなければならず、特に表示品質が高く、ムラ(Mura)現象、画像の歪みなどの光による歪みが発生しないことが重要である。
【0005】
かかるウィンドウカバーフィルムに適用される高分子素材としてポリイミド系樹脂などが用いられており、フォルダブルディスプレイなどに適用可能となるようにするために機械的物性の向上が求められている。しかし、機械的物性を向上させるためにリジッド(rigid)な構造の単量体を多量用いる場合、黄色度、光透過率などの光学的物性が低下し、光学的物性と機械的物性を同時に満たすことには難しさがあった。
【0006】
しかしながら、持続的なフレキシブルディスプレイの発展に伴い、フレキシブルディスプレイのウィンドウカバーフィルムに適用するために、機械的物性と光学的物性を同時に満たすフィルムの開発が依然として必要な状態である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディスプレイ用ウィンドウカバーガラスを代替するためのウィンドウカバーフィルムに適用可能となるように高強度、高い耐衝撃性などの機械的物性に優れるとともに、高い全光線透過率および低い黄色度などの光学的物性に優れたポリアミドイミド樹脂およびそれを用いたポリアミドイミドフィルムを提供することに目的がある。
【0008】
特に、従来に開発されたポリアミドイミドフィルムに比べてさらに向上した機械的物性と光学的物性を同時に満たすポリアミドイミド樹脂およびポリアミドイミドフィルムを提供することに目的がある。
【0009】
また、優れた機械的物性と熱的特性および多様な光学的特性を満たすとともに、光による歪みなどの問題を解決することができるため、強化ガラスを代替可能な新しいウィンドウカバーフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含み、
前記芳香族ジアミンは、下記化学式1で表される化合物を含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライドを含む、ポリアミドイミド樹脂:
[化学式1]
【化1】
を提供する。
【0011】
一態様として、前記芳香族ジアミンは、前記化学式1で表される化合物とは異なる第2芳香族ジアミンをさらに含んでもよい。
一態様として、前記第2芳香族ジアミンは、トリフルオロアルキル基で置換された芳香族環を含んでもよい。
一態様として、前記第2芳香族ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジンを含んでもよい。
【0012】
一態様として、前記二無水物は、芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
一態様として、前記二無水物は、1つまたは2つ以上の芳香族二無水物、および1つまたは2つ以上の環状脂肪族二無水物を含んでもよい。
【0013】
一態様として、前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0014】
一態様として、前記環状脂肪族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
一態様として、前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位は、前記芳香族ジアミンから誘導された構造単位の全体モル数を基準に50モル%以下で含まれてもよい。
【0015】
一態様として、前記芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位は、前記芳香族ジアミンから誘導された構造単位100モルに対して50モル%以上で含まれてもよい。
【0016】
一態様として、前記芳香族ジアミンから誘導された構造単位:前記芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位および前記二無水物から誘導された構造単位の和の当量比は、1:0.9~1.1であってもよい。
一態様として、前記ポリアミドイミド樹脂は、200,000g/mol以上の重量平均分子量を有してもよい。
【0017】
本発明の他の態様は、前記一態様に係るポリアミドイミド樹脂を含むポリアミドイミド樹脂組成物を提供する。
本発明のまた他の態様は、前記一態様に係るポリアミドイミド樹脂を含むポリアミドイミドフィルムを提供する。
【0018】
一態様として、前記ポリアミドイミドフィルムは、6GPa以上のモジュラスを有してもよい。
一態様として、前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1003に準じて400~700nmの波長で測定された全光線透過率が87%以上であり、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下であり、ASTM E313に準じた黄色度が5以下であってもよい。
一態様として、前記ポリアミドイミドフィルムは、1~500μmの厚さを有してもよい。
【0019】
本発明のさらに他の態様は、前記一態様に係るポリアミドイミド樹脂または前記ポリアミドイミドフィルムを含むウィンドウカバーフィルムを提供する。
本発明の一態様として、前記ウィンドウカバーフィルムは、ポリアミドイミドフィルムの少なくとも一面に、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層から選択される何れか1つ以上のコーティング層を有してもよい。
【0020】
本発明のさらに他の態様は、前記一態様に係るポリアミドイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0021】
一態様に係るポリアミドイミド樹脂およびそれを用いたポリアミドイミドフィルムは、機械的物性に優れるとともに優れた光学物性を有するため、ディスプレイ用カバーガラスを代替するウィンドウカバーフィルムに適用することができる。
【0022】
また、従来のポリアミドイミドフィルムに比べてさらに優れた機械的物性を提供することができるため、ローラブル(rollable)およびフレキシブル(flexible)素材の高強度ウィンドウカバーフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について詳しく説明する。但し、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。
【0024】
また、本発明の説明で用いられる技術用語および科学用語は、他の定義がない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有する。本明細書において、単数形は、語句において特に言及しない限り、複数形も含む。
【0025】
本発明を記述する明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0026】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上側に」または「上に」存在するとした場合、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味する。
【0027】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子が置換基で置換されたことを意味し、例えば、前記置換基は、重水素、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1~C30アルキル基、C2~C30アルケニル基、C2~C30アルキニル基、C6~C30アリール基、C7~C30アリールアルキル基、C1~C30アルコキシ基、C1~C20ヘテロアルキル基、C3~C20ヘテロアリールアルキル基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C15シクロアルケニル基、C6~C15シクロアルキニル基、C2~C30複素環基、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0028】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、樹脂は、ホモポリマーおよび共重合体を含み、前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを何れも含む。
【0029】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、ポリアミド樹脂は、アミド結合を有する構造単位を含む樹脂を意味し、ポリアミドイミド樹脂は、アミド結合を有する構造単位とイミド結合を有する構造単位とを含む樹脂を意味する。
【0030】
以下、一実施形態に係るポリアミドイミド樹脂を説明する。
従来は、ポリイミドフィルムまたはポリアミドイミドフィルムの機械的物性を増加させるために、リジッド(rigid)な構造の化合物から誘導された構造単位を含むポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂を用いた。しかし、これにより、樹脂間の密集性が高くなり、フィルムの形成時に厚さ方向のレターデーション(Rth)が増加してディスプレイなどに適用時に歪みが発生し、全光線透過率が低くなり、黄色度が大幅に増加するなどの光学的物性が劣るという問題があった。そこで、優れた機械的物性と光学的物性を同時に付与可能なポリアミドイミド樹脂が必要である。
【0031】
本発明の発明者らは、これを改善するために研究した結果、芳香族ジアミンおよび芳香族二酸二塩化物として特定の構造の化合物をともに用いることで、このような問題を解決可能であることを確認した。
【0032】
より具体的に、前記芳香族ジアミンは、下記化学式1で表される化合物(以下、AB-TFMBともいう)を含み、前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド(以下、TPCともいう)を含んでもよい。
【0033】
[化学式1]
【化2】
【0034】
一実施形態によると、前記化学式1で表される化合物(以下、AB-TFMBともいう)を含む芳香族ジアミンから誘導された構造単位、テレフタロイルジクロライド(以下、TPCともいう)を含む芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミドを提供する。前記ポリアミドイミド樹脂は、AB-TFMBおよびTPCを含むことで、非常に優れた機械的物性と光学的物性を同時に提供することができる。
【0035】
特定の理論に拘るものではないが、前記AB-TFMBは分子内に複数のアミド結合を含んでもよく、前記AB-TFMBとTPCの反応に応じてアミド基がさらに誘導されてもよい。これにより、前記樹脂内に多数のアミド結合が含まれることで、アミド結合の分子内相互作用および/または分子間相互作用が増加して機械的物性が大幅に向上することができる。
【0036】
また、特定の理論に拘るものではないが、前記AB-TFMBと前記TPCの何れも芳香族環、例えば、ベンゼン環を含むことで、樹脂の炭素含量が増加してもよい。これにより、さらに優れた機械的物性を有しながらも十分な光学的物性を有するフィルムを提供することができる。
【0037】
前記樹脂を製造する方法は特に制限されないが、例えば、前記芳香族ジアミンと前記TPCを反応させてアミド末端を有するオリゴマーを製造した後、それを再び前記芳香族ジアミンおよび/または前記二無水物と反応させてポリアミドイミド樹脂を製造してもよい。これにより、前記樹脂が、前記オリゴマーの末端に存在するアミド基だけでなく、前記AB-TFMBから誘導されるアミド結合(amide bond、-NHCO-)をさらに含むことで、光学的物性と機械的物性がさらに向上したポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
【0038】
前記樹脂を製造する他の一例として、上記のようにオリゴマーを製造する過程なしに、芳香族ジアミンとTPCおよび二無水物を同時に反応させてポリアミドイミド構造の樹脂を製造する方法を含んでもよいが、好ましくは、上述したオリゴマーを製造する過程を含むことで、機械的物性にさらに優れたフィルムを提供することができる。
前記ポリアミドイミド樹脂の具体的な製造方法については後述する。
【0039】
前記芳香族ジアミンとしては、前記化学式1で表されるAB-TFMBを単独で用いるか、または、必要に応じて該当分野で通常用いられる芳香族ジアミンを混合して用いてもよい。
【0040】
この際、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)の全体モル数に対して、AB-TFMB(から誘導された構造単位)が50モル%以下、例えば40モル%以下、例えば30モル%以下、例えば25モル%以下、例えば20モル%以下、例えば15モル%以下で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。また、AB-TFMB(から誘導された構造単位)と前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)の全体モル数に対して、AB-TFMB(から誘導された構造単位)は3モル%以上、例えば5モル%以上で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。AB-TFMB(から誘導された構造単位)が前記範囲で含まれることで、機械的物性と光学的物性にさらに優れることができる。
【0041】
以下、前記化学式1で表される化合物は、第1芳香族ジアミンであってもよく、一例として、前記芳香族ジアミンは、前記化学式1で表される化合物とは異なる第2芳香族ジアミンをさらに含んでもよい。
【0042】
一例として、前記第2芳香族ジアミンは、置換または非置換のC6~C30芳香族環を含んでもよく、ここで、芳香族環は、単環であるか;2つ以上の芳香族環が縮合した縮合環であるか;または2つ以上の芳香族環が単結合、C1~C5アルキレン基、OまたはC(=O)により連結された非縮合環であってもよい。
【0043】
一例として、前記第2芳香族ジアミンは、フッ素置換基が導入されてもよく、フッ素置換基が導入された芳香族ジアミンを用いることで、前記ポリアミドイミド樹脂がさらに優れた光学特性を提供することができる。また、芳香族二酸二塩化物、具体的に、テレフタロイルジクロライド(TPC)とともに用いることで、さらに高い全光線透過率、低いヘイズ、低い黄色度、および優れた機械的物性を提供することができる。
【0044】
具体的に、前記第2芳香族ジアミンは、1つまたは2つ以上のトリフルオロアルキル基で置換された芳香族環を含んでもよく、例えば、前記トリフルオロアルキル基で置換された芳香族環は、トリフルオロアルキル基以外の他の置換基でさらに置換されるかまたは置換されなくてもよい。
【0045】
より具体的に、前記第2芳香族ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(以下、TFMBともいう)を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
一例として、前記芳香族ジアミンとしては、前記化学式1で表される化合物(AB-TFMB)を単独で用いるか、または前記化学式1で表される化合物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を混合して用いてもよい。この際、これらの混合比率は制限されないが、AB-TFMBとTFMBの全体モル数に対して、AB-TFMBが、例えば50モル%以下、例えば40モル%以下、例えば30モル%以下、例えば25モル%以下、例えば20モル%以下、例えば15モル%以下で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。また、AB-TFMBとTFMBの全体モル数に対して、AB-TFMBは3モル%以上、例えば5モル%以上で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。AB-TFMBとTFMBの混合比率が前記範囲を有することで、機械的物性と光学的物性にさらに優れることができる。
【0047】
前記芳香族二酸二塩化物としては、テレフタロイルジクロライド(terephthaloyl dichloride、TPC)の単独、または前記TPCと公知の芳香族二酸二塩化物を混合して用いてもよい。
【0048】
具体的に例を挙げると、イソフタロイルジクロライド(isophthaloyl dichloride、IPC)、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド([1,1’-Biphenyl]-4,4’-dicarbonyl dichloride、BPC)、1,4-ナフタレンジカルボキシリックジクロライド(1,4-naphthalene dicarboxylic dichloride、NPC)、2,6-ナフタレンジカルボキシリックジクロライド(2,6-naphthalene dicarboxylic dichloride、NTC)、1,5-ナフタレンジカルボキシリックジクロライド(1,5-naphthalene dicarboxylic dichloride、NEC)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される2以上の混合物を用いてもよく、これに制限されるものではない。
【0049】
前記芳香族二酸二塩化物により高分子鎖内アミド構造が形成される場合、光学物性の向上だけでなく、特にモジュラスなどの機械的強度をさらに改善させることができる。
【0050】
一例として、フィルムの機械的物性を向上させるために、より具体的に、ASTM D882に準じたモジュラスが6GPa以上である物性を満たすために、前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された構造単位)は、芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)100モルに対して50モル以上、55モル以上、60モル以上、さらに具体的に、50モル~100モルで含まれてもよい。
【0051】
より具体的に、前記芳香族二酸二塩化物としてテレフタロイルジクロライド(terephthaloyl dichloride、TPC)を単独で用い、前記テレフタロイルジクロライド(から誘導された構造単位)の含量が、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)100モルに対して50モル以上、55モル以上、60モル以上、さらに具体的に、50モル~100モルで含まれてもよい。
【0052】
上述したポリアミドイミド樹脂は、AB-TFMBとともに、上述した範囲で前記芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位を含むことで、モジュラスなどの機械的物性がさらに増加するだけでなく、厚さ方向のレターデーションの増加や、光学的物性の劣化を減少させることができ、それをフレキシブルディスプレイのウィンドウカバーフィルムなどに適用しても画面歪みを減少させることができる。より具体的に、前述したように、TPCとともに、リジッド(rigid)性が良好でありながらもアミド結合(amide bond、-NHCO-)を含むAB-TFMBをともに用いることで、目的のように、モジュラスが6GPa以上であり、ASTM D1003に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が87%以上、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下、ASTM E313に準じた黄色度が5以下である物性を同時に満たすフィルムを提供することができる。
【0053】
また、必要に応じては、前記芳香族二酸二塩化物としては、イソフタロイルジクロライド(IPC)およびテレフタロイルジクロライド(TPC)を混合して用いてもよい。
【0054】
前記二無水物は、芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
前記芳香族二無水物は、少なくとも1つの芳香族環を含む二無水物を意味し、前記芳香族環は、単環であるか;2つ以上の芳香族環が縮合した縮合環であるか;または2つ以上の芳香族環が単結合、置換または非置換のC1~C5アルキレン基、OまたはC(=O)により連結された非縮合環であってもよい。
【0055】
具体的に、前記芳香族二無水物は、ベンゼン環、2つ以上のベンゼン環が単結合により連結された非縮合環、2つ以上のベンゼン環が1つ以上のトリフルオロメチル基で置換されたメチレン基により連結された非縮合環、またはこれらの組み合わせを含む二無水物を含んでもよい。
【0056】
より具体的に、前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(6HDBA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、またはこれらの組み合わせを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
一例として、前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、例えば、前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)を含んでもよいが、これに限定されず、必要に応じて上述した芳香族二無水物をさらに含んでもよい。
【0058】
前記環状脂肪族二無水物は、少なくとも1つの置換または非置換のC3~C60脂肪族環を含む二無水物を意味し、前記置換または非置換のC3~C60脂肪族環は、置換または非置換のC3~C60シクロアルカン、置換または非置換のC3~C60シクロアルケン、またはこれらの組み合わせを含む。
【0059】
具体的に、前記環状脂肪族二無水物は、置換または非置換のシクロブタン、置換または非置換のシクロペンタン、置換または非置換のシクロヘキサン、置換または非置換のシクロヘプタン、置換または非置換のシクロオクタン、置換または非置換のシクロブテン、置換または非置換のシクロペンテン、置換または非置換のシクロヘキセン、置換または非置換のシクロヘプテン、置換または非置換のシクロオクテン、またはこれらの組み合わせを含む二無水物を含んでもよい。
【0060】
より具体的に、前記環状脂肪族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BTA)、ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BODA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物(TMDA)、1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタン二無水物(TCDA)、またはこれらの組み合わせを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0061】
一例として、前記環状脂肪族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を含んでもよいが、これに限定されず、必要に応じて上述した環状脂肪族二無水物をさらに含んでもよい。
【0062】
一例として、前記二無水物は、1つまたは2つ以上の芳香族二無水物、および1つまたは2つ以上の環状脂肪族二無水物を含んでもよく、ここで、前記芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物は、それぞれ前述したとおりである。
【0063】
より具体的に、本発明の一態様は、芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミド樹脂であって、
前記芳香族ジアミンは、前記化学式1のAB-TFMBを含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド(TPC)を含み、
前記二無水物は、芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上の化合物を含んでもよい。ここで、前記芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物は、前述したとおりである。
【0064】
より具体的に例を挙げると、非制限的な例として、本発明の第1態様は、芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミド樹脂であって、
前記芳香族ジアミンは、AB-TFMBを含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、TPCを含み、
前記二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6-FDA)およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から選択される何れか1つまたはこれらの混合物である芳香族二無水物を含んでもよい。
【0065】
本発明の第2態様は、芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミド樹脂であって、
前記芳香族ジアミンは、AB-TFMBを含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、TPCを含み、
前記二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含む環状脂肪族二無水物を含んでもよい。
【0066】
本発明の第3態様は、芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された単位を含むポリアミドイミド樹脂であって、
前記芳香族ジアミンは、AB-TFMBを含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、TPCを含み、
前記二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6-FDA)およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から選択される何れか1つまたはこれらの混合物である芳香族二無水物と、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含む環状脂肪族二無水物とを含んでもよい。
【0067】
本発明の第4態様は、芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミド樹脂であって、
前記芳香族ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)およびAB-TFMBを含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、TPCを含み、
前記二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6-FDA)およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から選択される何れか1つまたはこれらの混合物である芳香族二無水物を含んでもよい。
【0068】
本発明の第5態様は、芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミド樹脂であって、
前記芳香族ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)およびAB-TFMBを含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、TPCを含み、
前記二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含む環状脂肪族二無水物を含んでもよい。
【0069】
本発明の第6態様は、芳香族ジアミンから誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミドフィルムであって、
前記芳香族ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)およびAB-TFMBを含み、
前記芳香族二酸二塩化物は、TPCを含み、
前記二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6-FDA)およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から選択される何れか1つまたはこれらの混合物、および1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含む環状脂肪族二無水物である芳香族二無水物を含んでもよい。
【0070】
以上、前記第1態様~第6態様は、本発明の一態様をさらに具体的に説明するために例示したものにすぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
一例として、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位):前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された構造単位)および前記二無水物(から誘導された構造単位)の和の当量比は、1:0.9~1.1であってもよく、例えば1:0.95~1.05、例えば1:0.99~1.01であってもよく、例えば1:1に近接することがより好ましい。前記範囲を満たす場合、ポリアミドイミド樹脂からフィルムを成形する際、製膜特性を含むフィルムの物性がさらに向上することができる。
【0071】
一例として、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)は、前記二無水物(から誘導された構造単位)よりも多く含まれてもよい。
一例として、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)は、前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された構造単位)よりも多く含まれてもよい。
【0072】
一例として、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)100モルに対して、前記二無水物(から誘導された構造単位)が5~80モルで含まれ、前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された構造単位)が20~80モルで含まれてもよく;具体的に、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)100モルに対して、前記二無水物(から誘導された構造単位)が30~80モルで含まれ、前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された構造単位)が30~70モルで含まれてもよく;より具体的に、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)100モルに対して、前記二無水物(から誘導された構造単位)が40~65モルで含まれ、前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された構造単位)が35~60モルで含まれてもよい。
【0073】
より具体的に、前記ポリアミドイミド樹脂は、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)、前記芳香族二無水物(から誘導された構造単位)、前記環状脂肪族二無水物(から誘導された構造単位)、および前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された構造単位)を含んでもよい。この場合、前記芳香族ジアミン(から誘導された構造単位)100モルに対して、前記芳香族二無水物(から誘導された構造単位)5~50モル、前記環状脂肪族二無水物(から誘導された構造単位)5~30モル、前記芳香族二酸二塩化物(から誘導された構造単位)50~80モルを含んでもよい。
【0074】
前記範囲で、目的とするモジュラスおよび光学的物性を同時に満たすフィルムを提供することができる。前記含量範囲は、目的とする物性を満たすために例示する一例であって、単量体の組成に応じて変更可能であり、これに制限されるものではない。
【0075】
一例として、前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、200,000g/mol以上、例えば250,000g/mol以上、例えば300,000g/mol以上であってもよく、また、例えば500,000g/mol以下、例えば400,000g/mol以下であってもよく、より具体的に、250,000~400,000g/molであってもよい。これにより、機械的物性にさらに優れるとともに、繰り返しの曲げを加える場合にもクラックが発生しない、さらに優れた動的曲げ特性を提供することができる。
【0076】
一例として、前記ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度は制限されないが、300~400℃、より具体的に、330~380℃であってもよい。
【0077】
これにより、モジュラスが高く、機械的強度に優れ、光学的物性に優れ、カール発生の少ないフィルムを提供することができるため好まれるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0078】
他の実施形態によると、前述したポリアミドイミド樹脂、および溶媒を含むポリアミドイミド樹脂組成物を提供する。
一例として、前記溶媒は、有機溶媒であってもよく、具体的に、極性溶媒であってもよく、より具体的に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルスルホキシド(DMSO)、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、アセトン、エチルアセテート、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン(GBL)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記ポリアミドイミド樹脂組成物は、前述したポリアミドイミド樹脂組成物の他に、必要に応じて添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、膜形成性、接着性、光学的物性、機械的物性、難燃性などを向上させるためのものであってもよく、例えば、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および/または可塑剤であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0080】
また他の実施形態によると、前述したポリアミドイミド樹脂を含むポリアミドイミド樹脂フィルムを提供する。
一例として、前記ポリアミドイミドフィルムは、モジュラスが6GPa以上であり、ASTM D1003に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が87%以上、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下、ASTM E313に準じた黄色度が5以下である物性を同時に満たすことができる。
【0081】
より具体的に、前記ポリアミドイミドフィルムは、モジュラスが6GPa以上、7GPa以上、具体的には6~10GPaであり、ASTM D1003に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が87%以上、88%以上、または89%以上、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下、1.5%以下、または1.0%以下、ASTM E313に準じた黄色度が5以下、4以下、3以下である物性を同時に満たすことが好ましい。
一例として、前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが1~500μm、例えば10~250μm、例えば10~100μmであってもよい。
【0082】
以下、本発明の一実施形態に係るポリアミドイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂組成物、およびポリアミドイミドフィルムを製造する方法をより具体的に説明する。
【0083】
本発明において、モジュラスが6GPa以上であり、ASTM D1003に準じて400~700nmで測定された全光線透過率が87%以上、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下、ASTM E313に準じた黄色度が5以下である物性を同時に満たすことができるフィルムが製造されるのであれば、その製造方法は制限されず、後述の方法は、一例として具体的に例示するものにすぎず、前記物性を満たすフィルムが製造されるのであれば、後述の方法に制限されない。
【0084】
本発明のフィルムは、ポリアミドイミド系樹脂および溶媒を含む「樹脂組成物」を基材上に塗布した後、乾燥または乾燥および延伸して製造されてもよい。本発明のフィルムは、溶液キャスティング方法により製造されてもよい。
【0085】
より具体的に、芳香族ジアミン、芳香族二酸二塩化物、および芳香族二無水物および環状脂肪族二無水物から選択される何れか1つ以上の二無水物を反応させてポリアミック酸溶液を製造するステップと、前記ポリアミック酸溶液をイミド化してポリアミドイミド樹脂を製造するステップと、前記ポリアミドイミド樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂組成物を塗布して製膜するステップとを含んで製造されてもよい。
【0086】
または、芳香族ジアミン、芳香族二酸二塩化物、芳香族二無水物、および環状脂肪族二無水物を反応させてポリアミック酸溶液を製造するステップと、前記ポリアミック酸溶液をイミド化してポリアミドイミド樹脂を製造するステップと、前記ポリアミドイミド樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂組成物を塗布して製膜するステップとを含んで製造されてもよい。
【0087】
先ず、ポリアミック酸溶液を製造する場合について説明する。
前記ポリアミック酸溶液は、上述した単量体の溶液であり、溶液中に重合反応のために有機溶媒を含む。前記有機溶媒は、その種類が大きく制限されるものではなく、一例として、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルスルホキシド(DMSO)、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、アセトン、エチルアセテート、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン(GBL)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の極性溶媒であってもよい。
【0088】
ポリアミック酸を製造するためには、上述した単量体を同時に重合してもよく、または芳香族ジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させてアミン末端を有するオリゴマーを製造した後、前記オリゴマーと追加の芳香族ジアミンおよび二無水物を反応させてポリアミック酸溶液を製造してもよい。オリゴマーを製造した後にさらに重合する場合にはブロック型ポリアミドイミドが製造され、フィルムの機械的物性がさらに向上することができる。
【0089】
オリゴマーを製造するステップは、反応器にて、芳香族ジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させるステップと、得られたオリゴマーを精製して乾燥するステップとを含んでもよい。この場合、芳香族ジアミンを芳香族二酸二塩化物に対して1.01~2モル比で投入し、アミン末端ポリアミドオリゴマーを製造することができる。前記オリゴマーの分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が1,000~3,000g/molであってもよい。
【0090】
次に、ポリアミック酸溶液を製造するステップは、製造されたオリゴマーと、フッ素系芳香族ジアミン、二無水物を有機溶媒中で反応させる溶液重合反応により行うことができる。
【0091】
次に、製造されたポリアミック酸をイミド化してポリアミドイミド樹脂を製造する。この際、化学的イミド化により行われてもよく、イミド化触媒および脱水剤の中から選択された何れか1つまたは2つ以上をさらに含んでイミド化してもよい。
【0092】
前記イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)、およびβ-キノリン(β-quinoline)などから選択される何れか1つまたは2つ以上を用いてもよい。また、脱水剤としては、酢酸無水物(acetic anhydride)、フタル酸無水物(phthalic anhydride)、およびマレイン酸無水物(maleic anhydride)などから選択される何れか1つまたは2つ以上を用いてもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0093】
また、ポリアミック酸溶液に、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などの添加剤を混合してポリアミドイミド樹脂を製造してもよい。
【0094】
また、イミド化を行った後、溶媒を用いて樹脂を精製して固形分を得、これを溶媒に溶解させてポリアミドイミド樹脂組成物(樹脂組成物)を得ることができる。溶媒は、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0095】
ポリアミドイミド樹脂組成物を用いて製膜するステップは、ポリアミドイミド樹脂組成物を基材に塗布した後に熱処理してフィルムを成形するステップである。
【0096】
基材としては、例えば、ガラス、ステンレス、またはフィルムなどを用いてもよいが、これに制限されない。塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、スピンコーティングなどにより行われてもよい。
【0097】
前記熱処理は、一実施形態として、段階的に行うことが良い。好ましくは、80~100℃で1分~2時間、100~200℃で1分~2時間、250~300℃で1分~2時間段階的な熱処理をして行われてもよい。より好ましくは、各温度範囲に応じた段階別の熱処理は、30分~2時間行うことがさらに良い。この際、段階的な熱処理は、各段階に移動時、好ましくは、1~20℃/minの範囲で昇温させることがさらに良い。また、熱処理は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行ってもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。また、塗布は、アプリケータ(applicator)を用いて支持体上にフィルムに成形することができる。
【0098】
本発明は、上述したポリアミドイミドを用いて多様な形態の成形品を製造することができる。一例として、フィルム、保護膜、または絶縁膜を含むプリント配線板、フレキシブル回路基板などに適用可能であり、これに制限されない。好ましくは、カバーガラスを代替可能な保護フィルムに適用することができ、ディスプレイを含めて多様な産業分野でその応用の幅が広いという長所がある。
より具体的に、フレキシブルディスプレイなどのウィンドウカバーフィルムを用いることができる。
【0099】
<機能性コーティング層>
本発明の一態様により、前記機能性コーティング層は、本発明の一態様に係るポリアミドイミドフィルムの機能性を付与するための層であり、目的に応じて多様に適用されてもよい。
【0100】
具体的な例を挙げると、前記機能性コーティング層は、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、反射防止層、および衝撃吸収層から選択される何れか1つ以上の層を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
前記機能性コーティング層の厚さは制限されないが、1~500μm、より具体的に、2~450μmであってもよい。
【0101】
<フレキシブルディスプレイパネル>
本発明の一態様は、前記一態様に係るポリアミドイミドフィルム、それを含むウィンドウカバーフィルム、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置を提供することができる。
【0102】
この際、前記ウィンドウカバーフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置の最外面ウィンドウ基板として用いられることができる。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0103】
上述した本発明のウィンドウカバーフィルムを含むディスプレイ装置は、表示される表示品質に優れるだけでなく、光による歪み現象が顕著に低減されることで、優れた視認性によりユーザの目の疲労感を最小化させることができる。
【0104】
以下、本発明の具体的な説明のために一実施例を挙げて説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
測定方法
本発明の物性は、次のように測定した。
【0105】
[1]重量平均分子量
0.05MのLiClを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCは、Waters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Refractive Index detectorを利用し、カラムは、Olexis、Polypore、およびmixed Dカラムを連結し、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を用いた。この際、35℃、1mL/minのflow rateで分析した。
【0106】
[2]モジュラスおよび破断伸び
長さ50mmおよび幅10mmのポリアミドイミドフィルムを25℃、50mm/minで引っ張る条件で、Instron社製のUTM 3365を用いて測定した。
【0107】
フィルムの厚さを測定し、その値を機器に入力した。モジュラスの単位はGPaであり、破断伸びの単位は%である。ASTM D882に準じて測定した。
【0108】
[3]光透過率
ASTM D1003の規格に準じて測定する。光透過率測定器(Nippon Denshoku社製、COH-5500)を用いて、各実施例および比較例で製造されたフィルムを400~700nmの波長領域全体で測定された全光線透過率を測定した。単位は%である。
【0109】
[4]ヘイズ(haze)
ASTM D1003の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社製、COH-5500)を用いて測定した。単位は%である。
【0110】
[5]黄色度(YI)
ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社製、COH-5500)を用いて測定した。
【0111】
[実施例1]
<ポリアミドイミド樹脂組成物の製造>
窒素雰囲気下で、反応器に、下記表1に記載された組成で、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れ、十分に撹拌させた後、テレフタロイルジクロライド(TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。
その後、過量の水を用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を90℃で6時間以上真空乾燥してオリゴマーを得た。
【0112】
再び窒素雰囲気下で、反応器に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、前記オリゴマーと、追加のAB-TFMB(2,2’-bis(trifluoromethyl)-4,4’-bis(4-aminobenzoyl amino)biphenyl)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて芳香族ジアミンを100モルとなるようにし、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)および4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)を下記表1のようなモル比となるように順次投入し、40℃で12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体の量は下記表1の組成比のとおりであり、固形分の含量が10重量%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。
【0113】
次いで、溶液にピリジン(Pyridine)および酢酸無水物(Acetic Anhydride)をそれぞれ二無水物の総含量に対して2.5倍モルで順次投入し、60℃で12時間撹拌し、ポリアミドイミド樹脂を含む組成物を製造した。前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は310,000g/molであった。
【0114】
<フィルムの製造>
前記ポリアミドイミド樹脂を含む組成物をガラス基板上にアプリケータ(applicator)を用いて溶液キャスティングした。その後、乾燥オーブンで90℃で30分間1次乾燥した後、N条件の硬化オーブンで280℃で30分間熱処理した後に常温に冷却させ、ガラス基板上に形成されたフィルムを基板から分離してポリアミドイミドフィルムを得た。
製造されたフィルムの物性を測定して下記表2に示した。
【0115】
[実施例2~10]
<ポリアミドイミド樹脂組成物の製造>
前記実施例1において、モル比を下記表1のように変更したことを除き、実施例1と同様に製造した。製造されたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量を下記表1に示した。
【0116】
<フィルムの製造>
前記実施例1と同様にフィルムを製造し、製造されたフィルムの物性を測定して下記表2に示した。
【0117】
[実施例11および12]
<ポリアミドイミド樹脂組成物の製造>
窒素雰囲気下で、反応器に、下記表1に記載された組成で、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)およびAB-TFMBを入れ、十分に撹拌させた後、テレフタロイルジクロライド(TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させた。
その後、過量の水を用いて沈殿および濾過させて得た反応生成物を90℃で6時間以上真空乾燥してオリゴマーを得た。
【0118】
再び窒素雰囲気下で、反応器に、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、前記オリゴマーと、追加のAB-TFMB(2,2’-bis(trifluoromethyl)-4,4’-bis(4-aminobenzoyl amino)biphenyl)を入れて芳香族ジアミンを100モルとなるようにし、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)および4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)を下記表1のようなモル比となるように順次投入し、40℃で12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体の量は下記表1の組成比のとおりであり、固形分の含量が10重量%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。
【0119】
次いで、溶液にピリジン(Pyridine)および酢酸無水物(Acetic Anhydride)をそれぞれ二無水物の総含量に対して2.5倍モルで順次投入し、60℃で12時間撹拌し、ポリアミドイミド樹脂を含む組成物を製造した。前記ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、下記表1に記載されたとおりである。
【0120】
<フィルムの製造>
前記実施例1と同様にフィルムを製造し、製造されたフィルムの物性を測定して下記表2に示した。
【0121】
[比較例1~5]
モル比を下記表1のように変更したことを除き、実施例1と同様にポリアミドイミド樹脂およびフィルムを製造した。
【0122】
比較例5の場合、実施例1で製造されたオリゴマーと、追加の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて芳香族ジアミンを100モルとなるようにし、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を下記表1のようなモル比となるように順次投入し、40℃で12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリアミック酸樹脂組成物を製造した。この際、各単量体の量は下記表1の組成比のとおりであり、固形分の含量が10重量%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。それ以外は、実施例1と同様に製造した。
製造された樹脂の物性を下記表1に示し、フィルムの物性を下記表2に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
評価1.膜形成性の評価
前記実施例および比較例によるポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムの厚さを薄膜厚さ測定器(TESA社製のμ-hite)でそれぞれ3回ずつ測定し、その平均値を前記表1に記載した。
【0126】
実施例1~12のポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムは、フレキシブルウィンドウカバーフィルムとして使用するのに十分な厚さを有する膜の形成が可能であることを確認することができる。
【0127】
評価2.機械的物性の評価
前記実施例および比較例のポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムのモジュラスおよび破断伸びを上述した測定方法により測定し、前記表2にその結果を示した。
【0128】
表2を参照すると、実施例のポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムは、比較例のポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムと比べて、同等または高い破断伸びを維持しながらも、7GPa以上の高いモジュラスを有するため、優れた機械的物性を有することを確認することができる。
【0129】
評価3.光学的物性の評価
前記実施例および比較例のポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムの光透過率、ヘイズ、および黄色度を上述した測定方法により測定し、前記表2にその結果を示した。
【0130】
前記表2を参照すると、実施例のポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムは、何れもASTM D1003に準じて400~700nmの波長で測定された全光線透過率が87%以上であり、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下であり、ASTM E313に準じた黄色度が5以下である。よって、実施例のポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムは、フレキシブルウィンドウカバーフィルムとして使用するのに十分な光学的物性を有し、比較例のポリアミドイミド樹脂から製造されたポリアミドイミドフィルムと比べて優れるかまたは同等なレベルの光学的物性を有することを確認することができる。
【0131】
整理すると、前記実施例のポリアミドイミド樹脂は、フレキシブルディスプレイ用ウィンドウカバーフィルムに適用するのに十分な厚さのポリアミドイミドフィルムを形成することができ、前記ポリアミドイミドフィルムは、優れた光学的物性を維持しながらも、優れた機械的物性を示すことができる。
【0132】
以上、限定された実施形態により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0133】
よって、本発明の思想は、説明された実施形態に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。