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特開2022-109892検体採取用スワブ、および検体採取用スワブの製造方法
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  • 特開-検体採取用スワブ、および検体採取用スワブの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109892
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】検体採取用スワブ、および検体採取用スワブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20220721BHJP
   G01N 1/12 20060101ALI20220721BHJP
   A61F 13/38 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G01N1/04 V
G01N1/04 W
G01N1/12 B
A61F13/38 100
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004060
(22)【出願日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2021004872
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391060546
【氏名又は名称】平和メディク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】黒川 友博
(72)【発明者】
【氏名】中川 信彦
(72)【発明者】
【氏名】蓑谷 章一
【テーマコード(参考)】
2G052
3B200
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB16
2G052AD06
2G052AD12
2G052AD26
2G052AD32
2G052AD46
2G052BA19
2G052JA02
2G052JA04
2G052JA16
3B200AA09
3B200BA16
3B200BB01
3B200BB20
3B200EA23
(57)【要約】
【課題】検体等の吸着およびリリースの効率が所望の値や一定の値であって、従来よりも良い値とすることができ、従来に比べて容易な製造方法で製造できる検体採取用スワブを提供すること。
【解決手段】本願の発明が適用された一実施形態である検体採取用スワブ1は、棒状の軸部10と、軸部10の少なくとも一方の端部15に形成されており、検体を採取するために検体を付着させる検体採取部20と、を備え、検体採取部20は、軸部10の端部15の表面に対して、繊度が3.4Dtex~6.7Dtexの複数の所定の繊維のみが均一な厚さの層を形成するように紫外線硬化樹脂からなる所定の接着剤によって接着されていることを要旨とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の軸部と、
前記軸部の少なくとも一方の端部に形成されており、検体を採取するために前記検体を付着させる検体採取部と、
を備え、
前記検体採取部は、
前記軸部の前記端部の表面に対して、繊度が3.4Dtex~6.7Dtexの複数の繊維のみが均一な厚さの層を形成するように接着剤によって接着されている
ことを特徴とする検体採取用スワブ。
【請求項2】
請求項1に記載の検体採取用スワブにおいて、
前記検体採取部は、繊度が4.4Dtexの前記複数の繊維で形成されている
ことを特徴とする検体採取用スワブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の検体採取用スワブにおいて、
前記接着剤は、紫外線硬化樹脂からなる接着剤である
ことを特徴とする検体採取用スワブ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の検体採取用スワブにおいて、
前記接着剤は、ウレタンアクリレート樹脂からなる
ことを特徴とする検体採取用スワブ。
【請求項5】
棒状の軸部の少なくとも一方の端部に、検体を採取するために前記検体を付着させる繊維を有する検体採取部が形成された検体採取用スワブを製造する製造方法であって、
回転する前記軸部の前記端部に対して、接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
回転する前記軸部の前記端部に対して、帯電させた3.4Dtex~6.7Dtexの複数の前記繊維を供給することによって、前記接着剤塗布工程で前記端部の表面の前記接着剤が塗布された部分において、前記検体採取部を形成する前記繊維の端部を付着させる繊維供給工程と、
前記接着剤を硬化させて、前記繊維供給工程で前記軸部の端部に付着した前記繊維を固着させる接着剤硬化工程と、
を実行することを特徴とする検体採取用スワブの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の検体採取用スワブの製造方法において、
回転する前記軸部の前記端部に対して、空気を吹付けることによって、前記軸部の表面に対して前記接着剤で接着されていない前記繊維を吹き飛ばして除去する繊維除去工程を、前記接着剤硬化工程の後に実行する
ことを特徴とする検体採取用スワブの製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の検体採取用スワブの製造方法において、
前記接着剤は、紫外線硬化樹脂からなり、
前記接着剤硬化工程において、回転する前記軸部の前記端部に対して紫外線発光素子からの紫外線を照射することによって、前記接着剤を硬化させる
ことを特徴とする検体採取用スワブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学上の検体検査における被検査物である検体を採取するための検体採取用スワブ、および検体採取用スワブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物学上の検体検査における被検査物である検体を採取するための検体採取用スワブとしては、棒状の軸部の一端において、繊維が層をなすように接着されることによって形成された検体採取部を備えるものがあった。この検体採取部としては、様々なものがあるが、例えば、軸部の一端に海島型バイコンポーネント繊維(ポリエチレンテレフタレートの海材料とポリアミドの島材料からなるバイコンポーネント繊維等)を接着させたうえで、この軸部の一端を加熱したアルカリ性溶媒中に浸すことによって、海材料の繊維のみを溶解させて島材料の繊維のみで形成されるものがあった(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-215353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような従来の検体採取用のスワブにおいては、軸部に対して接着されている海材料の繊維のうち溶解していないものが残存してしまう場合があり、特に、検体採取部の表面における海材料の繊維(接着剤から遠い部分)は溶解するものの、海材料の繊維における根本の部分(接着剤から近い部分)や接着剤に埋もれた部分は溶解しないで残存してしまう場合がある。このような場合には、残存した海材料の繊維の量に応じて、検体採取部における検体等の吸着およびリリースの効率が一定の値ではなく様々な値となってしまっていた。また、このような従来の検体採取用のスワブの製造方法においては、不要な海材料の繊維を除去するためにアルカリ性溶媒に浸す工程と、アルカリ性溶媒に浸した後には島材料の繊維を乾燥させるための乾燥工程と、が必要であるため、製造方法が容易なものではなかった。特に、この乾燥工程を十分に実行していない場合には、検体採取部にアルカリ性溶媒が残存してしまって、検体等の吸着およびリリースの効率が十分な値とならず、延いては、歩留まりが悪くなってしまう虞もあった。つまり、検体採取部における検体等の吸着およびリリースの効率を所望の値や略一定の値であって、従来よりも良い値にでき、従来の製造方法に比べて容易に製造できる検体採取用スワブや、従来の製造方法に比べて容易で歩留まりの良い検体採取用スワブの製造方法が求められていた。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、目的の一つとしては、検体採取用スワブであって、検体採取部における検体等の吸着およびリリースの効率を所望の値や略一定の値であって、従来よりも良い値にできる検体採取用スワブを提供することである。また、その他の目的の一つとしては、従来の製造方法に比べ容易に製造できる検体採取用スワブを提供することである。さらに、その他の目的の一つとしては、従来の製造方法に比べ容易で歩留まりの良い検体採取用スワブの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
本発明を適用させた適用例1としての検体採取用スワブ(検体採取用スワブ1,200)は、棒状の軸部(軸部10,210)と、前記軸部の少なくとも一方の端部(端部15,215)に形成されており、検体を採取するために前記検体を付着させる検体採取部(検体採取部20,220)と、を備え、前記検体採取部は、前記軸部の前記端部の表面に対して、繊度が3.4Dtex~6.7Dtexの複数の繊維のみが均一な厚さの層を形成するように接着剤によって接着されていることを要旨とする。
【0008】
また、適用例1の検体採取用スワブにおいて、前記検体採取部は、繊度が4.4Dtexの前記複数の繊維で形成されていてもよい。さらに、適用例1の検体採取用スワブにおいて、前記接着剤は、紫外線硬化樹脂からなる接着剤であってもよい。そして、適用例1の検体採取用スワブにおいて、前記接着剤は、ウレタンアクリレート樹脂からなるものであってもよい。
【0009】
本発明を適用させた適用例2としての検体採取用スワブの製造方法は、棒状の軸部(軸部10)の少なくとも一方の端部(端部15)に、検体を採取するために前記検体を付着させる繊維を有する検体採取部(検体採取部20)が形成された検体採取用スワブ(検体採取用スワブ1)を製造する製造方法であって、回転する前記軸部の前記端部に対して、接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、回転する前記軸部の前記端部に対して、帯電させた3.4Dtex~6.7Dtexの複数の前記繊維を供給することによって、前記接着剤塗布工程で前記端部の表面の前記接着剤が塗布された部分において、前記検体採取部を形成する前記繊維の端部を付着させる繊維供給工程と、前記接着剤を硬化させて、前記繊維供給工程で前記軸部の端部に付着した前記繊維を固着させる接着剤硬化工程と、を実行することを要旨とする。
【0010】
また、適用例2の検体採取用スワブの製造方法において、回転する前記軸部の前記端部に対して、空気を吹付けることによって、前記軸部の表面に対して前記接着剤で接着されていない前記繊維を吹き飛ばして除去する繊維除去工程を、前記接着剤硬化工程の後に実行してもよい。さらに、適用例2の検体採取用スワブの製造方法において、前記接着剤は、紫外線硬化樹脂からなり、前記接着剤硬化工程において、回転する前記軸部の前記端部に対して紫外線発光素子からの紫外線を照射することによって、前記接着剤を硬化させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)は、実施形態の一例である検体採取用スワブ1の概略構成を示す全体図であり、(B)は、検体採取用スワブ1における検体採取部20の概略構成を説明するための検体採取部20の断面図である。
図2-1】検体採取用スワブ1の製造方法を説明するフローチャートである。
図2-2】検体採取用スワブ1の製造装置100の概略構成を示す図である。
図3】3種類の被検スワブの各々における採取・移植可能な検体の量に関する試験の結果を説明するための表である。
図4】(A)は、その他の実施形態の検体採取用スワブ200の概略構成を示す全体図であり、(B)は、検体採取用スワブ200における検体採取部220の概略構成を説明するための検体採取部220の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0013】
図1(A),(B)を参照して、まず、本発明が適用された実施形態の一例である検体採取用スワブ1の全体構成について説明する。図1(A)は、検体採取用スワブ1の概略構成を示す全体図であり、図1(B)は、検体採取用スワブ1における検体採取部20の概略構成を説明するための検体採取部20の断面図である。
【0014】
図1(A)に示すように、検体採取用スワブ1は、熱可塑性樹脂(本実施形態では、ポリアミド樹脂である。)を棒状に成形した軸部10と、所定の繊維(本実施形態では、ポリアミド繊維である。)で形成されており、検体を採取するための1つの検体採取部20と、を備えている。軸部10は、検体の採取時に人間の鼻孔から鼻腔に向けて挿入し易いように、延伸方向の略中央から検体採取部20までが、延伸方向の略中央から検体採取部20が形成されていない一端まで(検体採取の作業者が把持するための把持部)に比べて細くなるように成形されている。検体採取部20は、軸部10の一方の端部15(図1(B)を参照。)に形成されており、所定の繊維が端部15の表面の全面を覆うように当該表面に対して略垂直に接着されている。
【0015】
図1(B)に示すように、検体採取部20においては、約1.0mm長の所定の繊維が軸部10の端部15の表面に対して略垂直をなすように、所定の接着剤(本実施形態では、紫外線硬化樹脂である。)にて接着されている。つまり、検体採取部20においては、軸部10の端部15の全面に亘って所定の繊維による厚さ約1.0mmの繊維層が形成されていることとなる。また、検体採取部20を形成する端部15においては、軸方向と垂直をなす方向の最大直径が、軸部10の把持部における軸方向と垂直をなす方向の直径と略同じとなっている。なお、図1(B)においては、説明の便宜上、検体採取部20の繊維層における所定の繊維が軸部10の端部の表面に対して略垂直をなすように接着されている状態を所定の線影で示している。
【0016】
ここで、検体採取用スワブ1における所定の接着剤について説明する。所定の接着剤としては、紫外線が照射されることによって硬化する紫外線硬化樹脂であって、例えば、ポリエステルベースの接着剤、アクリルベースの接着剤、ポリウレタンベースの接着剤、ポリアミドベースの接着剤、ビニルベースの接着剤、2液性エポキシ接着剤、シリコーン接着剤、シアノアクリレート接着剤、ポリウレタン接着剤、ラテックス接着剤等を使用することができる。特に、本実施形態の検体採取用スワブ1においては、315nm~400nmの波長の紫外線で硬化する接着剤であって、粘度(25℃)が100mPa・s~10000mPa・s(特に、1500mPa・s~3500mPa・s)のウレタンアクリレート樹脂が好ましい。
【0017】
また、ここで、検体採取用スワブ1における所定の繊維について説明する。所定の繊維としては、親水性を有する繊維であって、例えば、ポリアミド、レーヨン、ポリエステル、炭素繊維、アルギネート、綿、絹等や、これらの混紡で構成される繊維を使用することができる。また、所定の繊維の長さについては、0.5mm~3.0mmであればよく、特に、本実施形態の検体採取用スワブ1においては、0.6mm~1.0mmが好ましい。さらに、所定の繊維の繊度については、1.7Dtex~6.7Dtexであればよく、本実施形態の検体採取用スワブ1においては、3.4Dtex~6.7Dtexが好ましく、特に、3.4Dtex~4.4Dtexが好ましい。
【0018】
<検体採取用スワブ1の製造方法>
図2-1、および図2-2を参照して、次に、本実施形態の検体採取用スワブ1の製造方法について説明する。図2-1は、検体採取用スワブ1の製造方法を説明するフローチャートである。図2-2は、検体採取用スワブ1の製造装置100の概略構成を示す図である。なお、以下で説明する本実施形態の検体採取用スワブ1の製造方法において、所定の接着剤としては、315nm~400nmの波長の紫外線で硬化し、粘度(25℃)が1500mPa・s~3500mPa・sのウレタンアクリレート樹脂を使用し、所定の繊維としては、4.4Dtexで、1.0mm長のポリアミド繊維を使用するものとする。
【0019】
図2-1に示すように、検体採取用スワブ1の製造方法では、軸部10の検体採取部20が形成される端部15に所定の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、帯電させた状態の1.0mm長の複数の所定の繊維が軸部10に付着するように複数の所定の繊維を供給する繊維供給工程と、軸部10の接着剤が塗布された端部15に対して紫外線を照射することによって接着剤を硬化させる接着剤硬化工程と、軸部10に対して空気を吹付けることによって接着されていない不要な繊維を除去する不要繊維除去工程と、が実行される。
【0020】
図2-2に示すように、製造装置100は、搬送装置105、軸部加工装置110、繊維加工装置120、繊維供給装置130、紫外線照射装置140、不要繊維除去装置150、を備えている。搬送装置105は、軸部加工装置110等の各装置における製造工程が実行されるために、複数の軸部10が軸部加工装置110等の各装置を通過するように、複数の軸部10を所定の間隔を空けて進行方向へ順次搬送する装置である。また、搬送装置105は、複数の軸部10が所定の間隔で載置された状態で任意の速さで作動することによって複数の軸部10を搬送するコンベア部106と、コンベア部106とで複数の軸部10を挟むような位置でコンベア部106上の複数の軸部10に接触するように固定された固定ベルト107と、載置された軸部10における進行方向の逆方向への移動を制限するようにコンベア部106上に設けられたストッパ(図示しない)と、を備えている。ここで、搬送装置105による複数の軸部10の搬送について具体的に説明する。搬送装置105において、コンベア部106上に載置された軸部10は、コンベア部106と固定ベルト107とによって挟まれた状態で進行方向に搬送されているため、軸を中心に進行方向の逆方向へ回転させるための応力が作用され、コンベア部106の作動の速さに応じた速さで回転しながら進行方向に搬送される(約2秒で1回転しながら搬送される)こととなる。なお、コンベア部106上の軸部10は、ストッパに係止されるとともに軸を中心にして回転可能な状態で進行方向に搬送されるように構成されている。また、コンベア部106は、図示しない搬送装置の制御部(図示しない)によって作動の速さを任意に変更可能であるようにも構成されている。
【0021】
軸部加工装置110は、搬送装置105で搬送される軸部10に対して所定の加工を施すためのものであり、軸部10の検体採取部20が形成される端部15に所定の接着剤を塗布する接着剤塗布工程を実行する装置である。軸部加工装置110は、搬送装置105のコンベア部106に軸部10を1本ずつ載置させる軸供給部(図示しない)と、軸部10の端部15に接着剤を塗布するための接着剤塗布器118と、を備えている。この軸部加工装置110における接着剤塗布工程によって、軸部10における検体採取部20が形成される端部15の全面に亘って所定の接着剤が塗布されることとなる。
【0022】
繊維加工装置120は、繊維供給装置130で供給される所定の繊維を加工するためのものであり、所定の繊維を約1.0mm長に切断してバラケさせるとともに、約1.0mm長の複数の所定の繊維を帯電させる装置である。繊維加工装置120は、所定の繊維からなるスライバーを約1.0mm長に切断するとともにバラケさせる切断器と、約1.0mmの複数の所定の繊維を帯電させるための静電気を発生させる静電気発生器と、を備えている。
【0023】
繊維供給装置130は、搬送装置105で搬送されている軸部10に対して繊維加工装置120で加工された所定の繊維を供給するためのものであり、帯電している約1.0mm長の複数の所定の繊維を軸部10の接着剤が塗布された端部15に付着させる繊維供給工程を実行する装置である。繊維供給装置130は、繊維加工装置120で加工された約1.0mm長の複数の所定の繊維を霧雲状に対流させるための空間である空間部(図示しない)と、約1.0mm長の複数の所定の繊維が霧雲状で対流するように空間部に空気を供給するエアー供給器(図示しない)と、を備えている。ここで、繊維供給装置130における繊維供給工程について、具体的に説明する。搬送装置105で繊維供給装置130に搬送された軸部10は、約1.0mm長の複数の所定の繊維が霧雲状に対流している空間部を通過する。このとき、複数の所定の繊維が通過する軸部10に付着することとなり、特に、約1.0mm長の複数の所定の繊維は、各々が静電気で帯電しているため、軸部10の表面に対して略垂直をなすように付着する。つまり、繊維供給装置130での繊維供給工程によって、約1.0mm長の複数の所定の繊維が、軸部10の接着剤が塗布された端部15に、端部15の表面に対して略垂直をなすように全面に亘って付着することとなる。
【0024】
紫外線照射装置140は、軸部10の端部15に塗布された接着剤を硬化させるためのものであり、搬送装置105で搬送されている軸部10の接着剤が塗布された端部15に対して、紫外線発光素子(例えば、紫外線発光ダイオード)を光源とする紫外線(315nm~400nmの波長であって、特に、365nmの波長の紫外線)を約2秒~3秒間照射して接着剤を硬化させる接着剤硬化工程を実行するための装置である。ここで、上述の通り搬送装置105で搬送されている軸部10は約2秒で1回転するように回転しながら搬送されており、搬送されている軸部10の端部15に対する約2秒~3秒間の紫外線の照射によって、端部15に塗布された所定の接着剤に対して満遍なく紫外線が照射されることとなる。つまり、紫外線照射装置140での接着剤硬化工程によって、軸部10の接着剤が塗布された端部15に付着している約1.0mm長の複数の所定の繊維のみが、端部15の表面に対して略垂直をなすように固着され、検体採取部20が形成されることとなる。
【0025】
不要繊維除去装置150は、軸部10に対して空気を吹付けることによって不要な所定の繊維を吹き飛ばすためのものであり、搬送装置105で搬送されている軸部10の全体に対して所定の空気圧の空気を吹付けることによって固着されていない所定の繊維を吹き飛ばして除去する不要繊維除去工程を実行するための装置である。つまり、この不要繊維除去装置150における不要繊維除去工程によって、繊維供給工程において軸部10に付着している複数の所定の繊維、および接着剤硬化工程において端部15に対して固着されていない複数の所定の繊維が、吹付けられる所定の空気圧の空気によって吹き飛ばされ除去されることによって、検体採取用スワブ1が形成されることとなる。
【0026】
<種々の検体採取用スワブにおける採取・移植可能な検体量の比較>
図3を参照して、次に、3種類の検体採取用スワブである被検スワブの各々における採取・移植可能な検体の量に関する試験の結果を説明する。図3は、3種類の被検スワブの各々における採取・移植可能な検体の量に関する試験の結果を説明するための表である。ここで、3種類の被検スワブとは、従来の検体採取用スワブである従来スワブと、本実施例の一例の検体採取用スワブである実施スワブ1と、本実施例の一例の検体採取用スワブである実施スワブ2と、である。具体的に、従来スワブは、検体採取部が3.3Dtexで1.0mm長のポリアミド繊維で構成されているものであり、実施スワブ1は、検体採取部が3.4Dtexで1.0mm長のポリアミド繊維で構成されているものであり、実施スワブ2は、検体採取部が4.4Dtexで1.0mm長のポリアミド繊維で構成されている検体採取用スワブ1に相当するものである。なお、実施スワブ1および実施スワブ2は、上述の<検体採取用スワブ1の製造方法>にて説明した方法と同じ方法で製造されたものである。また、当該試験における検体としては、Haemophilus influenzae ATCC10211を対象菌種として使用した。
【0027】
また、当該試験の手順等の概要について説明する。なお、当該試験については、CLSI M40-A2を参考にした方法で実施した。また、3種の被検スワブの各々について、下記の試験の手順のうちの(3)~(6)を5回実施した。
(1)5%CO条件下において、対象菌種を前培養用培地(チョコレートHP寒天培地)で24時間の前培養を行う。
(2)前培養にて得られたものに基づいて菌液調整し、10倍に希釈した調整菌液を作製する。
(3)調整菌液を100μLの培地に広げたものを3つ作製し、1つの培地に対して、3種の被検スワブのうちの一つを浸して15秒間静置する。
(4)3種の被検スワブの各々の検体採取部において採取された菌液の各々を、900μLの滅菌生理食塩水中に洗い出し、管壁を使い検体採取部から可能な限りの菌液を搾り出す。
(5)搾り出した菌液を菌数測定用培地(チョコレートHP寒天培地)に滴下し、コンラージ棒で塗り広げて、5%CO条件下で48時間培養を行う。
(6)上記の培養後の菌数測定用培地における発育集落数をカウントする。
【0028】
図3に示すように、上述の試験の結果として、従来スワブでは、菌量が2155×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(78.3±18.9)×10cfu/mL(最小で50×10cfu/mL、最大で105×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が3.63%となった。また、実施スワブ1では、菌量が2565×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(135±21.9)×10cfu/mL(最小で102×10cfu/mL、最大で156×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が5.26%となった。そして、実施スワブ2では、菌量が1290×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(88.7±16.4)×10cfu/mL(最小で74.5×10cfu/mL、最大で115×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が6.88%となった。なお、図3において、検体採取部に移植された菌量である「スワブ移植」の数値は、5回の測定の平均値±標準偏差値であり、「スワブ移植(最小~最大)」の数値は、5回の測定での実測値であって最小値と最大値である。また、移植された菌量の割合とは、検体採取部から洗い出した菌液の菌量平均値/調整菌液の菌量×100、の計算式にて算出された値である。
【0029】
また、ここで、図示していないが、上述の菌種とは異なる菌種を対象菌種として、上述の試験と略同じ手順で実施した試験結果についても説明する。まず、対象菌種としてPseudomonas aeruginosa ATCC27853を使用した場合(好気条件下において前培養用培地(羊血液寒天培地)で24時間の前培養を行い、通常大気条件下において菌数測定用培地(トリプトソーヤ寒天培地)で24時間培養を行ったものとする。)について説明する。この試験の結果として、従来スワブでは、菌量が1170×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(80.1±12.1)×10cfu/mL(最小で69.5×10cfu/mL、最大で99×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が6.85%となった。また、実施スワブ1では、菌量が1170×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(104±19.9)×10cfu/mL(最小で80×10cfu/mL、最大で130×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が8.89%となった。そして、実施スワブ2では、菌量が1370×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(102±5.18)×10cfu/mL(最小で96×10cfu/mL、最大で108×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が7.44%となった。
【0030】
次に、対象菌種としてStreptococcus pyogenes ATCC19615を使用した場合(5%CO条件下において前培養用培地(羊血液寒天培地)で24時間の前培養を行い、5%CO条件下において菌数測定用培地(羊血液寒天培地)で24時間培養を行ったものとする。)について説明する。この試験の結果として、従来スワブでは、菌量が645×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(23±5.5)×10cfu/mL(最小で15.7×10cfu/mL、最大で31×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が3.57%となった。そして、実施スワブ2では、菌量が815×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(32±10.1)×10cfu/mL(最小で24×10cfu/mL、最大で46×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が3.93%となった。
【0031】
次に、対象菌種としてStreptococcus pneumоniae ATCC6305を使用した場合(5%CO条件下において前培養用培地(羊血液寒天培地)で24時間の前培養を行い、5%CO条件下において菌数測定用培地(羊血液寒天培地)で48時間培養を行ったものとする。)について説明する。この試験の結果として、従来スワブでは、菌量が615×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(22.1±4.0)×10cfu/mL(最小で18.5×10cfu/mL、最大で28×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が3.59%となった。そして、実施スワブ2では、菌量が490×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(29.4±4.1)×10cfu/mL(最小で23×10cfu/mL、最大で34×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が5.99%となった。
【0032】
そして、対象菌種としてNeisseria gonorrhoeae ATCC43069を使用した場合(5%CO条件下において前培養用培地(チョコレートHP寒天培地)で24時間の前培養を行い、5%CO条件下において菌数測定用培地(チョコレートHP寒天培地)で48時間培養を行ったものとする。)について説明する。この試験の結果として、従来スワブでは、菌量が1070×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(26.2±8.3)×10cfu/mL(最小で17.5×10cfu/mL、最大で40×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が2.45%となった。また、実施スワブ1では、菌量が402×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(36.6±14.2)×10cfu/mL(最小で19×10cfu/mL、最大で54×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が9.1%となった。そして、実施スワブ2では、菌量が850×10cfu/mLの調整菌液を使用した場合、検体採取部に移植された菌量が(60.9±14.3)×10cfu/mL(最小で42×10cfu/mL、最大で77.5×10cfu/mL)となり、移植された菌量の割合が7.16%となった。
【0033】
<検体採取用スワブ1および検体採取用スワブ1の製造方法の特徴>
上述の実施形態の検体採取用スワブ1によれば、検体採取用スワブ1は、棒状の軸部10と、軸部10の少なくとも一方の端部15に形成されており、検体を採取するために検体を付着させる検体採取部20と、を備え、検体採取部20は、軸部10の端部15の表面に対して、繊度が3.4Dtex~6.7Dtexの複数の繊維のみが均一な厚さの層を形成するように接着剤によって接着されているものとすることができる。
【0034】
このような検体採取用スワブ1であれば、検体採取用スワブ1の検体採取部20は繊度が3.4Dtex~6.7Dtexの所定の繊維のみが均一な厚さの層をなすように接着された構成となるため、検体採取部20における検体等の吸着およびリリースの効率が所望の値および略一定の値であって、従来(繊度が3.3Dtexの繊維で検体採取部が形成されているもの)よりも良い値となるような検体採取用スワブ1にすることができる。特に、繊度が3.4Dtex以上であれば、従来よりも移植菌量(%)の数値が大きく、延いては、繊度が大きければ大きいほど移植菌量(%)の数値が大きくなり、つまりは、従来よりも検体採取部20における検体等の吸着およびリリースの効率が従来よりも良い値となる。また、このような検体採取用スワブ1は、従来の検体採取用スワブのように海島型バイコンポーネント繊維が接着された後に海材料の繊維のみを溶解させるといった不要な繊維を含む2種類の繊維を利用して製造するような構成でないため、不要な繊維が固着することがなく、不要な繊維の残存量に応じて検体等の吸着およびリリースの効率が変化したり一定とならなかったりするような虞もない。さらに、このような検体採取用スワブ1は、従来の検体採取用スワブのように海島型バイコンポーネント繊維のうちの不要な海材料の繊維のみを溶解させるような工程も必要でないため、従来の製造方法に比べて容易に製造できるものである。なお、一般的に、繊度が大きければ大きいほどコシの強い繊維となるため、6.7Dtexを超える繊維のみで形成された検体採取部の場合、人体の鼻腔内等に接触させて検体を採取するときに、検体採取部の繊維の先端が押し付けられることによって、人体側に対して裂傷等を発生させてしまうとともに、検体を採取される側での不快感が大きくなってしまう虞がある。そのため、検体採取用スワブ1では、検体採取部20の繊維の繊度は3.4Dtex~6.7Dtexのものが好ましいものとしている。
【0035】
また、上述の実施形態の検体採取用スワブ1によれば、検体採取部20は、繊度が4.4Dtexの複数の繊維で形成することができる。このような検体採取用スワブ1であれば、従来よりも移植菌量(%)の数値が大きくなるとともに、人体の鼻腔内等に接触させて検体を採取するときに、裂傷等の発生の可能性を従来と略同程度にすることができ、延いては、検体を採取される側での不快感も従来と略同程度にすることができる。
【0036】
さらに、上述の実施形態の検体採取用スワブ1によれば、接着剤は、紫外線硬化樹脂からなる接着剤にすることができる。このような検体採取用スワブ1は、紫外線硬化樹脂における紫外線での硬化(所謂、ラジカル反応による硬化)によって複数の所定の繊維が固着されているため、例えば、紫外線硬化樹脂以外の熱硬化樹脂等の接着剤を使用した場合に比べて熱硬化工程等におけるアウトガスといった不要物質の発生を軽減することができ、不要物質の発生に基づいて検体等の吸着およびリリースの効率が変化したり歩留まりが悪くなったりする虞もない。
【0037】
そして、上述の実施形態の検体採取用スワブ1によれば、接着剤は、ウレタンアクリレート樹脂にすることができ、特に、粘度(25℃)が100mPa・s~10000mPa・sのウレタンアクリレート樹脂にすることができる。このような検体採取用スワブ1であれば、粘度(25℃)が100mPa・s未満又は10000mPa・sよりも高いものに比べて、検体採取部20における接着剤の密度(接着剤の層の厚さ)を略均一に保つことが容易であるため、所定の繊維の接着性を良好にしつつ紫外線の照射による厚膜硬化性を良好にすることができる。また、このような検体採取用スワブ1であれば、硬化した接着剤においてウレタン結合による構造を有しているため、例えば、ウレタン結合による構造を有しない紫外線硬化樹脂からなる接着剤に比べて、ウレタン結合による構造に基づき伸張性および柔軟性を高いものとすることができる。ここで、例えば、従来のようなウレタン結合による構造を有しない紫外線硬化樹脂からなる接着剤で構成された検体採取用スワブであれば、人体の鼻腔内等に接触させて検体を採取するときに、検体採取部の繊維の先端が押し付けられることによって、人体側に対して必要以上の圧力が加わってしまい、裂傷等が発生してしまう虞があった。この点、このような検体採取用スワブ1であれば、ウレタン結合による構造に基づき従来に比べて伸張性および柔軟性が高いものであるため、検体採取部20の繊維の先端が押し付けられたとしても、従来に比べて人体側に対して必要以上の圧力が加わってしまうことが低減され、裂傷等の発生を軽減することができるとともに、延いては、検体を採取される側での不快感も低減することができる。
【0038】
上述の実施形態の検体採取用スワブ1を製造する製造方法によれば、回転する軸部10の端部15に対して、接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、回転する軸部10の端部15に対して、帯電させた3.4Dtex~6.7Dtexの複数の繊維を供給することによって、接着剤塗布工程で端部10の表面の接着剤が塗布された部分において、検体採取部20を形成する繊維の端部を付着させる繊維供給工程と、接着剤を硬化させて、繊維供給工程で軸部10の端部に付着した繊維を固着させる接着剤硬化工程と、を実行することができる。
【0039】
このような検体採取用スワブ1の製造方法であれば、繊維供給工程および接着剤硬化工程によって、検体採取用スワブ1の検体採取部20には3.4Dtex~6.7Dtexの繊維のみが一定の層をなすように接着された構成となるため、検体採取部20における検体等の吸着およびリリースの効率が所望の値および略一定の値であって、従来よりも良い値となるような検体採取用スワブ1を製造することができる。特に、このような検体採取用スワブ1の製造方法では、従来の検体採取用スワブの製造方法のように海島型バイコンポーネント繊維が接着された後に海材料の繊維のみを溶解させるといった不要な繊維を接着したり接着後に除去するような工程を必要としないため、製造された検体採取用スワブ1においては、不要な繊維が固着することがなく、不要な繊維の残存量に応じて検体等の吸着およびリリースの効率が変化したり一定とならなかったりするような虞もなく、さらには、従来の製造方法に比べて容易な製造方法である。
【0040】
また、上述の実施形態の検体採取用スワブ1の製造方法によれば、接着剤硬化工程の後に、回転する軸部10の端部に対して、空気を吹付けることによって、軸部10の表面に対して接着剤で接着されていない繊維を吹き飛ばして除去する繊維除去工程を実行することができる。このような検体採取用スワブ1の製造方法であれば、従来の検体採取用スワブの製造方法のように不要な繊維を接着したり接着後に除去するような工程を必要としないため、不要な繊維が固着することがなく、不要な繊維の残存量に応じて検体等の吸着およびリリースの効率が変化したり一定とならなかったりするような虞もなく、さらには、従来の製造方法に比べて容易な製造方法である。ここで、もし、繊維除去工程において軸部10の表面に対して所定の接着剤で接着されていない複数の所定の繊維が若干残存していたとしても、従来のような不要な種類の繊維とは異なり、検体採取部20に使用している所定の繊維と同じ種類の繊維が若干残存しているだけであるため、歩留まりの良し悪しや検体採取部における検体等の吸着およびリリースの効率に大きな影響を及ぼすものでもない。
【0041】
さらに、上述の実施形態の検体採取用スワブ1の製造方法によれば、接着剤は、紫外線硬化樹脂なり、接着剤硬化工程において、回転する前記軸部の端部15に対して紫外線発光素子からの紫外線を照射することによって、接着剤を硬化させるようにすることができる。このような検体採取用スワブ1の製造方法であれば、接着剤硬化工程における紫外線硬化樹脂の紫外線での硬化(所謂、ラジカル反応による硬化)によって複数の所定の繊維を固着するため、例えば、紫外線硬化樹脂以外の熱硬化樹脂等の接着剤を使用した場合に比べて熱硬化工程等におけるアウトガスといった不要物質の発生を軽減することができ、不要物質の発生に基づいて検体等の吸着およびリリースの効率が変化したり歩留まりが悪くなったりする虞もない。また、このような検体採取用スワブ1の製造方法であれば、従来の接着剤に比べて短時間で硬化するため、繊維供給工程で軸部10に付着した所定の繊維がへたった状態で硬化されるようなことが低減され、繊維のへたった状態の検体採取部に基づいて検体等の吸着およびリリースの効率が変化したり歩留まりが悪くなったりする虞を軽減することができる。なお、このような検体採取用スワブ1の製造方法において、紫外線発光素子を利用すれば、高圧水銀ランプ又はメタルハライドランプを利用した紫外線の照射に比べて、発熱量の少ない紫外線発光素子からの紫外線の照射であるため、軸部10や繊維といった樹脂部材における熱変形の発生を低減することもできる。
【0042】
<その他の実施形態>
上述の実施形態の検体採取用スワブ1において、検体採取部20の大きさや形状が上述のような態様であるとしたが、これに限定されず、検体採取部における検体等の吸着およびリリースの効率を所望の値にできる態様であれば、種々の大きさや形状の検体採取部を備えたものにすることもできる。例えば、使用する所定の繊維の長さの長短に応じて検体採取部の大きさを種々の大きさにしたり、使用する所定の繊維の繊度の大きさに応じて検体等の吸着およびリリースの効率を種々の値のものにしたりすることが可能である。また、軸部の検体採取部が形成される端部を種々の形状にすることによって、先端を尖らせた雫型等の種々の形状の検体採取部にしたりすることができる。ここで、図4を参照して、その他の形状の検体採取部を備える検体採取用スワブについて、具体的に説明する。図4(A)は、その他の実施形態の検体採取用スワブ200の概略構成を示す全体図であり、図4(B)は、検体採取用スワブ200における検体採取部220の概略構成を説明するための検体採取部220の断面図である。
【0043】
図4(A)に示すように、検体採取用スワブ200は、上述の実施形態の検体採取用スワブ1と同様に、熱可塑性樹脂を棒状に成形した軸部210と、所定の繊維で形成されており、検体を採取するための1つの検体採取部220と、を備えている。軸部210は、検体の採取時に人間の鼻孔から鼻腔に向けて挿入し易いように、延伸方向の略中央から検体採取部220までが、延伸方向の略中央から検体採取部220が形成されていない一端まで(検体採取の作業者が把持するための把持部)に比べて細くなるように成形されている。検体採取部220は、軸部210の一方の端部215(図4(B)を参照。)に形成されており、所定の繊維が端部215の表面の全面を覆うように当該表面に対して略垂直に接着されている。
【0044】
図4(B)に示すように、検体採取部220においては、上述の実施形態の検体採取用スワブ1と同様に、1.7Dtex~6.7Dtex(例えば、3.4Dtex~6.7Dtexが好ましく、特に、3.4Dtex~4.4Dtexが好ましい。)で約1.0mm長の所定の繊維が軸部210の端部215の表面に対して略垂直をなすように、所定の接着剤にて接着されている。つまり、検体採取部220においては、軸部210の端部215の全面に亘って所定の繊維による厚さ約1.0mmの繊維層が形成されていることとなる。しかしながら、上述の実施形態の検体採取用スワブ1とは異なり、検体採取部220を形成する端部215においては、軸方向と垂直をなす方向の最大直径が軸部210の把持部における軸方向と垂直をなす方向の直径と略同じとなっているものの、クビレ部が形成されている。したがって、検体採取用スワブ200の検体採取部220は、上述の検体採取用スワブ1の検体採取部20とは異なり、クビレ部が形成された、所謂、瓢箪型の形状となっている。なお、図4(B)においては、説明の便宜上、検体採取部220の繊維層における所定の繊維が軸部210の端部の表面に対して略垂直をなすように接着されている状態を所定の線影で示している。
【0045】
このような検体採取用スワブ200であれば、上述の実施形態の検体採取用スワブ1と略同様の構成であるため、上述と同様に検体採取部220における検体等の吸着およびリリースの効率を従来よりも良い値にすることができるだけでなく、当該値が変化したり一定とならなかったりするような虞もなく、従来の製造方法に比べて容易に製造できる、といった効果を奏することができる。さらには、検体採取用スワブ200の検体採取部220は瓢箪型の形状であるため、クビレ部が形成されていないものに比べて、端部215の表面積が大きくなっていることから、固着された所定の繊維が多いものとすることができる。したがって、クビレ部が形成されているような瓢箪型でない形状のものに比べて、検体等の吸着の効率を良いものとすることができる。
【0046】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1,200…検体採取用スワブ、10,210…軸部、15,215…端部、20,220…検体採取部、100…製造装置、105…搬送装置、106…コンベア部、107…固定ベルト、110…軸部加工装置、118…接着剤塗布器、120…繊維加工装置、130…繊維供給装置、140…紫外線照射装置、150…不要繊維除去装置。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂で形成された軸部と、
前記軸部の少なくとも一方の端部に形成されており、検体を採取するために前記検体を付着させる検体採取部と、
を備え、
前記軸部の前記端部は、
前記軸部の軸方向に対して垂直をなす方向の直径が、他方側から一方側に向かって大きくなる第1テーパ部と、他方側から一方側に向かって小さくなる第2テーパ部と、を有し、
前記検体採取部は、
前記軸部の前記端部の表面に対して、繊度が3.4Dtex~6.7Dtexの複数の繊維のみが均一な厚さの層を形成するように紫外線硬化樹脂からなる接着剤によって接着されている
ことを特徴とする検体採取用スワブ。
【請求項2】
請求項1に記載の検体採取用スワブにおいて、
前記検体採取部は、繊度が4.4Dtexの前記複数の繊維で形成されている
ことを特徴とする検体採取用スワブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の検体採取用スワブにおいて、
前記接着剤は、ウレタンアクリレート樹脂からなる接着剤である
ことを特徴とする検体採取用スワブ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の検体採取用スワブにおいて、
前記軸部の前記端部は、
前記軸部の軸方向に対して垂直をなす方向の直径が、他方側から一方側に向かって大きくなる第3テーパ部と、他方側から一方側に向かって小さくなる第4テーパ部と、を有する
ことを特徴とする検体採取用スワブ。
【請求項5】
熱可塑性樹脂で形成された軸部の少なくとも一方の端部であって、前記軸部の軸方向に対して垂直をなす方向の直径が他方側から一方側に向かって大きくなる第1テーパ部と他方側から一方側に向かって小さくなる第2テーパ部とを有する前記端部に、検体を採取するために前記検体を付着させる繊維を有する検体採取部が形成された検体採取用スワブを製造する製造方法であって、
回転する前記軸部の前記端部に対して、紫外線硬化樹脂からなる接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
回転する前記軸部の前記端部に対して、帯電させた3.4Dtex~6.7Dtexの複数の前記繊維を供給することによって、前記接着剤塗布工程で前記端部の表面の前記接着剤が塗布された部分において、前記検体採取部を形成する前記繊維の端部を付着させる繊維供給工程と、
回転する前記軸部の前記端部に対して紫外線発光素子からの紫外線を照射することにより前記接着剤を硬化させて、前記繊維供給工程で前記軸部の端部に付着した前記繊維を固着させる接着剤硬化工程と、
を実行することを特徴とする検体採取用スワブの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の検体採取用スワブの製造方法において、
回転する前記軸部の前記端部に対して、空気を吹付けることによって、前記軸部の表面に対して前記接着剤で接着されていない前記繊維を吹き飛ばして除去する繊維除去工程を、前記接着剤硬化工程の後に実行する
ことを特徴とする検体採取用スワブの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明を適用させた適用例1としての検体採取用スワブ(検体採取用スワブ1,200)は、熱可塑性樹脂で形成された軸部(軸部10,210)と、前記軸部の少なくとも一方の端部(端部15,215)に形成されており、検体を採取するために前記検体を付着させる検体採取部(検体採取部20,220)と、を備え、前記軸部の前記端部は、前記軸部の軸方向に対して垂直をなす方向の直径が、他方側から一方側に向かって大きくなる第1テーパ部と、他方側から一方側に向かって小さくなる第2テーパ部と、を有し、前記検体採取部は、前記軸部の前記端部の表面に対して、繊度が3.4Dtex~6.7Dtexの複数の繊維のみが均一な厚さの層を形成するように紫外線硬化樹脂からなる接着剤によって接着されていることを要旨とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、適用例1の検体採取用スワブにおいて、前記検体採取部は、繊度が4.4Dtexの前記複数の繊維で形成されていてもよい。さらに、適用例1の検体採取用スワブにおいて、前記接着剤は、ウレタンアクリレート樹脂からなる接着剤であってもよい。そして、適用例1の検体採取用スワブにおいて、前記軸部の前記端部は、前記軸部の軸方向に対して垂直をなす方向の直径が、他方側から一方側に向かって大きくなる第3テーパ部と、他方側から一方側に向かって小さくなる第4テーパ部と、を有するものであってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明を適用させた適用例2としての検体採取用スワブの製造方法は、熱可塑性樹脂で形成された軸部(軸部10)の少なくとも一方の端部(端部15)であって、前記軸部の軸方向に対して垂直をなす方向の直径が他方が側から一方側に向かって大きくなる第1テーパ部と他方側から一方側に向かって小さくなる第2テーパ部とを有する前記端部に、検体を採取するために前記検体を付着させる繊維を有する検体採取部(検体採取部20)が形成された検体採取用スワブ(検体採取用スワブ1)を製造する製造方法であって、回転する前記軸部の前記端部に対して、紫外線硬化樹脂からなる接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、回転する前記軸部の前記端部に対して、帯電させた3.4Dtex~6.7Dtexの複数の前記繊維を供給することによって、前記接着剤塗布工程で前記端部の表面の前記接着剤が塗布された部分において、前記検体採取部を形成する前記繊維の端部を付着させる繊維供給工程と、回転する前記軸部の前記端部に対して紫外線発光素子からの紫外線を照射することにより前記接着剤を硬化させて、前記繊維供給工程で前記軸部の端部に付着した前記繊維を固着させる接着剤硬化工程と、を実行することを要旨とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、適用例2の検体採取用スワブの製造方法において、回転する前記軸部の前記端部に対して、空気を吹付けることによって、前記軸部の表面に対して前記接着剤で接着されていない前記繊維を吹き飛ばして除去する繊維除去工程を、前記接着剤硬化工程の後に実行してもよい