(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109973
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】5’キャップ付RNAを合成するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20220721BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20220721BHJP
C12Q 1/6853 20180101ALI20220721BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220721BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220721BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6853 Z
A61K31/7088
A61K48/00
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】114
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022070512
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2020204713の分割
【原出願日】2016-09-20
(31)【優先権主張番号】62/221,248
(32)【優先日】2015-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508353008
【氏名又は名称】トリリンク バイオテクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ホグリフ,リチャード アイ.
(72)【発明者】
【氏名】レベデフ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マキャフェリー,アントン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】シン,ドンウォン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR06
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA13
4C084NA14
4C086AA01
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
【解決手段】開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーが、一般形態
m7Gppp[N
2’Om
e]
n[N]
m(式中、
m7Gは、N7-メチル化グアノシンまたは任意のグアノシン類似体であり、Nは、任意の天然、修飾または非天然ヌクレオシドであり、「n」は、0~4の任意の整数であり得、「m」は、1~9の任意の整数であり得る)を有する、5’キャップ付RNA、前記RNAを合成するための方法および前記RNAを含む医薬組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を含む開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー:
【化1】
[式中、
B
1からB
10の各々は独立に、天然、修飾または非天然ヌクレオシド塩基であり、
Mは、0または1であり、
Lは、0または1であり、
q
1は、1であり、q
2からq
9の各々は独立に、0または1であり、
R
1は、Hまたはメチルであり、
R
2およびR
3は独立に、H、OH、アルキル、O-アルキル、ハロゲン、リンカーま
たは検出可能なマーカーであり、
X
1からX
13の各々は独立に、OまたはSであり、
Y
1からY
13の各々は独立に、OH、SH、BH
3、アリール、アルキル、O-アル
キルまたはO-アリールであり、
Z
1からZ
22の各々は独立に、O、S、NH、CH
2、C(ハロゲン)
2またはCH
(ハロゲン)であり、
R
4からR
12の各々は独立に、H、OH、OMeまたは検出可能なマーカーである]
。
【請求項2】
q1=1であり
q2~q9の各々=0または1である、請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレ
オチドプライマー。
【請求項3】
B1が、転写鋳型位置+1で核酸鋳型上のヌクレオシド塩基と完全に相補的であり、
B2からB9が、存在する場合には、位置+2以降の転写開始部位で核酸鋳型上のそれ
ぞれのヌクレオシド塩基と完全に相補的であり、
B10、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの最後のヌクレオシド塩基が、
最後のハイブリダイズされる転写鋳型ヌクレオチドと完全に相補的である、請求項1また
は2に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項4】
q2~q9=0、かつ
B10が、鋳型ヌクレオチド2とハイブリダイズする、請求項1に記載の開始キャップ
付オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項5】
q1~q2=1、
q3~9=0、かつ
B2およびB10が、それぞれ鋳型ヌクレオチド2および3とハイブリダイズする、請
求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項6】
q1~q3=1、
q4~9=0、かつ
B2、B3およびB10が、それぞれ、鋳型ヌクレオチド2、3および4とハイブリダ
イズする、請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項7】
q1~q4=1、
q5~9=0、かつ
B2、B3、B4およびB10が、それぞれ、鋳型ヌクレオチド2、3、4および5と
ハイブリダイズする、請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項8】
q1~q5=1、
q6~9=0、かつ
B2、B3、B4、B5およびB10が、それぞれ、鋳型ヌクレオチド2、3、4、5
および6とハイブリダイズする、請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプ
ライマー。
【請求項9】
q1~q6=1、
q7~9=0、かつ
B2、B3、B4、B5、B6およびB10が、それぞれ、鋳型ヌクレオチド2、3、
4、5、6および7とハイブリダイズする、請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌク
レオチドプライマー。
【請求項10】
q1~q7=1、
q8~9=0、かつ
B2、B3、B4、B5、B6、B7およびB10が、それぞれ、鋳型ヌクレオチド2
、3、4、5、6、7および8とハイブリダイズする、請求項1に記載の開始キャップ付
オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項11】
q1~q8=1、
q9=0、かつ
B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8およびB10が、それぞれ鋳型ヌクレオチ
ド2、3、4、5、6、7、8および9とハイブリダイズする、請求項1に記載の開始キ
ャップ付オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項12】
q1~q9=1、かつ
B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9およびB10が、それぞれ、鋳型ヌ
クレオチド2、3、4、5、6、7、8、9および10とハイブリダイズする、請求項1
に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項13】
q1~q2=1、
q3~9=0、かつ
B2およびB10が、それぞれ、鋳型ヌクレオチド2および3とハイブリダイズする、
請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項14】
請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含むRNA分子。
【請求項15】
請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含むRNA分子を含
有する細胞。
【請求項16】
請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含むRNAから翻訳
されたタンパク質またはペプチドを含有する細胞。
【請求項17】
請求項1に記載の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含むRNA分子およ
び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項18】
十分に鋳型となるRNA分子を合成するための方法であって、以下の構造を有する開始
キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを、ポリヌクレオチド鋳型のRNAポリメラー
ゼによる転写を促す条件下で、RNAポリメラーゼを含む混合物中に入れるステップと、
【化2】
[式中、
B
1からB
10の各々は独立に、天然、修飾または非天然ヌクレオシド塩基であり、
Mは、0または1であり、
Lは、0または1であり、
R
1は、Hまたはメチルであり、
R
2およびR
3は独立に、H、OH、アルキル、O-アルキル、ハロゲン、リンカーま
たは検出可能なマーカーであり、
X
1からX
13の各々は独立に、OまたはSであり、
Y
1からY
13の各々は独立に、OH、SH、BH
3、アリール、アルキル、O-アル
キルまたはO-アリールであり、
Z
1からZ
22の各々は独立に、O、S、NH、CH
2、C(ハロゲン)
2またはCH
(ハロゲン)であり、
R
4からR
12の各々は独立に、H、OH、OMeまたは検出可能なマーカーである]
前記混合物を、前記鋳型の転写を可能にするのに十分な時間インキュベートするステッ
プと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年9月21日に出願された米国特許仮出願番号第62/221,2
48号の優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含有し、その全体が参照
により本明細書に組み込まれる。2016年11月16日に作成された前記ASCIIコ
ピーは、095109-000500PC-1022543_SL.txtと名付けられ
、785バイトの大きさである。
【0002】
本発明は、5’キャップ付RNAを合成するための方法および組成物に関する。特定の
態様では、本発明は、天然の、または修飾された5’-キャップ0、キャップ1、キャッ
プ2またはトリメチルグアノシン-キャップ(TMG-キャップ)構造を有する新規キャ
ップ含有開始オリゴヌクレオチドプライマーに関する。さらなる態様では、本発明は、5
’キャップ付RNAを効率的に作製し、それを使用するための方法に関し、5’キャップ
付RNAを調製するための方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
読者の理解を補助するために以下の説明を提供する。提供される情報または引用される
参考文献のうち、本発明において先行技術であると認められるものはない。
【0004】
治療的適用にとって生理学的に重要なタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(
mRNA)は、遺伝物質を送達するためのDNAベースのプラスミドおよびウイルスベク
ターを上回る相当な利点を示している。これらの利点のうち最も重要なものとして以下が
ある:
(i)高レベルの安全性(ウイルスまたはプラスミド組込みからのゲノム損傷の可能性
を低減する)、
(ii)mRNA送達は、即時のタンパク質発現をもたらす(プラスミドを用いる場合
に一般に起こる遅延応答とは異なる)、
(iii)mRNAは、タンパク質の発現に対する頑強な用量依存性制御を可能にする
、および
(iv)プラスミドおよびウイルスベクターの製造と比較した、mRNAの大規模合成
の単純性。
【0005】
メッセンジャーRNAは、実質的に任意の公知のタンパク質をコードすることができ、
当業者に公知の種々の方法によって特定の組織および臓器に送達することができる。これ
らのmRNAは、ひとたび送達されると、標的とされる組織内でリボソームタンパク質発
現を指示し、mRNA分子1つあたり数百のタンパク質の生成をもたらす。
【0006】
コードされるタンパク質を効率的に翻訳するために、活性なmRNA分子各々中に存在
するいくつかの構造エレメントが利用される。これらのエレメントのうち1種が、mRN
Aの5’末端上のキャップ構造であり、これは、すべての真核生物(およびいくつかのウ
イルス)中に存在する。天然に存在するキャップ構造は、グアニン塩基のN7位置でメチ
ル化されるリボ-グアノシン残基を含む。この7-メチルグアノシン(7mG)は、mR
NA分子の5’末端での5’-対5’-三リン酸鎖を介して連結される。本出願を通じて
、7mおよびm7は、同義的に使用され、同等の意味を有する。5’末端上の7mGpp
p断片の存在は、mRNA成熟にとって必須であり、
mRNAをエキソヌクレアーゼによる分解から保護し、
核から細胞質へのmRNAの輸送を促進し、
翻訳開始複合体の組み立てにおいて重要な役割を果たす(Cell第9巻:645~6
53頁、(1976年);Nature第266巻:235頁(1977年);Fede
ration of Experimental Biologists Societ
y Letter第96巻:1~11頁(1978年);Cell第40巻:223~2
4頁、(1985年);Prog.Nuc.Acid Res.第35巻:173~20
7頁、(1988年);Ann.Rev.Biochem.第68巻:913~963頁
、(1999年);J.Biol.Chem.第274巻:30337~3040頁(1
999年))。
【0007】
キャップ依存性翻訳においては、キャップ構造を保持するmRNAのみが活性である;
mRNAの「キャップ除去」は、タンパク質合成のためのその鋳型活性のほとんど完全な
喪失をもたらす(Nature、第255巻:33~37頁、(1975年);J.Bi
ol.Chem.、第253巻:5228~5231頁、(1978年);およびPro
c.Natl.Acad.Sci.USA、第72巻:1189~1193頁、(197
5年))。
【0008】
真核細胞のmRNAの別のエレメントは、転写物位置1(キャップ1)での、いくつか
の場合には、転写物位置1および2(キャップ2)での2’-O-メチルヌクレオシド残
基の存在である。mRNAの2’-O-メチル化は、in vivoでのmRNA翻訳の
より高い有効性にとって必要であり(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、
第77巻:3952~3956頁(1980年))、5’キャップ付mRNAのヌクレア
ーゼ安定性をさらに改善する。キャップ1(およびキャップ2)を有するmRNAは、細
胞が真正のmRNA 5’末端を認識するのを可能にし、いくつかの例では、感染性遺伝
要素から生じる転写物を識別する特有の印である(Nucleic Acid Rese
arch第43巻:482~492頁(2015年))。
【0009】
一次mRNA転写物は、in vivoでNTP(通常、GTP)で出発するRNA合
成の開始に起因する5’-三リン酸基(5’-pppmRNA)を保持する。mRNA転
写物の5’-三リン酸化末端のキャップ構造(キャップ0)への変換は、いくつかの酵素
ステップによって起こる(J.Biol.Chem.第250巻:9322頁(1975
年);J.Biol.Chem.第271巻:11936頁(1996年);J.Bio
l.Chem.第267巻:16430頁、(1992年))。これらの酵素反応ステッ
プとして以下がある:
ステップ1:RNA三リン酸分解酵素が、mRNAの5’-三リン酸を5’-二リン酸
に変換する、pppN1(pN)x→ppN1(pN)x+無機リン酸、
ステップ2:RNAグアニルトランスフェラーゼが、GTPを使用して、GMP残基を
mRNAの5’-二リン酸に移す、ppN1(pN)x+GTP→G(5’)ppp(5
’)N1(pN)x+無機ピロリン酸、および
ステップ3:グアニン-7-メチルトランスフェラーゼが、補因子としてS-アデノシ
ル-メチオニン(AdoMet)を使用し、AdoMetからグアニン塩基の7-窒素に
メチル基を移す、G(5’)ppp(5’)N1(pN)x+AdoMet→7mG(5
’)ppp(5’)N1(pN)x+AdoHyc)。
これらの酵素活性から得られたRNAは、「5’キャップ付RNA」または「キャップ
付RNA」と呼ばれ、「キャップ付RNA」の形成をもたらすこのプロセスに関与する酵
素の組合せは、「キャップ形成(capping)酵素」と呼ばれる。このような酵素のクロー
ニングされた形態を含むキャップ形成酵素は、同定されており、多数の供給源から精製さ
れており、当技術分野で周知である(Prog.Nucleic Acid Res.M
ol.Biol.第66巻:1~40頁、(2001年);Prog.Nucleic
Acid Res.Mol.Biol.第50巻:101~129頁、(1995年);
およびMicrobiol.Rev.第44巻:175頁、(1980年))。キャップ
形成酵素による一次RNAの5’末端へのキャップヌクレオチドの付加から得られるキャ
ップ付RNAは、「キャップ0構造」を有するキャップ付RNAと呼ばれている(J.B
iol.Chem.第269巻:14974~14981頁、(1994年);J.Bi
ol.Chem.第271巻:11936~11944頁(1996年))。キャップ形
成酵素は、in vitroでキャップ0構造を有するキャップ付RNAを合成するため
に使用されてきた(J.Biol.Chem.第255巻:11588頁、(1980年
);Proc.Natl.Acad.Sci.USA第94巻:9573頁、(1997
年);J.Biol.Chem.第267巻:16430頁、(1992年);J.Bi
ol.Chem.第269巻:14974頁、(1994年);およびJ.Biol.C
hem.第271巻:11936頁、(1996年))。
【0010】
5’-キャップ0構造を有するキャップ付RNAは、(ヌクレオシド-2’-O-)メ
チルトランスフェラーゼの作用によって「キャップ1」構造にin vivoでさらに変
換され得る(J.Biol.Chem.第269巻:14974~14981頁、(19
94年);J.Biol.Chem.第271巻:11936~11944頁、(199
6年);およびEMBO第21巻:2757~2768頁、(2002年))。例えば、
ワクシニアmRNA(ヌクレオシド-2’-O)メチルトランスフェラーゼは、以下の反
応によって、キャップ0構造を有する5’キャップ付RNAの5’の最後から2番目のヌ
クレオチドの2’-ヒドロキシル基のメチル化を触媒できる:
7mG(5’)ppp(5’)N1pN2(pN)x+AdoMet→7mG(5’)
ppp(5’)N1
2’-OMepN2(pN)x+AdoHyc。
【0011】
キャップ1構造を有するジメチル化キャップ付RNAは、キャップ0構造を有するキャ
ップ付RNAよりも効率的に翻訳されると報告されている(Nucleic Acids
Res.第26巻:3208頁、(1998年))。真核細胞は、別の(ヌクレオシド
-2’-O)メチルトランスフェラーゼ(例えば、ヒト細胞ではhMTR2(Nucle
ic Acids Res.第39巻:4756頁(2011年))を利用して、以下の
反応によって、5’キャップ付RNAの第2の転写されるヌクレオチドの2’-ヒドロキ
シル基のメチル化を触媒して、キャップ1構造をキャップ2構造に変換する:
7mG(5’)ppp(5’)N1
2’-OMepN2(pN)x+AdoMet→7
mG(5’)ppp(5’)N1
2’-OMepN2
2’-OMe(pN)x+AdoH
yc。
真核細胞mRNAのおよそ50%が、キャップ2構造を有する。
【0012】
種々の生物学的研究のために長い機能的RNAを生成するために、1980年代中盤に
、一次RNAのin vitro酵素的合成の方法が開発された(Methods En
zymol.第180巻:51~62頁、(1989年);Nucl.Acids Re
s.、第10巻:6353~6362頁、(1982年);Meth.Enzymol.
、第180巻:42~50頁(1989年);Nucl.Acids Res.、第12
巻:7035~7056頁、(1984年)およびNucleic Acid Rese
arch第15巻:8783~8798頁、(1987年))。
【0013】
in vitro転写後、5’-三リン酸基を保持する一次mRNA転写物を、キャッ
プ形成酵素を用いてさらにキャップすることができる。しかし、in vitro酵素的
5’-キャップ形成は、高価であり、労力を要するものであり、効率的でなく、制御する
ことが困難である。
【0014】
これらの不利点を考慮して、化学的に合成されたジヌクレオチド7mG(5’)ppp
(5’)G(mCAPとも呼ばれる)を使用して転写を開始する、キャップ付mRNAの
in vitro合成のための別の方法が開発された(RNA第1巻:957~967頁
、(1995年))。mCAPジヌクレオチドは、成熟mRNAの5’-キャップ0構造
を含有するが、キャップ1およびキャップ2構造に特徴的な2’-O-メチルヌクレオシ
ドを有さない。
【0015】
しかし、合成mCAPジヌクレオチドを使用するin vitro転写の開始に起因す
る2つの主な不利点がある。第1は、mRNA合成の開始のためのmCAPおよびppp
Gの強力な競合である。pppGを用いてmRNAが開始される場合には、得られたpp
p-mRNAは、5’-三リン酸の存在のために翻訳および免疫原性において不活性であ
る。対応して、mRNAがmCAPを用いて開始される場合には、得られた5’キャップ
付mRNAは、翻訳において活性であり、免疫原性としては活性ではない。
【0016】
5’キャップを有するまたは5’キャップのない(または5’-三リン酸化;pppm
RNA)mRNAの割合を改善するために、5’-キャップ構造mRNA転写物(最大8
0~90%)の生成に好都合であるために、pppGを上回る過剰の7mGpppG(4
:1~10:1)を使用しなくてはならない。このアプローチのマイナス面は、転写の際
のGTP供給の迅速な枯渇および多量の高価であり得る合成mCAP二量体が必要である
ことによるmRNAの全体的な収率の大幅な低減である。転写後、5’キャップ付mRN
Aおよび5’pppmRNAの両方を含有する粗混合物の、アルカリホスファターゼでの
さらなる処理が、合成されたmRNAの免疫原性を低減するためにpppmRNAからキ
ャップのない5’-三リン酸基を除去するために必要である。ホスファターゼ処理後に得
られたmRNAのキャップのない5’-OH型は、不活性であり、翻訳プロセスに関与し
ない。
【0017】
非対称mCAPジヌクレオチドを使用する場合には、別の不利点、二方向性の開始が起
こり得る。7mGpppGのGまたは7mG部分のいずれかの3’-ヒドロキシル基の、
およそ同程度の確率で転写伸長の開始点として役立つ傾向がある。通常、転写反応の条件
に応じて、およそ同等の割合での、形態7mG(5’)pppG(pN)nおよびG(5
’)ppp7mG(pN)nの2種の異性体RNAの合成につながる(RNA第1巻:9
57~967頁、(1995年))。
【0018】
mCAPジヌクレオチドを用いた場合のmRNA合成の二方向性開始を排除するために
、7mG残基の3’-OH基が、OCH3で置換された新規修飾mCAP類似体(「OM
e」):7mG(3’-O-Me)pppG(アンチリバースキャップ類似体(Anti
-Reverse Cap Analog)(ARCA)としても知られる)が開発され
た。ARCAは、正しいフォワード配向でのみmRNA合成を開始する(RNA第7巻:
1486~1495頁(2001年))。いくつかの種類のARCA類似体が当技術分野
で公知である(例えば、米国特許第7,074,596号を参照のこと)。しかし、ほと
んどのmRNA転写物分子が5’-キャップ構造を有することを確実にするには、ppp
Gを上回る大モル過剰のARCAが依然として必要である。さらなる不利点は、キャップ
1構造を有するmRNAは、7mGpppG2’-OMeキャップ二量体(RNA第1巻
:957頁、(1995年))またはそのARCA類似体を使用して合成できないという
ことである。
【0019】
現在、キャップ1構造を含有する活性な長いmRNAの生成のための公知の経路は、酵
素的キャップ形成および5’-三リン酸化mRNA転写物の酵素的2’O-メチル化また
はmCAPキャップもしくはARCAキャップ付mRNA前駆体の酵素的2’-O-メチ
ル化(Nucleosides,Nucleotides,and Nucleic A
cids、第25巻:337~340頁、(2006年)およびNucleosides
,Nucleotides,and Nucleic Acids第25巻(3号):3
07~14頁、(2006年))からなる。両アプローチは、かなり労力を要するもので
あり、制御することが困難であり、実質的な最適化を行っても、どちらのアプローチも、
キャップを有し、メチル化されたmRNA前駆体の高収率を保証できない(J.Gen.
Virol.、第91巻:112~121頁、(2010年))。さらに、キャップ2構
造を有するmRNAを調製するための方法は、一層より困難であり、結果は、予測可能性
が低い。キャップ1からキャップ2に変換するための酵素は、現在市販されていない。
【0020】
特に大規模製造におけるmRNAのin vitro合成の別の重要な複雑性は、不活
性であり、いくつかの場合には、免疫原性であるすべてのキャップのないmRNA形態か
ら、キャップを保持する活性mRNA分子を単離および精製することが必要であることで
ある。残念ながら、これらの方法は、些細なものではなく、キャップ付RNA転写物の、
より容易な単離および精製を可能にする親和性タグ部分がコンジュゲートされた修飾され
たmCAP類似体の合成が必要であることが多い。リポーター/親和性部分として親和性
タグを有するmCAP類似体を合成する方法および転写反応混合物からのキャップ付RN
Aの単離のための新規プロトコールは、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第8
,344,118号を参照のこと)。これらのアプローチは効率的であるが、それらはよ
り多くの高価なmCAP類似体の使用を必要とし、キャップ0構造のみを含有するmRN
Aの調製および単離を可能にする。
【0021】
天然および修飾RNAのin vitro合成は、リボザイム、アンチセンス、生物物
理学的および生化学的研究を含む種々の適用において使用される。さらに、キャップ付m
RNA転写物は、in vivo発現実験(マイクロインジェクション、トランスフェク
ションおよび感染を使用する)、in vitro翻訳実験およびアッセイならびに治療
薬、診断薬、ワクチン開発、標識および検出における種々の適用abo-thibタンパク質合成
を必要とする適用のために使用される。
【0022】
結果として、(a)従来の方法よりも労力を要するものではない、(b)転写の際に二
方向性開始を排除または低減する、(d)現在の方法と比較して低減した費用で(c)m
RNAのより高い収率をもたらす、(e)異なる5’配列を有する不均一生成物の生成を
低減する、(f)合成されたmRNAにキャップ1およびキャップ2構造を組み込むため
にさらなる酵素反応を必要としない、mRNAの大規模合成を可能にする組成物および方
法が、当業界で必要である。また、分子の5’末端にまたはその付近に、特定の修飾およ
び/または蛍光色素、放射性同位元素、質量タグなどの親和性タグおよび/またはビオチ
ンなどの分子結合対の一方のパートナーを保持する、修飾されたおよび/または非天然ヌ
クレオシドを含有する種々のmRNAの合成も必要である。
【発明の概要】
【0023】
本明細書において、5’キャップ付RNAを合成するための方法および組成物が提供さ
れる。本発明の一態様では、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、式I:
【化1】
[式中、
B
1からB
10の各々は独立に、天然、修飾または非天然ヌクレオシド塩基であり、
Mは、0または1であり、
Lは、0または1であり、
q
1は、1であり、
q
2からq
9の各々は独立に、0または1であり、
R
1は、Hまたはメチルであり、
R
2およびR
3は独立に、H、OH、アルキル、O-アルキル、ハロゲン、アミン、ア
ジド、リンカーまたは検出可能なマーカーであり、
X
1からX
13の各々は独立に、OまたはSであり、
Y
1からY
13の各々は独立に、OH、SH、BH
3、アリール、アルキル、O-アル
キルまたはO-アリールであり、
Z
1からZ
22の各々は独立に、O、S、NH、CH
2、C(ハロゲン)
2またはCH
(ハロゲン)であり、
R
4からR
12の各々は独立に、H、OH、OMe、リンカーまたは検出可能なマーカ
ーである]
で示される一般構造を含む。
【0024】
本発明の別の態様では、式Iのキャップ含有開始オリゴヌクレオチドプライマーを含む
RNA分子、このようなRNAを含む医薬組成物、このようなRNAを含有する細胞およ
びこのようなRNAから翻訳されたタンパク質またはペプチドを含有する細胞が提供され
る。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、ポリヌクレオチド鋳型のRNAポリメラーゼによる転写
を促す条件下で、式Iのキャップ含有開始オリゴヌクレオチドプライマーを含むRNA分
子を、ポリヌクレオチド鋳型およびRNAポリメラーゼを含む混合物に合成し、その後、
得られた混合物を、前記鋳型の転写を可能にするのに十分な時間インキュベートする方法
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】グアノシン5’-二リン酸から7-メチルグアノシン5-二リン酸(pp
7
mG)を調製する例示的方法を示す図である。
【
図2】pp
7mGから7-メチルグアノシン5’-二リン酸イミダゾリド(Im-pp
7mG)を調製する例示的方法を示す図である。
【
図3】3’-O-メチルグアノシンから3’-O-メチルグアノシン5’-リン酸(pG
3’Ome)を調製する例示的方法を示す図である。
【
図4】pG
3’Omeから3’-O-メチルグアノシン5’-ホスホルイミダゾリド(Im-pG
3’Ome)を調製する例示的方法を示す図である。
【
図5】Im-pG
3’Omeから3’-O-メチルグアノシン5’-二リン酸(ppG
3’Ome)を調製する例示的方法を示す図である。
【
図6】ppG
3’Omeから7-メチル-3’-O-メチルグアノシン5-二リン酸(pp
7mG
3’Ome)を調製するための例示的方法を示す図である。
【
図7】pp
7mG
3’Omeから7-メチル-3’-O-メチルグアノシン5-二リン酸イミダゾリド(Im-pp
7mG
3’Ome)を調製するための例示的方法を示す図である。
【
図8】pN
2’-OR1pNオリゴヌクレオチド(R
1=HまたはMe)の調製のための一般手順を示す図である。
【
図9】キャップ0、キャップ1またはキャップ2構造を有する開始オリゴヌクレオチドの合成のための一般手順を示す図である。
【
図10A】式I[式中、B
1はグアニンであり、Mは、0であり、Lは、1であり、q
1からq
9は、0であり、R
1は、Hであり、R
2は、Hであり、R
3は、O-メチルであり、X
1は、Oであり、X
2は、Oであり、X
13は、Oであり、Y
13は、OHであり、Z
0は、Oであり、Z
1は、Oであり、Z
2は、Oであり、Z
22は、Oである]に従う実施例において使用される、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの構造を示す図である。
【
図10B】式I[式中、B
1は、グアニンであり、B
10は、グアニンであり、Mは、0であり、Lは、1であり、q
1は、1であり、q
2からq
9は、0であり、R
1は、Hであり、R
2は、Hであり、R
3は、Hであり、X
1は、Oであり、X
2は、Oであり、X
4は、Oであり、X
13は、Oであり、Y
1は、OHであり、Y
2は、OHであり、Y
4は、OHであり、Y
13は、OHであり、Z
0は、Oであり、Z
1は、Oであり、Z
2は、Oであり、Z
4は、Oであり、Z
5は、Oであり、Z
22は、Oであり、R
4は、O-メチルである]に従う実施例において使用される、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの構造を示す図である。
【
図10C】式I[式中、B
1は、グアニンであり、B
10は、グアニンであり、Mは、0であり、Lは、1であり、q
1は、1であり、q
2からq
9は、0であり、R
1は、Hであり、R
2は、Hであり、R
3は、O-メチルであり、X
1は、Oであり、X
2は、Oであり、X
4は、Oであり、X
13は、Oであり、Y
1は、OHであり、Y
2は、OHであり、Y
4は、OHであり、Y
13は、OHであり、Z
0は、Oであり、Z
1は、Oであり、Z
2は、Oであり、Z
4は、Oであり、Z
5は、Oであり、Z
22は、Oであり、R
4は、O-メチルである]に従う実施例において使用される、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの構造を示す図である。
【
図10D】式I[式中、B
1は、アデニンであり、B
10は、グアニンであり、Mは、0であり、Lは、1であり、q
1は、1であり、q
2からq
9は、0であり、R
1は、Hであり、R
2は、Hであり、R
3は、Hであり、X
1は、Oであり、X
2は、Oであり、X
4は、Oであり、X
13は、Oであり、Y
1は、OHであり、Y
2は、OHであり、Y
4は、OHであり、Y
13は、OHであり、Z
0は、Oであり、Z
1は、Oであり、Z
2は、Oであり、Z
4は、Oであり、Z
5は、Oであり、Z
22は、Oであり、R
4は、O-メチルである]に従う実施例において使用される、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの構造を示す図である。
【
図10E】式I[式中、B
1は、アデニンであり、B
10は、グアニンであり、Mは、0であり、Lは、1であり、q
1は、1であり、q
2からq
9は、0であり、R
1は、Hであり、R
2は、Hであり、R
3は、O-メチルであり、X
1は、Oであり、X
2は、Oであり、X
4は、Oであり、X
13は、Oであり、Y
1は、OHであり、Y
2は、OHであり、Y
4は、OHであり、Y
13は、OHであり、Z
0は、Oであり、Z
1は、Oであり、Z
2は、Oであり、Z
4は、Oであり、Z
5は、Oであり、Z
22は、Oであり、R
4は、O-メチルである]に従う実施例において使用される、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの構造を示す図である。
【
図10F】式I[式中、B
1は、シトシンであり、B
10は、グアニンであり、Mは、0であり、Lは、1であり、q
1は、1であり、q
2からq
9は、0であり、R
1は、Hであり、R
2は、Hであり、R
3は、Hであり、X
1は、Oであり、X
2は、Oであり、X
4は、Oであり、X
13は、Oであり、Y
1は、OHであり、Y
2は、OHであり、Y
4は、OHであり、Y
13は、OHであり、Z
0は、Oであり、Z
1は、Oであり、Z
2は、Oであり、Z
4は、Oであり、Z
5は、Oであり、Z
22は、Oであり、R
4は、O-メチルである]に従う実施例において使用される、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの構造を示す図である。
【
図10G】式I[式中、B
1は、シトシンであり、B
10は、グアニンであり、Mは、0であり、Lは、1であり、q
1は、1であり、q
2からq
9は、0であり、R
1は、Hであり、R
2は、Hであり、R
3は、O-メチルであり、X
1は、Oであり、X
2は、Oであり、X
4は、Oであり、X
13は、Oであり、Y
1は、OHであり、Y
2は、OHであり、Y
4は、OHであり、Y
13は、OHであり、Z
0は、Oであり、Z
1は、Oであり、Z
2は、Oであり、Z
4は、Oであり、Z
5は、Oであり、Z
22は、Oであり、R
4は、O-メチルである]に従う実施例において使用される、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの構造を示す図である。
【
図10H】式I[式中、B
1は、アデニンであり、B
2は、グアニンであり、B
1
0は、グアニンであり、Mは、0であり、Lは、1であり、q
1は、1であり、q
2は、1であり、q
3からq
9は、0であり、R
1は、Hであり、R
2は、Hであり、R
3は、O-メチルであり、X
1は、Oであり、X
2は、Oであり、X
4は、Oであり、X
5は、Oであり、X
13は、Oであり、Y
1は、OHであり、Y
2は、OHであり、Y
4は、OHであり、Y
5は、OHであり、Y
13は、OHであり、Z
0は、Oであり、Z
1は、Oであり、Z
2は、Oであり、Z
4は、Oであり、Z
5は、Oであり、Z
6は、Oであり、Z
22は、Oであり、R
4は、O-メチルであり、R
5は、O-メチルである]に従う実施例において使用される、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの構造を示す図である。
【
図11】mRNA同時転写によってキャップ形成されたmRNAのルシフェラーゼ活性を示す図である。
【
図12A-12H】12A)ARCAを用いて、12B)
m7GpppG
2’Om
epGを用いて、12C)
m7G
3’OmepppG
2’OmepGを用いて、12D)
m7GpppA
2’OmepGを用いて、12E)
m7G
3’OmepppA
2’-OM
epGを用いて、12F)
m7GpppC
2’OmepGを用いて、12G)
m7G
3’
OmepppC
2’OmepGを用いて、12H)
m7G
3’OmepppA
2’OmepG
2’OmepGを用いて同時転写によってキャップが付けられたmRNAのキャップ形成効率を合わせて示す図である。
図11B~11Gにおけるキャップ形成効率は、
図11Aにおいて観察されたものと同等であるか、またはそれを大幅に超える。
【
図13A-13D】転写鋳型上の
m7GpppA
2’OmepGを用いる同時転写によりキャップ形成されるmRNAの開始のキャップ形成効率および忠実度をまとめて示す図であり、
図13Aはプライマー/NTP処方2を使用する、鋳型位置+1および+2での2’-デオキシチミジンおよび2’-デオキシシチジン残基の使用を例示し、
図13Bは、プライマー/NTP処方3を使用する、鋳型位置+1および+2での2’-デオキシチミジンおよび2’-デオキシシチジン残基の使用を例示し、
図13Cは、プライマー/NTP処方2を使用する、鋳型位置+1および+2での2’-デオキシシチジン残基の使用を例示し、
図13Dは、プライマー/NTP処方3を使用する、鋳型位置+1および+2での2’-デオキシシチジン残基の使用を例示する。
【
図14A-14B】鋳型位置+1および+2に2’-デオキシチミジンおよび2’-デオキシシチジン残基を有する転写鋳型対鋳型位置+1および+2にシチジン残基を有する転写鋳型での、m7GpppA2’OmepG開始キャップ付オリゴヌクレオチドを用いて作製されたmRNAの、分化したTHP-1細胞における翻訳の比較をまとめて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
別段の定めがない限り、本明細書において使用されるすべての用語は、本発明が属する
技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本開示を通じて
言及されるすべての特許、特許出願および刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる
。本明細書において用語について複数の定義がある事象では、この節にあるものが優先す
る。
【0028】
本明細書において、数値に関連して、用語「およそ」または「約」は、記載された値を
含む定義される範囲内のすべての値を含む示される値のプラスまたはマイナス30%を意
味する。
【0029】
本明細書において、用語「核酸」、「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」とは、オ
リゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはその任意の断片、任意のリボまたはデオキシ
リボ誘導体ならびに天然および/もしくは修飾ヌクレオチド残基およびヌクレオチド間連
結を含有する天然に存在する分子または合成分子を指す。これらの語句はまた、一本鎖、
二本鎖、三本鎖もしくは四本鎖であり得、センスもしくはアンチセンス鎖を表し得る、天
然起源(例えば、ゲノム)または合成起源のDNAまたはRNA、または任意のDNA様
もしくはRNA様材料を指す。DNA配列に関して「RNA等価物」は、窒素塩基チミン
のすべてまたはほとんどの出現が、ウラシルと置換され、糖骨格が、2’-デオキシリボ
ースの代わりにリボースから構成される点を除いて、参照DNA配列と同一のヌクレオチ
ドの直線配列から構成される。本明細書において提供される方法および組成物に適したさ
らなる代替核酸骨格として、それだけには限らないが、ホスホロチオエート、ホスホロセ
レノエート、アルキルホスホトリエステル、アリールホスホトリエステル、アルキルホス
ホネート、アリールホスホネート、ホスホボロネート、モルホリノ核酸(MNA)、ロッ
クド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
【0030】
本明細書において、用語「プライマー」または「オリゴヌクレオチドプライマー」とは
、リボ-もしくはデオキシリボ-またはキメラリボ/デオキシリボ-オリゴヌクレオチド
を指し、一本鎖は、天然に存在するものであっても、合成であってもよく、通常、約2か
ら約10ヌクレオチド、約3から約8ヌクレオチドまたは約3から約5の間のヌクレオチ
ドの配列を含む。オリゴヌクレオチドプライマーは、1つまたは複数の修飾基を含有し得
る。オリゴヌクレオチドプライマーは、RNA、DNAおよび/またはその他の修飾ヌク
レオシドを含み得る。当業者は、DNA鋳型配列の転写にとって適当であるオリゴヌクレ
オチドプライマーを設計および調製可能である。
【0031】
本明細書において、用語「開始キャップ付オリゴヌクレオチド類似体」または「開始キ
ャップ付オリゴヌクレオチドプライマー」とは、プライマーの5’末端にキャップ0、キ
ャップ1、キャップ2またはTMG-キャップ構造を含有する、開始オリゴヌクレオチド
プライマーを指す。キャップ付プライマーは、非修飾または開放3’-OH基を有し、プ
ライマーの3’末端でのNTPの組込みによってRNAポリメラーゼによって延長され得
る。必要な成分:DNA鋳型(例えば、DNAプラスミド)、RNAポリメラーゼ、ヌク
レオシド5’-三リン酸および適当なバッファーを含有する転写系においてプロモーター
の制御下でin vitro転写を開始することができる。また、本明細書において同様
に使用される「開始プライマー」または「開始オリゴヌクレオチドプライマー」とは、R
NAポリメラーゼの妥当な基質である末端3’-OH基を保持するオリゴヌクレオチドを
指す。特定の実施形態では、開始オリゴヌクレオチドプライマーは、RNAポリメラーゼ
の基質であり、プライマーの3’末端でのNTPの組込みによって伸長され得る。開始オ
リゴヌクレオチドプライマーは、開始部位でDNA鋳型と相補的である。
【0032】
本明細書において、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーおよびNTPとの関
連で、用語「非置換」または「非修飾」とは、修飾されていない、開始キャップ付オリゴ
ヌクレオチドプライマーおよびNTPを指す。
【0033】
本明細書において、用語「修飾された開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー」
とは、1つまたは複数のさらなる修飾基を含有する開始キャップ付オリゴヌクレオチドプ
ライマーを指す。
【0034】
本明細書において、用語「修飾基」とは、それだけには限らないが、糖、ヌクレオシド
塩基、三リン酸架橋および/またはヌクレオチド間リン酸を含む位置で開始プライマーと
結合され得る任意の化学部分を指す(例えば、米国特許出願第20070281308号
)。開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの修飾基は、転写のプロセスと適合す
る任意の性質の基であり得る。
【0035】
本明細書において、用語「ヌクレオチド間連結」とは、オリゴヌクレオチドプライマー
または核酸の2つのヌクレオシドをつなげる結合(単数または複数)を指し、天然ホスホ
ジエステル連結または修飾された連結であり得る。
【0036】
本明細書において、用語「標識」または「検出可能な標識」とは、分子が標識を検出す
ることによって直接的または間接的に検出され得るように、分子に結合され得る、または
そうでなければ分子と会合され得る化合物または化合物の組合せを指す。検出可能な標識
は、放射性同位元素(例えば、炭素、リン、ヨウ素、インジウム、硫黄、トリチウムなど
)、質量同位体(例えば、H2、C13またはN15)、色素またはフルオロフォア(例
えば、シアニン、フルオレセインまたはクマリン)、ハプテン(例えば、ビオチン)また
は直接的もしくは間接的に検出され得る任意のその他の薬剤であり得る。
【0037】
本明細書において、用語「ハイブリダイズする」または「特異的にハイブリダイズする
」とは、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーが、転写反応の際に適当にストリ
ンジェントな条件下でDNA鋳型とアニールするプロセスを指す。DNAとのハイブリダ
イゼーションは、特定の実施形態では、5’-5’逆位キャップ構造を含む3~10ヌク
レオチドの長さである開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施される
。核酸ハイブリダイゼーション技術は、当技術分野で周知である(例えば、Sambro
okら、Molecular Cloning:A Laboratory Manua
l、Second Edition、Cold Spring Harbor Pres
s、Plainview、N.Y.(1989);Ausubel、F.M.ら、Cur
rent Protocols in Molecular Biology、John
Wiley&Sons、Secaucus、N.J.(1994))。
【0038】
本明細書において、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーおよびDNA鋳型の
複合体との関連で、用語「相補体」、「相補的な」または「相補性」とは、標準ワトソン
/クリック塩基対形成ルールを指す。例えば、配列「5’-A-G-T-C-3’」は、
配列「3’-T-C-A-G-5’」と相補的である。特定の非天然または合成ヌクレオ
チドは、本明細書において記載される核酸中に含まれてもよく、これらとして、それだけ
には限らないが、イノシン、7-デアザグアノシン、2’-O-メチルグアノシン、2’
-フルオロ-2’-デオキシシチジン、プソイドウリジン、ロックド核酸(LNA)およ
びペプチド核酸(PNA)などの、塩基および糖修飾ヌクレオシド、ヌクレオチドおよび
核酸が挙げられる。相補性は、完全であることを必要とせず、二本鎖は、ミスマッチした
塩基対、変性または非対応ヌクレオチドを含有し得る。当業者は、例えば、オリゴヌクレ
オチドの長さ、塩基組成およびオリゴヌクレオチドの配列、ミスマッチした塩基対の出現
率、イオン強度、ハイブリダイゼーションバッファーの成分および反応条件を含むいくつ
かの変数を考慮して二本鎖安定性を経験的に決定できる。
【0039】
相補性は、2つの核酸鎖のヌクレオチド塩基のすべてが、認識されている塩基対形成ル
ールに従って対応している「完全」または「全面的(total)」であっても、開始キャッ
プ付オリゴヌクレオチドプライマーおよびDNA標的のヌクレオチド塩基の一部のみが、
認識されている塩基対形成ルールに従って対応している「部分的」であってもよく、また
は2つの核酸鎖のヌクレオチド塩基のうち、認識されている塩基対形成ルールに従って対
応するものがない「存在しない」場合もある。開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライ
マーおよびDNA鋳型の間の相補性の程度は、開始キャップ付オリゴヌクレオチドとDN
A鋳型の間のハイブリダイゼーション力に対して、それに応じて、反応の効率に対して相
当な効果を有し得る。用語相補性はまた、個々のヌクレオチドに関しても使用され得る。
例えば、オリゴヌクレオチド内の特定のヌクレオチドは、開始キャップ付オリゴヌクレオ
チドプライマーの残部とDNA鎖の間の相補性と対照的な、またはそれと比較した、別の
鎖内のヌクレオチドに対するその相補性について、またはそれがないことについて述べら
れることもある。
【0040】
本明細書において、用語「完全な」、「全面的な」または「完璧な(perfectly)」相
補性とは、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーのヌクレオチド塩基の各々と、
DNA標的が、認識されている塩基対形成ルールに従って正確に対応することを意味する
。
【0041】
本明細書において、用語「実質的に相補的な」とは、ストリンジェントなハイブリダイ
ゼーション条件下でハイブリダイズする2つの配列を指す。当業者ならば、実質的に相補
的な配列は、その全長に沿ってハイブリダイズする必要がないことを理解するであろう。
特に、実質的に相補的な配列は、標的配列とハイブリダイズしない塩基の連続配列を含む
こともあり、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的配列とハイブリダ
イズする塩基の連続配列の3’または5’に位置し得る。
【0042】
本明細書において、用語「特異的な」とは、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライ
マー配列およびDNA鋳型とハイブリダイズするその能力に関して使用される場合、開始
キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーおよびDNA鎖がアラインされる場合、DNA
鋳型の部分と少なくとも50%の配列同一性を有する配列である。好ましいものであり得
るより高いレベルの配列同一性として、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくと
も85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%および最も好ましく
は、100%の配列同一性が挙げられる。
【0043】
本明細書において、用語「ヌクレオシド」は、天然に見られるヌクレオシド塩基および
フラノシドのすべての形態を含む、すべての天然に存在するヌクレオシドを含む。天然に
存在するヌクレオシド中に最もよく見られる塩基環は、プリンおよびピリミジン環である
。天然に存在するプリン環として、例えば、アデニン、グアニンおよびN6-メチルアデ
ニンが挙げられる。天然に存在するピリミジン環として、例えば、シトシン、チミン、5
-メチルシトシン、プソイドウラシルが挙げられる。天然に存在するヌクレオシドとして
、例えば、それだけには限らないが、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン、ウ
リジン、イノシン、7-メチルグアノシンまたはプソイドウリジンのリボ、2’-O-メ
チルまたは2’-デオキシリボ誘導体が挙げられる。
【0044】
本明細書において、用語「ヌクレオシド類似体」、「修飾ヌクレオシド」または「ヌク
レオシド誘導体」として、本明細書において記載されるような合成ヌクレオシドが挙げら
れる。ヌクレオシド誘導体はまた、保護基とともに、または伴わずに、修飾塩基または/
および糖部分を有するヌクレオシドを含み、例えば、2’-デオキシ-2’-フルオロウ
リジン、5-フルオロウリジンなどが挙げられる。本明細書において提供される化合物お
よび方法として、このような塩基環およびその合成類似体ならびに非天然複素環置換塩基
糖および非環式置換塩基糖が挙げられる。本発明とともに利用できるその他のヌクレオシ
ド誘導体として、例えば、LNAヌクレオシド、ハロゲン置換プリン(例えば、6-フル
オロプリン)、ハロゲン置換ピリミジン、N6-エチルアデニン、N4-(アルキル)-
シトシン、5-エチルシトシンなど(米国特許第6,762,298号)が挙げられる。
【0045】
本明細書において、用語「ユニバーサル塩基」、「縮重塩基」、「ユニバーサル塩基類
似体」および「縮重塩基類似体」として、例えば、特定の実施形態では、天然NTP(例
えば、ATP、UTP、CTPおよびGTP)またはその他の特定のNTPのうちの1種
の代理としてRNAポリメラーゼによって認識されることが可能である人工塩基を有する
ヌクレオシド類似体が挙げられる。ユニバーサル塩基または縮重塩基は、Loakes,
D.、Nucleic Acids Res.、第29巻:2437~2447頁(20
01年);Crey-Desbiolles,C.ら、Nucleic Acids R
es.、第33巻:1532~1543頁(2005年);Kincaid,K.ら、N
ucleic Acids Res.、第33巻:2620~2628頁(2005年)
;Preparata,FP、Oliver,JS、J.Comput.Biol.75
3~765頁(2004年);およびHill,F.ら、Proc Natl Acad
.Sci.USA、第95巻:4258~4263頁(1998年))に開示されている
。
【0046】
本明細書において、用語「修飾されたNTP」とは、糖、塩基、三リン酸鎖を含む任意
の位置またはこれら3つの位置の何らかの組合せに結合された、化学部分の基を有するヌ
クレオシド5’-三リン酸を指す。このようなNTPの例は、例えば、「Nucleos
ide Triphosphates and Their Analogs:Chem
istry, Biotechnology and Biological Appl
ications」、Vaghefi,M.ら、Taylor and Francis
、Boca Raton(2005年)に見出すことができる。
【0047】
本明細書において、用語「修飾オリゴヌクレオチド」は、例えば、修飾ヌクレオシド、
修飾ヌクレオチド間連結を含有する、または修飾ヌクレオシドおよびヌクレオチド間連結
の何らかの組合せを有するオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドヌクレオチド
間連結修飾の例として、ホスホロチオエート、ホスホトリエステルおよびメチルホスホネ
ート誘導体が挙げられる(Stec、W.J.ら、Chem.Int.Ed.Engl.
、第33巻:709~722頁(1994年);Lebedev,A.V.ら、E.,P
erspect.Drug Discov.Des.、第4巻:17~40頁(1996
年);およびZonら、米国特許出願第20070281308号)。ヌクレオチド間連
結修飾のその他の例は、Waldnerら、Bioorg.Med.Chem.Lett
ers第6巻:2363~2366頁(1996年)に見出すことができる。
【0048】
用語「プロモーター」とは、本明細書において、特定のDNA配列(例えば、遺伝子)
の転写の開始を指示および制御するdsDNA鋳型の領域を指す。プロモーターは、同一
鎖上およびDNAの上流に位置する(センス鎖の5’領域に向けて)。プロモーターは、
通常、転写されるDNA配列のすぐ隣である(または部分的に重複している)。プロモー
ター中のヌクレオチド位置は、DNAの転写が始まる転写開始部位(位置+1)に対して
指定される。開始オリゴヌクレオチドプライマーは、プロモーター配列の開始部位(特定
の実施形態では、位置+1および+2にあり、開始四量体の場合には、位置+1、+2お
よび+3にある)に対して相補的である。
【0049】
本明細書において、用語「転写」または「転写反応」とは、DNA鋳型と相補的である
RNAを酵素的に作製し、それによって、DNA配列のいくつかのRNAコピーを生成す
るための当技術分野で公知の方法を指す。転写反応において合成されたRNA分子は、「
RNA転写物」、「一次転写物」または「転写物」と呼ばれる。本明細書において提供さ
れる組成物および方法が関与する転写反応は、「開始キャップ付オリゴヌクレオチドプラ
イマー」を使用する。DNA鋳型の転写は、指数関数的、非線形または線形であり得る。
DNA鋳型は、二本鎖直鎖状DNA、部分的に二本鎖の直鎖状DNA、環状二本鎖DNA
、DNAプラスミド、PCRアンプリコン、RNAポリメラーゼと適合する修飾核酸鋳型
であり得る。
【0050】
本明細書において、用語「アシル」とは、基-C(O)Ra(式中、Raは、水素、低
級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールなどである)
を示す。
【0051】
本明細書において、用語「置換アシル」とは、基-C(O)Ra’(式中、Ra’は、
置換低級アルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクリル、置換アリール、置換ヘテ
ロアリールなどである)を示す。
【0052】
本明細書において、用語「アシルオキシ」とは、基-OC(O)Rb(式中、Rbは、
水素、低級アルキル、置換低級アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロ
シクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロ
アリールなどである)を示す。
【0053】
本明細書において、用語「アルキル」とは、いくつかの実施形態では、1~20個の炭
素原子の範囲の、いくつかの実施形態では、1~8個の炭素原子の範囲の炭化水素の単結
合鎖を指し、例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec
-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル
、ドデカニルなどが挙げられる。
【0054】
本明細書において、用語「低級アルキル」とは、いくつかの実施形態では、1~6個の
炭素原子の範囲の、いくつかの実施形態では、2~5個の炭素原子の範囲の炭化水素の直
鎖または分枝鎖を指す。例として、エチル、プロピル、イソプロピルなどが挙げられる。
【0055】
本明細書において、用語「アルケニル」とは、1つまたは複数の二重結合を有し、特に
断りのない限り、約2~約20個の、いくつかの実施形態では、約2~約10個の炭素原
子の範囲の、いくつかの実施形態では、約2~約8個の炭素原子の、いくつかの実施形態
では、約2~約6個の炭素原子の範囲の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖ヒドロカル
ビルを指す。アルケニルラジカルの例として、ビニル、アリル、1,4-ブタジエニル、
イソプロペニルなどが挙げられる。
【0056】
本明細書において、用語「アルケニルアリール」とは、アルケニル置換アリール基を指
し、「置換アルケニルアリール」とは、本明細書において示されるような1つまたは複数
の置換基をさらに保持するアルケニルアリール基を指す。
【0057】
本明細書において、用語「アルケニレン」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合
を有し、通常、2~20個の炭素原子、いくつかの実施形態では、2~12個の範囲の炭
素原子、いくつかの実施形態では、2~8個の範囲の炭素原子を含有する、二価直鎖また
は分岐鎖ヒドロカルビル基を指し、「置換アルケニレン」とは、本明細書において示され
るような1つまたは複数の置換基をさらに保持するアルケニレン基を指す。
【0058】
本明細書において、用語「アルキレン」とは、1~20個の炭素原子、いくつかの実施
形態では、1~15個の範囲の炭素原子の、2個の水素原子が同一炭素原子から、または
異なる炭素原子からとられる直鎖または分岐鎖を含有する二価ヒドロカルビル基を指す。
アルキレンの例として、それだけには限らないが、メチレン(-CH2-)、エチレン(
-CH2CH2-)などが挙げられる。
【0059】
本明細書において、用語「アルキニル」とは、1つまたは複数の三重結合を有し、約2
~20個の炭素原子、いくつかの実施形態では、約2~10個の範囲の炭素原子、いくつ
かの実施形態では、約2~8個の範囲の炭素原子、いくつかの実施形態では、約2~6個
の範囲の炭素原子を含有する、直鎖または分岐鎖ヒドロカルビルを指す。アルキニルラジ
カルの例として、エチニル、プロピニル(プロパルギル)、ブチニルなどが挙げられる。
【0060】
本明細書において、用語「アルキニルアリール」とは、アルキニル置換アリール基を指
し、「置換アルキニルアリール」とは、本明細書において示されるような1つまたは複数
の置換基をさらに保持するアルキニルアリール基を指す。
【0061】
本明細書において、用語「アルコキシ」は、基-ORc(式中、Rcは、定義されるよ
うな、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換ア
ラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアル
キル、シクロヘテロアルキルまたは置換シクロヘテロアルキルである)を示す。
【0062】
本明細書において、用語「低級アルコキシ」とは、基-ORd(式中、Rdは、低級ア
ルキルである)を示す。
【0063】
本明細書において、用語「アルキルアリール」とは、アルキル置換アリール基を指し、
「置換アルキルアリール」とは、本明細書において示されるような1つまたは複数の置換
基をさらに保持するアルキルアリール基を指す。
【0064】
本明細書において、用語「アルキルチオ」とは、基-S-Rh(式中、Rhは、アルキ
ルである)を指す。
【0065】
本明細書において、用語「置換アルキルチオ」とは、基-S-Ri(式中、Riは、置
換アルキルである)を指す。
【0066】
本明細書において、用語「アルキニレン」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合
を有し、通常、約2~12個の範囲の炭素原子、いくつかの実施形態では、約2~8個の
範囲の炭素原子を有する二価直鎖または分岐鎖ヒドロカルビル基を指し、「置換アルキニ
レン」とは、本明細書において示されるような1つまたは複数の置換基をさらに保持する
アルキニレン基を指す。
【0067】
本明細書において、用語「アミド」とは、基-C(O)NRjRj’(式中、Rjおよ
びRj’は独立に、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アルキル、置換アルキル、
アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり得る)を示す
。
【0068】
本明細書において、用語「置換アミド」とは、基-C(O)NRkRk’(式中、Rk
およびRk’は独立に、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリー
ル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり、ただし、RkおよびRk’のうち
少なくとも一方は、水素ではない)を示す。窒素と組み合わせたRkRk’は、任意選択
で、置換複素環式環またはヘテロアリール環を形成し得る。
【0069】
本明細書において、用語「アミノ」または「アミン」とは、基-NRnRn’(式中、
RnおよびRn’は独立に、本明細書において定義されるような、水素、低級アルキル、
置換低級アルキル、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール
または置換ヘテロアリールであり得る)を示す。「二価アミン」は、基-NH-を示す。
「置換二価アミン」とは、基-NR-(式中、Rは、低級アルキル、置換低級アルキル、
アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロア
リールである)を示す。
【0070】
本明細書において、用語「置換アミノ」または「置換アミン」とは、基-NRpRp’
(式中、RpおよびRp’は独立に、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アルキル
、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールであり
、ただし、RpおよびRp’のうち少なくとも一方は、水素ではない)を示す。窒素と組
み合わせたRpRp’は、任意選択で、置換複素環式環またはヘテロアリール環を形成し
得る。
【0071】
本明細書において、用語「アロイル」とは、ベンゾイルなどのアリール-カルボニル種
を指し、「置換アロイル」とは、本明細書において示されるような1つまたは複数の置換
基をさらに保持するアロイル基を指す。
【0072】
本明細書において、用語「アリール」は、単独または組み合わせて、フェニル、ナフチ
ルまたは任意選択で、5~10の環員の、いくつかの実施形態では、5~6の環員のシク
ロアルキルを有する、および/または任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アル
キルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ
、ヘテロアリールオキシ、任意選択で、アルキル、アリールもしくはヘテロアリール基で
一置換もしくは二置換されていてもよいアミノ、アミジノ、任意選択で、アルキル、アリ
ール、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル基で置換されていてもよい尿素、任意選択
で、アルキル、アリールもしくはヘテロアリール基でN-一置換もしくはN,N-二置換
されていてもよいアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルア
ミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニ
ルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの1~3の基もしくは置換基で置換され
ていてもよい、縮合芳香族複素環を指す。
【0073】
本明細書において、用語「アリールオキシ」とは、基-OAr(式中、Arは、アリー
ルまたは置換アリール基である)を示す。
【0074】
本明細書において、用語「炭素環」とは、連結された炭素原子から構成される単環また
は複数の縮合環を有する飽和、不飽和または芳香族基を指す。環(単数または複数)は、
任意選択で、非置換であっても、または例えば、ハロゲン、低級アルキル、アルコキシ、
アルキルチオ、アセチレン(-C=CH)、アミノ、アミド、アジド、カルボキシル、ヒ
ドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール
、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、チオール(-SH)、スルファミド(-S(
O)2NH2などで置換されていてもよい。
【0075】
本明細書において、用語「グアニジニル」とは、基-N=C(NH2)2を示し、「置
換グアニジニル」とは、基-N=C(NR2)2(式中、各Rは独立に、本明細書におい
て示されるようなH、アルキル、置換アルキル、アリールまたは置換アリールである)を
示す。
【0076】
本明細書において、用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、すべてのハロゲン、すなわ
ち、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、ブロモ(Br)およびヨード(I)を指す。
【0077】
本明細書において、用語「ヘテロアリール」とは、群O、SおよびNから独立に選択さ
れる、1個もしくは複数の、いくつかの実施形態では、1~4個の、いくつかの実施形態
では、1~3個の、いくつかの実施形態では、1~2個のヘテロ原子を含有する、任意選
択で、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキル
スルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、任意選択で、アル
キル、アリールもしくはヘテロアリール基で一置換もしくは二置換されていてもよいアミ
ノ、アミジノ、任意選択で、アルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリ
ル基で置換されていてもよい尿素、任意選択で、アルキル、アリールもしくはヘテロアリ
ール基でN-一置換もしくはN,N-二置換されていてもよいアミノスルホニル、アルキ
ルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、ア
ルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ
などの1~3の基もしくは置換基で置換された、5もしくは6個の環原子を含有する単環
式芳香環構造または8~10個の原子を有する二環式芳香族基を指す。ヘテロアリールは
また、スルフィニル、スルホニルおよび第三級環窒素のN-オキシドなどの酸化Sまたは
Nを含むものとする。炭素または窒素原子は、安定な芳香環が保持されるようなヘテロア
リール環構造の結合点である。ヘテロアリール基の例として、フタルイミド、ピリジニル
、ピリダジニル、ピラジニル、キナゾリニル、プリニル、インドリル、キノリニル、ピリ
ミジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、チエニル、イソキサゾリル、オキサチ
アジアゾリル、イソチアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、トリアジニル、フラニル
、ベンゾフリル、インドリルなどがある。置換ヘテロアリールは、安定な化合物を生成す
るために利用可能な炭素または窒素で結合された置換基を含有する。
【0078】
本明細書において、用語「置換ヘテロアリール」とは、任意選択で、1つまたは複数の
官能基、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン
、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、
置換複素環、ヘタリール、置換ヘタリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドな
どで一置換または多置換された複素環を指す。
【0079】
本明細書において、用語「複素環」とは、任意選択で、非置換であってもよく、または
、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミ
ノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、ヘタリ
ール、置換ヘタリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されていて
もよい、単環(例えば、モルホリノ、ピリジルまたはフリル)または多環縮合環(例えば
、ナフトピリジル、キノキサリル、キノリニル、インドリジニルまたはベンゾ[b]チエ
ニル)を有し、環内に炭素原子およびN、OまたはSなどの少なくとも1個のヘテロ原子
を有する、飽和、不飽和または芳香族基を指す。
【0080】
本明細書において、用語「置換複素環」とは、安定な化合物を生成するように任意の利
用可能な点で結合された、任意選択で置換されていてもよいアルキル、任意選択で置換さ
れていてもよいアルケニル、任意選択で置換されていてもよいアルキニル、ハロ、ヒドロ
キシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシル
オキシ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ、ア
ミド、アミジノ、任意選択で、アルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはヘテロシク
リル基で置換されていてもよい尿素、任意選択で、アルキル、アリールもしくはヘテロア
リール基でN-一置換もしくはN,N-二置換されていてもよいアミノスルホニル、アル
キルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、
アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミ
ノ、アシル、カルボキシル、複素環、置換複素環、ヘタリール、置換ヘタリール、ニトロ
、シアノ、チオール、スルホンアミドおよびオキソからなる群から選択される1つまたは
複数の、例えば、1、2または3つの置換基で置換された複素環を指す。
【0081】
本明細書において、用語「ヒドロカルビル」とは、その骨格が、炭素および水素のみを
含む任意の有機ラジカルを指す。したがって、ヒドロカルビルは、アルキル、シクロアル
キル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アリ
ールアルキル、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキ
ニルアリールなどを包含する。
【0082】
本明細書において、用語「置換ヒドロカルビル」とは、-O-、-S-、-NR-(式
中、Rは、水素、アルキルまたは置換アルキルである)、-C(O)-、-C(S)-、
-C(=NR’)-、-C(=CR’2)-(式中、R’は、アルキルまたは置換アルキ
ルである)、-O-C(O)-、-O-C(O)-O-、-O-C(O)-NR-(また
は-NR-C(O)-O-)、-NR-C(O)-、-NR-C(O)-NR-、-S-
C(O)-、-S-C(O)-O-、-S-C(O)-NR-、-O-S(O)2-、-
O-S(O)2-O-、-O-S(O)2-NR-、-O-S(O)-、-O-S(O)
-O-、-O-S(O)-NR-、-O-NR-C(O)-、-O-NR-C(O)-O
-、-O-NR-C(O)-NR-、-NR-O-C(O)-、-NR-O-C(O)-
O-、-NR-O-C(O)-NR-、-O-NR-C(S)-、-O-NR-C(S)
-O-、-O-NR-C(S)-NR-、-NR-O-C(S)-、-NR-O-C(S
)-O-、-NR-O-C(S)-NR-、-O-C(S)-、-O-C(S)-O-、
-O-C(S)-NR-(または-NR-C(S)-O-)、-NR-C(S)-、-N
R-C(S)-NR-、-S-S(O)2-、-S-S(O)2-O-、-S-S(O)
2-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(
O)-NR-、-NR-O-S(O)2-、-NR-O-S(O)2-O-、-NR-O
-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-NR-S(O)-O-、-O-
NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)2-O-、-O-NR-S(O)2-N
R-、-O-NR-S(O)2-、-O-P(O)R2-、-S-P(O)R2-または
-NR-P(O)R2-(式中、各Rは独立に、水素、アルキルまたは置換アルキルであ
る)などのようなリンカー/スペーサー部分によってヒドロカルビル部分と結合された、
ヒドロキシ、ヒドロカルビルオキシ、置換ヒドロカルビルオキシ、アルキルチオ、置換ア
ルキルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、アミノ、アルキルアミノ、置換アルキル
アミノ、カルボキシ、-C(S)SR、-C(O)SR、-C(S)NR2(式中、各R
は独立に、水素、アルキルまたは置換アルキルである)、ニトロ、シアノ、ハロ、-SO
3Mまたは-OSO3M(式中、Mは、H、Na、K、Zn、Caまたはメグルミンであ
る)、グアニジニル、置換グアニジニル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロ
カルビルカルボニル、置換ヒドロカルビルカルボニル、ヒドロカルビルオキシカルボニル
、置換ヒドロカルビルオキシカルボニル、ヒドロカルビルカルボニルオキシ、置換ヒドロ
カルビルカルボニルオキシ、アシル、アシルオキシ、複素環、置換複素環、ヘテロアリー
ル、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールカルボニル、置換ヘテロアリールカルボニル、
カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、アリールカルバモ
イル、カルバメート基、ジチオカルバメート基、アロイル、置換アロイル、有機スルホニ
ル、置換有機スルホニル、有機スルフィニル、置換アルキルスルフィニル、アルキルスル
ホニルアミノ、置換アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、置換アリー
ルスルホニルアミノ、スルホンアミド基、スルフリルなどから選択される1つまたは複数
の置換基をさらに保持する上記で言及されたヒドロカルビル基のいずれかを指す。
【0083】
本明細書において、用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」とは、基-OHを指す
。
【0084】
本明細書において、用語「オキソ」とは、結合している炭素に二重結合された酸素置換
基を指す。
【0085】
本明細書において、用語「スルフィニル」は、基-S(O)-を示す。
【0086】
本明細書において、用語「置換スルフィニル」とは、基-S(O)Rt(式中、Rtは
、低級アルキル、置換低級アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアル
キルアルキル、置換シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヘ
テロシクリルアルキル、置換ヘテロシクリル(hetereocyclyl)アルキル、アリール、置
換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、へテロアラルキル、置換へテロアラ
ルキル、アラルキルまたは置換アラルキルである)を示す。
【0087】
本明細書において、用語「スルホニル」とは、基-S(O)2-を示す。
【0088】
本明細書において、用語「置換スルホニル」とは、基-S(O)2Rt(式中、Rtは
、低級アルキル、置換低級アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアル
キルアルキル、置換シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヘ
テロシクリルアルキル、置換ヘテロシクリル(hetereocyclyl)アルキル、アリール、置
換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、へテロアラルキル、置換へテロアラ
ルキル、アラルキルまたは置換アラルキルである)を示す。
【0089】
本明細書において、用語「スルフリル」とは、基-S(O)2-を示す。
【0090】
本発明は、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーが、一般形態
m7Gppp[
N
2’Ome]
n[N]
m(式中、
m7Gは、N7-メチル化グアノシンまたは任意のグ
アノシン類似体であり、Nは、任意の天然、修飾または非天然ヌクレオシドであり、「n
」は、1~4の任意の整数であり得、「m」は、1~9の整数であり得る)を有する、5
’キャップ付RNAを合成するための方法および組成物を提供する。本発明の一態様では
、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、式I:
【化2】
[式中、
B
1からB
10の各々は独立に、天然、修飾または非天然ヌクレオシド塩基であり、
Mは、0または1であり、
Lは、0または1であり、
q
1は、1であり、
q
2からq
9の各々は独立に、0または1であり、
R
1は、Hまたはメチルであり、
R
2およびR
3は独立に、H、OH、アルキル、O-アルキル、アミン、アジド、ハロ
ゲン、リンカーまたは検出可能なマーカーであり、
X
1からX
13の各々は独立に、OまたはSであり、
Y
1からY
13の各々は独立に、OH、SH、BH
3、アリール、アルキル、O-アル
キルまたはO-アリールであり、
Z
1からZ
22の各々は独立に、O、S、NH、CH
2、C(ハロゲン)
2またはCH
(ハロゲン)であり、
R
4からR
12の各々は独立に、H、OH、OMe、または検出可能なマーカーである
]
で示される構造を有する。
【0091】
特定の実施形態では、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、三量体(q2
-q9=0)、四量体(q3-q9=0)、五量体(q4-q9=0)、六量体(q5-
q9=0)、七量体(q6-q9=0)、八量体(q7-q9=0)、九量体(q8-q
9=0)、十量体(q9=0)または十一量体である。開始キャップ付オリゴヌクレオチ
ド三量体プライマーのいくつかの例を、以下の表Iに提示する:
【0092】
【0093】
本発明によって包含されるその他の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、
既知または新規塩基類似体を有するプライマーを含む。開始キャップ付オリゴヌクレオチ
ドプライマーを合成するための方法を以下の実施例において例示する。
【0094】
転写
真核生物では、メッセンジャーRNA(mRNA)の転写は、RNAポリメラーゼII
によって行われる。これは、複雑な調節を有する複雑な多サブユニット酵素である。in
vitroでの大規模転写を実施するために、研究者らは、一般に、T7、T3、SP
6、K1-5、K1E、K1FまたはK11バクテリオファージに由来する単一サブユニ
ットファージポリメラーゼを使用する。このファミリーのポリメラーゼは、アクセサリー
タンパク質を必要とせず、開始ヌクレオチド配列の最小の制約を有する約17ヌクレオチ
ドの簡単な最小プロモーター配列を有する。本出願は、T7 RNAポリメラーゼ(T7
RNAP)に焦点を当てているが、当業者ならば、本発明は、その他のRNAポリメラ
ーゼを用いても実施できるということは理解するであろう。
【0095】
T7 RNAPは、少なくとも2つのタンパク質状態で存在する。第1のものは、「ア
ボーティブ(abortive)複合体」と呼ばれ、転写開始と関連している。第2のものは、「
伸長複合体」と呼ばれる極めて前進性のコンホメーションである。in vitro転写
は、6つのステップに分けることができる:1)RNAポリメラーゼのプロモーター配列
との結合、2)転写の開始、3)アボーティブ転写と呼ばれ、その間に、ポリメラーゼが
DNA鋳型および短いアボーティブ転写物を頻繁に放出する非前進性伸長、4)開放複合
体の閉鎖複合体への変換、5)前進性伸長および6)転写終結。転写の際に生成された相
当な量のRNAは、約2~8ヌクレオチド長の短いアボーティブ断片からなる(Bioc
hemistry第19巻:3245~3253頁(1980年);Nucleic A
cids Res.第9巻:31~45頁(1981年);Nucleic Acids
Res.第15巻:8783~8798頁(1987年);Biochemistry
第27巻:3966~3974頁(1988年))。約10~14塩基の合成後、RNA
ポリメラーゼは、アボーティブサイクリングから逃れ、同時にプロモーターDNAとの配
列特異的接触を失い、前進性伸長複合体を形成し、これでは、RNA鎖が配列非依存的に
延長される(J.Mol.Biol.第183巻:165~177頁(1985年);P
roc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.第83巻:3614~3618頁(
1986年);Mol.Cell Biol.第7巻:3371~3379頁(1987
年))。
【0096】
最も活性なクラスIII T7プロモーターのコンセンサス配列は、転写開始部位の上
流の17bpの配列および下流の6bpを包含する(Cell第16環:815~25頁
(1979年))。最初に転写されるヌクレオチドの位置は、一般に、RNAの+1転写
物ヌクレオチドと呼ばれ、2番目に転写されるヌクレオチドは、+2転写物ヌクレオチド
などと呼ばれる(表2)。転写の際、2つの鎖が融解し、転写バブルを形成し、二本鎖の
ボトム鎖(表2において3’から5’で示されている)は、転写の鋳型である。転写物ヌ
クレオチド+3およびそれを超えるものについては、鋳型鎖は、主にワトソン-クリック
塩基対形成相互作用によって転写されるヌクレオチドの同一性を規定する。ここで、第1
のRNA転写物ヌクレオチドをコードするヌクレオチドは、鋳型の+1ヌクレオチドと定
義される。表2に示される例では、+1転写物ヌクレオチドは、Gであり、+1鋳型ヌク
レオチドは、Cである。同様に、+4転写物ヌクレオチドは、Aであり、+4鋳型ヌクレ
オチドは、Tである。
【0097】
【0098】
DNAポリメラーゼとは異なり、T7 RNAPは、プライマーの不在下でRNA合成
を開始する。開始における第1のステップは、de novo RNA合成と呼ばれ、こ
れでは、RNAポリメラーゼは、DNA鋳型上の特異的配列を認識し、位置+1および+
2の鋳型残基と相補的であるヌクレオチド三リン酸の第1の対を選択し、ジヌクレオチド
を形成するリン酸ジエステル結合の形成を触媒する。開始ヌクレオチドは、ポリメラーゼ
に対して伸長の際に使用されるものよりも低い親和性を有する。Kd値は、第1の開始N
TPについて2mMであり、第2については、80μMであるのに対し、Kdは、伸長の
際のNTPについてはおよそ5μMである(J.Mol.Biol.(2007年)第3
70巻、256~268頁)。de novo合成が、転写の際の律速ステップであると
いうことがわかっている。T7 RNAPは、開始ヌクレオチドとしてGTPに対して強
いバイアスを示す(J.Biol.Chem.第248巻:2235~2244頁(19
73年))。ゲノム中の17のT7プロモーター中、15がGTPで(また、13がpp
pGpGで)開始するのに対し、転写伸長の際には明らかなNTP優先はない(J.Mo
l.Biol.第370巻:256~268頁(2007年))。T7 RNAポリメラ
ーゼは、位置+1にAをコードするプロモーターでは不十分にしか開始せず、代わりに、
転写は、主に位置+2のコードされるGで開始する(J.Biol.Chem.第278
巻:2819~2823頁(2003年))。
【0099】
de novo RNA合成の際には、開始ヌクレオチドの結合は、塩基スタッキング
、ポリメラーゼ残基、開始ヌクレオチドのグアニン部分の間の特異的相互作用および塩基
相補性相互作用によって生じた自由エネルギーによって主に達成される(J.Mol.B
iol.第370巻:256~268頁(2007年))。
【0100】
T7 RNAPはまた、短いオリゴヌクレオチドプライマーを用いても開始できること
がわかっている。例えば、T7ゲノム中の13のプロモーターは、pppGpGを用いて
開始することがわかっている(J.Mol.Biol.第370巻:256~268頁(
2007年))。いくつかのグループが、T7 RNAPが、ジヌクレオチドプライマー
から開始できることを示した(Biochemistry第24巻:5716~5723
頁(1985年))。Axelrodらは、キャップのないGpAジヌクレオチドは、そ
れぞれ、2’-デオキシシチジンおよび2’-デオキシチミジンである+1および+2鋳
型ヌクレオチド(「CT」鋳型)から開始できることを示した。彼らの反応条件は、20
0マイクロモル(μM)の二量体ならびに100μMのATP、CTP、GTPおよびU
TPであった。彼らの反応混合物はまた、100μMの3’ dATP、3’ dCTP
3’ dUTPまたは50μMの3’ dGTPを含有していた。彼らは、GpA開始
されたRNAのみを観察し、GpAの混合物で開始したRNAおよびGTP開始からの5
’三リン酸RNAを観察しなかった。これは、使用された反応条件によるものである可能
性がある。100μM GTPは、第1の開始グアノシンに対するT7ポリメラーゼの2
mM Kdよりもかなり低い(J.Mol.Biol.(2007年)第370巻、25
6~268頁)。GTPは、開始オリゴヌクレオチドを用いる開始について競合するので
、低GTP濃度を使用することは、GpA開始に好都合であるが、低い転写収率をもたら
す(<150μg/反応物1mLであると推定される、最大の算出された収率)。ApG
、CpG、UpGまたはGpGを用いる「CT」鋳型での転写を開始する場合には、彼ら
は、RNA転写物の形成およびさらなる鋳型にならない(untemplated)5’ヌクレオチ
ド(それぞれ、A、C、UまたはG)を観察した。
【0101】
Axelrodらはまた、キャップのないGpGジヌクレオチドを使用して、鋳型ヌク
レオチド+1および+2は、2’-デオキシシチジンである(「CC」鋳型)プロモータ
ーでRNA合成を開始した。彼らは、開始の低忠実度を観察し、3種の異なる転写産物を
観察した。彼らは、「オートラジオグラフの試験は、各トリプレットのあるメンバーは、
正常な(+1)位置のGpGでの開始に起因し、各トリプレットの第2のメンバーは、異
常な(-1)位置のGpGでの開始に起因し、各トリプレットの第3のメンバーは、正常
位置のグアノシン三リン酸での開始に起因することを示す。したがって、GpGは、φ1
0プロモーター(「CC」鋳型)ならびにφ1.1Aプロモーター(「CT」鋳型)を用
いた場合、相対的に弱いイニシエーターであり、使用された濃度のグアノシン三リン酸を
用いる正常な開始を防ぐことはできない。」と述べている。彼らは、φ10プロモーター
(「CC」鋳型)を用いるGpAジヌクレオチドを用いる開始を観察しなかった。CpA
、ApCおよびApAは、上記の「TC」および「CC」鋳型のいずれかでイニシエータ
ーとして働かなかったが、これは、おそらくは、これらが、位置+1および+2の鋳型ヌ
クレオチドとハイブリダイズできないためである。Axelrodらに記載される方法は
、シーケンシングのための極めて少量の放射活性転写物の生成のために設計されたもので
あり、有用な製薬量のRNAの大規模生成には適していない。より高い濃度(約5mM)
の開始二量体およびGTPを含むNTPを使用して、RNAの収率を増大する場合には、
予測される結果は、GTPが、Kd(2mM)に近いNTP濃度で+1ヌクレオチドから
の開始について二量体と効率的に競合するので、開始二量体を用いて出発する低い割合の
RNAであり、pppGを用いて出発する大きな割合のRNAが生成する。
【0102】
Pitulleらは、T7 RNAPを用いる転写は、キャップのないオリゴヌクレオ
チド(2マー~6マー)を用いて開始され得ることを示した(Gene、第112巻:1
01~105頁(1992年))。これらのオリゴヌクレオチドは、5’-OHまたは5
’一リン酸のいずれかを有していた。それらはまた、構造ビオチン-ApGのオリゴヌク
レオチドを用いて転写を開始した。この研究に使用されたオリゴヌクレオチドのすべては
、3’末端Gを含有していた。Pitulleらはまた、RNAの5’末端にまたは5’
末端付近に2’-O-メチル化または2’-デオキシ残基を有するRNA転写物を生成す
るために、プライマー配列内に2’-O-メチル残基およびデオキシ残基を含めることが
できることを示した。この刊行物において、任意の開始オリゴヌクレオチドの3’末端グ
アノシン残基が、+1鋳型ヌクレオチドと対形成したことは明確である。これは、転写さ
れたRNAの5’末端に付加された鋳型にならないヌクレオチドをもたらす。具体的には
、著者は、「Y末端Gは別として、鋳型DNAとの塩基対合は必要ではないので、このセ
グメントにおける配列変動も容易にあり得る」と述べている。したがって、開始オリゴヌ
クレオチドプライマーのうち、位置+1の鋳型ヌクレオチド「C」に対してのみ完全に相
補的であり、以降の位置(+2、+3など)の任意のヌクレオチドに対して相補的ではな
いものはない。これは、このグループによるその後の方法の論文において確認される(M
ethods Mol Biol.第74巻:99~110頁(1997年)、Meth
ods Mol.Biol.第252巻:9~17頁、(2004年))。それらの方法
は、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーのすべてのヌクレオチドが、位置+1
および以降の位置の鋳型ヌクレオチドと完全に相補的である本明細書において記載される
方法とは異なる。Kleineidamらは、2’-デオキシまたは2’-O-メチル糖
で修飾された二量体または三量体を用いる開始によって5’修飾tRNA転写物を作出し
た(Nucleic Acids Research第21巻:1097~1101頁(
1993年)。やはり、著者らは、プライマーの3’-末端グアノシンは、+1鋳型ヌク
レオチド「C」で開始することを述べている。
【0103】
Ishikawaらによる別の研究は、構造m7GpppApG、m7Gpppm6A
pG、m7GpppA2’OmepGまたはm7Gpppm6A2’OmepGのキャッ
プ形成開始オリゴヌクレオチド三量体は、鋳型位置+1および+2に2’-デオキシシチ
ジン残基を有する鋳型で(「CC」鋳型;Nucleic Acids Symposi
um Series第53号:129(2009年))転写を開始できることを示した。
著者らは、「m7G5’pppGを使用するケースから得られた異なる結果は、-1位置
での、m7G5’pppN1pG中のさらなるアデノシン(N1)と、T7プロモーター
中の2’-デオキシチミジンの間の塩基対形成から引き起こされ得る」と述べている。こ
の方法は、開始キャップ付オリゴヌクレオチド三量体の+1および+2ヌクレオチドが、
鋳型ヌクレオチドの+1および+2と対形成する本発明において記載される方法とは明確
に異なる。Ishikawaらは、6mMの開始オリゴヌクレオチド三量体、0.9mM
GTPおよび7.5mMのATP、CTPおよびUTPの各々を使用した。著者らは、
転写反応を、pppRNAを上回ってキャップ形成RNAに向けて指示するために、競合
GTPを上回る、6倍超過剰のキャップ付開始オリゴヌクレオチドプライマーを使用した
、これは転写反応の最も高価なヌクレオチド成分であり、これが、合成されたRNAの総
費用を増大させる。他方、低濃度のGTP(0.9mM)は、転写反応におけるRNAの
総収量を制限する(理論的には、1.4mg/mL未満に)。それに反して、本明細書に
おいて記載される方法は、効率的なRNAキャップ形成およびRNAのより高い収量(2
~6mg/mL)の両方を達成し、ひいては、商業的に有用な費用での高品質mRNAの
生成を可能にするために、任意のNTPの濃度を制限することを必要としない。
【0104】
上記で論じられた刊行物のうち、RNAキャップ形成効率を直接的に測定したものはな
く、そのため、それらの研究におけるキャップ形成の程度は、未知である。
【0105】
重要なことに、上記で記載されたすべての研究において、+1鋳型ヌクレオチドは、2
’-デオキシシチジンである(Biochemistry第24巻:5716~5723
頁(1985年)、Gene、第112巻:101~105頁(1992年)、Meth
ods Mol.Biol.第74巻:99~110頁(1997年)、Methods
Mol.Biol.第252巻:9~17頁、(2004年)、Nucleic Ac
ids Research第21巻:1097~1101頁(1993年)、Nucle
ic Acids Symposium Series第53号:129(2009年)
)。
【0106】
オリゴヌクレオチドプライマーを用いる転写開始研究の公開から20年超において、N
ucleic Acids Symposium Series第53号:129(20
09)における短い報告の公開まで、5’-対5’逆位キャップ構造を含有する開始オリ
ゴヌクレオチドプライマーを用いる転写開始の公開された例はなかった。
【0107】
5’キャップ付RNAを調製するための本明細書において提供される方法および組成物
として、それだけには限らないが、mRNA、核内低分子RNA(snRNA)、核小体
低分子RNA(snoRNA)、小カハール体特異的RNA(scaRNA)が挙げられ
る。これらの方法は、DNAを鋳型とし、プロモーターによって制御されるRNAの合成
のための、キャップ含有オリゴヌクレオチドプライマー、ヌクレオシド5’-三リン酸(
NTP)およびRNAポリメラーゼの使用を含む。特定の態様では、方法は、RNA合成
、特に、キャップ付RNAの合成において有用性を提供する開始キャップ付オリゴヌクレ
オチドプライマーを使用する。開始オリゴヌクレオチドプライマーは、天然RNA分子の
キャップ0、キャップ1、キャップ2またはTMG-キャップに似ている構造を有し、T
MG-キャップはRNAの5’位置に、キャップ1はその2番目に、キャップ2はその2
番目の隣に2’-O-メチル化ヌクレオシドユニットを含む。天然のキャップ0構造は、
2’-O-メチル化ヌクレオシドユニットを有さない。
【0108】
RNAを調製するための方法および組成物は、それだけには限らないが、分子の5’末
端に、または5’末端の付近に修飾を保持する、mRNA、snRNA、snoRNA、
scaRNA、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)およ
びトランスファー-メッセンジャーRNA(tmRNA)を含む。これらの方法は、DN
Aを鋳型とし、プロモーターによって制御されるRNAの合成のための、キャップを有す
る、または有さない開始オリゴヌクレオチドプライマー、ヌクレオシド5’-三リン酸(
NTP)およびRNAポリメラーゼの使用を含む。特定の態様では、方法は、RNA合成
において、特に、5’修飾されたRNAの合成において有用性を提供する、構造的修飾を
保持する修飾された開始オリゴヌクレオチドプライマーを使用する。
【0109】
開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーが、プライマーの3’末端にヌクレオチ
ドユニットを付加することによって、DNA鋳型でのRNAのRNAポリメラーゼ媒介性
合成の開始を可能にする開放3’-OH基を有する。開始キャップ付オリゴヌクレオチド
プライマーは、転写開始部位(すなわち、開始部位は、プロモーター配列の3’末端に近
接して位置し、プロモーター配列と重複し得る)で鋳型DNA配列と実質的に相補的であ
る。特定の実施形態では、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、プライマー
の3’末端から出発して主に一方向で(「フォワード」)RNAの合成を指示する。特定
の態様および実施形態では、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、RNA合
成の開始についてあらゆるヌクレオシド5’-三リン酸を打ち負かし、それによって、開
始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーで出発するRNAの生成を最大にし、5’-
三リン酸-ヌクレオシド(通常、GTP)で出発するRNAの生成を最小にする。
【0110】
in vitro転写によるmRNAの製造は、高度に活性なファージRNAポリメラ
ーゼ(T3、T7、SP6およびその他)を利用する。RNAポリメラーゼは、鋳型ヌク
レオチド配列の前にDNAプラスミド構築物に組み込まれている特定のプロモーターの制
御下で働く。転写プロセスは、通常、プリンヌクレオシド5’-三リン酸(通常、GTP
)で出発し、RNAポリメラーゼが終結配列と遭遇するか、またはDNA鋳型を完了する
まで継続する。
【0111】
上記で論じたように、mCAPジヌクレオチド類似体、キャップ0を含有する7mG(
5’)ppp(5’)Nが、in vitro転写における開始のために使用されている
(例えば、RNA第1巻:957~967頁(1995年))。これらのジヌクレオチド
類似体を使用して生成されるキャップ付RNA分子は、キャップ0を含有する。しかし、
合成されたキャップ付RNA分子の約50%のみ、キャップ0の正しい「フォワード」方
向を有する。キャップ0を有するRNAを、キャップ1を有するRNAに変換するために
、(ヌクレオシド-2’-O)メチルトランスフェラーゼを使用するさらなる酵素反応を
実施しなくてはならない。しかし、この変換は、定量的でない場合もあり、制御すること
は容易ではなく、残存するキャップ0RNAを、キャップ1RNAから分離することは困
難である。さらに、転写を開始するためのNTP(具体的には、GTP)からの競合は、
生成される活性キャップ形成RNA分子の量をさらに低減する。
【0112】
さらに、リボース上のブロックされた3’および/または2’位置を有する修飾7mG
残基を保持する、7mG3’Ome(5’)ppp(5’)Nおよびその他の関連ARC
A類似体などの修飾ジヌクレオチド類似体が、in vitro転写の開始のために使用
されている(例えば、RNA第7巻:1486~1495頁(2001年))。これらの
ARCAキャップ類似体は、「フォワード」方向においてのみRNA合成を指示し、した
がって、5’末端(7mG残基の2’および/または3’修飾を有する)に(天然)キャ
ップ0を有するRNA分子を生成する。このようなRNAは、標準ジヌクレオチド類似体
、7mG(5’)ppp(5’)Nを使用して調製されたRNAと比較して、翻訳系にお
いてより活性である。ARCAキャップ0を有するRNAを、ARCAキャップ1を有す
るRNAに変換するために、これまでに論じられたジヌクレオチド類似体に必要なものと
同様の(ヌクレオシド-2’-O)メチルトランスフェラーゼを用いるさらなる酵素反応
を実施しなくてはならない。この方法は、mCAPジヌクレオチド類似体について詳細に
述べられたものと同一の不利点を有し、キャップ0を有するRNAの、ARCAキャップ
1を有するRNAへの変換は、定量的でない場合もあり、反応は、制御することが容易で
はなく、残存するキャップ0RNAを、キャップ1RNAから分離することは困難であり
、転写の開始のためのNTP(具体的には、GTP)からの競合は、生成される活性キャ
ップ形成RNA分子の量をさらに低減する。
【0113】
3’末端グアノシン残基を有する短いオリゴヌクレオチドプライマー(2~6マー)が
、in vitro転写の開始のために使用されている(Pitulle,C.ら、Ge
ne、第112巻:101~105頁(1992年))。これらのオリゴヌクレオチドプ
ライマーは、修飾および非修飾リボヌクレオシド残基を含有していた(例えば、修飾リボ
ヌクレオシド残基は、2’-O-メチル化ヌクレオシド残基および2’-デオキシリボヌ
クレオシド残基を含んでいた)。より短いオリゴヌクレオチドプライマー(二量体~四量
体)は、転写の開始についてGTPを実質的に打ち負かし、より長いプライマー(五量体
~六量体)は、GTPと比較して、転写の開始においてかなり効率的ではない。それは、
これらのより長いプライマー(それらが設計されるような)が、開始部位でDNA鋳型と
の低いパーセントの相補性を有するためであり得る。対照的に、二量体、AG(設計され
るような)は、開始部位でDNA鋳型と相補的であった。この節において論じられた、オ
リゴヌクレオチドプライマーを使用して生成されたRNA分子は、内部2’-O-メチル
化ヌクレオシドを有するが、5’-キャップ0、キャップ1、キャップ2またはTMG-
キャップを含有しなかった。キャップ構造を有さないRNAを、キャップ1、キャップ2
またはTMG-キャップ構造を有するRNAに変換するために、キャップ形成酵素を使用
するさらなる酵素反応を実施しなくてはならない。しかし、このような変換は、上記で記
載されたものと同一の不利点を有する。
【0114】
キャップ構造および内部2’-O-メチル化ヌクレオシド残基を含有するその他の短い
RNAオリゴヌクレオチドは、化学的に調製されている(Ohkuboら、Org.Le
tters第15巻:4386~4389頁(2013年))。これらの短いキャップ形
成オリゴヌクレオチドを、T4 DNAリガーゼおよび相補的DNAスプリンターオリゴ
ヌクレオチドを使用して長いRNAの「キャップ除去された」(5’-キャップ構造を有
さない)断片とライゲートした。この化学的-酵素的方法を使用して合成された最終RN
Aは、内部2’-O-メチル化ヌクレオシド残基および5’-TMG-キャップ構造の両
方を有していた。しかし、このライゲーションアプローチを使用すると、短いキャップ形
成RNA(<200マー)のみが調製された。さらに、収率は低かった(15~30%)
。T4 DNAライゲーション反応を制御し、最適化することは容易ではなく、ポリアク
リルアミドゲル電気泳動を使用する労力を要する分離プロセスおよび残存するキャップの
ないRNAからのキャップ形成RNAの単離を必要とする。PAGE法による、残存する
キャップのないmRNAからの、長い(500~10000塩基)キャップ形成mRNA
の分離は、実現可能ではない。
【0115】
最後に、RNAのin vitro転写を開始するために、5’修飾ヌクレオシドまた
は5’修飾モノヌクレオチドまたは5’修飾ジヌクレオチド、通常、グアノシンの誘導体
が使用されている(Gene、第112巻:101~105頁(1992年)およびBi
oconjug.Chem.、10371~378頁(1999年))。これらのイニシ
エーターヌクレオシドおよびヌクレオチドは、標識または親和性基(例えば、ビオチン)
を保持することができ、RNAの5’末端に組み込まれる場合には、合成されたRNAの
容易な検出、単離および精製を可能にするであろう。この5’標識された、またはタグが
付けられたRNAは、一部の適用にとって必要であり得る。しかし、この戦略は、キャッ
プ0、キャップ1、キャップ2またはTMG-キャップ構造を有するmRNAの調製には
使用されなかった。
【0116】
本発明の特定の態様では、式Iの開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの組成
物が提供される。関連する態様では、RNAが、式Iの開始キャップ付オリゴヌクレオチ
ドプライマーを使用して合成される方法である。
【0117】
開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー
本発明の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、開始部位でDNA鋳型上の
配列と相補的であり得るハイブリダイゼーション配列を有する。本明細書において提供さ
れる方法および組成物において使用するためのプライマーのハイブリダイゼーション配列
の長さは、鋳型ヌクレオチド配列の同一性およびこのプライマーが、in vitro転
写の際にDNA鋳型とハイブリダイズされ、使用される温度を含むいくつかの因子に応じ
て変わる。転写において使用するための開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの
特異的ヌクレオチド配列の所望の長さの決定は、当業者によって、または通例の実験によ
って容易に決定できる。例えば、核酸またはオリゴヌクレオチドの長さは、所望のハイブ
リダイゼーション特異性または選択性に基づいて決定できる。
【0118】
いくつかの実施形態では、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー(逆位5’-
5’キャップヌクレオチドを含む)のヌクレオチド長は、3~約9の間であり、いくつか
の実施形態では、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー(キャップを含む)のヌ
クレオチド長は、3~約7の間であり、いくつかの実施形態では、開始キャップ付オリゴ
ヌクレオチドプライマー(キャップを含む)のヌクレオチド長は、3~約5の間であり、
いくつかの実施形態では、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー(キャップを含
む)のヌクレオチド長は、約3である。開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー内
のハイブリダイゼーション配列の長さは、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー
の全長以下であり得る。
【0119】
ハイブリダイゼーション配列の存在が、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー
に、所望の方向(すなわち、「フォワード」方向)のみで開始部位でDNA鋳型の相補的
配列と主にアラインさせる。フォワード方向では、RNA転写物は、逆位グアノシン残基
(すなわち、
7mG(5’)ppp(5’)N)で始まる。不正確な「逆」方向を超える
、DNA鋳型でのプライマーアラインメントのフォワード方向の優位(
図1)は、ハイブ
リダイゼーション複合体の熱力学によって維持される。後者は、開始キャップ付オリゴヌ
クレオチドプライマーのハイブリダイゼーション配列の長さおよびDNA鋳型とのハイブ
リダイゼーションに関与する塩基の同一性によって決定される。所望のフォワード方向の
ハイブリダイゼーションは、in vitro転写の際に、DNA鋳型および開始キャッ
プ付オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズされ、または使用される温度および
反応条件に応じても変わり得る。
【0120】
本発明の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、標準GTP、ATP、CT
PまたはUTPでの開始の有効性と比較して、転写の開始の有効性を増強する。いくつか
の実施形態では、転写の開始は、RNAの合成が、転写混合物中の任意のNTPからでは
なく、主に、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーから出発する場合に増強され
ると考えられる。増強された転写の開始の効率は、RNA転写物のより高い収率をもたら
す。増強された転写の開始の効率は、開始キャップ付プライマーを用いない従来法を用い
るRNAの合成を約10%、約20%、約40%、約60%、約80%、約90%、約1
00%、約150%、約200%または約500%上回って増大され得る。特定の実施形
態では、「開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー」は、転写の開始について任意
のNTP(GTPを含む)を打ち負かす。当業者ならば、開始キャップ付オリゴヌクレオ
チドプライマーの基質活性および有効性のレベルを容易に決定できる。基質有効性を決定
する方法の一例は、実施例13)に例示される。特定の実施形態では、開始は、NTPで
はなくキャップ付オリゴヌクレオチドプライマーから起こり、これは、より高いレベルの
転写されたmRNAのキャップ形成をもたらす。
【0121】
一部の態様では、RNAが、置換または修飾を有する開始キャップ付オリゴヌクレオチ
ドプライマーを利用して合成される方法が提供される。一部の態様では、開始キャップ付
オリゴヌクレオチドプライマーの置換および修飾は、RNAの合成を実質的に損なわない
。通例の試験合成を実施して、修飾された開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー
を用いて望ましい合成結果を得ることができるか否かを調べることができる。当業者は、
このような通例の実験を実施して、望ましい結果を得ることができるか否かを調べること
ができる。開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの置換または修飾は、例えば、
1つまたは複数の修飾されたヌクレオシド塩基、1つまたは複数の修飾された糖、1つま
たは複数の修飾されたヌクレオチド間連結および/または1つまたは複数の修飾された三
リン酸橋を含む。
【0122】
本明細書において提供される方法および組成物の1つまたは複数の修飾基を含み得る、
修飾された開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、NTPの開放3’-OH基
への組込みによって、DNA鋳型上でRNAポリメラーゼによって伸長され得る。開始キ
ャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、天然RNAおよびDNAヌクレオシド、修飾
されたヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含み得る。開始キャップ付オリゴヌクレ
オチドプライマーは、天然ヌクレオチド間ホスホジエステル連結またはその修飾またはそ
れらの組合せを含有し得る。
【0123】
一実施形態では、修飾基は、酵素反応媒体の温度が上がるにつれ、増大する速度で、修
飾された開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーから解離する、熱的に不安定な基
であり得る。オリゴヌクレオチドおよびNTPの熱的に不安定な基の例は、Nuclei
c Acids Res.、第36巻:e131(2008年)、Collect.Sy
mp.Ser.、第10巻:259~263頁(2008年)およびAnalytica
l Chemistry、第81巻:4955~4962頁(2009年)に記載されて
いる。
【0124】
一部の態様では、本明細書において開示されるような修飾を有し得る、少なくとも1種
のまたはより多くのNTPが、転写反応に付加される場合にRNAが合成される方法が提
供される。一部の態様では、少なくとも1種のNTPの修飾は、RNAポリメラーゼ媒介
性のRNAの合成を実質的に損なわない。NTPの修飾は、例えば、1種または複数の修
飾されたヌクレオシド塩基、1種または複数の修飾された糖、1種または複数の修飾され
た5’-三リン酸を含み得る。修飾されたNTPは、開始キャップ付オリゴヌクレオチド
プライマーの3’末端に組み込まれ得、転写を遮断せず、プライマーのさらなる伸長を支
持する。
【0125】
別の実施形態では、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの修飾基は、検出可
能な標識または検出可能なマーカーであり得る。したがって、転写後、検出可能な標識ま
たはマーカーを含有する標的RNAを、大きさ、質量、色および/または親和性捕獲によ
って同定できる。いくつかの実施形態では、検出可能な標識またはマーカーは、蛍光色素
であり、親和性捕獲標識は、ビオチンである。特定の実施形態では、転写反応の1つまた
は複数の成分(開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはNTP)を
、検出可能な標識またはマーカーを用いて標識できる。したがって、転写後、RNA分子
を、例えば、大きさ、質量、親和性捕獲または色によって同定できる。いくつかの実施形
態では、検出可能な標識は、蛍光色素であり、親和性捕獲標識は、ビオチンである。
【0126】
本発明の「開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー」を合成するために標準化学
的および酵素的合成方法を利用でき、実施例の節において本明細書において開示される。
【0127】
キット
転写を実施するための「開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマー」を含むキット
も考慮される。例えば、キットは、一般的なRNA(例えば、FLuc mRNA)の合
成のためのすべての転写試薬を含有し得る。より詳しくは、キットは、「開始キャップ付
オリゴヌクレオチドプライマー」、転写のための印がつけられた容器、RNA合成を実施
するための使用説明書および1種もしくは複数の修飾されたもしくは非修飾開始キャップ
付オリゴヌクレオチドプライマー、1種もしくは複数の非修飾NTP、1種もしくは複数
の修飾されたNTP(例えば、プソイドウリジン5’-三リン酸)、RNAポリメラーゼ
、その他の酵素、反応バッファー、マグネシウムおよびDNA鋳型からなる群から選択さ
れる1種または複数の試薬を含有し得る。
【0128】
本発明の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーは、種々の開始ヌクレオシド、
ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドの使用またはmCAPおよびARCAなどのキャ
ップ0構造を含有するポリホスフェートジヌクレオチド誘導体の使用を含む、現在の方法
および組成物を上回る相当な利点を有する。開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマ
ーは、既存の転写系および試薬と適合可能であり、さらなる酵素または試薬は必要ではな
い。さらに、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーの使用は、いくつかの非酵素
的および酵素的ステップ(キャップ形成および2’-O-メチル化など)を不要なものに
し、ひいては、RNA合成のプロセスの複雑性および費用を低減する。
【0129】
本明細書において記載される例示的方法は、T7 RNAポリメラーゼ媒介性転写反応
に関し、転写反応における使用のための当技術分野で公知のいくつかのその他のRNAポ
リメラーゼを、本発明の組成物および方法を用いて利用できる。利用することができる天
然または突然変異した変異体を含むその他の酵素として、例えば、SP6およびT3 R
NAポリメラーゼおよび熱安定性RNAポリメラーゼを含むその他の供給源由来のRNA
ポリメラーゼが挙げられる。
【0130】
一部の核酸複製および増幅方法は、プロセスの一部として転写を含み得る。これらの方
法の中に、当技術分野で公知の転写媒介性増幅(TMA)ならびに核酸配列ベースの増幅
(NASBA)、DNAおよびRNAシーケンシングならびにその他の核酸延長反応があ
る。当業者ならば、将来開発される転写反応の変法を含むその他の方法を転写方法の代わ
りに、転写方法と一緒に使用してもよいということは理解するであろう。
【0131】
治療的使用
本発明はまた、医薬組成物中の治療薬として使用するための、開始キャップ付オリゴヌ
クレオチドプライマーを含有するRNAを細胞中に導入して、細胞の医学的状態を治療す
るための、または開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含有するRNAを、そ
れらのRNAを利用する細胞中に導入して、宿主細胞に対して治療的影響を有し得るタン
パク質を生成するための、開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含有するmR
NAの生成を考慮する。
【0132】
開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含有するRNAを利用する状態を治療
するための1つの方法は、式Iの開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含有す
るRNAまたはこのようなRNAを含む組成物を、その症状/総体症状が重症度において
低減され得る、または排除され得る状態を有する、または有すると疑われる対象に投与す
るステップを含む。
【0133】
式Iの「化合物」の開始キャップ付オリゴヌクレオチドプライマーを含有するRNAは
、4mg/ml以下の濃度で、薬学的に許容される担体および/または薬学的に許容され
る塩に製剤化される場合に、薬学的に許容される担体単独を用いた治療されない個体より
も、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%また
はそれ以上に症状および/または総体症状の低減をもたらすのに有効である。
【0134】
特定の状態を治療するために、注射または当業者に公知のその他の適当な経路による投
与のために、医薬組成物が製剤化され得る。非経口投与用の注射用物質組成物は、通常、
滅菌生理食塩水などの適した溶液および/または薬剤担体中に活性化合物を含有する。組
成物はまた、脂質またはリン脂質中の、リポソーム懸濁液中の、または水性エマルジョン
中の懸濁液として、製剤化され得る。
【0135】
種々の組成物および/または製剤を調製するための方法は、当業者に公知であり、Re
mington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、W
illiams&Wilkins、1995年)を参照のこと。投与されるべき組成物は
、標的細胞または組織中の所望のタンパク質の発現を増大するために、製薬上安全な、有
効な量で一定量の選択された化合物を含有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも0.1%(w/v)の化合物を含
有する、上記のように、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.1%超を含有する
、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、最大約10%を含有する、いくつかの実施形
態では、医薬組成物は、最大約5%を含有する、いくつかの実施形態では、医薬組成物は
、最大約1%(w/v)の化合物を含有する。適した濃度の選択は、所望の用量、頻度お
よび活性薬剤の送達の方法などの因子に応じて変わる。
【0137】
哺乳動物またはヒトなどの対象の治療のために、対象の体重および全体的な健康、治療
される状態、症状の重症度などといった因子に基づいて投与量が決定される。投与量およ
び濃度は、あらゆる望ましくない副作用を避けながら、所望の利益をもたらすように決定
される。対象化合物の通常の投与量は、ヒト患者のために約0.0005~500mg/
日の範囲、いくつかの実施形態では、約1~100mg/日の間の範囲である。例えば、
より高い用法は、例えば、50~100、75~100または50~75mg/日を含み
、より低い用法は、例えば、1~50、25~50または1~25mg/日を含む。
【0138】
本発明の種々の態様を、以下の限定されない例によって例示する。実施例は、例示目的
であって、本発明のいかなる実施に対しても制限ではない。本発明の趣旨および範囲から
逸脱することなく変法および改変を行うことができるということは理解されよう。当業者
ならば、本明細書において記載される試薬および成分を合成する、または商業的に入手す
る方法を容易に承知する。
【実施例0139】
グアノシン5’-二リン酸からの7-メチルグアノシン5-二リン酸(pp
7mG)の調
製(
図1)
40.0mLの水中のグアノシン5’-二リン酸(2.5mmol)の撹拌溶液に、酢
酸を添加して、溶液のpHを4.0に調整する。この混合物に、硫酸ジメチル(4.0m
L)を、30分間にわたって滴加し、反応混合物を、0.1M NaOH溶液を使用して
反応混合物のpHを約4.0で維持しながら、室温で4時間撹拌する。4時間後、反応混
合物をCH
2Cl
2(3×50mL)を用いて抽出して、未反応の硫酸ジメチルを除去す
る。水層を、水を用いて500mLに希釈し、1M TEABを用いてpH6.5に調整
し、DEAE Sephadexカラム(3×50cm)にロードする。0~1M TE
AB、pH7.5の直線勾配(3L)を使用して生成物を溶出する。純粋なpp
7mG(
トリエチルアンモニウム塩)を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥する
と、微細な白色粉末が得られる(収率:80%)。同様の手順は、Bioorgan.M
ed.Chem.Letters第17巻:5295~5299頁(2007年)に開示
されている。