(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110022
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】複合顔料
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220721BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20220721BHJP
C09C 1/04 20060101ALI20220721BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20220721BHJP
C09C 1/00 20060101ALI20220721BHJP
C01G 9/02 20060101ALI20220721BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/62
C09C1/04
C09C3/06
C09C1/00
C01G9/02 A
C01B33/18 C
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075955
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2018228795の分割
【原出願日】2014-09-12
(31)【優先権主張番号】1316316.7
(32)【優先日】2013-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516074562
【氏名又は名称】シャヨナノ・シンガポール・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ShayoNano Singapore Pte Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】マヘシュ・ダヒャバイ・パテル
(72)【発明者】
【氏名】バラダランベドゥ・スリニバサン・ニティアナンダム
【テーマコード(参考)】
4G047
4G072
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4G047AA02
4G047AB02
4G047AB04
4G047AB05
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4G072UU30
4J037AA09
4J037AA11
4J037AA25
4J037CA09
4J037CA11
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4J037CA24
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4J037EE46
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4J038CG141
4J038HA186
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4J038HA446
4J038KA08
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4J038KA20
4J038KA21
4J038MA08
4J038NA26
4J038PB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】塗料の安定性が悪く、粘度が漸進的に増加したり、屈折率が十分でないという欠点を軽減した、二酸化チタン(TiO2)の代替顔料を提供する。
【解決手段】複合顔料を含む塗料調製物であって、複合顔料は金属酸化物/シリカ、金属酸化物/シリケート、金属酸化物/アルミナ、金属酸化物/金属酸化物および金属酸化物/ジルコニアよりなる群から選択され、ここで、前記複合顔料のサイズおよび量は、前記塗料調製物の不透明度を増大させるように選択される塗料調製物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の成分として金属酸化物粒子、並びに、シリカ、シリケートおよび金属酸化物よりなる群から選択される第二の成分を含む複合顔料を含む塗料調製物であって、前記第一の成分における金属酸化物の粒子サイズが5nm~100nmの範囲であり、前記複合顔料の重量%量が、前記調製物の合計重量に対して1重量%~5重量%の範囲であり、
前記第一の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され、かつ、存在する場合、前記第二の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され、
第一の成分としての前記金属酸化物が前記第二の成分によって少なくとも部分的に被覆されている、塗料調製物。
【請求項2】
塗料調製物を調製する方法であって、第一の成分として金属酸化物粒子、並びに、シリカ、シリケートおよび金属酸化物よりなる群から選択される第二の成分を含む、有効量の複合顔料を塗料調製物に含有させる工程を含み、前記第一の成分における金属酸化物の粒子サイズが5nm~100nmの範囲であり、前記複合顔料の重量%量が、前記調製物の合計重量に対して1重量%~5重量%の範囲であり、
前記第一の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され、かつ、存在する場合、前記第二の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され、
第一の成分としての前記金属酸化物が前記第二の成分によって少なくとも部分的に被覆されている、方法。
【請求項3】
第一の成分として金属酸化物粒子、並びに、シリカ、シリケートおよび金属酸化物よりなる群から選択される第二の成分を含み、前記複合顔料が均質な形態または非均質な形態のいずれかであり、
前記第一の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され、かつ、存在する場合、前記第二の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され、
第一の成分における金属酸化物の粒子サイズが5nm~100nmの範囲であり、
第一の成分としての前記金属酸化物が前記第二の成分によって少なくとも部分的に被覆されている、複合顔料。
【請求項4】
前記複合顔料が中空コア-シェル構造である、請求項3に記載の複合顔料。
【請求項5】
前記中空コア-シェル構造が、第一および第二の成分の交互層のシェルからなる、請求項4に記載の複合顔料。
【請求項6】
複合顔料がコアーシェル構造を有する、請求項1に記載の塗料調製物。
【請求項7】
前記コアーシェル構造が中空コアである、請求項6に記載の塗料調製物。
【請求項8】
複合顔料がコアーシェル構造を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記コアーシェル構造が中空コアである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項3~5のいずれかに記載の複合顔料の製造方法であって、
第一の成分として金属酸化物を選択する工程;
シリカ、シリケート、金属酸化物およびこれらのいずれかの前駆体よりなる群から第二の成分を選択する工程;
塩基が水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムから選択される、塩基溶液を選択する工程;
第一の成分、第二の成分および塩基溶液を混合して反応混合物を形成し、金属酸化物/シリカ、金属酸化物/シリケート、および、金属酸化物/金属酸化物よりなる群から選択される複合顔料を形成する工程を含み、
前記第一の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され、かつ、存在する場合、前記第二の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択される、製造方法。
【請求項11】
前記溶液に界面活性剤または分散剤を加えて、第一の成分の粒子サイズをナノ範囲まで減少させる工程をさらに含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
反応混合物のpHを7~10の範囲に調整する工程をさらに含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
反応混合物から複合顔料を濾過または遠心する工程;
複合顔料を洗浄する工程;および
複合顔料を乾燥させる工程
をさらに含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項3~5のいずれかに記載の複合顔料の製造方法であって、
(a)金属塩および塩基溶液を一緒に混合して金属酸化物を得る工程;および
(b)工程(a)の金属酸化物に第二の成分を添加し、金属酸化物/シリカ、金属酸化物/シリケート、および、金属酸化物/金属酸化物よりなる群から選択される複合顔料を形成する工程を含み、
前記塩基が水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムから選択され、
前記第二の成分が、シリカ、シリケート、金属酸化物およびこれらのいずれかの前駆体よりなる群から選択され、
前記第一の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され、かつ、存在する場合、前記第二の成分における金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択される、製造方法。
【請求項15】
工程(b)の前に、工程(a)において得られる金属酸化物にアミン界面活性剤を添加して、第一の成分上に電荷を生じる工程をさらに含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記溶液に界面活性剤または分散剤を加えて、第一の成分の粒子サイズをナノ範囲まで減少させる工程をさらに含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
反応混合物から複合顔料を濾過または遠心する工程;
複合顔料を洗浄する工程;および
複合顔料を乾燥させる工程
をさらに含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
第二の成分がシリカ、シリケート、ジルコニアおよびアルミナよりなる群から選択され、さらに、第一の成分として金属酸化物がシリカ、シリケート、ジルコニアまたはアルミナ相に分散または包埋しており、前記シリカ相は連続アモルファス相である、請求項3に記載の複合顔料。
【請求項19】
85%を超える不透明度を有する、請求項1に記載の塗料調製物。
【請求項20】
塗料調製物において複合顔料が、30%までの二酸化チタン粒子を代替するための代替物として作用する、請求項1に記載の塗料調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、複合顔料に関する。該複合顔料は、塗料調製物の不透明度を増大させるために、塗料調製物で用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ナノ材料を種々の産業上の用途に適用することは、産業的および学術的の両方に実質的な興味を引き寄せてきた。この機運に対する主たる動機付けとなる力は、最終製品の特性を実質的に改良する、それらの原子に近い寸法を備えた、ナノ材料の能力である。
【0003】
例えば、ナノ材料は、コーティングへの適用に用いられてきた。ナノ二酸化チタンおよび二酸化ケイ素のような金属酸化物は、高分子コーティングを形成して、光触媒作用および優れた摩耗耐性のような特性を提供するために広く用いられてきた。
【0004】
二酸化チタン(TiO2)は、主として、可視光を散乱させるその優れた能力のため、コーティング産業において普及した追随を許さない顔料である。かくして、TiO2は非常に高い屈折率を有し、通常、塗料の不透明度を高めるために用いられてきた。しかしながら、近年におけるTiO2の価格は非常に大きく変動し、実質的に増大している。これは、TiO2系塗料が経済的に競争力を持つのを妨げる。さらに、外観構造的用途での慣用的な塗料は、しばしば、太陽放射への暴露のため「黄化」する。熱帯地方における高湿度および頻繁な降雨の結果はまた、壁での細菌および藻類の成長も生じる。
【0005】
塗料の不透明度または隠蔽力は、粒子サイズ、顔料の結晶相、顔料およびポリマーの屈折率、および個々の顔料粒子の分散または密集などの多数の因子に依存する。全てのこれらの因子は、個々の顔料粒子による光の後方散乱に影響する。TiO2の顔料密集は、顔料の設計における最も重要な検討事項である。なぜなら、たとえ、塗料中のTiO2含有量をある特定の点を超えて増加させることによってTiO2が塗料に不透明性を与えても、顔料粒子は相互に近接するようになり、それにより、光を効果的に散乱させるそのような顔料の能力に干渉するからである。
【0006】
顔料密集の問題を克服するためには、より小さな寸法を有する体質顔料をスペーサー単位として用いて、TiO2顔料を単離し、塗料の隠蔽力を増加させることである。
【0007】
塗料の不透明度を改良するためにTiO2顔料と共にスペーサー材料を用いる概念は、以前から知られている。例えば、異なる材料の間の屈折率の差を用いて散乱を増加させる公知の製品がある。他の公知の製品は、TiO2顔料を物理的にコーティングして、分離を高める。そのような適用のために粘土を用いることもできる。というのは、粘土は高い表面積を有するからである。しかしながら、塗料を比較的高いコストに導く大量のスペーサー材料を必要とするため、そのような適用を商業的に実施するのは困難であった。さらに、スペーサー材料としての粘土はまた、最終塗料被膜の光沢を減少させ、塗料のレオロジー特性を改変する傾向もある。
【0008】
あるいは、2.01の屈折率を有する市販のマイクロサイズの酸化亜鉛粒子を顔料として用いることができる。しかしながら、市販のマイクロサイズの酸化亜鉛はより大きな平均粒子寸法を有し、かくして、より低い表面積となる。その結果、市販のマイクロサイズの酸化亜鉛は、TiO2顔料によってもたらされる不透明度に影響する力をほとんど有しないか、またはごくわずかに有する。また、ナノサイズの酸化亜鉛粒子は塗料調製物の不透明度を増大させることができる一方で、そのような塗料調製物を2~3ヶ月などの長期間貯蔵した場合に、(ゲル化点までの塗料調製物の粘度の増加によって証明されるように)不安定であることが示されている。また、ZnOを用いる水系塗料の調製物では、種々のパラメータおよび材料を注意深く考慮する必要がある。ZnOとTiO2との相互作用は、水系塗料において通常は主流であるアルカリ性pH範囲では非常に強い。この結果、常に塗料の安定性が悪くなり、粘度が漸進的に増加し、また室温における不可逆的なゲル化となり得る。このような塗料は、60℃において14日間行われた促進貯蔵試験では不合格となることが多い。
【0009】
さらに、鉛白、硫化亜鉛、リトポンおよび酸化アンチモンなどの他の顔料もまた、塗料における代替顔料として用いられている。しかしながら、TiO2顔料は、そのより高い屈折率のため、常に最後に選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上記した1以上の欠点を克服するか、または少なくとも軽減する塗料調製物を提供する必要がある。上記した1以上の欠点を克服するか、または少なくとも軽減する安定な塗料調製物を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の態様によると、複合顔料を含む塗料調製物であって、前記複合顔料は金属酸化物/シリカ、金属酸化物/シリケート、金属酸化物/アルミナ、金属酸化物/金属酸化物および金属酸化物/ジルコニアよりなる群から選択され、ここで、前記複合顔料のサイズおよび量は、前記塗料調製物の不透明度を増加させるように選択される塗料調製物が提供される。
【0012】
複合顔料は不透明特性を有し得るため、塗料または塗料調製物の不透明度を維持するか、または高めるために用いられ得る。複合顔料は、複合顔料の不透明特性のため、塗料調製物で必要とされる二酸化チタンの量を低下させ得る。従って、複合顔料は、二酸化チタンの代替物となり得る。より高価な二酸化チタンを複合顔料で置き換えるため、塗料または塗料調製物を生産するコストを有効に低下させ得る。
【0013】
複合顔料は塗料調製物の不透明度を高めるので、複合顔料は塗料調製物の安定性に影響しないであろう。故に、複合顔料は塗料調製物の安定性を少なくとも維持するか、または塗料調製物の安定性を増大させ得る。従って、複合顔料は、塗料調製物の安定性に影響せずに、または塗料調製物の安定性に対して何ら有害な効果を有することなく、塗料調製物の不透明度を高めることができる。これは、塗料調製物の安定性が経時的に減少する先行技術の不透明度促進剤とは対照的である。
【0014】
複合顔料は、ある期間貯蔵される場合、塗料または塗料調製物の安定性を維持するか、または高め得る。複合顔料は、塗料または塗料調製物を粘度変化に対して抵抗性があるとすることができる。複合顔料は、ある期間の貯蔵の間に、塗料または塗料調製物のゲル化または凝集を妨げるか、または少なくとも低減させ得る。
【0015】
第二の態様において、塗料調製物を調製する方法であって、塗料調製物の不透明度を増大させるために、有効量の、金属酸化物/シリカ、金属酸化物/シリケート、金属酸化物/アルミナ、金属酸化物/金属酸化物および金属酸化物/ジルコニアよりなる群から選択される複合顔料を前記調製物に含有させる工程を含む方法が提供される。
【0016】
第三の態様において、複合顔料であって、第一の成分としての金属酸化物およびシリカ、シリケート、アルミナ、金属酸化物およびジルコニアよりなる群から選択される第二の成分を含む複合顔料が提供される。
【0017】
定義
本明細書中で用いる以下の単語および用語は、以下に示された意味を有するものとする。
【0018】
用語「ナノサイズの」は、約1000nm未満、約300nm未満、約200nm~約300nmの間、約5nm~約200nmの間、または約100nm未満の粒子の平均粒子サイズに関するように広く解釈される。粒子サイズとは、粒子が実質的に球状である場合の粒子の直径を指し得る。粒子は非球状であってよく、粒子サイズの範囲とは、球状粒子に対する粒子の同等な直径を指し得る。
【0019】
用語「不透明度」、およびその文法上の変形は、光に対するコーティングの不透過性を示すように用いられる。
【0020】
用語「安定な」とは、塗料または塗料調製物に言及する場合には、撹拌されて長期間貯蔵された場合でさえ均質な液体を形成する塗料または塗料調製物の能力をいう。塗料または塗料調製物の粘度は、安定な塗料または塗料調製物が、塗料または塗料調製物の貯蔵の間に粘度が実質的に一定のままであるか、または実質的に増加しないものと考えられるような、塗料または塗料調製物の安定性の尺度となり得る。促進貯蔵実験の間に、安定な塗料は、約20KU単位未満の粘度増加を有するものである。疑惑の回避のためには、ある期間貯蔵された場合にゲル化または凝集をもたらすいずれの塗料または塗料調製物も「不安定」と考える。
【0021】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてよい。必要な場合、単語「実質的に」は、本発明の定義から省かれてよい。
【0022】
他に特記しない限り、用語「含んでいる(comprising)」および「含む(comprise)」、およびその文法上の変形は、記載された要素を含むが、追加の記載されていない要素を含むことを許容するように、「開放的」または「包括的な」言葉を表すことが意図される。
【0023】
本明細書中で用いる用語「約」は、調製物の成分の濃度との関係では、典型的には、示された値の+/-5%、より典型的には、示された値の+/-4%、より典型的には、示された値の+/-3%、より典型的には、示された値の+/-2%、なおより典型的には、示された値の+/-1%、なおより典型的には、示された値の+/-0.5%を意味する。
【0024】
本開示を通じて、ある特定の実施形態は範囲フォーマットで開示され得る。範囲フォーマットでの記載は、単に便宜および簡明性のためであると解釈されるべきであり、開示された範囲の視野に対する柔軟性がない限定と解釈されるべきではない。したがって、ある範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内にある個々の数値を有すると考えなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、ならびにその範囲内にある個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、および6を有すると考えるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0025】
ある特定の実施形態は、本明細書中においては、広くかつ総称的に記載し得る。一般的開示に該当するより狭い種および亜属群のそれぞれもまた、本開示の部分を形成する。これには、削除された材料が特にその中に存在するかどうかにかかわらず、属から任意の主題を削除する条件又は否定的限定を有する実施形態の一般的な記載が含まれる。
【0026】
添付の図面は、開示された実施形態を説明し、開示された実施形態の原理を説明する役割をする。しかしながら、図面は説明のみの目的のために設計されるものであり、本発明の限定の定義として設計されたのではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施例2に従って形成されたナノ酸化亜鉛複合体上にコーティングされたシリカのX線回折(XRD)パターンを示す。
【
図2】
図2は、実施例2に従って形成されたナノ酸化亜鉛複合体上にコーティングされたシリカの透過型電子顕微鏡写真(TEM)を示す。
図2(a)は低倍率のものであり、
図2(b)はより高い倍率のものであって、
図2(c)は高い解像度のものである。これらの図面の倍率は、ナノメートルのサイズに対応する「線縮尺」によって間接的に示される。
【
図3】
図3は、実施例4に従って形成されたナノ酸化亜鉛複合体上にコーティングされたアルミナのXRDパターンを示す。
【
図4】
図4は、実施例4に従って形成されたナノ酸化亜鉛複合体上にコーティングされたアルミナのTEMを示す。
図4(a)は低倍率のものであり、
図4(b)はより高い倍率のものであって、
図4(c)は高い解像度のものである。これらの図面の倍率は、ナノメートルのサイズに対応する「線縮尺」によって間接的に示される。
【
図5】
図5は、比較例1で得られたナノ酸化亜鉛のX線回折パターンである。
【
図6】
図6は、中空シリカ系複合粒子を示す走査型電子顕微鏡観察像である。
【
図7】
図7は、中空シリカ系複合粒子を示す走査型電子顕微鏡観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
塗料調製物の代表的な非限定的実施形態を開示する。塗料調製物は複合顔料を含み、前記複合顔料は、金属酸化物/シリカ、金属酸化物/シリケート、金属酸化物/アルミナ、金属酸化物/金属酸化物および金属酸化物/ジルコニアよりなる群から選択され、ここで、前記複合顔料のサイズおよび量は、前記塗料調製物の不透明度を増大させるように選択される。
【0029】
また、第一の成分としての金属酸化物、およびシリカ、シリケート、アルミナ、金属酸化物およびジルコニアよりなる群から選択される第二の成分を含む複合顔料も提供される。前記複合顔料における金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化バリウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択され得る。1つの実施形態において、金属酸化物は酸化亜鉛である。
【0030】
塗料調製物中の複合顔料の重量%は、塗料調製物の合計重量に対して約1重量%~約5重量%の範囲であり得る。組成物中の複合顔料の重量%は、約1重量%~約4重量%、約1重量%~約3重量%、約1重量%~約2重量%、約2重量%~約5重量%、約2重量%~約4重量%および約2重量%~約3重量%よりなる群から選択される範囲であり得る。1つの実施形態において、複合顔料の重量%は約2重量%であり得る。
【0031】
複合顔料中の金属酸化物の粒子サイズは、ナノ範囲であり得る。複合体中の金属酸化物の粒子サイズは、約5nm~約100nm、約5nm~約80nm、約5nm~約60nm、約5nm~約40nm、約5nm~約20nm、約20nm~約100nm、約40nm~約100nm、約60nm~約100nmおよび約80nm~約100nmよりなる群から選択される範囲であり得る。1つの実施形態において、複合顔料中の金属酸化物の粒子サイズは約10nmであり得る。
【0032】
複合顔料の表面積は、約20m2/g~約100m2/g、約20m2/g~約80m2/g、約20m2/g~約60m2/g、約20m2/g~約40m2/g、約40m2/g~約100m2/g、約60m2/g~約100m2/gまたは約80m2/g~約100m2/gの範囲から選択され得る。
【0033】
複合顔料は、2工程方法にて、または1工程方法にてのいずれかで製造することができる。2工程方法においては、金属酸化物粒子がまず形成され、続いて、金属酸化物上にシリカまたはアルミナでの沈殿またはコーティングがなされる。金属酸化物が酸化亜鉛である場合、酸化亜鉛は、亜鉛塩を基剤中に混合し、形成された酸化亜鉛の沈殿を収集することによって製造することができる。界面活性剤または分散剤を加えて、形成された酸化亜鉛粒子がナノ範囲となるように、酸化亜鉛粒子の粒子サイズを減少させてよい。用いる亜鉛塩は、(硝酸亜鉛六水和物などの)硝酸亜鉛塩、酢酸亜鉛および塩化亜鉛よりなる群から選択され得る。基剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムよりなる群から選択され得る。酸化亜鉛を製造するための方法は上記方法に限定されず、ナノサイズの酸化亜鉛粒子を形成することが知られたいずれの方法も含むことを理解されたい。それに続いて、アミン界面活性剤を加えて、酸化亜鉛粒子上に電荷を生じさせてよい。次いで、シリカまたはアルミナ(またはそれらの前駆体)を加えて、酸化亜鉛との複合体を形成する。酸化亜鉛粒子上のシリカまたはアルミナの沈殿またはコーティングを向上させるために、電荷調整剤を加えてよい。電荷調整剤は、その残存する電荷を妨害することによって、シリカを酸化亜鉛粒子上に沈殿させるか、またはコーティングするように機能する塩化アルミニウム溶液であり得る。
【0034】
1工程方法は、金属塩、基剤溶液およびシリカまたはアルミナの前駆体を含む反応混合物を含み得る。形成される金属酸化物が酸化亜鉛である場合、金属塩は、(硝酸亜鉛六水和物などの)硝酸亜鉛塩、酢酸亜鉛および塩化亜鉛よりなる群から選択される亜鉛塩であり得る。界面活性剤または分散剤を加えて、形成された酸化亜鉛粒子がナノ範囲となるように、酸化亜鉛粒子の粒子サイズを減少させてよい。基剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムよりなる群から選択され得る。複合体の形成の間に、反応混合物のpHを適切に調整し得る。反応物のpHは7~10の範囲であり得る。複合体の形成の間に反応のpHを調整することによって、金属酸化物粒子の均一なコーティングを達成することができる。シリカ前駆体はケイ酸ナトリウム溶液とし、他方、アルミナ前駆体は塩化アルミニウム六水和物、アルミン酸ナトリウムまたはコロイド状アルミナとしてよい。
【0035】
一旦複合体が形成されれば、複合体は、濾過または遠心によって反応混合物から分離され得る。複合体を水で洗浄し、乾燥してよい。
【0036】
シリカ、シリケート、ジルコニアまたはアルミナは、金属酸化物粒子を少なくとも部分的に囲むコーティングとして形成してよい。よって、金属酸化物成分は、シリカ、シリケート、ジルコニアまたはアルミナ(すなわち、第二の成分)によって少なくとも部分的に被覆され得る。
【0037】
金属酸化物粒子は、シリカ、シリケート、ジルコニアまたはアルミナ相に分散または包埋してよい。シリカ、シリケート、ジルコニアまたはアルミナ相は連続相としてよい。シリカ相は連続アモルファス相としてよい。
【0038】
複合体は、均質な形態、または非均質形態を有してよい。複合体は、多様な均質形態を有してよい。複合体は、ナノロッドおよび多様な(不均質)形態の混合物であってよい。
【0039】
複合体中の金属酸化物が酸化亜鉛である場合、酸化亜鉛は六方晶構造を有し得る。
【0040】
複合顔料は、コア-シェル構造のものであってよい。コア-シェル構造のコアは中空または空であってよく、他方、コア-シェル構造のシェルは金属酸化物層(または第一の成分層)およびシリカ、シリケート、ジルコニア、金属酸化物またはアルミナ層(または第二の成分層)の交互層から構成される。シリカ、シリケート、ジルコニア、金属酸化物またはアルミナ層(または第二の成分層)は、金属酸化物層(または第一の成分層)を少なくとも部分的に被覆してよい。層の数は特に限定されるものではない。
【0041】
上記実施形態において、異なる層状材料の屈折率の差によって、光の後方散乱が改良される。コア-シェル構造においては、屈折率のより実質的な差は、中空層状の無機複合顔料を形成することによって作り出される。そのような顔料は、乾燥に際して、光の良好な後方散乱に役立つ中空スペースを残し、それがより良好な不透明度をもたらす。
【0042】
複合顔料は、複合顔料を含まない従来の塗料調製物と比較して、塗料調製物の不透明度を実質的に同一または増大に保ちながら、塗料調製物における二酸化チタンの代替物として作用し得る。複合顔料は、塗料調製物の不透明度を維持するか、または増大させながら、塗料調製物の安定性を維持するか、または高め得る。
【0043】
複合顔料は、塗料調製物中の二酸化チタン粒子の30%までを置き換えるための代替物として作用し得る。複合顔料は、塗料調製物中の二酸化チタン粒子の29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%までを置き換え得る。
【0044】
塗料調製物は、85%よりも大きい、86%よりも大きい、87%よりも大きい、88%よりも大きい、89%よりも大きい、90%よりも大きい、91%よりも大きい、92%よりも大きい、93%よりも大きい、94%よりも大きい、95%よりも大きい、96%よりも大きい、97%よりも大きい、98%よりも大きい、および99%よりも大きい、よりなる群から選択される範囲にある不透明度を有し得る。従って、複合顔料による従来の二酸化チタン粒子の置換は、塗料調製物の不透明度に実質的に影響しないであろう。したがって、塗料調製物の不透明度および/または安定性に妥協することなく、塗料コーティングを不透明とするのに典型的に用いられる、二酸化チタンをより少量で用いるのが可能である。
【0045】
塗料調製物は、複合顔料を含まない他の塗料調製物と比較して、実質的に同一の不透明度、または増大した不透明度を有し得る。
【0046】
前記複合顔料中の金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選択し得る。1つの実施形態において、金属酸化物は酸化亜鉛である。
【0047】
複合顔料は、微生物に対して毒性のものであってよく、よって、(抗菌性または抗真菌性などの)抗微生物効果を有してよい。よって、塗料調製物中の複合顔料は、塗料調製物の安定性を維持するか、または高めながら、塗料調製物の不透明度を高めることができるであろう。同時に、複合顔料は、塗料調製物の耐久性および寿命を増大させるように、抗微生物効果を発揮することができるであろう。塗料調製物を表面に適用し、乾燥すると、複合顔料の抗微生物効果はまた、乾燥された塗料まで拡大し得る。
【0048】
酸化亜鉛などの金属酸化物を有する複合顔料はUV吸収剤として機能し、抗微生物特性を塗料調製物に付与し得る。これは、40nm未満などの酸化亜鉛の粒子サイズによるものであり、その結果、これらの特性がもたらされる。よって、塗料調製物の全体としての耐久性は、複合顔料を塗料調製物に含有させることで改良され得る。
【0049】
塗料調製物は、アクリル水系塗料、水系ビニル塗料、ポリウレタン塗料、アルキド塗料、熱硬化性塗料および溶剤系塗料であり得る。
【0050】
また、塗料調製物を調製する方法であって、塗料調製物の不透明度を増大させるために、有効量の、金属酸化物/シリカ、金属酸化物/シリケート、金属酸化物/アルミナ、金属酸化物/金属酸化物および金属酸化物/ジルコニアよりなる群から選択される複合顔料を前記調製物に含有させる工程を含む方法も提供される。
【0051】
塗料調製物中の複合顔料の有効量は、塗料調製物の合計重量に対して1重量%~5重量%の範囲であり得る。
【実施例0052】
本発明の非限定的例を、具体的な実施例および比較例を参照することによってより詳細にさらに記載するが、これは、いかなる場合も本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0053】
実施例1
ナノ-ZnO-シリカ複合体の直接的インサイチュ調製
204グラムの無水塩化亜鉛(Mega Chemicals、Singaporeから入手)を150グラムの水に溶解させ、0.5グラムのIndoemul CO-02をこの溶液に加え、1500RPMで5分間撹拌した。300グラムの40%水酸化ナトリウムを、2.5時間でこの撹拌溶液に加えた。次いで、反応混合物をさらに2時間撹拌した。次いで、氷酢酸を用いて反応混合物のpHを7~7.5に調整し、15.6グラムのケイ酸ナトリウム溶液(SD Fine Chemicals Ltd、India Mumbaiから入手した10%酸化ナトリウムおよび28%二酸化ケイ素)を加えた。pHを10~8.5に調整し、pHが徐々に9.5に到達するまで、反応混合物を1時間撹拌した。pHを再度7.5に調整し、反応混合物をさらに1時間撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、水で洗浄した。濾過した固体をオーブンで80℃、24時間乾燥させた。
【0054】
乾燥した固体を粉末化し、BET表面積分析(21.97m
2/g)、XRD(
図1参照)およびTEM(
図2)を用いて特徴付けした。
【0055】
図1のXRDパターンから、主たるピークは約31.76、34.39、36.24、47.52、56.59、62.81、66.37および67.92(°2θ)にあり、これにより、六方晶構造(空間群-P63mc)を持つZnOの存在が確認された。シェラーの式を用い、23.5nmの結晶サイズを計算した。残りのピークはSiO
2およびZn(OH)
2に対応する。パターンから、SiO
2の形成はアモルファスであったことが明らかとなる。ZnO上へのシリカのコーティング後、これは、ZnOピークを0.02Å左側にシフトさせ、これにより、SiO
2の存在が確認された。
【0056】
図3(a)のTEM画像から、合成された粉末は不均質な形態を有し、これは、ナノロッドおよび多様な形態の混合物であることが分かる。より高い倍率(
図3(b)参照)は、ナノロッドが、連続的なアモルファスSiO
2相に包埋された約10nmのZnOからなるものであることを示した。面内間隔(
図3(c)参照)は3.3Åであり、ZnO(100)面の面内間隔(3.25Å)に近かった。
【0057】
実施例2
ナノ酸化亜鉛-シリカ複合体の合成
約90グラムのナノZnO(実施例1から得られた)を、0.1グラムの第三級アミン界面活性剤-ココビス(ヒドロキシルエチル)アミン(Indoamine Ltd,India Barodaから入手したIndoemul CO-02)を含む105mlの水に懸濁させ、撹拌した。15グラムの市販のコロイド状シリカ(Akzo Nobel、Netherlandsから入手したBindzil)の30%溶液をこの懸濁液に加え、1500rpmで15分間撹拌した。次いで、0.7グラムの10%塩化アルミニウム(Access Chemicals、Singaporeから入手)溶液を反応水分に加え、1時間撹拌した。得られた厚いペーストをオーブン中で乾燥し、特徴付けのために用いた。粉末の表面積は23.43m2/gであった。
【0058】
実施例3
ナノ-ZnO-シリカ複合体を用いる塗料調製物
主たる顔料としての二酸化チタン(TiO2)と共に、実施例1から得られたナノ-ZnO-シリカ複合体を用いて、アクリル水系塗料を形成した。調製物は、「N-ZnO-シリカ複合体調製物」と命名した。この調製物に存在するTiO2の重量は、以下に記載する標準調製物に存在するTiO2の重量と比較して減少した。TiO2顔料単独に基づく比較アクリル水系塗料調製物を製造した。この調製物は「標準調製物」と命名した。
【0059】
「N-ZnO-シリカ複合調製物」においてTiO2を複合体と置き換えると、合計顔料容量の減少があった。顔料容量のこの減少は、シリカおよび/またはタルクの量を増加させることによって埋め合わせられ、顔料容量濃度を以下の表1に示した調製物におけるのと同一に保った。
【0060】
コントラスト比は、ZEHNTNER反射率計(Zehntner Testing Instruments、Switzerland)を用いて測定した。促進貯蔵研究は、塗料を60℃で14日間貯蔵し、任意のケーキ形成、ハード沈降物および塗料流動について塗料の外観を視覚的に評価することによって行った。
【0061】
【0062】
上記表1に示されるように、当該複合体を含む塗料調製物の安定性および不透明度は、複合体を含まない塗料調製物の安定性および不透明度に匹敵する。また、複合体は約27%だけ必要な二酸化チタンの量を低下させることができ、費用削減をもたらす。
【0063】
実施例4
ナノ-ZnO-アルミナ複合体の直接的インシチュ調製
68グラムの無水塩化亜鉛を90mlの水に溶解させ、2.5グラムのアニオン性分散剤Coatex P90(Arkema、USAから入手)をこの溶液に加え、1500RPMで5分間撹拌した。100グラムの40%水酸化ナトリウムを、2.5時間でこの撹拌溶液に加えた。次いで、反応混合物をさらに2時間撹拌した。次いで、氷酢酸を用いて反応混合物のpHを8.5に調整した。約12.2グラムの塩化アルミニウム六水和物を加え、反応物のpHは7となる。約14グラムの40%水酸化ナトリウムを、非常に良好にかき混ぜながら15分間で加えた。反応物のpHは、1.5時間の間、8.0~8.5に維持された。次いで、沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、80℃のオーブンで24時間乾燥させた。
【0064】
乾燥した固体からの粉末の表面積は、78.9m
2/gであった。複合化ナノ-ZnO-アルミナのXRDパターンおよびTEMを、各々、
図3および
図4に示す。
【0065】
図3に示されたナノZnO複合体上にコーティングされたアルミナのXRDパターンから、主たるピークは約31.76、34.39、36.24、47.52、56.59、62.81、66.37および67.92(°2θ)にあり、これにより、六方晶構造(空間群-P63mc)を持つZnOの存在が確認された。シェラーの式を用い、25.1nmの結晶サイズを計算した。ナノZnOと共に、Al
2O
3およびAlZn
7O
10の他の相を形成した。パターンから、Al
2O
3の結晶相はナノZnO上にコーティングされたことが明白であり、これにより、複合体コーティングの存在が確認された。
【0066】
TEM画像(
図4(a)、
図4(b))は、合成された粉末が多相であったことを示した。面内間隔(
図4(c)参照)は2.5Åであり、ZnO(002)面の面内間隔(2.6Å)に近かった。
【0067】
実施例5
中空シリカ系複合顔料
30グラムのナノ炭酸カルシウム(Nano Materials Technology Pte Ltd、Singaporeから入手)を、300mlの迅速に撹拌する水に懸濁させた。約34.8グラムのオルトケイ酸テトラエチル(Sinopharm Chemical Reagent Company Limited、Chinaから入手)を加え、アンモニアでpHを8.5に調整した。次いで、反応混合物を1時間撹拌し、氷酢酸をゆっくりと加えることによって、pHを6に調整した。全ての二酸化炭素の放出が止んだ後、中空シリカの試料を濾過および乾燥によって単離した。
【0068】
上記反応物を、中空シリカ-酸化亜鉛-シリカ複合顔料に直接変換することができる。約408グラムの無水塩化亜鉛を反応混合物に溶解させ、続いて、Indoemul co-02(0.25グラム)に溶解させた。450グラムの54%水酸化ナトリウム溶液を2.5時間で加えた。反応混合物をさらに2時間撹拌し、pHを8~8.5に調整した。約33グラムのコロイド状シリカをこの反応混合物に加え、1時間撹拌した。反応の最後において、中空複合顔料を濾過し、水で乾燥し、80℃のオーブンで乾燥させた。
【0069】
【0070】
比較例1
メタノール/水中でのナノ酸化亜鉛の合成
32グラムの硝酸亜鉛六水和物(Accesschem Pte Ltd、Singaporeから入手)を、67.5グラムのメタノール(Accesschem Pte Ltd、Singaporeから入手)および40グラムの水に溶解させた。
【0071】
8.7グラムの水酸化ナトリウム(Sigma Aldrich、Missouri、United States of Americaから入手)を、別途40グラムの水に溶解させ、硝酸亜鉛六水和物混合物にゆっくりと1時間15分にわたって加えた。
【0072】
添加後に、反応物を1.5時間撹拌した。その後、約120mlの水を加え、混合物をさらに1.5時間撹拌した。
【0073】
次いで、反応混合物を濾過し、濾液がpH7を示すまで水で洗浄した。得られた固体残渣物質を80℃のオーブンで乾燥させ、粉砕して、微細な白色粉末を得た。
【0074】
ナノ酸化亜鉛の特徴付け
微細な白色粉末をX線回折(XRD)によって分析し、XRDパターンを
図5に示す。
図5から、XRDパターンによって、純粋な酸化亜鉛(ZnO)が得られたことが確認される。具体的には、
図5中の3つの主たる2シータピーク値は、31.72;34.45および36.21にあり、これは粉末回折標準のための合同委員会(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)(JCPDS)Card No.36-1451 P6
3 mc空間群に記載される標準ZnOピークに対応する。
【0075】
微細な白色粉末を、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法によっても分析した。BET表面積の測定により、得られたZnOが27.8m2/グラムの表面積を有することが分かった。
【0076】
ナノ-ZnOを用いる塗料調製物
主たる顔料としての二酸化チタン(TiO2)と共にナノ酸化亜鉛(n-ZnO)を用いて、アクリル水系塗料を形成した。調製物は「n-ZnO調製物」と命名した。この調製物に存在するTiO2の重量は、以下に記載するる標準調製物に存在するTiO2の重量の70%であった。TiO2顔料単独に基づく比較アクリル水系塗料調製物を製造した。この調製物は「標準調製物」と命名した。
【0077】
「n-ZnO調製物」において必要なTiO2の30%をナノ酸化亜鉛で置き換えると、合計顔料容量の減少があった。顔料容量のこの減少は、シリカおよび/またはタルクの量を増加させることによって埋め合わせられ、顔料容量濃度を以下の表3に示した調製物におけるのと同一に保った。
【0078】
コントラスト比は、ZEHNTNER反射率計(Zehntner Testing Instruments、Switzerland)を用いて測定した。促進貯蔵研究は、塗料を60℃で14日間貯蔵し、任意のケーキ形成、ハード沈降物および塗料流動について塗料の外観を視覚的に評価することによって行った。
【0079】
【0080】
表3から分かるように、ナノ酸化亜鉛を含有させると、塗料調製物の不透明度を増大させるが、塗料調製物をゲル化させ、不安定とした。
開示された組成物は、塗料調製物を生産するのを経済的に実行可能とするのを妨げることなく、または塗料調製物の不透明度に影響することなく、塗料調製物の安定性を有利に高める。
有利には、開示された組成物は、塗料調製物から必要とされる特性を取り除くことなく、塗料調製物に必要な高価な原料の量をより少なくすることができる。いくつかの実施形態において、本開示の複合顔料は、塗料調製物における比較的より高価な二酸化チタン顔料の部分的な代替物として用いることができる。さらに、開示された組成物は、天然要素に対して改良された耐久性を有する。
いくつかの実施形態において、本開示の開示された複合顔料は、単独であるか、または粘土などの他のナノ材料と組み合わせるかにより、ポリマー複合体において摩耗および耐摩耗性を改良するのに用いることもできる。
いくつかの実施形態において、本開示の開示された複合顔料は、有機溶媒およびポリマーに分散させて、天然要素に対する有機ポリマー複合体の耐久性を改良することができる。
本発明の種々の他の改変および改造は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、これまでの開示を読んだ後に当業者に明らかであるのは明らかであり、全てのそのような改変および改造は添付の請求の範囲内にあることが意図される。