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特開2022-110170海洋沈設構造体及び海洋沈設構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110170
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】海洋沈設構造体及び海洋沈設構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/77 20170101AFI20220722BHJP
【FI】
A01K61/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005405
(22)【出願日】2021-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】312007825
【氏名又は名称】スミリーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(72)【発明者】
【氏名】阿部 豊太郎
(72)【発明者】
【氏名】酒詰 明純
【テーマコード(参考)】
2B003
【Fターム(参考)】
2B003AA01
2B003BB02
2B003DD01
2B003DD02
2B003DD06
(57)【要約】
【課題】潮流や波浪等の影響による転倒や移動を抑制することができるとともに、魚貝類の繁殖及び生育と海藻類の繁茂との双方の促進に有効な海洋沈設構造体及びこのような海洋沈設構造体を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 魚貝類の繁殖及び生育を促進する機能を有する本体部2を製作し、該本体部を底型枠26上に載置する。載置された本体部2を囲むように円筒状に金網22を立設し、本体部の下部を埋め込むように、金網内に未硬化のコンクリートを打設してコンクリートからなる基版3を形成する。打設したコンクリートは、金網22の網目から未硬化のコンクリートに含まれる粗骨材23の一部が突き出した状態、又は未硬化のコンクリートのモルタル成分24が金網の網目から流れ出した状態で硬化させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底に沈設されて魚礁又は藻場礁を形成するための海洋沈設構造体の製造方法であって、
魚貝類の繁殖及び生育を促進する機能を有する本体部を製作し、
該本体部を底型枠上に載置し、
載置された前記本体部を囲むように円筒状に金網を立設し、
前記本体部の下部を埋め込むように、前記金網内に未硬化のコンクリートを打設してコンクリートからなる基版を形成するものとし、
打設した前記コンクリートは、金網の網目から未硬化のコンクリートに含まれる骨材粒の一部が突き出した状態、又は未硬化のコンクリートのモルタル成分が前記金網の網目から流れ出した状態で硬化させることを特徴とする海洋沈設構造体の製造方法。
【請求項2】
円筒状の前記金網は全周にわたって周方向の引張力に抵抗するものであるとともに、円筒形に自立するものを用いることを特徴とする請求項1に記載の海洋沈設構造体の製造方法。
【請求項3】
魚貝類の繁殖及び生育を促進する機能を有する本体部と、コンクリートからなる基版とを有し、海底に沈設されて魚礁又は藻場礁を形成する海洋沈設構造体であって、
前記基版は、予め製作された前記本体部の下部を埋め込んで該本体部と一体となるように形成され、円筒状の外周面を有するものであり、
前記基版には、前記外周面に沿って周方向に連続する金網が配置され、該基版を形成するコンクリートに含まれる骨材粒の一部が前記金網の網目から外側に突き出した状態、又は前記コンクリートに含まれるモルタル成分の一部が前記金網の網目から流れ出した状態で硬化して該基版の外周面に凹凸が形成されていることを特徴とする海洋沈設構造体。
【請求項4】
前記基版の外周面に沿って配置された前記金網の内側には、前記基版を形成するコンクリートのモルタル成分が硬化前に前記金網の網目から流れ出すことにともなう空隙が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の海洋沈設構造体。
【請求項5】
前記本体部は、コンクリートからなり、複数の脚部上に版状部が支持されたものを、一つ又は複数を積み重ねて構成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の海洋沈設構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底に設置され、魚貝類の繁殖及び生育並びに海藻類の繁茂を促進するための海洋沈設構造体、及び海洋沈設構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沿岸部において魚貝類の生息場所を提供し、繁殖及び生育を促進するために鋼やコンクリート等からなる構造体を海底に沈設することが行われている。これにより、人工漁礁を形成するものである。沈設する構造体は、枠体、壁体、版状体、柱体等を用い、又はこれらを組み合わせて魚類が生息しやすい領域を形成したり、魚貝類の産卵に適した場所を提供したりするものであり、例えば特許文献1又は特許文献2に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-209262号公報
【特許文献2】特開2004-81058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの構造体は、海底に沈設される場所によっては、潮流や波浪等の影響を受ける。これにより、構造体が転倒したり、流されて移動したりすることがある。
また、これらの構造体は、一般に海底に沈設されて良好な集魚効果を示すとともに、魚貝類の繁殖及び生育に有効に機能するものであるが、海藻類の生育に対しては充分に効果が得られないものがある。構造体の沈設位置の周辺で海藻類の生育が不良であると、魚貝類の繁殖及び生育に寄与する効果が充分に得られない。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、潮流や波浪等の影響による転倒や移動を抑制することができるとともに、魚貝類の繁殖及び生育と海藻類の繁茂の促進との双方に有効な海洋沈設構造体及びこのような海洋沈設構造体を効率よく製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 海底に沈設されて魚礁又は藻場礁を形成するための海洋沈設構造体の製造方法であって、 魚貝類の繁殖及び生育を促進する機能を有する本体部を製作し、 該本体部を底型枠上に載置し、 載置された前記本体部を囲むように円筒状に金網を立設し、 前記本体部の下部を埋め込むように、前記金網内に未硬化のコンクリートを打設してコンクリートからなる基版を形成するものとし、 打設した前記コンクリートは、金網の網目から未硬化のコンクリートに含まれる骨材粒の一部が突き出した状態、又は未硬化のコンクリートのモルタル成分が前記金網の網目から流れ出した状態で硬化させる海洋沈設構造体の製造方法を提供する。
【0007】
この方法で製造される海洋沈設構造体の基版は、円筒状の金網内にコンクリートを打設することによって円形の版状に形成され、その周面には金網の網目から骨材粒の一部が突き出し、又は未硬化のコンクリートのモルタル成分が前記金網の網目から流れ出して、凹凸が形成される。これにより、海藻類が着生し易い状態となる。このような基版を、魚貝類の繁殖及び生育を促進する機能を有する本体部と簡単な工程で結合して、魚貝類の繁殖及び生育を促進する機能と海藻類の繁茂を促進する機能とを併せて有する海洋沈設構造体を製造することができる。
なお、上記本体部は、コンクリートや鋼等を用いて構築されるものを採用することができ、複数の脚部や柱部によって版状体、枠体等が支持されたもの、枠体、版状体、壁体等を組み合わせたもの等を用いることができる。そして、部材間に魚類等の産卵や生息が可能な水域が形成されるものが望ましい。
【0008】
請求項2に係る発明は、 請求項1に記載の海洋沈設構造体の製造方法において、 円筒状の前記金網は全周にわたって周方向の引張力に抵抗するものであるとともに、円筒形に自立するものを用いるものとする。
【0009】
この海洋沈設構造体では、円筒状となった金網は軽量で自立するので、予め製作された本体部の周囲に容易に設置することができる。そして、打設した未硬化のコンクリートの内圧は金網に作用する周方向の引張力によって支持され、円筒形状が維持される。したがって、金網は簡単な構造で型枠として機能し、製作のための作業量及び費用を低減することが可能となる。
【0010】
請求項3に係る発明は、 魚貝類の繁殖及び生育を促進する機能を有する本体部と、コンクリートからなる基版とを有し、海底に沈設されて魚礁又は藻場礁を形成する海洋沈設構造体であって、 前記基版は、予め製作された前記本体部の下部を埋め込んで該本体部と一体となるように形成され、円筒状の外周面を有するものであり、 前記基版には、前記外周面に沿って周方向に連続する金網が配置され、該基版を形成するコンクリートに含まれる骨材粒の一部が前記金網の網目から外側に突き出した状態、又は前記コンクリートに含まれるモルタル成分の一部が前記金網の網目から流れ出した状態で硬化して該基版の外周面に凹凸が形成されている海洋沈設構造体を提供するものである。
【0011】
この海洋沈設構造体の基版は、金網の網目から突き出した骨材粒の一部、又は金網の網目から流れ出して硬化したモルタル成分により、周面に凹凸が形成されている。これにより、基版の周面は海藻類が着生し易い状態となっている。したがって、この海洋沈設構造体では、本体部が魚貝類の繁殖及び生育を促進する機能を有するとともに、本体部の周囲で海藻類の生育を促進する機能を併せて有するものとなる。
また、この海洋沈設構造体では、コンクリートの基版によって重量が大きくなり、重心位置が低くなるとともに、海底への設置したときの底面積が増大しており、安定した構造となる。これにより潮流や波浪による転倒や移動を抑制することが可能となる。
【0012】
なお、上記本体部は、コンクリートや鋼等を用いて構築されたものを採用することができる。例えば、複数の脚部や柱部によって版状体、枠体等が支持されたもの、枠体、版状体、壁体等を組み合わせたもの等を用いることができ、部材間に魚貝類等の産卵や生息が可能な水域が形成されるものが望ましい。
また、基版は外周面が正確な円筒状となっているのが望ましいが、平面形状は正確な円形でなくても、多少のゆがみが生じていたり、長円状となっていたりしてもよい。つまり、金網が周方向の引張力によって未硬化のコンクリートを支持し、型枠として機能する程度であれば正確な円形から逸脱するものであってもよい。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の海洋沈設構造体において、 前記基版の外周面に沿って配置された前記金網の内側には、前記基版を形成するコンクリートのモルタル成分が硬化前に前記金網の網目から流れ出すことにともなう空隙が形成されているものとする。
【0014】
この海洋沈設構造体では、打設した未硬化のコンクリートに含まれるモルタル成分が金網の網目から流れ出し、外周面に凹凸を形成するのにともない、金網の内側の外周面近くでは、粗骨材間に空隙が生じている。このように空隙が生じた状態は、いわゆるポーラスコンクリートに近い状態となっており、海藻類の着生及び繁茂に好条件となる。
なお、上記空隙は、金網の網目の大きさ、コンクリートの配合におけるモルタル量、水量等による流動性、骨材の粒径等の設定によって形成される領域、大きさ等を調整できるものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載の海洋沈設構造体において、 前記本体部は、コンクリートからなり、複数の脚部上に版状部が支持されたものを、一つ又は複数を積み重ねて構成されているものとする。
【0016】
この海洋沈設構造体では、本体部を構成する部材が版状部とこれを支持する複数の脚部とで主要部が構成された単純な形状となっており、このような部材は効率よく多数を製作することができる。そして、一つ又は複数を重ね合わせて本体部とすることができる。上記本体部を構成する部材の重ね合わせる数は、沈設位置の水深、潮流等の状況、魚貝類の生息状況等に応じて選択することができる。つまり、版状部と複数の脚部とを有する部材をひとつ又は複数の重ねて用いることによって、設置場所の状況に応じた本体部を効率よく製作することができる。このような本体部では、基版と版状部との間又は版状部と版状部との間が、魚類の隠れ場所になるとともに、イカ類等の産卵場所を提供するものとなる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の海洋沈設構造体では、潮流や波浪等の影響による転倒や移動を抑制することができるとともに、魚貝類の繁殖及び生育と、海藻類の繁茂とを合わせて促進することができる。また、本発明の海洋沈設構造体の製造方法では、上記の効果を有する海洋沈設構造体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態である海洋沈設構造体の概略斜視図である。
図2図1に示す海洋沈設構造体の正面図である。
図3図1に示す海洋沈設構造体の側面図である。
図4図1に示す海洋沈設構造体の平面図である。
図5図1に示す海洋沈設構造体が有する基版の外周部の拡大断面図である。
図6図1に示す海洋沈設構造体の製造方法を示す概略斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態である海洋沈設構造体を示す概略斜視図である。
図8】本発明の他の実施形態である海洋沈設構造体を示す概略斜視図である。
図9図1に示す海洋沈設構造体が有する基版の外周部に管部材を用いて所定深さの小穴を設ける方法及び小穴が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である海洋沈設構造体を示す概略斜視図であり、図2は正面図、図3は側面図、図4は平面図である。
この海洋沈設構造体1は、海岸近くの陸上で製作され、沿岸部の海底に沈設されるものであり、コンクリートを主材料として形成された本体部2と、この本体部の下部を埋め込んで一体化されたコンクリートの基版3とで主要部が構成されている。
【0020】
上記本体部2は、ほぼ平坦に形成されたコンクリートの版状部11と、この版状部11を支持する複数の脚部12とを備える3つの本体構成部材10を積み重ねて構成されている。上記版状部11の中央には円形の開口13が設けられている。
上記本体構成部材10のそれぞれは、脚部12が設けられた位置の上方の版状部に凹部14が形成されており、他の本体構成部材が有する脚部の下端部が上記凹部14に嵌め合わされ、横方向にずれが生じないように重ね合わせて安定した状態に支持することができるものである。また、版状部11の凹部14内からそれぞれの脚部12を貫通するように小孔が設けられており、この小孔に挿通したボルト15により、重ね合わせた複数の本体構成部材10が一体に結合されている。
【0021】
上記基版3は、平面形状がほぼ円形となるコンクリート版からなるものである。つまり、外周面20が基版3の厚さに相当する高さのほぼ円筒形状となっている。そして、最下段にある本体構成部材10の脚部12の下部が該基版3を構成するコンクリートに埋め込まれて本体部2と基版3とが一体となっている。
基版3内には、補強のための鉄筋(図示しない)が適宜に配置されており、さらに基版3の上面から上方に突き出してループ状となった複数の吊上用鉄筋21が設けられている。この吊上用鉄筋21の両端部は基版3のコンクリートに埋め込まれ、基版3から抜け出さないように強固に保持されている。これにより、吊り材を上記吊上用鉄筋21に接合し、本体部2とともに基版3をクレーン等によって吊り上げ、海底に沈設することができるものとなっている。
【0022】
この基版3には、図5に拡大断面図を示すように、外周面20に沿って連続するように金網22が配置され、コンクリートと一体となっている。この金網22は、基版3の製作時に型枠として用いられたものであり、金網22の網目からはコンクリートに含まれる粗骨材23の一部が突き出したり、コンクリートのモルタル成分24が網目から流れ出した状態で硬化している。そして、網目から突き出した粗骨材23の一部や流れ出したモルタル成分24によって基版3の外周面には凹凸が形成されている。また、モルタル成分24が流れ出すことにより、外周面付近の粗骨材間に空隙25が生じている。このような外周面の凹凸及び外周面付近にある粗骨材間の空隙25によって、海藻類が着生しやすくなっている。
【0023】
上記金網22は、円筒状に形成されたものであり、継ぎ目のない円筒状に形成されたものであってもよいし、帯状の金網から形成するときには円筒状に接合する接続部は、コンクリートを打設したときの内圧によって生じる周方向の引張力に耐えられる強度を有するものとする。
上記金網22の網目の寸法は、円筒状となった金網22の内側に打設されるコンクリートの粗骨材23の寸法との関係で決定することができるものであり、例えば20mm程度とし、粗骨材23の寸法は、粗骨材の大部分、例えば60%から90%程度が通過しないように選択することができる。
【0024】
このような海洋沈設構造体1は、基版3が設けられることによって全体の重量が大きくなるとともに重心が低い位置となる。そして、海底への接地面積が拡大される。これにより、潮流や波浪によって構造体が転倒したり流動したりするのが抑制される。
一方、このような海洋沈設構造体1を複数沈設して魚礁又は藻場礁を形成することにより、重ね合わされた本体構成部材10の版状部11と版状部11との間、版状部11と基版3との間が魚類の生息に適した環境又は魚類、イカ類、貝類等の産卵場所を提供することになり、本体部2は魚貝類の生育を有効に促進するものとなる。また、基版3の外周面20には凹凸が形成されており、海藻類が着生しやすく、本体部2の周囲に海藻類が繁茂して、魚貝類の繁殖及び生育に良好な環境を作り出すものとなる。
【0025】
次に、上記海洋沈設構造体1の製造方法について説明する。
本体部2を構成する本体構成部材10は、該本体構成部材の形状に対応した型枠を製作し、工場又は製作ヤードで上記型枠内にコンクリートを打設して形成する。コンクリートの硬化後に脱型して形成された本体構成部材10は、複数を積み重ねる。図1から図4までに示す例では3台を積み重ね、脚部12を貫通する小孔にボルト15を挿通し、ねじり合わせたナットで締め付けて複数の本体構成部材10を一体に結合する。結合された本体部2は、図6に示すように底型枠26上に載置し、その周囲に円筒状となった金網22を配置する。また、金網22で囲まれた範囲内には適宜に補強用の鉄筋及び吊上用鉄筋を配置する。そして、金網22内に未硬化のコンクリートを打設し硬化させる。
【0026】
金網内に打設するコンクリートは、金網22の網目から粗骨材23の一部が突き出すが大部分の粗骨材は網目を通過しないものを用いるとともに、金網22付近の限定された範囲のモルタル成分24が金網22の網目から流れだした状態となるように、細骨材及び水量等の配合を調整するのが望ましい。
【0027】
このように製作された海洋沈設構造体1は台船等に載せて設置位置まで搬送し、吊上用鉄筋21に係止したワイヤ等を介してクレーン等によって吊り上げ、海底に沈設する。設置された海洋沈設構造体1は、重量が大きく、重心位置が低い位置にあるとともに、海底での接地面積が大きく、安定した状態となる。
このように海洋沈設構造体1を製造することにより、魚貝類の繁殖及び生育の促進と海藻類の生育の促進との双方に有効な海洋沈設構造体1を簡単に安価で製造することが可能となる。
【0028】
図7は、本発明の他の実施形態である海洋沈設構造体の概略斜視図である。
この海洋沈設構造体4は、本体部5として図1から図4までに示す海洋沈設構造体1と同じ本体構成部材30を用いているが、一つのみの本体構成部材30を用いたものである。また、基版6も図1に示すものと同様の構成を有するものであり、同様の方法によって形成することができる。そして、本体構成部材30の下部は基版6を構成するコンクリートに埋め込まれ、基版6と一体となっており、海底に沈設して魚貝類の繁殖及び生育並びに海藻類の繁茂を促進することが可能となる。また、基版6の厚さ大きく設定し、海藻類の繁茂及び生育の効果を重視した構造体とすることもできる。
【0029】
図8に示す実施の形態は、本体部が図1又は図7に示す構造体とは異なる形態となったものである。
この海洋沈設構造体7が有する本体部8は、中空で外形がほぼ立方体となったコンクリートの枠体41と、枠体41の上部に支持されたコンクリートの上部版42と、枠体の中空部に支持されたコンクリートの中央版43とを有するものであり、上記枠体41の下部がコンクリートの基版9に埋め込まれて一体となったものである。
枠体は4つの柱状部分47から立方体の中央部に向かって袖壁44が張り出しており、これれらの袖壁44によって矩形の中央版43が支持されている。また、上部版42は4分割にされたものであり、ほぼ正方形を形成している上部梁45の内側にほぼ水平に支持され、中央部に開口46が設けられている。
【0030】
このような海洋沈設構造体7の本体部8は、複数に分割されたプレキャスト部材を製作し、これらを組み立てることによって形成することができる。そして、外形がほぼ立方体となるように組み立てられた本体部8を底型枠上に載置し、その周囲を取り囲むように配置した金網内にコンクリートを打設ことによって上記海洋沈設構造体7を製造することができる。
【0031】
以上に説明した海洋沈設構造体1,4,7では、本体部2,5,8が高い集魚効果を有するとともに、本体部2,5,8の周囲に海藻類の繁茂を促進し、魚類の繁殖及び生育に適した環境を作り出すことができる。
【0032】
また、基版3,6,9は、金網を型枠して用いることによって外周面に凹凸が形成するとともに、複数の小穴を設けてエビ等の繁殖を促進することもできる。小穴は、図9(a)に示すように金網22の網目に管状部材51又は棒状部材を突き入れて保持しておき、金網22の内側に突き入れられた部分を埋め込むように基版のコンクリートを打設する。そして、コンクリートの硬化が始まった後に管状部材51又は棒状部材を抜き取ることによって、図9(b)に示すように所定の深さの小穴52を形成することができる。管状部材51又は棒状部材は、コンクリートの打設中、もしくはコンクリートを打設して未硬化の状態で金網に突き入れてもよい。
【0033】
図に基づいて説明した上記海洋沈設構造体は、本発明の実施の形態であって、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。例えば、本体部は様々な形態のものを採用することができ、コンクリートによって形成されたものの他に鋼材で形成されたもの、コンクリートと鋼との複合構造又はコンクリートもしくは鋼材と他の材料との複合構造であってもよい。また、基版の径、厚さについても設置する海域の水深、潮流や波浪等の状況、繁殖や生育の促進が望まれる生物の種類等に応じて適宜に設定することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:海洋沈設構造体, 2:本体部, 3:基版, 4:海洋沈設構造体, 5:本体部, 6:基版, 7:海洋沈設構造体, 8:本体部, 9:基版,
10:本体構成部材, 11:版状部, 12:脚部, 13:円形の開口, 14:版状部に設けられた凹部, 15:ボルト,
20;基版の外周面, 21:吊上用鉄筋, 22:金網, 23:粗骨材, 24:流れ出したモルタル成分, 25:空隙, 26:底型枠,
30:本体構成部材,
41:枠体, 42:上部版, 43:中央版, 44:袖壁, 45:上部梁, 46:上部版に設けられた開口, 47:柱状部分,
51:管状部材, 52:小穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9