(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110178
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ドライバ用ねじ把持保持具。
(51)【国際特許分類】
B25B 23/10 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
B25B23/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005417
(22)【出願日】2021-01-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】397027721
【氏名又は名称】木須 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】木須 浩樹
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BB03
3C038BC01
3C038EA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ねじの締め付け、解除時にねじがドライバから脱落することを抑制することができるねじ把持保持具を提供する。
【解決手段】ドライバ軸上の任意の位置に固定可能なスリーブ2と、両端が該スリーブに連結している弾性体ワイヤ11からなるドライバ用ねじ把持保持具1をドライバ2に取り付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバ軸上の任意の位置に固定する為の固定手段を持つスリーブと、両端が該スリーブに連結している少なくとも1本の弾性体ワイヤからなるドライバ用ねじ把持保持具
【請求項2】
請求項1の弾性体ワイヤに連結し、その先端位置可変機構を持つことを特徴とするドライバ用ねじ把持保持具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、ドライバに装着されてねじを把持保持するドライバ用ねじ把持保持具に関する。本発明は、ドライバ用ねじ把持保持具を用いて、ドライバの先端部にねじを把持保持させて、締め付け作業開始までの間に又はねじを外すときに、ねじがドライバから外れないように用いるねじの把持保持具に関する
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼製のねじ、銅やアルミニウム製のねじなど、マグネットの効かないねじを手動や電動ドライバを用いて締め付ける場合、締め付け時に、ねじがドライバから外れたり、落下したりするのを防止するために、ドライバの先端部に嵌着可能なゴムや軟質のプラスチック製のスリーブからなり、該スリーブの内部にねじを挿入、保持させるようにしたねじ保持具が提案されている。
DIYで作業を行う際に、手動や電動ドライバを用いてねじを締めて部材同士を固定することがある。また同じく手動や電動ドライバを用いてねじを緩めて部材同士を解体することがある。このような場合に、作業者は片手で作業することが多い。そのため、ねじを締め終わるまでまたは解除し終わるまでの間、ねじをドライバの先端に保持しておきたいという要請がある。
この要請に対し、軸の先端に磁性体が用いられたいわゆるマグネットドライバや、ドライバの先端に設けられ、磁気によってねじを誘引して保持する磁性支持具がある。しかし、このように磁性を利用してねじを保持する手法は、磁性によって付くことができる一部の金属で形成されたねじにしか用いることができない。
これに対し、特許文献1には、ドライバの一側に取付けた弾性片と、ねじの頭部の溝に契合しているドライバの先端部で、ねじの頭を押圧支持することで、ねじを把持する方法が開示されている。
それを
図24を用いて説明する。従来のドライバ2に取り付けられる、板ばねねじ把持部材6によって形成され、その基端側にドライバ固定部62が設けられるとともに、略中心部から先端側へ略くの字状に屈曲されて弾性力が付された板ばねねじ把持部61が設けられて構成されている。
この板ばねねじ把持部材6は、
図24に示すように板ばねねじ把持部材6のドライバ固定部62でねじ63とねじ64でドライバ2のプラスドライバ軸21に固定されている。その結果、板ばねねじ把持部材6の先端側に形成された板バネねじ把持部61がドライバ軸心方向に弾性付勢されるように取り付けられる。
上記構成からなるプラスドライバ軸21によるねじ把持操作は、板ばねねじ把持部材6のドライバ軸中心側への附勢力に抗して、板ばねねじ把持部材6の先端側の板ばねねじ把持部61を押し広げながらねじ3のねじ頭部32の十字溝にプラスドライバ軸21の先端を係合させる。
以上が特許文献1に開示されている内容であるが、本出願人は、上記を静力学的に考察してみた。以下にその内容を示すことで、従来技術の背景をさらに明らかにする。
図25は従来技術を静力学的に説明する図である。まず回転の向きは、右手系で、25図の右下部に示すようにx、y、z 軸の正の方向に向って右ねじが進む方向を正の向きとする。
次いで、剛体であるねじ3の重心である点P1は任意の点Oからベクトルr1の距離にある。そこにはベクトルF1の力がかかっており、この点P1をP1(ベクトルr1、ベクトルF1)と表すことにする。ちなみに、ねじの質量をM、重力加速度をgとするとベクトルF1の大きさはMgとなり、方向は下向きである。
以下、同じように、板ばねねじ把持部61とねじ3のねじ頭部32が当接する点P20は、任意の点Oからベクトルr20の距離にあり、そこには板ばねねじ把持部61からの把持力ベクトルF20の力がかかっており、P20(ベクトルr20、ベクトルF20)と表すことが出来る。把持のベクトルF20の方向はねじ3の中心軸に向かい、ほぼ水平を向いており、上向きの成分はない。
またねじ頭部32が板ばねねじ把持部61によって押さえられることによって発生する抗力の点を
図25の奥から手前側へ順に点P21、点P22、点P23は、点Oからの距離をベクトルr、それぞれの抗力をベクトルFとすると、図に示すようにP21(ベクトルr21、ベクトルF21)、P22(ベクトルr22、ベクトルF22)、P23(ベクトルr23、ベクトルF23)と表すことが出来る。抗力ベクトルF21、ベクトルF22、ベクトルF23の向きはやや下向きで、
図25の右側を向いている。
更には、板ばねねじ把持部61からの把持力ベクトルF20の力により発生する静止摩擦力の発生する点を
図25の奥から手前側へ順に点P24、点P25、点P26は、点Oからの距離をベクトルr、それぞれの静止摩擦力をベクトルFとすると、図に示すようにP24(ベクトルr24、ベクトルF24)、P25(ベクトルr25、ベクトルF25)、P26(ベクトルr26、ベクトルF26)と表すことが出来る。静止摩擦力ベクトルF24、ベクトルF25、ベクトルF26はプラスドライバ軸21の先端がねじ頭部32の溝に当接する部分に沿って、
図25右上方に向いている。
図26は
図25のa-a線の断面図である。ねじ頭部32の片側を板ばねねじ把持部61とプラスドライバ軸21で挟んでいることがわかる。点P1のベクトルF1の向きは、図面の手前から奥に向かっている。点P20での把持力ベクトルF20の方向は、
図26の左側を向いている。また点P21、点P22、点P23での抗力ベクトルF21 、ベクトルF22 、ベクトルF23の方向は、
図26の右側を向いている。同じく、点P24、点P25、点P26の静止摩擦力ベクトルF24 、ベクトルF25、ベクトルF26も
図26の右側を向いている。
図27はプラスドライバ軸21と板ばねねじ把持部61でねじ頭部32を把持した場合の側面図である。点P20の把持力ベクトルF20の向きは、
図27の手前から奥に向かっている。また点P1にかかる力ベクトルF1の大きさは27図で示したようにMgとなり、方向は
図27の下向きである。
また点P21、点P22、点P23での、抗力ベクトルF21 、ベクトルF22 、ベクトルF23の方向は、
図27の下側を向いている。また点P24、点P25、点P26での静止摩擦力ベクトルF24 、ベクトルF25、ベクトルF26の方向は、
図27の上を向いている。
図25、
図26、
図27に於いて、ねじ3はプラスドライバ軸21と板ばねねじ把持部61で把持され、つりあっているので次のことが言える。
つまり、任意の点Oに働く力とモーメントは数式1と数式2で表されることが解っている。
・力の合成力の和は0になる
(数1)
ΣベクトルFi(i=1、20~26)=0
・任意の一点Oの周りのモーメントの和も0になる
(数2)
Σ(ベクトルri×ベクトルFi)(i=1、20~26)=0
図25~
図27の静力学的考察の結果、板ばねねじ把持部61により発生する把持力ベクトルF20の方向はねじ3の中心軸に向かって、ほぼ水平を向いており、上向きの成分はないことがわかる。
これは次のように解釈される、ねじ3はねじ頭部32の片側を箸でつまんで静止しているようなものである。そして箸の片方がプラスドライバ軸21の先端であり、もう片方が、板ばねねじ把持部61の先端に相当すると考えられる。
図28を用いて詳しく説明する。
図28ー1はねじ頭部32の半分をグラインダーで斜線に示す部分まで削り取ったねじ頭部35を板ばねねじ把持部61で実際に把持保持したものである。このようなねじ3でも、板ばねねじ把持部61を使い、固定することが出来た。この状態で、プラスドライバ軸21に軽く衝撃を与えたくらいでは、ねじ頭部35のねじ3はプラスドライバ軸21の先端から外れることはなかった。
このねじ頭部35のような半分しかない形状のねじ頭部でも、板ばねねじ把持部61とプラスドライバ軸21使い、把持できるという事は、
図25~
図27の静力学的考察が正しいことを示している。
次に特許文献2を
図31で説明する。この考案はコイル形状把持部材8を開示している。これはコイルばね83をねじ止め取け付カラー82でプラスドライバ軸21に取り付けた物である。81は取け付カラー82をプラスドライバ軸21に固定するためのねじ、84はねじ頭部32を保持するための先端折り曲げ部である。3はねじ、32はねじ頭部、31はねじ軸部を示す。
図31-1に示すようにコイルばね83の左右、上下の弾力性により、ねじ頭部32を、プラスドライバ軸21の先端に合わせ押すだけでねじ3は先端折り曲げ部84によって、簡単に固定することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実全昭61-175366号公報
【特許文献2】実全昭54-154494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の課題として、ねじ頭部32に油等の潤滑剤が付着した場合、ねじ3の把持が出来なくなると云う課題を有していた。以下詳細に説明する
図25~
図27の静力学的考察の結果、板ばねねじ把持部61により発生する把持力ベクトルF20の方向はねじ3の中心軸に向かい、ほぼ水平を向いており、上向きの成分はないことがわかった。
一方、
図25に於いて、把持力ベクトルF20の力により発生する静止摩擦力の発生する点P24、点P25、点P26における静止摩擦力ベクトルF24、ベクトルF25、ベクトルF26はプラスドライバ軸21の先端が、ねじ頭部32の溝に当接する部分に沿って、25図右上方を向いている。
従ってベクトルF24、ベクトルF25、ベクトルF26の上向きの成分が、下向きのベクトルF1とつり合っていることになる。ところが、静止摩擦力は、油等の潤滑剤の影響を受けやすい。特に環境の悪い作業現場では、ねじ頭部32に油が付着して、静止摩擦力が小さくなってしまう。その結果、そのような現場では、ねじ3の把持が難しくなると云う課題を有していた。
それを確認すべく、
図24に示す、板ばねねじ把持部61に把持されたねじ頭部32とプラスドライバ軸21の間に、潤滑剤[KURE5-56:呉工業株式会社]を塗布したところ、直後に、ねじ3が飛んで行ってしまった。これは静止摩擦係数が小さくなり、
図25~27に示すつりあいの条件が保てなくなり、ねじ3は板ばねねじ把持部61に押されて、撥ね飛ばされたものと考えられる。これは、箸で小豆はつまめても、油まみれの小豆はつまみにくいのと同じ現象である。
上記現象は、
図29に示すような、特許文献1に開示されている棒バネ等の弾性部材に変えても同様に発生した。棒ばねねじ把持部材7は、
図29に示すように棒ばねねじ把持部材7のドライバ軸固定部72でねじ73とねじ74でドライバ2のプラスドライバ軸21に固定されている。その結果、棒ばねねじ把持部材7の先端側に形成されたねじ把持部71がドライバ軸心方向に弾性付勢されるように取り付けられる。
そこで、同じように
図29に示す、棒ばねねじ把持部71に把持された、ねじ頭部32とプラスドライバ軸21の間に、棒ばねねじ把持部71と同様に、潤滑剤[KURE5-56:呉工業株式会社]を塗布したところ、直後に、ねじ3が飛んで行ってしまった。これは静止摩擦係数が小さくなり、
図25~27に示すつりあいの条件が保てなくなり、ね
以上の結果より、棒ばねねじ把持部材7に変えても、
図25~
図27の静力学的考察の結果からも明らかなように、ねじ頭部32の曲面に対し、面で当接するから線で当接するかに変わるだけである。基本的に、つり合いの関係式は同じになり、潤滑剤を塗布した場合、同じ結果になるのは自明と云える。
第二の課題は参考文献1の板ばねねじ把持部61、棒ばねねじ把持部71を持つタイプは板Bが木や石膏ボードのように表面が柔らかい場合、板ばねねじ把持部61、棒ばねねじ把持部71の先端部分が板Bに食い込み、ねじ頭部32の周りに同心円状に傷が発生する問題を抱えていた。それを
図30に示す。
図30-1は板ばねねじ把持部61を装着したプラスドライバ軸21で板Bにねじを締めこんだ時の状態を示す。a-a線での断面図を下部に示す。
図30-2は棒バネのねじ把持部71を装着したプラスドライバ軸21で板Bにねじを締めこんだ時の状態を示す。b-b線での断面図を下部に示す。板Bが木や石膏ボードのように表面が柔らかいものの場合、ねじ把持部71の先端部分が板Bに食い込み、やはり同じように、ねじ頭部32の周りに同心円状に傷が発生してしまうと云う課題があった。
第三の課題はねじの締め付け完了時に、先端折り曲げ部84がねじ頭部32と板Bの間に挟まると云う問題である。以下に
図31-2~
図31-4を用い特許文献2を説明する。
図31-2は、コイル形状把持部材8を用いて、ねじの締め付けを行っている状況を示している。プラスドライバ軸21は板Bに対し、ねじ頭部32を矢印201に示すように、右回りに締め付けている。
かつてのように手動でねじの締め付けを行うときは問題がなかったが、昨今のように、電動ドライバにプラスドライバ軸21をセットしてねじの締め付けを行うようになると次のような問題が発生するようになった。
図31-3はねじ頭部32が先端折り曲げ部84を挟み込んでいる様子を示している。
図31-4はプラスドライバ軸21を矢印208で示すように90度倒して、その状況をわかりやすく示したものである。
かつて手動でプラスドライバ軸21を回してねじの締め付けを行っていた時は、ねじの締め付け完了直前に、先端折り曲げ部84がねじ頭部32に巻き込まれないように、指先で先端折り曲げ部84を回転軸から外側へ誘導することが可能であった。しかし昨今プラスドライバ軸21を電動ドライバにセットする機会が増えた。このような場合には、ねじの締め付けが短時間に終了してしまうので、指で誘導する間もなく、先端折り曲げ部84がねじ頭部32に巻き込まれる問題が多発している。
本発明はこのような従来例の技術が有していた課題を解決しようとするものであり、油等の影響を受けず、締めこんだ時、板を傷つけず、また挟み込みの発生しないドライバ用ねじ把持保持具を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の手段は、ドライバ軸上の任意の位置に固定する事が可能な固定機構を持つスリーブと、両端が該スリーブに連結している弾性体ワイヤからなるドライバ用ねじ把持保持具をドライバに取り付ける手段で、下記の課題を解決したものである。
第一の課題解決手段は、該弾性体ワイヤでねじ頭部を支持することでねじをドライバの根本方向へ押し付ける力の成分を発生させるものである。
第二の課題解決手段は、ねじを締め付けや解除する時に、該弾性体ワイヤが自在に変形することを利用したものである。
第三の課題解決手段は、ねじを締め付けや解除する時に、該弾性体ワイヤの先端がねじの回転中心から離れていく性質を利用したものである
【発明の効果】
【0006】
第一の課題解決手段による作用・効果は次の通りである。すなわち、 ドライバ軸上の任意の位置で固定する固定手段を持つスリーブ2と、両端が該スリーブに連結している弾性体ワイヤ11からなるドライバ用ねじ把持保持具1が、ねじ頭部32をドライバ軸根元の方向へ押し付ける力で把持することにより、ねじを磁性、非磁性にかかわらず、作業環境が劣悪な場面でもドライバ2先端にしっかりと把持することが可能になった。
弾性体ワイヤ11でねじ頭部32を押さえるという簡単な構成の為、様々な種類や形状、大きさのねじやボルトの締め付けや解除の場面で使う事が可能になった。
また、弾性体ワイヤ11、スリーブ12と六角穴付止めねじ13だけで構成されるため、狭い場所でのねじ締め付け、解除が可能になった。
更に弾性体ワイヤ11にヒンジ4を取り付ければ、ねじをドライバ2の先端に取り付ける場合や、ねじ締め付けを解除する際にドライバ2の先端をねじ頭部32に容易に挿入することが可能になった。
また六角穴付止めねじ13の代わりに蝶ボルト5にすれば、手元にヘックスドライバAが無くとも、色々な種類・サイズのねじやボルトを使う現場で、スリーブ12の位置調整が可能になった。
第二の課題解決手段による作用・効果は次の通りである。すなわち、ねじの締め付けや解除の際、該弾性体ワイヤ11が自由に変形することで、ねじの締め付けや解除の相手が木や石膏ボード等の柔らかい物でも傷をつけることなく、ねじの締め付けや解除が可能になった。
第三の課題解決手段による作用・効果は次の通りである。すなわち、ねじを締め付けるときに、該弾性体ワイヤ11先端部が、回転中心から外側へと変形するので、締め終わりの瞬間に、ねじ頭部と板の間に、該弾性体ワイヤ11が挟み込まれることを回避することが可能になった。またねじの解除時には弾性体ワイヤ11先端が、その弾性力で、回転中心外側から中心に向かって移動してくるので、解除するねじ頭部32をしっかりと保持把持する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のドライバ用ねじ把持保持具の実施例1の斜視図
【
図2】実施例1を実装した時の平面図、正面図、側面図
【
図3】本発明のドライバ用ねじ把持保持具の平面図、正面図、側面図
【
図4】実施例1で、初めてねじをドライバ用ねじ把持保持具でプラスドライバ軸に固定する方法の説明図
【
図5】同じサイズのねじの2回目以降のセット方法の説明図
【
図6】ねじの締め付けを開始する直前の状態を示す図
【
図7】ねじの締め付けの様子を同じタイミングでとらえた、側面図
【
図8】ねじの締め付けの様子を
図7と同じタイミングでとらえた、平面図
【
図10】ねじの締め付け解除の様子を
図9同じタイミングでとらえた、側面図
【
図11】ねじの締め付け解除の様子を
図10と同じタイミングでとらえた、平面図
【
図12】本発明の実施例1を静力学的に説明する正面図
【
図15】その他の実施例1として、弾性体ワイヤにヒンジを取り付けた場合の平面図、正面図、側面図
【
図16】弾性体ワイヤにヒンジを取り付けた場合のねじのセット方法を示す図
【
図17】ヒンジを使って、ねじを解除する時のセット方法を示す図
【
図18】何度もねじの締め付けをした後に弾性体ワイヤが片方へ倒れた場合の対処方法を示す図
【
図19】大きなねじ用のドライバ用ねじ把持保持具の斜視図、正面図
【
図20】実施例1の弾性体ワイヤとの違いと設置方法を示す図
【
図22】ドライバ用ねじ把持保持具を使い、マイナスねじをセットした状態を示す
【
図23】六角穴付止めねじの代わりに、蝶ボルトを用いた例の平面図、正面図、側面図
【
図24】従来技術の板ばねねじ把持部の実施例の斜視図
【
図28】ねじ頭部の半分をグラインダーで斜線に示す部分まで削り取ったねじ頭部をセットしたものを示す図
【
図29】特許文献1に開示されている棒バネ等の弾性部材を示す斜視図
【
図30】従来例で締め付けを行うと、板に同心円状の傷をつけてしまうことを示す図
【
図31】ねじの締め付け完了時に、コイル形状把持の先端折り曲げ部がねじ頭部と板の間に挟まる問題を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
ドライバ軸上の任意の位置に固定可能なスリーブと、両端が該スリーブに連結している弾性体ワイヤからなるドライバ用ねじ把持保持具をドライバに取り付ける手段で、ねじの締め付け、解除時にねじがドライバから脱落する、板に傷をつける課題を解決するものである。
【実施例0009】
図1は本発明のドライバ用ねじ把持保持具1がねじ3を把持保持している様子の実施例を示す斜視図である。ドライバ用ねじ把持保持具1はスリーブ12とドライバ2のプラスドライバ軸21上の任意の位置で該スリーブ12を固定する為の六角穴付止めねじ13及び両端が該スリーブ12に連結している弾性体ワイヤ11から構成される。3はドライバ用ねじ把持保持具1で把持保持するねじであり、ねじ頭部32とねじ軸部31から成る。
図2は
図1の平面図、正面図、側面図である。該弾性体ワイヤ11はねじ3のねじ頭部32を軽く抑えるように配置される。平面図からも明らかなように該弾性体ワイヤ11の先端は、ねじ頭部32の底面より少しねじ軸部31の側に入り込んでいるのがわかる。
ねじ3は鍋ねじであり、ねじ頭部32の直径は9mm、ねじ軸部31の外径4mm、長さは10mmであり、オーステナイト系の非磁性のステンレス鋼である。プラスドライバ軸21は六角平径が6.5mmのドライバ2である。
図3は本発明のドライバ用ねじ把持保持具1の平面図、正面図、側面図である。該弾性体ワイヤ11は、ねじ頭部32を把持保持できる曲率を持ち、中央部で折り曲げられている。該弾性体ワイヤ11は直径0.8mmのピアノ線、長さは80mm、弾性体ワイヤ11は六角穴付止めねじ13の軸に直行し、スリーブ12の直径を含む面の中に設置されている。その両端部はスリーブ12に5mm挿入し、圧入固定している。この固定方法は、圧入に限らず、半田や、溶接等その他の方法でもよい。スリーブ12は外径12.2mm、内径7.6mm、厚さ2.3mmであり、銅でできている。六角穴付止めねじ13の外径4mm、六角平径2mm、長さ6mmである。
弾性体ワイヤ11はピアノ線に限定されることなく、弾性体で強度があれば金属や樹脂等であってもよい。また弾性体ワイヤ11の長さや太さ等もねじのサイズに応じて変更が可能である。スリーブ12も銅である必要はなく、十分に強度のある金属や樹脂等であってもよいし、形状もドライバ2の太さに対応じて変更が可能である。
図4はねじ3をドライバ用ねじ把持保持具1でプラスドライバ軸21にセットする方法を説明する。
図4-1に於いて、まず右の親指と人差し指でねじ軸部31をつまみ、ねじ頭部32をドライバ2の先端にセットする。同時に左手の親指と人差し指でスリーブ12を矢印200の向きにスライドさせる。
図4-2に於いて、弾性体ワイヤ11の先端がねじ頭部32に引っかかったところで止める。
図4-3に於いて、ヘックスドライバAを用いて、六角穴付止めねじ13を矢印201の向きに回し、ドライバ用ねじ把持保持具1をプラスドライバ軸21に固定する。
同じサイズ・形状のねじ頭部を引き続き、締め付ける場合は、上記のセットを行う必要はない。
図5に同じサイズ・形状のねじ頭部の2回目以降のセット方法を示す。まず左手の親指と人差し指でねじ軸部31を挟み、次いで右手の親指の先で弾性体ワイヤ11を矢印202の向きに押し上げ、プラスドライバ軸21の先端部分を開けて、ねじ頭部32をセットする。その後、右手親指を弾性体ワイヤ11から離すことで、弾性体ワイヤ11がねじ3をしっかりと把持保持する事になる。
同じサイズ・形状のねじの場合は、
図5の方法を繰り返せばよい。異なるサイズ・形状のねじ頭部をセットする場合には
図4の工程で新たにセットすることになる。
図6はねじの締め付けを開始する直前の状態を示す図である。Bは木やベニヤ等の板である。100は電動ドライバである。101は押下するとプラスドライバ軸21が右回転を開始する、締め付けスイッチ、102は押下するとプラスドライバ軸21が左回転を始める締め付け解除スイッチである。
図7は締め付けの様子を同じタイミングでとらえた、側面図である。
図7-1は締め付け開始直前を示す。
図7-2は
図6で示した締め付けスイッチ101を押下して、プラスドライバ軸21を矢印201の向きに回転させている状態を示す。
図7-3は締め付けが終了した状態を示す。
図7-2から
図7-3の間に、弾性体ワイヤ11の先端はねじ頭部32から徐々に離れ、最後は上側に曲がって、ねじ頭部32から離れた状態になっていることがわかる。
図7-4は締め付けが終了して電動ドライバ100を板Bから離した状態を示す。弾性体ワイヤ11はまっすぐ伸びて元の位置に戻っていることがわかる。
図8は締め付けの様子を7図と同じタイミングでとらえた、平面図である。
図8-1は締め付け開始直前を示す。
図8-2は
図6で示した締め付けスイッチ101を押下して、プラスドライバ軸21を矢印201の向きに回転させている状態を示す。
図8-3は締め付けが終了した状態を示す。この時弾性体ワイヤ11の先端はプラスドライバ軸21の回転に依り、回転中心から外に向かう方向に押し出され、ねじ頭部32に巻き込まれることなく、ねじ頭部32から少し離れ、図の下側に変形した状態になっていることがわかる。この図からも明らかなように、弾性体ワイヤ11は柔軟に変形するので、回転で板Bに傷をつけることはない。
図8-4は締め付けが終了して電動ドライバを板Bから離した状態を示す。弾性体ワイヤ11はまっすぐ伸びて元の位置に戻っていることがわかる。
図9は締め付けを解除する方法を示す。まず左手の人差し指の先端で弾性体ワイヤ11の先端を
図9の矢印202の向きにずらしプラスドライバ軸21の先端をねじ頭部32の溝に差し込む。次いで電動ドライバ100の解除スイッチ102を押下してねじを板Bから解除する。
図10は締め付け解除の様子を同じタイミングでとらえた、側面図である。
図10-1は締め付け解除開始直前を示す。弾性体ワイヤ11の先端は、ねじ頭部32から少し離れた上側にある。
図10-2は
図6で示した締め付け解除スイッチ102を押下して、プラスドライバ軸21を矢印203の向きに回転させている状態を示す。この時、弾性体ワイヤ11先端が少しずつ、ねじ頭部32に近づいていく。つまり弾性体ワイヤ11先端が、その弾性力で、回転中心外側から中心に向かって移動してくるので、解除するねじ頭部32をしっかりと保持把持する事が出来る。
図10-3は回転しながらも、弾性体ワイヤ11がねじ頭部32を弾性体ワイヤ11の弾性力でしっかり把持保持している状態を示す。
図10-4は締め付けが終了して電動ドライバを板Bから離れた状態を示す。ここでも弾性体ワイヤ11がねじ頭部32を弾性体ワイヤ11の弾性力でしっかり把持保持していることがわかる。
図11は締め付け解除の様子を10図と同じタイミングでとらえた、平面図である。
図11-1は締め付け開始直前を示す。
図11-2は
図6で示した締め付け解除スイッチ102を押下して、プラスドライバ軸21を矢印203の向きに回転させている状態を示す。この時弾性体ワイヤ11の先端はプラスドライバ軸21の回転に引かれて、ねじ頭部32から少し離れ、図の上側に変形した状態になっていることがわかる。この図からも明らかなように、弾性体ワイヤ11は柔軟に変形するので、回転で板Bに傷をつけることはない。
図11-3はプラスドライバ軸21が回転しながらも、弾性体ワイヤ11がねじ頭部32にしっかり把持保持した状態を示す。
図11-4は締め付けが終了して電動ドライバ100を板Bから離した状態を示す。弾性体ワイヤ11はねじ3をしっかり把持保持していることがわかる。
図12は本発明の実施例1を静力学的に説明する正面図である。まず回転の向きは、右手系で、12図の右下に示すように、 x、y、z 軸の正の方向に向って右ねじが進む方向を正の向きとする。
次いで、剛体であるねじ3の重心である点P1は任意の点Oからベクトルr1の距離にある。そこにはベクトルF1の力がかかっており、この点P1をP1(ベクトルr1、ベクトルF1)と表すことにする。ちなみに、ねじの質量をM、重力加速度をgとするとベクトル"F1" の大きさはMgとなり、方向は下向きである。
以下、同じように、弾性体ワイヤ11とねじ3のねじ頭部32が当接する図面奥側の点P2は、任意の点Oからベクトルr2の距離にあり、そこにはねじ弾性体ワイヤ11からの把持力ベクトルF2の力がかかっており、P2(ベクトルr2、ベクトルF2)と表すことが出来る。把持力ベクトルF2の方向はねじ3の中心軸に向かい、同時に左上向きの成分も存在する。同様に図面手前側の点P3もP3(ベクトルr3、ベクトルF3)と表すことが出来、点P2と同じく把持力ベクトルF3の方向は左上向きの力の成分が存在する。
また、ねじ頭部32が弾性体ワイヤ11によって押さえられることによる抗力の発生する点を
図12の奥から手前側へ順に点P4、点P5、点P6とした時、点Oからの距離ベクトルr、それぞれの抗力ベクトルFは図に示すようにP4 (ベクトルr4、ベクトルF4) 、P5 (ベクトルr5、ベクトルF5) 、P6 (ベクトルr6、ベクトルF6)と表すことが出来る。抗力のベクトルF4、ベクトルF5、ベクトルF6の方向は、
図12の右下向きである。
更には、弾性体ワイヤ11からの把持力ベクトルF2、ベクトルF3の力により発生する静止摩擦力の発生する点を
図12の奥から手前側へ順に点P7、点P8、点P9とした時、点Oからの距離ベクトルr、それぞれの静止摩擦力ベクトルFを図に示すようにP7(ベクトルr7、ベクトルF7) 、 P8(ベクトルr8、ベクトルF8) 、 P9(ベクトルr9、ベクトルF9)と表すことが出来る。静止摩擦力ベクトルF7、ベクトルF8、ベクトルF9はプラスドライバ軸21の先端がねじ頭部32の溝に当接する部分に沿って、
図12の右上方に向いている。
図13は
図12のa-a線の断面図である。ねじ頭部32の片側を弾性体ワイヤ11とプラスドライバ軸21の先端で挟んでいることがわかる。点P1のベクトルF1の向きは、
図13の図面手前から奥側に向かっている。ねじ頭部32と弾性体ワイヤ11の接点である点P2、点P3の把持力ベクトルF2、ベクトルF3の方向は、ねじ3の中心軸に向かっている。 また点P4、点P5、点P6での抗力ベクトルF4、ベクトルF5、ベクトルF6の方向は、
図13の右側を向いている。同じく、点P7、点P8、点P9での静止摩擦力ベクトルF7、ベクトルF8、ベクトルF9も
図13の右側を向いている。
図14は本発明の実施例1を静力学的に説明する側面図である。ここではプラスドライバ軸21と弾性体ワイヤ11でねじ頭部32を把持した場合の側面図を示している。点P1にかかる力ベクトルF1の大きさは12図で示したようにMgとなり、方向は下向きである。また点P2の把持力ベクトルF2の方向は、ねじ3の中心軸に向い、図面左上方に向いている。さらに点P3の把持力ベクトルF3の方向は、ねじ3の中心軸に向い、図面右上方に向いている。
また点P4、点P5、点P6でのベクトルF4、ベクトルF5、ベクトルF6の方向は、
図14の下側を向いている。また点P7、点P8、点P9での静止摩擦力ベクトルF7、ベクトルF8、ベクトルF9の方向は、
図14で上を向いている。
図12、
図13、
図14に於いて、ねじ3はプラスドライバ軸21と弾性体ワイヤ11で把持され、つりあっているので次のことが言える。
つまり、任意の点Oに働く力とモーメントは以下のように数式3と数式4で表されることが解っている。
・力の合成力の和は0になる
(数3)
ΣベクトルFi(i=1~9)=0
・任意の一点Oの周りのモーメントの和も0になる
(数4)
Σ(ベクトルri×ベクトルFi)(i=1~9)=0
図25~
図27の静力学的考察の結果、板ばねねじ把持部61により発生する把持力ベクトルF20の方向はねじ3の中心軸に向かい、ほぼ水平を向いており、上向きの成分はないことがわかった。一方
図12~
図14の静力学的考察の結果、弾性体ワイヤ11により発生する把持力ベクトルF2、ベクトルF3の方向はねじ3の中心軸に向かい、
図12では図面の左上を向いており、上向きの成分を持つことがわかった。
従って、下向きのベクトルF1に対抗する力は静止摩擦力ベクトルF4、ベクトルF5、ベクトルF6の上向き成分とベクトルF2、ベクトルF3の上向き成分が加わることになり、弾性体ワイヤ11がねじ3をよりしっかりと把持保持できることがわかる。
図28を用いて詳しく説明する。
図28ー2はねじ頭部32の半分をグラインダーで斜線に示す部分まで削り取ったねじ頭部35を弾性体ワイヤ11で把持保持したものである。このようなねじ3でも、板ばねねじ把持部61や弾性体ワイヤ11を使い、固定することが出来るという事は、
図12~
図14の静力学的考察が正しいことを示している。
また
図24の状態のねじに潤滑剤[KURE5-56:呉工業株式会社]を塗布したところ、
図24の板ばねねじ把持部材6や棒ばねねじ把持部材7の場合は、直後に、ねじ3が飛んで行ってしまった。
一方、
図1の弾性体ワイヤ11は上記潤滑剤を塗布しても、しっかりと、ねじ3を把持保持していた。そして、プラスドライバ軸21を強く振ってもねじ3がドライバ軸21から外れる事はなかった。
これは
図25、
図26、
図27に示すように従来の板ばねねじ把持部61がねじ頭部32を1点で押さえているのに対し、弾性体ワイヤ11は
図12、
図13、
図14で示すように2点で、しかもプラスドライバ軸21の根本方向に対し、強く押さえる事が出来るためである。