(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110187
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】階段の施工方法及び階段施工用分割ユニット
(51)【国際特許分類】
E04F 11/02 20060101AFI20220722BHJP
E04F 11/09 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
E04F11/02 100
E04F11/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005440
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】521212317
【氏名又は名称】株式会社アンドーコア
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 功
(72)【発明者】
【氏名】山下 直紀
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC44
2E301CD21
2E301CD42
2E301DD01
2E301DD02
2E301EE00
(57)【要約】
【課題】
踏み板や蹴込み板や側板の寸法を現場で調整する必要がなくなる等、現場での作業を大幅に削減することができ、階段の施工に要する時間やコストを抑えることができる階段の施工方法を提供する。
【解決手段】
左右の壁面間2,3に階段を施工する階段の施工方法において、階段1を、上下に分割された複数の分割ユニット11~13で構成し、それぞれの分割ユニット11~13を、複数段分の踏み板10a及び蹴込み板10bと、左右の側板10cとを工場で組み立てたものとし、左右の壁面2,3のそれぞれに、階段1の傾斜に沿った角度でレール20を固定した後、レール20に対して、複数の分割ユニット11~13を下側から順に載せていくようにした。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の壁面間に階段を施工する階段の施工方法であって、
階段が、上下に分割された複数の分割ユニットで構成され、
それぞれの分割ユニットが、複数段分の踏み板及び蹴込み板と、左右の側板とを工場で組み立てたものとされ、
前記左右の壁面のそれぞれに、階段の傾斜に沿った角度でレールを固定した後、
前記レールに対して、複数の分割ユニットを下側から順に載せていく
ことを特徴とする階段の施工方法。
【請求項2】
それぞれの分割ユニットを構成する踏み板、蹴込み板及び側板が、木板で形成された請求項1記載の階段の施工方法。
【請求項3】
前記レールに対して分割ユニットを載せた後、レールの下側からビス打ち又は釘打ちすることで、当該分割ユニットをレールに固定する請求項2記載の階段の施工方法。
【請求項4】
一の分割ユニットの最下段部に位置する蹴込み板の裏面側からビス打ち又は釘打ちすることで、当該蹴込み板を、前記一の分割ユニットのすぐ下側に配された他の分割ユニットの最上段部に位置する踏み板の端面に固定する請求項2又は3記載の階段の施工方法。
【請求項5】
前記レールに対して分割ユニットを載せた後、分割ユニットの左右に巾木を固定する請求項1~4いずれか記載の階段の施工方法。
【請求項6】
少なくとも1つの分割ユニットの側板における奥側の角部をアール状に形成した請求項1~5いずれか記載の階段の施工方法。
【請求項7】
側板の外面に遮音部材を固定した請求項1~6いずれか記載の階段の施工方法。
【請求項8】
階段の傾斜に沿って複数個を設置することで階段を施工する階段施工用分割ユニットであって、
複数段分の踏み板及び蹴込み板と、左右の側板とが一体化された
ことを特徴とする階段施工用分割ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の壁面間に階段を施工する階段の施工方法と、この施工方法に用いることができる階段施工用分割ユニットとに関する。
【背景技術】
【0002】
木造家屋の階段は、一般的に、
[1]上段框を取り付ける。
[2]左右の壁面に墨出しする。
[3]左右の壁面のそれぞれに側板を固定する。
[4]左右の側板に、蹴込み板及び踏み板を下段側から上段側に順に固定していく。
[5]巾木を固定する。
という手順を経て施工される。
【0003】
ところが、上記の施工は、踏み板や蹴込み板の寸法等を現場で調整しながらの作業となるため、非常に手間を要する。加えて、各段について墨出しを行うため、墨出しにも手間を要する。したがって14段程度の階段を施工するのに、丸1日から1日半程度の時間が掛かっている。このような実状に鑑みて、これまでには、階段を、工場で製作された複数の分割ユニットで構成することも行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数のユニット階段室(ボックス型の分割ユニット)を並置することによって階段を施工する技術が開示されている。しかし、特許文献1のようなボックス型の分割ユニットは、寸法が大きく、現場への搬入や施工が容易ではない。特に、上段部分の分割ユニットは、1階の床から2階に届く高さを有している。このため、現場の状況によっては、分割ユニットを搬入又は施工できないおそれもある。
【0005】
また、特許文献2には、複数のピースに分割されたササラ板(側板)を現場で連結して左右の壁面のそれぞれに固定した後、左右のササラ板(側板)に、踏み板及び蹴上板(蹴込み板)を固定することによって階段を施工する技術が開示されている。しかし、特許文献2の施工方法では、ササラ板(側板)に対して踏み板や蹴上板(蹴込み板)を1段ずつ固定していくため、やはり現場での調整が必要となる。それどころか、ササラ板(側板)を連結する分、現場での作業が増えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭52-029524号公報
【特許文献2】実登第3202360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、踏み板や蹴込み板や側板の寸法を現場で調整する必要がなくなる等、現場での作業を大幅に削減することができ、階段の施工に要する時間やコストを抑えることができる階段の施工方法を提供するものである。また、この施工方法に好適に用いることができる階段施工用分割ユニットを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
左右の壁面間に階段を施工する階段の施工方法であって、
階段が、上下に分割された複数の分割ユニットで構成され、
それぞれの分割ユニットが、複数段分の踏み板及び蹴込み板と、左右の側板とを工場で組み立てたものとされ、
前記左右の壁面のそれぞれに、階段の傾斜に沿った角度でレールを固定した後、
前記レールに対して、複数の分割ユニットを下側から順に載せていく
ことを特徴とする階段の施工方法
を提供することによって解決される。
【0009】
これにより、踏み板や蹴込み板や側板の寸法等を現場で調整する必要がなくなる。また、墨出しも、レールの傾斜角度及び位置を定めるのに必要な箇所についてのみ行えば足りる。このため、現場での作業を大幅に削減することが可能になる。従来には、丸一日から一日半を要していた階段の施工を、本発明の施工方法では、2~3時間程度で終えることも可能である。したがって、階段の施工に要する時間やコストを削減することが可能になる。
【0010】
本発明の階段の施工方法において、それぞれの分割ユニットを構成する踏み板、蹴込み板及び側板は、通常、木板で形成される。これにより、レールに対する分割ユニットの固定や、分割ユニット同士の固定をビス打ち又は釘打ちで行うことができる。木板のなかでも、特に集成材を用いることが好ましい。これにより、踏み板、蹴込み板及び側板の寸法精度を高めることが可能になる。加えて、踏み板、蹴込み板及び側板を、ビス打ちや釘打ちに強いものとすることも可能になる。
【0011】
ここで、レールに対する分割ユニットの固定は、レールの下側からビス打ち又は釘打ちすることで行うことができる。また、分割ユニット同士の固定は、一の分割ユニットの最下段部に位置する蹴込み板の裏面側からビス打ち又は釘打ちすることで、当該蹴込み板を、前記一の分割ユニットのすぐ下側に配された他の分割ユニットの最上段部に位置する踏み板の端面に固定することによって行うことができる。
【0012】
本発明の階段の施工方法においては、前記レールに対して分割ユニットを載せた後、分割ユニットの左右に巾木を固定することが好ましい。というのも、本発明の施工方法では、左右の壁面の間に分割ユニットを入れることから、分割ユニットの左右幅は、左右の壁面の間隔よりも狭くする必要がある。このため、分割ユニットと左右の壁面との間には、どうしても隙間が形成されるところ、その隙間を巾木によって隠すことが可能になるからである。
【0013】
本発明の階段の施工方法においては、少なくとも1つの分割ユニットの側板における奥側の角部をアール状に形成することが好ましい。これにより、分割ユニットの側板における奥側の角部をレールに対して滑りやすくすることができる。このため、分割ユニットの側板における奥側の角部をレールに当てた後、その分割ユニットを下側から押し上げることで、その角部をレールに対して滑らせ、その分割ユニットを所望の位置まで移動させることが可能になる。したがって、分割ユニットをレールに載せる作業を行いやすくなる。この構成は、上側に配される分割ユニットで採用すると特に好ましい。
【0014】
本発明の階段の施工方法においては、側板の外面に遮音部材を固定することも好ましい。これにより、階段を昇り降りする際の音が響きにくくして、騒音の発生を抑えることが可能になる。遮音部材は、現場で取り付けてもよいが、工場で分割ユニットを組み立てる際に取り付けておくと、現場での作業を減らすことができる。
【0015】
また、上記課題は、
階段の傾斜に沿って複数個を設置することで階段を施工する階段施工用分割ユニットであって、
複数段分の踏み板及び蹴込み板と、左右の側板とが一体化された
ことを特徴とする階段施工用分割ユニット
を提供することによっても解決される。
この階段施工用分割ユニットは、上記の施工方法における「分割ユニット」として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によって、踏み板や蹴込み板や側板の寸法を現場で調整する必要がなくなる等、現場での作業を大幅に削減することができ、階段の施工に要する時間やコストを抑えることができる階段の施工方法を提供することが可能になる。また、この施工方法に好適に用いることができる階段施工用分割ユニットを提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】階段を構成する各分割ユニットを示した斜視図である。
【
図2】
図1に示した各分割ユニットのうち、第一分割ユニットを示した斜視図である。
【
図3】
図1に示した各分割ユニットのうち、第二分割ユニットを示した斜視図である。
【
図4】
図1に示した各分割ユニットのうち、第三分割ユニットを示した斜視図である。
【
図5】左右の壁面にレールを固定した状態を示した斜視図である。
【
図6】左右のレールに第一分割ユニットを載せる様子を示した斜視図である。
【
図7】左右のレールに第一分割ユニットを載せた後の状態を示した斜視図である。
【
図8】左右のレールに第二分割ユニットを載せる様子を示した斜視図である。
【
図9】左右のレールに第二分割ユニットを載せた後の状態を示した斜視図である。
【
図10】左右のレールに第三分割ユニットを載せる様子を示した斜視図である。
【
図11】左右のレールに第三分割ユニットを載せた後の状態を示した斜視図である。
【
図12】レールに第三分割ユニットを載せる様子を示した側面図である。
【
図13】レールに第三分割ユニットを載せた後の状態を示した側面図である。
【
図14】巾木等を取り付ける様子を示した斜視図である。
【
図17】分割ユニットの変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.本発明の階段の施工方法の概要
本発明の階段の施工方法の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで一例であり、本発明の施工方法の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の施工方法には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0019】
図1は、階段1を構成する各分割ユニット10を示した斜視図である。
図1では、図示の便宜上、左右一対の壁面2,3のうち、紙面に向かって手前側となる壁面3(右側の壁面3)を破線で示している。壁面3を破線で示していることについては、後掲する
図5~11、
図14及び
図15でも同様である。
【0020】
本発明の施工方法は、
図1に示すように、左右の壁面2,3間に階段1を施工するものとなっている。階段1は、上下に分割された複数の分割ユニット10によって構成されており、これらの分割ユニット10を、壁面2,3に固定された左右一対のレール20に載せていくことによって施工される。それぞれの分割ユニット10は、左右一対の壁面2,3の間に施工されるため、各分割ユニット10の左右幅(一対の側板10cの外面の間隔)は、壁面2,3の内幅よりも僅かに小さく(通常、10mm前後小さく)設定されている。
【0021】
図2、
図3及び
図4は、
図1に示した各分割ユニット10のうち、第一分割ユニット11、第二分割ユニット12及び第三分割ユニット13をそれぞれ示した斜視図である。それぞれの分割ユニット10は、
図2~4に示すように、複数段分の踏み板10a及び蹴込み板10bと、左右一対の側板10cとで構成されている。これらの分割ユニット10は、工場で組み立てられ、その組み立てられた状態で現場に搬入されて施工される。
【0022】
このように、複数段分の踏板10a及び蹴込板10bと、左右一対の側板10cとを、工場で予め組み立てておき、分割ユニット10単位で搬入及び施工することによって、現場での作業を減らすことが可能になる。例えば、踏み板10aや蹴込み板10bの寸法等を現場で調整する必要がなくなる。加えて、レール20を使用することによって、踏み板10aごとに墨出しを行う必要が無くなり、レール20の傾斜角度及び位置を定めるのに必要な箇所についてのみ墨出しを行えば足りる。
【0023】
このため、本発明の施工方法では、現場での作業を大幅に削減することが可能である。具体的には、従来には、丸1日から1日半を要していた階段1の施工を、本発明の施工方法では、2~3時間程度で終えることも可能である。したがって、階段1の施工に要する時間やコストを削減することができる。
【0024】
それぞれの分割ユニット10を構成する踏み板10a、蹴込み板10b及び側板10cは、通常、木板(木製の板材)とされる。本実施形態の施工方法においては、踏み板10a、蹴込み板10b及び側板10cを集成材としている。また、レール20も、木材(木製の長手材)とされる。これにより、壁面2,3に対するレール20の固定や、レール20に対する分割ユニット10の固定や、分割ユニット10同士の固定をビス打ち又は釘打ちで行うことが可能となっている。
【0025】
階段1の各段の段差(ある踏板10aから次の段の踏み板10aまでの高さ)は、階段1の施工場所や種類等に応じて適宜決定される。しかし、一般的な家屋の階段1では、15~25cm程度の段差を10~20段程度設けることが多く、通常は、18~22cm程度の段差を12~16段程度設けることが多い。本実施形態の施工方法で施工される階段1は、上段框50で形成される最上段を含めて計14段となっており、全ての段の段差を約20.8cmで統一(均等割り)している。
【0026】
それぞれの分割ユニット10の段数(踏み板10aの数)は、2段以上とされる。具体的な段数は、各段の段差によっても異なり、特に限定されない。しかし、それぞれの分割ユニット10の段数を少なくしすぎると、1箇所の階段1(1階分の階段1)を施工するのに必要な分割ユニット10の個数が増大して、その分、分割ユニット10の設置等に手間を要するようになる。このため、それぞれの分割ユニット10の段数は、3段以上とすることが好ましく、4段以上とすることがより好ましい。
【0027】
ただし、それぞれの分割ユニット10の段数(踏み板10aの数)を多くしすぎると、それぞれの分割ユニット10が大型化して、分割ユニット10を現場に搬入しにくくなるおそれや、分割ユニット10を施工しにくくなるおそれがある。このため、各段の段差が上述した程度であれば、それぞれの分割ユニット10の段数は、通常、10段以下とされる。それぞれの分割ユニット10の段数は、7段以下とすることが好ましく、6段以下とすることがより好ましい。
【0028】
本実施形態の施工方法では、
図1に示すように、階段1の下段部を構成する第一分割ユニット11と、階段1の中段部を構成する第二分割ユニット12と、階段1の上段部を構成する第三分割ユニット13とを用いて階段1を施工するところ、第一分割ユニット11(
図2)の段数を5段とし、第二分割ユニット12(
図3)及び第三分割ユニット13(
図4)の段数をそれぞれ4段としている。一般的な家屋の階段1を施工する場合には、このように、それぞれの分割ユニット10の段数を4~5段程度とするとよい。この程度の段数の分割ユニット10であれば、2人で施工することができる。ただし、現場によっては、1人の大工で作業しなければならない場合もある。このような場合には、それぞれの分割ユニット10をさらに2つか3つのユニットに細分化し、
図17に示すように、分割ユニット10の段数を2段程度に抑えることが好ましい。
図17は、分割ユニット10の変形例を示した斜視図である。これにより、1人でも分割ユニット10を容易に施工することが可能になる。
【0029】
1箇所の階段1を構成する分割ユニット10の個数は、2個以上とされる。具体的な個数は、階段1の施工場所や種類等に応じて異なり、特に限定されない。しかし、階段1を構成する分割ユニット10個数を少なくしすぎると、それぞれの分割ユニット10が大型化して、分割ユニット10を現場に搬入しにくくなるおそれや、分割ユニット10を施工しにくくなるおそれがある。このため、1箇所1の階段を構成する分割ユニット10の個数は、通常、3個以上とされる。
【0030】
ただし、1箇所の階段1を構成する分割ユニット10の個数を多くしすぎると、分割ユニット10の設置等に手間を要するようになる。このため、1箇所の階段1を構成する分割ユニット10の個数は、10個以下とすることが好ましい。1箇所の階段1を構成する分割ユニット10の個数は、7個以下とすることがより好ましく、5個以下とすることがさらに好ましい。既に述べたように、本発明の階段の施工方法では、1箇所の階段1を、3個の分割ユニット10(第一分割ユニット11、第二分割ユニット12及び第三分割ユニット13)で構成している。
【0031】
2.本発明の階段の施工方法の具体的な施工手順
本発明の施工方法で階段1を施工する手順を順番に説明する。
【0032】
2.1 レールの固定
図5は、左右の壁面2,3にレール20を固定した状態を示した斜視図である。まず、
図5に示すように、左右の壁面2,3のそれぞれに、階段1(
図1)の傾斜に沿った角度でレール20を固定する。壁面2,3に対するレール20の固定は、ビス打ち又は釘打ちにより行うことができる。壁面2,3に固定するそれぞれのレール20は、長手方向に分断した構造としてもよいが、本実施形態の施工方法では、それぞれのレール20を、連続した1本の角材により構成している。
【0033】
それぞれのレール20の長さL
1(後掲の
図16を参照。)は、階段1の全長L
0(後掲の
図16を参照。)によって異なり、特に限定されない。しかし、階段1の全長L
0に対して、レール20を短くしすぎると、全ての分割ユニット10をレール20で支えることができなくなる。このため、それぞれのレール20の長さL
1は、階段1の全長L
0に対する比L
1/L
0が0.5以上となる範囲で設定することが好ましい。比L
1/L
0は、0.6以上とすることがより好ましく、0.7以上とすることがさらに好ましい。比L
1/L
0は、1以下であれば、その上限を限定されないが、通常、0.95以下とされる。
【0034】
それぞれのレール20の横幅(左右幅)も特に限定されない。しかし、レール20の横幅を狭くしすぎると、レール20の上側に分割ユニット10を載せにくくなる。このため、レール20の横幅は、通常、10mm以上とされる。レール20の横幅は、20mm以上であることが好ましく、30mm以上とすることがより好ましい。ただし、レール20の横幅を広くしすぎても、レール20が重くなるだけで、分割ユニット10の載せやすさには意味がない。このため、レール20の横幅は、通常、50mm以下とされる。本実施形態の施工方法において、レール20の横幅は、36mmとしている。
【0035】
また、それぞれのレール20の縦幅(上下幅)も特に限定されない。しかし、レール20の縦幅を狭くしすぎると、レール20の強度が低くなり、レール20に分割ユニット10を載せたときにレール20が折れるおそれがある。このため、レール20の縦幅は、通常、10mm以上とされる。レール20の縦幅は、30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましい。ただし、レール20の縦幅を広くしすぎると、レール20が重くなって、レール20を取り回しにくくなる。このため、レール20の縦幅は、通常、100mm以下とされる。本実施形態の施工方法において、レール20の縦幅は、60mmとしている。
【0036】
さらに、レール20の傾斜角度θ(後掲の
図16を参照。)は、階段1の傾斜角度と同じに設定される。一般的な家屋の階段1を施工する場合には、レール20の傾斜角度θは、通常、30°以上に設定される。レール20の傾斜角度θは、35°以上とすることが多く、40°以上とすることが多い。一方、レール20の傾斜角度θが大きくなりすぎる(90°に近づきすぎる)と、階段1が急になりすぎる。このため、レール20の傾斜角度θは、通常、60°以下に設定される。レール20の傾斜角度θは、55°以下とすることが多く、50°以下とすることが多い。本実施形態の施工方法において、レール20の傾斜角度θは、約45°に設定している。
【0037】
ところで、壁面2,3に対してレール20を固定する際には、通常、壁面2,3に予め墨出しを行っておく。この墨出しは、レール20の位置及び傾斜角度を特定するのに必要な箇所に行う。壁面2,3のそれぞれに対するレール20の位置及び傾斜角度は、壁面2,3のそれぞれにつき、2点に墨出しを行えば足りるが、レール20は、長尺であり、その両端部となる箇所で墨出しを行っても、中央部が下側に撓むおそれがある。このため、本実施形態の施工方法では、それぞれのレール20につき、3点(レール20の下端部付近となる箇所、レール20の中央部付近となる箇所、及び、レール20の上端部付近となる箇所)で墨出しを行っている。墨出しを行う際には、梁60に上段框50(後掲の
図16を参照。)を仮止めしておくとよい。
【0038】
2.2 分割ユニットの載置
図5に示すように、壁面2,3に対するレール20の固定を完了すると、続いて、
図6~11に示すように、レール20に対し、分割ユニット10を下側から載せていく。
図6~11は、左右のレール20に分割ユニット10を載せていく様子を示した斜視図であり、
図6は、第一分割ユニット11を載せる様子を、
図7は、第一分割ユニット11を載せた後の状態を、
図8は、第二分割ユニット12を載せる様子を、
図9は、第二分割ユニット12を載せた後の状態を、
図10は、第三分割ユニット13を載せる様子を、
図11は、第三分割ユニット13を載せた後の状態をそれぞれ示している。
【0039】
まず、
図6及び
図7に示すように、左右一対のレール20における下端部付近に、第一分割ユニット11を載せる。第一分割ユニット11は、その手前側下部を1人が両手で持ち、その奥側上部をもう1人が両手で持つことで容易に運搬することができる。第一分割ユニット11をレール20に載置する際には、第一分割ユニット11は、その側板10cの傾斜端面αを、レール20の傾斜端面βに沿わせた状態で設置される。第一分割ユニット11の最下部は、床面に当たった状態とされる。これにより、第一分割ユニット11を前後方向で位置決めできるとともに、第一分割ユニット11の傾斜角度をレール20の傾斜角度に一致させることができる。
【0040】
ただし、第一分割ユニット11の踏み板10aが水平にならない場合も生じ得る。このため、第一分割ユニット11を設置する際には、水準器等を使用して踏み板10aの水平をとる。踏み板10aが水平になっていない場合には、第一分割ユニット11とレール20との間に楔(スペーサ)を入れる等して、踏み板10aが水平となるように調整する。楔(スペーサ)は、第一分割ユニット11と壁面2,3との隙間に入れることもできる。これにより、第一分割ユニット11が左右方向にガタつきにくくすることが可能になる。第一分割ユニット11と壁面2,3との隙間には、遮音材や吸音材を入れることもできる。これらの手順は、他の分割ユニット10(第二分割ユニット12や第三分割ユニット13)を設置する場合も同様に採用することができる。
【0041】
踏み板10aが水平になったことを確認すると、第一分割ユニット11をレール20に固定する。第一分割ユニット11は、レール20の下側(傾斜端面βとは反対向きの傾斜端面の側)からビス打ち又は釘打ちすることで、レール20に対して固定することができる。
【0042】
第一分割ユニット11の設置を終えると、続いて、
図8及び
図9に示すように、左右一対のレール20における中央付近に、第二分割ユニット12を載せる。第二分割ユニット12の運搬方法や設置方法は、第一分割ユニット11のときと同様であるが、第二分割ユニット12の最下部は、第一分割ユニット11の最上部に当てられる。本実施形態の施工方法では、第一分割ユニット11の最上部に設けた切欠部10dに対して、第二分割ユニット12の最下部を嵌め込むようにしている。これにより、第一分割ユニット11の上側に隣り合った状態で、第二分割ユニット11を正確に位置決めすることができる。レール20に載置した後の第二分割ユニット11は、第二分割ユニット11の最下段部に位置する蹴込み板10bの裏面側からビス打ち又は釘打ちすることで、第一分割ユニット11の最上段部に位置する踏み板10aの奥側の端面に固定されるとともに、レール20の下側からビス打ち又は釘打ちすることで、レール20に対して固定される。
【0043】
第二分割ユニット12の設置を終えると、続いて、
図10及び
図11に示すように、左右一対のレール20における上端部付近に、第三分割ユニット13を載せる。第三分割ユニット13の運搬方法や設置方法は、第二分割ユニット11のときとほぼ同様である。第三分割ユニット13の最下部を、第二分割ユニット12の最上部に設けた切欠部10dに嵌め込む点も同様である。しかし、第三分割ユニット13の奥側上部を持ち上げる人は、下の階からだと手が届かなくなるし、上の階からだと屈まなければならなくなる。このため、第三分割ユニット13をレール20に載せる作業は、第一分割ユニット11や第二分割ユニット12の場合と比較して行いにくくなる。
【0044】
したがって、本実施形態の施工方法では、
図12に示すように、まず、第三分割ユニット13の奥側(同図の紙面に向かって右側)の角部10eをレール20の傾斜端面βに載せた後、第三分割ユニット13の手前側(同図の紙面に向かって左側)から押し上げることで、レール20に対して第三分割ユニット13の奥側の角部10eをスライドさせ、
図13に示す位置まで移動させるようにしている。
図12は、レール20に第三分割ユニット13を載せる様子を示した側面図である。
図13は、レール20に第三分割ユニット13を載せた後の状態を示した側面図である。
図12及び
図13においては、壁面2,3の図示を省略している。
【0045】
第三分割ユニット13をこのように施工することによって、
図12に示す状態となった以降は、第三分割ユニット13の奥側上部を特に手で持たなくても、第三分割ユニット13を施工することができる。この点、本実施形態の施工方法では、第三分割ユニット13の奥側の角部10eをアール状に形成しており、レール20の傾斜端面βに対して第三分割ユニット13を滑りやすくしている。レール20の傾斜端面βや第三分割ユニット13の奥側の角部10eには、低摩擦シート等を貼ることもできる。これらの構成は、第三分割ユニット13だけでなく、他の分割ユニット10(第一分割ユニット11や第二分割ユニット12)においても採用することができる。
【0046】
レール20に載置した後の第三分割ユニット13は、第三分割ユニット13の最下段部に位置する蹴込み板10bの裏面側からビス打ち又は釘打ちすることで、第二分割ユニット12の最上段部に位置する踏み板10aの奥側の端面に固定されるとともに、レール20の下側からビス打ち又は釘打ちすることで、レール20に対して固定される。
【0047】
2.3 巾木等の取り付け
レール20に全ての分割ユニット10を載せ終えると、続いて、
図14に示すように、階段1に、巾木30と最上段の蹴込み板40と上段框50を取り付ける。
図14は、階段1に巾木30等を取り付ける様子を示した斜視図である。
図14では、階段1を構成する一部の段にのみ巾木30を取り付けるように描いているが、実際には、全ての段に巾木30を取り付ける。また、
図14では、階段1における壁面2側(左側)にのみ巾木30を取り付けるように描いているが、実際には、階段1における壁面3側(右側)にも巾木30を取り付ける。
【0048】
本実施形態の施工方法において、巾木30は、側面視L字状を為す板材となっており、各段の踏み板10aの段鼻に対して手前側から水平方向に嵌合することで取り付けるようになっている。既に述べたように、各分割ユニット10と壁面2との間や、各分割ユニット10と壁面3との間には、隙間が形成されているところ、階段1の左側縁部及び右側縁部に沿って巾木30を取り付けることによって、この隙間を隠すことができる。巾木30を固定する手段は、特に限定されないが、本実施形態の施工方法では、接着剤を用いて巾木30を壁面2,3に対して固定している。
【0049】
図15は、施工後の階段1を示した斜視図であり、
図16は、施工後の階段1を示した側面図である。
図15及び
図16に示すように、最上段の蹴込み板40は、第三分割ユニット13と梁60との隙間に挿し込まれる。蹴込み板40は、その裏面側からビス打ち又は釘打ちすることによって、第三分割ユニット13の踏み板10aにおける奥側の端面に固定される。蹴込み板40と梁60との間には、10mm前後の隙間が形成される設定となっている。この隙間が無いと、第三分割ユニット13を梁60のギリギリ手前まで位置させる必要があり、
図10に示すように、第二分割ユニット12の上側に第三分割ユニット13を設置する際に、第三分割ユニット13がはり0に干渉して設置しにくくなるおそれがあるからである。
【0050】
最上段の蹴込み板40を固定すると、その上側から上段框50を被せ、上段框50を梁60等に固定する。上段框50の下面側には、凹部が形成されており、この凹部に、蹴込み板40の上端部を嵌め込むことができるようになっている。梁60等に対する上段框50の固定は、ビス打ち又は釘打ちによって行われる。上段框50の固定を終えると、階段1の施工が完了する。蹴込み板40等に滑り止めや仕上げを施す必要がある場合には、別途行う。
【0051】
2.4 まとめ
以上のように、本実施形態の施工方法では、非常に少ない工数で階段1を施工できるようになっており、階段1の施工に要する時間やコストを大幅に削減することができる。以上で説明した全ての手順は、2~3時間程度で終えることも可能である。加えて、各分割ユニット10は、工場で組み立てれたものであり、寸法精度が高い。このため、職人の腕に左右されない高品質な階段1を施工することも可能である。本発明の施工方法は、曲がり階段を施工する場合に採用することもできるが、直階段を施工する場合に採用すると好適である。
【符号の説明】
【0052】
1 階段
2 左側の壁面
3 右側の壁面
10 分割ユニット
10a 踏み板
10b 蹴込み板
10c 側板
10d 切欠部
10e 奥側の角部
11 第一分割ユニット
12 第二分割ユニット
13 第三分割ユニット
20 レール
30 巾木
40 最上段の蹴込み板
50 上段框
60 梁