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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011027
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】聴診システム、聴診器、及び、方法
(51)【国際特許分類】
   G10L 25/66 20130101AFI20220107BHJP
   A61B 7/04 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G10L25/66
A61B7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111885
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】河村 文昭
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】村田 稔
(57)【要約】
【課題】容易に、安定した聴診音が採取可能な手段を提供すること。
【解決手段】聴診システムは、聴診音を採取するためのセンサーと、制御部と、を備える。制御部は、センサーにより採取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較する。制御部は、比較結果に基づいて、身体の状態を判断する。所定の聴診音波形は、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形である。また、所定の聴診音波形は、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴診音を採取するためのセンサーと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記センサーにより採取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較し、
比較結果に基づいて、身体の状態を判断することを特徴とする聴診システム。
【請求項2】
前記制御部は、
聴診音波形に基づいて、時間対振幅の推移を示すエネルギートレンドデータを作成し、
エネルギートレンドデータのピークにマークを打ち、マークの間隔から、聴診音波形の周期を取得することを特徴とする請求項1に記載の聴診システム。
【請求項3】
前記制御部は、
エネルギートレンドデータのピークを中心とする、前後に1周期の1/2の区間における聴診音波形データ、又は、聴診音波形に基づくデータを、採取聴診音波形として、又は、所定の聴診音波形の取得に用いることを特徴とする請求項2に聴診システム。
【請求項4】
前記制御部は、
エネルギートレンドデータのピークを中心として、前後に1周期の1/2の区間における聴診音波形データ、又は、聴診音波形に基づくデータを、所定回数重ね書きしたデータを、採取聴診音波形として、又は、所定の聴診音波形の取得に用いることを特徴とする請求項2に聴診システム。
【請求項5】
前記制御部は、聴診音波形の実効値、又は、STFT(Short-time Fourier transform)した後の、全周波数エネルギーの和、又は、二乗平均を足し合わせることで、エネルギートレンドデータを作成することを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の聴診システム。
【請求項6】
前記制御部は、聴診音波形に基づくデータとして、聴診音波形を、FFT(Fast Fourier transform)、又は、MFCC(Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)したデータを用いることを特徴とする請求項3又は4に記載の聴診システム。
【請求項7】
所定の聴診音波形は、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の聴診システム。
【請求項8】
前記制御部は、採取聴診音波形が、所定の聴診音波形に対して変化している場合、医療機関の受診を促す旨を報知することを特徴とする請求項7に記載の聴診システム。
【請求項9】
所定の聴診音波形は、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の聴診システム。
【請求項10】
前記制御部は、判断した身体の状態を報知することを特徴とする請求項1に記載の聴診システム。
【請求項11】
前記制御部は、判断した身体の状態に基づいて、医療機関の受診の要否を判断することを特徴とする請求項1に記載の聴診システム。
【請求項12】
前記制御部は、判断した医療機関の受診の要否を報知することを特徴とする請求項11に記載の聴診システム。
【請求項13】
所定の聴診音波形は、機械学習により学習モデルが作成され、取得されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の聴診システム。
【請求項14】
所定の聴診音波形は、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形と、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形と、であり、
前記制御部は、
採取聴診音波形と、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形と、を比較し、
採取聴診音波形が、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形に対して変化している場合、採取聴診音波形と、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形と、を比較することを特徴とする請求項1に記載の聴診システム
【請求項15】
前記制御部は、採取聴診音波形と、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形と、が類似している場合、身体の異常を報知することを特徴とする請求項14に記載の聴診システム。
【請求項16】
前記制御部は、採取聴診音波形と、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形と、が類似している場合、医療機関の受診を促す旨を報知することを特徴とする請求項14又は15に記載の聴診システム。
【請求項17】
聴診音を採取するためのセンサーと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記センサーにより採取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較し、
比較結果に基づいて、身体の状態を判断することを特徴とする聴診器。
【請求項18】
センサーにより採取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較し、
比較結果に基づいて、身体の状態を判断することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴診システム、聴診器、及び、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
聴診器の中には、マイク等のセンサーにより電子的に心音等の音を採取し、採取した音を増幅し、増幅した音を医師等に聴取させる、いわゆる電子聴診器と呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照。)。電子聴診器により取得された音は、例えば、周波数解析が行われる場合がある。特許文献2には、以下の記載がある。「テレビ電話などを用いた遠隔診療において、聴診器による診断を行う場合、マイクロフォンを内蔵したチェストピースを有する聴診器を患者自身が自己の身体に接触させて、心音などをマイクロフォンで電気信号に変換し、これを通信により遠隔の医師に送信するという方法が用いられる。しかし、患者は聴診器の使用に慣れておらず、チェストピースが体表面に適切に接触できていないことがある。このような場合、従来の聴診器では、遠隔の映像からの視覚情報を見て、チェストピースが体に接触しているかどうかを医師が判断をすることは非常に困難であり、チェストピースが体表面に適切に接触していないことによる誤診を招く恐れがあった。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-242849号公報
【特許文献2】国際公開2017/159752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献2に記載の課題の他、従来の聴診器においては、聴診器を操作し、聴診するユーザーの技量により、身体の状態変化の判断が行われているため、遠隔医療(診療)、在宅医療において、個人が、聴診器で心音等を測定した場合、身体の状態の変化を判断する難易度が高いという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、容易に、身体の状態の変化を判断可能な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の聴診システムは、聴診音を採取するためのセンサーと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記センサーにより採取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較し、比較結果に基づいて、身体の状態を判断することを特徴とする。
【0007】
本発明では、制御部は、センサーにより聴取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較し、比較結果に基づいて、身体の状態を判断する。例えば、「所定の聴診波形」として、聴診音が採取されるユーザーの過去の聴診音波形を用いれば、過去のユーザーの身体に関する聴診音波形との比較を行うことができるため、過去の身体の状態に対する現在の身体の状態の変化を判断することができる。これにより、過去の身体の状態に対する現在の身体の状態の変化が判断されるため、判断結果に基づいて、ユーザーは、容易に、身体の状態の変化を判断することができる。
【0008】
第2の発明の聴診システムは、第1の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、聴診音波形に基づいて、時間対振幅の推移を示すエネルギートレンドデータを作成し、エネルギートレンドデータのピークにマークを打ち、マークの間隔から、聴診音波形の周期を取得することを特徴とする。
【0009】
第3の発明の聴診システムは、第2の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、
エネルギートレンドデータのピークを中心とする、前後に1周期の1/2の区間における聴診音波形データ、又は、聴診音波形に基づくデータを、採取聴診音波形として、又は、所定の聴診音波形の取得に用いることを特徴とする。
【0010】
第4の発明の聴診システムは、第2の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、エネルギートレンドデータのピークを中心として、前後に1周期の1/2の区間における聴診音波形データ、又は、聴診音波形に基づくデータを、所定回数重ね書きしたデータを、採取聴診音波形として、又は、所定の聴診音波形の取得に用いることを特徴とする。
【0011】
聴診音波形が、例えば、心音波形である場合、周期信号であるため、測定ばらつきがある。このため、本発明では、制御部は、エネルギートレンドデータのピークを中心として、前後に1周期の1/2の区間における聴診音波形データ、又は、聴診音波形に基づくデータを、所定回数重ね書きしたデータを、採取聴診音波形として、又は、所定の聴診音波形の取得に用いる。これにより、測定ばらつきを丸めこむことができる
【0012】
第5の発明の聴診システムは、第2~第4のいずれかの発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、聴診音波形の実効値、又は、STFT(Short-time Fourier transform)した後の、全周波数エネルギーの和、又は、二乗平均を足し合わせることで、エネルギートレンドデータを作成することを特徴とする。
【0013】
第6の発明の聴診システムは、第3又は第4の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、聴診音波形に基づくデータとして、聴診音波形を、FFT(Fast Fourier transform)、又は、MFCC(Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)したデータを用いることを特徴とする。
【0014】
第7の発明の聴診システムは、第1~第6のいずれかの発明の聴診システムにおいて、所定の聴診音波形は、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形であることを特徴とする。
【0015】
第8の発明の聴診システムは、第7の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、採取聴診音波形が、所定の聴診音波形に対して変化している場合、医療機関の受診を促す旨を報知することを特徴とする。
【0016】
第9の発明の聴診システムは、第1~第6のいずれかの発明の聴診システムにおいて、所定の聴診音波形は、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形であることを特徴とする。
【0017】
第10の発明の聴診システムは、第1の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、判断した身体の状態を報知することを特徴とする。
【0018】
第11の発明の聴診システムは、第1の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、判断した身体の状態に基づいて、医療機関の受診の要否を判断することを特徴とする。
【0019】
第12の発明の聴診システムは、第11の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、判断した医療機関の受診の要否を報知することを特徴とする。
【0020】
第13の発明の聴診システムは、第1~第12のいずれかの発明の聴診システムにおいて、所定の聴診音波形は、機械学習により学習モデルが作成され、取得されていることを特徴とする。
【0021】
第14の発明の聴診システムは、第1の発明の聴診システムにおいて、所定の聴診音波形は、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形と、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形と、であり、前記制御部は、採取聴診音波形と、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形と、を比較し、採取聴診音波形が、聴診音が採取されるユーザーの聴診音に基づく波形に対して変化している場合、採取聴診音波形と、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形と、を比較することを特徴とする。
【0022】
第15の発明の聴診システムは、第14の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、採取聴診音波形と、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形と、が類似している場合、身体の異常を報知することを特徴とする。
【0023】
第16の発明の聴診システムは、第14又は第15の発明の聴診システムにおいて、前記制御部は、採取聴診音波形と、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形と、が類似している場合、医療機関の受診を促す旨を報知することを特徴とする。
【0024】
第17の発明の聴診器は、聴診音を採取するためのセンサーと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記センサーにより採取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較し、比較結果に基づいて、身体の状態を判断することを特徴とする。
【0025】
第18の発明の方法は、センサーにより採取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較し、比較結果に基づいて、身体の状態を判断することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、ユーザーは、容易に、身体の状態の変化を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】心音波形の一例を示す図である。
図2】実波形、STFTデータ、及び、エネルギートレンドデータの一例を示す図である。
図3】エネルギートレンドデータの一例を示す図である。
図4】(a)は、波形の切り取りを説明するための図である。(b)は、信号処理後の図である。
図5】(c)は、機械学習による分類、学習モデル作成を説明するための図である。
図6】学習モデルを用いた分類判定を説明するための図である。
図7】聴診システムの処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る聴診システムは、例えば、聴診器と、スマートフォンと、から構成される。聴診システムでは、聴診器により採取された聴診音(例えば、心音)が、スマートフォンに送信され、スマートフォンにおいて、聴診音の解析等が行われる。なお、聴診システムは、聴診器のみから構成されていてもよい。また、聴診音の解析等を行う機器は、スマートフォンでなくてもよく、専用の機器等であってもよい。
【0029】
聴診器は、聴診音が採取される人体と接触する接触面である下面に、聴診音を採取するためのセンサーを備える。センサーは、例えば、ダイアフラムと、ダイアフラムに貼り付けられたピエゾ素子と、から構成される。また、センサーは、例えば、ダイアフラムと、マイクと、から構成される。また、センサーは、例えば、マイクである。センサーにより採取された聴診音は、スマートフォンに送信される。
【0030】
スマートフォンは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の制御部を備えている。なお、以下で説明する処理等は、基本的に制御部によって実行されるが、「制御部は、~する。」という「~する」処理において、「制御部は」の文言を省略している場合がある。スマートフォンの制御部は、聴診器から送信される、センサーにより採取された採取聴診音波形(以下、「テストデータ」ともいう。)と、所定の聴診音波形と、を比較し、比較結果に基づいて、身体の状態を判断する。所定の聴診音波形は、例えば、機械学習により取得されたデータ(以下、「学習データ」ともいう。)である。学習データは、例えば、聴診音が採取されるユーザーの過去に採取された聴診音に基づく波形である。制御部は、テストデータが、学習データに対して変化している場合、身体の状態が変化していると判断し、例えば、スマートフォンの表示画面により、医療機関の受診を促す旨を報知する。このとき、制御部は、身体の状態が変化していることを報知してもよい。
【0031】
また、学習データは、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形である。例えば、聴診音が、心音である場合、学習データは、典型的な心疾患の波形である。制御部は、テストデータが、学習データに類似している場合、心疾患の疑いがあると判断し、例えば、スマートフォンの表示画面により、医療機関の受診を促す旨を報知する。このとき、制御部は、疑いのある心疾患名を報知してもよい。このように、制御部は、身体の状態を判断し、判断した身体の状態に基づいて、医療機関の受診の要否を判断する。制御部は、医療機関の受診が不要と判断した場合であっても、その旨を報知するようになっていてもよい。
【0032】
なお、各種の報知は、スマートフォンの表示画面により行われていてもよいし、他の表示で行われてもよい。また、「音」により報知されるようになっていてもよい。
【0033】
次に、聴診音を機械学習に取り込むための方法について説明する。以下の手順で、心音(聴診音)の同期と間隔の掌握を行い、対象の心音の切り取りと機械学習による比較とを行う。
【0034】
(1)心音波形をセンサーで採取する。図1に、心音波形の一例を示す。
(2)波形の実効値、又は、STFT(Short-time Fourier transform)した後の全周波数のエネルギー(和、又は、二乗平均)を足し合わせ、時間対振幅の推移を示すエネルギートレンドデータを作成する。図2に、実波形、STFTデータ、及び、エネルギートレンドデータの一例を示す。図2では、図1における鎖線、及び、一点鎖線の領域における実波形、STFTデータ、及び、エネルギートレンドデータが示されている。
(3)エネルギートレンドデータのピークにマークを打ち、マークの間隔から心拍同期の時間位置と心拍の周期Tを採取する。図3に、エネルギートレンドデータの一例を示す。なお、図では、センサーから採取した心音が示されており、I音に大きなピークが確認できる。
(4)周期を測定した区間について、ピークを中心として、前後に周期Tの1/2の時間で、心音波形を切り取る。図4(a)に、波形の切り取りを説明するための図を示す。
(5)切り取った区間の心音を、FFT(Fast Fourier transform)、MFCC(Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)、又は、波形そのままの形で、学習データ、又は、テストデータとして取得する。又は、心音は、周期信号であるため、測定ばらつきを丸め込むため、所定回数(例えば、10回)の波形を重ね書きしたものを、学習データ、又は、テストデータとして取得する。図4(b)に、信号処理後の図を示す。図5(c)に、機械学習による分類、学習モデル作成を説明するための図を示す。
(6)例えば、(5)で採取した過去の健康時のデータを学習データとして、定期的に(例えば、毎日)採取される心音をテストデータとして採取する。
(7)例えば、毎日採取される心音(テストデータ)と、学習データと、において、著しい変化が起こった場合、学習データとの類似性がなくなるため、異常として判定する。図6に、学習モデルを用いた分類判定を説明するための図を示す。
(8)類似性がない場合、異常を疑い、毎日採取される心音(テストデータ)と心音異常波形の学習モデル(学習データ)との類似性を確認する。類似性があれば、その近い心疾患について表示(報知)の上、医師の診療を促す。
(9)希望波形、異常波形ともに類似性がない場合、異常フラグを記録し、医師の診療を促す。
【0035】
以下、聴診システムの処理動作を、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、制御部は、初期学習モードであるか否かを判断する(S1)。初期学習モードは、ユーザーの健康時の聴診音(例えば、心音)を学習するためのモードである。制御部は、初期学習モードであると判断した場合(S1:Yes)、センサーによる聴診音を取得する(S2)。次に、制御部は、取得した聴診音波形に対して、前処理を行い、前処理を行った聴診音波形データ、又は、前処理を行わずに、前処理を行っていない聴診音波形データを取得する(S3)。次に、制御部は、S3で取得した聴診音波形データの学習を行う(S4)。次に、制御部は、規定数の学習を完了したか否かを判断する(S5)。制御部は、規定数の学習を完了していないと判断した場合(S5:No)、S2の処理を行う。制御部は、規定数の学習を完了したと判断した場合(S5:Yes)、初期学習モードを終了する。
【0036】
制御部は、初期学習モードでないと判断した場合(S1:No)、センサーによる聴診音を取得する(S6)。次に、制御部は、取得した聴診音波形に対して、前処理を行い、前処理を行った聴診音波形データ(テストデータ)、又は、前処理を行わずに、前処理を行っていない聴診音波形データ(テストデータ)を取得する(S7)。次に、制御部は、学習データを読み出す(S8)。ここでの学習データは、聴診音が採取されるユーザーの過去に採取された聴診音に基づく波形(健康時)である。言い換えれば、初期学習モードで学習された学習データである。
【0037】
次に、制御部は、テストデータと学習データとに、顕著な差異があるか否かを判断する(S9)。制御部は、テストデータと学習データとに、顕著な差異がないと判断した場合(S9:No)、処理を終了する。制御部は、テストデータと学習データとに、顕著な差異があると判断した場合(S9:Yes)、異常フラグを立てる(S10)。次に、制御部は、学習データを読み出す(S11)。ここでの学習データは、複数人において特徴が共通する、身体の状態が異常な聴診音の波形(例えば、典型的な心疾患の波形)である。
【0038】
次に、制御部は、テストデータと学習データとが類似しているか否か、例えば、テストデータが、典型的な心疾患の波形と類似しているか否かを判断する(S12)。制御部は、テストデータと学習データとが類似している、例えば、テストデータが、典型的な心疾患の波形と類似していると判断した場合(S12:Yes)、類似する疾患名を記録し(S13)、医療機関の受診を推奨する旨を表示し(S14)、処理を終了する。制御部は、テストデータと学習データとが類似していない、例えば、テストデータが、典型的な心疾患の波形と類似していないと判断した場合(S12:No)、医療機関の受診を推奨する旨を表示し(S14)、処理を終了する。
【0039】
なお、聴診システムが、聴診器のみで構成される場合、聴診器には、CPU等の制御部が設けられ、制御部は、図7に示す処理動作を含む、上述した処理を行う。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、制御部は、センサーにより聴取された採取聴診音波形と、所定の聴診音波形と、を比較し、比較結果に基づいて、身体の状態を判断する。例えば、「所定の聴診波形」として、聴診音が採取されるユーザーの過去の聴診音波形を用いれば、過去のユーザーの身体に関する聴診音波形との比較を行うことができるため、過去の身体の状態に対する現在の身体の状態の変化を判断することができる。これにより、過去の身体の状態に対する現在の身体の状態の変化が判断されるため、判断結果に基づいて、ユーザーは、容易に、身体の状態の変化を判断することができる。
【0041】
また、聴診音波形が、例えば、心音波形である場合、周期信号であるため、測定ばらつきがある。このため、本実施形態では、制御部は、エネルギートレンドデータのピークを中心として、前後に1周期の1/2の区間における聴診音波形データ、又は、聴診音波形に基づくデータを、所定回数重ね書きしたデータを、採取聴診音波形として、又は、所定の聴診音波形の取得に用いる。これにより、測定ばらつきを丸めこむことができる。なお、国際公開2018/117171号公報には、「所定回数重ね書きしたデータ」を用いることについて、記載も示唆もないことに留意されたい。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、聴診システム、聴診器、及び、方法に好適に採用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7