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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110343
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】製氷器
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/24 20180101AFI20220722BHJP
【FI】
F25C1/24 304
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005676
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】加納 博明
(72)【発明者】
【氏名】村上 正昭
(57)【要約】
【課題】氷の継ぎ目が目立たず、また型を断熱容器から分離しやすい製氷機を提供する。
【解決手段】垂直方向の断面に沿って少なくとも2つに分割可能で、氷の形状を画する空間部2が内部に形成された型1と、上端に開口部13を有し、該開口部から型を挿入して収納可能な断熱容器10と、を含み、型は、断熱容器に挿入される側の端部を下端部とし、該下端部の反対側の端部を上端部とし、上端部の端縁から開口部よりも外側にはみ出す様に形成された断熱容器に収納されない保持部5を有し、上端部に空間部と外部を連通する注水孔3を有し、下端部に空間部と外部を連通する不純物移動孔4を有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向の断面に沿って少なくとも2つに分割可能で、氷の形状を画する空間部が内部に形成された型と、
上端に開口部を有し、該開口部から前記型を挿入して収納可能な断熱容器と、を含み、
前記型は、前記断熱容器に挿入される側の端部を下端部とし、該下端部の反対側の端部を上端部とし、前記上端部の端縁から前記開口部よりも外側にはみ出す様に形成された前記断熱容器に収納されない保持部を有し、
前記上端部に前記空間部と外部を連通する注水孔を有し、
前記下端部に前記空間部と外部を連通する不純物移動孔を有していることを特徴とする製氷器。
【請求項2】
前記型と前記断熱容器の横断面の形状が円であることを特徴とする請求項1に記載の製氷器。
【請求項3】
前記型の外周面に、前記上端部側で周長が大きくなるようなテーパーが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の製氷器。
【請求項4】
前記型を前記断熱容器に収納したとき、前記型の外側面と前記断熱容器の内側面が少なくとも一部で密接する態様であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の製氷器。
【請求項5】
前記上端部の、前記注水孔の周辺が漏斗状に陥没した形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の製氷器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷器に関し、特に透明氷が作成可能で、氷を作る型と断熱容器が外しやすい製氷器に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な氷を作成する製氷器として、内部に多面体や球形等の空間を有するとともに、上下に水が移動可能な孔を設けた、上下2分割の型と断熱容器を用いる構造の製氷器が知られている(特許文献1、特許文献2)。この製氷器は、型を断熱容器に挿入後、型上部の孔から水を注入、冷蔵庫の製氷室に入れ、内部の水を上方からゆっくり凍らせながら、水に含まれる不純物を型下部の孔から断熱容器に移動させ、完全に凍った後、型と断熱容器を分離させ、型を開くことにより、透明な氷を取り出すものである。
【0003】
ところで、水は氷になると、約10%の体積膨張が発生する。水を注入した型上部の孔付近が先に凍るので、型上部の孔から水や氷が出ることは殆どない。その結果、型が上下に分割されていることにより、大きな継ぎ目のある氷が出来やすく、また型が内部から膨張することにより断熱容器に押し付けられてしまい、型の分離がしにくくなるという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-156173号公報
【特許文献2】特許第4679766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、氷の継ぎ目が目立たず、また型を断熱容器から分離しやすい製氷機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、
垂直方向の断面に沿って少なくとも2つに分割可能で、氷の形状を画する空間部が内部に形成された型と、
上端に開口部を有し、該開口部から前記型を挿入して収納可能な断熱容器と、を含み、
前記型は、前記断熱容器に挿入される側の端部を下端部とし、該下端部の反対側の端部を上端部とし、前記上端部の端縁から前記開口部よりも外側にはみ出す様に形成された前記断熱容器に収納されない保持部を有し、
前記上端部に前記空間部と外部を連通する注水孔を有し、
前記下端部に前記空間部と外部を連通する不純物移動孔を有していることを特徴とする製氷器である。
【0007】
上記製氷器において、前記型と前記断熱容器の横断面の形状が円であって良い。
【0008】
上記製氷器において、前記型の外周面に、前記上端部側で周長が大きくなるようなテーパーが設けられていて良い。
【0009】
上記製氷器において、前記型を前記断熱容器に収納したとき、前記型の外側面と前記断熱容器の内側面が少なくとも一部で密接する態様であって良い。
【0010】
上記製氷器において、前記上端部の、前記注水孔の周辺が漏斗状に陥没した形状であって良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、型が垂直方向の断面に沿って分割可能とされているため、製氷中に断熱容器中で型がずれ難く氷の継ぎ目が大きくならず、開口部よりも外側にはみ出して形成された保持部を利用して型を断熱容器から分離しやすい製氷器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の製氷器の型の一形態の型片の斜視図である。
図2】本発明の製氷器の型の一形態の型片の側面図である。
図3図2の型の線分AA´の部位での横断面図である。
図4】型片を組み合わせたときの横断面の模式図である。
図5】本発明の製氷器の断熱容器の一形態の側方断面図である。
図6】型を断熱容器に収納した態様の説明図である。
図7】型に注水する態様の説明図である。
図8】製氷後の型を取り出す態様の説明図である。
図9】製氷後の型から一方の型片を取り外した状態の斜視図である。
図10】別形態の型を取り出す態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0014】
図1は、本発明の製氷器の型の一形態の型片の斜視図である。また図2は側面図である。また図3は線分AA´の部位での横断面図である。また図4は2つの型片を組み合わせたときの横断面の模式図である。本実施形態の型1は、垂直方向、すなわち後述する断熱容器に収納したときの縦方向、に延びる断面で2分割可能とされている。図1は分割した型片1aを縦断面側から見たものである。なお型の分割は2分割に限られず、3分割されるようにしても良い。
【0015】
本発明の型はゴム、合成樹脂などの強度と成形性の良い材料を、モールド成形その他の公知の成形法により成形して形成される。中でもシリコーンゴムは断熱性が高く凍結が徐々に進むため、透明な氷が出来やすく好ましい。なお以下では型全体と分割された型片を、特に区別せず「型」と称することがある。
【0016】
型1は、水を収納して所望の形状の氷を形成するために空間部2を内部に有しており、本実施形態の空間部2は球形である。従って型片1aの内部には半球状の空間部2が形成されている。また型片1aの横断面は典型的には図3に示すように半円形であり、型片1aと型片1bを組み合わせた型1の横断面は典型的には図4に示すように円形である。
【0017】
また空間部2の形状は球形に限られず、型抜きしやすい形状であれば立方体、8面体、32面体(サッカーボール状)などの多面体や、円柱、楕円体、星形、ドーナツ状、あるいはこれらを組み合わせた形状などの任意の立体形状とすることができる。型抜きが可能な形状であれば動物や各種のキャラクターなどの形状も適用可能である。
【0018】
型の上端部、すなわち図2での上側となる部分は、ほぼ平坦であり、反対側の下端部は
半球状をなしている。上端部には、型片を組み合わせたときに空間部2に水を注入するための注水孔3を形成する切り欠き3aが形成され、下端部には水の凍結が進行する際に水に含まれる不純物や泡などを排出するための不純物移動孔4を形成する切り欠き4aが形成され、それぞれ空間部2と型の外部とを連通可能としている。組み合わされる2つの型は、同一の方向から見たときにはほぼ同一の形状である。
【0019】
空間部2の周縁を取り巻くように、2つの型を組み合わせたときに互いに嵌め合いとなるように、縦断面から突出した稜部7aと陥没した溝部7bが形成されている。また同様に互いに嵌め合いとなるように凸部8aと凹部8bが形成されている。これらにより2つの型を組み合わせたときにしっかりと一体化され、2つの型が互いにずれることがなく、また外れにくくもなるので、作成される氷に継ぎ目や段差ができにくくなり、良好な形状の氷(ここでは球形)を作成することができる。
【0020】
上端部はほぼ平坦であるが、注水孔3の周囲は、漏斗状の窪み6が形成されている。注水孔3から水を注ぎ入れるときに、水が外側に流れ落ちずに窪み6から注水孔3に集まるようにすることができる。
【0021】
上端部の上端周縁からは、保持部5がフランジ状に外側に張り出すように形成され、その外縁が後述する断熱容器の開口部よりも外側にはみ出す様に形成されている。本実施形態におけるように型1の横断面が円形であれば、保持部の外形は典型的には円形であり、型の側壁面9から張り出した円盤状の形状である。保持部5が形成されていることにより、型1を後述する断熱容器に収納して氷を作成した後に断熱容器から取り出す際に、保持部5を掴んで型1を取り出すことができる。
【0022】
また型1の横断面が円形であれば、保持部5を保持して型1を捩じって回転させるようにして断熱容器から取り出すことができるため、取出しがより容易である。保持部の外形は円形以外にも、多角形状とすることもできる。多角形状とすると捩じる際の引っ掛かりができるため、型1がより取り出しやすい。
【0023】
図5は本発明の製氷器の断熱容器の一形態の側方断面図である。断熱容器10は上部の開口部13から型1を挿入して、内部に収納することができるコップ状の容器である。断熱容器10は断熱性を有する素材、例えば発泡スチロール、発泡プラスチック、発泡パルプ、コルク、フェルト、ガラス繊維、木材などの熱伝導性の低い素材を単独で、または組み合わせて形成することができるが、熱伝導性の低い素材であって型を分離する際にしっかりと掴むことができる強度を有していれば特に制限はない。
【0024】
またこれ以外の構成としても良く、例えば図10に示す例は、金属製の外壁11と内壁12の間に空間を設けた二重容器として、間の空間を真空状態として断熱性の容器としたものである。底面に外壁11と内壁12の間の空間を気密に保つ栓14が設けられている。
【0025】
本実施形態の製氷器を用いて球状の氷を作成する手順を説明する。
まず、断熱容器10に半分程度の水15を入れ、型1を開口部から挿入してセットする(図6)。このとき、型1の下端部の不純物移動孔4から水15が空間部2に入ってくるが、特に差支えはない。
【0026】
次いで、注水孔3から、空間部2が水で満たされるまで水15を注入する(図7)。
水を満たした製氷器を冷凍庫に入れる。冷凍時間は例えば10数時間程度である。すると水15は冷凍庫の冷気が直接当たる上端部側から徐々に凍結して氷となり、断熱容器10に覆われた下端部側は凍結が遅くなる。その過程で、水15に含まれた不純物や空気が徐
々に凍結していない水の部分に移行してゆくことで、下端部の不純物移動孔4から型1の外部に押し出されるため、空間部2に透明な球状の氷16が作成できる。
【0027】
このとき、型1の外側面と断熱容器10の内側面が、少なくともその一部で密接されるような形状とすると、追加して注入した水が密接した部分でせき止められて開口部側に上がって来てあふれるようなことがなく、また冷凍庫に入れたときに冷気が型1の下端部側に侵入せず、上端部側からの凍結が好適に進行するため好ましい。また型が垂直方向に分割されているため、凍結に伴い氷の体積が膨張しても断熱容器10で規制されて型片が離れ難く、継ぎ目などができにくい。
【0028】
空間部2の水が完全に凍結した後、さらに断熱容器10の底部側の水が凍結してゆくと、体積が膨張することで型1が開口部側に押し上げられることがあるが、空間部2の水はこのときほとんど氷になっているので継ぎ目ができるなどといった影響は少ない。逆に、保持部5が断熱容器の開口部の縁から持ち上げられた態様となり、型1を分離しやすくなることがある。
【0029】
型内部の水が完全に凍結したら製氷器を冷凍庫から取り出し、型1を断熱容器10から取り出して分離する。このとき型1の外側の、断熱容器10の底部側の水は完全には凍結していなくても良い。分離の際、断熱容器10の開口部13よりも外側に張り出して持ちやすくなっている保持部5を持って容易に取り出すことができ、さらに型1の横断面が円形であれば、左右に捩じることができて型1がより分離しやすくなる(図8)。
【0030】
取り出した型1から、一方の型片を取り外すと、図9に示す様に球形の氷16が現れる。このとき、不純物移動孔4の部分の氷が余分に形成されているが、微小で単純な形状であるので容易に削り落とすことができる。断熱容器10に残った氷または水は廃棄される。以上の様にして、透明で球形の氷16が得られる。空間部2の形状が球形以外の場合であっても、手順は基本的に同一である。
【0031】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて変更を加えることが可能である。図10は、本発明の製氷器において、型を別形態としたときの、型を取り出す態様の説明図である。本実施形態の型20は、側壁面9が上端部側で周長が大きくなるようにテーパーが設けられている。
【0032】
このような形状とすると、冷凍庫での製氷の際に、凍結が進んで型20の外側の断熱容器10内の水15が凍結することで、前述のように体積が膨張した氷16となり、型20を開口部側に押し上げる(点線で示す型20)。するとテーパーのある側壁面の部位9´では、型20が断熱容器10の内壁12から自然に分離される。その結果、型20を断熱容器10から分離して取り出すのがより容易に行えるという効果が得られる。このとき、型20のテーパーの形状に合わせて断熱容器の内壁12にもテーパーを設けても良い。
【0033】
以上説明したように、本発明の製氷器によれば、継ぎ目の目立たない所望の形状の氷が作成でき、また製氷用の型を断熱容器から取り出すのが容易な製氷器が得られる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・型
1a、1b・・・型片
2・・・空間部
3・・・注水孔
4・・・不純物移動孔
5・・・保持部
6・・・窪み
7a・・・稜部
7b・・・溝部
8a・・・凸部
8b・・・凹部
9・・・側壁面
10・・・断熱容器
11・・・外壁
12・・・内壁
13・・・開口部
14・・・栓
15・・・水
16・・・氷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10