(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110356
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】切断用定規
(51)【国際特許分類】
B26D 7/01 20060101AFI20220722BHJP
B27B 9/04 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B26D7/01 C
B27B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005695
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】591073050
【氏名又は名称】シンワ測定株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 翔
【テーマコード(参考)】
3C021
【Fターム(参考)】
3C021BB08
(57)【要約】
【課題】ガイド板と案内部との直角の設定を容易に行うことができる切断用定規を提供する。
【解決手段】案内面2と直交方向に設けられるガイド板4と、案内杆3の長さ方向一端側3Rに設けられるネジ本体63と、ガイド板4の長さ方向に設けられネジ本体63を案内するスライド溝6と、ガイド板4に一端側9Mを回転可能に連結すると共に、他端側を案内杆3の他端側に連結した筋交い杆9とを備える。筋交い杆9の回動時にネジ本体63を案内して案内面2をガイド板4と直交状態に保持する直交案内溝71を設けたから、案内面2とガイド板4とを直交状態にするために締付ネジ5を1点のみで固定するのではなく、直交案内溝71内において締付ネジ5を固定することにより直交状態を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断物の端面に沿って配置する案内部を有する案内杆と、使用時に前記案内部と直交方向に設けられるガイド板と、前記案内杆の長さ方向一端側に設けられるスライド部材と、前記ガイド板の長さ方向に設けられ前記スライド部材を案内するスライド溝と、前記ガイド板に一端側を回転可能に連結すると共に、他端側を前記案内杆の他端側に連結した筋交い杆とを備え、前記案内杆に設けた前記スライド部材を前記スライド溝に沿って前記筋交い杆の一端側に移動することにより前記筋交い杆を前記ガイド板側に回動する切断用定規であって、
前記スライド溝の他端側には、前記筋交い杆の回動時に前記スライド部材を案内して前記案内部を前記ガイド板と直交状態に保持する直交案内溝を設けたことを特徴とする切断用定規。
【請求項2】
前記直交案内溝は前記スライド溝の他端から該スライド溝と交差方向に設けられていることを特徴とする請求項1記載の切断用定規。
【請求項3】
前記直交案内溝の先端に、前記スライド部材を挟んで位置決めする直交案内溝先端部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の切断用定規。
【請求項4】
前記直交案内溝先端部から先端側に向かって幅が狭くなる幅狭溝が設けられていることを特徴とする請求項3記載の切断用定規。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断物の端面に沿って配置する案内部を有する案内杆と、使用時に前記案内部と直交方向に設けられるガイド板とを備えた切断用定規に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、定規体の中央部に半円形の溝孔を設け、この溝孔に螺子を介して長尺体の基端を取り付けた罫引きカッター(例えば特許文献1)がある。
【0003】
上記罫引きカッターでは、定規体の底辺に対して長尺体の角度を調整することができるが、長尺体を螺子で固定するため、定規体の底辺に対して長尺体を直角にして使用する場合、正確に直角になったか確認することが難しく、固定後にずれる虞もある。
【0004】
これに対して、本体側固定部(ガイド板に対応)に固定部回転軸を軸として回転できるような構造で被切断物側固定部(案内杆に相当)が設けられた切断用定規装置がある(例えば特許文献2)。
【0005】
上記切断用定規装置では、本体側固定部と被切断物側固定部には、角度調整棒がネジ式の本体側角度調整部とネジ式の被切断物側角度調整部によって設けられており、本体側角度調整部と被切断物側角度調整部を緩めることによって、本体側固定部と被切断物側固定部に設けた溝を任意に可動可能であり、締めることによって固定される。よって固定部回転軸を軸に本体側固定部と被切断物側固定部を任意の角度に調整、固定が可能であり、また、一番使用頻度の高い、本体側固定部と被切断物側固定部の角度が直角状態にはすぐ設定できるように本体側固定部と被切断物側固定部には直角の位置で本体側角度調整部と被切断物側角度調整部が一時止まるようにストッパが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3-99561号公報
【特許文献2】特開2005-254783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2の切断用定規装置では、被切断物側固定部を定規下部に近付けるように折り畳むことができると共に、ストッパにより本体側固定部と被切断物側固定部を直角に設定することができる。しかし、ストッパに角度調整部を当てて位置決めするため、繰り返し使用すると、ストッパと角度調整部が当たって変形したり磨耗したりして角度がずれ易くなり、また、部品点数が増加すると共に、製品コストの上昇を招くという問題もある。
【0008】
特に、被切断物側固定部を定規下部に近付けるように折り畳んだ状態(
図3)から、被切断物側固定部を開くように回転すると(
図1)、この回転に伴って被切断物側角度調整部が被切断物側固定部に沿って比較的長いストロークをスライドした後、ストッパに当たって止まるため、ストッパと角度調整部に大きな力が加わり変形し易くなる。
【0009】
解決しようとする課題は、収納性に優れ、ガイド板と案内部との直角の設定を容易に行うことができる切断用定規を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、被切断物の端面に沿って配置する案内部を有する案内杆と、使用時に前記案内部と直交方向に設けられるガイド板と、前記案内杆の長さ方向一端側に設けられるスライド部材と、前記ガイド板の長さ方向に設けられ前記スライド部材を案内するスライド溝と、前記ガイド板に一端側を回転可能に連結すると共に、他端側を前記案内杆の他端側に連結した筋交い杆とを備え、前記案内杆に設けた前記スライド部材を前記スライド溝に沿って前記筋交い杆の一端側に移動することにより前記筋交い杆を前記ガイド板側に回動する切断用定規であって、前記スライド溝の他端側には、前記筋交い杆の回動時に前記スライド部材を案内して前記案内部を前記ガイド板と直交状態に保持する直交案内溝を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、前記直交案内溝は前記スライド溝の他端から該スライド溝と交差方向に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、前記直交案内溝の先端に、前記スライド部材を挟んで位置決めする直交案内溝先端部を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、前記直交案内溝先端部から先端側に向かって幅が狭くなる幅狭溝が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、案内部とガイド板とを直交状態にするためにスライド部材を1点のみで固定するのではなく、直交案内溝内においてスライド部材を固定することにより直交状態が得られる。また、溝の加工のみで済むため、安価に製造することができる。
【0015】
請求項2の構成によれば、スライド部材をスライド溝の一端側から直交案内溝に移動するには、スライド部材をスライド溝の他端側まで移動し、この後向きを変えて直交案内溝に入れることにより、スライド部材により直交案内溝に大きな力が加わり難くなる。
【0016】
請求項3の構成によれば、直交案内溝先端部にスライド部材を合わせることにより、直交状態に設定することができ、直交案内溝内であれば、直交状態が得られるため、直交案内溝先端部にスライド部材を強く押し当てた状態で固定する必要がない。
【0017】
請求項4の構成によれば、スライド部材が移動可能な直交案内溝とスライド部材が入らない幅狭溝の境が直交案内溝先端部であるから、スライド部材が直交案内溝先端部で止まることにより、直交状態に簡便に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1を示すガイド板と案内部が直交状態の平面図である。
【
図5】同上、案内杆と筋交い杆の要部の分解斜視図である。
【
図10】同上、ガイド板と筋交い杆の長さ方向他端側の分解斜視図である。
【
図11】同上、ガイド板の長さ方向他端側の斜視図である。
【
図12】同上、直線定規として用いる場合の平面図である。
【
図13】同上、直線定規として用いる場合の底面図である。
【
図14】本発明の実施例2を示すガイド板と案内部が直交状態の平面図である。
【
図16】本発明の実施例3を示す直交案内溝周りの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0020】
本発明の実施例1を
図1~
図13を参照して説明する。切断用定規1は、アルミ製の部材などで成形したものであり、被切断物101の端面102に沿って配置する案内部たる案内面2を有する案内杆3と、直角での使用時に前記案内面2と直交方向に設けられるガイド板4と、前記案内杆3の長さ方向一端側(
図1の使用時の右端側)3Rに設けられる締付ネジ5と、前記ガイド板4の長さ方向に設けられ締付ネジ5のスライド部材たるネジ本体63(
図5)を案内するスライド溝6と、前記ガイド板4に一端側9Mを一側連結部7により回動可能に連結すると共に、他端側を前記案内杆3の他端側に他側連結部8により回動可能に連結した筋交い杆9とを備える。
【0021】
また、前記切断用定規1は、使用時位置の前記締付ネジ5を前記スライド溝6に沿って前記筋交い杆9の一端側9Mに移動することにより、該筋交い杆9を前記ガイド板4側に回動して前記筋交い杆9を前記ガイド板4に添う収納位置(
図8)にすることができると共に、前記筋交い杆9を、その他端がガイド板4から離れるように反ガイド板4側に回動して前記案内面2を前記ガイド板4と直交する使用位置(
図1)にすることができる。
【0022】
また、
図8に示す筋交い杆9の収納位置において、前記締付ネジ5を前記スライド溝6に沿ってガイド板4の長さ方向他端側に移動することにより該筋交い杆9を前記ガイド板4から離れる方向に回動して前記案内杆3を使用位置にすることができる。尚、これらの操作は、締付ネジ5を用いて操作する以外でも、案内杆3又は筋交い杆9を回動することにより操作することができる。
【0023】
前記ガイド板4は略一定幅で長さ方向(前後方向)に長く形成され、
図4などに示すように、前記ガイド板4の幅方向一側縁にガイド部たる肉厚部11を設け、その幅方向中央に前記肉厚部11に比べて薄い薄肉部12を設け、この薄肉部12の幅方向他側に段差部13を設け、段差部13から幅方向他側に、ガイド板4の下面4Kより一段高い上板部14が設けられ、この上板部14の下方に、前記筋交い杆9を収納する空間である収納部15が設けられている。
【0024】
尚、前記肉厚部11と薄肉部12の下面は面一に形成されており、それら肉厚部11と薄肉部12の下面が前記ガイド板4の下面4Kであり、この下面4Kが被切断物101の上面103に当接する。また、前記肉厚部11の上面には目盛り18が設けられている。
【0025】
図5などに示すように、前記案内杆3は、中空の角パイプ21と、この角パイプ21のパイプ上板部22を使用時の他側(後側)に延長した延長上板部23とを一体に有し、使用時に前側になる前記角パイプの一側面が、被切断物101の端面102に沿って配置する前記案内面2である。
【0026】
尚、前記パイプ上板部22と延長上板部23の上面は面一に形成され、また、前記パイプ上板部22と延長上板部23の上面に対して前記案内面2は直交して設けられている。尚、前記ガイド板4は、長さ方向一端側4Mが前側、他端側が後側である。
【0027】
前記筋交い杆9は帯板状をなし、厚さは前記段差部13の高さに対応して略同一か僅かに薄く形成されている。また、前記ガイド板4の前記上板部14の下方の前記収納部15に、前記筋交い杆9が収納可能であり、収納状態で筋交い杆9の下面と前記ガイド板4の下面4Kとは略面一となる。尚、段差部13の高さは、下面4Kに対する上板部14の下面の高さである。
【0028】
前記一側連結部7は、
図1などに示すように、前記ガイド板4の前記上板部14の一側寄り(前側寄り)に穿設した透孔16と、前記筋交い杆9の一端側9Mに穿設した透孔31と、これら透孔16,31に挿通した連結ピン32とからなり、この連結ピン32が一側連結部材である。また、
図2に示すように、前記連結ピン32の下端は前記筋交い杆9の下面に形成した凹部(図示せず)に収納されるため、連結ピン32の下端が筋交い杆9の下面から突出することが無い。
【0029】
図5などに示すように、前記他側連結部8は、前記筋交い杆9の他端側で幅方向一側(右側)に透孔34Sを穿設し、前記案内杆3の他端側で前記延長上板部23に透孔24を穿設し、これら透孔24,34Sに上面側からビス35を挿通し、この挿通したビス35の先端にウエーブワッシャ36を挿通して設けると共に、下面側からネジ止め手段41を螺合してなる。また、前記ネジ止め手段41が、前記ビス35に螺合して該ビス35を部材に取り付ける取付部材である。
【0030】
前記ビス35は前記筋交い杆9の上面に係止する頭部35Tを有し、この頭部35Tの上面中央には六角形の溝などからなる工具係合部35Kが設けられ、この工具係合部35Kに工具(図示せず)を係合して前記ビス35を回動することができる。尚、前記ビス35が他側連結部材である。
【0031】
前記ネジ止め手段41は、前記ビス35に螺合する雌螺子部42Mを基端に有する筒状の本体42と、この本体42の先端側に回動可能に連結された操作部たる操作片43とを備える。
【0032】
そして、前記本体42の先端側中央に縦溝44を形成すると共に、その本体42の両側面と前記縦溝44を挿通するピン孔45を形成し、このピン孔45に対応する透孔(図示せず)を前記操作片43の先端に設け、それらピン孔45と前記操作片43の先端の透孔に連結ピン46を挿通し、この連結ピン46を中心として前記本体42に前記操作片43を180度回動可能に連結している。
【0033】
また、前記案内杆3の一端側3Rの延長上板部23に雌螺子部25を設けている。この雌螺子部25は、前記延長上板部23に透孔を穿設すると共に、この透孔に連通する前記雌螺子部25を有するクリンチングファスナを前記延長上板部23の下面に固定してなる。
【0034】
そして、前記スライド溝6に挿通した前記締付ネジ5を前記雌螺子部25に螺合することにより、前記案内杆の一端側3Rに前記締付ネジ5が着脱可能に設けられる。また、前記締付ネジ5は、前記雌螺子部25に螺合する金属製のネジ本体63と、このネジ本体63の基端に一体に設けた操作摘み64とを備える。
【0035】
前記スライド溝6は、
図6などに示すように、前記薄肉部12に前記ガイド板4の長さ方向に沿って設けられ、長さ方向他端側が一端側よりガイド板4の幅方向他側(左側)に位置するように僅かに斜めに形成され、相互に平行に設けられた幅方向の一側縁部52と他側縁部53の間が開口している。
【0036】
図7などに示すように、前記スライド溝6の長さ方向他端側には、ガイド板4の幅方向一側向き(右側向き)の直交案内溝71が、該スライド溝6に連通すると共に交差して設けられている。この直交案内溝71は、その幅方向両側に一側縁部72と他側縁部73を有し、該直交案内溝71の基端74とこの基端74の位置より先端側の直交案内溝先端部75との間で、案内杆3に設けたネジ本体63を案内して、前記案内面2とガイド板4とを直交状態に保持し、また、前記基端74と直交案内溝先端部75の間において、縁部72,73の間隔は、前記締付ネジ5に対応する。この場合、前記間隔は前記ネジ本体63のネジ山の径に対応する。また、スライド溝6の幅は、基端74と直交案内溝先端部75の間における縁部72,73の間隔より広い。このように溝の加工のみで済むため、部品点数が増加することなく、安価に製造することができる。
【0037】
前記直交案内溝先端部75の位置から先端側は、先端側に向かって幅が狭くなる幅狭溝77が、前記直交案内溝71に連通して設けられ、その幅狭溝77の先端は半円状又は円弧状に形成されている。このように直交案内溝先端部75から先端側は幅狭溝77により幅狭に形成されているため、直交案内溝71の幅と略同一の直径を有するネジ本体63を入れることができず、直交案内溝71と幅狭溝77の境目の両縁部72,73により、スライド部材たる締付ネジ5のネジ本体63を挟んで位置決めする直交案内溝先端部75が構成されている。
【0038】
尚、前記一側縁部52と前記一側縁部72の基端74との間には、円弧部分を有する一側連結縁部52Rが設けられ、また、前記他側縁部53と他側縁部73の基端である他側縁基端部73Kとの間には、円弧部分を有する他側連結縁部53Rが設けられている。
【0039】
前記直交案内溝71の基端74と直交案内溝先端部75の間の形状は、以下のようにして決められる。一例として、CADソフトを用い、ガイド板4における一側連結部7の中心の位置、一側連結部7と他側連結部8の中心の間隔、ガイド板4に対する筋交い杆9の挟角、他側連結部8と雌螺子部25(又は雌螺子部25に螺合したネジ本体63)の中心の間隔、ガイド板4におけるスライド溝6の底部6Tの中心位置などのデータにより、筋交い杆9がガイド板4に近付く方向に回転し、且つ案内面2がガイド板4との直交を保持した場合のスライド溝6の底部6Tに位置するネジ本体63の軌跡により得られる。また、CADソフトを用いなくても、他の計算ソフトなどにより直交案内溝71の中心線を算出し、ネジ本体63の直径などから得られることは言うまでもない。尚、同様に、他側縁部73における他側縁基端部73Kと基端74の間もネジ本体63が接した状態で、前記案内面2とガイド板4とを直交状態に保持するように形成されている。
【0040】
従って、基端74と直交案内溝先端部75の間で前記直交案内溝71内にネジ本体63を位置させることにより、案内面2とガイド板4を直交状態に保持することができる。また、他側縁基端部73Kと基端74との間の他側縁部73にネジ本体63を沿わせることにより、案内面2とガイド板4を直交状態に保持することができる。即ち、基端74と直交案内溝先端部75の間ではネジ本体63は両側の縁部72,73により溝の幅方向両側から位置決めされるが、他側縁基端部73Kと基端74間にでは溝が広くなるため、直交状態を保持するには、他側縁部73にネジ本体63を沿わせる必要がある。
【0041】
そして、ワッシャ65に前記ネジ本体63を挿通し(
図5)、そのネジ本体63の先端を前記スライド溝6に挿通すると共に、前記雌螺子部25に螺合することにより、前記操作摘み64と案内杆3とに間にガイド板4の薄肉部12を挟着して案内杆3の一端側3Rをスライド溝6の所望の位置に固定することができる。
【0042】
また、前記一側連結部7と前記他側連結部8の間隔に比べて、前記一側連結部7と前記スライド溝6の底部6Tとの間隔が小さく、この間隔に比べて前記他側連結部8と前記雌螺子部25との間隔が大きい。また、この例ではガイド板4と筋交い杆9の長さは略等しく、筋交い杆9はガイド板4より僅かに短く形成されている。
【0043】
前記筋交い杆9の長さ方向中央側には、コ字形の把持部37が設けられ、この把持部37の両端の脚部38,38をネジ38N,38Nなどにより前記筋交い杆9の上面に固定している。また、筋交い杆9の下面には、前記把持部37の位置に対応して、ゴム板などを貼設して滑り止め部39を設け、この滑り止め部39の下面は前記筋交い杆9の下面より摩擦係数が大きい。尚、前記ネジ38Nの頭部は、前記筋交い杆9の下面に形成した凹部(図示せず)に収納されるため、ネジ38Nの頭部が筋交い杆9の下面から突出することが無い。
【0044】
このように把持部37を用いて被切断物101の上面103に切断用定規1を固定することができ、把持部37は、切断用定規1を前記上面103に押え付けて固定する押え部として機能する。
【0045】
また、前記ガイド板4の幅方向他側には、前記把持部37を収納する収納凹部17が切欠き形成され、この収納凹部17は、幅方向他側に開口部17Aを有すると共に、その底縁部17Bは前記薄肉部12に形成されている。
【0046】
前記ガイド板4の上板部14には、収納位置の前記筋交い杆9の透孔34Sの位置に、透孔34Gが穿設され、後述するように、これら透孔34S,34Gに前記ビス35が選択的に挿入される。
【0047】
前記スライド溝6の上部に収納用溝たる収納用溝部55が形成され、この収納用溝部55は、スライド溝6からガイド板4の幅方向他側向きで僅かに一端側4Mに斜めになるように形成され、
図6に示すように、収納用溝部55は、スライド溝6の上端に、左上側向き斜めに形成されている。前記収納用溝部55の幅は前記ネジ本体63のネジ山の径に比べて大きく、その収納用溝部55に前記ネジ本体63が遊挿される。
【0048】
また、
図6に示すように、収納用溝部55は、前記透孔34Gを中心とした円弧状に形成することが好ましく、こうすると、筋交い杆9を収納位置とした後、前記透孔34Sを中心として、案内杆3の一端側3Rをガイド板4の幅方向他側に回転し、ネジ本体63を収納用溝部55内に位置させ、操作摘み64を収納用溝部55の位置に固定することができる。
【0049】
この固定状態で、筋交い杆9の他端側をガイド板4から離れる方向に回そうとすると、案内杆3の他端側を、
図8において下斜め左側に引っ張る力が発生するが、ネジ本体63が収納用溝部55の他側縁部55A(
図6)に係止するため、筋交い杆9が収納位置にロックされる。このため、使用時には、締付ネジ5を緩め、操作摘み64を右側に移動して、ネジ本体63をスライド溝6の一端に位置させると、ネジ本体63がスライド溝6に沿って長さ方向他端側に移動可能となり、筋交い杆9をガイド板4から離れる方向に回転することができる。
【0050】
次に、前記切断用定規1の使用方法について説明すると、運搬時などには、筋交い杆9をガイド板4の収納部15に収納してコンパクトに持ち運ぶことができ、収納にも便利である。
【0051】
使用時には、締付ネジ5のネジ本体63を直交案内溝71内に位置させれば、ガイド板4のガイド部たる肉厚部11に、案内面2を直角に位置合わせすることができる。また、直交案内溝71には直交案内溝先端部75が設けられているから、ネジ本体63を先端側に移動すると、その直交案内溝先端部75で止まるため、一層確実に直角が得られ、止まった位置で締付ネジ5を締めて位置固定することにより、確実に直角に位置決めすることができ、しかも、1点で固定するようにネジ本体63をストッパなどに突き当てる必要がなく、直交案内溝71は先端に幅狭溝77を有し、その両縁部である直交案内溝先端部75によってネジ本体63を位置決めして固定することができる。
【0052】
また、この際、ネジ本体63を直交案内溝先端部75,75に当てるだけで強く押し付ける必要はなく、しかも、スライド溝6の底部6Tに位置するネジ本体63を、スライド溝6と向きの違う短い直交案内溝71に沿って僅かに動かすだけであるから、直交案内溝先端部75にネジ本体63が強く当たることがなく、変形を抑制できる。
【0053】
また、直交案内溝先端部75の位置からネジ本体63が基端74側に多少ずれても直交案内溝71内であれば、直角が得られるから、簡便にガイド板4と案内面2との直角に位置決めすることができる。
【0054】
そして、被切断物101を切断する際には、被切断物101の上面103に切断線である罫書き線(図示せず)を書く。切断用定規1の使用に際して、例えば、切断用定規1を被切断物101の上面103へ載置し、案内面2を被切断物101の一の端面102に引っ掛けるように当接させ、この状態で把持部37を把持してガイド板4を切断線に対して所定の位置に合わせるように切断用定規1を移動して固定し、ガイド板4をガイドとして、電動式鋸(図示せず)をガイド板4のガイド部たる肉厚部11の長さ方向に移動して罫書き線に沿って被切断物101を切断する。
【0055】
尚、ガイド部たる肉厚部11の縁に当接せしめる鋸本体(図示せず)と刃(図示せず)との間隔が多種多様の電動式鋸(図示せず)によって異なるため、被切断物101への切断用定規1の配設位置は罫書き線から鋸本体と刃との間隔だけガイド板4を離した状態で配設する必要がある。
【0056】
そこで、案内杆3から、ある程度、捨て木27を伸ばした状態で肉厚部11に電動式鋸を沿わせて仮切断することで捨て木27の引き出し量が鋸本体と刃との間隔となる。よって、この仮切断された捨て木27の先端を罫書き線に合わせて被切断物101に切断用定規1を配設することで電動式鋸の刃を罫書き線に正確に合わせることができる。このため前記案内杆3の角パイプ21内にスライド自在に前記捨て木27を配置し、この捨て木27を固定する固定ネジ28が、前記角パイプ21に螺合されている。
【0057】
次に、前記切断用定規1を直線定規として使用する場合について説明する。直角定規として使用する場合は、案内杆3を取り外し、
図10に示すように、筋交い杆9を上板部14の収納部15内に収納するように回動し、透孔34S,34G同士を位置合わせする。具体的には、締付ネジ5とワッシャ65を取り外すことにより、案内杆3の一端側3Rとスライド溝6の連結を解除し、また、他側連結部8から前記ビス35とウエーブワッシャ36を取り外すことにより、案内杆3の他端側と筋交い杆9の他端側との連結を解除する。
【0058】
そして、
図11に示すように、取り外したビス35を、下面側から筋交い杆9の他端側の透孔34Sとガイド板4の透孔34Gとに挿通し、それら透孔34S,34Gに挿通したビス35の先端に、前記ウエーブワッシャ36を挿通すると共に、そのガイド板4上に突出したビス35の先端に、前記ネジ止め手段41を螺合し、筋交い杆9の他端側をガイド板4の他端側に固定する。尚、ウエーブワッシャ36は薄肉部12の上面又は下面に配置することができる。
【0059】
尚、取り外した締付ネジ5とワッシャ65は、保管しておく。この場合、案内杆3の雌螺子部25に、ワッシャ65を挿通した締付ネジ5を螺合して保管することが好ましい。
【0060】
このように本実施例では、請求項1に対応して、被切断物101の端面102に沿って配置する案内面2を有する案内杆3と、使用時に案内面2と直交方向に設けられるガイド板4と、案内杆3の長さ方向一端側3Rに設けられるスライド部材たるネジ本体63と、ガイド板4の長さ方向に設けられネジ本体63を案内するスライド溝6と、ガイド板4に一端側9Mを回転可能に連結すると共に、他端側を案内杆3の他端側に連結した筋交い杆9とを備え、案内杆3に設けた締付ネジ5をスライド溝6に沿って筋交い杆9の一端側9Mに移動することにより筋交い杆9をガイド板4側に回動する切断用定規1であって、スライド溝6の他端側には、筋交い杆9の回動時にネジ本体63を案内して案内面2をガイド板4と直交状態に保持する直交案内溝71を設けたから、案内面2とガイド板4とを直交状態にするために締付ネジ5を1点のみで固定する必要がなく、直交案内溝71内において締付ネジ5を固定することにより直交状態を得ることができる。また、部品点数が増加することなく、溝の加工のみで済むため、安価に製造することができる。
【0061】
このように本実施例では、請求項2に対応して、直交案内溝71はスライド溝6の他端である底部6Tから該スライド溝6と交差方向に設けられているから、締付ネジ5をスライド溝6の一端側から直交案内溝71に移動するには、締付ネジ5をスライド溝6の他端側まで移動して向きを変えて直交案内溝71に入れることにより、締付ネジ5の移動により直交案内溝71に大きな力が加わり難くなる。
【0062】
このように本実施例では、請求項3に対応して、直交案内溝71の先端に、スライド部材たるネジ本体63を挟んで位置決めする直交案内溝先端部75を設けたから、直交案内溝先端部75に締付ネジ5を合わせることにより、直交状態に設定することができ、直交案内溝71内であれば、直交状態が得られるため、直交案内溝先端部75にネジ本体63を押し当てた状態で固定する必要がない。
【0063】
このように本実施例では、請求項4に対応して、直交案内溝先端部75から先端側に向かって幅が狭くなる幅狭溝77が設けられており、ネジ本体63が移動可能な直交案内溝71とネジ本体63が入らない幅狭溝77の境が直交案内溝先端部75であるから、ネジ本体63が直交案内溝先端部75で止まることにより、直交状態に簡便に設定することができる。
【0064】
以下、実施例上の効果として、スライド溝6は、長さ方向他端側が一端側よりガイド板4の幅方向他側に位置するように僅かに斜めに形成されているから、筋交い杆9を回動する際、収納位置から締付ネジ5をスライド溝6に沿って移動し易くなる。また、ガイド板4の幅方向他側には、把持部37を収納する収納凹部17が切欠き形成されているから、把持部37を収納凹部17に収納して筋交い杆9を収納部15に収納することができる。
【0065】
また、スライド溝6の上部に収納用溝部55が形成され、この収納用溝部55は、スライド溝6からガイド板4の幅方向他側向きで僅かに一端側4Mに斜めになるように形成されているから、筋交い杆9を収納位置とした後、前記透孔34Sを中心として、案内杆3の一端側3Rをガイド板4の幅方向他側に回転し、ネジ本体63を収納用溝部55内に位置させ、操作摘み64により固定することができる。
【0066】
また、筋交い杆9の他端側と案内杆3の他端側を連結する他側連結部8が、その連結を解除可能に構成し、案内杆3の一端側3Rにスライド部材たるネジ本体63が着脱可能に設けられ、案内杆3を取り外し、筋交い杆9を収納位置とした状態で、筋交い杆9の連結受け部たる透孔34Sに対応して、ガイド板4に連結受け部たる透孔34Gを設け、それら透孔34G,34Sに連結部材たるビス35を挿入して筋交い杆9の他端側とガイド板4の他端側を連結可能に構成したから、収納状態の筋交い杆9をガイド板4に簡便に固定することができ、案内杆3を取り外して直線定規として使用することができる。
そして、実施例1と同様に、締付ネジ5を直交案内溝71の直交案内溝先端部75の位置で固定することにより、ガイド板4と案内面2とが直交し、一方、ここから締付ネジ5を緩めると共に、筋交い杆9をガイド板4側に回動することにより、筋交い杆9を収納位置とすることができる。
また、このようにガイド板4が長いものでも、筋交い杆9がガイド板4の長さの1/2以上であれば、把持部37により上面103に切断用定規1を安定して固定することができる。