(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110406
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】敷物および敷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 9/02 20060101AFI20220722BHJP
D04B 21/14 20060101ALI20220722BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A47G9/02 P
D04B21/14 Z
D06M15/693
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005797
(22)【出願日】2021-01-18
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】500367067
【氏名又は名称】株式会社カインズ
(71)【出願人】
【識別番号】520147142
【氏名又は名称】山東衆邸家居用品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】大井 龍弥
(72)【発明者】
【氏名】趙国亮
【テーマコード(参考)】
3B102
4L002
4L033
【Fターム(参考)】
3B102BA12
4L002AA07
4L002AB02
4L002AC07
4L002CB01
4L002DA00
4L002EA00
4L002EA02
4L002FA00
4L033AB06
4L033AC15
4L033CA68
(57)【要約】 (修正有)
【課題】十分な滑り止め性能があり、耐久性や軽量性の優れた敷物を提供する。
【解決手段】表地1と、三次元立体編物5により構成される裏地を備え、敷パッド、ベッドパッドに用いられる敷物であって、三次元立体編物5は複数の網目を有する一対の編地51、51と、これらの編地51、51同士を連結する連結繊維52を備え、編地51を構成する繊維の繊維径は20~1000デニールであり、連結繊維52を構成する繊維の繊維径は10~1200デニールであり、裏地の裏面には、熱可塑性接着材から成る滑り止め層6を有し、裏地の裏面に対する滑り止め層6の割合は、80~100%であり、前記熱可塑性接着材は、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)を主成分とする樹脂であり、前記熱可塑性接着材の塗布量は、10~100g/m
2であり、静止摩擦係数が、1.5~1.8であることを特徴とする、敷物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と、三次元立体編物により構成される裏地を備え、敷パッド、ベッドパッドに用いられる敷物であって、
前記三次元立体編物は複数の網目を有する一対の編地と、これらの編地同士を連結する連結繊維を備え、前記編地を構成する繊維の繊維径は20~1000デニールであり、前記連結繊維を構成する繊維の繊維径は10~1200デニールであり、
前記裏地の裏面には、熱可塑性接着材から成る滑り止め層を有し、
前記裏地の裏面の編地の面積に対する前記滑り止め層の面積の割合は、80~100%であり、
前記熱可塑性接着材は、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)を主成分とする樹脂であり、
前記熱可塑性接着材の塗布量は、10~100g/m2であり、
前記裏地の裏面の静止摩擦係数が、1.5~1.8であることを特徴とする、敷物。
【請求項2】
前記熱可塑性接着材は、180℃における粘度が3000~6000mPa・sであり、180℃における粘度δ1に対する160℃における粘度δ2の比率δ2/δ1が、3~7であることを特徴とする、請求項1に記載の敷物。
【請求項3】
表地と、三次元立体編物により構成される裏地とを備え、敷パッド、ベッドパッドに用いられ、裏面の静止摩擦係数が、1.5~1.8である敷物の製造方法であって、
前記三次元立体編物は複数の網目を有する一対の編地と、これらの編地同士を連結する連結繊維を備え、前記編地を構成する繊維の繊維径は20~1000デニールであり、前記連結繊維を構成する繊維の繊維径は10~1200デニールであり、
前記表地と前記裏地とをキルティング加工する縫製工程と、
前記縫製工程の後、筋状に溶融押出した熱可塑性接着材を、所定温度に加熱したローラを介して裏側の前記編地の裏面に塗布量10~100g/m2で面状に塗布する塗布工程と、
塗布された前記熱可塑性接着材を冷却する冷却工程と、を備え、
前記熱可塑性接着材は、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)を主成分とする樹脂である、
敷物の製造方法。
【請求項4】
前記塗布工程において、前記ローラの所定温度における溶融状態の前記熱可塑性接着材の粘度は、2000~6000mPa・sであることを特徴とする、
請求項3に記載の敷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り止め構造を有する敷物に関し、特に、敷パッド、ベッドパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、敷パッドやベッドパッド等の敷物は使用中の位置ずれを防ぐため、四隅に弾性ゴム紐を備えるものが多く、弾性ゴム紐をマットレスや敷き布団等に係止させて使用していた。しかしながら、弾性ゴム紐は取付と取り外しに手間がかかり、ゴムバンドが伸びればその効果を示さない等の問題がある。そのため、近年、弾性ゴム紐が必要としない滑り止め加工製品が開発されている。
【0003】
一方で、敷パッドや、ベッドパッドのような寝具として用いられる敷物は、通気性が求められ、例えばハニカム構造の三次元立体編物が用いられてきた。
【0004】
特許文献1は、三次元立体編物や二次元立体編物に、ポリ塩化ビニル、あるいはシリコンを含むコーティング層を有する滑り止め面を備える敷パッドやベッドパッドなどの敷物を開示している。
【0005】
特許文献2は、凹凸を有する滑り止め部を容易に基材に筋状に設けたマットの製造を目的とし、滑り止め材料を溶融し、搬送ローラにより基材を搬送し、溶融した前記滑り止め材料を押出成形機により、搬送された前記基材の表面に向けて、複数の筋状に押し出し、押し出された筋状の各滑り止め材料及び前記基材を、各滑り止め材料にエンボス加工を施しつつ、前記搬送ローラとエンボスローラとで圧接するように挟み、前記滑り止め材料を前記基材の表面に固着することを特徴とするマットの製造方法を開示している。
【0006】
特許文献3は、機能性材料から成るマット層と、滑り止め樹脂が前記マット層に裏打ちされて床面に粘着する裏面層とを備えて成る滑り止めマットにおいて、前記マット層と裏面層との間に介在されるメッシュ生地を備え、前記滑り止め樹脂は、前記メッシュ生地に含浸していることを特徴とする滑り止めマットを開示している。
【0007】
特許文献4は吸水性を有する繊維からなる編物又は不織布から形成された吸水パッドと、該吸水パッドの裏側に直接又は他の層を介して接合された三次元立体編物からなる通気パッドとを備え、前記通気パッドの裏側に、滑り止め加工が施されているか又は滑り止めシートが配設されていることを特徴とするマットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3227068号公報
【特許文献2】特開2018-68624号公報
【特許文献3】特開2018-93972号公報
【特許文献4】特開2012-187380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の敷物は、三次元立体編物等の裏面にポリ塩化ビニルまたはシリコンを含む滑り止め層を備えているが、ポリ塩化ビニルは経年劣化により層が剥離しやすいため耐久性に問題があり、シリコンを含むコーティングは、使用過程において成分が溶けだし、接触する生地や構造を汚す虞があった。特許文献2、3に記載のマットは、筋状に、すなわち部分的に滑り止め層を設けたものであり、滑り止め性能が不十分であった。特許文献3、4に記載のマットは滑り止め液が内部に含浸され、最も効果の高い表面上に滑り止め材が十分にとどまることができず、滑り止め性能が不十分であり、また、表面上に十分な滑り止め液を保持しようとすると塗布量が多くなり、コストが高くなり、重くなってしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、裏面の略全面にわたって十分な滑り止め性能があり、耐久性や軽量性の優れた敷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、表地と、三次元立体編物により構成される裏地を備え、敷パッド、ベッドパッドに用いられる敷物であって、前記三次元立体編物は複数の網目を有する一対の編地と、これらの編地同士を連結する連結繊維を備え、前記編地を構成する繊維の繊維径は20~1000デニールであり、前記連結繊維を構成する繊維の繊維径は10~1200デニールであり、前記裏地の裏面には、熱可塑性接着材から成る滑り止め層を有し、前記裏地の裏面の編地の面積に対する前記滑り止め層の面積の割合は、80~100%であり、前記熱可塑性接着材は、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)を主成分とする樹脂であり、前記熱可塑性接着材の塗布量は、10~100g/m2であり、前記裏地の裏面の静止摩擦係数が、1.5~1.8であることを特徴とする、敷物である。
【0012】
「主成分とする」とは、相を形成する成分の50質量%以上、80質量%以上、好ましく90質量%以上であることを意味する。
【0013】
「敷パッド」は、人が座る、または寝るために体の下に敷く、薄く平坦なマット又はクッションである。
【0014】
「ベッドパッド」は、人が寝るために体の下に敷く、薄く平坦なマット又はクッションである。
【0015】
「敷物」とは、人が座るため、又は、寝るため、下に敷くものである。
【0016】
前記熱可塑性接着材は、180℃における粘度が3000~6000mPa・sであり、180℃における粘度δ1に対する160℃における粘度δ2の比率δ2/δ1が、3~7であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、表地と、三次元立体編物により構成される裏地とを備え、敷パッド、ベッドパッドに用いられ、裏面の静止摩擦係数が、1.5~1.8である敷物の製造方法であって、前記三次元立体編物は複数の網目を有する一対の編地と、これらの編地同士を連結する連結繊維を備え、前記編地を構成する繊維の繊維径は20~1000デニールであり、前記連結繊維を構成する繊維の繊維径は10~1200デニールであり、前記表地と前記裏地とをキルティング加工する縫製工程と、前記縫製工程の後、筋状に溶融押出した熱可塑性接着材を、所定温度に加熱したローラを介して裏側の前記編地の裏面に塗布量10~100g/m2で面状に塗布する塗布工程と、塗布された前記熱可塑性接着材を冷却する冷却工程と、を備え、前記熱可塑性接着材は、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)を主成分とする樹脂である、敷物の製造方法である。
【0018】
前記塗布工程において、前記ローラの所定温度における溶融状態の前記熱可塑性接着材の粘度は、2000~6000mPa・sであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、SEBSを主成分とする滑り止め層が、裏地の三次元立体編地の編地の裏面に略均一に塗布され、その表面上にとどまるため、軽量に、かつ、効率よく滑り止め効果を得ることができる。三次元立体編地の通気性が滑り止め層により損なわれることがなく、高い通気性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】本実施形態の敷物の裏面の表面拡大図である。
【
図5】本実施形態の敷物の裏面の表面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者等は、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)共重合体を主成分とする熱可塑性接着材を所定の粘度範囲となる温度で所定量を裏生地に略全面塗布し、素早く固化することにより、熱可塑性接着材が裏面の表面にとどまりやすく、高い静止摩擦係数を実現することを見出した。
【0022】
本発明の実施形態における敷物1について、
図1~5を参照して説明する。本実施形態の敷物1は、敷パッド、ベッドパッドに用いられる。
図1に示されるように、敷物1は、表地2と、クッション層3と、不織布4と、三次元立体編物5により構成される裏地とを備え、三次元立体編物5は複数の網目を有する一対の編地51、51と、これらの編地同士を連結する連結繊維52を備える。敷物1は、
図2~5に示させるように、縫製糸により規則的な波線をなすキルティング7を設けている。表地2、クッション層3、不織布4、三次元立体編物5により構成される裏地は、その周縁において、縫合部11で縫製され、一体化されている。
【0023】
本実施形態においては、三次元立体編物5はハニカム構造であり、編地51、51および連結繊維52は、共にポリエステル系樹脂から成る。編地51、51を構成する繊維の繊維径は20~1000デニールが好ましく、50~400デニールがさらに好ましい。また、連結繊維52を構成する繊維の繊維径は10~1200デニールが好ましく、20~300デニールがさらに好ましい。
【0024】
三次元立体編物5は繊維メーカー各社から商品化されており、例えば、旭化成のFUSION(登録商標)、ユニチカ(株)の「キュービックアイ(登録商標)」、住江織物(株)の「スウィングネット(登録商標)」、旭化成せんい(株)の「フュージョン(登録商標)」などが知られている。本考案では上記各社の三次元立体編物が使用できる。
【0025】
三次元立体編物5の例としては、第4972080号、第5551890号、第3943011号、第4001890号、第4646821号、特開平10-102363号公報、特開2002-138352号公報、特開平02-74648号公報等に記載されているものが好ましいが、限定されるわけではない。厚みは2mm~12mmが好ましく、さらに3mm~8mmが好ましい。通気性は50cc/cm2/sec以上、重量は100~2000g/cm2、密度は0.02~0.2g/cm3、圧縮弾性率は20~200N/mmが好ましい。
【0026】
三次元立体編物5の裏側の編地51の全体面積に対する面積比、すなわち、編地51と、編地51に包囲される開口部53とを合わせた面積に対する、編地51の面積の比は、通気性等を考慮すると、10~90%が好ましく、10~30%がさらに好ましい。三次元立体編物5はその構造の理由から高い通気性、弾力性、形態保持性を備える。
【0027】
三次元立体編物5の裏側の編地51の裏面には全面に亘り、全体的に略均一な厚みの滑り止め層6を有する。滑り止め層6の厚みは、10~110μmが好ましい。三次元立体編物5により、高い通気性を保ちつつ、その裏面に保持される滑り止め層6と、三次元立体編物5の立体構造により、高い滑り止め効果を得ることができる。
【0028】
滑り止め層6は、SEBS(スチレンーエチレンーブチレンースチレンブロック共重合体)を主成分とする熱可塑性接着材(以下、SEBS樹脂ともいう。)であり、軟化剤として鉱物油が含まれる。SEBS樹脂には、その他、酸化防止剤を添加してもよい。滑り止め層6は、詳細は後述するように、三次元立体編物5の裏面にローラ塗布されることにより形成され、SEBS樹脂の塗布量は、10~100g/m2が好ましく、10~60g/m2がさらに好ましい。塗布量が上記範囲を下回ると、滑り止め性能が不十分となり、上記範囲を上回ると、冷却、乾燥に時間がかかるため、編地51の表面上とどまりにくいという問題がある。
【0029】
本実施形態で用いるSEBS樹脂の軟化点は110~140℃が好ましく、120~130℃が更に好ましい。なお、軟化点は、ASTM-E28により定められた試験方法によって測定される。溶融状態のSEBS樹脂の粘度は、120~205℃において、2000~33000mPa・sが好ましい。
【0030】
溶融状態のSEBS樹脂の粘度は、180℃における粘度が3000~6000mPa・sが好ましく、160℃における粘度が10000~33000mPa・sが好ましい。高温状態で粘度が低ければ、後述するローラ塗布工程において、押し出されたSEBS樹脂がローラ間や生地の上で広がりやすい。そして、ローラから生地への塗布後において、すなわち低温状態において、粘度が高い方が、三次元立体編物5の編地51の表面上にとどまり、開口部53から内部へ入り込むことが少なくなる。従って、粘度の温度依存性は重要であり、180℃における粘度δ1に対する160℃における粘度δ2とすれば、それらの比率δ2/δ1は、3~7が好ましい。なお前記粘度は、ブルックフィールド粘度計LVF(ブルックフィールド社製)を用いて、適した速度にて、No.34のスピンドルを使用して測定することができる。
【0031】
滑り止め層6は、裏側の編地の裏面全面、すなわち、下に配置されるマットレスや布団等との接触面の単位面積あたりの滑り止め層6の面積の割合は、80%以上が好ましく、90~100%がさらに好ましい。すなわち、編地51の略全面に滑り止め層を備えることが好ましい。
【0032】
本発明にかかる敷物の裏面の静止摩擦係数は、1.5~1.8であることが好ましく、1.6~1.7が更に好ましい。静止摩擦係数の後述する測定方法により測定される。静止摩擦係数が1.5より小さい場合は、滑り止め効果が不十分である。
【0033】
不織布4は、ポリエステル繊維から成る短繊維不織布であり、クッション層3からの中綿が飛び出してこないようのために設けられている。
【0034】
クッション層3は、クッション性を高くするためのものであり、ポリエステル繊維により形成されている。
【0035】
次に、本発明に係る敷物1の製造方法について、
図6を参照しながら説明する。
【0036】
(縫製およびキルティング工程)
まず、表地2と、クッション層3と、不織布4と、三次元立体編物5を用意し、縫製する。具体的には、まず、後述する滑り止め層塗布の進行方向に平行な両側の縁を縫製し一体化させ、キルティング加工を施す。キルティング加工は、滑り止め層塗布の前に行うのが好ましい。滑り止め層塗布工程の後になると、針に樹脂が付着して、キルティング加工に支障を施すためである。
【0037】
(滑り止め層塗布工程)
次に、SEBS樹脂のローラ塗布を行う。
図6は、ローラ塗布装置8を説明する図である。キルティング加工後の生地は、巻材81として保持され、コンベア82上で牽引され、移動する。コンベア82上では、裏地、すなわち三次元立体編物5の裏面編地51が上側になって移動する。コンベア領域の上方には、樹脂押出装置83が配置される。樹脂押出装置83は、その下部に設けられた複数の吐出口831により、吐出温度180~205℃、さらに好ましくは200~205℃にて、溶融したSEBS樹脂を筋状に吐出する。吐出温度が205℃を超えると、黄変や炭変が起こりやすく、好ましくない。
【0038】
樹脂押出装置83の吐出口831の下方には、メインローラ84、補助ローラ85があり、所定のローラ温度に保持される。メインローラ84、補助ローラ85の表面温度は、それぞれ160~180℃が好ましく、本実施形態においては180℃前後としている。180℃におけるSEBS樹脂の粘度は3000~6000mPa・sであり、樹脂押出装置83の吐出口831から筋状に押し出された複数のSEBS樹脂は、メインローラ84と補助ローラ85の間で広げられ、メインローラ84および補助ローラ85を介して編地51裏全面に面状に塗布される。生地はゴムローラ87とメインローラ84の間を通ることにより、生地に全体的にSEBS樹脂が付着される。
【0039】
(冷却工程)
生地に付着された直後のSEBS樹脂の温度は160℃であり、その後、冷却ローラ88とゴムローラ87の間では圧力がかかり、その後の冷却ファン89によっても急速に冷却固化される。ここで、160℃におけるSEBS樹脂の粘度は、10000~33000mPa・sであり、また、生地付着後、冷却固化までの時間は2~10秒、好ましくは2~5秒であるため、編地51の裏面に付着したSEBS樹脂は、開口部53から内側へ浸透せずに、固化し、編地51の裏全面に保持された状態で固化する。
【0040】
(切断工程)
冷却された生地は、所定の長さに切断され、周縁が縫合される。
【0041】
このように、本発明においては、編地内には浸透させずに、最も重要な表面上に滑り止め層が十分にとどまるようにして、高い摩擦係数を実現している。それを実現するために、溶融状態のSEBS樹脂が所定の粘度範囲(2000~6000mPa・sが好ましい)となる温度に設定したローラで10~100g/m2塗布し、その後冷却により素早く(2~10秒が好ましい)固化している。ローラ温度におけるSEBS樹脂の粘度が上記範囲内であるので、筋状に押し出された樹脂は全体に広がりやすく、かつ、三次元立体編物5の開口部53に入り込み浸透しにくくなり、裏面編地51の表面上に留まりやすくなる。
【実施例0042】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における静止摩擦係数の測定は、以下のように行った。
【0043】
(静止摩擦係数の測定)
試料(20cm×30cm)を、裏地が下面になるよう、敷布団上に設置する。そのうえに、均一に8kgの荷重を掛け、プッシュプルゲージで引き、動き始めた時の力を測定し、摩擦係数を算出する。なお、試験は5回行い、その平均値を測定値とした。使用する敷布団はポリエステル繊維から形成され、具体的には、株式会社カインズ製の敷き布団(「コンパクトに収納出来る敷布団シングル」、商品コード4549509507871、側生地:ポリエステル100%、中材:ポリエステル100%)を使用した。
【0044】
(実施例1)
表地、クッション層、不織布、ハニカムメッシュ構造である厚み6mmの三次元立体編地を縫製、キルティング加工をした後、SEBSを主成分とする樹脂をローラ塗装により塗布し、敷パッドを製造した。樹脂の塗布量は30g/m2であった。SEBSを主成分とする樹脂は、軟化点が125℃、180℃における粘度は3300mPa・s、160℃における粘度は10000mPa・sであった。吐出温度は200~205℃、メインローラと補助ローラの温度は180℃であった。製造した敷パッドの静止摩擦係数を測定した結果、滑り出しの力は139.6N(n=5の試験結果143.8N、135.9N、139.0N、138.5N、140.6Nの平均値)、静止摩擦係数は1.7であった。
【0045】
(比較例1)
他社製の滑り止め加工の敷パッドについて、静止摩擦係数を測定する試験を行った。滑り止め加工は、シリコーン樹脂を点状に加工したものである。比較例1の敷パッドの静止摩擦係数を測定した結果、滑り出しの力は78.3N(n=5の試験結果76.4N、77.0N、79.9N、78.0N、80.0Nの平均値)、静止摩擦係数は1.0であった。
【0046】
(比較例2)
比較例1とは別の他社製の滑り止め加工の敷パッドについて、静止摩擦係数を測定する試験を行った。滑り止め加工は、アクリル樹脂を点状に加工したものである。比較例2の敷パッドの静止摩擦係数を測定した結果、滑り出しの力は101.6N(n=5の試験結果106.8N、102.6N、103.4N、96.5N、98.5Nの平均値)、静止摩擦係数は1.3であった。