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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110435
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】加圧装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 1/32 20060101AFI20220722BHJP
   F15B 11/20 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B30B1/32 F
F15B11/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005848
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田幡 諭史
【テーマコード(参考)】
3H089
4E090
【Fターム(参考)】
3H089AA02
3H089BB15
3H089BB16
3H089CC01
3H089DA03
3H089DA14
3H089DB03
3H089DB13
3H089DB33
3H089DB34
3H089DB43
3H089EE36
3H089FF07
3H089GG02
3H089JJ03
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA01
4E090BB06
4E090CA03
4E090HA10
(57)【要約】
【課題】安定的な作動流体の供給を行う。
【解決手段】作動流体の供給により被加圧物を加圧する加圧手段10と、第1駆動源23Aの出力により第1シリンダ21A内の作動流体を加圧手段に供給する第1シリンダ機構20Aと、第2駆動源23Bの出力により第2シリンダ21B内の作動流体を加圧手段に供給する第2シリンダ機構20Bと、第1シリンダ機構の第1駆動源と第2シリンダ機構の第2駆動源とを制御する制御装置90と、を備え、制御装置は、第1シリンダ機構のみから作動流体を加圧手段に供給する第1供給状態において、第1シリンダ機構の第1シリンダ内の作動流体の残量条件を満たすと、第2シリンダ機構のみから作動流体を加圧手段に供給する第2供給状態に移行する移行制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の供給により被加圧物を加圧する加圧手段と、
第1駆動源と第1シリンダとを有し、前記第1駆動源の出力により前記第1シリンダ内の作動流体を前記加圧手段に供給する第1シリンダ機構と、
第2駆動源と第2シリンダとを有し、前記第2駆動源の出力により前記第2シリンダ内の作動流体を前記加圧手段に供給する第2シリンダ機構と、
前記第1シリンダ機構の前記第1駆動源と前記第2シリンダ機構の前記第2駆動源とを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1シリンダ機構から作動流体を前記加圧手段に供給する第1供給状態において、
前記第1シリンダ機構の前記第1シリンダ内の作動流体の残量条件を満たすと、前記第2シリンダ機構から作動流体を前記加圧手段に供給する第2供給状態に移行する移行制御を行う加圧装置。
【請求項2】
前記第1シリンダ機構と前記加圧手段との間の作動流体の流通の接続状態と切断状態とを切り替え可能な第1切替手段と、
前記第2シリンダ機構と前記加圧手段との間の作動流体の流通の接続状態と切断状態とを切り替え可能な第2切替手段と、
前記第1シリンダ機構の作動流体の圧力を測定する第1圧力測定手段と、
前記第2シリンダ機構の作動流体の圧力を測定する第2圧力測定手段と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1供給状態において、前記第1切替手段を接続状態、前記第2切替手段を切断状態とし、
前記残量条件を満たすと、前記第2シリンダ機構の作動流体の圧力を前記第1シリンダ機構の作動流体の圧力に向けて昇圧してから前記移行制御を行う請求項1記載の加圧装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記移行制御以降において、前記第1切替手段を切断状態として、前記第1シリンダ機構の前記第1シリンダの作動流体の補充制御を行う請求項2記載の加圧装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1シリンダ機構からの作動流体の排出量を求め、当該排出量が規定量に達した状態で前記残量条件を満たすと判断する請求項1から3のいずれか一項に記載の加圧装置。
【請求項5】
前記第1シリンダ機構と前記第2シリンダ機構の一方又は両方を複数備える請求項1から4のいずれか一項に記載の加圧装置。
【請求項6】
前記第1シリンダ機構と前記第2シリンダ機構以外の他のシリンダ機構を備え、
前記制御装置は、前記第2供給状態において、
前記第2シリンダ機構の前記第2シリンダ内の作動流体の残量条件を満たすと、前記他のシリンダ機構から作動流体を前記加圧手段に供給する供給状態に移行する制御を行う請求項1から5のいずれか一項に記載の加圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧手段に対して高圧となるまで時間をかけて昇圧を行うための加圧装置では、従来は、小径のシリンダを有するプランジャポンプのプランジャに対して、サーボモータとボールネジ機構を利用して、低速でプランジャのストローク動作を行い、加圧手段に対する作動流体の供給を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-237419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加圧手段に要求される作動流体の供給圧力がより高圧になると、プランジャポンプのシリンダ内径をより小径にするため、一回のストローク動作によってプランジャポンプから供給可能な作動流体の量は減少する傾向にある。
このため、一回のストローク動作で加圧手段の目標とする圧力まで昇圧させる分量の作動流体を供給できない場合、作動流体の供給を一時中断し、プランジャポンプのシリンダ内に作動流体を補充する。
このような作動流体の補充のための中断によって、作動流体の供給圧力の変動が生じる場合があり、安定的な作動流体の供給ができないおそれがある。
【0005】
本発明は、加圧手段に対して安定的な作動流体の供給を行うことをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加圧装置は、
作動流体の供給により被加圧物を加圧する加圧手段と、
第1駆動源と第1シリンダとを有し、前記第1駆動源の出力により前記第1シリンダ内の作動流体を前記加圧手段に供給する第1シリンダ機構と、
第2駆動源と第2シリンダとを有し、前記第2駆動源の出力により前記第2シリンダ内の作動流体を前記加圧手段に供給する第2シリンダ機構と、
前記第1シリンダ機構の前記第1駆動源と前記第2シリンダ機構の前記第2駆動源とを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1シリンダ機構から作動流体を前記加圧手段に供給する第1供給状態において、
前記第1シリンダ機構の前記第1シリンダ内の作動流体の残量条件を満たすと、前記第2シリンダ機構から作動流体を前記加圧手段に供給する第2供給状態に移行する移行制御を行う構成とされる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加圧手段に対して安定的な作動流体の供給を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る加圧装置の全体構成を示す図である。
図2】第1又は第2シリンダ機構のプランジャのストローク方向の位置に応じた第1シリンダ機構の状態を示した説明図である。
図3】油圧ジャッキの加減圧制御時の加圧開始から減圧終了までの動作中における油圧ジャッキの下側領域の内部圧力の経時的な変化を示す動作線図である。
図4図3に示す下側領域の内部圧力変化に伴う第1及び第2シリンダ機構の制御装置による制御動作を示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[加圧装置の概略構成]
図1は本実施形態に係る加圧装置1の全体構成を示す図である。
加圧装置1は、図示のように、作動流体としての作動油の供給により被加圧物を加圧する加圧手段としての油圧ジャッキ10と、作動油を油圧ジャッキ10に供給する第1シリンダ機構20A及び第2シリンダ機構20Bと、油圧ジャッキ10,第1シリンダ機構20A及び第2シリンダ機構20Bに作動油を供給する作動油タンク33に接続された油圧ポンプ32と、上記各構成を接続する油圧回路と、加圧装置1の全体構成を制御する制御装置90とを備えている。
【0011】
[油圧ジャッキ]
油圧ジャッキ10は、互いに対向して相互間で加圧を行う固定加圧台11及び可動加圧台12と、内部に作動油の給排が行われるシリンダ13と、シリンダ13の内部において、可動加圧台12の加圧方向に沿って摺動するピストン14と、ピストン14からシリンダ13の外部に延出されて可動加圧台12に連結されたピストンロッド15とを備えている。
油圧ジャッキ10は、複動式であり、ピストン14を挟んでシリンダ13の内部の下側領域(第1領域)16と上側領域(第2領域)17とに作動油の給排が行われる。そして、シリンダ13の下側領域16に作動油が供給されると、ピストン14を通じて可動加圧台12が固定加圧台11に向かって移動し、固定加圧台11と可動加圧台12との間で加圧を行う。また、シリンダ13の上側領域17に作動油が供給されると、ピストン14を通じて可動加圧台12が固定加圧台11から離隔し、加圧状態の解除を行う。
【0012】
油圧ジャッキ10は、例えば、複数のアンビルを押し当てて被加圧物の超高圧加圧を行う。
八つの略立方体形状の内側アンビルと、八つの内側アンビルを立方体状に組んで保持する一対の外側アンビルとを使用し、一対の外側アンビルを固定加圧台11及び可動加圧台12の間に配置して、内側アンビルの加圧を行う。
内側アンビルは、角部が平坦に面取りされており、八つの内側アンビルを立方体状に組んだ時に、内部中心に位置する各々の内側アンビルの角部の平坦部に八方から囲まれるように被加圧物を配置する。これにより、一対の外側アンビルを油圧ジャッキ10が高圧で加圧すると、八つの内側アンビルの角部の平坦部に圧力が集中的に発生し、平坦部に囲まれた被加圧物に対して超高圧加圧が行われる。
上記のような超高圧加圧を行う際には、油圧ジャッキ10の昇圧を時間をかけて精密に安定的に行うことが要求される。
【0013】
なお、アンビルを用いた被加圧物の超高圧加圧は、油圧ジャッキ10の用途の一例に過ぎず、用途がこれに限定されるものではない。油圧ジャッキ10は、他の安定的な加圧を行う他の用途に使用しても良いことは言うまでもない。
【0014】
[油圧シリンダ機構]
第1シリンダ機構20Aは、プランジャポンプを構成している。第1シリンダ機構20Aと第2シリンダ機構20Bの同一構造の構成ついては、原則として同一の符号を付して説明する。
第1シリンダ機構20Aは、中空である筒状の第1シリンダ21Aと、第1シリンダ21Aの内部で摺動可能なプランジャ(ピストン)22と、プランジャ22に進退移動動作を付与する直動機構としてのボールネジ機構24と、ボールネジ機構24の第1駆動源となる減速機付きサーボモータ23Aとを備えている。
【0015】
第2シリンダ機構20Bは、中空である筒状の第2シリンダ21Bと、第2シリンダ21Bの内部で摺動可能なプランジャ(ピストン)22と、プランジャ22に進退移動動作を付与する直動機構としてのボールネジ機構24と、ボールネジ機構24の第2駆動源となる減速機付きサーボモータ23Bとを備えている。
【0016】
第1シリンダ機構20A及び第2シリンダ機構20Bは、いずれも単動式のシリンダ機構であり、第1,第2シリンダ21A,21B内でプランジャ22によって密閉された領域内に作動油の給排が行われる。
ボールネジ機構24は、減速機付きサーボモータ23A,23Bによって回転駆動が行われるボールネジ25と、ボールネジ25に螺合したボールナット26を備える可動枠27とを備えている。
ボールネジ25は、プランジャのストローク方向に対して平行に設けられ、可動枠27は、プランジャ22の外側端部に固定的に連結されている。
減速機付きサーボモータ23A,23Bは、図示しないエンコーダを備え、減速機付きサーボモータ23A,23Bの回転量(回転角度)を制御装置90に入力する。従って、制御装置90は、減速機付きサーボモータ23A,23Bの微少な回転量(回転角度)の制御が可能である。
これにより、制御装置90は、減速機付きサーボモータ23A,23Bからボールネジ機構24を通じて、プランジャ22のストローク方向の微細な動作量を制御し、第1,第2シリンダ21A,21Bにおける作動油の給排量の精密且つ高精度な制御を行うことができる。また、これにより、油圧ジャッキ10に供給する作動油の供給量を精密に制御するので、油圧ジャッキ10の加圧力を精密且つ高精度に制御して、例えば、長時間にわたる精密な昇圧、加圧維持、減圧を行うことができる。
【0017】
なお、ボールネジ機構24は、プランジャ22ではなく、第1,第2シリンダ21A,21B側に進退移動動作を付与しても良い。
また、各シリンダ機構20A,20Bのプランジャは、ピストンの一態様であり、プランジャ型ではないピストンを用いても良い。
また、直動機構は、ボールネジ機構に限らず、他の直線駆動手段、例えばリニアモータ等を用いてもよい。
【0018】
[油圧ポンプ]
油圧ポンプ32は、作動油が貯留された作動油タンク33に接続されており、モータ34を駆動源として、作動油タンク33内の作動油を所定の供給圧力で油圧ジャッキ10,第1シリンダ機構20A及び第2シリンダ機構20Bに供給することができる。
【0019】
[油圧回路]
油圧回路は、油圧ポンプ32から油圧ジャッキ10への接続状態を切り替える第1供給バルブ41と、油圧ポンプ32から第1シリンダ機構20A及び第2シリンダ機構20Bへの接続状態を切り替える第2供給バルブ42と、油圧ポンプ32と第1供給バルブ41との間で作動油を流通可能に接続する第1給排管43と、第1供給バルブ41と油圧ジャッキ10の下側領域16との間で作動油を流通可能に接続する第2給排管44と、第1供給バルブ41と油圧ジャッキ10の上側領域17との間で作動油を流通可能に接続する第3給排管45とを有する。
【0020】
さらに、油圧回路は、第1給排管43から分岐して油圧ポンプ32と第2供給バルブ42との間で作動油を流通可能に接続する第4給排管46と、第2供給バルブ42と第1シリンダ機構20Aとの間で作動油を流通可能に接続する第5給排管47と、第2供給バルブ42と第2シリンダ機構20Bとの間で作動油を流通可能に接続する第6給排管48と、第1シリンダ機構20Aと油圧ジャッキ10の下側領域16との間で作動油を流通可能に接続する第7給排管49と、第2シリンダ機構20Bと油圧ジャッキ10の下側領域16との間で作動油を流通可能に接続する第8給排管50とを有する。
なお、第5給排管47と第6給排管48は、第2供給バルブ42側で合流しており、第7給排管49と第8給排管50は、油圧ジャッキ10側で合流している。
【0021】
第1供給バルブ41は、油圧ジャッキ10の下側領域16と上側領域17とを、油圧ポンプ32側と作動油タンク33側とに選択的に接続可能である。
即ち、第1供給バルブ41は、油圧ジャッキ10の下側領域16を油圧ポンプ32に接続し、上側領域17を作動油タンク33側に接続する位置と、油圧ジャッキ10の下側領域16を作動油タンク33に接続し、上側領域17を油圧ポンプ32側に接続する位置と、油圧ジャッキ10のシリンダ13の下側領域16と上側領域17の両方を作動油タンク33に接続する位置とに切り替え可能である。
【0022】
第2供給バルブ42は、第1シリンダ機構20A及び第2シリンダ機構20Bを油圧ポンプ32側と作動油タンク33側とに選択的に接続可能である。
即ち、第2供給バルブ42は、第1シリンダ機構20Aに接続された第5給排管47と第2シリンダ機構20Bに接続された第6給排管48の合流端部を作動油タンク33側に接続する位置と、上記の合流端部を油圧ポンプ32側に接続する位置とに切り替え可能である。
【0023】
各給排管43~45,47,48には、リリーフバルブが設けられている。
また、第2給排管44の第1供給バルブ41側端部にはパイロットチェックバルブ51が設けられ、下側領域16側の端部には、圧力センサ52が設けられている。
【0024】
パイロットチェックバルブ51は、油圧ポンプ32から油圧ジャッキ10の下側領域16へ作動油が供給される際には、流通を妨げず、油圧ジャッキ10の下側領域16からの作動油の逆流を規制する。但し、パイロットチェックバルブ51は、第3給排管45の内圧を受けて弁が開かれるようになっているので、油圧ジャッキ10の上側領域17へ作動油が供給されている場合には、下側領域16から作動油タンク33に押し戻される作動油の流通を妨げないように構成されている。
圧力センサ52は、油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力を検出し、制御装置90に出力する。
【0025】
第5,第6給排管47,48には、それぞれシャットオフバルブからなるタンク側バルブ53,54が設けられている。また、第7,第8給排管49,50には、それぞれシャットオフバルブからなるジャッキ側バルブ55,56が設けられている。ジャッキ側バルブ55は、第1シリンダ機構20Aと油圧ジャッキ10の下側領域16との間の作動油の流通の接続状態と切断状態とを切り替え可能な第1切替手段として機能し、ジャッキ側バルブ56は、第2シリンダ機構20Bと油圧ジャッキ10の下側領域16との間の作動油の流通の接続状態と切断状態とを切り替え可能な第2切替手段として機能する。
これらのバルブ53~56は、制御装置90の指令によって個別に開かれ、作動油の流通が可能となる。
【0026】
また、第7給排管49と第8給排管50とには、各々に設けられたジャッキ側バルブ55,56よりも第1,第2シリンダ21A,21B側近傍に圧力センサ57,58が設けられている。これらの圧力センサ57,58は、第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21Aの内部圧力、第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21Bの内部圧力を個別に検出し、制御装置90に出力する。
即ち、圧力センサ57は、第1シリンダ機構20Aの作動油の圧力を測定する第1圧力測定手段として機能し、圧力センサ58は、第2シリンダ機構20Bの作動油の圧力を測定する第2圧力測定手段として機能する。
【0027】
[制御装置]
制御装置90は、第1及び第2シリンダ機構20A,20Bの減速機付きサーボモータ23A,23B、作動油タンク33のモータ34、第1供給バルブ41、第2供給バルブ42、タンク側バルブ53,54、ジャッキ側バルブ55,56に接続されており、これらの動作制御を行うことができる。
また、制御装置90は、圧力センサ52,57,58に接続されており、これらの設けられた油圧ジャッキ10の下側領域16、第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21A、第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21Bの内部の検出圧力を取得する。
また、プランジャ22のストローク方向の位置は、減速機付きサーボモータ23A,23Bの出力軸の回転量と相関があるので、制御装置90は、第1及び第2シリンダ機構20A,20Bの減速機付きサーボモータ23A,23Bのエンコーダ出力からそれぞれのプランジャ22におけるストローク方向の位置を取得することができる。また、第1及び第2シリンダ機構20A,20Bの減速機付きサーボモータ23A,23Bのエンコーダ出力からそれぞれのプランジャ22におけるストローク方向の位置を求めることで、実質的に第1及び第2シリンダ機構20A,20Bによる作動油の給排量を求めている。
【0028】
[加圧装置の動作制御]
図2は第1又は第2シリンダ機構20A,20Bのプランジャ22のストローク方向の位置(第1,第2シリンダ21A,21B内部の作動油残量)に応じた第1又は第2シリンダ機構20A,20Bの状態を示した説明図である。
図2に示すプランジャ22の「吸い込み端」の位置は、当該プランジャ22の最も作動油を吸い込んだ位置であり、制御装置90は、プランジャ22が「吸い込み端」を超えない範囲で吸い込み動作を行う。
「吸い込み端手前」は、「吸い込み端」の近傍であり、作動油の吸い込みを行っているときに、プランジャ22が「吸い込み端手前」に達すると、制御装置90は、「吸い込み端」の接近を認識する。
また、上記「吸い込み端手前」から「吸い込み端」までの範囲内を「吸い込み残域」とする。
【0029】
図2に示すプランジャ22の「排出端」の位置は、当該プランジャ22の最も作動油を排出した位置であり、制御装置90は、プランジャ22が「排出端」を超えない範囲で排出動作を行う。
「排出端手前」は、「排出端」の近傍であり、作動油の排出を行っているときに、プランジャ22が「排出端手前」に達すると、制御装置90は、「排出端」の接近を認識する。
また、上記「排出端手前」から「排出端」までの範囲内を「排出残域」とする。
また、上記「排出端手前」と前述した「吸い込み端手前」との間の範囲を「有効可動域」とする。
【0030】
制御装置90が実行する油圧ジャッキ10の加減圧制御について説明する。
制御装置90は、油圧ジャッキ10の加減圧制御において、第1シリンダ機構20Aから作動油を油圧ジャッキ10の下側領域16に供給する第1供給状態から、第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21A内の作動油の残量が少ないことを示す残量条件を満たすと、第2シリンダ機構20Bから作動油を油圧ジャッキ10の下側領域16に供給する第2供給状態に移行する移行制御を行うことを特徴とする。
なお、第1供給状態では、第1シリンダ機構20Aのみから作動油を供給しても良い。また、第2供給状態では、第2シリンダ機構20Bのみから作動油を供給しても良い。
【0031】
図3は油圧ジャッキ10の加減圧制御時の加圧開始から減圧終了までの動作中における油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力の経時的な変化を示す動作線図であり、縦軸が圧力、横軸が時間を示している。また、図4は、油圧ジャッキ10の加減圧制御において、図3に示す下側領域16の内部圧力変化に伴う第1及び第2シリンダ機構20A,20Bの制御装置90による制御動作を示した図表である。
なお、図4において、「NO.1ポンプ」は第1シリンダ機構20Aを示し、「NO.2ポンプ」は第2シリンダ機構20Bを示す。
【0032】
制御装置90は、各シリンダ機構20A,20Bのプランジャ22の位置を検出しつつ、以下の動作制御を行う。
被加圧物を加圧する際には、油圧ジャッキ10の固定加圧台11と可動加圧台12に対して複数のアンビルによって被加圧物が保持された状態でセットする。
また、制御装置90は、予め、タンク側バルブ53,54を閉じ(OFF)、第1供給バルブ41を制御して油圧ポンプ32と油圧ジャッキ10の下側領域16とを接続し、油圧ポンプ32により被加圧物を加圧しない範囲で可動加圧台12を固定加圧台11に接近させる。
【0033】
そして、制御装置90は、第1供給バルブ41を制御して油圧ジャッキ10のシリンダ13の下側領域16と上側領域17の両方を作動油タンク33に接続する位置に切り替え、第2供給バルブ42を制御して、第5給排管47と第6給排管48の合流端部を油圧ポンプ32側に接続する。
また、第1及び第2シリンダ機構20A,20Bは、いずれも「吸い込み端手前」まで作動油が充填されているものとする。
【0034】
図3及び図4に示すように、制御装置90は、タンク側バルブ53,54を閉じ(OFF)、ジャッキ側バルブ55を開き(ON)、ジャッキ側バルブ56を閉じる(OFF)。
そして、第1シリンダ機構20Aの減速機付きサーボモータ23Aを排出方向に駆動させて、油圧ジャッキ10の下側領域16への作動油の供給を開始する(第1供給状態)。これにより、プランジャ22は「吸い込み端」から「有効可動域」まで下降して、油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力が開始圧力である圧力[A]に達する。
【0035】
さらに、第1シリンダ機構20Aのプランジャ22が「排出端手前」に達すると、油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力が圧力[B]に達する(第1シリンダ機構の残量条件)。
これにより、制御装置90は、圧力センサ57,58の検出圧力を監視しながら、第2シリンダ機構20Bの減速機付きサーボモータ23Bの排出方向の駆動を開始して、第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21B内圧力が第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21A内圧力に等しくなるように昇圧を行う(移行制御の開始)。
【0036】
そして、第1シリンダ機構20Aのプランジャ22が「排出残域」に達すると、油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力が圧力[C]に達する。
また、この時点で、第2シリンダ機構20Bのプランジャ22が「有効可動域」に達し、第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21B内圧力が第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21A内圧力に等しくなるまでに昇圧されている。
これにより、制御装置90は、第2シリンダ機構20Bのジャッキ側バルブ56を開く(ON)。このとき、第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21B内圧力は第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21A内圧力と等しくなっているので、第2シリンダ機構20Bが接続されても油圧ジャッキ10の下側領域16の昇圧状態に対する圧力変動の発生が抑制される。
【0037】
制御装置90は、内蔵するタイマーの計時によって、第1シリンダ機構20Aと第2シリンダ機構20Bの両方から油圧ジャッキ10の下側領域16に作動油を供給する状態を、所定時間が経過するまで継続する。
そして、所定時間の経過後、制御装置90は、第1シリンダ機構20Aのジャッキ側バルブ55を閉じ(OFF)、タンク側バルブ53を開き(ON)、油圧ポンプ32を駆動して第1シリンダ21A内に作動油を補充する(移行制御の完了及び補充制御)。
第1シリンダ機構20Aの減速機付きサーボモータ23Aは、吸い込み方向に回転を行うよう制御され、プランジャ22が「吸い込み端手前」に達すると、減速機付きサーボモータ23Aは停止され、タンク側バルブ53は閉じられる(OFF)。また、第2供給バルブ42は、第5給排管47と第6給排管48の合流端部を作動油タンク33側に接続する位置に切り替えられ、油圧ポンプ32は停止される。
【0038】
一方、油圧ジャッキ10の下側領域16には、第2シリンダ機構20Bのみによって作動油が供給される状態となり(第2供給状態)、油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力が圧力[D]に達する。
【0039】
第2シリンダ機構20Bのみによって作動油が供給される状態(第2供給状態)で、油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力が目標圧力である圧力[E]に達すると、第2シリンダ機構20Bの減速機付きサーボモータ23Bは、上記圧力[E]を維持する制御に切り替えられる。
制御装置90は、内蔵するタイマーの計時により所定時間が経過するまで圧力[E]を維持する制御を継続する。
【0040】
そして、所定時間、圧力[E]が維持されると、制御装置90は、第2シリンダ機構20Bの減速機付きサーボモータ23Bを吸い込み方向に駆動する。これにより、油圧ジャッキ10の下側領域16内の減圧が開始され、油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力が圧力[F]に達する。
【0041】
さらに、第2シリンダ機構20Bのプランジャ22が「吸い込み端手前」に達すると、油圧ジャッキ10の下側領域16は圧力[G]に達する。
制御装置90は、第1シリンダ機構20Aの減速機付きサーボモータ23Aを排出方向に駆動を開始させる。これにより、第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21A内圧力を第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21B内圧力に向けて昇圧させる。
【0042】
そして、第1シリンダ機構20Aのプランジャ22が「排出端手前」に達すると、油圧ジャッキ10の下側領域16の内部圧力が圧力[H]に達する。
また、この時点で、第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21A内圧力が第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21B内圧力に等しくなるまでに昇圧される。
これにより、制御装置90は、第1シリンダ機構20Aの減速機付きサーボモータ23Aを吸い込み方向に切り替えると共に、第1シリンダ機構20Aのジャッキ側バルブ55を開く(ON)。このとき、第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21A内圧力は第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21B内圧力と等しくなっているので、それまでの油圧ジャッキ10の下側領域16の減圧状態に対する圧力変動の発生が抑制される。
【0043】
制御装置90は、内蔵するタイマーの計時により、第1シリンダ機構20Aと第2シリンダ機構20Bの両方によって油圧ジャッキ10の下側領域16から作動油を吸い込む状態を、所定時間が経過するまで継続する。
【0044】
そして、所定時間の経過後、制御装置90は、第2シリンダ機構20Bのジャッキ側バルブ56を閉じ(OFF)、タンク側バルブ54を開き(ON)、第2供給バルブ42は、第5給排管47と第6給排管48の合流端部を作動油タンク33側に接続する。そして、第2シリンダ機構20Bの減速機付きサーボモータ23Bを排出方向に回転を行うよう制御する。このとき、第2シリンダ機構20Bのプランジャ22が「排出端手前」に達すると、減速機付きサーボモータ23Bは停止され、タンク側バルブ54は閉じられる(OFF)。
その間に、油圧ジャッキ10の下側領域16は圧力[I]まで減圧される。
【0045】
そして、油圧ジャッキ10の下側領域16が開始圧力と同じ圧力[A]まで減圧されると、第1シリンダ機構20Aの減速機付きサーボモータ23Aは停止され、加減圧制御が終了となる。
【0046】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、加圧装置1は、油圧ジャッキ10の加減圧制御の中で、制御装置90が移行制御を実行している。
このため、油圧ジャッキ10に要求される作動油の供給圧力が高圧な場合であっても、二つのシリンダ機構20A、20Bから引き継ぎながら作動油を供給することができるので、中断が生じないように、安定的な作動油の供給を行うことが可能となる。
【0047】
また、加圧装置1は、制御装置90が、第1供給状態において、ジャッキ側バルブ55を接続状態、ジャッキ側バルブ56を切断状態とし(図3図4における油圧ジャッキ10の下側領域16の圧力[A],[B])、残量条件を満たすと、第2シリンダ機構20Bの作動油の圧力を第1シリンダ機構20Aの作動流体の圧力に向けて昇圧した後に移行制御を実行している(図3図4における油圧ジャッキ10の下側領域16の圧力[C])。
このため、移行制御によって作動油の供給が第1シリンダ機構20Aから第2シリンダ機構20Bに移行したときに、油圧ジャッキ10の下側領域16の圧力変動の発生が効果的に抑制される。このため、より安定的な作動油の供給を行うことが可能となる。
【0048】
また、制御装置90は、移行制御以降において、ジャッキ側バルブ55を切断状態として、第1シリンダ機構20Aの第1シリンダ21Aの作動油の補充制御を行っている(図3図4における油圧ジャッキ10の下側領域16の圧力[D])。
これにより、第1シリンダ機構20Aは、必要時に、作動油の補充作業による中断を生じることなく、速やかに作動油の供給や作動油の排出による圧力調整を行うことが可能となり、油圧ジャッキ10の加減圧制御を円滑に行うと共に、圧力変動を抑制して、より安定的な作動油の供給又は圧力調整を行うことが可能となる。
【0049】
また、制御装置90は、減速機付きサーボモータ23Aのエンコーダから求まるプランジャ22の位置から第1シリンダ機構20Aからの作動油の給排量を実質的に求めている。
そして、当該排出量が規定量に達した状態を示すプランジャ22の「排出端手前」の位置が検出されると、残量条件を満たすと判断している。
従って、移行制御の開始タイミングを適正に判断することができ、さらに安定的な作動油の供給を行うことが可能となる。
【0050】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、加圧装置1は、第1シリンダ機構20Aと第2シリンダ機構20Bの一方又は両方を複数備える構成としても良い。
その場合、第1シリンダ機構20Aが複数ある場合には、各第1シリンダ機構20Aごとに、第5給排管47及び第7給排管49とこれらの給排管47,49に設けられた他の構成を個別に設けてもよい。第2シリンダ機構20Bの場合も同様である。
或いは、第1シリンダ機構20Aが複数ある場合には、これら第1シリンダ機構20Aを並列的に一つの第5給排管47及び一つの第7給排管49に接続しても良い。第2シリンダ機構20Bの場合も同様である。
このように、第1シリンダ機構20Aと第2シリンダ機構20Bの一方又は両方を複数備える場合、油圧ジャッキ10の下側領域16に対する作動油の給排量をより多く確保することができ、油圧ジャッキ10に要求される作動油の供給圧力が高圧な場合であっても、より安定的な作動油の供給を行うことが可能となる。
【0051】
また、加圧装置1は、第1シリンダ機構20Aと第2シリンダ機構20B以外の他のシリンダ機構を一又は複数備える構成としても良い。他のシリンダ機構は、第1シリンダ機構20A及び第2シリンダ機構20Bと同一の構成とすることが好ましい。
その場合、他のシリンダ機構については、第5給排管47及び第7給排管49と同一の二本の給排管を備え、給排管47,49に設けられた各構成と同一の構成を第5給排管47及び第7給排管49と同一の二本の給排管に設け、当該二本の給排管を、第5給排管47及び第7給排管49と第6給排管48及び第8給排管50と同じように並列に接続することが好ましい。
【0052】
また、その場合、制御装置90は、第2供給状態において、第2シリンダ機構20Bの第2シリンダ21B内の作動油の残量条件(例えば、第1シリンダ機構20Aと同じ条件とする)を満たすと、他のシリンダ機構から作動油を油圧ジャッキ10の下側領域16に供給する供給状態に移行する移行制御(前述した移行制御と同一の制御)を行うことが好ましい。
また、他のシリンダ機構を複数設ける場合には、一つの他のシリンダ機構について、残量条件(例えば、第1シリンダ機構20Aと同じ条件とする)を満たすと、さらに他のシリンダ機構から作動油を油圧ジャッキ10の下側領域16に供給する供給状態に移行する移行制御(前述した移行制御と同一の制御)を行うことが好ましい。
【0053】
このように、第1シリンダ機構20Aと第2シリンダ機構20B以外の他のシリンダ機構を一又は複数備える構成とした場合、油圧ジャッキ10の下側領域16に対する作動油の給排量をより多く確保することができ、油圧ジャッキ10に要求される作動油の供給圧力が高圧な場合であっても、より安定的な作動油の供給を行うことが可能となる。
【0054】
また、各シリンダ機構20A,20Bや油圧ジャッキ10は、作動油以外の液体による液圧(例えば、水圧)を用いた液圧機構を採用しても良い。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 加圧装置
10 油圧ジャッキ(加圧手段)
11 固定加圧台
12 可動加圧台
13 シリンダ
14 ピストン
15 ピストンロッド
16 下側領域
17 上側領域
18 スライド
20A 第1シリンダ機構
20B 第2シリンダ機構
21A 第1シリンダ
21B 第2シリンダ
22 プランジャ(ピストン)
23A,23B 減速機付きサーボモータ(駆動源)
24 ボールネジ機構
25 ボールネジ
26 ボールナット
27 可動枠
32 油圧ポンプ
33 作動油タンク
34 モータ
41 第1供給バルブ
42 第2供給バルブ
43~50 第1~第8給排管
51 パイロットチェックバルブ
52 圧力センサ
53,54 タンク側バルブ
55 ジャッキ側バルブ(第1切替手段)
56 ジャッキ側バルブ(第2切替手段)
57 圧力センサ(第1圧力測定手段)
58 圧力センサ(第2圧力測定手段)
90 制御装置
図1
図2
図3
図4