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特開2022-110474通信中継装置、システム、干渉抑圧方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110474
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】通信中継装置、システム、干渉抑圧方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/185 20060101AFI20220722BHJP
   H04B 7/204 20060101ALI20220722BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20220722BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20220722BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20220722BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20220722BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20220722BHJP
【FI】
H04B7/185
H04B7/204
H04L27/26 114
H04B7/0413 200
H04W16/26
H04W16/28
H04W84/06
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005923
(22)【出願日】2021-01-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067KK02
5K067KK03
5K072AA04
5K072BB25
5K072CC11
5K072DD13
5K072GG02
(57)【要約】
【課題】空中滞在型の通信中継装置に組み込まれた複数のフィーダリンク用アンテナ(FLアンテナ)と複数のゲートウェイ(GW)局との間の複数の経路差の推定誤差の起因した通信品質の劣化を防止する。
【解決手段】複数のGW局から受信した複数のパイロット受信信号に基づいて複数のGW局と複数のFLアンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差Δdjiを推定し、複数のパイロット受信信号に基づいて複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求め、複数の第1経路差のそれぞれを複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差Δdji_newに基づいて、フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定して干渉信号を抑圧するための受信ウェイトを計算して記憶し、複数のゲートウェイ局それぞれについて、複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置であって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記干渉抑圧部は、
前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出す手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求める手段と、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用する手段と、を有する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
請求項1の通信中継装置において、
前記干渉抑圧部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項3】
端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置であって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記干渉抑圧部は、
前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出す手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求める手段と、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用する手段と、を有する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの通信中継装置において、
前記複数の第1経路差のそれぞれについて、前記第1経路差の主経路及び他の経路に対応する2つのパイロット受信信号のいずれか一方のパイロット受信信号に対する他方のパイロット受信信号の位相差を変化させながら、前記2つのパイロット受信信号の差を求め、前記2つのパイロット受信信号の差が最小になるときの前記位相差に基づいて前記第1経路差に対する補正値を求める、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項5】
請求項4の通信中継装置において、
前記2つのパイロット受信信号の振幅が互いに同じ値になるように、前記2つのパイロット受信信号の少なくとも一方の振幅を調整する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項6】
請求項5の通信中継装置において、
前記パイロット受信信号の周波数をf[Hz]とし、前記パイロット受信信号の波長をλ[m]とし、前記第1経路差をΔd[m]とし、前記2つのパイロット受信信号の振幅の絶対値の比をγとし、前記変化させる位相差の補正角度をε[度]とし、光速をc[m/s]としたとき、
前記一方のパイロット受信信号と、前記他方のパイロット受信信号を次の(1)式に示すように補正した信号とを加算することにより、誤差関数E(ε)の値を求め、前記誤差関数E(ε)の値が最小になるときの前記位相差の補正角度εに基づいて、前記第1経路差に対する補正値を求める、ことを特徴とする通信中継装置。
【数1】
【請求項7】
請求項6の通信中継装置において、
前記位相差の補正角度εを、前記第1経路差を中心とした所定角度の範囲で走査し、前記誤差関数E(ε)の値が所定の閾値よりも小さい条件下で最小になるときの前記位相差の補正角度εに基づいて、前記第1経路差に対する補正値を求める、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの通信中継装置において、
所定の補正タイミングに、前記複数のパイロット受信信号に基づいて前記複数の第1経路差それぞれに対する前記複数の補正値を求めて記憶する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの通信中継装置と、互いに時間同期され前記空中滞在型の通信中継装置の前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のゲートウェイ局と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法であって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すことと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定することと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めることと、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用することと、
を含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【請求項11】
請求項10の干渉抑圧方法において、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用することを、含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【請求項12】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法であって、
前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すことと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めることと、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用することと、
を含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【請求項13】
端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれからフィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すためのプログラムコードと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定するためのプログラムコードと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めるためのプログラムコードと、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項13のプログラムにおいて、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用するためのプログラムコードを、含むことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれからフィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すためのプログラムコードと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定するためのプログラムコードと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めるためのプログラムコードと、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元化ネットワークの構築に適したHAPS等の空中浮揚型の無線中継装置のマルチフィーダリンクにおけるHAPS搭載アンテナ位置変更による動的な伝搬空間相関の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に浮揚して滞在可能な高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)や人工衛星等の通信中継装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この空中浮揚型の通信中継装置における通信回線は、その通信中継装置と移動通信網側のゲートウェイ(GW)局との間のフィーダリンクと、通信中継装置と端末装置との間のサービスリンクとで構成される。
【0003】
本出願人は、空中浮揚型の通信中継装置(以下「上空中継装置」という。)のフィーダリンクの周波数有効利用の向上を図ることができる通信システムを提案した(特許文献2参照)。この通信システムは、上空中継装置との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する空間分割多重通信を行う複数のゲートウェイ局を備える。複数のゲートウェイ局はそれぞれ、互いに異なる周波数の複数のパイロット信号を送信する。上空中継装置は、複数のゲートウェイ局それぞれから送信された複数のパイロット信号を受信した受信結果に基づいて、複数のゲートウェイ局それぞれと上空中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の経路差を計算して伝搬路応答を推定してウェイトを計算する。この通信システムによれば、計算したウェイトを用いることにより上空中継装置と複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンク通信において複数のフィーダリンク間の干渉を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0046387号明細書
【特許文献2】特開2020-141387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は上記通信システムにおけるフィーダリンク間の干渉低減性能について鋭気研究した結果、次のような更に改善すべき課題があることがわかった。すなわち、上記伝搬路応答の推定に用いる上記経路差の誤差により、複数のフィーダリンク間の干渉を精度よく低減することができず、通信品質が劣化するおそれがあることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る通信中継装置は、端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、複数のフィーダリンク用アンテナを介して、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部とを備える。前記干渉抑圧部は、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出す手段と、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求める手段と、前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定する手段と、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶する手段と、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用する手段と、を有する。
【0007】
前記通信中継装置において、前記干渉抑圧部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用してもよい。
【0008】
本発明の他の態様に係る通信中継装置は、端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、複数のフィーダリンク用アンテナを介して、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備える。前記干渉抑圧部は、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出す手段と、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求める手段と、前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定する手段と、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶する手段と、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用する手段と、を有する。
【0009】
本発明の更に他の態様に係るシステムは、前記いずれかの通信中継装置と、互いに時間同期され前記空中滞在型の通信中継装置の前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のゲートウェイ局と、を備える。
【0010】
本発明の更に他の態様に係る干渉抑圧方法は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法である。この干渉抑圧方法は、複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すことと、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定することと、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めることと、前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定することと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶することと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用することと、を含む。
【0011】
前記干渉抑圧方法において、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用することを、含んでもよい。
【0012】
本発明の更に他の態様に係る干渉抑圧方法は、空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法である。この干渉抑圧方法は、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すことと、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めることと、前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定することと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶することと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用することと、を含む。
【0013】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれからフィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すためのプログラムコードと、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定するためのプログラムコードと、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めるためのプログラムコードと、前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用するためのプログラムコードと、
を含む。
【0014】
前記プログラムにおいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用するためのプログラムコードを、含んでもよい。
【0015】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、このプログラムは、複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれからフィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すためのプログラムコードと、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定するためのプログラムコードと、前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めるためのプログラムコードと、前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶するためのプログラムコードと、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用するためのプログラムコードと、を含む。
【0016】
前記通信中継装置、前記干渉抑圧方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の第1経路差のそれぞれについて、前記第1経路差の主経路及び他の経路に対応する2つのパイロット受信信号のいずれか一方のパイロット受信信号に対する他方のパイロット受信信号の位相差を変化させながら、前記2つのパイロット受信信号の差を求め、前記2つのパイロット受信信号の差が最小になるときの前記位相差に基づいて前記第1経路差に対する補正値を求めてもよい。
【0017】
前記通信中継装置、前記干渉抑圧方法及び前記プログラムにおいて、前記2つのパイロット受信信号の振幅が互いに同じ値になるように、前記2つのパイロット受信信号の少なくとも一方の振幅を調整してもよい。
【0018】
前記通信中継装置、前記干渉抑圧方法及び前記プログラムにおいて、前記パイロット受信信号の周波数をf[Hz]とし、前記パイロット受信信号の波長をλ[m]とし、前記第1経路差をΔd[m]とし、前記2つのパイロット受信信号の振幅の絶対値の比をγとし、前記変化させる位相差の補正角度をε[度]とし、光速をc[m/s]としたとき、前記一方のパイロット受信信号と、前記他方のパイロット受信信号を次の(1)式に示すように補正した信号とを加算することにより、誤差関数E(ε)の値を求め、前記誤差関数E(ε)の値が最小になるときの前記位相差の補正角度εに基づいて、前記第1経路差に対する補正値を求めてもよい。
【数1】
【0019】
ここで、前記位相差の補正角度εを、前記第1経路差を中心とした所定角度範囲で走査し、前記誤差関数E(ε)の値が所定の閾値よりも小さい条件下で最小になるときの前記位相差の補正角度εに基づいて、前記第1経路差に対する補正値を求めてもよい。
【0020】
また、前記所定角度範囲は、前記通信中継装置の運用を開始したときには全角度をカバーする初期設定範囲に設定し、前記通信中継装置の運用中のときには前記初期設定範囲よりも狭い範囲に設定してもよい。
【0021】
前記通信中継装置、前記干渉抑圧方法及び前記プログラムにおいて、所定の補正タイミングに、前記複数のパイロット受信信号に基づいて前記複数の第1経路差それぞれに対する前記複数の補正値を求めて記憶してもよい。
【0022】
ここで、前記補正タイミングは、予め設定した周期的又は非周期的の定期的なタイミングでもよいし、前記フィーダリンクの通信品質が所定の閾値よりも悪化したことを検知したタイミングでもよい。
【0023】
前記通信中継装置、前記システム、前記干渉抑圧方法及び前記プログラムにおいて、前記空中滞在型の通信中継装置の本体は、ドローン、HAPS(例えば、ソーラープレーン、飛行船)、係留気球、又は、人工衛星であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数のゲートウェイ局それぞれと空中滞在型の通信中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の経路差の推定誤差に起因した通信品質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの全体の概略構成の一例を示す説明図。
図2】(a)は実施形態に係る複数GWシステムの概略構成の一例を示す側面図。(b)はドローン無線中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナ(FLアンテナ)と複数のGW局との関係を上方から見た説明図。
図3】複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のリバースリンク干渉の一例の説明図。
図4】ウェイトWを近似式で求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図。
図5】実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるドローン側(受信側)に設けたフォワードリンクの干渉キャンセラー部の概略構成の一例を示す説明図。
図6】ZF法によりウェイトWを求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図。
図7】実施形態に係る複数GWシステムにおけるフィーダリンクの伝搬路応答Hの一例を示す説明図。
図8】実施形態に係る複数GWシステムにおける基準経路長の一例を示す説明図。
図9図8におけるGW局のアンテナとドローン無線中継装置のFLアンテナとの間の経路長の一例を示す説明図。
図10図8におけるGW局のアンテナとドローン無線中継装置のFLアンテナとの間の基準経路長を基準にした経路差の一例を示す説明図。
図11】各GW局から送信される上り回線の送信信号帯域におけるパイロット信号の一例を示す説明図。
図12】実施形態に係るドローン無線中継装置で受信された上り回線の受信信号帯域におけるパイロット信号の一例を示す説明図。
図13】伝搬路応答の導出に用いられるパイロット信号の一例を示す説明図。
図14】フィーダリンクの伝搬路応答の導出モデルの一例を示す説明図。
図15】実施形態に係るドローン無線中継装置におけるパイロット受信信号の経路差補正の一例を示す説明図。
図16】実施形態に係るドローン無線中継装置におけるパイロット受信信号の振幅補正の一例を示す説明図。
図17】実施形態に係るドローン無線中継装置におけるパイロット受信信号の経路差及び振幅の同時補正の一例を示す説明図。
図18】実施形態に係るドローン無線中継装置におけるパイロット受信信号の誤差関数を用いた経路差及び振幅の同時補正の一例を示すブロック図。
図19】パイロット受信信号の経路差の補正角度と誤差関数の値との関係のコンピュータ・シミュレーション結果の一例を示すグラフ。
図20】パイロット受信信号の経路差の補正角度と誤差関数の実測値との関係の一例を示すグラフ。
図21】実施形態に係るドローン無線中継装置の中継通信局の主要構成の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係る通信システムは、空中滞在型の通信中継装置としてのドローン無線中継装置と、ドローン無線中継装置との間でフィーダリンクの無線通信を行う地上又は海上の複数のゲートウェイ局とを備え、複数のゲートウェイ局とドローン無線中継装置の複数のフィーダリンク用アンテナとの間の複数の経路差の推定誤差に起因した通信品質の劣化を防止することができるMIMO受信・送信干渉キャンセラーを有する複数ゲートウェイフィーダリンクシステム(複数ゲートウェイシステム)である。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムにおける通信中継装置としてのドローン型の無線中継装置(以下、「ドローン無線中継装置」又は「ドローン」と略称する。)20のセル構成の一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代又はその後の世代の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。また、本明細書に開示する通信システム、無線中継局、基地局、リピータ及び端末装置に適用可能な移動通信の標準規格は、第5世代の移動通信の標準規格、及び、第5世代以降の次々世代の移動通信の標準規格を含む。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る通信システムは、空中滞在型(空中浮揚型)の通信中継装置としてのドローン20を備える。ドローン20は、端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局21と複数のフィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」という。)211とがドローン本体に組み込まれた構成を有する。ドローン20は、外部からの遠隔制御又は自律制御によって飛行制御可能な無人又は有人の飛行体(航空機)である。ドローン20は、地上又海上から所定高度(例えば100~150m)の上空に滞在するように飛行制御される。
【0029】
なお、本実施形態の通信システムにおいて、空中滞在型(空中浮揚型)の通信中継装置は、高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)であってもよい。HAPSは、自律制御又は外部からの制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される浮揚体としてのソーラープレーン、飛行船又は係留気球に、中継通信局21が搭載されたものである。HAPSの位置する空域は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。また、空中滞在型(空中浮揚型)の通信中継装置は人工衛星であってもよい。
【0030】
以下の実施形態では、空中滞在型(空中浮揚型)の通信中継装置がドローン無線中継装置20である場合について主に説明する。
【0031】
本実施形態の通信システムにおける1又は2以上のドローン20で3次元セルを形成する目標の空域であるセル形成目標空域は、ドローン20が位置する空域と従来のマクロセル基地局等の基地局(例えばLTEのeNodeB)がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域である。
【0032】
なお、本実施形態の3次元セルが形成されるセル形成目標空域は、海、川又は湖の上空であってもよい。また、ドローン20で形成する3次元セルは、地上又は海上等の水上に位置する端末装置61との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0033】
ドローン20の中継通信局21はそれぞれ、サービスリンク用アンテナ(以下「SLアンテナ」という。)215により、移動局である端末装置61と無線通信するための複数のビームを地面に向けて形成する。端末装置61は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローンに組み込まれた通信端末モジュールでもよいし、飛行機の中でユーザが使用するユーザ装置であってもよい。セル形成目標空域においてビームが通過する領域が3次元セルである。セル形成目標空域において互いに隣り合う複数のビームは部分的に重なってもよい。
【0034】
ドローン20の中継通信局21はそれぞれ、例えば、地上(又は海上)側のコアネットワークに接続された中継局としてのGW局(リピータ親機)70と無線通信するリピータ子機である。
【0035】
ドローン20の中継通信局21は、FLアンテナ211により無線通信可能な地上又は海上に設置されたGW局70を介して、移動通信網80のコアネットワークに接続されている。ドローン20とGW局70との間のフィーダリンクの通信は、マイクロ波又はミリ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0036】
ドローン20はそれぞれ、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。例えば、ドローン20はそれぞれ、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のドローン無線中継装置の位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。
【0037】
ドローン20それぞれの浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理は、移動通信網の通信センター等に設けられた管理装置としての管理装置(「遠隔制御装置」ともいう。)によって制御できるようにしてもよい。管理装置は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。この場合、ドローン20は、管理装置からの制御情報を受信したり管理装置に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、管理装置から識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。
【0038】
ドローン20はそれぞれ、自身又は周辺のドローン無線中継装置の浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理に関する情報、ドローン20の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、管理装置等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、ドローン20の目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、ドローン20の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、ドローン20の周辺の気流の風速及び風向、並びに、ドローン20の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0039】
中継通信局21と端末装置61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局21と端末装置61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi-Input and Multi-Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つの端末装置と同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU-MIMO(Single-User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なる端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つの端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU-MIMO(Multi-User MIMO)技術であってもよい。
【0040】
以下の説明において、ドローン20とGW局70を介した基地局90との間のリンクを「フィーダリンク」といい、ドローン20と端末装置61の間のリンクを「サービスリンク」という。特に、ドローン20とGW局70との間の区間を「フィーダリンクの無線区間」という。また、GW局70からドローン20を経由して端末装置61に向かう通信のダウンリンクを「フォワードリンク」といい、端末装置61からドローン20を経由してGW局70に向かう通信のアップリンクを「リバースリンク」ともいう。
【0041】
図1において、ドローン20は、例えば高度に位置し、単一のセル20A又は複数のセルを形成する。なお、空中滞在型(空中浮揚型)の通信中継装置がHAPSの場合、HAPSは約数十kmの成層圏に位置し、HAPSは単一また複数のセルを形成し、そのセルのフットプリントからなるサービスエリアの直径は例えば100~200kmである。
【0042】
図1において、ドローン20を用いた地上(又は水上)の端末装置61と直接通信する通信サービスは、サービスエリアの拡大、災害時の通信手段として非常に魅力的である。ドローン20の通信回線はGW局70とドローン20との間を結ぶフィーダリンクFLと、ドローン20と端末装置61との間を結ぶサービスリンクSLから成る。サービスリンクの通信容量はその中継周波数であるフィーダリンクの通信容量で決まることから、フィーダリンクの周波数利用効率を高める必要がある。特に図1に示すようにサービスリンクが多セル構成になった場合はフィーダリンクの通信容量が不足しやすくなるため、フィーダリンクの周波数有効利用技術が不可欠である。しかしながら、ドローン20とGW局70を一対一で構成した場合、フィーダリンクの周波数利用効率を高めることが難しい。
【0043】
そこで、本実施形態では、ドローン20との間の周波数分割複信(FDD)方式のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のGW局70を備え、一つのドローン20と複数のGW局70との間に形成したマルチフィーダリンクにおいて空間分割多重通信を行う「複数ゲートウェイフィーダリンクシステム」又は「複数ゲートウェイシステム」(以下「複数GWシステム」ともいう。)を構築している。この複数GWシステムでは、複数のフィーダリンク間の干渉を除去することにより、設置するGW局70の数の分だけ周波数利用効率を向上できる。
【0044】
なお、以下の実施形態では、ドローン20と複数のGW局70との間の空間分割多重通信をフィーダリンクのフォワードリンクのみで行う場合について説明するが、当該空間分割多重通信は、フィーダリンクのリバースリンクのみで行ってもよいし、フォワードリンクとリバースリンクの両方で行うようにしてもよい。
【0045】
図2(a)は実施形態に係る複数GWシステムの概略構成の一例を示す側面図であり、図2(b)はドローン20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)と複数のGW局70(1)~70(3)との関係を上方から見た説明図である。図示の例では、FLアンテナの数(N)及びGW局の数(N)はそれぞれ同数(図示の例では3)であり、同数のFLアンテナ211(1)~211(3)及びGW局70(1)~70(3)を互いに1対1で対応させて設けている。
【0046】
なお、FLアンテナ211及びGW局70の組数は2組でもよいし、4組以上であってもよい。また、図示の例では複数のGW局70は、ドローン20からの距離及びGW局間の間隔が互いに等しくなるように配置されているが、当該距離及び当該間隔の少なくとも一方は互いに異ならせてもよい。各GW局70(1)~70(3)は、ドローン20の各FLアンテナ211の受信する複素振幅が無相関となるように配置する。また、各GW局70(1)~70(3)のフィーダリンク用アンテナ(以下「GWアンテナ」という。)71(1)~71(3)は互いに直交する垂直偏波(V)及び水平偏波(H)の2偏波で送受信可能である。
【0047】
また、図示の例ではドローン20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)は、ドローン20の中心からの距離及びFLアンテナ間の間隔が互いに等しくなるように配置されているが、当該距離及び当該間隔の少なくとも一方はFLアンテナ間で互いに異ならせてもよい。例えば、当該距離及び当該間隔はFLアンテナ間で互いに異ならせてもよい。
【0048】
ドローン20の複数のFLアンテナ211(1)~211(3)はそれぞれ、GW局70(1)~70(3)に対応するアンテナ指向性ビーム(以下「指向性ビーム」又は「ビーム」という。)を有し、ドローン20は、複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビームがそれぞれ対応するGW局70(1)~70(3)の方向に向くようにFLアンテナ211(1)~211(3)を制御するアンテナ制御部を備えてもよい。アンテナ制御部による複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の指向性ビームの制御方式としては、ジンバル方式、電気方式(360度のビームフォーミング制御方式)、電気方式(角度限定のビームフォーミング制御方式+アンテナ切替)など、各種の方式を用いることができる。
【0049】
上記構成の複数GWシステムでは、GW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの少なくとも一方における干渉が大きくなるおそれがある。例えば、図2(b)に示すように、GW局70(1)から送信された希望信号(所望信号)S1がドローン20のFLアンテナ211(1)で受信されているときに、他のGW局70(2),70(3)から送信された信号が干渉信号I2,I3としてFLアンテナ211(1)で受信される。そのため、フィーダリンクのSINR特性が悪化するおそれがある。
【0050】
また、図3に示すように、ドローン20のFLアンテナ211(1)から送信された希望信号(所望信号)S1がGW局70(1)で受信されているときに、ドローン20の他のFLアンテナ211(2),211(3)から送信された信号が干渉信号I2,I3としてGW局70(1)で受信される。そのため、フィーダリンク(リバースリンク)のSINR特性が悪化するおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態では、以下に示すように見通し環境(LOS:Line-Of-Sight)対応のMIMO干渉キャンセラーをGW局間(フィーダリンク間)に適用し、GW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの干渉を低減することにより、フィーダリンク(フォワード、リバースリンク)のSINR特性を向上させている。
【0052】
以下、本実施形態の複数GWシステムにおけるGW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの干渉を低減するMIMO受信・送信干渉キャンセラーの構成及び方法について説明する。
【0053】
図4は、ウェイトWを近似式で求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図である。図5は、実施形態に係る複数GWシステムのマルチフィーダリンクにおけるドローン無線中継装置側に設けたフォワードリンクの干渉キャンセラー部220の概略構成の一例を示す説明図である。ドローン20のFLアンテナ211(1)~211(3)で受信される受信信号Eは、次式(2)で表される。式(2)中のHはフィーダリンクの伝搬路応答であり、SはGW局70(1)~70(3)から送信された希望信号(送信信号)であり、Nは干渉を含む雑音である。
【数2】
【0054】
例えば、ドローン20のFLアンテナ211(1)は、GW局70(1)から送信された希望信号S1(Y11)と、GW局70(2)から送信された干渉信号I2(Y12)と、GW局70(3)から送信された干渉信号I3(Y13)とを受信する。その受信信号AN1は、次式(3)で表される。
【数3】
【0055】
ドローン20の干渉キャンセラー部220は、GW局70(1)~70(3)から送信信号帯域外で送信されたパイロット信号Hを、FLアンテナ211(1)~211(3)で受信される受信信号Eから取り出す。更に、干渉キャンセラー部220は、受信信号Eから取り出したパイロット信号Hに基づいて、送信信号帯域内の任意の周波数fの伝搬路応答H(f)を推定する。また、干渉キャンセラー部220は、伝搬路応答H(f)の推定結果に基づいて、受信ウェイトW、送信ウェイトW又はその両方を計算する。
【0056】
次式(4)に示すように、GW局70(1)~70(3)から受信した受信信号Eに受信ウェイトWを適用することにより、複数のフィーダリンク間の干渉を低減した受信信号S’(≒希望信号S)をサービスリンク側に出力することができる。
【数4】
【0057】
また、次式(5)に示すように、サービスリンク側から入力されGW局70(1)~70(3)に送信する送信信号に送信ウェイトWを適用し、送信ウェイトWを適用した送信信号をGW局70(1)~70(3)に送信する。これにより、GW局70(1)~70(3)において複数のフィーダリンク間の干渉を低減した信号S’(≒希望信号S)を受信することができる。
【数5】
【0058】
例えば、次式(6)に示すように他のFLアンテナ211(2)及び211(3)で受信された信号S2,S3にそれぞれ対応するウェイトW2,W3を掛け、減算することにより、上記干渉信号I2,I3をキャンセルした希望信号S1(Y11)を出力することができる。GW局70(2),70(3)から送信された希望信号S2(Y22)及びS3(Y33)についても同様に他のGW局からの干渉信号をキャンセルすることができる。
【数6】
【0059】
図6は、ZF(Zero-Forcing)法によりウェイトWを求めて適用したMIMO干渉キャンセラーの一例を示す説明図である。例えばGW局70(1)から送信された信号は、ドローン20のFLアンテナ211(1)で希望信号S1(Y11)として受信されるだけでなく、干渉信号I1(Y12),I1'(Y13)としてFLアンテナ211(2)及び211(3)に受信される。更に、GW局70(2)から送信された信号は、干渉信号I2(Y21)としてFLアンテナ211(1)に受信されるだけでなく、干渉信号I2'(Y23)としてFLアンテナ211(3)に受信される。更に、GW局70(3)から送信された信号は、干渉信号I3(Y31)としてFLアンテナ211(1)に受信されるだけでなく、干渉信号I3'(Y32)としてFLアンテナ211(2)に受信される。図6のMIMO干渉キャンセラーでは、これらの干渉信号I1,I1',I2'及びI3'を考慮し、例えば次式(7)に示すように希望信号S1(Y11)を出力する。これにより、GW局間(フィーダリンク間)の干渉抑圧の精度を高めることができる。
【数7】
【0060】
上記MIMO干渉キャンセラーに用いるウェイトWを計算するには、ドローン20のFLアンテナ211(1)~211(3)との間の伝搬路応答H(図7参照)を把握する必要がある。特に、本実施形態の複数GWシステムでは、GW局70(1)~70(3)に対してドローン20の機体が相対的に動くため、その動きに応じて伝搬路応答Hも変化する。
【0061】
次式(8)は、図7に示す複数GWシステムにおけるGW局70(1)~70(3)のアンテナとドローン20のFLアンテナ211(1)~211(3)との間の伝搬路の伝搬路応答Hの一例を示している。GW局70(1)~70(3)のアンテナはそれぞれ希望信号(所望信号)s,s,sを送信し、ドローン20のFLアンテナ211(1)~211(3)はGW局70(1)~70(3)からの電波を受信して受信信号y,y,yを出力する。
【数8】
【0062】
次式(9)は伝搬路応答H中の行列要素を示している。式(9)中の|hij|は、第i番目のGW局70(i)のアンテナから送信されドローン20の第j番目のFLアンテナ211(j)で受信された信号の受信信号レベルに対応する。また、式(9)中のdijは、GW局70(i)のアンテナとドローン20の第j番目のFLアンテナ211(j)との間の経路長(図9参照)である。式(9)中の「f」及び「c」はそれぞれ、送受信される信号の周波数及び速度(=光速)である。
【数9】
【0063】
上記式(8)及び式(9)に示すように、伝搬路応答Hを推定するには、GW局70(i)とドローン20のFLアンテナ211(j)との間の経路長dijを把握する必要がある。各経路長dijを把握するのは困難である。そこで、本実施形態では、各経路長dijを把握するのではなく、複数GWシステムのフィーダリンクにおいて希望信号の送受信するアンテナ間の主経路を基準にし、その経路長を基準経路長dsとし、他のアンテナ間の経路長を基準経路長ds及び経路差Δdで表し、経路差Δdを求めることで基準となる基準経路成分からなる伝搬路応答(以下「基準伝搬路応答」ともいう。)に対する経路差成分からなる相対的な伝搬路応答(以下「相対伝搬路応答」ともいう。)を推定している。
【0064】
例えば、図8の複数GWシステムのフィーダリンクでは、GW局70(1)がドローン20のFLアンテナ211(1)に希望信号を送信し、GW局70(2)がドローン20のFLアンテナ211(2)に希望信号を送信し、GW局70(3)がドローン20のFLアンテナ211(3)に希望信号を送信している。従って、GW局70(i)のアンテナとFLアンテナ211(i)の間の3つの経路長dii(i=1,2,3)それぞれが基準経路長であり、他のGW局70(i)のアンテナとFLアンテナ211(j)の間の経路長dij(i≠j)はそれぞれ、基準経路長dii(i=1,2,3)と経路差Δdij(i≠j)との和で表すことができる。
【0065】
例えば、第1番目のGW局70(1)から送信した信号をドローン20の各FLアンテナ211(1)~211(3)で受信する伝搬路の場合、GW局70(1)のアンテナとドローン20の各FLアンテナ211(1)~211(3)との間の経路長d11、d21、d31図9参照)を直接把握するのは困難である。希望信号を送受信するGW局70(1)のアンテナとFLアンテナ211(1)との間の経路長d11を基準経路長とすると、他の経路の経路長d21、d31は次式(10)に示すように基準経路長d11と経路差Δd21、Δd31図10参照)との和で表すことができる。
【数10】
【0066】
上記経路差Δdij(i≠j)は、後述のように既知信号であるパイロット信号により把握することができる。また、次式(11)に示すように、伝搬路応答Hは、経路差成分hij(Δdij)(i≠j、i=1,2,3、j=1,2,3)からなる相対伝搬路応答と、基準経路成分(主経路成分)hii(dii)(i=1,2,3)からなる基準伝搬路応答で表すことができる。
【数11】
【0067】
上記式(11)中の経路差成分Δhij(=hij(Δdij))は次式(12)で表される。本実施形態では、式(12)中の経路差Δdijを求めることにより、基準伝搬路応答(主経路成分)に対する相対伝搬路応答(経路差成分Δhij=hij(Δdij))を推定している。
【数12】
【0068】
本実施形態では、上記伝搬路応答Hを動的に把握するため、送信信号帯域の外側の隣接周波数帯域(ガードバンド)において、各GW局70(1)~70(3)から狭帯域のパイロット信号を送信している。
【0069】
図11は、GW局70(1)~70(3)から送信される上り回線の送信信号帯域におけるパイロット信号の一例を示す説明図である。図12は、ドローン20で受信される上り回線の受信信号帯域におけるパイロット信号の一例を示す説明図である。図13は、フィルターで分離され伝搬路応答の導出に用いられるパイロット信号の一例を示す説明図である。図14は、図11図13のパイロット信号を用いたフィーダリンクの伝搬路応答の導出モデルの一例を示す説明図である。
【0070】
図示の例では、GW局70(1)~70(3)から希望信号S,S,Sが送信されるフィーダリンクの送信信号帯域FBに低周波側及び高周波側から隣接する第1の隣接帯域である第1ガードバンドGB1及び第2の隣接帯域である第2ガードバンドGB2それぞれに、各GW局70(1)~70(3)から送信される複数の既知信号である狭帯域のパイロット信号が分散配置されている。具体的には、第1ガードバンドGB1に各GW局70(1)~70(3)から送信される互いに周波数f,f,fが異なるパイロット信号SP1,SP2,SP3が位置している。また、第2ガードバンドGB2に各GW局70(1)~70(3)から送信される互いに周波数f’,f’,f’が異なるパイロット信号SP1’,SP2’,SP3’が位置している。
【0071】
ドローン20の中継通信局21は、GW局70(1)、70(2)及び70(3)から受信した第1ガードバンドGB1の複数のパイロット信号SP1,SP2,SP3をそれぞれフィルターで分離し、GW局70(1)、70(2)及び70(3)から受信した第2ガードバンドGB2の複数のパイロット信号SP1’,SP2’,SP3’をそれぞれフィルターで分離する。
【0072】
次に、ドローン20の中継通信局21は、図12に示すように受信信号から狭帯域受信フィルター218を用いて、周波数fのパイロット受信信号SPi(i=1~3)及び周波数f’のパイロット受信信号SPi’(i=1~3)を分離する(図13参照)。
【0073】
各GW局70(1)~70(3)から送信される互いに周波数f,f,f,f’,f’,f’が異なる複数のパイロット信号SP1,SP2,SP3及びパイロット信号SP1’,SP2’,SP3’が、第1ガードバンドGB1及び第2ガードバンドGB2に均等に分散されて配置されているので、各パイロット信号を狭帯域フィルターで分離して容易に個別検出することができる。
【0074】
中継通信局21は、周波数f及びf’のそれぞれについて、パイロット受信信号SPi,SPi’から次式(13)及び式(14)を用いて、次式(15)及び式(16)に示すようにk番目のGW局70(k)からドローン20のi番目のFLアンテナ211(i)への伝搬路応答hki及びhki’を求める。
【数13】

【数14】

【数15】

【数16】
【0075】
中継通信局21は、求めた伝搬路応答hkiの情報(式(13)~式(16)参照)を干渉キャンセラー部220に出力する。
【0076】
ここで、例えば、ドローン20のFLアンテナ211(1)及び211(2)が受信するパイロット信号h11,h11’,h21及びh21’はそれぞれ次式(17)、(18)、(19)及び(20)で表され、それらの信号の比h21/h11及びh21’/h11’はそれぞれ、次式(21)及び(22)で表される。
【数17】

【数18】

【数19】

【数20】

【数21】

【数22】
【0077】
上記式(17)~(20)中のd11はGW局70(1)とFLアンテナ211(1)との間の経路長であり、上記式(17)~(22)中のΔd21はGW局70(1)とFLアンテナ211(1)及び211(2)それぞれとの間の経路長の差(経路差)である。GW局70(1)とFLアンテナ211(2)との間の経路長はd11+Δd21で表される。
【0078】
上記式(21)と式(22)の差分から次式(23)が成り立つので、上記経路差Δd21は次式(24)で求めることができる。経路差Δd21は定数部(c/2π(f’-f))と測定部(Δθ’21-Δθ21)とからなる。Δθ21は、h21の位相θ21とh11の位相θ11の位相差であり、Δθ’21は、h21’の位相θ’21とh11’の位相θ’11の位相差である。上記測定部(Δθ’21-Δθ21)は、位相差Δθ21と位相差Δθ’21の差分である。
【数23】

【数24】
【0079】
GW局70(1)とFLアンテナ211(1)及び211(3)それぞれとの間の経路差Δd31及びその他の経路差Δd12,Δd13,Δd23,Δd32についても、同様に求めることができる。経路差Δdjiの一般式は、次式(25)になる。
【数25】
【0080】
本実施形態の複数GWシステムのドローン20とGW局70との間のフィーダリンクの無線区間の障害物のない見通し環境(LOS:Line-Of-Sight)での伝搬の場合、上記経路差Δdji(Δd21,Δd31,Δd12,Δd13,Δd23,Δd32)を用いて、上記フィーダリンクの送信信号帯域における任意の周波数f(例えば中心周波数fsc)における伝搬路応答は、例えば次式(26)のH(f)のように推定できる。
【数26】
【0081】
上記伝搬路応答H(f)の推定結果に基づいて受信ウェイトW及び送信ウェイトWを求め、受信信号及び送信信号のそれぞれに適用することにより、GW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの干渉を低減することができる。
【0082】
なお、上記伝搬路応答の行列を用いて、干渉キャンセラーに用いるウェイトWは、例えば、伝搬路応答の行列を用いたZF(Zero-Forcing)法又はMMSE(Minimum Mean Square Error)法により計算することができる。
【0083】
例えば、ZF法では、次式(27)のように伝搬路応答の行列Hfc(=HF(f))逆行列でウェイトWを求めることができる。
【数27】
【0084】
また、MMSE法では、次式(28)によりウェイトWを用いることができる。ここで、Nは送信アンテナ数であり、γはSNRである。
【数28】
【0085】
干渉キャンセラー部220は、上記ウェイトWを用いることにより、例えば、次式(29)の受信信号Yから干渉信号をキャンセルした次式(30)の復調信号Eに変換して出力することができる。干渉キャンセラー部220は、式(30)中のウェイトWの行列の各要素の値をWテーブルのデータとして記憶する。
【数29】

【数30】
【0086】
ここで、上記ウェイトWを求めるときに用いる伝搬路応答Hfc(=HF(f))に、上記経路差Δdji(Δd21,Δd31,Δd12,Δd13,Δd23,Δd32)が含まれるので、経路差Δdjiの測定精度すなわち推定精度が干渉低減能力に直結する。
【0087】
例えば、上記式(26)の伝搬路応答H(f)の経路差Δd21に対応する位相差の部分は、次式(31)のように定数部(f/(f’-f))と測定部(Δθ’21-Δθ21)とからなる。一般式で表記すると、伝搬路応答H(f)の経路差Δdjiに対応する位相差の部分は、次式(32)のように定数部(f/(f’-f))と測定部(Δθ’ji-Δθji)とからなる。
【数31】

【数32】
【0088】
上記式(31)において、例えば、フィーダリンクの送信信号帯域内の周波数fを29[GHz]とし、送信信号帯域を20[MHz]とすると、上記定数部(f/(f’-f))が約1500になる。仮に、上記測定部(Δθ’21-Δθ21)の測定誤差が0.1[度]あったとすると、上記位相差の誤差は150[度]になってしまい、GW局間(フィーダリンク間)のフォワードリンク及びリバースリンクの干渉の低減能力が低下し、フィーダリンクの通信品質が悪化するおそれがある。
【0089】
そこで、本実施形態のドローン20の干渉キャンセラー部220では、GW局70(1)~70(3)から受信した受信信号から取り出した複数のパイロット受信信号を再利用して上記経路差Δdji(j≠i)を補正することにより、ウェイトWを求めるときに用いる伝搬路応答Hfc(=HF(f))の精度を高め、複数の経路差Δdjiの推定誤差に起因した通信品質の劣化を防止している。
【0090】
干渉キャンセラー部220は、例えば、次の手順A1~A3で経路差Δdjiの補正を行う。
A1.前述の複数のGW局70(1)~70(3)それぞれと複数のFLアンテナ211(1)~211(3)との間の主経路を基準にした複数の第1経路差Δdji(Δd21,Δd31,Δd12,Δd13,Δd23,Δd32)を推定する。
A2.前述の複数のパイロット受信信号に基づいて、複数の第1経路差Δdjiのそれぞれに対する複数の補正値xji(x21,x31,x12,x13,x23,x32)を求める。
A3.次式(33)に示すように、複数の第1経路差のそれぞれを複数の補正値xjiで補正した補正後の複数の第2経路差Δdji_new(Δd21_new,Δd31_new,Δd12_new,Δd13_new,Δd23_new,Δd32_new)に基づいて、フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答H(f)を推定する。
【数33】
【0091】
経路差の測定誤差を補正した伝搬路応答H(f)は、前述の式(26)において第1経路差Δdji(Δd21,Δd31,Δd12,Δd13,Δd23,Δd32)の代わりに、式(33)に示す第2経路差Δdji_new(Δd21_new,Δd31_new,Δd12_new,Δd13_new,Δd23_new,Δd32_new)を用いて推定することができる。この補正後の第2経路差Δdji_newを用いて推定した伝搬路応答の推定結果に基づいて、前述の複数のウェイトWを計算して記憶する。
【0092】
図15は、実施形態に係るドローン無線中継装置20におけるパイロット受信信号の経路差補正の一例を示す説明図である。なお、図15の例(後述の図16図18でも同様)では、GW局70(1)の第1のGWアンテナ71(1)から送信されたパイロット信号Sが、経路#1で伝搬してドローン20の第1のFLアンテナ211(1)で受信されるとともに、経路#2で伝搬してドローン20の第2のFLアンテナ211(2)で受信されている例を示している。経路#1と経路#2の間には経路差Δdがある。第1のFLアンテナ211(1)で受信されたパイロット受信信号S#1と、第2のFLアンテナ211(2)で受信されたパイロット受信信号S#2は、経路差Δdに測定誤差xが加わった第1経路差Δd+xに対応する位相差がある。
【0093】
図15において、例えば、パイロット受信信号S#1の位相を変化させながら、2つのパイロット受信信号S#1’、S#2の差を求め、その差が最小になるときの位相Δd+xに基づいて、第1経路差Δd+xに対する補正値xを求めることができる。すなわち、パイロット受信信号S#1の位相を変化させながら、2つのパイロット受信信号S#1、S#2が一致するxを探す。このように探した補正値xで第1経路差Δd+xを補正することにより、誤差xを含まない又は誤差xを低減した第2経路差Δdを推定することができる。
【0094】
なお、図15の例では、パイロット受信信号S#1の位相を変化させながら補正値xを探しているが、他方のパイロット受信信号S#2の位相を変化させながら補正値xを探してもよい。
【0095】
図16は、実施形態に係るドローン無線中継装置20におけるパイロット受信信号の振幅補正の一例を示す説明図である。ドローン20の複数のFLアンテナ211(1)、FLアンテナ211(2)の間には、アンテナ利得パターンによる受信レベル差があるため、2つのパイロット受信信号S#1、S#2の振幅が異なり、経路差の補正値xを精度よく探すことができないおそれがある。
【0096】
そこで、図16の例では、ドローン20の複数のFLアンテナ211(1)、FLアンテナ211(2)のうち、FLアンテナ211(2)で受信した受信レベルが小さいパイロット受信信号S#2を増幅し、2つのパイロット受信信号S#1、S#2’の振幅をそろえる振幅補正を行っている。この振幅補正によって振幅をそろえたパイロット受信信号S#1、S#2’について前述の図15の経路差補正を行うことにより、経路差の補正値xを精度よく探すことができる。
【0097】
図17は、実施形態に係るドローン無線中継装置20におけるパイロット受信信号の経路差及び振幅の同時補正の一例を示す説明図である。図17の例では、FLアンテナ211(2)で受信した受信レベルが小さいパイロット受信信号S#2を増幅するとともに、FLアンテナ211(1)で受信したパイロット受信信号S#1の位相を変化させながら、2つのパイロット受信信号S#1’、S#2’の差が最小になるx(2つのパイロット受信信号S#1’、S#2’が一致するx)を探している。この例でも経路差の補正値xを精度よく探すことができる。
【0098】
図18は、実施形態に係るドローン無線中継装置における17のパイロット受信信号の誤差関数E(ε)を用いた経路差及び振幅の同時補正の一例を示すブロック図である。
図18において、まず、次式(34)で示すように、2つのパイロット受信信号S#1、S#2(h1#1、h1#2)の振幅(電力振幅)の比γ(=|h1#2/|h1#1)を計算する。
【数34】
【0099】
図中の乗算器900は、次式(35)で示すようにパイロット受信信号S#1に補正係数901をかけて補正した中間信号を生成する。補正係数901は、第1の補正係数902~第4の補正係数905で構成される。第1の補正係数902は、2つのパイロット受信信号S#1、S#2の振幅が等しくなるように一方のパイロット受信信号S#1に前記比γをかけて振幅を補正する補正係数である。第2の補正係数903は、後段の加算器910で他方のパイロット受信信号S#1に加算されるときに減算となるように符号をマイナスにする位相反転用の補正係数である。第3の補正係数904は、前記推定済みの第1経路差Δdに対応する位相分だけパイロット受信信号S#1を進める又は遅らせるための補正係数である。第4の補正係数905は、探索対象の位相差の補正値である補正角度ε[度]だけパイロット受信信号S#1を進める又は遅らせるための補正係数である。
【数35】
【0100】
加算器910は、乗算器900から出力されたパイロット受信信号S#1の中間信号と、他方のパイロット受信信号S#2とを加算することにより、前記位相差の補正値(補正角度)εの関数からなる誤差関数E(ε)を出力する。この誤差関数E(ε)の値が最小になるときの補正角度εに基づいて、第1経路差Δdに対する補正値x(=λP1ε/360)を求める。この補正角度εを用いて求めた補正値xにより補正後の第2経路差Δd21_newを推定する。
【0101】
以上示した補正値x(補正角度ε)及び補正後の第2経路差Δd21_newの推定は、他の第1経路差Δd31,Δd12,Δd13,Δd23,Δd32についても行う。複数の第1経路差Δdjiを補正して推定した補正後の第2経路差Δdji_newの一般式は、次式(36)のように表すことができる。式(36)の右辺第2項が補正値xji(x21,x31,x12,x13,x23,x32)である。
【数36】
【0102】
なお、図18の例では、パイロット受信信号S#1について中間信号を生成しているが、パイロット受信信号S#2について中間信号を生成し、その中間信号とパイロット受信信号S#1とを加算して誤差関数E(ε)を出力してもよい。
【0103】
図19は、パイロット受信信号の経路差Δdを10[mm]と想定したときのパイロット受信信号の経路差の補正角度と誤差関数の値との関係のコンピュータ・シミュレーション結果の一例を示すグラフである。図19の横軸は、前述の図18のパイロット受信信号の経路差Δd(10[mm])に対する補正角度εである。図19の縦軸は、周波数を2[GHz]として前述の図18の誤差関数Eを計算した値である。図19に示すように、前記補正値xを探すときに補正角度εを変化させて走査する範囲は、補正値xを探索する探索時間を短くするために、予め推定した前記第1経路差Δdを中心とした所定角度範囲であってもよい。この所定角度範囲は、本実施形態の複数GWシステムの運用を開始したときには補正値xを確実に探索できるように全角度をカバーする初期設定範囲(例えば、-180[度]~+180[度])に設定し、通常の運用中のときは探索時間を短くするために前記初期設定範囲よりも狭い範囲(例えば、-60[度]~+60[度]、-90[度]~+90[度]など)に設定してもよい。
【0104】
また、前記補正値xの誤探索を回避するために、例えば図19の曲線C1に示すように、誤差関数E(ε)の値が所定の閾値(例えば-20dB)よりも小さい条件下で最小になるときの前記補正角度εに基づいて、第1経路差Δdに対する補正値xを求めてもよい。
【0105】
図20は、パイロット受信信号の経路差Δdの補正角度εと誤差関数Eの実測値C2との関係の一例を示すグラフである。図20の横軸は、前述の図18のパイロット受信信号の経路差Δd(実測値:9.5[mm])に対する補正角度εである。図20の縦軸は、前述の図18の誤差関数Eを測定した実測値である。測定に用いた周波数は2[GHz]である。図20に示すように、パイロット受信信号の第1経路差Δdに対する補正を行わないときの干渉低減は6[dB]であったが、本実施形態の第1経路差Δdの補正を行ったときは30[dB]程度の高い干渉低減が得られた。
【0106】
なお、複数の第1経路差Δdjiそれぞれに対する複数の補正値xjiは、所定の補正タイミングに求めて記憶してもよい。ここで、前記補正タイミングは、予め設定した周期的又は非周期的の定期的なタイミング(例えば、0.1[ms]~10[ms]等の所定時間ごと、又は、定期的に受信するパイロット信号の受信回数ごと)でもよい。また、前記補正タイミングは、フィーダリンクの通信品質が所定の閾値よりも悪化したことを検知したタイミングでもよい。
【0107】
図21は、本実施形態に係るドローン20の中継通信局21の主要構成の一例を示す説明図である。図21において、中継通信局21は、フィーダリンク通信部221とサービスリンク通信部222と周波数変換部223と各部を制御する制御部224と干渉抑圧部225を備える。
【0108】
フィーダリンク通信部221は、GW局70の数(FLアンテナ211の数)に対応する複数の受信機を備え、FLアンテナ211を介してGW局70との間でフィーダリンク用の第1周波数F1の無線信号を送受信する。
【0109】
フィーダリンク通信部221の複数の受信機は、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれから送信された複数のパイロット信号を受信し、複数のパイロット信号が重複したパイロット信号群をフィルターで分離する。また、各受信機は、上記フィルターで分離された複数のパイロット信号を、フィーダリンクの伝搬路を伝搬してきたパイロット信号hkiの受信結果として干渉抑圧部225に出力する。
【0110】
サービスリンク通信部222は、サービスリンク用アンテナ115を介して端末装置61との間でサービスリンク用の第2周波数F2の無線信号を送受信する。周波数変換部223は、フィーダリンク通信部221とサービスリンク通信部222との間で第1周波数F1と第2周波数F2との周波数変換を行う。中継通信局21で中継される無線信号は、例えば、LTE又はLTE-Advancedの標準規格に準拠したOFMDA通信方式を用いて送受信してもよい。この場合は、無線信号の遅延が異なるマルチパスが発生しても良好な通信品質を維持できる。
【0111】
制御部224は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより各部を制御することができる。特に、本実施形態では、制御部224は、前記複数のフィーダリンクの伝搬空間相関の程度を示す相関指標値と所定の閾値との比較結果に基づいて、複数のFLアンテナ211(1)~211(3)の間の相互位置関係を変化させる手段としても機能する。例えば、HAPS本体側のアンテナ駆動・切替部25と連携して前述のアンテナ駆動・切替の制御を行う。
【0112】
干渉抑圧部225は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、フィーダリンク通信部221から出力された複数のパイロット信号の受信結果(hki)に基づいて、前述の伝搬路応答の推定、ウェイトの計算及び干渉キャンセル信号処理を行う。
【0113】
干渉抑圧部225は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、次のB1~B8を行う手段としても機能する。
B1.複数のFLアンテナ211(1)~211(3)を介して受信した受信信号から、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれからフィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出す手段。
B2.前記複数のパイロット受信信号に基づいて、複数のGW局70(1)~70(3)それぞれと複数のFLアンテナ211(1)~211(3)との間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段。
B3.前記複数のパイロット受信信号に基づいて、複数の第1経路差djiのそれぞれに対する複数の補正値xjiを求める手段。
B4.前記複数の第1経路差djiのそれぞれを複数の補正値xjiで補正した補正後の複数の第2経路差Δdji_newに基づいて、フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答H(f)を推定する手段。
B5.複数のGW局70(1)~70(3)それぞれについて、前記伝搬路応答H(f)の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトW、受信ウェイトW又はその両方を計算して記憶する手段。
B6.複数のGW局70(1)~70(3)それぞれについて、複数のFLアンテナ211(1)~211(3)を介して受信した受信信号に複数の受信ウェイトWを適用する手段。
B7.複数のGW局70(1)~70(3)それぞれについて、複数のFLアンテナ211(1)~211(3)を介して送信する送信信号に複数の送信ウェイトWを適用する手段。
【0114】
なお、移動通信網の通信オペレータの遠隔制御装置(制御元)からの制御情報を受信したり遠隔制御装置に情報を送信したりする場合は、制御部224に接続されたユーザ端末(移動局)226を備えてもよい。制御部224は、例えば、遠隔制御装置から送信されてきた制御情報をユーザ端末(移動局)226で受信し、その制御情報に基づいて各部を制御してもよい。ここで、遠隔制御装置とユーザ端末(移動局)226との間の通信は、例えば遠隔制御装置及びユーザ端末(移動局)226それぞれに割り当てられたIPアドレス(又は電話番号)を用いて行ってもよい。
【0115】
以上、本実施形態によれば、複数GWシステムにおけるドローン20と複数のGW局70(1)~70(3)との間の同一周波数のマルチフィーダリンクにおける複数のフィーダリンク間の干渉を動的に抑圧することができる。
【0116】
特に本実施形態によれば、複数GWシステムにおけるドローン20に組み込まれた中継通信局21に接続された複数のFLアンテナ211(1)~211(3)と複数のGW局70(1)~70(3)との間の複数の経路差の推定誤差に起因した通信品質の劣化を防止することができる。
【0117】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0118】
ハードウェア実装については、実体(例えば、無線中継局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、無線中継局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0119】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0120】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0121】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0122】
20 ドローン型の通信中継装置(ドローン無線中継装置、ドローン)
21 中継通信局
61 端末装置
70,70(1)~70(3) ゲートウェイ局(GW局)
71,71(1)~71(3) フィーダリンク用アンテナ(GWアンテナ)
200C 3次元セル
200F フットプリント
211、211(1)~211(3) フィーダリンク用アンテナ(FLアンテナ)
215 サービスリンク用アンテナ(SLアンテナ)
220 干渉キャンセラー部
221 フィーダリンク通信部
222 サービスリンク通信部
223 周波数変換部
224 制御部
225 干渉抑圧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2022-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置であって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記干渉抑圧部は、
前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出す手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求める手段と、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用する手段と、を有する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
請求項1の通信中継装置において、
前記干渉抑圧部は、前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項3】
端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置であって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して、互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信するフィーダリンク通信部と、
前記複数のゲートウェイ局との間に形成する複数のフィーダリンク間の干渉を抑圧する干渉抑圧部と、を備え、
前記干渉抑圧部は、
前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出す手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求める手段と、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶する手段と、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用する手段と、を有する、
ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの通信中継装置において、
前記複数の第1経路差のそれぞれについて、前記第1経路差の主経路及び他の経路に対応する2つのパイロット受信信号のいずれか一方のパイロット受信信号に対する他方のパイロット受信信号の位相差を変化させながら、前記2つのパイロット受信信号の差を求め、前記2つのパイロット受信信号の差が最小になるときの前記位相差に基づいて前記第1経路差に対する補正値を求める、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項5】
請求項4の通信中継装置において、
前記2つのパイロット受信信号の振幅が互いに同じ値になるように、前記2つのパイロット受信信号の少なくとも一方の振幅を調整する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項6】
請求項5の通信中継装置において、
前記パイロット受信信号の周波数をf[Hz]とし、前記パイロット受信信号の波長をλ[m]とし、前記第1経路差をΔd[m]とし、前記2つのパイロット受信信号の振幅の絶対値の比をγとし、前記変化させる位相差の補正角度をε[度]とし、光速をc[m/s]としたとき、
前記一方のパイロット受信信号と、前記他方のパイロット受信信号を次の(1)式に示すように補正した信号とを加算することにより、誤差関数E(ε)の値を求め、前記誤差関数E(ε)の値が最小になるときの前記位相差の補正角度εに基づいて、前記第1経路差に対する補正値を求める、ことを特徴とする通信中継装置。
【数1】
【請求項7】
請求項6の通信中継装置において、
前記位相差の補正角度εを、前記第1経路差を中心とした所定角度の範囲で走査し、前記誤差関数E(ε)の値が所定の閾値よりも小さい条件下で最小になるときの前記位相差の補正角度εに基づいて、前記第1経路差に対する補正値を求める、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの通信中継装置において、
所定の補正タイミングに、前記複数のパイロット受信信号に基づいて前記複数の第1経路差それぞれに対する前記複数の補正値を求めて記憶する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの通信中継装置と、互いに時間同期され前記空中滞在型の通信中継装置の前記中継通信局との間のフィーダリンクにおいて同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する複数のゲートウェイ局と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法であって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すことと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定することと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めることと、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用することと、
を含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【請求項11】
請求項10の干渉抑圧方法において、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用することを、含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【請求項12】
空中滞在型の通信中継装置に組み込まれ端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と、同一周波数で互いに異なる中継信号を送受信する互いに時間同期された複数のゲートウェイ局との間におけるフィーダリンクの干渉抑圧方法であって、
数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、前記複数のゲートウェイ局それぞれから前記フィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すことと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定する手段と、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めることと、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶することと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用することと、
を含むことを特徴とする干渉抑圧方法。
【請求項13】
端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、複数のゲートウェイ局それぞれからフィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すためのプログラムコードと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定するためのプログラムコードと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めるためのプログラムコードと、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイトを計算して記憶するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項13のプログラムにおいて、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の受信ウェイト及び複数の送信ウェイトを計算して記憶し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号に前記複数の受信ウェイトを適用し、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用するためのプログラムコードを、含むことを特徴とするプログラム。
【請求項15】
端末装置の無線通信を中継するリピータ型の中継通信局と複数のフィーダリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
複数のフィーダリンク用アンテナを介して受信した受信信号から、複数のゲートウェイ局それぞれからフィーダリンクの送信信号帯域の隣接外側の周波数帯域で送信された複数のパイロット信号に対応する複数のパイロット受信信号を取り出すためのプログラムコードと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数のゲートウェイ局それぞれと前記複数のフィーダリンク用アンテナとの間の主経路を基準にした複数の第1経路差を推定するためのプログラムコードと、
前記複数のパイロット受信信号に基づいて、前記複数の第1経路差のそれぞれに対する複数の補正値を求めるためのプログラムコードと、
前記複数の第1経路差のそれぞれを前記複数の補正値で補正した補正後の複数の第2経路差に基づいて、前記フィーダリンクの送信信号帯域における伝搬路応答を推定するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記伝搬路応答の推定結果に基づいて複数の送信ウェイトを計算して記憶するためのプログラムコードと、
前記複数のゲートウェイ局それぞれについて、前記複数のフィーダリンク用アンテナを介して送信する送信信号に前記複数の送信ウェイトを適用するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
例えば、ZF法では、次式(27)のように伝搬路応答の行列Hfc(=HF(f))逆行列でウェイトWを求めることができる。
【数27】