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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110483
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】無菌排水システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
C02F1/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005937
(22)【出願日】2021-01-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(57)【要約】
【課題】製造ラインが外気に晒されないよう、製造ラインから液体を排出することができる無菌排水システムを提供する。
【解決手段】製造ラインL1に接続された排水タンク12と、排水タンク12から排出される液体が流通する排水ラインEと、を備え、排水ラインEは、排水タンク12に接続された接続部Cよりも上方であり、かつ、排水タンク12の頂部Tよりも下方に位置する液面規定部Hを含む。排水タンク12に所定量の液体が貯留されている状態において、製造ラインL1から排水タンク12及び排水ラインEに液体を連続的に排出させる制御を行う。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインに接続された排水タンクと、
前記排水タンクから排出される液体が流通する排水ラインと、を備え、
前記排水ラインは、前記排水タンクに接続された部分よりも上方であり、かつ、前記排水タンクの頂部よりも下方に位置する液面規定部を含む
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項2】
請求項1に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水タンクの内部を外気に連通させるエア抜きラインと、
前記エア抜きラインに設けられた無菌フィルター装置と、を備え、
前記エア抜きラインは、前記排水ラインよりも上方において前記排水タンクに接続されている
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水ラインは、途中で分岐した第1排水ライン及び第2排水ラインを備え、
前記第1排水ライン及び前記第2排水ラインの何れか一方は、前記排水タンクよりも下方に配置されている
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水ラインが滅菌され、かつ外気から遮断されている状態で、
前記製造ラインから前記排水ラインへ液体の排出を開始する制御を行う制御装置を備える
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項5】
請求項4に記載する無菌排水システムにおいて、
前記制御装置は、
前記排水タンクに所定量の液体が貯留されている状態において、
前記製造ラインから前記排水タンク及び前記排水ラインに液体を連続的に排出させる制御を行う
ことを特徴とする無菌排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造ラインが外気に晒されないように、製造ラインから液体を排出することができる無菌排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料、注射剤、点眼剤等の液状のプロセス液を処理する製造ラインを備えたシステムでは、フィルターでプロセス液を濾過することで滅菌する工程が実施されている。通常、このフィルターについては、完全性試験が実施されている。フィルターの完全性試験とは、フィルターに物理的欠陥がなく、定められた性能を有していることを確認するための試験である。この完全性試験によりフィルターの濾過機能が損なわれていないことを確認するので、最終的に得られるプロセス液が無菌であることを担保することができる。
【0003】
完全性試験の一例としては、まず、フィルターを水で湿潤させて気体が流通しない状態とする。そして、フィルターの一次側を所定の圧力へ上昇させ、一次側の圧力を測定する。測定された圧力に低下がなければ、フィルターの機能は損なわれていないと判断する。一方、圧力が低下すると、フィルターが破れるなどしており、フィルターの機能が損なわれていると判断する。
【0004】
完全性試験の開始前では、フィルター自体に通水による排水を行い、湿潤した状態となる。また、そのフィルターを収容するフィルター装置内には水が残留している。フィルター自体に含浸した水や、フィルター周りに残留した水は、タンクに一定量溜まるまで排出し、その後、タンクから排出ラインへ排出し、タンク内部は外気に晒されている。
【0005】
単純に排水を行うと、排水後に外気が排水ラインを介してタンクや更に上流のフィルターなどの製造ラインに侵入するおそれがある。このため、排水ラインにバルブを設け、バルブを所定量開き、排水によって排水ラインをウォーターシールすることで、排水時に外気が侵入することを防止した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、バルブの開度と排水の流量によっては完全にウォーターシールを形成できない場合もあり得る。また、バルブの開度を制御するための機構が必要となり、コストの増大や、システムの複雑化を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3928093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、製造ラインが外気に晒されないよう、製造ラインから液体を排出することができる無菌排水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、製造ラインに接続された排水タンクと、前記排水タンクから排出される液体が流通する排水ラインと、を備え、前記排水ラインは、前記排水タンクに接続された部分よりも上方であり、かつ、前記排水タンクの頂部よりも下方に位置する液面規定部を含むことを特徴とする無菌排水システムにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造ラインが外気に晒されないよう、製造ラインから液体を排出することができる無菌排水システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】プロセス液を処理する製造ラインを含む無菌排水システムの概略構成図である。
図2】無菌排水システムの動作を説明するための概略構成図である。
図3】無菌排水システムの動作を説明するための概略構成図である。
図4】無菌排水システムの動作を説明するための概略構成図である。
図5】無菌排水システムの動作を説明するための概略構成図である。
図6】無菌排水システムの動作を説明するための概略構成図である。
図7】比較例に係る無菌排水システムの動作を説明するための概略構成図である。
図8】無菌排水システムの変形例を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本実施形態に係るプロセス液を処理する製造ラインを含む無菌排水システムの概略構成図である。本実施形態の無菌排水システム1は、プロセス液の一例として液状の医薬品(以下、薬液)を製造するプラントの一部である。
【0013】
具体的には、無菌排水システム1は、調製タンク(図示せず)、フィルター装置10、充填装置11、及びこれらの装置を接続する配管からなる製造ラインL1、並びに排水タンク12及び排水ラインEを備えている。
【0014】
製造ラインL1は、薬液や洗浄用の流体が流通する配管であり、調製タンク内の薬液は、製造ラインL1を介してフィルター装置10、充填装置11に流通するようになっている。洗浄用の流体は調製タンク、フィルター装置10、充填装置11等を流通して洗浄、滅菌を行い、図示しない洗浄用流体の処理装置へと排出される。
【0015】
フィルター装置10は、薬液を濾過するフィルターを備えた装置である。充填装置11は、フィルター装置10で処理された薬液を容器に充填する装置である。フィルター装置10及び充填装置11は何れも公知のものであるので詳細な説明は省略する。
【0016】
製造ラインL1は、フィルター装置10と充填装置11の間の分岐点D1で分岐しており、分岐点D1には分岐ラインL2が接続されている。分岐ラインL2は、製造ラインL1と排水タンク12とを接続する配管である。
【0017】
排水タンク12は、分岐ラインL2よりも高さ方向において下方に配置されたタンクである。また、排水タンク12は、分岐ラインL2を介して製造ラインL1に接続されており、製造ラインL1から排出される液体を一時的に貯留する。排水タンク12の下部には、排水ラインEが接続されている。
【0018】
排水ラインEは、液面規定部Hを含む、排水タンク12と排水処理部13を接続する配管である。液面規定部Hについては後述する。また、排水ラインEは、途中で分岐しており、上流側(排水タンク12側)の分岐点D2、下流側(排水処理部13側)の分岐点D3を有している。排水ラインEは、途中の分岐点D2で分岐した第1排水ラインE1及び第2排水ラインE2を含んでいる。そして、これらの第1排水ラインE1及び第2排水ラインE2は、分岐点D3で合流している。
【0019】
より具体的には、排水ラインEは、排水タンク12の下部に接続され、その下部から垂直方向に下った後に水平方向に延びる第0排水ラインE0を含んでいる。この第0排水ラインE0は、分岐点D2で分岐している。第1排水ラインE1は、分岐点D2において水平方向から垂直方向に立ち上がっており、さらに途中で水平方向に延び、そして垂直方向に下って分岐点D3で第2排水ラインE2に合流している。第2排水ラインE2は、分岐点D2からそのまま水平に延びて分岐点D3で第1排水ラインE1に合流している。第3排水ラインE3は、水平方向に延び、分岐点D3と排水処理部13とを接続する。
【0020】
排水処理部13は、排水ラインEから排出された水などの液体を処理する装置群からなる。排水処理部13は、例えば、水から異物を取り除いたり、殺菌や滅菌を行うなどして再利用可能にする装置などで構成されている。
【0021】
排水タンク12には、エア抜きラインAが接続されている。エア抜きラインAは、排水タンク12の内部を外気に連通させる配管である。エア抜きラインAには、無菌フィルター装置14が接続されている。
【0022】
無菌フィルター装置14は、外気中に含まれる異物や微生物などを捕捉するフィルターを含む装置である。この無菌フィルター装置14により、外気中の異物等が排水タンク12の内部に侵入しないようになっている。
【0023】
また、バルブV1は第1排水ラインE1に、バルブV2は第2排水ラインE2に設けられている。バルブV3は製造ラインL1においてフィルター装置10の上流側に設けられ、バルブV4は製造ラインL1において分岐点D1と充填装置11との間に設けられている。バルブV5は分岐ラインL2に設けられている。バルブV6はエア抜きラインAに設けられている。
【0024】
バルブV1~V6は、後述の制御装置により制御可能なバルブである。具体的には、全開または全閉の何れかの状態に切替えることができる電磁弁、または、開度を調節できる調節弁などである。
【0025】
無菌排水システム1は、特に図示しないが、上述の構成機器を制御する制御装置を備えている。制御装置は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などである。制御装置は、製造ラインL1における薬液の処理プロセスや、製造ラインL1の洗浄(CIPやSIP)を行うための制御を行う。さらに、制御装置は、後述する排水処理のための制御を行う。
【0026】
液面規定部Hは、排水ラインEの一部であって、排水タンク12に貯留される液面の最高の高さを規定する。具体的な形状としては、液面規定部Hは、排水ラインEのうち、接続部Cよりも上方であり、かつ、頂部Tよりも下方の範囲内において高さ方向の最も高い位置に配置された部分である。本実施形態では、第1排水ラインE1のうちの水平部分が液面規定部Hとなっている。
【0027】
なお、接続部Cは、排水ラインEのうち、排水タンク12に接続された部分である。排水タンク12の頂部Tは、排水タンク12の液体を貯留する空間を形成する部分のうち、高さ方向において最も高い部分である。
【0028】
排水ラインEに液面規定部Hを設けることで、バルブV2が閉じている状態では、排水タンク12に貯留される液体の液面の最高値は、液面規定部Hの高さと同等となる。換言すると、排水タンク12は、液体で満たされることはなく、上部に気体が充填される空間S(図4参照)が確保される。
【0029】
また、第2排水ラインE2は、排水タンク12よりも高さ方向において下方に位置している。このような構成では、バルブV2を開放した際には、排水タンク12に貯留された液体を残らず排水処理部13に排出できるようになっている。
【0030】
図2から図6を用いて、上述した構成の無菌排水システム1において、連続的に行われる洗浄(CIP及びSIP)、フィルター装置10の完全性試験、及び排水の各処理について説明する。なお各図に示したバルブV1からV6に施した白塗りは開いており、黒塗りは閉じていることを表している。
【0031】
図2に示すように、まず、制御装置は、無菌排水システム1の洗浄を行う。本実施形態では、フィルター装置10、排水タンク12、製造ラインL1、分岐ラインL2、排水ラインE、エア抜きラインAを対象としてCIP及びSIPを行う。SIPの実行後は、バルブV1~V4、V6を閉鎖する。またバルブV5は開放する。これにより、SIPで用いた滅菌用の蒸気によって、フィルター装置10、排水タンク12、製造ラインL1、分岐ラインL2、排水ラインEの内部が滅菌される。
【0032】
図3に示すように、次に、制御装置は、無菌排水システム1においてフィルター装置10の完全性試験を行う。具体的には、バルブV3及びバルブV6を開放し、フィルター装置10の上流から製造ラインL1に水を供給する。完全性試験を行うために水を供給する装置構成としては、水を貯留するタンク、そのタンク内の水を圧送するためのポンプなどが挙げられる。
【0033】
水を供給すると、フィルター装置10のフィルターやハウジング内が水で浸される。また、フィルター装置10から排出された水は、分岐ラインL2を経由し、排水タンク12に貯留される。
【0034】
図4に示すように、排水タンク12に所定量の水が貯留された時点でバルブV1を開放する。これにより、排水タンク12では、水の液面は、最高でも液面規定部Hの高さまでしか到達しない。そして、排水タンク12の水は、第1排水ラインE1を経由して排水処理部13に排出される。
【0035】
また、排水タンク12の内部には、液面よりも上方に空間Sが形成される。空間Sは、エア抜きラインAを通して外気に連通しているので、大気圧と同等に維持される。また、エア抜きラインAには、無菌フィルター装置14が設けられているので、空間Sは滅菌された状態が保たれる。
【0036】
このようにしてフィルター装置10について完全性試験を行うのに十分な水を流し続ける間、排水タンク12には空間Sが保持されるとともに一定量の水が貯留された状態を維持しつつ、排水処理部13に水を排出し続けることができる。
【0037】
空間Sよりも上流側の製造ラインL1及び分岐ラインL2、これらに接続されたフィルター装置10等は、排水ラインEとは空間Sにより隔てられている。このため、排水処理部13の水の排出口(図示せず)が大気に開放されていて、万が一、当該排出口から排出される水に外気中の異物や微生物等が入り込んだとしても、排水タンク12に貯留された水までしか到達できない。換言すれば、排水を続けながらも、空間S及び空間Sよりも上流側の製造ラインL1、分岐ラインL2、これらに接続されたフィルター装置10等を滅菌した状態に維持することができる。
【0038】
図5に示すように、制御装置は、完全性試験が完了した後、バルブV4を開き、バルブV5を閉じ、薬液の処理を開始する。このとき、排水タンク12に残った水はそのままとしてもよいが、図6に示すように、バルブV2を開き、バルブV1を閉じることで、排水処理部13に排水してもよい。排水タンク12が空になると、排水ラインEや排水処理部13を通じて外気と連通することになるが、バルブV5が閉じているので、薬液の処理プロセスに影響は無い。
【0039】
ここで、図7を用いて、排水ラインに液面規定部Hを設けない場合について説明する。排水ラインXは接続部Cから下方に延び、水平方向に折れ曲がって排水処理部13に接続されている。つまり、排水ラインXには、接続部Cより上方であり、かつ頂部Tよりも下方の範囲には配置されていない。
【0040】
また、排水ラインXにはバルブV7が設けられている。さらに、排水タンク12には、排水タンク12を洗浄、滅菌するためのCIP/SIP装置15が接続されている。排水タンク12とCIP/SIP装置15を接続する配管にはバルブV8が設けられている。
【0041】
このような排水ラインXを備えた構成で完全性試験を行う場合は、バルブV3、バルブV5を開放し、バルブV4、バルブV7、バルブV8を閉じる。そして、フィルター装置10に水を供給する。この結果、フィルター装置10から排水タンク12に水が貯留される。排水タンク12に排水が一定量貯留されたら、特に図示しないが、バルブV5を閉じ、バルブV7を開放し、排水タンク12から排水処理部13へ排水する。
【0042】
このとき、排水タンク12は、排水処理部13を通じて外気に連通することになる。つまり、滅菌状態が破られる。このため、バルブV7を閉じ、バルブV8を空けて、CIP/SIP装置15によって排水タンク12を洗浄、滅菌する必要がある。
【0043】
このような完全性試験、排水、滅菌の処理は、必ずしも一度では完了しない。例えば、完全性試験を行う際に水を供給したが、フィルター装置10が十分に水で浸されない場合もある。したがって、排水タンク12の排出、滅菌処理を行った後に、フィルター装置10に水を追加で供給する必要がある。
【0044】
このように、完全性試験においてフィルター装置10を水に浸す処理の間に、排水、滅菌処理を挟むことになるため、完全性試験の時間効率が悪化する。もちろん、完全性試験においてフィルター装置10が十分水に浸かる程度の大量の水を供給すれば、一度の処理で完了する。しかしながら、排水タンク12を大容量にせざるをえず、設置スペースやコストの観点から好ましくない。また、完全性試験を複数回実行するような場合では、その都度、排水、滅菌処理を行う必要があるので効率的ではない。さらには、排水タンク12用に洗浄、滅菌処理のためのCIP/SIP装置15が必要となるため、装置構成が複雑化してしまう。
【0045】
しかしながら、本実施形態に係る無菌排水システム1では、排水ラインEに貯留される水の液面の最高の高さを規定する液面規定部Hを備えることで、水の排水を連続的に行いながら、空間Sから上流を外気に連通させず、無菌状態を維持することができる。
【0046】
従来技術では無菌状態を維持するためにバルブの開度を制御する機構を要するところ、本実施形態の無菌排水システム1は、液面規定部Hを設けた簡易な構成で十分に無菌状態を維持することができる。また、図7に示した構成では、排水タンク12が満量になる都度、排水及び滅菌処理が必要であるのに対し、本実施形態の無菌排水システム1は、排水タンク12の排水及び滅菌処理を要さず、かつ無菌状態を維持したまま水をフィルター装置10に連続的に供給することができる。また、連続的に排水できることから、排水タンク12は小容量でよい。このため、排水タンク12の設置スペースを低減でき、また排水タンク12に掛るコストを低減できる。
【0047】
また、本実施形態に係る無菌排水システム1は、エア抜きラインAと無菌フィルター装置14を備えている。これにより、排水タンク12に形成される空間Sを大気圧に維持すると共に無菌状態を維持することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る無菌排水システム1は、第1排水ラインE1及び第2排水ラインE2を備え、第2排水ラインE2は、排水タンク12よりも下方に配置されている。これにより、排水タンク12に残留した水を排出することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る無菌排水システム1は、排水ラインEが滅菌され、かつ外気から遮断されている状態で(図2参照)、製造ラインL1(フィルター装置10)から排水ラインEへの液体の排出を開始する(図3参照)。これにより、排水タンク12の空間S(図4参照)で上流が外気に晒されるリスクを低減できる。
【0050】
また、本実施形態に係る無菌排水システム1は、排水タンク12に所定量の水が貯留されている状態において、製造ラインL1(フィルター装置10)から排水タンク12及び排水ラインEに水を連続的に排出させる制御を行う。これにより、排水タンク12の排水及び滅菌処理を要さず、かつ無菌状態を維持したまま水を製造ラインL1から連続的に排水することができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0052】
図8を用いて、液面規定部Hの変形例について説明する。排水ラインEは、排水タンク12の下部に接続されている必要はなく、図8(a)に示すように側面に接続されていてもよい。このような接続形態であっても、液面規定部Hは、側面に接続した接続部Cよりも上方、かつ頂部Tよりも下方に配置されていればよい。
【0053】
図8(b)に示すように、液面規定部Hは水平方向に延びた形状に限定されず、屈曲していてもよい。液面規定部Hは、排水ラインEのうち、上方に凸となるように屈曲した部分である。
【0054】
また、上述した無菌排水システム1について、完全性試験で使用された水を排水する場合を例示したが、このような用途に限定されない。例えば、CIP、SIPを実行したあとに、製造ラインL1に残留した水分(SIPの蒸気の凝縮水など)を新たに供給する水とともに共洗いして排水する場合にも本発明を適用することができる。いずれにしても、製造ラインL1内の無菌を維持しつつ製造ラインL1内の水を排水する場合に本発明を適用することができる。
【0055】
製造ラインL1は、調製タンク、フィルター装置10及び充填装置11を備えた構成であったが、このような構成に限定されず、プロセス液を製造するための任意の装置が接続された構成についても本発明を適用することができる。
【0056】
さらに、排水タンク12として一般的なタンクを用いたが、これに限定されない。ある程度の水を貯留し、空間Sが形成される容積を有する構成は本発明の排水タンクに含まれる。例えば、排水ラインEを構成する各配管よりも広い口径の配管を排水タンク12に替えて設置すれば、ある程度の水を貯留し、空間Sを形成することができる。よって、そのような配管は、本発明の排水タンクに含まれる。
【符号の説明】
【0057】
A…エア抜きライン、C…接続部、E…排水ライン、E1…第1排水ライン、E2…第2排水ライン、H…液面規定部、L1…製造ライン、S…空間、T…頂部、1…無菌排水システム、10…フィルター装置、11…充填装置、12…排水タンク、13…排水処理部、14…無菌フィルター装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインに接続された排水タンクと、
前記排水タンクから排出される液体が流通する排水ラインと、を備え、
前記排水ラインは、前記排水タンクに接続された部分よりも上方であり、かつ、前記排水タンクの頂部よりも下方に位置する液面規定部を含み、
前記製造ラインは、前記液面規定部よりも上方において前記排水タンクに接続されている
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項2】
請求項1に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水タンクの内部を外気に連通させるエア抜きラインと、
前記エア抜きラインに設けられた無菌フィルター装置と、を備え、
前記エア抜きラインは、前記排水ラインよりも上方において前記排水タンクに接続されている
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水ラインは、途中で分岐した第1排水ライン及び第2排水ラインを備え、
前記第1排水ライン及び前記第2排水ラインの何れか一方は、前記排水タンクよりも下方に配置されている
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水ラインが滅菌され、かつ外気から遮断されている状態で、
前記製造ラインから前記排水ラインへ液体の排出を開始する制御を行う制御装置を備える
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項5】
請求項4に記載する無菌排水システムにおいて、
前記制御装置は、
前記排水タンクに所定量の液体が貯留されている状態において、
前記製造ラインから前記排水タンク及び前記排水ラインに液体を連続的に排出させる制御を行う
ことを特徴とする無菌排水システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、製造ラインに接続された排水タンクと、前記排水タンクから排出される液体が流通する排水ラインと、を備え、前記排水ラインは、前記排水タンクに接続された部分よりも上方であり、かつ、前記排水タンクの頂部よりも下方に位置する液面規定部を含み、前記製造ラインは、前記液面規定部よりも上方において前記排水タンクに接続されていることを特徴とする無菌排水システムにある。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインに接続された排水タンクと、
前記排水タンクから排出される液体が流通する排水ラインと、を備え、
前記排水ラインは、前記排水タンクに接続された部分よりも上方であり、かつ、前記排水タンクの頂部よりも下方に位置する液面規定部を含み、
前記製造ラインは、前記液面規定部よりも上方において前記排水タンクに接続されており、
前記製造ライン、前記排水タンク及び前記排水ラインは滅菌され、
前記排水タンクには、前記液面規定部の高さまで水が貯留されることにより当該水の液面よりも上方に空間が形成され、
前記空間は滅菌された状態が保たれる
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項2】
請求項1に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水タンクの内部を外気に連通させるエア抜きラインと、
前記エア抜きラインに設けられた無菌フィルター装置と、を備え、
前記エア抜きラインは、前記排水ラインよりも上方において前記排水タンクに接続されている
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水ラインは、途中で分岐した第1排水ライン及び第2排水ラインを備え、
前記第1排水ライン及び前記第2排水ラインの何れか一方は、前記排水タンクよりも下方に配置されている
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載する無菌排水システムにおいて、
前記排水ラインが滅菌され、かつ外気から遮断されている状態で、
前記製造ラインから前記排水ラインへ液体の排出を開始する制御を行う制御装置を備える
ことを特徴とする無菌排水システム。
【請求項5】
請求項4に記載する無菌排水システムにおいて、
前記制御装置は、
前記排水タンクに所定量の液体が貯留されている状態において、
前記製造ラインから前記排水タンク及び前記排水ラインに液体を連続的に排出させる制御を行う
ことを特徴とする無菌排水システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、製造ラインに接続された排水タンクと、前記排水タンクから排出される液体が流通する排水ラインと、を備え、前記排水ラインは、前記排水タンクに接続された部分よりも上方であり、かつ、前記排水タンクの頂部よりも下方に位置する液面規定部を含み、前記製造ラインは、前記液面規定部よりも上方において前記排水タンクに接続されており、前記製造ライン、前記排水タンク及び前記排水ラインは滅菌され、前記排水タンクには、前記液面規定部の高さまで水が貯留されることにより当該水の液面よりも上方に空間が形成され、前記空間は滅菌された状態が保たれることを特徴とする無菌排水システムにある。