IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図1
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図2
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図3
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図4
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図5
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図6
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図7
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図8
  • 特開-整流器およびレーザ用電源装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110508
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】整流器およびレーザ用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20220722BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220722BHJP
【FI】
H02M7/06 H
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005969
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】木内 康太
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA05
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H006DC05
5H006FA04
5H006HA02
5H770CA01
5H770CA02
5H770DA01
5H770DA11
5H770DA41
5H770HA03W
5H770LA07W
5H770LB07
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】従来と異なる方式で欠相検出が可能な整流器を提供する。
【解決手段】整流器100は、多相交流電圧を直流電圧に変換する。複数の交流入力端子には、多相交流電圧が供給される。ブリッジ回路110は、多相交流電圧を整流する。整流器100は、複数の単相入力デバイス120_1,120_2を備える。各単相入力デバイス120は、第1入力端子IN1と第2入力端子IN2間に入力される単相交流電圧Vacを電源として動作可能であり、単相交流電圧Vacの遮断に応答して、エラー出力が可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相交流電圧を直流電圧に変換する整流器であって、
前記多相交流電圧を受ける複数の交流入力端子と、
前記多相交流電圧を整流するブリッジ回路と、
複数の単相入力デバイスであって、各単相入力デバイスは、第1入力端子と第2入力端子間に入力される単相交流電圧を電源として動作可能であり、前記単相交流電圧の遮断に応答して、エラー検出が可能である、複数の単相入力デバイスと、
を備え、
前記複数の単相入力デバイスそれぞれの第1入力端子および第2入力端子は、前記複数の交流入力端子のうちの異なる2個のペアに接続されることを特徴とする整流器。
【請求項2】
前記複数の単相入力デバイスはそれぞれ、それ自体の機能を奏しなくなったときに、エラー状態を示す信号を出力可能であることを特徴とする請求項1に記載の整流器。
【請求項3】
前記複数の単相入力デバイスにおけるエラー検出の結果を処理するコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の整流器。
【請求項4】
前記コントローラは、前記複数の単相入力デバイスの少なくともひとつにおいてエラー状態が検出されると、前記整流器の下流のブロックを停止することを特徴とする請求項3に記載の整流器。
【請求項5】
前記単相入力デバイスは、ACファンであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の整流器。
【請求項6】
前記単相入力デバイスは、
第1エラー検出端子と、
第2エラー検出端子と、
前記第1エラー検出端子と前記第2エラー検出端子の間に設けられ、前記単相交流電圧が入力される間、オンとなるスイッチと、
を含み、
前記複数の単相入力デバイスは、前記スイッチ同士が互いに直列となる態様で接続されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の整流器。
【請求項7】
前記多相交流電圧はR相、S相、T相を含む3相であり、
前記複数の単相入力デバイスは、
その単相入力に、前記R相と前記S相の間の電圧が印加される第1単相入力デバイスと、
その単相入力に、前記S相と前記T相の間の電圧が印加される第2単相入力デバイスと、
を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の整流器。
【請求項8】
前記第1単相入力デバイスは吸気用のACファンであり、
前記第2単相入力デバイスは排気用のACファンであることを特徴とする請求項7に記載の整流器。
【請求項9】
前記複数の単相入力デバイスは、
その単相入力に、前記T相と前記R相の間の電圧が印加される第3単相入力デバイスをさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の整流器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の整流器と、
前記整流器の直流出力電圧を昇圧するコンバータと、
前記コンバータの出力電圧を交流高電圧に変換する高周波電源と、
を備えることを特徴とするレーザ用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、整流器に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器、産業機械、エアコンや冷蔵庫など(以下、単に機器という)は、交流電圧を電源入力として動作する。したがって産業機器の電源装置は、交流電圧を整流する整流器と、整流後の電圧を平滑化するコンデンサと、コンデンサに発生する直流電圧を、適切な電源信号や駆動信号に変換するコンバータやインバータと、を含む。
【0003】
交流電圧の異常として、欠相が知られている。欠相時には、主回路が単相動作となり、1相当たりの電流の増加、リップルの増加が発生し、発熱の原因となる。そこで電源装置には、欠相検知の機能が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-333186号公報
【特許文献2】特開2015-32746号公報
【特許文献3】特開2006-203958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の欠相検知回路は、複数のフォトカプラ、抵抗、複数のダイオードの組み合わせで構成されており、部品点数が多かった。
【0006】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、従来と異なる方式で欠相検出が可能な整流器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、多相交流電圧を整流する整流器に関する。整流器は、多相交流電圧を受ける複数の交流入力端子と、多相交流電圧を整流するブリッジ回路と、複数の単相入力デバイスであって、各単相入力デバイスは、第1入力端子と第2入力端子間に入力される単相交流電圧を電源として動作可能であり、単相交流電圧の遮断に応答して、エラー検出が可能である、複数の単相入力デバイスと、を備える。複数の単相入力デバイスそれぞれの第1入力端子および第2入力端子は、複数の交流入力端子のうちの異なる2個のペアに接続される。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、欠相検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る整流器のブロック図である。
図2図1の整流器による欠相検出を説明する図である。
図3】実施例1に係る整流器を示す図である。
図4図3の整流器の動作を説明する図である。
図5】ACファンの構成と、その接続形態を説明する図である。
図6】実施例2に係る整流器のブロック図である。
図7図6の整流器の欠相検出を説明する図である。
図8】レーザ加工装置を示す図ある。
図9図8のレーザ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係る整流器は、多相交流電圧を整流する。整流器は、多相交流電圧を受ける複数の交流入力端子と、多相交流電圧を整流するブリッジ回路と、複数の単相入力デバイスであって、各単相入力デバイスは、第1入力端子と第2入力端子間に入力される単相交流電圧を電源として動作可能であり、単相交流電圧の遮断に応答して、エラー検出が可能である、複数の単相入力デバイスと、を備える。複数の単相入力デバイスそれぞれの第1入力端子および第2入力端子は、複数の交流入力端子のうちの異なる2個のペアに接続される。
【0013】
この構成によると、欠相が発生すると、複数の単相入力デバイスの少なくともひとつにおいて、その単相交流電圧が遮断されることとなるため、異常が検出される。したがって、複数の単相入力デバイスにおけるエラー検出の結果を監視することで、欠相異常を検出できる。
【0014】
一実施形態において、複数の単相入力デバイスはそれぞれ、それ自体の機能を奏しなくなったときに、つまり機能不全に陥ったときに、エラー状態を示す信号を出力可能であってもよい。この場合、単相交流電圧が遮断されると、機能不全に陥るから、エラー状態を示す信号が出力される。複数の単相入力デバイスにおけるエラー検出の結果を監視することで、欠相異常と、機能不全を検出できる。
【0015】
一実施形態において、整流器は、複数の単相入力デバイスにおけるエラー検出の結果を処理するコントローラをさらに備えてもよい。
【0016】
一実施形態において、コントローラは、複数の単相入力デバイスの少なくともひとつにおいてエラー状態が検出されると、整流器の下流のブロックを停止してもよい。これによりインターロック機能が実現できる。
【0017】
一実施形態において、単相入力デバイスはACファンであってもよい。ACファンは、モータがロックしたときに、エラーを出力する。単相交流電圧が遮断すると、モータが停止し(これは機能不全状態である)、モータのロックとして検出される。つまり、単相交流電圧の遮断を、それに起因したモータのロックとして間接的に検出することができる。多くの機器において、電源回路を冷却するためにACファンが設けられる。このACファンを、欠相検出に流用することで、コストの増加を抑制できる。
【0018】
一実施形態において、単相入力デバイスは、第1エラー検出端子と、第2エラー検出端子と、第1エラー検出端子と第2エラー検出端子の間に設けられ、単相交流電圧が入力される間、オンとなるスイッチと、を含んでもよい。複数の単相入力デバイスは、スイッチ同士が互いに直列となる態様で接続されてもよい。正常な状態では、複数のスイッチがすべてオンであり、直列接続が導通状態となる一方、欠相が生ずると、複数の単相入力デバイスの少なくともひとつにおいて、スイッチがオフとなるため、直列接続が断線状態となる。したがって、複数のスイッチの直列接続の電気的状態にもとづいて、欠相を検出できる。
【0019】
一実施形態において、多相交流電圧はR相、S相、T相を含む3相であり、複数の単相入力デバイスは、その単相入力に、R相とS相の間の電圧が印加される第1単相入力デバイスと、その単相入力に、S相とT相の間の電圧が印加される第2単相入力デバイスと、を含んでもよい。なお、R相、S相、T相の区別は便宜的なものに過ぎない。
【0020】
一実施形態において、第1単相入力デバイスは吸気用のACファンであり、第2単相入力デバイスは排気用のACファンであってもよい。
【0021】
一実施形態において、複数の単相入力デバイスは、その単相入力に、T相とR相の間の電圧が印加される第3単相入力デバイスをさらに含んでもよい。3個の単相入力デバイスを用いることで、R相、S相、T相のいずれに異常が生じているかを判定することが可能となる。
【0022】
(実施形態)
以下、好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
図1は、実施形態に係る整流器100のブロック図である。整流器100は、多相交流電圧(本実施形態では三相)を整流する。
【0024】
整流器100は、交流入力端子R,S,T、ブリッジ回路110、平滑コンデンサ112、複数の単相入力デバイス120_1,120_2、コントローラ130を備える。
【0025】
交流入力端子R,S,Tには、三相交流電圧が入力される。ブリッジ回路110および平滑コンデンサ112は、整流器100の主回路101を構成している。ブリッジ回路110は、三相交流電圧を整流する。ブリッジ回路110の出力には平滑コンデンサ112が接続されており、平滑コンデンサ112によって、ブリッジ回路110が整流した電圧が平滑化されて、直流電圧Vdcが生成される。
【0026】
各単相入力デバイス120_i(i=1,2)は、第1入力端子IN1および第2入力端子IN2を有し、第1入力端子IN1と第2入力端子IN2の間に入力される単相交流電圧Vaciを電源として動作可能であり、単相交流電圧Vaciの遮断に応答して、エラーERRiを出力可能である。エラーERRiは、単相入力デバイス120_iが正常であるときにネゲート(たとえばローL)、単相入力デバイス120_iの単相交流電圧Vaciが遮断しているときに、アサート(たとえばハイH)されるものとする。
【0027】
複数の単相入力デバイス120それぞれの第1入力端子IN1および第2入力端子IN2は、複数の交流入力端子R,S,Tのうちの異なる2個のペアに接続される。本実施形態では、2個の単相入力デバイス120_1,120_2が設けられており、単相入力デバイス120_1の第1入力端子IN1と第2入力端子IN2は、R相入力、S相入力と接続され、単相入力デバイス120_1の第1入力端子IN1と第2入力端子IN2は、S相入力、T相入力と接続される。なお、R相、S相、T相の区別は便宜的なものに過ぎず、読み替えてもよい。
【0028】
その限りでないが、単相入力デバイス120は、整流器100に標準的に設けられるデバイスであることが望ましい。この点については後述する。
【0029】
複数の単相入力デバイス120_1,120_2のエラー検出の結果(エラー情報ともいう)ERR1,ERR2は、コントローラ130に供給される。コントローラ130は、複数の単相入力デバイス120それぞれのエラー情報ERR1,ERR2にもとづいて、欠相を検出する。なお、コントローラ130は、整流器100の外部に設けられてもよい。
【0030】
以上が整流器100の構成である。続いてその動作を説明する。図2は、図1の整流器100による欠相検出を説明する図である。欠相がない正常状態では、2つのエラー情報ERR1,ERR2は両方ネゲート(L)である。
【0031】
R相で欠相が生じている場合、単相入力デバイス120_1に入力される単相交流電圧Vac1は遮断されるが、単相入力デバイス120_2に入力される単相交流電圧Vac2は正常である。したがって、エラー情報ERR1のみがアサートされる。
【0032】
S相で欠相が生じている場合、単相入力デバイス120_1に入力される単相交流電圧Vac1、単相入力デバイス120_2に入力される単相交流電圧Vac2の両方が遮断される。したがって、エラー情報ERR1,ERR2は、両方アサートされる。
【0033】
T相で欠相が生じている場合、単相入力デバイス120_1に入力される単相交流電圧Vac1は正常であるが、単相入力デバイス120_2に入力される単相交流電圧Vac2が遮断される。したがって、エラー情報ERR2がアサートされる。
【0034】
つまり、整流器100によれば、複数のエラー情報ERR1~ERR2を監視し、それらのうちの少なくともにとつがアサートされているときに、欠相と判定することができる。
【0035】
本発明は、図1のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0036】
図3は、実施例1に係る整流器100Aを示す図である。上述のように、単相入力デバイス120は、整流器100に元々備わっているデバイスであることが好ましい。整流器100を含む電源装置には、冷却用のファンが設けられる場合が多く、AC入力のファン(ACファンという)は容易に入手可能である。したがって、整流器100Aは、単相入力デバイス120として、ACファン120Aが用いられ、これにより、欠相検出のために、特別なハードウェアを追加する必要がないという利点がある。
【0037】
さらにACファン120Aには、ロック検出機能が設けられており、異物が挟まるなどしてファンの回転が停止すると、エラー出力(ロック信号LOCK)を生成可能なものがある。この場合において、単相入力デバイス120は、それ自体の機能を奏しなくなったときに、エラー出力を行っていると把握できる。異物を原因とする場合のほかに、ACファン120Aの交流入力電圧が遮断された場合にも、ファンの回転が停止するから、ロック信号LOCKがアサートされる。つまり、ロック信号LOCKは、交流入力電圧の遮断を示すエラー情報ERRを兼ねている。
【0038】
本実施例において、整流器100の構成部品は、筐体102に収容される。筐体102には、暖まった空気を排気するための開口(排気口)104_1と、外部から冷たい空気を取り込むための開口(吸気口)104_2とが設けられる。
【0039】
ACファン120A_1は、排気のために設けられ、開口104_1の近傍に配置される。またACファン120A_2は、吸気のために設けられ、開口104_2の近傍に配置される。コントローラ130には、ACファン120A_1,120A_2により生成されるロック信号LOCK1,LOCK2が入力される。
【0040】
主回路101は、ブリッジ回路110、平滑コンデンサ112に加えて、リアクトル114を含んでもよい。また主回路101は、ブリッジ回路110の上流側に、ヒューズや、遮断器(ブレーカ)を備えてもよい。
【0041】
コントローラ130は、複数のACファン120Aの少なくともひとつにおいて単相交流電圧の遮断が検出されると、つまりロック信号LOCKがアサートされると、整流器100の下流のブロックを停止する(インターロック)。下流のブロックは、特に限定されないが、インバータやコンバータなどが例示される。これにより、欠相状態のまま、整流器100Aが動作し続けるのを防止できる。
【0042】
図4は、図3の整流器100の動作を説明する図である。欠相がない正常状態では、2つのロック信号LOCK1,LOCK2は両方ネゲート(L)である。
【0043】
R相で欠相が生じている場合、ロック信号LOCK1のみがアサートされる。S相で欠相が生じている場合、ロック信号LOCK1とLOCK2は、両方アサートされる。
【0044】
T相で欠相が生じている場合、ロック信号LOCK2がアサートされる。
【0045】
またACファン120A_1において異物が挟まるなどして回転が停止した場合、ロック信号LOCK1がアサートされ、ACファン120A_2において異物が挟まるなどして回転が停止した場合、ロック信号LOCK2がアサートされる。
【0046】
コントローラ130Aは、2つのロック信号LOCK1,LOCK2を監視し、少なくとも一方がアサートされた場合に、下流のブロックを停止する。
【0047】
この実施例によれば、ファンモータの回転が停止した場合のみでなく、欠相が生じた場合に、インターロックにより整流器100Aを保護することができる。
【0048】
図5は、ACファン120Aの構成と、その接続形態を説明する図である。ACファン120Aは、ファンモータ122、駆動回路124、スイッチ126、ロック検出回路128を備える。
【0049】
駆動回路124は、第1入力端子IN1および第2入力端子IN2の間に供給される単相交流電圧Vacにもとづいて、ファンモータ122を駆動する。スイッチ126は、第1エラー検出端子E1と第2エラー検出端子E2の間に設けられる。
【0050】
ロック検出回路128は、ファンモータ122が回転している間、スイッチ126をオンし、ファンモータ122の回転停止を検出すると、スイッチ126をオフする。この回転停止には、異物などによる回転停止のほか、交流電圧Vacの遮断による回転停止も含まれる。
【0051】
複数のACファン120A_1、120A_2は、スイッチ126同士が互いに直列となる態様で接続される。すなわちACファン120A_1の端子E2は、ACファン120A_2の端子E1と接続される。ACファン120A_2の端子E2は接地され、ACファン120A_1の端子E1は抵抗Rpによってプルアップされてもよい。コントローラ130Aは、ACファン120A_1の端子E1の状態にもとづいて、異常の有無を判定する。すなわち、2個のACファン120A_1,120A_2が正常であるとき、ACファン120A_1の端子E1は、2個のスイッチ216を介してロー(GND)にプルダウンされ、2個のACファン120A_1,120A_2の少なくとも一方に異常が生ずると、ACファン120A_1の端子E1は、抵抗Rpを介してハイ(VDD)にプルアップされる。
【0052】
図5の構成によれば、コントローラ130は、ひとつのノード(ACファン120A_1の端子E1)の状態のみを監視することで、欠相の有無を検知できる。たとえばコントローラ130をマイクロコントローラで実装する場合において、マイクロコントローラのピン数は限りがあるが、この構成では欠相検出のために、1ピンのみが使用されることとなる。
【0053】
なお、コントローラ13のピン数に余裕がある場合には、ACファン120A_1,120A_2それぞれの端子E2を接地し、それぞれの端子E1を、マイクロコントローラの別々のピンに入力してもよい。
【0054】
図6は、実施例2に係る整流器100Bのブロック図である。整流器100Bは、3個の単相入力デバイス120_1~120_3を備える。第3単相入力デバイス120_3の第1入力端子IN1および第2入力端子IN2は、T相入力およびR相入力と接続されており、第3単相入力デバイス120_3は、T相とR相の間の電圧Vac3を受ける。コントローラ130は、3個の単相入力デバイス120_1~120_3のエラー情報ERR1~ERR3を監視する。
【0055】
図7は、図6の整流器100Bの欠相検出を説明する図である。欠相がない正常状態では、3個のエラー情報ERR1~ERR3はすべてネゲート(L)である。
【0056】
R相で欠相が生じている場合、単相入力デバイス120_1,120_3に入力される単相交流電圧Vac1およびVac3は遮断され、単相入力デバイス120_2に入力される単相交流電圧Vac2は正常である。したがって、エラー情報ERR1,ERR3がアサートされる。
【0057】
S相で欠相が生じている場合、単相入力デバイス120_1,120_2に入力される単相交流電圧Vac1,Vac2が遮断され、単相入力デバイス120_3に入力される単相交流電圧Vac3は正常である。したがって、エラー情報ERR1,ERR2がアサートされる。
【0058】
T相で欠相が生じている場合、単相入力デバイス120_2,120_3に入力される単相交流電圧Vac2,Vac3が遮断され、単相入力デバイス120_1に入力される単相交流電圧Vac1は正常である。したがって、エラー情報ERR2,ERR3がアサートされる。
【0059】
整流器100Bによれば、複数のエラー情報ERR1~ERR3を監視し、それらのうちの少なくともにとつがアサートされているときに、欠相と判定することができる。実施例2によれば、2個の単相入力デバイス120を用いた構成に比べて、より堅牢なエラー検出が提供される。
【0060】
なおこの実施例2によれば、複数のエラー情報ERR1~ERR3を個別に監視することにより、いずれの相において欠相が生じているかを区別することが可能であるという利点もある。
【0061】
(用途)
続いて整流器100の用途を説明する。整流器100は、さまざまな電源装置に利用することができ、たとえばレーザ加工装置900の電源装置に利用することができる。図8は、レーザ加工装置900を示す図ある。レーザ加工装置900は、対象物902にレーザパルス904を照射し、対象物902を加工する。対象物902の種類は特に限定されず、また加工の種類も、穴空け(ドリル)、切断などが例示されるが、その限りではない。
【0062】
レーザ加工装置900は、レーザ装置800、光学系910、制御装置920、ステージ930を備える。対象物902はステージ930上に載置され、必要に応じて固定される。ステージ930は、制御装置920からの位置制御信号S2に応じて、対象物902を位置決めし、対象物902とレーザパルス904の照射位置を相対的にスキャンする。ステージ930は、1軸、2軸(XY)あるいは3軸(XYZ)であり得る。
【0063】
レーザ装置800は、制御装置920からのトリガ信号(励振信号)S1に応じて発振し、レーザパルス906を発生する。光学系910は、レーザパルス906を対象物902に照射する。光学系910の構成は特に限定されず、ビームを対象物902に導くためのミラー群、ビーム整形のためのレンズやアパーチャなどを含みうる。
【0064】
制御装置920は、レーザ加工装置900を統括的に制御する。具体的には制御装置920は、レーザ装置800に対して間欠的に励振信号S1を出力する。また制御装置920は、加工処理を記述するデータ(レシピ)にしたがってステージ930を制御するための位置制御信号S2を生成する。
【0065】
図9は、図8のレーザ装置800のブロック図である。レーザ装置800は、レーザ共振器200と電源装置250を備える。
【0066】
レーザ共振器200は等価回路として示される。一対の放電電極202,204の間には、静電容量Cと、抵抗成分Rが含まれる。静電容量Cは、インダクタLとともに共振回路210を形成する。この共振回路210の共振周波数をfRESとする。インダクタLは、インダクタ部品および配線や基板の寄生インダクタンスの少なくとも一方を含む。
【0067】
電源装置250は、高周波電圧VRFを共振回路210に印加する。高周波電圧VRFの周波数fRF(以下、同期周波数という)は、共振回路の周波数fRESの近傍に設定される。高周波電圧VRFが印加されることにより、一対の放電電極202,204の間に放電電流が流れる。放電電流によってレーザ媒質ガスが励起され、反転分布が形成される。
【0068】
電源装置250は、整流器100、充電電源300、高周波電源400を備える。整流器100は三相交流電圧を整流平滑化し、直流電圧Vdcを生成する。充電電源300は、昇圧コンバータや昇降圧コンバータなどのスイッチング電源を含み、整流器100の出力電圧Vdcを昇圧し、高電圧(DCリンク電圧)Vhighを生成する。
【0069】
高周波電源400の入力は、DCリンク310と接続されており、DCリンク電圧Vhighを受ける。高周波電源400は、共振周波数fRESと同じ周波数(同期周波数)fRFを有する高周波電圧VRFを発生し、レーザ共振器200に供給する。高周波電源400の構成は限定されないが、直流電圧Vhighを交流電圧VACに変換するHブリッジ回路(インバータ)402と、Hブリッジ回路402の出力電圧VACを昇圧するトランス404と、を含むことができる。
【0070】
上述のように整流器100は、三相交流の欠相を検出可能に構成される。整流器100のコントローラ130は、欠相状態を検出すると、整流器100よりも下流のユニット、具体的には、充電電源300や高周波電源400に対して、インターロック信号LOCKを出力する。充電電源300や高周波電源400は、インターロック信号LOCKに応答して動作を停止する。
【0071】
この構成によれば、欠相状態において電源装置250が動作し続けるのを防止することができる。
【0072】
以上、実施の形態について説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0073】
単相入力デバイス120の種類は限定されず、単相交流入力を有し、単相入力が遮断されたときに何らかのエラー情報を出力可能なデバイスであれば何でもよい。たとえば単相入力デバイス120は、モータおよびそのロック状態を検出可能なロック検出機能を有する別のデバイスを用いることができる。たとえば単相入力デバイス120は、冷却媒体を循環させるACポンプであってもよい。
【0074】
整流器100の用途は、レーザ装置の電源には限定されず、広く、交流電圧を電源として動作するさまざまな機器、機械、デバイス、装置に適用することができる。
【0075】
整流器100の入力である交流の相数は3に限定されず、それより多くてもよい。
【0076】
実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0077】
100 整流器
102 筐体
110 ブリッジ回路
112 平滑コンデンサ
114 リアクトル
120 単相入力デバイス
IN1 第1入力端子
IN2 第2入力端子
120A ACファン
122 ファンモータ
124 駆動回路
126 スイッチ
128 ロック検出回路
130 コントローラ
200 レーザ共振器
250 電源装置
300 充電電源
400 高周波電源
800 レーザ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9