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特開2022-110513ゴルフクラブ及びゴルフクラブ用の錘部材
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  • 特開-ゴルフクラブ及びゴルフクラブ用の錘部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110513
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ及びゴルフクラブ用の錘部材
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/14 20150101AFI20220722BHJP
   A63B 60/24 20150101ALI20220722BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20220722BHJP
【FI】
A63B53/14 A
A63B60/24
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005975
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】前田 航太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮彦
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA06
2C002GG06
2C002LL01
2C002MM01
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】 錘部材のシャフトへの挿入工程を容易化しつつ、錘部材の位置ずれや音鳴りを抑制する。
【解決手段】 ゴルフクラブ1であって、第1端2aと第2端とを有し、かつ、内部に空間iを有するパイプ状のシャフト2と、シャフト2の第1端2aの側に装着された錘部材5とを含む。錘部材5は、シャフト2の空間iに配された挿入部6と、シャフト2の第1端2aに係合する係合部7とを含む。挿入部6は、第1端2aの側の第1部分10と、第2端の側の第2部分20とを含む。第1部分10は、シャフト2の第1端2aでの内径である第1内径よりも小さい外径を有する。第2部分20は、シャフト2に配置される前の状態において、第1内径よりも大きい外径を有する大径部と、外力を受けることで、大径部の外径が小さくなるように第2部分20を弾性変形させる少なくとも一つの剛性低下部21とを備える。第2部分20は、弾性変形した状態で空間に配されており、大径部は、その弾性復元力によって、少なくとも一部がシャフト2の内周面2iに当接する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブであって、
第1端と第2端とを有し、かつ、内部に空間を有するパイプ状のシャフトと、
前記シャフトの前記第1端の側に装着された錘部材と、
前記シャフトの前記第2端の側に設けられたゴルフクラブヘッドとを含み、
前記錘部材は、前記シャフトの前記空間に配された挿入部と、前記シャフトの前記第1端に係合するように前記空間の外に位置する係合部とを含み、
前記挿入部は、前記第1端の側の第1部分と、前記第2端の側の第2部分とを含み、
前記第1部分は、前記シャフトの前記第1端での内径である第1内径よりも小さい外径を有し、
前記第2部分は、前記シャフトに配置される前の状態において、前記第1内径よりも大きい外径を有する大径部と、外力を受けることで、前記大径部の前記外径が小さくなるように前記第2部分を弾性変形させる少なくとも一つの剛性低下部とを備え、
前記第2部分は、弾性変形した状態で前記空間に配されており、
前記大径部は、その弾性復元力によって、少なくとも一部が前記シャフトの内周面に当接している、
ゴルフクラブ。
【請求項2】
前記剛性低下部は、スリットを含む、請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記第2部分は、シャフト径方向の中心側が中空部とされた筒状体であり、
前記剛性低下部は、前記筒状体をシャフト軸方向に延びている、請求項1又は2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
前記第2部分には、前記剛性低下部が複数形成されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
前記剛性低下部は、前記第2部分のシャフト周方向に等間隔で複数形成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のゴルフクラブ。
【請求項6】
前記第2部分は、前記シャフトに配置される前の状態において、前記第2端の側に向かって外径が増加する拡径部分を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項7】
前記第2部分は、前記シャフトに配置される前の状態において、前記第2端の側の端部の外径が前記第1内径よりも小さい小径部を含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項8】
前記第2部分は、複数の前記スリットによって、シャフト軸方向に延びる複数の変形可能な爪片に区分され、
前記各爪片のシャフト軸方向と直角な断面積は、前記第2端の側に向かって小さくなっている、請求項2に記載のゴルフクラブ。
【請求項9】
前記第1部分の外表面には、シャフト径方向に突出し、かつ、前記シャフトの前記内周面に当接した少なくとも一つの突起が形成されている、請求項1ないし8のいずれかに記載のゴルフクラブ。
【請求項10】
前記突起は、前記係合部の側に向かって突出高さが大きくなっている、請求項9に記載のゴルフクラブ。
【請求項11】
前記第1部分は、金属製の錘本体と、前記錘本体を被覆する樹脂、エラストマー又はゴムからなる弾性体とを含む、請求項1ないし10のいずれかに記載のゴルフクラブ。
【請求項12】
前記剛性低下部は、薄肉部又は溝を含む、請求項1ないし11のいずれかに記載のゴルフクラブ。
【請求項13】
第1端と第2端とを有し、かつ、内部に空間を有するパイプ状のシャフトの前記第1端の側に装着されるゴルフクラブ用の錘部材であって、
前記錘部材は、前記シャフトの前記空間内に配される挿入部と、前記シャフトの前記第1端に係合するように前記空間外に位置する係合部とを含み、
前記挿入部は、前記第1端の側の第1部分と、前記第2端の側の第2部分とを含み、
前記第2部分は、外力を受けることで、その外径が小さくなるように前記第2部分を弾性変形させるための少なくとも一つの剛性低下部を備えている、
ゴルフクラブ用の錘部材。
【請求項14】
前記剛性低下部は、スリットを含む、請求項13に記載のゴルフクラブ用の錘部材。
【請求項15】
前記剛性低下部は、薄肉部又は溝を含む、請求項13又は14に記載のゴルフクラブ用の錘部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ及びゴルフクラブ用の錘部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブのクラブバランスは、スイングに影響を与える。ゴルファに適したクラブバランスは、ゴルファそれぞれの力量等に応じて異なる。したがって、クラブバランスを簡単に調整することができれば便利である。
【0003】
クラブバランスを調整するために、下記特許文献1には、錘部材を、シャフトのグリップ側の端部に装着したゴルフクラブが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6601584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなゴルフクラブを製造する際、錘部材は、シャフトの中空部へと挿入される。この挿入工程を容易にするために、錘部材の外径は、シャフトの内径よりも小さく形成される必要がある。
【0006】
一方、錘部材の外径がシャフトよりも小さい場合、錘部材とシャフトとの間に隙間が生じ、ひいては、錘部材の位置ずれや、錘部材とシャフトとのガタによる音鳴りが生じるといった問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、錘部材のシャフトへの挿入工程を容易化しつつ、錘部材の位置ずれや音鳴りを抑制することができるゴルフクラブ及びゴルフクラブ用の錘部材を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、ゴルフクラブであって、第1端と第2端とを有し、かつ、内部に空間を有するパイプ状のシャフトと、前記シャフトの前記第1端の側に装着された錘部材と、前記シャフトの前記第2端の側に設けられたゴルフクラブヘッドとを含み、前記錘部材は、前記シャフトの前記空間に配された挿入部と、前記シャフトの前記第1端に係合するように前記空間の外に位置する係合部とを含み、前記挿入部は、前記第1端の側の第1部分と、前記第2端の側の第2部分とを含み、前記第1部分は、前記シャフトの前記第1端での内径である第1内径よりも小さい外径を有し、前記第2部分は、前記シャフトに配置される前の状態において、前記第1内径よりも大きい外径を有する大径部と、外力を受けることで、前記大径部の前記外径が小さくなるように前記第2部分を弾性変形させる少なくとも一つの剛性低下部とを備え、前記第2部分は、弾性変形した状態で前記空間に配されており、前記大径部は、その弾性復元力によって、少なくとも一部が前記シャフトの内周面に当接している、ゴルフクラブである。
【0009】
第1の発明の他の態様では、前記剛性低下部は、スリットを含んでも良い。
【0010】
第1の発明の他の態様では、前記第2部分は、シャフト径方向の中心側が中空部とされた筒状体であり、前記剛性低下部は、前記筒状体をシャフト軸方向に延びていても良い。
【0011】
第1の発明の他の態様では、前記第2部分には、前記剛性低下部が複数形成されていても良い。
【0012】
第1の発明の他の態様では、前記剛性低下部は、前記第2部分のシャフト周方向に等間隔で複数形成されていても良い。
【0013】
第1の発明の他の態様では、前記第2部分は、前記シャフトに配置される前の状態において、前記第2端の側に向かって外径が増加する拡径部分を含むことができる。
【0014】
第1の発明の他の態様では、前記第2部分は、前記シャフトに配置される前の状態において、前記第2端の側の端部の外径が前記第1内径よりも小さい小径部を含むことができる。
【0015】
第1の発明の他の態様では、前記第2部分は、複数の前記スリットによって、シャフト軸方向に延びる複数の変形可能な爪片に区分され、前記各爪片のシャフト軸方向と直角な断面積は、前記第2端の側に向かって小さくなっていても良い。
【0016】
第1の発明の他の態様では、前記第1部分の外表面には、シャフト径方向に突出し、かつ、前記シャフトの前記内周面に当接した少なくとも一つの突起が形成されていても良い。
【0017】
第1の発明の他の態様では、前記突起は、前記係合部の側に向かって突出高さが大きくなっていても良い。
【0018】
第1の発明の他の態様では、前記第1部分は、金属製の錘本体と、前記錘本体を被覆する樹脂、エラストマー又はゴムからなる弾性体とを含んでも良い。
【0019】
第1の発明の他の態様では、前記剛性低下部は、薄肉部又は溝を含んでも良い。
【0020】
本願の第2の発明は、第1端と第2端とを有し、かつ、内部に空間を有するパイプ状のシャフトの前記第1端の側に装着されるゴルフクラブ用の錘部材であって、前記錘部材は、前記シャフトの前記空間内に配される挿入部と、前記シャフトの前記第1端に係合するように前記空間外に位置する係合部とを含み、前記挿入部は、前記第1端の側の第1部分と、前記第2端の側の第2部分とを含み、前記第2部分は、外力を受けることで、その外径が小さくなるように前記第2部分を弾性変形させるための少なくとも一つの剛性低下部を備えている、ゴルフクラブ用の錘部材である。
【0021】
第2の発明の他の態様では、前記剛性低下部は、スリットを含むことができる。
【0022】
第2の発明の他の態様では、前記剛性低下部は、薄肉部又は溝を含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のゴルフクラブ及びゴルフクラブ用の錘部材は、上記の構成を採用することにより、錘部材のシャフトへの挿入工程を容易化しつつ、錘部材の位置ずれや音鳴りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態を示すゴルフクラブの斜視図である。
図2】ゴルフクラブのグリップ側の部分断面図である。
図3】錘部材の一実施形態を示す断面図である。
図4】錘部材の一実施形態を示す斜視図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6】錘部材の他の実施形態を示す断面図である。
図7】錘部材のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図8】錘部材のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
図10】錘部材のさらに他の実施形態を示す第2部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
全ての実施形態を通して、同一の部材ないし部分については、同じ符号が付されており、重複する説明は省略される。
【0026】
[ゴルフクラブの全体構造]
図1は、本発明の一実施形態を示すゴルフクラブ1の斜視図である。図1に示されるように、本実施形態のゴルフクラブ1は、例えば、シャフト2と、ゴルフクラブヘッド3と、グリップ4と、錘部材5とを含む。
【0027】
図2には、図1のグリップ4側の断面図(シャフト軸中心線を含む断面図)が示されている。図1及び図2に示されるように、シャフト2は、内部に空間iを有するパイプ状である。より詳細には、本実施形態のシャフト2は、シャフト軸方向と直交する横断面において、その外周面2o及び内周面2iはともに円形とされている。したがって、シャフト2は、円筒形状である。シャフト2は、例えば、繊維強化樹脂又は金属材料で構成されても良い。
【0028】
[シャフト]
シャフト2は、シャフト軸方向において、第1端2aと第2端2b(図1に示し、以下同様である。)とを有する。シャフト2は、例えば、第1端2aから第2端2bに向かって外径及び内径がともに漸減するテーパ状に形成されている。他の態様では、シャフト2は、外径及び内径がともに一定であっても良い。
【0029】
ゴルフクラブヘッド3は、ボールを打撃するためのもので、シャフト2の第2端2bに固着されている。ゴルフクラブヘッド3は、例えば、ウッド型として構成される。他の態様では、ゴルフクラブヘッド3は、アイアン型、ハイブリッド型又はパター型で構成されても良い。
【0030】
[グリップ]
グリップ4は、シャフト2の第1端2a側に固着されている。グリップ4は、例えば、ゴルファが握る部分である筒状の把持部4aと、把持部4aの一端側に設けられた端面4bとを含む。把持部4aは、略円筒形状であり、好ましくは、ゴルフクラブヘッド3に向かってテーパ状とされている。また、把持部4aには、シャフト2が差し込み可能なように開口(図示省略)とされている。なお、端面4bには、上記差し込み工程時に空気を抜くための貫通孔4cが設けられても良い。
【0031】
グリップ4の材料は特に限定されないが、例えば、ゴムが好ましく、とりわけ、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDM、イソプレンゴム及びこれらの混合物が好ましい。グリップ4の成形性の観点から、EPDM及びスチレンブタジエンゴムがさらに好ましい。
【0032】
[錘部材]
錘部材5は、シャフト2の第1端2aの側に装着されている。したがって、錘部材5は、シャフト2のゴルフクラブヘッド3とは反対側に設けられる。このような錘部材5は、カウンターバランスのゴルフクラブ1を提供するのに役立つ。
【0033】
図2に示されるように、本実施形態の錘部材5は、挿入部6と係合部7とを含む。
【0034】
[挿入部]
挿入部6は、シャフト2の空間i内に配される部分であり、第1端2aの側の第1部分10と、第2端2bの側の第2部分20とを含む。一方、係合部7は、シャフト2の第1端2aに係合するように、空間iの外に位置する部分である。
【0035】
[第1部分]
図3は、シャフト2と、シャフト2に配置される前の状態の錘部材5とを合わせて示す。図4は、シャフト2に配置される前の状態の錘部材5の斜視図である。図2ないし4に示されるように、第1部分10は、例えば、シャフト2の第1端2aの側の内径である第1内径d1よりも小さい外径D1を有する。本実施形態の第1部分10は、円柱状とされている。また、本実施形態の第1部分10は、実質的に一定の外径D1でシャフト軸方向に延びている。他の形態では、第1部分10は、多角角柱状であっても良く、外径D1がシャフト軸方向で変化しても良い。
【0036】
第1部分10は、例えば、金属製の錘本体101と、錘本体101を被覆する樹脂、エラストマー又はゴムからなる弾性体102とを含む。本実施形態の弾性体102は、例えば、樹脂で形成されている。錘本体101は、例えば、円柱状とされている。これらは、例えば、インサート成形等により、予め一体に形成されるのが望ましい。
【0037】
第1部分10が金属製の錘本体101を含む場合、小さな体積で十分な重量を備えた錘部材5を提供できる。また、第1部分10の表面が弾性体102で形成される場合、シャフト2と第1部分10との接触時におけるシャフト2の損傷などを抑制することができる点で望ましい。
【0038】
[第2部分]
第2部分20は、第1部分10よりも第2端2b側に設けられている。本実施形態の第2部分20は、シャフト径方向の中心側が中空部24とされた筒状(円錐筒状)に形成されている。具体的には、本実施形態の第2部分20は、第1部分10の弾性体102を第2端2bの側へ延長させた筒状体である。したがって、本実施形態の第2部分20は、樹脂、エラストマー又はゴムからなる弾性材料で形成されている。
【0039】
図3に示されるように、第2部分20は、シャフト2に配置される前の状態において、第1内径d1よりも大きい外径D2を有する大径部22を含む。本実施形態の第2部分20は、例えば、第1部分10から第2端2b側に向かって外径が漸増した拡径部分20Aを備え、大径部22は、この拡径部分20Aの端部側に形成されている。拡径部分20Aは、例えば、円錐状面を形成している。
【0040】
また、第2部分20には、少なくとも一つの剛性低下部21が形成されている。剛性低下部21としては、例えば、少なくとも1つのスリット21Aが挙げられる。スリット21Aは、第2部分20を切り欠くことで、その剛性を局所的に低下させる。好ましい態様では、第2部分20には、シャフト軸方向に延びる複数のスリット21Aが形成される。複数のスリット21Aによって、第2部分20は、シャフト軸方向に延びて弾性的に変形可能な複数の爪片26に区分されている。
【0041】
上述のような第2部分20は、外力を受けることで、その外径(大径部22の外径D2)が小さくなるように弾性変形することができる。例えば、手指によって各爪片26をシャフト径方向の中心側に押し込むことにより、各爪片26は、その根本側付近から弾性的に曲げ変形し、ひいては、大径部22の外径D2を小さくできる。
【0042】
特に限定されるものではないが、各爪片26を容易に変形させるために、スリット21Aのシャフト軸方向に沿った長さLは、例えば、3.0mm以上、好ましくは4.0mm以上、より好ましくは5.0mm以上とされる。同様の観点で、スリット21Aの幅W(長さLと直交する寸法)は、例えば、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上とされる。
【0043】
[係合部]
係合部7は、シャフト2の第1端2aと係合し、シャフト2の空間iには進入できない。これにより、錘部材5のシャフト2への挿入位置が規制され、また、錘部材5の位置が安定する。本実施形態の係合部7は、シャフト2の第1内径d1よりも大きい外径D3を有するフランジで形成されている。係合部7は、シャフト2の第1端2aと係合する形状であれば、様々な形態をとり得る。
【0044】
[シャフトへの錘部材の挿入工程]
シャフト2の空間iへ錘部材5を挿入する工程は、例えば、次のような手順で行われる。まず、錘部材5の第2部分20に、例えば、治具、手指、その他の手段によって外力を与え、第2部分20の外径がシャフト2の第1内径d1よりも小さくなるように弾性変形させる。次に、この状態で、錘部材5の第2部分20が、シャフト2の第1端2aの側から空間iへ押し込まれる。これにより、錘部材5の挿入部6は、シャフト2の空間i内に容易に挿入することができる。また、挿入部6のシャフト2への挿入が進行すると、係合部7がシャフト2の第1端2aに接触し、錘部材5のシャフト2への挿入位置が規制される。
【0045】
さらに、挿入部6がシャフト2の空間i内に完全に挿入されると、第2部分20は前記外力から開放され、元の形状に弾性的に復元しようとする。しかし、大径部22の外径D2は、本来、シャフト2の第1内径d1よりも大きいので、第2部分20は、弾性変形した状態(完全に元の形状に復元していない状態)でシャフト2の空間iの内部に配される。このため、第2部分20の大径部22は、その弾性復元力によって拡径し、少なくとも一部がシャフト2の内周面2iに当接する。したがって、錘部材5とシャフト2の内周面2iとの間に接触摩擦が生じ、錘部材5の位置が安定する。
【0046】
以上のように、本発明のゴルフクラブ1は、錘部材5のシャフト2への挿入工程を容易化しつつ、錘部材5の位置ずれや音鳴りを抑制することができる。
【0047】
ところで、シャフト2の第1内径d1は、一般に、ゴルフクラブ1の種類毎に異なる。好ましい態様では、係合部7の外径D3及び第2部分20の大径部22の外径D2を、複数種類のシャフト2の第1内径d1よりも大きくし、かつ、第1部分10の外径D1を前記複数種類のシャフト2の第1内径d1よりも小さく形成しても良い。この場合、錘部材5は、第1内径d1が異なる様々な種類のシャフト2に装着可能であり、錘部材5の汎用性が向上する。
【0048】
次に、本発明のさらに好ましい実施形態が説明される。
【0049】
[剛性低下部の間隔等(図5)]
図5は、図3のV-V線の拡大断面図である。図5に示されるように、剛性低下部21(スリット21A)は、第2部分20のシャフト周方向に等間隔で形成されても良い。このような実施態様によれば、第2部分20の各爪片26の曲げ剛性等が均一化され、ひいては、各爪片26の弾性復元力がシャフト2の内周面2iの周方向にバランス良く作用する。したがって、本実施形態の錘部材5は、シャフト2の空間i内でより安定的に保持され得る。
【0050】
図5では、そのような例として、同一形状の4本のスリット21Aが、シャフト周方向に90°間隔で配置されている。また、錘部材5がシャフト2の空間iに装着されたときに、第2部分20の重心g(図5に便宜的に示す)がシャフト軸中心線上に位置するように形成されるのが望ましい。これにより、上記作用がより確実に得られる。
【0051】
さらに、図5に示されるように、各爪片26のシャフト軸方向と直角な断面積は、第2端2bの側に向かって小さく形成されても良い。具体的には、各爪片26のシャフト周方向の長さa、及び/又は、各爪片26のシャフト径方向の厚さbが、シャフト2の第2端2bの側に向かって段階的に、又は、連続的に小さくなるように形成されても良い。このような態様では、第2部分20の重心が、シャフト軸方向において、第1端2aの側に位置するので、カウンターバランスの効果がより一層高められる。
【0052】
[錘部材の他の実施形態(図6)]
図6は、錘部材5の他の実施形態の縦断面図である。この錘部材5では、第1部分10の外径D1が、第2端2bの側に向かって漸増している点で、図3の形態と異なっている。したがって、この第1部分10は、円錐状外面を備える。また、錘部材5は、前記円錐状外面が、第1部分10から第2部分20に亘って連続するように形成されている。このような錘部材5は、第1内径d1が異なる様々なシャフトsに装着可能であり、高い汎用性を備える。
【0053】
[錘部材のさらに他の実施形態(図6)]
図6に示されるように、この錘部材5は、第1部分10の外表面に、シャフト径方向に突出し、かつ、シャフト2の内周面2iに当接可能な少なくとも一つの突起103が形成されている。突起103は、例えば、係合部7に向かって突出高さが漸増している。これにより、突起103は、シャフト2へ容易に挿入することができる。突起103は、好ましくは、シャフト周方向に、等間隔で複数設けられるのが望ましい。
【0054】
この例の錘部材5は、第1部分10がシャフト2の空間iに配置されたときに、突起103、及び/又は、シャフト2の内周面2iが変形し、その部分で局所的に高い接触圧力が得られる。したがって、この錘部材5は、シャフト2の内部でより確実に固定され得る。なお、突起103は、図3の形状の錘部材5に適用可能であるのは言うまでもない。
【0055】
[錘部材のさらに他の実施形態(図7)]
図7は、錘部材5のさらに他の実施形態の縦断面図である。この錘部材5では、第2部分20が、小径部28を含む点で、図3の形態と異なっている。小径部28は、第2部分20の第2端2bの側の端部20eに形成されている。また、錘部材5がシャフト2に配置される前の状態において、小径部28の外径D4は、シャフト2の第1内径d1よりも小さく形成されている。
【0056】
好ましい態様では、小径部28は、第2端2bの側に向かって外径が漸減するようなテーパ状とされる。また、スリット21Aは、大径部22から小径部28に亘って形成されている。
【0057】
図7の錘部材5によれば、シャフト2への錘部材5の挿入がさらに容易になり、ゴルフクラブ1の生産性が向上する。すなわち、この錘部材5は、第2部分20の端部20eが上述の小径部28とされているため、シャフト2への錘部材5の挿入工程時、予め第2部分20に外力を与えてその外径を小さくしておく必要はない。すなわち、小径部28をシャフト2の空間iに挿入していくと、大径部22の外周面は、シャフト2の内周面2iと接触し、この内周面2iからシャフト径方向の内側に向く外力を受ける。これにより、第2部分20は、その外径を徐々に縮めながらシャフト2の空間iに容易に挿入され得る。
【0058】
[錘部材のさらに他の実施形態(図8)]
図8は、錘部材5のさらに他の実施形態の縦断面図である。図9は、図8のIX-IX線断面図である。図8及び図9に示されるように、この錘部材5では、第2部分20の剛性低下部21が、スリット21Aに代えて、薄肉部21Bとされている。薄肉部21Bは、例えば、爪片26、26の間を、爪片26よりも小さい肉厚で連結してシャフト軸方向に延びている。この例では、薄肉部21Bのシャフト径方向の肉厚は、爪片26の肉厚の50%以下とされている。
【0059】
上述のような薄肉部21Bは、外力が与えられるとそれ自身が容易に撓むことができる。したがって、この実施形態においても、スリット21Aの場合と同様、第2部分20に外力を与えると、大径部22の外径を小さく弾性変形させることができる。また、剛性低下部21が薄肉部21Bの場合、各爪片26には、スリット21Aの場合よりも大きな強く弾性復元力を生じさせることが可能である。したがって、錘部材5の位置がより一層安定する。
【0060】
上記実施形態では、薄肉部21Bは、第2部分20のシャフト径方向の外側の表面から凹んだ位置で爪片26を連結している。他の態様では、薄肉部21Bは、第2部分20のシャフト径方向の内側の表面から凹んだ位置に設けられても良い。
【0061】
図10は、錘部材5のさらに他の実施形態として、第2部分20のシャフト軸方向と直交する断面図(図8のIX-IX線断面図相当)である。図10に示されるように、この錘部材5では、第2部分20の剛性低下部21が、スリット21Aに代えて、溝21Cとされている。溝21Cは、爪片26、26の間でシャフト径方向に凹んでシャフト軸方向に延びている。また、溝21Cは、例えば、爪片26の間を、爪片26の肉厚以下の肉厚で連結している。
【0062】
したがって、この実施形態においても、スリット21Aの場合と同様、第2部分20に外力を与えると、溝21Cが局所的に変形し、大径部22の外径を小さく弾性変形させることができる。また、剛性低下部21が溝21Cの場合、各爪片26には、スリット21Aの場合に比べて、より大きな強く弾性復元力を生じさせることが可能である。したがって、錘部材5の位置がより一層安定する。
【0063】
なお、剛性低下部21は、スリット21Aとともに、薄肉部21Bや溝21Cを用いても良い。
【0064】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ゴルフクラブ
2 シャフト
2a シャフトの第1端
2b シャフトの第2端
2i シャフトの内周面
3 ゴルフクラブヘッド
5 錘部材
6 挿入部
7 係合部
10 挿入部の第1部分
20 挿入部の第2部分
20A 拡径部分
21 剛性低下部
21A スリット
21B 薄肉部
21C 溝
22 大径部
24 中空部
26 爪片
28 小径部
101 錘本体
102 弾性体
103 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10