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特開2022-110552蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110552
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20220722BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220722BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006033
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井橋 知也
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG33
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029CA01
4K029DB06
4K029DB18
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA06
(57)【要約】
【課題】1つの方向に延びる貫通孔を長軸方向に広げるエッチング量と短軸方向に広げるエッチング量との差を抑制可能とした蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】蒸着マスク10は、表面10Fを有する。蒸着マスク10は、表面10Fに表面開口11AFが位置する貫通孔11を有し、表面開口11AFは、表面10Fと対向する視点から見て、第1方向に延びる形状を有し、かつ、第1方向と交差する方向の幅が第1方向の途中で狭まるように括れている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有した蒸着マスクであって、
前記第1面に第1開口が位置する貫通孔を有し、
前記第1開口は、前記第1面と対向する視点から見て、第1方向に延びる形状を有し、かつ、前記第1方向と交差する方向の幅が前記第1方向の途中で狭まるように括れている
蒸着マスク。
【請求項2】
前記第1開口は、前記第1面と対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺と、互いに対向する一対の短辺とに囲まれた形状を有し、
前記第1面と対向する視点から見て、
各短辺は、直線状、または、弧状を有し、
少なくとも1つの長辺は、前記長辺の延びる方向に沿って前記一対の長辺の間隔を増減させる波状を有する
請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記第1面と対向する視点から見て、各長辺は、複数の波を含み、
各短辺は、前記長辺における前記波の周期に略等しい長さを有する
請求項2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
各短辺は、前記長辺における前記波の周期に対する0.6倍以上1.4倍以下の長さを有する
請求項3に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記第1面と対向する面である第2面を有し、
前記貫通孔の第2開口は、前記第2面に位置し、前記第1面と対向する視点から見て、前記第2開口は、前記第1開口が取り囲む領域内に位置し、
前記貫通孔の第3開口は、前記蒸着マスクの厚さ方向において、前記第1開口と前記第2開口との間に位置し、前記第1面と対向する視点から見て、前記第3開口は、前記第2開口が取り囲む領域内に位置し、
前記第3開口は、前記第1面と対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺と、互いに対向する一対の短辺とに囲まれた形状を有し、
前記第1面と対向する視点から見て、
前記第3開口の各短辺は、前記第1開口の短辺と同じ形状を有し、
前記第3開口の少なくとも1つの長辺は、前記第3開口の長辺の延びる方向に沿って前記第3開口における一対の長辺の間隔を増減させる波状を有する
請求項2から4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
金属板にレジスト層を形成すること、
前記レジスト層を露光し、露光した前記レジスト層を現像してレジストマスクを形成すること、および、
前記レジストマスクを用いて前記金属板をウェットエッチングして、前記金属板の第1面に第1開口が位置する貫通孔を形成すること、を含む蒸着マスクの製造方法であって、
前記貫通孔を形成することでは、前記第1面と対向する視点から見て、前記第1開口が第1方向に延びる形状を有し、かつ、前記第1方向と交差する方向の幅が前記第1方向の途中で狭まることで括れるように前記第1開口を形成する
蒸着マスクの製造方法。
【請求項7】
前記第1開口は、前記第1面と対向する視点から見て、
互いに対向する一対の長辺と、
互いに対向する一対の短辺とに囲まれた形状を有し、
各短辺は、直線状、または弧状を有し、
少なくとも1つの長辺は、前記長辺の延びる方向に沿って前記一対の長辺の間隔を増減させる波状を有する
請求項6に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項8】
前記レジストマスクを形成することは、前記金属板の前記貫通孔を形成するためのマスク孔を有した前記レジストマスクを形成し、
前記マスク孔は、前記第1面と対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺と、互いに対向する一対の短辺とに囲まれた形状を有し、
前記レジストマスクは、各長辺から他方の前記長辺に向かう方向に沿って、前記マスク孔内に突き出た複数の凸部を有する
請求項7に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法を用いて蒸着マスクを準備すること、および、
前記蒸着マスクを用いて蒸着対象に蒸着パターンを形成すること、を含む
表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は、複数の表示画素を備えている。各表示画素は、複数の副画素を含んでいる。1つの表示画素は、例えば、赤色用副画素、緑色用副画素、および、青色用副画素を備えている。表示画素の一例において、赤色用副画素および緑色用副画素は、略正方形状を有している。これに対して、青色用副画素は、長方形状を有している。青色用副画素において、青色用画素が有する長辺の長さは、赤色用副画素の一辺の長さ、緑色用副画素の一辺の長さ、および、赤色用画素と緑色用画素との間の隙間を足した長さにほぼ等しい。表示画素では、1つの赤色用副画素と1つの緑色用副画素とが第1方向に沿って並び、かつ、第1方向と直交する第2方向において、青色用副画素が、第1方向において互いに隣り合う赤色用副画素、および、緑色用副画素と隣り合っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-249334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各副画素は、金属製の蒸着マスクを用いた真空蒸着によって形成される。蒸着マスクは、各副画素を形成するための貫通孔を有している。上述したように、青色用副画素は長方形状を有する場合、青色用副画素を形成するための貫通孔も平面視において青色用副画素の形状に相当する長方形状を有している。
【0005】
蒸着マスクを形成する際には、蒸着マスクを形成するための金属板が準備される。次いで、蒸着マスクに貫通孔を形成するためのレジストマスクが形成される。そして、レジストマスクを用いたウェットエッチングが金属板に施されることによって、貫通孔を有した蒸着マスクが形成される。
【0006】
この際に、金属板に形成すべき貫通孔が平面視において長方形状を有するから、レジストマスクにも平面視において長方形状を有したマスク孔が形成される。こうしたレジストマスクを用いたウェットエッチングでは、平面視におけるマスク孔の長辺近傍と短辺近傍との間でエッチング液の流れが異なる。結果として、金属板に形成された貫通孔では、平面視における長辺と短辺との長さの比率がマスク孔での比率と大きく異なってしまう。
【0007】
本発明は、1つの方向に延びる貫通孔を長軸方向に広げるエッチング量と短軸方向に広げるエッチング量との差を抑制可能とした蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための蒸着マスクは、第1面を有した蒸着マスクであって、前記第1面に第1開口が位置する貫通孔を有し、前記第1開口は、前記第1面と対向する視点から見て、第1方向に延びる形状を有し、かつ、前記第1方向と交差する方向の幅が前記第1方向の途中で狭まるように括れている。
【0009】
上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、金属板にレジスト層を形成すること、前記レジスト層を露光し、露光した前記レジスト層を現像してレジストマスクを形成すること、および、前記レジストマスクを用いて前記金属板をウェットエッチングして、前記金属板の第1面に第1開口が位置する貫通孔を形成すること、を含む蒸着マスクの製造方法である。前記貫通孔を形成することでは、前記第1面と対向する視点から見て、前記第1開口が第1方向に延びる形状を有し、かつ、前記第1方向と交差する方向の幅が前記第1方向の途中で狭まることで括れるように前記第1開口を形成する。
【0010】
上記課題を解決するための表示装置の製造方法は、上記蒸着マスクの製造方法を用いて蒸着マスクを準備すること、および、前記蒸着マスクを用いて蒸着対象に蒸着パターンを形成すること、を含む。
【0011】
上記蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法によれば、第1開口が括れを有した形状を有するため、貫通孔を形成するためのエッチングにおいて、エッチング液の流れが括れる部位において分断される。結果として、第1開口が括れを有していない場合と比べて、貫通孔を第1方向である長軸方向に広げるエッチング量と短軸方向に広げるエッチング量との差を抑えることが可能となる。
【0012】
上記蒸着マスクにおいて、前記第1開口は、前記第1面と対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺と、互いに対向する一対の短辺とに囲まれた形状を有し、前記第1面と対向する視点から見て、各短辺は、直線状、または、弧状を有し、少なくとも1つの長辺は、前記長辺の延びる方向に沿って前記一対の長辺の間隔を増減させる波状を有してもよい。
【0013】
上記蒸着マスクの製造方法において、前記第1開口は、前記第1面と対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺と、互いに対向する一対の短辺とに囲まれた形状を有し、各短辺は、直線状、または、弧状を有し、少なくとも1つの長辺は、前記長辺の延びる方向に沿って前記一対の長辺の間隔を増減させる波状を有してもよい。
【0014】
上記蒸着マスクによれば、各長辺が波状を有するから、蒸着マスクを形成するための金属板にレジストマスクを用いて貫通孔を形成する際に、レジストマスクのマスク孔が有する長辺を、貫通孔の長辺が有する波の数と同数に分割するように構成されたレジストマスクを用いることが可能である。これにより、金属板のエッチングに際して、マスク孔の長辺において、エッチング液の流れる領域が、貫通孔の長辺が有する波の数と同数に分割される。そのため、マスク孔に供給されるエッチング液から見て、マスク孔において、分割された長辺の部分と短辺との間で長さの差が小さくなるから、長辺方向でのエッチング液の挙動と、短辺方向でのエッチング液の挙動との差を抑えることが可能である。結果として、貫通孔を長辺方向に広げるエッチング量と短辺方向に広げるエッチング量との差を抑えることが可能である。
【0015】
上記蒸着マスクにおいて、前記第1面と対向する視点から見て、各長辺は、複数の波を含み、各短辺は、前記長辺における前記波の周期に略等しい長さを有してもよい。この蒸着マスクによれば、蒸着マスクを形成するための金属板のエッチングにおいて、マスク孔の長辺をマスク孔の短辺と略等しい長さに分割するように構成されたレジストマスクを用いることが可能である。これにより、マスク孔に供給されるエッチング液から見て、マスク孔において、分割された長辺の部分と短辺との間で長さが略等しいから、長辺方向でのエッチング液の挙動と、短辺方向でのエッチング液の挙動とが略等しい。結果として、貫通孔を長辺方向に広げるエッチング量と短辺方向に広げるエッチング量との差をさらに抑えることが可能である。
【0016】
上記蒸着マスクにおいて、各短辺は、前記長辺における前記波の周期に対する0.6倍以上1.4倍以下の長さを有してもよい。この蒸着マスクによるように、各短辺が長辺における波の周期に対して0.6倍以上1.4倍以下の長さを有することが好ましい。
【0017】
上記蒸着マスクにおいて、前記第1面と対向する面である第2面を有し、前記貫通孔の第2開口は、前記第2面に位置し、前記第1面と対向する視点から見て、前記第2開口は、前記第1開口が取り囲む領域内に位置し、前記貫通孔の第3開口は、前記蒸着マスクの厚さ方向において、前記第1開口と前記第2開口との間に位置し、前記第1面と対向する視点から見て、前記第3開口は、前記第2開口が取り囲む領域内に位置し、前記第3開口は、前記第1面と対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺と、互いに対向する一対の短辺とに囲まれた形状を有し、前記第1面と対向する視点から見て、前記第3開口の各短辺は、前記第1開口の短辺と同じ形状を有し、前記第3開口の少なくとも1つの長辺は、前記第3開口の長辺の延びる方向に沿って前記第3開口における一対の長辺の間隔を増減させる波状を有してもよい。
【0018】
上記蒸着マスクによれば、蒸着マスクの厚さ方向において、第1開口と第2開口との間に位置する第3開口を、第1開口を形成するためのマスク孔を有したレジストマスクを用いた金属板のエッチングによって、第1開口とともに形成することが可能である。そのため、蒸着マスクの厚さ方向において、第1開口から第3開口までにわたる領域において、貫通孔の長辺方向でのエッチング量と短辺方向でのエッチング量との差を抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、貫通孔を長軸方向に広げるエッチング量と短軸方向に広げるエッチング量との差を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態における蒸着マスクの構造を示す斜視図。
図2図1が示す蒸着マスクの表面と対向する視点から見た蒸着マスクの構造を示す平面図。
図3図2が示すIIIa‐IIIa線に沿う蒸着マスクの構造をIIIb‐IIIb線に沿う蒸着マスクの構造とともに示す断面図。
図4図2が示すIV‐IV線に沿う蒸着マスクの構造を示す断面図。
図5】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図6】レジスト層の露光に用いられる露光マスクの構造を示す平面図。
図7】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図8】金属層の表面と対向する視点から見たレジストマスク開口の形状を示す平面図。
図9】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図10】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図11】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図12】蒸着マスクの製造方法を説明するための工程図。
図13】金属層の表面と対向する視点から見た第1開口の形状を示す平面図。
図14】表示装置の製造方法を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1から図14を参照して、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を具体化した一実施形態を説明する。
[蒸着マスク]
図1から図4を参照して、蒸着マスクを説明する。
【0022】
図1は、蒸着マスクの斜視構造における一部を示している。
図1が示すように、蒸着マスク10は、表面10Fと裏面10Rとを有している。裏面10Rは、蒸着マスク10において表面10Fと対向する面である。表面は第1面の一例であり、裏面は第2面の一例である。
【0023】
蒸着マスク10は、貫通孔11を有している。本実施形態において、蒸着マスク10は、複数の貫通孔11を有している。貫通孔11は、蒸着マスク10を用いた蒸着において、蒸着対象に対して所定の蒸着パターンを形成するための孔である。蒸着パターンは、例えば、有機EL表示装置が備える表示画素の副画素を形成する。
【0024】
蒸着マスク10は、マスク領域10R1と周辺領域10R2とを備えている。周辺領域10R2は、マスク領域10R1を取り囲んでいる。周辺領域10R2には、蒸着パターンを形成するための貫通孔11が形成されていない。マスク領域10R1には、複数の貫通孔11が位置している。蒸着マスク10は、例えば複数のマスク領域10R1を含んでいる。マスク領域10R1において、複数の貫通孔11は、所定の規則に従って配列されている。例えば、図1が示す例では、複数の貫通孔11は、千鳥状に配列されている。なお、貫通孔11は、格子状に配列されてもよい。
【0025】
蒸着マスク10の厚さTは、例えば、1μm以上50μm以下であってよい。蒸着マスク10において、マスク領域10R1での厚さと周辺領域10R2での厚さとが同一であってもよい。あるいは、マスク領域10R1の厚さは、周辺領域10R2の厚さよりも薄くてもよい。なお、マスク領域10R1の厚さが周辺領域10R2の厚さよりも薄い場合には、上述した厚さTの範囲は、周辺領域10R2の厚さが含まれる範囲である。
【0026】
図2は、表面10Fと対向する視点から見たときの貫通孔11の形状を示している。
図2が示すように、貫通孔11の表面開口11AFは、蒸着マスク10の表面10Fに位置している。表面開口11AFは、第1開口の一例である。表面開口11AFは、表面10Fと対向する視点から見て、第1方向に延びる形状を有し、かつ、第1方向と交差する方向の幅が第1方向の途中で狭まるように括れている。第1方向は、表面開口11AFの長軸方向であり、第1方向と交差する方向が短軸方向である。
【0027】
表面開口11AFが括れを有した形状を有するため、貫通孔11を形成するためのエッチングにおいて、エッチング液の流れが括れる部位において分断される。結果として、表面開口11AFが括れを有していない場合と比べて、貫通孔11を長軸方向に広げるエッチング量と短軸方向に広げるエッチング量との差が抑えられる。
【0028】
本実施形態において、表面開口11AFは、表面10Fと対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺11Lと、互いに対向する一対の短辺11Sとに囲まれた形状を有している。各短辺11Sは、直線状、または、弧状を有している。少なくとも1つの長辺11Lは、長辺11Lの延びる方向に沿って一対の長辺11Lの間隔を増減させる波状を有している。長辺11Lが延びる方向が長辺方向であり、長辺方向は長軸方向の一例である。短辺11Sが延びる方向が短辺方向であり、短辺方向は短軸方向の一例である。
【0029】
各長辺11Lが波状を有するから、蒸着マスク10を形成するための金属板にレジストマスクを用いて貫通孔11を形成する際に、レジストマスクのマスク孔が有する長辺を、貫通孔11の長辺が有する波の数と同数に分割するように構成されたレジストマスクを用いることが可能である。これにより、金属板のエッチングに際して、マスク孔の長辺において、エッチング液の流れる領域が、貫通孔11の長辺が有する波の数と同数に分割される。そのため、マスク孔に供給されるエッチング液から見て、マスク孔において、分割された長辺の部分と短辺との間で長さの差が小さくなるから、長辺方向でのエッチング液の挙動と、短辺方向でのエッチング液の挙動との差を抑えることが可能である。結果として、貫通孔11を長辺方向に広げるエッチング量と短辺方向に広げるエッチング量との差を抑えることが可能である。
【0030】
図2が示す例では、両方の長辺11Lが、一対の長辺11Lの間隔を長辺11Lが延びる方向に沿って増減させる波状を有している。各短辺11Sは略直線状を有している。各短辺11Sは、表面開口11AFが取り囲む領域の中央部から離れる方向に突き出た弧状を有してもよい。言い換えれば、各短辺11Sは、曲率中心が、表面開口11AFが取り囲む領域内に位置するような弧状を有してもよい。あるいは、各短辺11Sは、1つの谷部を有してもよい。すなわち、各短辺11Sは、表面開口11AFが取り囲む領域の中央部に向かう方向に窪む弧状を有してもよい。言い換えれば、各短辺11Sは、曲率中心が、表面開口11AFが取り囲む領域外に位置するような弧状を有してもよい。
【0031】
各長辺11Lは、複数の波を含んでいる。すなわち、各長辺11Lは、複数の山部11L1と複数の谷部11L2とを含んでいる。長辺11Lにおいて、表面開口11AFが取り囲む領域の中央部から離れる方向に突き出た部分が山部11L1であり、表面開口11AFが取り囲む領域の中央部に向かう方向に窪む部分が谷部11L2である。山部11L1は、長辺11Lが延びる方向において、2つの谷部11L2に挟まれている。あるいは、山部11L1は、長辺11Lが延びる方向において、長辺11Lと短辺11Sとの交点と、1つの谷部11L2とに挟まれている。
【0032】
長辺11Lにおいて、1つの山部11L1を含み、かつ、当該山部11L1を挟む2つの谷部11L2によって画定される部分が、1つの波である。あるいは、長辺11Lにおいて、1つの山部11L1を含み、当該山部11L1を挟む谷部11L2と上述した交点とによって画定される部分が、1つの波である。各長辺11Lは、2つ以上の波を有する。図2が示す例では、各長辺11Lは、4つの波を有している。
【0033】
各短辺11Sは、長辺11Lにおける波の周期に略等しい長さを有することができる。これにより、蒸着マスク10を形成するための金属板のエッチングにおいて、マスク孔の長辺をマスク孔の短辺と略等しい長さに分割するように構成されたレジストマスクを用いることが可能である。そのため、マスク孔に供給されるエッチング液から見て、マスク孔において、分割された長辺の部分と短辺との間で長さが略等しいから、長辺方向でのエッチング液の挙動と、短軸方向でのエッチング液の挙動とが略等しい。結果として、貫通孔11を長辺方向に広げるエッチング量と短軸方向に広げるエッチング量との差をさらに抑えることが可能である。
【0034】
波の周期は、各長辺11Lが延びる方向において、1つの山部11L1を挟む谷部11L2間の距離である。あるいは、波の周期は、各長辺11Lが延びる方向において、1つの山部11L1を挟む谷部11L2と上述した交点との間の距離である。
【0035】
各短辺11Sは、長辺11Lにおける波の周期に対する0.6倍以上1.4倍以下の長さを有することが可能である。なお、上述したように、各短辺11Sが弧状を有する場合には、各短辺11Sにおける上述した交点間の距離が、各短辺11Sの長さである。
【0036】
貫通孔11の裏面開口11ARは、裏面10Rに位置している。表面10Fと対向する視点から見て、裏面開口11ARは、表面開口11AFが取り囲む領域内に位置している。すなわち、長辺11Lが延びる方向と短辺11Sが延びる方向との両方において、裏面開口11ARは、表面開口11AFよりも小さい。図2が示す例では、裏面開口11ARは、略長方形状を有している。裏面開口11ARは、第2開口の一例である。
【0037】
貫通孔11の中央開口11ACは、蒸着マスク10の厚さ方向において、表面開口11AFと裏面開口11ARとの間に位置している。表面10Fと対向する視点から見て、中央開口11ACは、裏面開口11ARが取り囲む領域内に位置している。すなわち、長辺11Lが延びる方向と短辺11Sが延びる方向との両方において、中央開口11ACは、裏面開口11ARよりも小さい。表面10Fと対向する視点から見て、表面開口11AFと中央開口11ACが視認される一方で、裏面開口11ARは視認されない。
【0038】
中央開口11ACは、表面10Fと対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺ACLと、互いに対向する一対の短辺ACSとに囲まれた形状を有している。表面10Fと対向する視点から見て、中央開口11ACの各短辺ACSは、表面開口11AFの短辺11Sと同じ形状を有し、中央開口11ACの少なくとも1つの長辺ACLは、中央開口11ACにおける一対の長辺ACLの間隔を当該長辺ACLの延びる方向に沿って増減させる波状を有する。
【0039】
例えば、図2が示す例では、各短辺ACSは略直線状を有している。各短辺ACSは、表面開口11AFの短辺11Sと同一の形状であれば、以下の形状を有することが可能である。すなわち、各短辺ACSは、中央開口11ACが取り囲む領域の中央部から離れる方向に突き出た弧状を有してもよい。言い換えれば、各短辺ACSは、曲率中心が、中央開口11ACが取り囲む領域内に位置するような弧状を有してもよい。あるいは、各短辺ACSは、1つの谷部を有してもよい。すなわち、各短辺ACSは、中央開口11ACが取り囲む領域の中央部に向かう方向に窪む弧状を有してもよい。言い換えれば、各短辺ACSは、曲率中心が、中央開口11ACが取り囲む領域外に位置するような弧状を有してもよい。
【0040】
各長辺ACLは、複数の波を含んでいる。すなわち、各長辺ACLは、複数の山部ACL1と複数の谷部ACL2とを含んでいる。長辺ACLにおいて、中央開口11ACが取り囲む領域の中央部から離れる方向に突き出た部分が山部ACL1であり、中央開口11ACが取り囲む領域の中央部に向かう方向に窪む部分が谷部ACL2である。山部ACL1は、長辺ACLが延びる方向において、2つの谷部ACL2に挟まれている。あるいは、山部ACL1は、長辺ACLが延びる方向において、長辺ACLと短辺ACSとの交点と、1つの谷部ACL2とに挟まれている。中央開口11ACの長辺ACLは、表面開口11AFの長辺11Lと同数の山部ACL1および谷部ACL2を含んでいる。
【0041】
長辺ACLにおいて、1つの山部ACL1を含み、かつ、当該山部ACL1を挟む2つの谷部ACL2によって画定される部分が、1つの波である。あるいは、長辺ACLにおいて、1つの山部ACL1を含み、当該山部ACL1を挟む谷部ACL2と上述した交点とによって画定される部分が、1つの波である。各長辺ACLは、2つ以上の波を有する。中央開口11ACの長辺ACLは、表面開口11AFの長辺ACLと同数の波を含んでいる。
【0042】
図3は、図2が示す断面指示線に沿う断面における貫通孔11の形状を示している。すなわち、図3は、表面開口11AFの短辺11Sが延びる方向と平行な平面に沿う蒸着マスク10の断面構造を示している。なお、図3では、図示の便宜上、図2におけるIIIa‐IIIa線に沿う断面での貫通孔11の形状と、IIIb‐IIIb線に沿う断面での貫通孔11の形状とが示されている。図3において、IIIa‐IIIa線に沿う断面での貫通孔11の形状が実線を用いて示され、IIIb‐IIIb線に沿う断面での貫通孔11の形状が二点鎖線を用いて示されている。
【0043】
図3が示すように、貫通孔11は、大孔部11HLと小孔部11HSとを備えている。表面10Fに直交し、かつ、貫通孔11が延びる方向、すなわち長辺方向と直交する断面において、大孔部11HLは、表面10Fから裏面10Rに向かう方向に沿って先細る形状を有している。表面10Fに直交し、かつ、貫通孔11が延びる方向、すなわち長辺方向と直交する断面において、小孔部11HSは、裏面10Rから表面10Fに向かう方向に沿って先細る形状を有している。
【0044】
大孔部11HLは、蒸着マスク10の厚さ方向における途中において、小孔部11HSに接続されている。上述した中央開口11ACは、大孔部11HLが小孔部11HSに接続された部分に位置している。表面10Fに直交し、かつ、貫通孔11が延びる方向、すなわち長辺方向と直交する断面において、裏面10Rと中央開口11ACとの間の距離が、ステップハイトである。なお、IIIa‐IIIa線に沿う断面でのステップハイトが第1ステップハイトSH1であり、IIIb‐IIIb線に沿う断面でのステップハイトが第2ステップハイトSH2である。
【0045】
上述したように、図3において実線で示される形状は、図2におけるIIIa‐IIIa線に沿う断面形状である。IIIa線‐IIIa線は、表面開口11AFの長辺11Lにおける谷部11L2を通る直線である。谷部11L2は、表面開口11AFのなかで、蒸着マスク10を形成するための金属板のエッチングが最も進まなかった部分である。これに対して、図3において二点鎖線で示される形状は、図2におけるIIIb‐IIIb線に沿う断面形状である。IIIb‐IIIb線は、表面開口11AFの長辺11Lにおける山部11L1を通る直線である。山部11L1は、表面開口11AFのなかで、蒸着マスク10を形成するための金属板のエッチングが最も進んだ部分である。
【0046】
そのため、IIIa線‐IIIa線に沿う断面における第1ステップハイトSH1は、IIIb線‐IIIb線に沿う断面における第2ステップハイトSH2よりも大きい。なお、蒸着マスク10では、IIIb線‐IIIb線に沿う断面において、IIIa線‐IIIa線に沿う断面に比べてエッチングが進行している。そのため、IIIb線‐IIIb線に沿う断面での第2ステップハイトSH2は、IIIa線‐IIIa線に沿う断面での第1ステップハイトSH1よりも小さい。
【0047】
図4は、図2が示すIV‐IV線に沿う貫通孔11の断面形状を示している。すなわち、図4は、表面開口11AFの長辺11Lが延びる方向と平行な平面に沿う蒸着マスク10の断面形状を示している。
【0048】
図4が示すように、貫通孔11を画定する側面11ASのうち、大孔部11HLを画定する側面11HLSは、貫通孔11が延びる方向、すなわち長辺方向に沿って繰り返す波を含む波状を有している。すなわち、大孔部11HLを画定する側面11HLSでは、表面開口11AFの長辺11Lにおける波形状が、蒸着マスク10の厚さ方向に沿って維持されている。
【0049】
[蒸着マスクの製造方法]
図5から図13を参照して、蒸着マスクの製造方法を説明する。
蒸着マスク10の製造方法は、金属板にレジスト層を形成すること、レジストマスクを形成すること、および、貫通孔を形成することを含んでいる。レジストマスクを形成することでは、レジスト層を露光し、露光したレジスト層を現像してレジストマスクを形成する。貫通孔を形成することでは、レジストマスクを用いて金属板をウェットエッチングして、金属板の第1面に第1開口が位置する貫通孔を形成する。
【0050】
貫通孔を形成することでは、第1面と対向する視点から見て、第1開口が第1方向に延びる形状を有し、かつ、第1方向と交差する方向の幅が第1方向の途中で狭まることで括れるように第1開口を形成する。以下、図面を参照して、蒸着マスク10の製造方法をより詳しく説明する。
【0051】
図5が示すように、蒸着マスク10が形成される際には、まず、蒸着マスク10を形成するための金属板10Mを準備する。金属板10Mは、例えば、鉄ニッケル系合金から形成される。鉄ニッケル合金は、例えば、36質量%のニッケルを含むことが可能である。鉄ニッケル系合金は、インバーであってよい。金属板10Mの厚さは、例えば1μm以上50μm以下であってよく、10μm以上30μm以下であることが好ましい。これにより、蒸着マスク10を形成するための金属板に対するエッチングが行いやすくなる。金属板10Mは、表面10MFと、表面10MFに対向する裏面10MRとを含んでいる。
【0052】
金属板10Mの表面10MFに第1レジスト層21Fを形成し、金属板10Mの裏面10MRに第2レジスト層21Rを形成する。各レジスト層21F,21Rは、例えばネガ型のレジスト材料によって形成される。なお、各レジスト層21F,21Rは、ポジ型のレジスト材料によって形成されてもよい。各レジスト層21F,21Rは、ドライフィルムレジストの貼り付けによって形成される。なお、ドライフィルムレジストの厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0053】
図6は、レジスト層21F,21Rの露光に用いられる露光マスクの平面構造を示している。なお、図6では、第1レジスト層21Fの露光に用いられる露光マスクが実線で示されている。これに対して、第2レジスト層21Rの露光に用いられる露光マスクが二点鎖線で示されている。また、図6には、各レジスト層21F,21Rがネガ型のレジスト材料によって形成された場合における露光マスクの形状を示している。なお、露光マスクは、遮光パターンである。第1レジスト層21Fのうち、露光マスクが配置された部分は露光されない。そのため、第1レジスト層21Fが現像されることによって、第1レジスト層21Fのうちで露光マスクが配置された部分には、開口が形成される。
【0054】
図6が示すように、露光マスク22Fは、略長方形状を有している。露光マスク22Fは、一対の長辺22FLと一対の短辺22FSとを有している。露光マスク22Fは、短辺22FSと平行な方向に沿って延びる複数のスリット22FSLを有している。図6が示す例では、露光マスク22Fは、各長辺22FLにおいて窪むスリット22FSLを3つ有している。各長辺22FLにおいて、3つのスリット22FSLは、長辺22FLを等分する位置に配置されている。長辺22FLにおいて、スリット22FSLのピッチは、短辺22FSに略等しいことが好ましい。
【0055】
露光マスク22Fにおいて、長辺22FLの長さが、露光マスク22Fの長さLMである。短辺22FSの長さが、露光マスク22Fの幅WMである。図6が示す例では、各スリット22FSLの長さLSLは、露光マスク22Fの幅WMの略1/3である。各スリット22FSLの幅WSLは、スリット22FSLの長さLSLよりも短い。スリット22FSLの幅WSLは、露光マスク22Fの長辺22FLのうちで、スリット22FSL間に位置する部分の長さよりも短い。露光マスク22Fの長さLMにおいて、スリット22FSLによって等分された各長さが単位長さULMである。各長辺22FLにおいて、複数のスリット22FSLは、長辺22FLを等分するように配置されている。スリット22FSLの幅WSLは、単位長さULMよりも短い。
【0056】
露光マスク22Fの角部には、突出部22Pが1つずつ位置している。突出部22Pは、露光マスク22Fの長辺22FL、および、露光マスク22Fの短辺22FSを通る仮想的な長方形を設定した場合に、当該長方形の角部から外側に向けて突き出た部分である。各突出部22Pは、略正方形状を有している。
【0057】
なお、露光マスク22Rは、長方形状を有している。露光マスク22Rは、第1レジスト層21Fに開口を形成するための露光マスク22Fよりも小さい。
【0058】
図7が示すように、露光後のレジスト層21F,21Rが現像されることによって、レジストマスク23F,23Rが形成される。第1レジスト層21Fの露光および現像によって、金属板10Mの表面10MFに第1レジストマスク23Fが形成される。第2レジスト層21Rの露光および現像によって、金属板10Mの裏面10MRに第2レジストマスク23Rが形成される。
【0059】
第1レジストマスク23Fは、第1マスク孔23FAを有している。第1マスク孔23FAは、蒸着マスク10の貫通孔11における大孔部11HLを形成するための孔である。第2レジストマスク23Rは、第2マスク孔23RAを有している。第2マスク孔23RAは、蒸着マスク10の貫通孔11における小孔部11HSを形成するための孔である。
【0060】
図8は、金属板10Mの表面10MFと対向する視点から見た第1レジストマスク23Fの平面構造を示している。なお、金属板10Mの裏面10MRと対向する視点から見た第2レジストマスク23Rの平面構造は、図示を省略する。上述したように、露光マスク22Rは長方形状を有するから、第2レジストマスク23Rは、長方形状を有した開口を有する。
【0061】
図8が示すように、第1レジストマスク23Fを形成する工程では、上述したように、金属板10Mの貫通孔11を形成するための第1マスク孔23FAを有した第1レジストマスク23Fを形成する。第1マスク孔23FAは、金属板10Mの表面10MFと対向する視点から見て、互いに対向する一対の長辺23FALと、互いに対向する一対の短辺23FASとに囲まれた形状を有している。第1マスク孔23FAは、上述した露光マスク22Fに略等しい形状を有している。第1マスク孔23FAは、略長方形状を有している。
【0062】
第1レジストマスク23Fは、複数の凸部23FPを備えている。各凸部23FPは、各長辺23FALから他方の長辺23FALに向かう方向に沿って、第1マスク孔23FA内に突き出ている。
【0063】
第1マスク孔23FAの長辺23FALが複数の凸部23FPによって分断される。そのため、第1レジストマスク23Fが凸部23FPを有しない場合に比べて、金属板10Mのうち、第1マスク孔23FAの短辺23FASにおいて露出する部分と、第1マスク孔23FAの長辺23FALにおいて露出する部分との間において、エッチング液の挙動に差が生じにくくなる。これにより、第1マスク孔23FAの長辺23FALから露出する部分が、第1マスク孔23FAの短辺23FASから露出する部分に対して過剰にエッチングされることが抑えられる。結果として、金属板10Mの貫通孔において長辺方向でのエッチング量と、短辺方向でのエッチング量との差を抑えることが可能である。
【0064】
露光マスク22Fがスリット22FSLを有しない場合には、第1マスク孔23FAの長辺23FALが複数の凸部23FPによって分断されない。この場合には、第1マスク孔23FAの長辺23FALの近傍でのエッチング液の接触時間が、第1マスク孔23FAの短辺23FASの近傍でのエッチング液の接触時間よりも長くなる。そのため、長辺23FALの近傍において金属板10Mがエッチングされる速度が、短辺23FASの近傍において金属板10Mがエッチングされる速度よりも高くなる。結果として、金属板10Mの貫通孔において、長辺方向でのエッチング量と、短辺方向でのエッチング量とに差が生じる。
【0065】
第1レジストマスク23Fは、1つの第1マスク孔23FAに対して、露光マスク22Fが備えるスリット22FSLと同数の凸部23FPを備えている。第1レジストマスク23Fは、各長辺23FALを起点とする凸部23FPを3つずつ備えている。
【0066】
金属板10Mの表面10MFと対向する視点から見て、第1マスク孔23FAの角部には、突出部23FAPが1つずつ位置している。突出部23FAPは、露光マスク22Fが有する突出部22Pと略同一の形状を有している。第1マスク孔23FAが突出部23FAPを有することによって、第1マスク孔23FAが突出部23FAPを有しない場合に比べて、表面開口11AFの角部が弧状を有しにくくなる。これにより、長方形の角部が有する形状に対する、表面開口11AFの角部が有する形状のずれ量を小さくすることができる。
【0067】
図9が示すように、金属板10Mに貫通孔11を形成する工程では、まず、第2レジストマスク23Rを用いて、金属板10Mの裏面10MRから金属板10Mをエッチングする。金属板10Mをエッチングする前に、金属板10Mの表面10MFを覆う第1保護層24Fを形成する。これにより、金属板10Mの表面10MFが裏面10MRとともにエッチングされることがない。金属板10Mが裏面10MRからエッチングされることによって、第2レジストマスク23Rが有する第2マスク孔23RAに応じた形状を有する小孔部10MSが形成される。
【0068】
金属板10Mがインバーから形成される場合には、インバーをエッチングすることが可能なエッチング液、すなわち酸性のエッチング液を用いることができる。酸性のエッチング液は、例えば、塩化第二鉄液、過塩素酸第二鉄液、および、過塩素酸第二鉄液と塩化第二鉄液との混合液のいずれかに対して、過塩素酸、塩酸、硫酸、蟻酸、および、酢酸のいずれかを混合した溶液であってよい。金属板10Mをエッチングする方式には、ディップ式、スプレー式、および、スピン式のいずれかを用いることができる。第1保護層24Fは、エッチング液によってエッチングされない材料によって形成されていればよい。
【0069】
図10が示すように、第1レジストマスク23Fを用いて、金属板10Mの表面10MFから金属板10Mをエッチングする。金属板10Mをエッチングする前に、第1保護層24Fを第1レジストマスク23Fから除去する。また、金属板10Mをエッチングする前に、第2レジストマスク23Rを除去する。次いで、金属板10Mの裏面10MRを覆う第2保護層24Rを裏面10MR上に形成する。これにより、金属板10Mの裏面10MRが表面10MFとともにエッチングされることがない。
【0070】
なお、金属板10Mの裏面10MRに形成された第2レジストマスク23Rは除去されなくてもよい。この場合には、第2保護層24Rは、第2レジストマスク23R上に形成されればよい。
【0071】
図11が示すように、金属板10Mが表面10MFからエッチングされることによって、第1レジストマスク23Fが有する第1マスク孔23FAに応じた形状を有する大孔部10MLが形成される。大孔部10MLは、金属板10Mの表面10MFから裏面10MRに向かう方向に沿って形成されることによって、金属板10Mに形成された小孔部10MSに接続される。
【0072】
金属板10Mがインバーから形成される場合には、金属板10Mを裏面10MRからエッチングする場合と同様に、インバーをエッチングすることが可能なエッチング液、すなわち酸性のエッチング液を用いることができる。酸性のエッチング液は、例えば、塩化第二鉄液、過塩素酸第二鉄液、および、過塩素酸第二鉄液と塩化第二鉄液との混合液のいずれかに対して、過塩素酸、塩酸、硫酸、蟻酸、および、酢酸のいずれかを混合した溶液であってよい。金属板10Mをエッチングする方式には、ディップ式、スプレー式、および、スピン式のいずれかを用いることができる。第2保護層24Rは、エッチング液によってエッチングされない材料によって形成されていればよい。
【0073】
図12が示すように、金属板10Mの表面10MFから第1レジストマスク23Fが除去される。また、金属板10Mの裏面10MRから第2保護層24Rが除去される。金属板10Mから所定の長さを有した部分が断裁されることによって、蒸着マスク10が形成される。
【0074】
なお、金属板10Mの表面10MFが蒸着マスク10の表面10Fに対応する。金属板10Mの裏面10MRが蒸着マスク10の裏面10Rに対応する。金属板10Mの大孔部10MLが、蒸着マスク10の貫通孔11が備える大孔部11HLに対応する。金属板10Mの小孔部10MSが、蒸着マスク10の貫通孔11が備える小孔部11HSに対応する。
【0075】
図13は、金属板10Mの表面10MFと対向する視点から見た金属板10Mの平面構造を示している。
図13が示すように、金属板10Mの表面10MFには、貫通孔11の表面開口11AFが位置する。表面開口11AFの各長辺11Lは、第1レジストマスク23Fが備える凸部23FPの数に応じた数の波を有している。金属板10Mの表面10MFと対向する視点から見て、貫通孔11の表面開口11AFが画定する領域内に中央開口11ACが位置している。すなわち、中央開口11ACは、金属板10Mの表面10MFと対向する視点から見て、表面開口11AFによって囲まれている。
【0076】
[表示装置の製造方法]
図14を参照して、表示装置の製造方法を説明する。
表示装置の製造方法は、上述した蒸着マスク10の製造方法を用いて蒸着マスク10を準備すること、および、蒸着マスク10を用いて蒸着対象に蒸着パターンを形成すること、を含んでいる。以下、図面を参照して、蒸着装置の一例とともに、蒸着パターンを形成する工程を説明する。
【0077】
図14が示すように、蒸着装置30は、蒸着マスク10と、蒸着対象Sとを収容する収容槽31を備えている。収容槽31は、蒸着対象Sと蒸着マスク10とを収容槽31内における所定の位置に保持するように構成されている。収容槽31内には、蒸着材料Mvdを保持する保持部32と、蒸着材料Mvdを加熱する加熱部33とが位置している。保持部32に保持される蒸着材料Mvdは、例えば有機発光材料である。収容槽31は、蒸着対象Sと蒸着マスク10とを、蒸着対象Sと保持部32との間に蒸着マスク10が位置し、かつ、蒸着マスク10と保持部32とが対向するように、収容槽31内に位置させる。蒸着マスク10は、蒸着マスク10の裏面10Rが蒸着対象Sに密着した状態で、収容槽31内に配置される。
【0078】
蒸着パターンを形成する工程では、蒸着材料Mvdが加熱部33によって加熱されることにより、蒸着材料Mvdが気化または昇華する。気化または昇華した蒸着材料Mvdは、蒸着マスク10が備える貫通孔11を通過して蒸着対象Sに付着する。これにより、例えば、蒸着材料Mvdが有機発光材料である場合には、蒸着マスク10が有する貫通孔11の形状および位置に対応した形状を有する有機層が、蒸着対象Sに形成される。なお、蒸着材料Mvdは、表示層の画素回路が備える画素電極を形成するための金属材料などであってもよい。
【0079】
[実施例]
表1および表2を参照して実施例および比較例を説明する。表1には、実施例および比較例で用いた露光マスクの各部の寸法を記載した。また、表2には、実施例および比較例の蒸着マスクに対する評価結果を記載した。なお、以下に説明する実施例および比較例では、金属板のエッチングに枚葉式エッチング装置を用いた。
【0080】
[実施例1]
36質量%のニッケルを含む鉄‐ニッケル系合金から形成され、25μmの厚さを有し、かつ、一辺の長さが100mmである正方形状を有した金属板を準備した。そして、ネガ型のレジスト材料から形成されたドライフィルムレジストを金属板の各面に貼り付けることによって、金属板の両面に15μmの厚さを有したレジスト層を形成した。
【0081】
次いで、図6を参照して先に説明した形状を有する露光マスクを用いて第1レジスト層を露光した。露光後のレジスト層を現像することによって、第1レジストマスクを形成した。なお、露光マスクにおいて、長さLMを147.9μmに設定し、幅WMを55.4μmに設定し、スリット22FSLの長さLSLを16.3μmに設定し、スリット22FSLの幅WSLを8.7μmに設定し、単位長さULMを37.0μmに設定した。
【0082】
露光マスクが有する突出部は、以下の方法で設計した。すなわち、露光マスクにおいて、上述した仮想的な長方形を設定し、当該長方形の角部に正方形の重心が位置するように配置した。この際に、正方形が有する一辺の長さを16μmに設定し、かつ、仮想的な長方形の長辺と、正方形の一辺のうちで当該長辺に交わる辺とが形成する角度が45°であるように、正方形を配置した。なお、第1レジスト層を露光する際には、複数の露光マスクが格子配列の各格子点に位置するように、第1レジスト層に対して複数の露光マスクを配置した。
【0083】
また、第2レジスト層を露光するための露光マスクとして、130.7μmの長さを有し、かつ、30.3μmの幅を有した露光マスクを準備した。露光マスクを用いて第2レジスト層を露光し、第2レジスト層を現像することによって、第2レジストマスクを形成した。
【0084】
そして、第2レジストマスクを用いて金属板をエッチングした。この際に、金属板の裏面が枚葉式エッチング装置のエッチング液に接触する時間を1分30秒に設定した。また、塩化第二鉄液をエッチング液として用い、かつ、エッチング液の温度を50℃に設定した。これにより、金属板に小孔部を形成した。
【0085】
次いで、第1レジストマスクを用いて金属板をエッチングした。この際に、金属板の表面が枚葉式エッチング装置のエッチング液に接触する時間を3分40秒に設定した。それ以外は、第2レジストマスクを用いた金属板のエッチングと同一の条件に設定して、第1レジストマスクを用いて金属板をエッチングした。これにより、金属板に大孔部を形成することによって、貫通孔を有した実施例1の蒸着マスクを得た。
【0086】
[実施例2]
実施例1において、スリットの長さLSLを12.0μmに設定した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の金属板を得た。
【0087】
[実施例3]
実施例1において、金属板をエッチングする際に、金属板の表面が枚葉式エッチング装置のエッチング液に接触する時間を4分10秒に設定した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の金属板を得た。
【0088】
[比較例1]
実施例1において、露光マスクの長さLMを148.0μmに設定し、幅WMを53.5μmに設定し、かつ、露光マスクがスリットを有しない以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例1の金属板を得た。
【0089】
【表1】
【0090】
[評価]
実施例1から実施例3、および、比較例1の各々において、貫通孔におけるステップハイトを測定した。短辺と平行な平面であって、かつ、第1谷部、第2谷部、および、第3谷部をそれぞれ含む断面に対応する部分において、ステップハイトを測定した。なお、第1谷部、第2谷部、および、第3谷部は、表面開口の長辺に沿って記載の順に並んでいた。短辺と平行な平面であって、かつ、第1山部および第2山部をそれぞれ含む断面に対応する部分において、ステップハイトを測定した。なお、第1山部は、長辺が延びる方向において第1谷部と第2谷部とに挟まれる部分であった。第2山部は、長辺が延びる方向において第2谷部と第3谷部とに挟まれる部分であった。また、長辺と平行な平面に沿う断面に対応する部分において、ステップハイトを測定した。なお、ステップハイトの測定には、走査電子顕微鏡(U3500形、(株)日立ハイテク製)を用いた。ステップハイトを測定した結果は、以下の表2に示す通りであった。なお、比較例1の蒸着マスクでは、表面開口の長辺が谷部および山部を有しない。そのため、比較例1では、各実施例の蒸着マスクにおいて各山部と各谷部とが位置する部分と同等の部分において、ステップハイトを測定した。
【0091】
【表2】
【0092】
表2が示すように、実施例1において、短辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトの平均値は、2.54であることが認められた。また、長辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトと、短辺に平行な平面に沿う断面でのステップハイトとの差において、最小値が0.22であり、最大値が1.07であることが認められた。
【0093】
実施例2において、短辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトの平均値は、0.89であることが認められた。また、長辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトと、短辺に平行な平面に沿う断面でのステップハイトとの差において、最小値が1.91であり、最大値が2.45であることが認められた。
【0094】
実施例3において、短辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトの平均値は、2.03であることが認められた。また、長辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトと、短辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトとの差において、最小値が0.21であり、最大値が1.37であることが認められた。
【0095】
比較例1において、短辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトの平均値は、0.65であることが認められた。長辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトと、短辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトとの差において、最小値が2.52であり、最大値が2.54であることが認められた。このように、実施例1から実施例3の金属板によれば、長辺と平行な平面に沿う断面でのステップハイトと、短辺に平行な平面に沿う断面でのステップハイトとの差の最大値が、比較例1の金属板でのステップハイトの差よりも小さいことが認められた。すなわち、実施例1から実施例3の金属板によれば、貫通孔の長辺方向でのエッチング量と短辺方向でのエッチング量との差が抑えられることが認められた。
【0096】
以上説明したように、蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)表面開口11AFが括れを有した形状を有するため、貫通孔11を形成するためのエッチング液の流れが括れる部位において分断される。結果として、表面開口11AFが括れを有していない構成と比べて、貫通孔11を第1方向である長軸方向に広げるエッチング量と短軸方向に広げるエッチング量との差を抑えることが可能となる。
【0097】
(2)各長辺11Lが波状を有するから、蒸着マスク10を形成するための金属板10Mにレジストマスクを用いて貫通孔11を形成する際に、第1レジストマスク23Fの第1マスク孔23FAが有する長辺23FALを、貫通孔11の長辺11Lが有する波の数と同数に分割するように構成された第1レジストマスク23Fを用いることが可能である。
【0098】
これにより、金属板10Mのエッチングに際して、第1マスク孔23FAの長辺23FALにおいて、エッチング液の流れる領域が、貫通孔11の長辺11Lが有する波の数と同数に分割される。これにより、第1マスク孔23FAに供給されるエッチング液から見て、第1マスク孔23FAにおいて、分割された長辺23FALの部分と短辺23FASとの間で長さの差が小さくなるから、長辺方向でのエッチング液の挙動と、短辺方向でのエッチング液の挙動との差を抑えることが可能である。結果として、貫通孔11を長辺方向に広げるエッチング量と短辺方向に広げるエッチング量との差を抑えることが可能である。
【0099】
(3)蒸着マスク10を形成するための金属板10Mのエッチングにおいて、第1マスク孔23FAの長辺23FALを第1マスク孔23FAの短辺23FASと略等しい長さに分割するように構成された第1レジストマスク23Fを用いることが可能である。これにより、第1マスク孔23FAに供給されるエッチング液から見て、第1マスク孔23FAにおいて、分割された長辺23FALの部分と短辺23FASとの間で長さが略等しいから、長辺方向でのエッチング液の挙動と、短辺方向でのエッチング液の挙動とが略等しい。結果として、貫通孔11を長辺方向に広げるエッチング量と短辺方向に広げるエッチング量との差をさらに抑えることが可能である。
【0100】
(4)各短辺11Sが長辺11Lにおける波の周期に対して0.6倍以上1.4倍以下の長さを有することが好ましい。
【0101】
(5)蒸着マスク10の厚さ方向において、表面開口11AFから中央開口11ACまでにわたる領域において、貫通孔11の長辺方向でのエッチング量と短辺方向でのエッチング量との差を抑えることが可能である。
【0102】
(6)第1マスク孔23FAの長辺23FALが複数の凸部23FPによって分断される。そのため、第1レジストマスク23Fが凸部23FPを有しない場合に比べて、金属板10Mのうち、第1マスク孔23FAの短辺23FASにおいて露出する部分と、第1マスク孔23FAの長辺23FALにおいて露出する部分との間において、エッチング液の挙動に差が生じにくくなる。これにより、第1マスク孔23FAの長辺23FALから露出する部分が、第1マスク孔23FAの短辺23FASから露出する部分に対して過剰にエッチングされることが抑えられる。結果として、金属板10Mの貫通孔において長辺方向でのエッチング量と、短辺方向でのエッチング量との差を抑えることが可能である。
【0103】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[表面開口]
・上述したように、表面開口11AFは、表面10Fと対向する視点から見て、第1方向に延びる形状を有し、かつ、第1方向と交差する方向の幅が第1方向の途中で狭まるように括れていればよい。そのため、表面開口11AFは、図2を参照して先に説明したような一対の長辺11Lと一対の短辺11Sとによって画定される形状以外の形状を有してもよい。例えば、表面開口11AFは、表面10Fと対向する視点から見て、2つの円が各円の一部において繋がった形状を有してもよい。なお、表面10Fと対向する視点から見て、表面開口11AFの括れた部分とは、第1方向において、第1方向と交差する方向の幅が極小値を有する部分である。すなわち、括れた部分での第1方向と交差する方向の幅は、第1方向において括れた部分を挟む部分での第1方向と交差する方向の幅よりも小さい。
【0104】
[金属板]
・金属板10Mを形成する材料は、インバーに限らず、例えば以下の材料であってもよい。すなわち、金属板10Mを形成する材料は、30質量%以上のニッケルと、残余分の鉄を含む合金であってもよい。なお、当該合金は、鉄およびニッケルに加えて添加物を含んでもよい。添加物は、クロム、マンガン、炭素、および、コバルトなどである。金属板10Mは、鉄ニッケルコバルト系合金から形成されてもよい。鉄ニッケルコバルト系合金は、例えば、30質量%以上のニッケル、3質量%以上のコバルト、および、残余分の鉄を含む。鉄ニッケルコバルト系合金は、鉄、ニッケル、およびコバルトに加えて添加物を含んでもよい。添加物は、例えば、クロム、マンガン、および炭素などの添加物を含んでいてもよい。鉄ニッケルコバルト系合金は、32質%のニッケル、4質量%以上5質量%以下のコバルト、および、残余分の鉄を含む合金、すなわちスーパーインバーであってもよい。
【0105】
[レジスト層]
・各レジスト層21F,21Rは、レジスト層21F,21Rを形成するための塗液の塗布によって形成されてもよい。例えば、金属板10Mの厚さが10μm以下である場合には、塗布によってレジスト層21F,21Rを形成することが好ましい。また例えば、金属板10Mの厚さが5μm以下である場合には、1μm以下の厚さを有したレジスト層21F,21Rを塗布によって形成することが好ましい。
【0106】
[蒸着マスクの製造方法]
・蒸着マスク10が備える貫通孔11は、金属板10Mの表面10MFから金属板10Mをエッチングするのみによって形成されてもよい。この場合には、金属板10Mの厚さは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この場合には、貫通孔11は、表面開口11AFから裏面開口11ARに延び、かつ、表面開口11AFから裏面開口11ARに向けて先細る形状を有する。金属板10Mを表面10MFのみからエッチングした場合には、図8を用いて説明した第1レジストマスク23Fを用いて金属板10Mをエッチングすることによって、短辺方向でのエッチング量と長辺方向でのエッチング量との差を小さくすることができる。これにより、蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、表面開口11AFの長辺11Lにおける直進性を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
10…蒸着マスク
10F…表面
10R…裏面
10M…金属板
11…貫通孔
11AC…中央開口
11AF…表面開口
11AR…裏面開口
11L…長辺
11S…短辺
23F…第1レジストマスク
23FA…第1マスク孔
23FAL…長辺
23FAS…短辺
23FP…凸部
図1
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