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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110553
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/00 20060101AFI20220722BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20220722BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220722BHJP
   A61H 7/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B60N3/00 Z
A47C7/62 Z
B60N2/90
A61H7/00 323U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006034
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優海
(72)【発明者】
【氏名】山川 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】早川 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】池浦 良淳
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B088
4C100
【Fターム(参考)】
3B084JC13
3B087DE10
3B088CA13
4C100AF02
4C100BB03
4C100CA06
4C100DA06
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加させることなく、低コストに、乗員の疲労を低減可能な技術を提供する。
【解決手段】姿勢変化機構とは別にセンサを用意することなく、姿勢変化機構の動作制御で乗員毎の腰椎や胸椎の位置を推定する。姿勢変化機構は、背面支持機構と、背面支持機構の上下方向の位置を移動させることが可能な第1モータと、背面支持機構の前後方向の位置を移動させることが可能な第2モータと、含む。背面支持機構の上下方向の位置を第1モータにより変化させながら、各上下方向の位置において背面支持機構の前方向の位置を第2モータにより変化させて所望の抵抗となった時の第2モータの回転回数の値を比較して、乗員の腰椎の位置を推定する。胸椎の位置は、腰椎の位置から演算により求める。各位置の推定結果に基づいて姿勢変化機構の位置を設定し、姿勢変化機構を用いて乗員に疲労低減効果を与える。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに連結されたシートバックと、を備え、
前記シートバックは、姿勢変化機構を含み、
前記姿勢変化機構は、
背面支持機構と、
前記背面支持機構の上下方向の位置を移動させることが可能な第1モータと、
前記背面支持機構の前後方向の位置を移動させることが可能な第2モータと、含み、
前記背面支持機構の上下方向の位置を前記第1モータにより変化させながら、各上下方向の位置において前記背面支持機構の前方向の位置を前記第2モータにより変化させて所望の抵抗となった時の前記第2モータの回転回数の値を比較して、乗員の腰椎部の位置を推定する、
車両用シート。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2モータの回転回数の値が最も大きい前記背面支持機構の上下方向の位置を乗員の腰椎部と推定する、車両用シート。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2モータの回転回数の値が最も大きい前記背面支持機構の上下方向の位置から演算を行い、乗員の胸椎部を推定する、車両用シート。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1モータの回転回数の値を検出する第1ホールICと、
前記第2モータの回転回数の値を検出する第2ホールICと、
前記第1ホールIC及び前記第2ホールICに接続された中央処理装置と、を含み、
前記中央処理装置は、前記背面支持機構の上下方向の各位置の前記第2モータの回転回数の値を比較して、乗員の腰椎の位置を推定する、車両用シート。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1モータ及び前記第2モータに接続されたモータドライバを含み、
前記モータドライバは、前記中央処理装置から制御に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータの回転制御を行う、車両用シート。
【請求項6】
請求項3において、
疲労軽減システムを有し、
前記疲労軽減システムは、
前記推定された腰椎の位置に前記背面支持機構の位置を設定する第1疲労軽減モードと、
前記推定された胸椎の位置に前記背面支持機構の位置を設定する第2疲労軽減モードと、を含み、
前記第1疲労軽減モード及び前記第2疲労軽減モードにおいて、前記背面支持機構の前後方向の位置を前記第2モータよって所定時間毎に変更させる、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シートに関し、特に、マッサージ機能を有する車両用シートに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の体格を自動的に検知して適正位置でのマッサージを行うことができるマッサージ装置として、特開2003-38599号公報の提案がある。また、シート着座者からの設定に応じてマッサージの強度を切替え可能な車両用マッサージシートとして、特開2006-198307号公報の提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-38599号公報
【特許文献2】特開2006-198307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、利用者の体格を自動的に検知するために、シート状の圧力センサ(体格検知センサ)を座面に搭載し、背部荷重分布から利用者の体格を推定し、マッサージ駆動部としてのローラのマッサージ位置を決定して、ローラの位置を利用者にとっての適正位置となるように移動している。このため、マッサージ駆動部としてのローラ以外に、体格検知センサが必要なため、部品点数の増加につながる。
【0005】
特許文献2では、車両用シートの乗員の背面~腰部の広範囲にエアユニットなどのマッサージ機構が搭載されている。このため、部品点数が多く、制御も複雑となるためコストがかかる。
【0006】
本発明の目的は、部品点数の増加させることなく、低コストに、乗員の疲労を低減可能な技術を提供することにある。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0009】
すなわち、姿勢変化機構とは別にセンサを用意することなく、姿勢変化機構の動作制御で乗員毎の腰椎の位置や胸椎の位置を推定する。そして、各位置の推定結果に基づいて姿勢変化機構の位置を設定し、姿勢変化機構を用いて乗員に疲労低減効果を与える。
【発明の効果】
【0010】
上記車両用シートによれば、部品点数の増加させることなく、低コストに、乗員の疲労を低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は実施例に係る車両用シートの斜視図である。
図2図2は実施例に係る車両用シートのシートバックフレームの斜視図である。
図3図3図2のランバーサポート部、駆動部及び駆動伝達部の構成例を示す図である。
図4図4は駆動伝達部を説明する平面図である。
図5図5はワイヤB62をワイヤA61に対して下側に摺動させて保持している状態を示す図である。
図6図6はワイヤB62をワイヤA61に対して上側に摺動させて保持している状態を示す図である。
図7図7は樹脂プレート63がウレタンパッド38を下方で前方に押出している状態を示す図である。
図8図8は樹脂プレート63がウレタンパッド38を上方で前方に押出している状態を示す図である。
図9図9は実施例に係る制御システムの回路構成例を説明するブロック図である。
図10図10は車両用シートに着座した乗員PEの胸椎及び腰椎の位置を推定する方法について説明する図である。
図11図11は領域3P1~3P3のウレタンパッド38を背面支持機構63で押した場合について説明する図である。
図12図12は推定システムの動作フローを示す図である。
図13図13図12の動作フローにおける背面支持機構63の動作を説明する図である。
図14図14図12の動作フローに続く推定システムの動作フローを示す図である。
図15図15は第1疲労低減モードを説明する図である。
図16図16は第2疲労低減モードを説明する図である。
図17図17は疲労軽減システムの動作フローを説明する図である。
図18図18は変形例に係る疲労軽減システムの動作パターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、図面において、矢印前は車両の前方を示し、矢印後は車両の後方を示し、矢印左は車両の左側方を示し、矢印右は車両の右側方を示し、矢印上は車両の上方を示し、矢印下は車両の下方を示している。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、前、後や上、下、左、右については、車両に対しての前、後や上、下、左、右を意味するものとする。
【実施例0014】
図1は、実施例にかかる車両用シートを示す斜視図である。
【0015】
車両用シート1は、搭乗者が着座するシートクッション2、シートクッション2に着座した搭乗者が背中をもたれ掛けるシートバック3、搭乗者の頭部を支えるヘッドレスト4、サイドサポート5を備えている。シートバック3は、リクライニング機構によってシートクッション2に傾倒可能に連結されている。シートクッション2の側面に設けられた21は、後述するランバーサポート部60の前後方向の位置を調整する前後方向調整用スイッチであり、22はランバーサポート部60の上下方向の位置を調整する上下方向調整用スイッチである。
【0016】
図2は、シートバック3の表側(着座した搭乗者の背中が接する側の面)の表皮やウレタンパッドなどの部材を取外した状態のシートバックフレームの斜視図を示している。31は左側バックサイドフレーム、32は右側バックサイドフレームである。33は上部バックサイドフレーム、35はアッパーパネル、36はローアーパネルで、それぞれ左側バックサイドフレーム31と右側バックサイドフレーム32とに接続している。34はヘッドレスト4から延びる一対のステーを支持する支持部であって、上部バックサイドフレーム33に溶接により固定されている。
【0017】
60はランバーサポート部、70はランバーサポート部の駆動部、71は駆動伝達部である。また、612は、ランバーサポート部60を構成する軸の端部である。
【0018】
図3は、図2のB-B方向を見た場合の拡大図に対応し、ランバーサポート部60、ランバーサポート部の駆動部70、駆動伝達部71の構成例を示す図である。駆動部70はギアヘッドが取付けられた電動モータ(図9の701)で構成されており、右側バックサイドフレーム32に固定されている。72は駆動部70の出力軸であり、駆動伝達部71の内部で駆動部ギア73が固定されている。
【0019】
74はセクターギアで、駆動部ギア73と噛合っている。セクターギア74は、軸75で右側バックサイドフレーム32と駆動伝達部71に回動自在に支持されている。駆動部70は、出力軸72に固定された駆動部ギア73を正転又は逆転させることにより、セクターギア74を搖動させる。セクターギア74には、軸75から離れた部分(偏芯した部分)に、ランバーサポート部60を構成するワイヤA61の端部が固定されている。
【0020】
図4は、図3のC-C方向を見た場合の拡大図に対応し、駆動伝達部71を説明する平面図である。セクターギア74と駆動部ギア73とは噛合った状態になっている。セクターギア74は、円形歯車のうち駆動部ギア73との噛合いに必要な部分を残して、一部を切り取った形状をしている。駆動部ギア73を固定したモータの出力軸72と、セクターギア74を取付けた軸75とは、それぞれ駆動伝達部71に回動自在に支持されている。
【0021】
駆動伝達部71には、セクターギア74に偏心して固定されたワイヤA61をガイドするための溝76が形成されている。溝76は、ワイヤA61がセクターギア74を支持する軸75に対して搖動する軌跡に合わせた形状に形成されている。
【0022】
図3に戻って、ランバーサポート部60は、ワイヤA61、ワイヤA61にブロック64で左右2か所をサポートされているワイヤB62、ワイヤBに固定された樹脂プレート63、ワイヤAに固定されてワイヤB62を上下方向に駆動する上下駆動部65を備えている。ブロック64はワイヤA61に固定され、ワイヤB62を摺動可能に支持している。
【0023】
ワイヤA61の左側の端部は、駆動伝達部71に形成された溝76を通ってセクターギア74に固定されている。ワイヤA61の右側の端部付近は611の部分で一旦折り曲げられて、再度折り曲げられた部分の端部612が左側バックサイドフレーム31に回動自在に支持されている。端部612は、中心軸がセクターギア74を支持する軸75の中心軸と一致するように形成されている。
【0024】
ランバーサポート部60をこのように構成することにより、シートクッション2のサイド部分に設けられた前後方向調整用スイッチ21を操作して駆動部70を駆動させて出力軸72をある角度だけ回動させることにより、出力軸72に固定した駆動部ギア73でセクターギア74を、軸75を中心に回動させる。セクターギア74が回動することにより、セクターギア74に端部が固定されたワイヤA61がセクターギア74の軸75を中心に駆動伝達部71に形成された溝76に沿って搖動する。
【0025】
ワイヤA61が溝76に沿って搖動することにより、ワイヤB62に固定された樹脂プレート63がセクターギア74の軸75を中心に搖動して、樹脂プレート63の前後方向(図3において、紙面に垂直な方向)の位置が変化する。これにより、シートバック3の表側(車両用シート1に着座した搭乗者の背中が接する側の面)の部材(例えば表皮で覆われたウレタンパッド)を介して着座した搭乗者の背中への押付量を変えて、押付力を増したり、又は減らしたりすることができる。
【0026】
ここで、ワイヤB62は、ワイヤA61に固定された一対のブロック64によりガイドされ、上下駆動部65で駆動されて、ワイヤA61に対して上下方向(図3において上下方向)に移動可能に構成されている。ワイヤA61に対してワイヤB62を上下させることにより、樹脂プレート63の上下方向の位置を変えることができる。これにより、シートバック3の表側(車両用シート1に着座した搭乗者の背中が接する側の面)の部材(例えば表皮で覆われたウレタンパッド)を介して着座した搭乗者の背中を押付ける位置を、上下方向(高さ方向)に調整することができる。
【0027】
図5及び図6は、図1の車両用シート1のA-A方向を見た場合の断面図に対応している。図5はワイヤB62をワイヤA61に対して下側に摺動させて保持している状態を示す図である。図6はワイヤB62をワイヤA61に対して上側に摺動させて保持している状態を示す図である。図5及び図6において、ワイヤB62はワイヤA61に固定されたブロック64に上下方向に摺動自在に保持されている。また、ワイヤA61には、ワイヤB62を上下方向に駆動する上下駆動部65が取付けられている。上下駆動部65は、減速機付きモータ69の出力軸67に歯車66が固定されて取付けられている。一方、ワイヤB62には、歯車66と噛合う平歯車68が形成されており、歯車66と平歯車68とで、ラックとピニオンを構成している。
【0028】
ワイヤA61とワイヤB62とをこのような構成とすることにより、シートクッション2のサイド部分に設けられた上下方向調整用スイッチ22を操作してワイヤA61の側に固定された上下駆動部65の減速機付きモータ69を駆動して歯車66を図6の矢印の方向に回転させることにより、ワイヤB62はワイヤA61固定されたブロック64でガイドされて、ワイヤA61に対して上昇する。また、減速機付きモータ69を逆回転させることにより、ワイヤB62をワイヤA61に対して下降させて、ワイヤA61とワイヤB62との位置関係を、図6の状態から図5の状態に変えることができる。
【0029】
図7は樹脂プレート63がウレタンパッド38を下方で前方に押出している状態を示す図である。図8は樹脂プレート63がウレタンパッド38を上方で前方に押出している状態を示す図である。図7は樹脂プレート63が下方に位置して前方に突き出てウレタンパッド38を前方に押出している押出状態で、ランバーサポート部60が図5に示したような状態に対応する。この状態では、ウレタンパッド38と表皮37を介して、車両用シート1に着座した搭乗者の腰部を押すことになる。
【0030】
一方、図8は、樹脂プレート63が図7の状態と比べて上方に位置して前方に突出てウレタンパッド38を前方に押出している押出状態で、ランバーサポート部60が図6に示したような状態に対応する。この状態では、ウレタンパッド38と表皮37を介して、車両用シート1に着座した搭乗者の腰部よりも上の部分を押すことになる。
【0031】
これら樹脂プレート63の高さ方向(上下方向)の位置と前後方向の位置は、前後方向調整用スイッチ21と上下方向調整用スイッチ22とを操作することで、高さ方向の位置と前後方向の位置とをそれぞれに調整することができる。
【0032】
本発明では、図1図8で説明した車両用シート1を用いて、乗員に疲労低減効果を与える。以下の説明において、姿勢変化機構110は、例えば、ランバーサポート部60、駆動部70、駆動伝達部71により構成されているものとする。また、背面支持機構(63)は例えば樹脂プレート63に対応し、支持変化機構(65)は例えばモータ69を内蔵する上下駆動部65に対応し、押出量調整モータ(701)は例えば駆動部70に内蔵された電動モータに対応するものとする。
【0033】
図9は、実施例に係る制御システムの回路構成例を説明するブロック図である。制御システム100は、乗員の胸椎の位置と腰椎の位置を推定する推定システム(第1システムとも言う)と、疲労低減効果を乗員に与える疲労低減システム(第2システムとも言う)の2つの機能を有する。
【0034】
制御システム100は、車両用シート1に設けられており、姿勢変化機構110と、姿勢変化機構110の動作を制御する制御部120と、制御部120に接続された複数のスイッチ21、22、23、24などを含む。
【0035】
姿勢変化機構110は、背面支持機構63を上下方向に移動させることが可能なモータ(MT)69と、背面支持機構63を前後方向に移動させることが可能な押出量調整モータ701と、を含む。姿勢変化機構110は、さらに、モータ69の回転回数などの作動量を検出するセンサとしてのホールIC(HIC)80、押出量調整モータ(MT)701の回転回数などの作動量を検出するセンサとしてのホールIC(HIC)81と、を含む。減速機付きモータ69は第1モータと、押出量調整モータ(MT)701は第2モータということもできる。ホールIC(HIC)80は第1ホールICと、ホールIC(HIC)81は第2ホールICということができる。
【0036】
制御部120は、シートECU(電子制御ユニット)であり、モータ69、701を駆動するモータドライバMDRと、中央処理装置CPUとを含む。モータドライバMDRは、モータ69、701とハーネスにより電気的に接続されている。モータドライバMDRは、中央処理装置CPUから制御に基づいて、各モータ69、701の回転制御を、PWM(パルス幅変調:pulse width modulation)を用いて制御を行う。中央処理装置CPUは、中央処理装置を内蔵するデータ処理装置の総称であり、HIC80,81により検出または測定された各モータ69、701の回転回数のデータ(値)を受信し、中央処理装置CPUに内蔵されるメモリ回路に格納する。中央処理装置CPUは、メモリ回路に格納した複数の回転回数のデータに基づいてデータ処理を実施し、例えば、データ処理結果に基づいてモータドライバMDRを制御する。中央処理装置CPUは、HIC80,81とハーネスにより電気的に接続されている。中央処理装置CPUは、バッテリのような電源(PWR)91に接続されて、PWR91から動作電源を供給される。中央処理装置CPUは、また、車両に設けられた他のECU92とハーネスにより電気的に接続されて、通信を行うことができるように構成されている。
【0037】
モータドライバMDRと中央処理装置CPUとは、さらに、リクライニング機構の電動モータ、リフト機構の電動モータ、チルト機構の電動モータ、スライド機構の電動モータ、各種センサ等を含むシートモータ&センサ93に電気的に接続されている。車両用シート1は、図1には図示されないが、リクライニング機構の電動モータ、リフト機構の電動モータ、チルト機構の電動モータ、スライド機構の電動モータ、各種センサを有している。
【0038】
スイッチ21はモータ701の前後方向の押出量を手動で調整するための前後方向調整用スイッチであり、スイッチ22はモータ69の上下方向の高さを手動で調整するための上下方向調整用スイッチである。
【0039】
スイッチ23は、制御システム100を推定システムおよび疲労軽減システムとして動作させるか否かを制御する動作モード切り替えスイッチである。スイッチ23のオン状態は、制御システム100を推定システムおよび疲労軽減システムとして動作させることを指示する。一方、スイッチ23のオフ状態は、乗員がスイッチ21,22を用いて姿勢変化機構110を手動で操作することを可能とする。
【0040】
スイッチ24は、疲労軽減システムの動作モードを切り替えスイッチである。疲労軽減システムでは、後述するように、腰椎位置に背面支持機構63の支持位置を設定するS字姿勢モード(第1疲労軽減モード)と、胸椎位置に背面支持機構63の支持位置を設定するC字姿勢モード(第2疲労軽減モード)と、を選択することができる。スイッチ24のオン状態(第1状態)及びオフ状態(第2状態)により、S字姿勢モードとC字姿勢モードとが選択できるように構成されている。
【0041】
LED25は、例えば、複数個の発光ダイオード(light emitting diode)から構成されている。LED25は、中央処理装置CPUに接続され、中央処理装置CPUからの信号に基づいて制御システム100の動作モードを点灯や非点灯の組み合わせによって表示することができる。
【0042】
次に、制御システム100が、乗員の胸椎・腰椎の位置を推定する推定システムとして動作する場合ついて説明する。人間は、頭側から頚椎(けいつい)7個、胸椎(きょうつい)12個、腰椎(ようつい)5個の骨から構成されて、その下に、仙椎(せんつい)、尾骨(びこつ)があるものとする。
【0043】
スイッチ23がオン状態とされると、制御システム100では、まず、推定システムに係る推定プログラムが起動されて中央処理装置CPUにより実行され、乗員の胸椎・腰椎の位置が推定される。推定システムによる推定が完了した後、推定システムから疲労軽減システムへ制御システム100のシステム動作が切り替わる。疲労軽減システムでは、疲労軽減システムに係る疲労軽減プログラムが起動されて中央処理装置CPUにより実行される。
【0044】
推定システムが起動されると、支持変化機構65の上下支持位置は、初期状態である最下段へ移動する。これにより、背面支持機構63も、最下段の状態となる。押出量調整モータ701を基準位置(N状態ともいう)から一定トルクで一定時間(例えば、3~5秒)駆動させて、背面支持機構63を前方側へ押し出すように移動させ、その間のモータ701の回転回数をホールIC81で検出し、中央処理装置CPUにより内蔵のメモリ回路などに記録する。
【0045】
次に、背面支持機構63の上下支持位置を支持変化機構65によって一定間隔(例えば、10~25mm程度)で上側へ移動させ、すべての支持位置で押出量調整モータ701を上記と同条件で駆動し、モータ701の回転回数のデータ(値)を中央処理装置CPUにより記録する。
【0046】
すべての支持位置で記録したモータ701の回転回数の複数のデータを中央処理装置CPUにより比較する。これにより、中央処理装置CPUは、モータ701の回転回数が最も多い支持位置を腰椎部と推定する。胸椎部はモータ701の回転回数が最も多い支持位置を例えば後述される式1に代入し算出した位置を胸椎部と推定する。
【0047】
次に、疲労軽減システムについて説明する。
【0048】
疲労軽減システムでは、推定システムの推定結果に基づいて、背面支持機構63の支持位置を設定する。スイッチ24のオン状態により、疲労軽減システムの動作モードとしてS字姿勢モードが指定された場合、推定した腰椎位置に背面支持機構63の支持位置を設定する。スイッチ24のオフ状態により、疲労軽減システムの動作モードとしてC字姿勢モードが指定された場合、推定した胸椎位置に背面支持機構63の支持位置を設定する。S字姿勢モード及びC字姿勢モードにおいて、一定時間(例えば、5~30分)毎に背面支持機構63の押出量を基準位置(N状態とも言う)と押出量最大へ交互に変化させるように制御するのか好ましい。
【0049】
(推定システム)
次に、乗員の胸椎・腰椎の位置の推定方法について説明する。
【0050】
着座時の車両用シート1に対する胸椎及び腰椎の高さ方向の位置は乗員の体格によって異なるので、疲労軽減システムを効果的に動作させるためには、乗員各自の胸椎及び腰椎の位置を比較的正確に推定する必要がある。人体の特性として立位・座位問わず、生理的湾曲により腰椎部は前弯している。なお、座位の場合、臀部がシート背面に接地するよう深く着座する必要がある。
【0051】
図10は、車両用シートに着座した乗員PEの胸椎及び腰椎の位置を推定する方法について説明する図である。図10には、車両用シート1のシートバック3およびシートクッション5に着座した乗員PEの概念的な図が描かれており、シートバック3のウレタンパッド38と乗員PEの背部PBが拡大図として示されている。ウレタンパッド38において、背部PBとの接触部分はその硬度が一定であるものとする。
【0052】
図10の拡大図において、3P1は第1腰椎部~胸椎部の領域を示している。この領域3P1の特徴は、領域3P1に対応するウレタンパッド38を背部PBの方向へ押した場合、乗員PEの脊椎はやや可動しにくい。3P2は第2~4腰椎部の領域を示している。この領域3P2の特徴は、領域3P2に対応するウレタンパッド38を背部PBの方向へ押した場合、乗員PEの脊椎は可動しやすい。3P3は第5腰椎部~骨盤部の領域を示している。この領域3P3の特徴は、領域3P3に対応するウレタンパッド38を背部PBの方向へ押した場合、乗員PEの脊椎はやや可動しにくい。乗員の胸椎・腰椎の位置の推定方法では、これらの特徴を利用する。
【0053】
図11は、領域3P1~3P3のウレタンパッド38を背面支持機構63で押した場合について説明する図である。図11では、一定の出力(所望の出力)で一定時間、背面支持機構63を押出した時、支持する部位である領域3P1~3P3により、背面支持機構63の押出量が異なり、脊椎が可動しやすい領域3P2(第2~4腰椎部の領域)が押出量も大きくなる。この特性を利用して、乗員の第2~4腰椎部の位置を探索する。
【0054】
領域3P1を押出した時、乗員PEの脊椎は可動しにくい。抵抗が大きいので3秒間の支持押出量(押出量調整モータ701の回転回数の値)は小さくなる。
【0055】
領域3P2を押出した時、乗員PEの脊椎が可動しやすい。抵抗が小さいので3秒間で支持押出量(押出量調整モータ701の回転回数の値)が最も大きくなる。
【0056】
領域3P3を押出した時、乗員PEの脊椎はやや可動しにくい。抵抗が大きいので3秒間の支持押出量(押出量調整モータ701の回転回数の値)は小さくなる。
【0057】
次に、乗員の胸椎・腰椎の位置を推定する推定システムの動作フローを説明する。図12は、推定システムの動作フローを示す図である。図13は、図12の動作フローにおける背面支持機構63の動作を説明する図である。図14は、図12の動作フローに続く推定システムの動作フローを示す図である。
【0058】
図12に示すように、スイッチ23がオン状態にされると、まず、推定システムの処理が開始される。
【0059】
ステップS1:次に、スイッチ24のオン状態及びオフ状態が確認される。これにより、疲労軽減システムの選択モードがS字姿勢モードに切り替えられているかを判定する。S字姿勢モードに切り替えられている場合(Yes)、ステップS2へ移行する。C字姿勢モードに切り替えられている場合(No)、ステップS3へ移行する。
【0060】
ステップS2:中央処理装置CPUに設けられたモードフラグ(mode flag)に、”0”を設定する(S字姿勢モードを指定)。そして、ステップS4へ移行する。
【0061】
ステップS3:中央処理装置CPUに設けられたモードフラグ(mode flag)に、”1”を設定する(C字姿勢モードを指定)。そして、ステップS4へ移行する。
【0062】
ステップS4:背面支持機構63の押出量が0mm(N状態)か否かを判定する。背面支持機構63の押出量が0mmの場合(Yes)、ステップS6へ移行する。背面支持機構63の押出量が0mmでない場合(No)、ステップS5へ移行する。
【0063】
ステップS5:押出量調整モータ701を調整し、背面支持機構63の押出量が0mmとなるよう設定する。その後、ステップS6へ移行する。
【0064】
ステップS6:支持変化機構65の支持位置が最下段(B100)か否かを判定する。つまり、背面支持機構63の位置が最下段か否かを判定する。支持変化機構65の支持位置が最下段(B100)の場合(Yes)、ステップS8へ移行する。支持変化機構65の支持位置が最下段(B100)でない場合(No)、ステップS7へ移行する。
【0065】
ステップS7:モータ69を回転させて、支持変化機構65の支持位置を最下段(B100)に移動させる。これにより、背面支持機構63の位置が最下段にされる。この状態は、図13のS7に示されている。その後、ステップS8へ移行する。
【0066】
ステップS8:押出量調整モータ701を一定出力で一定時間(ここでは、3秒から5秒間)駆動する。これにより、図13のS8に示されるように、背面支持機構63を領域3P3に押し付ける動作が実施される。この動作では、ウレタンパッド38を背面支持機構63で押した場合の背面支持機構63の抵抗が所定のしきい値となるまで押出量調整モータ701を回転させる。その後、ステップS9へ移行する。
【0067】
ステップS9:背面支持機構63の抵抗が所定のしきい値となるまで押し出した時にホールIC81で検出された押出量調整モータ701の値(回転回数)を中央処理装置CPUで記録する。その後、ステップS10へ移行する。
【0068】
ステップS10:押出量調整モータ701を駆動し、背面支持機構63の押出量を0mm(N状態)に設定する。この状態は、図13のS10に示される。その後、ステップS11へ移行する。
【0069】
ステップS11:支持変化機構65の支持位置が最上段(B180)か否かを判定する。つまり、背面支持機構63の位置が最上段か否かを判定する。支持変化機構65の支持位置が最上段(B180)の場合(Yes)、図14のステップS20へ移行する。支持変化機構65の支持位置が最上段(B180)でない場合(No)、ステップS12へ移行する。
【0070】
ステップS12:モータ69を回転させて、支持変化機構65の支持位置を例えば20mm上方へ移動させる。この状態は、図13のS12に示される。上方向の移動間隔または下方向の移動間隔は、例えば、10mm~25mmの範囲で任意に設定可能である。
【0071】
ステップS12の後、支持変化機構65の支持位置が最上段(B180)になるまで、ステップS8~S12が繰り返される。
【0072】
次に、図14の動作フローを説明する。ここでは、ステップS9で記録した各支持位置におけるホールIC81の検出した押出量調整モータ701の回転回数の値から、乗員各自の胸椎・腰椎の位置を推定する。図14の動作フローでは、記録した支持位置毎の押出量調整モータ701の回転回数の値が中央処理装置CPUによって比較される。S字姿勢または腰部の支持を引いてC字姿勢を与える場合、押出量調整モータ701の最も回転回数が大きい位置に背面支持機構63の支持位置を設定する。背部の支持を押してC字姿勢を与える場合は、以下の(式1)を用いた演算により導出される位置に背面支持機構63の支持位置を設定する。この演算は、中央処理装置CPUにより行われる。
【0073】
C字姿勢モード時の背面支持機構63の支持位置
=190+(X-100)・・・(式1)
ここで、Xは、B100~B180の内のモータ回転数が最も高かった位置である。なお、B100~B180は、支持変化機構65の支持位置を表す値であり、支持変化機構65の支持位置の最下段をB100(基準位置)として表しており、支持変化機構65の支持位置を最下段から上側に距離Lmm移動させた場合、B(100+L)として表すものとする。また、B100及びB180は、腰椎の位置を推定する場合において、支持変化機構65の支持位置を最下段と最上段とを表すものとしている。
【0074】
以下、図14の各ステップを説明する。
【0075】
ステップS20:ホールIC81により検出した押出量調整モータ701の回転回数の値、すなわち、背面支持機構63の押出量(移動量)の最大の支持位置が、最下段(B100)か否を判定する。押出量(移動量)の最大の支持位置が最下段(B100)の場合(Yes)、ステップS21へ移行する。押出量(移動量)の最大の支持位置が最下段(B100)でない場合(No)、ステップS24へ移行する。
【0076】
ステップS21:モードフラグ(mode flag)が”0”か否かを判定する(S字姿勢モードか否かを判定)。Yesの場合(S字姿勢モード)、ステップS22へ移行する。Noの場合(C字姿勢モード)、ステップS23へ移行する。
【0077】
ステップS22:背面支持機構63の支持位置を最下段(B100)へ設定し、処理を終了する。
【0078】
ステップS23:背面支持機構63の支持位置をB290へ設定し、処理を終了する。
【0079】
ステップS24:ホールIC81により検出した押出量調整モータ701の回転回数の値、すなわち、背面支持機構63の押出量(移動量)の最大の支持位置が、B120か否を判定する。押出量(移動量)の最大の支持位置がB120の場合(Yes)、ステップS25へ移行する。押出量(移動量)の最大の支持位置がB120でない場合(No)、ステップS27へ移行する。
【0080】
ステップS25:モードフラグ(mode flag)が”0”か否かを判定する(S字姿勢モードか否かを判定)。Yesの場合(S字姿勢モード)、ステップS26へ移行する。Noの場合(C字姿勢モード)、ステップS27へ移行する。
【0081】
ステップS26:背面支持機構63の支持位置をB120へ設定し、処理を終了する。
【0082】
ステップS27:背面支持機構63の支持位置をB310へ設定し、処理を終了する。
【0083】
ステップS28:ホールIC81により検出した押出量調整モータ701の回転回数の値、すなわち、背面支持機構63の押出量(移動量)の最大の支持位置が、B140か否を判定する。押出量(移動量)の最大の支持位置がB140の場合(Yes)、ステップS29へ移行する。押出量(移動量)の最大の支持位置がB140でない場合(No)、ステップS32へ移行する。
【0084】
ステップS29:モードフラグ(mode flag)が”0”か否かを判定する(S字姿勢モードか否かを判定)。Yesの場合(S字姿勢モード)、ステップS30へ移行する。Noの場合(C字姿勢モード)、ステップS31へ移行する。
【0085】
ステップS30:背面支持機構63の支持位置をB140へ設定し、処理を終了する。
【0086】
ステップS31:背面支持機構63の支持位置をB330へ設定し、処理を終了する。
【0087】
ステップS32:ホールIC81により検出した押出量調整モータ701の回転回数の値、すなわち、背面支持機構63の押出量(移動量)の最大の支持位置が、B160か否を判定する。押出量(移動量)の最大の支持位置がB160の場合(Yes)、ステップS33へ移行する。押出量(移動量)の最大の支持位置がB160でない場合(No)、ステップS36へ移行する。
【0088】
ステップS33:モードフラグ(mode flag)が”0”か否かを判定する(S字姿勢モードか否か判定)。Yesの場合(S字姿勢モード)、ステップS34へ移行する。Noの場合(C字姿勢モード)、ステップS35へ移行する。
【0089】
ステップS34:背面支持機構63の支持位置をB160へ設定し、処理を終了する。
【0090】
ステップS35:背面支持機構63の支持位置をB350へ設定し、処理を終了する。
【0091】
ステップS36:モードフラグ(mode flag)が”0”か否かを判定する(S字姿勢モードか否か判定)。Yesの場合(S字姿勢モード)、ステップS37へ移行する。Noの場合(C字姿勢モード)、ステップS35へ移行する。
【0092】
ステップS37:背面支持機構63の支持位置をB180へ設定し、処理を終了する。
【0093】
ステップS38:背面支持機構63の支持位置をB370へ設定し、処理を終了する。
【0094】
なお、変形例として、予め設定しておいたモータ回転回数に到達するまでにかかる時間を支持位置毎に記録し、それらの時間データを中央処理装置CPUによって比較する方法でも同様に胸椎・腰椎の位置を推定することは可能である。
【0095】
(疲労軽減システム)
疲労軽減システムは、モード切替用のスイッチ23,24を操作にすることにより、疲労軽減システムのオフ状態(通常のランバーサポートモード)、第1疲労低減モード(N状態→S字姿勢の切替)、第2疲労低減モード(N状態→C字姿勢の切替)の3モードの切り替えが可能である。切り替え可能なモード数は、3つに限らず、4つ以上(マッサージシステムへの切替等)もしくは2つ(いずれかのモードとのONとOFFの切り替えのみ)でも可能である。
【0096】
スイッチ23をOFF状態からON状態にすると、以下が実施される。
1.背面支持機構63をN状態に変更。
2.最適な支持位置の判定。
3.定期的(1分以上30分未満)に姿勢変化機構を動作させ、乗員の着座姿勢を変化させる。姿勢パターンや動作間隔は選択するモードにより変化する。
【0097】
疲労軽減システムは、以下によって、オフ状態に切り替わり、自動でN状態へ戻る。
1.スイッチ23がON状態からOFF状態へ操作されたとき。
2.中央処理装置CPUが車両のECU92から疲労軽減システムの停止信号を受け取ったとき。
【0098】
疲労低減モードがオン状態の時、姿勢変化機構110の支持強度は乗員が任意に調節可能である(標準設定の支持強度:最大)。疲労低減モードがオン状態の時、姿勢変化機構110の支持強度の手動調整は姿勢変化機構110が稼働状態(S字姿勢、C字姿勢)時のみ可能とする。疲労低減モードがオフ状態の時、通常のランバーサポートと同様スイッチ21、22を操作することで乗員の好みに合わせて支持位置と支持強度の調整が可能である。
【0099】
姿勢切替の動作パターンは以下の条件を満たすように設定可能である。
1.1つの姿勢の維持時間は5分以上30分未満の所定時間とする。
2.同一姿勢を連続で設定しない。つまり、例えば、「S字姿勢を15分、その後、S字姿勢を5分」の設定は不可能とされている。
【0100】
図15は、第1疲労低減モードを説明する図である。図16は、第2疲労低減モードを説明する図である。図15及び図16に示す動作パターンは、横軸が時間を示し、縦軸が支持押出量を示し、N状態からの押出量(S)とN状態からの引込量(C)とで示されている。
【0101】
図15に示すように、第1疲労低減モードでは、N状態とS字姿勢とが切り替えられる。姿勢切替の動作パターンは、この例では、N状態(N)→S字姿勢(S)→N状態(N)→S字姿勢(S)→N状態(N)→S字姿勢(S)とされている。この例では、1サイクル(N状態(N)→S字姿勢(S))は30分であり、N状態は15分、S字姿勢は15分とされている。
【0102】
図16に示すように、第2疲労低減モードでは、N状態とC字姿勢とが切り替えられるが、C字姿勢は機構により変化し、例えば、乗員の肩甲骨付近を張出すC字姿勢1と、乗員の第三腰椎部付近を引込むC字姿勢2と、がある。以下の説明では、C字姿勢1とC字姿勢2とをC字姿勢として説明する。第2疲労低減モードでは、N状態とC字姿勢とが切り替えられる。姿勢切替の動作パターンは、この例では、N状態(N)→C字姿勢(C)→N状態(N)→C字姿勢(C)→N状態(N)→C字姿勢(C)とされている。この例では、1サイクル(N状態(N)→C字姿勢(C))は20分であり、N状態は15分、C字姿勢は5分とされている。
【0103】
次に、図17を用いて疲労軽減システムの動作フローを説明する。図17は、疲労軽減システムの動作フローを説明する図である。疲労軽減システムがON状態にされると、図12図14で説明したステップS1~S38が実行される。ステップS38の後、ステップS40が実施される。
【0104】
ステップS40:中央処理装置CPU内に設けられた支持張出フラッグを”0”に設定する。支持張出フラグの”0”は、N状態を指定するものである。その後、ステップS41へ移行する。
【0105】
ステップS41:姿勢毎に設定された時間(5~30分)待機する。その後、ステップS42へ移行する。
【0106】
ステップS42:支持張出フラグが”0”か否かが判定される。支持張出フラッグが”0”の場合(Yes)、ステップS43へ移行する。支持張出フラグが”0”でない場合(No)、ステップS44へ移行する。
【0107】
ステップS43:モードフラグ(mode flag)が”0”か否かが判定される。モードフラグが”0”の場合(Yes)、ステップS45へ移行する。モードフラグが”0”でない場合(No)、ステップS46へ移行する。
【0108】
ステップS44:前後方向調整モータである押出量調整モータ701を駆動し、(S字姿勢からN状態へ、または、C字姿勢からN状態へ変更する。その後、ステップS48へ移行する。
【0109】
ステップS45:前後方向調整モータである押出量調整モータ701を駆動し、N状態からS字姿勢へ変更する。その後、ステップS47へ移行する。
【0110】
ステップS46:前後方向調整モータである押出量調整モータ701を駆動し、N状態からC字姿勢へ変更する。その後、ステップS47へ移行する。
【0111】
ステップS47:支持張出フラグを”1”に設定する。そして、ステップS41へ移行する。
【0112】
ステップS48:支持張出フラグを”0”に設定する。そして、ステップS41へ移行する。
【0113】
(変形例)
図18は、変形例に係る疲労軽減システムの動作パターンを説明する図である。図15図17では、N状態からS字姿勢またはN状態からC字姿勢の2姿勢の切り替えについて説明したが、これに限定されるわけではない。疲労軽減システムは、図18に示すように、3姿勢(N状態、S字姿勢、C字姿勢)を織り交ぜたモードも提供可能である。切替デューティ比は、2姿勢切り替え時と同様の条件で設定可能である。図18の姿勢切替の動作パターンは、N状態(N)→C字姿勢(C)→S字姿勢(S)→N状態(N)→C字姿勢(C)→S字姿勢(S)→N状態(N)とされている。1サイクル(N状態(N)→C字姿勢(C)→S字姿勢(S))は、この例では、30分であり、N状態は15分、C字姿勢は5分、S字姿勢は10分、とされている。
【0114】
N状態とS字姿勢、C字姿勢の順番は以下の条件の下で自由に設定が可能である。疲労低減モードの開始は必ずN状態を設定する(支持張出フラグの”0”)。同一姿勢が連続しない。例えば、S字姿勢10分維持したあと、さらにS字姿勢を10分維持するパターンの設定は不可能とされている。
【0115】
実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
【0116】
1)姿勢変化機構とは別にセンサを用意することなく、姿勢変化機構の動作制御のみで乗員毎の腰椎・胸椎の位置を推定することが可能である。
【0117】
2)少ない部品点数かつ簡素な制御及び低コストで、乗員の疲労低減が可能である。
【0118】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0119】
1:車両用シート
21、22、23、24:複数のスイッチ
60:ランバーサポート部
63:樹脂プレート(背面支持機構)
65:上下駆動部(支持変化機構)
69:モータ(減速機付きモータ)
70:駆動部
71:駆動伝達部
80、81:ホールIC
100:制御システム
110:姿勢変化機構
120:制御部
701:電動モータ(押出量調整モータ)
CPU:中央処理装置(データ処理装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18