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特開2022-110562組電池用熱伝達抑制シート及び組電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110562
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】組電池用熱伝達抑制シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20220722BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20220722BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220722BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20220722BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220722BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6555
H01M2/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006047
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直己
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE03
5H031EE04
5H031KK02
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY06
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池に使用され、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、通常使用時における各電池セルを冷却することができる、組電池用熱伝達抑制シート及び組電池を提供する。
【解決手段】組電池用熱伝達抑制シート40は、複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用され、電池セル間に介在される。また、組電池用熱伝達抑制シート40は、無機粒子及び無機繊維の少なくとも一方を含有する断熱材71と、断熱材71を完全に被覆する被覆材12と、を有し、断熱材71と被覆材12との間に空隙部14が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用され、前記電池セル間に介在される組電池用熱伝達抑制シートであって、
無機粒子及び無機繊維の少なくとも一方を含有する断熱材と、
前記断熱材を完全に被覆する被覆材と、を有し、
前記断熱材と前記被覆材との間に空隙部が形成されている、組電池用熱伝達抑制シート。
【請求項2】
前記断熱材に含有される前記無機粒子及び前記無機繊維の少なくとも一方は、加熱により水分を放出する材料を含む、請求項1に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【請求項3】
前記断熱材は、前記被覆材に対向する表面に凹部及び凸部を有し、
前記凹部と前記被覆材との間に前記空隙部が形成されている、請求項1又は2に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【請求項4】
前記被覆材は、前記断熱材に対向する表面に凹部及び凸部を有し、
前記凹部と前記断熱材との間に前記空隙部が形成されている、請求項1又は2に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【請求項5】
前記断熱材は、前記被覆材に対向する表面に凹部及び凸部を有し、かつ、
前記被覆材は、前記断熱材に対向する表面に凹部及び凸部を有する、請求項1又は2に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【請求項6】
前記被覆材は、エンボス加工された高分子フィルム又は金属板から構成される、請求項4又は5に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【請求項7】
複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池であって、請求項1~6のいずれか1項に記載の組電池用熱伝達抑制シートが前記電池セル間に介在される、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車又はハイブリッド車などを駆動する電動モータの電源となる組電池に好適に用いられる組電池用熱伝達抑制シート及び該組電池用熱伝達抑制シートを用いた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車などの開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車などには、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0003】
この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられているが、電池の内部短絡や過充電などが原因で1つの電池セルに熱暴走が生じた場合(すなわち「異常時」の場合)、隣接する他の電池セルへ熱の伝播が起こることで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、リチウムイオン二次電池のような複数の蓄電素子間において、効果的な断熱を実現することができる蓄電装置が開示されている。上記特許文献1に記載の蓄電装置は、互いに隣り合う第一蓄電素子と第二蓄電素子との間に、第一板材及び第二板材が配置されたものである。また、第一板材と第二板材との間には、これら第一板材及び第二板材よりも熱伝導率が低い物質の層である低熱伝導層が形成されている。
【0005】
このように構成された特許文献1に係る蓄電装置において、第一蓄電素子から第二蓄電素子に向かう輻射熱、又は、第二蓄電素子から第一蓄電素子に向かう輻射熱は、第一板材及び第二板材によって遮断される。また、これら2枚の板材の一方から他方への熱の移動は、低熱伝導層によって抑制される。
【0006】
しかし、上記蓄電装置は、第一蓄電素子と第二蓄電素子との間に断熱層が設けられているのみであるため、充放電サイクル時に発熱する電池セルを効果的に冷却することができなかった。
【0007】
そこで、特許文献2には、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、通常使用時における各電池セルを冷却することができる、組電池用吸熱シートが提案されている。上記特許文献2に記載の吸熱シートは、脱水温度が異なる物質を2種以上含有するものである。そして、上記2種以上の物質のうち、少なくとも1種は、電池セルの通常使用時において脱水可能であり、他の少なくとも1種は、電池セルの異常時において脱水可能となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-211013号公報
【特許文献2】特開2019-175806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、組電池化した電池セルに対し充放電サイクルを行う場合(すなわち「通常使用時」の場合)において、電池セルの充放電性能を十分に発揮させるためには、電池セル表面の温度を所定値以下(例えば、150℃以下)に維持する必要がある。
また、電池セルが、例えば200℃以上の温度となるような異常事態が発生した場合に、電池セルを効果的に冷却する必要がある。
このように、通常使用時に電池セル表面の温度を維持するとともに、高温となる異常時に効果的に冷却することができる熱伝達抑制手段については、近時、更なる改良が要求されている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用され、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、通常使用時における各電池セルを冷却することができる、組電池用熱伝達抑制シート及び組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、組電池用熱伝達抑制シートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0012】
[1] 複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用され、前記電池セル間に介在される組電池用熱伝達抑制シートであって、
無機粒子及び無機繊維の少なくとも一方を含有する断熱材と、
前記断熱材を完全に被覆する被覆材と、を有し、
前記断熱材と前記被覆材との間に空隙部が形成されている、組電池用熱伝達抑制シート。
【0013】
また、組電池用熱伝達抑制シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[6]に関する。
【0014】
[2] 前記断熱材に含有される前記無機粒子及び前記無機繊維の少なくとも一方は、加熱により水分を放出する材料を含む、[1]に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【0015】
[3] 前記断熱材は、前記被覆材に対向する表面に凹部及び凸部を有し、
前記凹部と前記被覆材との間に前記空隙部が形成されている、[1]又は[2]に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【0016】
[4] 前記被覆材は、前記断熱材に対向する表面に凹部及び凸部を有し、
前記凹部と前記断熱材との間に前記空隙部が形成されている、[1]又は[2]に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【0017】
[5] 前記断熱材は、前記被覆材に対向する表面に凹部及び凸部を有し、かつ、
前記被覆材は、前記断熱材に対向する表面に凹部及び凸部を有する、[1]又は[2]に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【0018】
[6] 前記被覆材は、エンボス加工された高分子フィルム又は金属板から構成される、[4]又は[5]に記載の組電池用熱伝達抑制シート。
【0019】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[7]の構成により達成される。
【0020】
[7] 複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池であって、[1]~[6]のいずれか1つに記載の組電池用熱伝達抑制シートが前記電池セル間に介在される組電池。
【発明の効果】
【0021】
本発明の組電池用熱伝達抑制シートは、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池に使用される熱伝達抑制シートにおいて、断熱材を完全に被覆する被覆材を有し、断熱材と被覆材との間に空隙部が形成されている。したがって、組電池の通常使用時に、断熱材から蒸発した水分を空隙部に滞留させることができ、このときの気化熱を利用することにより、電池セルを効果的に冷却することができる。
また、組電池の異常時には、被覆材の内部において圧力が上昇し、断熱材から発生する水分が凝集されて水滴となるため、電池セルの冷却効果が得られる。したがって、各電池セル間の熱の伝播を抑制することができる。
【0022】
本発明の組電池は、上記熱伝達抑制シートを複数の電池セル間に介在させているため、通常使用時において、各電池セルを冷却することができるとともに、異常時において、電池セル間の熱の伝播を抑制することができ、熱暴走の連鎖を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材を模式的に示す平面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを適用した組電池を模式的に示す断面図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。
図5図5は、第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。
図6図6は、第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材の他の例を模式的に示す平面図である。
図7図7は、第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材の他の例を模式的に示す平面図である。
図8図8は、第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材の他の例を模式的に示す平面図である。
図9図9は、第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材の他の例を模式的に示す平面図である。
図10図10は、第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材の他の例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、高温の熱が発生する異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、比較的低温の熱が発生する通常使用時における各電池セルを冷却することができる、組電池用熱伝達抑制シートを提供するため、鋭意検討を行った。
【0025】
その結果、本発明者らは、断熱材が被覆材によって完全に密閉されており、断熱材と被覆材との間に空隙部が形成されていることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0026】
すなわち、電池セルの温度が比較的低い通常使用時においては、断熱材と被覆材との間に空隙部が存在するため、断熱材から蒸発した水分を空隙部に滞留させることができ、蒸発時の気化熱を利用することにより、電池セルを効果的に冷却することができる。
また、電池セルの温度が高温となる異常時においては、断熱材中に含まれる吸着水が蒸発したり、断熱材の材料として含有される成分が分解して、水和水が蒸気として発生する。このとき、断熱材は被覆材によって完全に被覆されているため、断熱材と被覆材との間の空隙部における圧力が上昇する。その結果、蒸気の状態であった吸着水及び水和水が、水滴となって空隙部に凝集し、この水滴により、電池セルを冷却することができ、各電池セル間の熱の伝播を抑制することができる。
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
なお、以下において「~」とは、その下限の値以上、その上限の値以下であることを意味する。
【0028】
[1.組電池用熱伝達抑制シート]
以下、本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートについて、第1の実施形態から第6の実施形態まで順に説明する。その後、本実施形態に係る断熱材の他の例や、本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを構成する断熱材、被覆材等について説明する。さらに、本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートの製造方法について説明する。
【0029】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。また、図2は、第1の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材を模式的に示す平面図である。以下、組電池用熱伝達抑制シート40を、単に熱伝達抑制シート40ということがある。
本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シート40は、断熱材71と、断熱材71の主面となる表面71a及び裏面71bを被覆する被覆材12と、を有する。本実施形態において、被覆材12は、断熱材71を完全に被覆している。なお、断熱材71の表面71a及び裏面71bとは、後述するように、熱伝達抑制シート40と電池セルとが積層された場合において、電池セルに対向する面をいい、端面71cとは、熱伝達抑制シート40の厚さ方向に平行な4面をいう。
【0030】
断熱材71は、例えば、結晶水又は吸着水を含む無機粒子と無機繊維とを含有し、結晶水又は吸着水は、加熱により水分を放出する性質を有する。図1及び図2に示すように、断熱材71の表面71aには、複数の凹部13aが規則的に形成されており、凹部13aが形成されていない領域は、実質的に凸部13bを構成している。
凹部13aは、例えば平面視で長方形であり、図2に示すように、長手方向が断熱材71の一辺に平行である凹部と、長手方向が断熱材71の一辺に直交する方向である凹部とが、交互に配列されている。
【0031】
また、被覆材12は、例えば高分子フィルムであり、断熱材71の凸部13bと被覆材12とは、有機物質又は無機物質からなる不図示の接着剤で接着されている。
なお、凹部13aが形成されている領域は、被覆材12と接触していないため、結果として断熱材71と被覆材12との間に空隙部14が形成されている。また、被覆材12は断熱材71を完全に被覆している。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを適用した組電池を模式的に示す断面図である。組電池100は、電池ケース30と、電池ケース30の内部に格納された複数の電池セル20と、これらの電池セル20間に介在された熱伝達抑制シート40と、を有する。複数の電池セル20同士は、不図示のバスバー等により、直列又は並列に接続されている。
なお、電池セル20は、例えば、リチウムイオン二次電池が好適に用いられるが、特にこれに限定されず、その他の二次電池にも適用され得る。
【0033】
このように構成された熱伝達抑制シート40においては、通常使用時における電池セル20の温度範囲である、常温(20℃程度)から150℃程度までの比較的低温領域で温度が上昇すると、断熱材71にも熱が伝播する。本実施形態において、断熱材71は、結晶水又は吸着水を含む無機粒子を含有しており、結晶水又は吸着水は加熱により水分を放出する材料であるため、断熱材71が加熱されることにより、無機粒子から水分が蒸発する。そして、蒸発した水分は空隙部14に滞留する。このとき、断熱材71は気化熱を奪われて冷却されるため、熱伝達抑制シート40が電池セル20を効果的に冷却することができる。
【0034】
なお、電池セル20が効果的に冷却された後、組電池100の使用(すなわち、充放電)が停止された場合には、空隙部14に滞留していた水蒸気は冷却されて水滴となり、時間の経過に伴って断熱材71内に吸収される。そして、次回使用時に、再度、断熱材71中の水分が蒸発することにより、断熱材71は気化熱を奪われて、電池セル20を冷却するというサイクルを繰り返す。
このように、本実施形態において、断熱材71は被覆材12により完全に被覆されており、蒸発したほとんどの水分は、再度、断熱材71内に吸収されるため、通常使用時に、電池セル20を冷却する効果を長期間維持することができる。
【0035】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。
なお、以下の第2~第3の実施形態を示す図4及び図5において、上記第1の実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略又は簡略化する。また、以下に示す実施形態は、全て、図3に示す組電池100に記載の熱伝達抑制シート40に代えて使用することができるため、第2~第3の実施形態に係る熱伝達抑制シートを組電池100に適用したものとして、その効果等を説明する。
【0036】
第2の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シート60は、断熱材71と、断熱材71を完全に被覆する被覆材12とを有する。すなわち、不図示の接着剤等で袋状に形成された被覆材12が、断熱材71の全面を被覆しており、断熱材71は被覆材12によって完全に密閉されている。
本実施形態において、断熱材71には凹部13a及び凸部13bが形成されている。また、被覆材にも、断熱材71に対向する表面に、断熱材71から離隔する方向に凹む凹部53aと、断熱材71に向かって突出する形状の凸部53bとが形成されている。そして、被覆材52の凸部53bと断熱材71の凸部13bとは、不図示の接着剤で接着されており、被覆材52の凹部53aと断熱材11の凹部13aとの間には、空隙部14が形成されている。
【0037】
このように構成された熱伝達抑制シート60においても、通常使用時及び異常時に、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、凹部13aと凹部53aとにより空隙部14を構成するため、第1の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シート40と比較して、空隙部14の体積が増加する。したがって、断熱材71から吸着水又は水和水が蒸気となって蒸発しやすくなり、通常使用時において、電池セル20を冷却する効果をより一層向上させることができる。
【0038】
<第3の実施形態>
図5は、第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。
第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シート80は、断熱材71の表面71a、裏面71b及び端面71cが金属製の被覆材(金属板)82で被覆されている。すなわち、被覆材82は、断熱材71を完全に被覆し、密閉している。
【0039】
このように構成された熱伝達抑制シート80においても、通常使用時において、上記第1及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
以上、第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートについて順に説明した。なお、上記第1~第3の実施形態においては、図2に示す断熱材71を使用した例を挙げたが、断熱材の形状は特に限定されない。例えば、断熱材に凹部及び凸部が形成されていない場合であっても、被覆材に凹部及び凸部が形成されていれば、断熱材と被覆材との間に空隙部が形成されるため、上記第1~第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
続いて、第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材の他の例を示す。
【0042】
<断熱材の他の例>
図6~10は、第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに使用される断熱材の他の例を模式的に示す平面図である。
図6に示すように、断熱材41の表面41aには、複数の凹部13aが規則的に形成されており、凹部13aが形成されていない領域は、実質的に凸部13bを構成している。
本実施形態において凹部13aは、例えば平面視で長方形であり、全ての凹部13aは、その長手方向が断熱材41の一辺に平行となるように配列されている。
【0043】
図7に示すように、断熱材61の表面61aには、複数の凹部13aが規則的に形成されており、凹部13aが形成されていない領域は、実質的に凸部13bを構成している。ただし、図6に示す断熱材41と異なり、断熱材61の端面61cの近傍に形成された凹部13cは、断熱材61の端面61cまで到達している。
【0044】
図8に示すように、断熱材11の表面11aには、断熱材11の2対の辺に平行な2方向に、複数の溝状の凹部13aが等間隔で交差するように形成されている。また、凹部13aが形成されていない領域は、実質的に凸部13bを構成している。
【0045】
図9に示すように、断熱材21の表面21aには、断熱材21の1辺に平行な方向に延び、両端が端面21cに到達する複数の溝状の凹部13aが等間隔に形成されており、凹部13aが形成されていない領域は、実質的に凸部13bを構成している。
【0046】
図10に示すように、断熱材31の表面31aには、一方向に延びる複数の溝状の凹部13aが規則的に形成されており、凹部13aの両端部は断熱材31の対向する一対の端面31cに到達している。また、隣り合う凹部13aの間には、凹部13aと同一の方向に延びる溝状の凹部13c及び溝状の凹部13dが形成されている。なお、凹部13cの両端部は、断熱材31の端面31cに到達しておらず、断熱材31の表面31aに被覆材が接着された場合に、凹部13cと被覆材との間に形成される空隙部は、熱伝達抑制シートの外部に連通しない。
また、凹部13dにおいては、一方の端部は断熱材31の端面31cに到達しており、他方の端部は断熱材31の端面31cに到達していない。
【0047】
以上、種々の凹部及び凸部を有する断熱材の例を示したが、いずれの断熱材を使用した場合であっても、上記第1~第3の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに適用することができ、上記第1~第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
次に、本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートを構成する断熱材、被覆材、接着剤及び熱伝達抑制シートの厚さについて、詳細に説明する。
【0049】
<断熱材>
本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに用いられる断熱材は、無機粒子及び無機繊維の少なくとも一方を含有する。
無機粒子としては、無機水和物又は含水多孔質体であることが好ましい。無機水和物は、電池セル20からの熱を受け、熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出することにより、電池セル20を冷却する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により、効果的な断熱作用を得ることができる。
また、無機粒子として、単一の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の無機水和物粒子を組み合わせて使用してもよい。無機水和物は種類により熱分解開始温度が異なるため、2種以上の無機水和物粒子を併用することにより、電池セル20を多段に冷却することができる。
【0050】
無機水和物の具体例としては、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
また、繊維状の無機水和物として、繊維状ケイ酸カルシウム水和物等が挙げられる。
【0051】
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、セピオライト、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0052】
さらに、無機繊維としては、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリケート繊維、ロックウール、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維等が挙げられる。これらの無機繊維のうち、マグネシウムシリケート繊維は、加熱により水分を放出する材料として、好適に使用することができる。
なお、無機繊維についても、単一の無機繊維を使用してもよいし、2種以上の無機繊維を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
断熱材には、上記無機粒子及び無機繊維の他に、必要に応じて、有機繊維や有機バインダ等を配合することができる。これらは、いずれも断熱材の補強や成形性の向上を目的とする上で有用である。
【0054】
なお、断熱材に含有される無機粒子及び無機繊維は、必ずしも加熱により水分を放出する材料を含むものである必要はない。断熱材の製造時には、必然的に若干量の水分が含まれるため、通常使用時及び異常時に、電池セル20の温度が上昇した場合に、断熱材に含まれる水分が蒸発することにより、電池セル20を冷却する効果を得ることができる。
【0055】
本実施形態において、断熱材は無機粒子及び無機繊維の少なくとも一方を含有すればよいが、熱伝達抑制シートの全質量に対して、無機粒子の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、無機繊維の含有量は、5質量%以上70質量%以下であることが好ましい。このような含有量にすることにより、無機繊維によって、保形性、押圧力耐性及び抗風圧性を向上させることができるとともに、無機粒子の保持能力を確保することができる。
【0056】
本実施形態に係る熱伝達抑制シートには、必要に応じて、有機繊維や有機バインダ等を配合することができる。これらはいずれも熱伝達抑制シートの補強や成形性の向上を目的とする上で有用である。
【0057】
<被覆材>
被覆材としては、高分子フィルム、又は金属製のフィルム(金属板)を使用することができる。
高分子フィルムとしては、ポリイミド、ポリカーボネート、PET、p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、架橋ポリエチレン、難燃クロロプレンゴム、ポリビニルデンフロライド、硬質塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート、PTFE、PFA、FEP、ETFE、硬質PCV、難燃性PET、ポリスチレン、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等が挙げられる。
【0058】
また、金属製のフィルムとしては、アルミ箔、ステンレス箔、銅箔等が挙げられる。
【0059】
<接着剤>
本実施形態においては、断熱材と被覆材とを接着する方法、及び被覆剤同士を接着する方法として、接着剤を使用することができる
接着剤としては、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステル、塩化ビニル、ビニロン、アクリル樹脂、シリコーン等を原料とするものが挙げられる。
【0060】
また、断熱材全体を被覆材により被覆する方法としては、ラミネート(ドライラミネート、サーマルラミネート)、パウチラミネート、真空パック、真空ラミネート、シュリンク包装、キャラメル包装等が挙げられる。
【0061】
<熱伝達抑制シートの厚さ>
本実施形態において、熱伝達抑制シートの厚さは特に限定されないが、0.05~6mmの範囲にあることが好ましい。熱伝達抑制シートの厚さが0.05mm未満であると、充分な機械的強度を熱伝達抑制シートに付与することができない。一方、熱伝達抑制シートの厚さが6mmを超えると、熱伝達抑制シートの成形自体が困難となるおそれがある。
【0062】
続いて、本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートの製造方法について説明する。
【0063】
<熱伝達抑制シートの製造方法>
本実施形態に係る熱伝達抑制シートに用いられる断熱材は、例えば、無機粒子及び無機繊維の少なくとも一方を含む材料を、乾式成形法又は湿式成形法により型成形して製造することができる。乾式成形法については、例えばプレス成形法(乾式プレス成形法)及び押出成形法(乾式押出成形法)を使用することができる。
【0064】
(乾式プレス成形法を用いた断熱材の製造方法)
乾式プレス成形法では、無機粒子及び無機繊維、ならびに必要に応じて有機繊維、有機バインダ等を所定の割合でV型混合機等の混合機に投入する。そして、混合機に投入された材料を充分に混合した後、この混合物を所定の型内に投入し、プレス成形することにより、断熱材を得ることができる。プレス成形時に、必要に応じて加熱してもよい。
凹部及び凸部を有する断熱材は、例えば、プレス成形時に、凹凸を有する型を用いて押圧する方法により形成することができる。
【0065】
なお、プレス成形時のプレス圧は、0.98MPa以上9.80MPa以下の範囲であることが好ましい。プレス圧が0.98MPa未満であると、得られる断熱材の強度を確保することができずに、崩れてしまうおそれがある。一方、プレス圧が9.80MPaを超えると、過度の圧縮によって加工性が低下したり、かさ密度が高くなるため固体伝熱が増加し、断熱性が低下するおそれがある。
【0066】
また、乾式プレス成形法を用いる場合には、有機バインダとしてエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA:Ethylene-Vinylacetate copolymer)を使用することが好ましいが、乾式プレス成形法を用いる場合に一般的に使用される有機バインダであれば、特に限定されずに使用することができる。
【0067】
(乾式押出成形法を用いた断熱材の製造方法)
乾式押出成形法では、無機粒子及び無機繊維、ならびに必要に応じて結合材である有機繊維及び有機バインダ等に水を加え、混練機で混練することにより、ペーストを調製する。その後、得られたペーストを、押出成形機を用いてスリット状のノズルから押出し、更に乾燥させることにより、断熱材を得ることができる。乾式押出成形法を用いる場合には、有機バインダとしてメチルセルロース及び水溶性セルロースエーテル等を使用することが好ましいが、乾式押出成形法を用いる場合に一般的に使用される有機バインダであれば、特に限定されずに使用することができる。
なお、凹部及び凸部を有する断熱材を乾式押出成形法により製造する方法としては、例えば、スリット状のノズルから押し出した後の乾燥前のシートの表面を所望の凹凸形状に切削する等の方法を挙げることができる。
【0068】
(湿式成形法を用いた断熱材の製造方法)
湿式成形法では、無機粒子及び無機繊維、ならびに必要に応じて結合材である有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。その後、得られた混合液を、底面に濾過用のメッシュが形成された成形器に流し込み、メッシュを介して混合液を脱水することにより、湿潤シートを作製する。その後、得られた湿潤シートを加熱するとともに加圧することにより、断熱材を得ることができる。
なお、加熱及び加圧工程の前に、湿潤シートに熱風を通気させて、シートを乾燥する通気乾燥処理を実施してもよいが、この通気乾燥処理を実施せず、湿潤した状態で加熱及び加圧してもよい。
また、湿式成形法を用いる場合には、有機バインダとして、ポリビニルアルコール(PVA:PolyVinyl Alcohol)を用いたアクリルエマルジョンを選択することができる。
凹部及び凸部を有する断熱材を湿式成形法により製造する方法としては、例えば、加熱及び加圧の前に、湿潤シートに対して、凹凸を有する型を用いてプレス成形する方法を挙げることができる。
【0069】
(被覆材の製造方法)
凹部及び凸部を有する被覆材を製造する方法としては、所望の厚さに製造された汎用の上記高分子フィルム、又は金属製のフィルムを使用することができ、凹凸を有する型を用いてプレス成形する方法を挙げることができる。
【0070】
(熱伝達抑制シートの製造方法)
本実施形態に係る熱伝達抑制シートは、例えば、断熱材の表面よりも大きく切断された2枚の被覆材の間に断熱材を挟み、断熱材の周囲において、被覆材同士を熱圧着又は接着剤により接着することにより、製造することができる。
【0071】
[2.組電池]
本実施形態に係る組電池は、複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池であって、本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートが、電池セル間に介在されたものである。具体的には、例えば、図3に示すように、組電池100は、複数個の電池セル20を並設し、直列又は並列に接続して電池ケース30に収容したものであり、電池セル20間に、例えば、熱伝達抑制シート40が介在されている。
【0072】
このような組電池100では、各電池セル20間に、熱伝達抑制シート40が介在されているため、通常使用時において、各電池セル20を冷却することができる。
また、複数の電池セル20のうち、一つの電池セルが熱暴走して高温になり、膨張したり発火したりした場合でも、本実施形態に係る熱伝達抑制シート40が存在することにより、電池セル20間の熱の伝播を抑制することができる。したがって、熱暴走の連鎖を阻止することができ、電池セル20への悪影響を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0073】
40,60,80 組電池用熱伝達抑制シート
11,21,31,41,71 断熱材
12,52,82 被覆材
13a,13c,13d 凹部
13b 凸部
14 空隙部
20 電池セル
30 電池ケース
100 組電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10