(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110563
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220722BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220722BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006050
(22)【出願日】2021-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 成宏
(72)【発明者】
【氏名】松永 聖史
(72)【発明者】
【氏名】小高 淳
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓尊
(72)【発明者】
【氏名】神野 大介
(72)【発明者】
【氏名】古田 真也
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH04
2C002CH06
(57)【要約】
【課題】トウダウンを抑制することができ飛距離性能に優れたゴルフクラブヘッドの提供。
【解決手段】ヘッド4は、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。クラウン部12が、クラウン外面12aに、突出部20を有している。フェース側から見たヘッド4の正面図において、突出部20がヘッド4の外輪郭線CL1を構成していない。シャフト軸線Zを接地平面HPに対して垂直とし且つフェース角を0度としたヘッド4を接地平面HPに沿ってヒール側から見たヒール投影図において、突出部20部がヘッド4の外輪郭線CL6を構成している。このヘッド4では、ポジション9において抗力及び揚力を高めることできる。このヘッド4では、ポジション6における空気抵抗が抑制されうる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃フェースを形成するフェース部と、
クラウン外面を形成するクラウン部と、
ソール外面を形成するソール部と、
シャフトが取り付けられシャフト軸線を特定するホーゼル部と、
を有するゴルフクラブヘッドであって、
前記クラウン部が、前記クラウン外面に、突出部を有しており、
フェース側から見たヘッドの正面図において、前記突出部が前記ヘッドの外輪郭線を構成しておらず、
前記シャフト軸線を接地平面に対して垂直とし且つフェース角を0度としたヘッドを前記接地平面に沿ってヒール側から見たヒール投影図において、前記突出部が前記ヘッドの外輪郭線を構成しているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記突出部が、上面と、前記上面から前記突出部の外縁にまで延びる側壁面とを有している請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記上面の高さが、ヘッド中央側にいくに従って低くなる請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記突出部の前記上面の高さが、フェース側にいくに従って低くなる請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記突出部の前記上面の高さが、バック側にいくに従って低くなる請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記突出部の最も高い部位と前記クラウン外面との間に空間が形成されている請求項1から5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記突出部が、頂点により形成された稜線と、前記稜線から前記突出部の外縁にまで延びる側壁面とを有している請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記ヘッドが、前記クラウン部を構成するヘッド本体と、前記ヘッド本体に着脱可能に固定され前記突出部を構成する突出部材とを有している請求項1から7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記突出部材が固定治具により前記ヘッド本体に着脱可能に固定されている請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記ヘッドの平面視において、フェースセンターよりもヒール側における前記クラウン外面の面積がShとされ、前記突出部の面積がStとされとき、
面積Shのうち面積Stが占める割合が、5%以上70%以下である請求項1から9のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドと、グリップと、シャフトとを備えており、
前記シャフトの先端部に前記ゴルフクラブヘッドが装着され、前記シャフトの後端部に前記グリップが装着されているゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
飛距離に有利なスペックとして、ヘッドの大型化、クラブの長尺化、シャフトを軟らかくして撓りを増大させること、等が知られている。また、ヘッド重量を軽くすることなくシャフトを軽くすることで、振りやすく且つ反発性能が高いクラブが達成されうる。
【0003】
一方、飛距離を阻害する要因の一つに、トウダウン現象がある。特開平11-267251号公報及び特開平10-43332号公報には、トウダウン現象についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-267251号公報
【特許文献2】特開平10-43332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛距離に有利なスペックは、トウダウンを増大させうることが判明した。従来のゴルフクラブでは、トウダウンの抑制と飛距離の増大とはトレードオフの関係にあり、それらの両立は困難であった。
【0006】
本開示の目的の一つは、トウダウンを抑制することができ飛距離性能に優れたゴルフクラブヘッドの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様では、ゴルフクラブヘッドは、打撃フェースを形成するフェース部と、クラウン外面を形成するクラウン部と、ソール外面を形成するソール部と、シャフトが取り付けられシャフト軸線を特定するホーゼル部と、を有する。前記クラウン部が、前記クラウン外面に、突出部を有している。フェース側から見たヘッドの正面図において、前記突出部が前記ヘッドの外輪郭線を構成していない。前記シャフト軸線を接地平面に対して垂直とし且つフェース角を0度としたヘッドを前記接地平面に沿ってヒール側から見たヒール投影図において、前記突出部が前記ヘッドの外輪郭線を構成している。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面として、トウダウンが抑制され飛距離性能に優れたゴルフクラブヘッドが提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るゴルフクラブを示す。
【
図2】
図2(a)は第1実施形態のヘッドをフェース側から見た正面図であり、基準状態のヘッドを示している。
図2(b)は、ヒール投影姿勢にある第1実施形態のヘッドをフェース側から見た図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のヘッドをクラウン側から見た平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のヘッドをヒール側から見た側面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のヘッドを傾斜ヒール側から見た図である。
図5は、ヒール投影図である。
【
図6】
図6は、トウ側且つバック側の方向から見たときの、第1実施形態のヘッドの外輪郭線の一部を示す。
【
図7】
図7は、
図3のA-A線に沿った断面図における、ヘッド外面の断面線を示す。
【
図8】
図8は、
図3のB-B線に沿った断面図における、ヘッド外面の断面線を示す。
【
図9】
図9は、
図3のC-C線に沿った断面図における、ヘッド外面の断面線を示す。
【
図10】
図10は、
図3のD-D線に沿った断面図における、ヘッド外面の断面線を示す。
【
図11】
図11は、
図7の四角線Q1で囲まれた部分の拡大図である。
図11には、クラウン基面の仮想延長線が追記されている。
【
図12】
図12は、
図9の四角線Q2で囲まれた部分の拡大図である。
図12には、クラウン基面の仮想延長線が追記されている。
【
図13】
図13(a)は、
図5のヒール投影図をシルエットにした図である。
図13(b)は、このシルエットの輪郭線の一部を示す。
図13(b)は、第1実施形態のヘッドのヒール投影図の、外輪郭線の一部である。
【
図14】
図14は、第2実施形態のヘッドをクラウン側から見た平面図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態のヘッドをクラウン側から見た平面図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態のヘッドをクラウン側から見た平面図である。
【
図17】
図17は、第5実施形態のヘッドをクラウン側から見た平面図である。
【
図18】
図18は、第6実施形態のヘッドをクラウン側から見た平面図である。
【
図19】
図19(a)は、第7実施形態のヘッドをトウ側且つバック側の方向から見たときの、当該ヘッドの外輪郭線の一部を示す。
図19(b)は、第8実施形態のヘッドをトウ側且つバック側の方向から見たときの、当該ヘッドの外輪郭線の一部を示す。
【
図20】
図20(a)は第9実施形態のヘッドの斜視図であり、
図20(b)は
図20(a)のb-b線に沿った断面図である。
図20(b)ヘッド本体の断面の記載が省略されている。
【
図21】
図21(a)は、第9実施形態のヘッドのヘッド本体の斜視図であり、
図21(b)は
図21(a)のb-b線に沿った断面図である。
図21(b)では、ヘッド本体の断面の記載が省略されている。
【
図22】
図22(a)は、第10実施形態のヘッドの斜視図であり、
図22(b)は、
図22(a)のb-b線に沿った断面図であり、
図22(c)は、
図22(a)のc-c線に沿った断面図である。
図22(b)及び
図22(c)では、ヘッド本体の断面の記載が省略されている。
【
図23】
図23(a)は、第10実施形態のヘッドのヘッド本体の斜視図であり、
図23(b)は
図23(a)のb-b線に沿った断面図であり、
図23(c)は
図23(a)のc-c線に沿った断面図である。
図23(b)及び
図23(c)では、ヘッド本体の断面の記載が省略されている。
【
図24】
図24は、ダウンスイングにおけるゴルフクラブの動きを示す。
【
図25】
図25(a)及び
図25(b)は、ポジション9において、突出部の無いヘッドに作用する力を図示した概念図である。
図25(c)は、このヘッドのインパクトでの姿勢を示す概念図である。
【
図26】
図26(a)及び
図26(b)は、ポジション9において、突出部のあるヘッドに作用する力を図示した概念図である。
図26(c)は、このヘッドのインパクトでの姿勢を示す概念図である。
【
図27】
図27(a)は、テスター1から9のヘッドスピード(H/S)の平均値を示す。棒グラフの左側がクラブA(突出部無し)の結果であり、右側がクラブB(突出部有り)の結果である。
図27(b)は、テスター1から9の、打点とフェースセンターとの距離の平均値を示す。棒グラフの左側がクラブA(突出部無し)の結果であり、右側がクラブB(突出部有り)の結果である。
【
図28】
図28(a)は、テスター1から9の、フェース角の平均値を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。
図28(b)は、テスター1から9の、ミート率の平均値を示す。ミート率は、ボール初速(B/S)をヘッドスピード(H/S)で除することで算出される。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である
【
図29】
図29(a)は、テスター1から9の、ヘッドスピード(H/S)の標準偏差を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。
図29(b)は、テスター1から9の、打点とフェースセンターとの距離の標準偏差を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。
【
図30】
図30は、テスター1から9の、フェース角の標準偏差を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
トウダウン現象は、ヘッドの重心の位置がシャフト軸線から離れていることに起因して生ずる。スイング中において、ヘッドの重心には、遠心力が作用する。
図1が示すように、ヘッドの重心CGは、シャフト軸線Zよりもトウ側に位置する。このため、上記遠心力により、ヘッドのトウ側が下がるようにシャフトが撓む。また、
図4が示すように、ヘッドの重心CGは、シャフト軸線Zよりもバック側に位置する。このため、上記遠心力により、ヘッドのバック側が下がるようにシャフトが撓む。結局、上記遠心力により、ヘッドのトウ側及びバック側が下がるように、シャフトは撓み且つ捻れる。シャフトは、ヘッドのトウ側が下がるように撓み、且つ、フェースが開く方向に捻れる。これがトウダウン現象である。上記遠心力が大きいほど、トウダウンは大きくなる。また、ヘッド重心がシャフト軸線から離れるほど、トウダウンは大きくなる。
【0011】
上述の通り、遠心力により、ヘッドのトウ側が下がると共に、ヘッドのバック側が下がる。これらの現象を、トウダウンとバックダウンとに分けて説明することもできるが、本願では、これらをまとめてトウダウンと称する。
【0012】
トウダウンを抑制するため、クラブ長さを短くすることが考えられる。しかしこの場合、ヘッドの運動エネルギーが減少し、飛距離が低下する。トウダウンを抑制するため、ヘッド重量を軽くすることが考えられる。しかしこの場合も、ヘッドの運動エネルギーが減少し、飛距離が低下する。
【0013】
トウダウンを抑制するため、重心距離を短くすること、及び/又は、重心深度を浅くすることが考えられる。しかしこの場合、高反発エリアが狭くなり、平均飛距離が低下する。また、フェースの向きが安定せず、平均飛距離が低下する。
【0014】
トウダウンを抑制するため、シャフトの先端部の曲げ剛性を高めることが考えられる。しかしこの場合、弾道が低くなり、飛距離が低下する。
【0015】
トウダウンによる影響を減らすため、ライ角をアップライトとしたり、フックフェースとしたりすることが考えられる。しかし、アップライドでフックフェースのゴルフクラブは、アドレスしにくい。
【0016】
振りやすさに優れたコルフクラブでは、ヘッドスピードが増大する。しかし、増加したヘッドスピードにより、ヘッド重心に作用する遠心力が増加し、トウダウンは大きくなる。
【0017】
このように、飛距離を増加させる要素は、トウダウンを増大させうる。トウダウンが過剰になると、打点あるいはヘッドの衝突角度が悪化する。また、トウダウンが過剰な状況では、トウダウン量にバラツキが生じやすく、打点あるいはヘッドの衝突角度が安定しない。よって、トウダウンに起因して、インパクトでエネルギーロスが生じやすい。
【0018】
このように、ゴルフクラブが飛距離を増加させる要素を有していても、トウダウンが大きいと飛距離が減殺されることが判明した。本発明者は、従来とは異なる手段でトウダウンを抑制することで、トウダウンの抑制と飛距離性能とが両立されうることを見出した。
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本開示が詳細に説明される。
【0020】
本願では、基準状態、基準垂直面、トウ-ヒール方向、フェース-バック方向、上下方向、フェースセンター、ヒール投影姿勢、傾斜トウ-ヒール方向及びヒール投影図が定義される。
【0021】
所定のライ角で接地平面HP上にヘッドが載置された状態が、基準状態とされる。
図31が示すように、この基準状態では、接地平面HPに対して垂直な平面VPに、シャフト軸線Zが含まれている。シャフト軸線Zは、シャフトの中心線である。前記平面VPが、基準垂直面とされる。所定のライ角は、例えば製品カタログに掲載されている。
【0022】
この基準状態では、フェース角が0度とされる。すなわち、上側から見た平面視において、打撃フェースのフェースセンターにおける接線がトウ-ヒール方向に平行とされる。フェースセンター及びトウ-ヒール方向の定義は、後述の通りである。
【0023】
本願においてトウ-ヒール方向とは、前記基準垂直面VPと前記接地平面HPとの交線NLの方向である(
図31参照)。
【0024】
本願においてフェース-バック方向とは、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記接地平面HPに対して平行な方向である。フェース-バック方向におけるフェース側が、単に「フェース側」とも称される。フェース-バック方向におけるバック側が、単に「バック側」とも称される。
【0025】
本願において上下方向とは、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記フェース-バック方向に対して垂直な方向である。換言すれば、本願において上下方向とは、前記接地平面HPに対して垂直な方向である。
【0026】
本願において、フェースセンターは次のように決定される。まず、上下方向およびトウ-ヒール方向において、打撃フェースの概ね中央付近の任意の点Prが選択される。次に、この点Prを通り、当該点Prにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつトウ-ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pxが決定される。次に、この中点Pxを通り、当該点Pxにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pyが決定される。次に、この中点Pyを通り、当該点Pyにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつトウ-ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pxが新たに決定される。次に、この新たな中点Pxを通り、当該点Pxにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pyが新たに決定される。この工程を繰り返して、Px及びPyが順次決定される。この工程の繰り返しの中で、新たな中点Pyとその直前の中点Pyとの間の距離が最初に0.5mm以下となったときの当該新たな位置Py(最後の位置Py)が、フェースセンターである。
【0027】
ヒール投影姿勢は、シャフト軸線Zを接地平面HPに対して垂直とし且つフェース角を0度とした状態である。このヒール投影姿勢は、
図2(b)及び
図5で示されている。ヒール投影姿勢では、ソールのヒール側は接地平面HPから大きく離れ、ソールのトウ側又はトウ側のサイド部(スカート部)が接地平面HPに接している。基準状態のヘッドを、シャフト軸線Zが接地平面HPに対して垂直となるまで回転させることで、ヒール投影姿勢が達成される。この回転により、ヘッドのトウ-ヒール方向は接地平面HPに対して傾斜する(
図2(a)参照)。しかし、上側から見た平面視においては、この回転によりトウ-ヒール方向は変化しない。すなわち、ヒール投影姿勢においてフェース角は0度のままである。
【0028】
ヒール投影姿勢におけるヘッドの前記トウ-ヒール方向に沿ったベクトルは、接地平面HPに平行なベクトルV1と、接地平面HPに垂直なベクトルV2とに分解されうる(
図2(b)参照)。接地平面HPに平行なベクトルV1の方向が、傾斜トウ-ヒール方向と定義される。傾斜トウ-ヒール方向は、シャフト軸線Zに対して垂直である。傾斜トウ-ヒール方向におけるヒール側は、傾斜ヒール側とも称される。傾斜トウ-ヒール方向におけるトウ側は、傾斜トウ側とも称される。
図2(b)において、傾斜ヒール方向がS-heelと標記されており、傾斜トウ方向がS-toeと標記されている。
【0029】
ヒール投影姿勢にあるヘッドを接地平面HPに沿ってヒール側から見た投影図が、ヒール投影図である。換言すれば、ヒール投影図は、ヒール投影姿勢にあるヘッドを傾斜トウ-ヒール方向に沿ってヒール側に投影した図である。
図5は、ヒール投影図である。
【0030】
図1は、本開示の一実施形態のヘッド4を含むゴルフクラブ2の全体図である。
図2(a)は、ヘッド4の正面図である。
図2(a)は、前記基準状態にあるヘッド4をフェース側から見た図である。
図2(b)は、前記ヒール投影姿勢にあるヘッド4をフェース側から見た図である。
図3は、ヘッド4をクラウン側から見た平面図である。
図4は、ヘッド4をヒール側から見た側面図である。
図5は、ヘッド4を傾斜ヒール側から見た図である。
図5はヘッド4のヒール投影図である。
【0031】
図1が示すように、ゴルフクラブ2は、ゴルフクラブヘッド4と、シャフト6と、グリップ8とを含む。シャフト6は、チップ端Tpとバット端Btとを有する。ヘッド4は、シャフト6のチップ端部に取り付けられている。グリップ8は、シャフト6のバット端部に取り付けられている。
【0032】
ゴルフクラブ2は、ドライバー(1番ウッド)である。通常、ドライバーのクラブ長さは、43インチ以上である。好ましくは、ゴルフクラブ2は、ウッド型ゴルフクラブである。
【0033】
シャフト6は、管状体である。シャフト6は中空構造を有する。シャフト6の材質は、炭素繊維強化樹脂である。軽量化の観点から、シャフト6の材質として、炭素繊維強化樹脂が好ましい。シャフト6は、いわゆるカーボンシャフトである。好ましくは、シャフト6は、プリプレグシートを硬化させてなる。このプリプレグシートでは、繊維は実質的に一方向に配向している。このように繊維が実質的に一方向に配向したプリプレグは、UDプリプレグとも称される。「UD」とは、ユニディレクションの略である。UDプリプレグ以外のプリプレグが用いられても良い。例えば、プリプレグシートに含まれる繊維が編まれていてもよい。シャフト6は、金属線を含んでいてもよい。シャフト6の材質は限定されず、例えば金属であってもよい。
【0034】
グリップ8は、スイング中においてゴルファーにより握られる部分である。グリップ8の材質として、ゴム組成物及び樹脂組成物が例示される。グリップ8の前記ゴム組成物は、気泡を含んでいてもよい。
【0035】
図示されていないが、ヘッド4は中空構造を有する。本実施形態では、ヘッド4は、ウッド型である。ヘッド4は、ハイブリッド型(ユーティリティ型)であってもよい。ヘッド4は、アイアン型であってもよい。ヘッド4は、パター型であってもよい。ヘッド4の好ましい材質として、金属及び繊維強化プラスチックが例示される。この金属として、チタン合金、純チタン、ステンレス鋼、マレージング鋼及び軟鉄が例示される。繊維強化プラスチックとして、炭素繊維強化プラスチックが例示される。ヘッド4は、金属部分と繊維強化プラスチック部分とを有する複合ヘッドであってもよい。
【0036】
図2から
図5が示すように、ヘッド4は、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。打撃フェース10aは、単にフェースとも称される。クラウン部12は、クラウン外面12aを形成している。ソール部14は、ソール外面14aを形成している。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。
【0037】
図1及び
図4が示すように、ヘッド4は、重心CGを有する。本実施形態では、ヘッド重心CGは、ヘッド4の内部(中空部)に位置する。
【0038】
図1において両矢印Bで示されるのは、ヘッド4の重心距離である。重心距離Bは、シャフト軸線Zとヘッド重心CGとの間の距離である。重心距離Bは、実際の三次元的な距離ではなく、ヘッド4の正面視における距離である。前記基準状態のヘッドにおいて、シャフト軸線Zとヘッド重心CGとが前記基準垂直面VPに投影される。重心距離Bは、この投影像における距離である。
【0039】
図4において両矢印Cで示されるのは、ヘッド4の重心深度である。重心深度Cは、シャフト軸線Zとヘッド重心CGとの間の距離である。重心深度Cは、フェース-バック方向に沿って測定される。
【0040】
打撃フェース10aは、上述の通り定義されたフェースセンターFcを有する。
【0041】
ヘッド4のヘッド重心CGは、シャフト軸線Z上にない。ヘッド重心CGは、シャフト軸線Zから離れている。ヘッド4は、重心距離Bと、重心深度Cとを有する。重心距離B及び重心深度Cの存在に起因して、トウダウン現象が起こる。
【0042】
クラウン部12は、クラウン外面12aに、突出部20を有する。突出部20は中空である。突出部20は、クラウン外面12aにおいて凸を形成し、且つクラウン内面に凹を形成している。
【0043】
フェース側から見たヘッドの正面図(
図2(a))では、突出部20は見えない。フェース側から見たヘッドの正面図(
図2(a))において、突出部20は、ヘッド4の外輪郭線CL1を構成していない。
【0044】
本実施形態では、突出部20の全体が、クラウン外面12aに設けられている。
図3が示すように、ヘッド4は、ヘッド4の平面図における外輪郭線CL2を有する。
図3が示すように、突出部20は外輪郭線CL2に達していない。突出部20は、クラウン外面12a以外の部分にまで延在していない。
【0045】
なお、ヘッド4の平面図は、基準状態のヘッドを接地平面HPに平行な平面に投影した投影像である。この平面図(
図3)は、平面視とも称される。
【0046】
ヘッド4の平面図(
図3)において、突出部20は外輪郭線CL2に達していてもよい。換言すれば、突出部20が外輪郭線CL2を形成していてもよい。突出部20は、クラウン外面12a以外の部分にまで延在していてもよい。例えば、突出部20は、クラウン外面12aからソール外面14aにまで延在していてもよい。例えば、突出部20は、クラウン外面12aからサイド部(スカート部)の外面にまで延在していてもよい。
【0047】
基準状態のヘッド4をトウ-ヒール方向のヒール側から見た側面図(
図4)では、突出部20の全体が見える。この側面図は、クラウン外面12aの外輪郭線CL3を有する。この側面図において、突出部20は、外輪郭線CL3に達していない。突出部20の全体が、フェースセンターFcよりもヒール側にある。突出部20の一部が、フェースセンターFcよりもトウ側にまで達していても良い。
【0048】
クラウン外面12aは、クラウン基面12bを有する。クラウン外面12aのうち、突出部20が無い部分は、クラウン基面12bにより構成されている。クラウン基面12bは、滑らかに連続する凸曲面である。この凸曲面は、ヘッド4の外側に向かって凸の曲面である。
図3が示すように、クラウン基面12bは、ヘッド4の平面図の図心CRを含む。図心CRは、外輪郭線CL2により構成される図形の図心である。
【0049】
図6は、トウ側から見たときのヘッド4の外輪郭線の一部を示す。
図7は、
図3のA-A線に沿った断面図における、ヘッド4の外面の断面線を示す。
図8は、
図3のB-B線に沿った断面図における、ヘッド4の外面の断面線を示す。
図9は、
図3のC-C線に沿った断面図における、ヘッド4の外面の断面線を示す。
図10は、
図3のD-D線に沿った断面図における、ヘッド4の外面の断面線を示す。
図7から
図10は、クラウン外面12aの断面線を含んでいる。
【0050】
突出部20は、輪郭線CL20と、上面22と、側壁面24とを有する。輪郭線CL20は、クラウン基面12bと突出部20との間の境界線である。ヘッド4の平面図(
図3)において、突出部20の輪郭線CL20は、略四角形(略台形)である。本願において、この「略」とは、辺が曲がっている(直線でない)構成や、角が丸みを有する構成を含む趣旨である。ヘッドの平面図(
図3)の輪郭線CL20において、辺の曲率半径は、好ましくは25mm以上であり、より好ましくは40mm以上であり、より好ましくは50mm以上である。ヘッドの平面図(
図3)の輪郭線CLにおいて、角の丸みの曲率半径は、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは7mm以下であり、より好ましくは、5mm以下である。輪郭線CL20により、略四角形が形成されている。
【0051】
上面22と側壁面24とは、稜線により区画されうる。突出部20の外面の断面線において、この稜線は、曲率半径が5mm以下の点又は折れまがりの頂点として特定されうる。この断面線の曲率半径は断面の方向により変化しうるが、前記稜線を確定するための曲率半径の決定では、当該曲率半径が最小となるような断面が選択される。
【0052】
ヘッド4の平面図(平面視)において、突出部20は、略多角形でありうる。この略多角形が略N角形とされるとき、Nは3以上の整数とされうる。Nは、3以上20以下の整数とされてもよい。
【0053】
輪郭線CL20は、第1辺CL21、第2辺CL22、第3辺CL23及び第4辺CL24を有する。第1辺CL21は、突出部20におけるトウ側且つフェース側の辺を構成している。第1辺CL21は、トウ側にいくにつれてバック側にいくように延びている。第1辺CL21は第2辺CL22と第4辺CL24とを繋いでいる。
【0054】
第2辺CL22は、突出部20におけるヒール側且つフェース側の辺を構成している。第2辺CL22は、ヒール側にいくにつれてバック側にいくように延びている。第2辺CL22は第1辺CL21と第3辺CL23とを繋いでいる。
【0055】
第3辺CL23は、突出部20におけるヒール側且つバック側の辺を構成している。第3辺CL23は、トウ側にいくにつれてバック側にいくように延びている。第3辺CL23は第2辺CL22と第4辺CL24とを繋いでいる。第3辺CL23はヘッド4の外側に向かって凸の曲線である。
【0056】
第4辺CL24は、突出部20におけるトウ側且つバック側の辺を構成している。第4辺CL24は、ヒール側にいくにつれてバック側にいくように延びている。第4辺CL24は第3辺CL23と第1辺CL21とを繋いでいる。
【0057】
第2辺CL22、第3辺CL23及び第4辺CL24は、それぞれ、側壁面24の基点となっている。すなわち、第2辺CL22、第3辺CL23及び第4辺CL24は、それぞれ、側壁面24とクラウン基面12bとの境界線を構成している。一方、第1辺CL21は、側壁面24の基点となっていない。第1辺CL21は、クラウン基面12bと上面22との境界線を構成している。
【0058】
本願では、トウ-ヒール方向に沿った断面線が、単に横断面線とも称される。
図7は、横断面線の一例である。クラウン外面12aの横断面線が、クラウン横断面線とも称される。
図7は、クラウン横断面線を含む。本願では、フェース-バック方向に沿った断面線が、単に縦断面線とも称される。
図9は、縦断面線の一例である。クラウン外面12aの縦断面線が、クラウン縦断面線とも称される。
図9は、クラウン縦断面線を含む。
【0059】
クラウン横断面線における変曲点は、輪郭線CL20を構成する点となりうる。換言すれば、この変曲点は、突出部20の起点となりうる。クラウン基面12bの横断面線は、ヘッド4の外側に向かって凸の曲線である。前記変曲点は、ヘッド4の外側に向かって凸の曲線が、ヘッド4の内側に向かって凸の曲線に変わる点である。
【0060】
クラウン横断面線における折れまがりの頂点は、輪郭線CL20を構成する点となりうる。換言すれば、この頂点は、突出部20の起点となりうる。クラウン基面12bの横断面線は、ヘッド4の外側に向かって凸の曲線である。この曲線に繋がり、折れまがって立ち上がる線は、頂点を形成する。この頂点は、ヘッド4の内側に向いた頂点である。この頂点は、突出部20の起点となりうる。
【0061】
クラウン縦断面線における変曲点は、輪郭線CL20を構成する点となりうる。換言すれば、この変曲点は、突出部20の起点となりうる。クラウン基面12bの縦断面線は、ヘッド4の外側に向かって凸の曲線である。前記変曲点は、ヘッド4の外側に向かって凸の曲線が、ヘッド4の内側に向かって凸の曲線に変わる点である。
【0062】
クラウン縦断面線における折れまがりの頂点は、輪郭線CL20を構成する点となりうる。換言すれば、この頂点は、突出部20の起点となりうる。クラウン基面12bの縦断面線は、ヘッド4の外側に向かって凸の曲線である。この曲線に繋がり、折れまがって立ち上がる線は、頂点を形成する。この頂点は、ヘッド4の内側に向いた頂点である。この頂点は、突出部20の起点となりうる。
【0063】
典型的には、上記変曲点又は上記頂点により、輪郭線CL20が決定されうる。この決定のための断面線の選択では、クラウン横断面線がクラウン縦断面線より優先されてもよい。この場合、上記変曲点又は上記頂点の特定には、クラウン横断面線が用いられる。クラウン横断面線による前記特定が困難である場合に、クラウン縦断面線が用いられうる。明確に視認できる突出部20の輪郭線は、輪郭線CL20と見なされうる。
【0064】
突出部20は、クラウン基面12bよりも突出した部分である。突出部20の下側には、クラウン基面12bが延長された仮想延長面12cが特定されうる。突出部20は、仮想延長面12cよりも突出した部分である。仮想延長面12cは、突出部20が無い場合に当該突出部20の設置領域に形成されるクラウン基面12bと見なされうる。仮想延長面12cは、クラウン基面12bに連続して形成されている。仮想延長面12cは、ヘッド4の外側に向かって凸の曲面である。仮想延長面12cは、クラウン基面12bに滑らかに繋がっている。
【0065】
図11は、
図7の四角線Q1で囲まれた部分の拡大図である。
図12は、
図9の四角線Q2で囲まれた部分の拡大図である。
【0066】
図11のクラウン横断面線には、仮想延長面12cを構成しうる仮想延長線12dが描かれている。仮想延長線12dは、ヘッド4の外側に向かって凸の曲線である。仮想延長線12dは、クラウン基面12bの横断面線に、滑らかに繋がっている。仮想延長面12cは、仮想延長線12dの集合によって形成されうる。
【0067】
仮想延長線12dは、突出部20の一方側の横断面線と、突出部20の他方側の横断面線とを、滑らかに繋いでいる。仮想延長線12dは、ベジェ曲線として描かれうる。ベジェ曲線として、2次のベジェ曲線と、3次のベジェ曲線とが知られている。2次のベジェ曲線では、制御点は1つである。3次のベジェ曲線では、制御点は2つである。好ましくは、3次のベジェ曲線が用いられる。
図11及び
図12のベジェ曲線は、3次のベジェ曲線である。
【0068】
図11が示すように、クラウン横断面線は、第1の起点P1と、第2の起点P2とを有する。第1の起点P1及び第2の起点P2は、輪郭線CL20上の点である。
【0069】
第1の起点P1における実効的な接線を定義するため、第1の起点P1の、突出部20とは反対側に、点P11及び点P12が定められる。点P11は、第1の起点P1から0.5mm隔てた点である。点P12は、点P11から0.5mm隔てた点である。これらの0.5mmは、クラウン横断面線に沿った道のり距離である。点P11及び点P12は、クラウン横断面線上の点である。3つの点P1、P11及びP12を通る円の、点P1における接線L1が決定される。点P1、P11及びP12が同一直線上にある場合、この直線が接線L1とされうる。
【0070】
同様に、第2の起点P2における実効的な接線を定義するため、第2の起点P2の、突出部20とは反対側に、点P21及び点P22が定められる。点P21は、第2の起点P2から0.5mm隔てた点である。点P22は、点P21から0.5mm隔てた点である。これらの0.5mmは、クラウン横断面線に沿った道のり距離である。点P21及び点P22は、クラウン横断面線上の点である。3つの点P2、P21及びP22を通る円の、点P2における接線L2が決定される。点P2、P21及びP22が同一直線上にある場合、この直線が接線L2とされうる。
【0071】
前記接線L1と前記接線L2が決定されると、接線L1と接線L2との交点Pxが定まる。更に、点P1と点Pxとの間の中点M1が定まり、点P2と点Pxとの間の中点M2が定まる。
【0072】
点P1を始点とし、中点M1を第1制御点とし、中点M2を第2制御点とし、点P2を終点として、ベジェ曲線を引くことができる。
図11では、このベジェ曲線が、仮想延長線12dである。制御点が2つであるので、このベジェ曲線は、3次のベジェ曲線である。
【0073】
フェース-バック方向のあらゆる位置で、仮想延長線12dが定義されうる。これらの仮想延長線12dの集合により、仮想延長面12cが定義されうる。
【0074】
クラウン縦断面線でも、同様のベジェ曲線が定義されうる。
図12が示すように、クラウン縦断面線は、第1の起点P1と、第2の起点P2とを有する。第1の起点P1及び第2の起点P2は、輪郭線CL20上の点である。
【0075】
第1の起点P1における実効的な接線を定義するため、第1の起点P1の、突出部20とは反対側に、点P11及び点P12が定められる。点P11は、第1の起点P1から0.5mm隔てた点である。点P12は、点P11から0.5mm隔てた点である。これらの0.5mmは、クラウン縦断面線に沿った道のり距離である。点P11及び点P12は、クラウン縦断面線上の点である。3つの点P1、P11及びP12を通る円の、点P1における接線L1が決定される。点P1、P11及びP12が同一直線上にある場合、この直線が接線L1とされうる。
【0076】
同様に、第2の起点P2における実効的な接線を定義するため、第2の起点P2の、突出部20とは反対側に、点P21及び点P22が定められる。点P21は、第2の起点P2から0.5mm隔てた点である。点P22は、点P21から0.5mm隔てた点である。これらの0.5mmは、クラウン縦断面線に沿った道のり距離である。点P21及び点P22は、クラウン縦断面線上の点である。3つの点P2、P21及びP22を通る円の、点P2における接線L2が決定される。点P2、P21及びP22が同一直線上にある場合、この直線が接線L2とされうる。
【0077】
前記接線L1と前記接線L2が決定されると、接線L1と接線L2との交点Pxが定まる。更に、点P1と点Pxとの間の中点M1が定まり、点P2と点Pxとの間の中点M2が定まる。
【0078】
点P1を始点とし、中点M1を第1制御点とし、中点M2を第2制御点とし、点P2を終点として、ベジェ曲線を引くことができる。
図12では、このベジェ曲線が、仮想延長線12eである。
【0079】
トウ-ヒール方向のあらゆる位置で、仮想延長線12eが定義されうる。これらの仮想延長線12eの集合により、仮想延長面12cが定義されうる。
【0080】
なお、突出部がクラウン部の外周縁(外輪郭線CL4)に到達している場合がある(後述の
図19(b)を参照)。この場合、クラウン横断面線及び/又はクラウン縦断面線において、突出部とクラウン基面12bとの境界に形成される突出部の起点が1つのみとなりうる。このように起点が1つである場合、当該起点の曲率半径に沿った円弧が、仮想延長線12dとされうる。すなわちこの場合、仮想延長線12dは、当該起点である第1点と、当該第1点から0.5mm隔てた第2点と、当該第2点から0.5mm隔てた第3点との、3点を通る円とされうる。
【0081】
仮想延長面12cの決定では、クラウン横断面線がクラウン縦断面線よりも優先的に用いられてもよい。仮想延長面12cは、クラウン横断面線に基づく仮想延長線12dの集合により決定されうる。仮想延長線12dの集合では仮想延長面12cが不明確である場合、仮想延長面12cは、クラウン縦断面線に基づく仮想延長線12eの集合により決定されてよい。
【0082】
突出部20の高さH1は、仮想延長面12cからの高さと定義されうる。
図11が示すように、ある地点f1における仮想延長面12cの法線LNは、突出部20の外面との交点f2を有する。地点f1から交点f2までの距離が、交点f2における突出部20の高さH1と定義されうる。なお、突出部が、仮想延長面12cの法線LNと交差せず、クラウン基面12bの法線と交わる地点を有する場合、その地点の高さH1は、クラウン基面12bからの高さと定義される。この場合も、当該法線の長さが高さH1である。
【0083】
図13(a)は、
図5のヒール投影図をシルエットにした図である。
図13(b)は、このシルエットの輪郭線の一部を示す。このシルエットの輪郭線は、ヘッド4のヒール投影図の外輪郭線CL6である。
図13(b)は、ヘッド4のヒール投影図の外輪郭線CL6の一部である。
【0084】
ヘッド4のヒール投影図において、クラウン外面の外輪郭線CL6は、凸部30を有する。この凸部30は、シルエット凸部とも称される。前述の通り、ヒール投影図(
図5)において、突出部20が見えている。シルエット凸部30は、突出部20により形成されている。シルエット凸部30により、ヒール投影図のシルエット面積S1が拡張されている。すなわち、突出部20により、ヒール投影図のシルエット面積S1が拡張されている。シルエット面積S1とは、ヒール投影図の外輪郭線CL6により形成される図形の面積であり、
図13(a)で示されるシルエットの面積である。
【0085】
ヒール投影図の外輪郭線CL6における変曲点は、シルエット凸部の起点となりうる。ヒール投影図の外輪郭線CL6における折れまがりの頂点は、シルエット凸部の起点となりうる。本実施形態では、変曲点ではなく、頂点が、シルエット凸部30の両側において、シルエット凸部30の起点となっている。
図13(b)が示すように、本実施形態のシルエット凸部30では、折れまがりの頂点P31、P32が、シルエット凸部30の起点である。
【0086】
このシルエット凸部30についても、上述した方法により、3次のベジェ曲線を引くことができる。
図13(b)において2点鎖線で示されているのが、このベジェ曲線である。このベジェ曲線は、シルエット凸部30の両側に隣接する曲線を滑らかに繋げた曲線である。このベジェ曲線は、突出部20が無い場合の、ヒール投影図の仮想輪郭線30aとなりうる。シルエット凸部30の線と仮想輪郭線30aとで囲まれた部分の面積は、突出部20による付加面積S2である。本実施形態では、付加面積S2は、
図13(b)においてハッチングで示された部分の面積である。付加面積S2は、シルエット面積S1のうち、突出部20による増分である。
【0087】
なお、ヒール投影図において突出部がヘッドの外輪郭線CL6を構成しているが、シルエット凸部が形成されない場合がある。例えば、突出部がクラウン部の外周縁(外輪郭線CL4)に到達し且つこの外周縁に沿って延在している場合、シルエット凸部が形成されない場合がある。しかし、このような場合も、ヒール投影図において突出部は見えており、当該突出部がシルエット面積S1を増加させている。すなわちこの場合も、突出部に起因する付加面積S2が存在する。例えば、突出部を仮想延長面12cで置換し突出部が除去されたヘッドのシルエット面積S11と、当該突出部を有したヘッドのシルエット面積S12とが考慮されうる。面積(S12-S11)は、付加面積S2となりうる。
【0088】
トウダウンの抑制及び安定化の観点から、付加面積S2は、30mm2以上が好ましく、50mm2以上がより好ましく、100mm2以上がより好ましい。ポジション6における空気抵抗を下げる観点から、突出部の高さ及び体積には限界がある。この観点から、付加面積S2は、500mm2以下が好ましく、400mm2以下がより好ましく、300mm2以下がより好ましい。
【0089】
トウダウンの抑制及び安定化の観点から、比(S2/S1)は、0.005以上が好ましく、0.008以上がより好ましく、0.015以上がより好ましい。ポジション6における空気抵抗を下げる観点から、突出部の高さ及び体積には限界がある。この観点から、比(S2/S1)は、0.10以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.06以下がより好ましい。S2/S1は、付加面積S2の、シルエット面積S1に対する比率である。
【0090】
図6を参照して、クラウン外面12aとの交線PLが閉じた図形を形成する平面が、クラウン切除平面と称される。
図6では、このクラウン切除平面CP1が2点鎖線で示されている。
図6の側面視では図示されないが、平面視において、クラウン外面12aとクラウン切除平面CP1との交線PLは、クラウン切除平面CP1上に閉じた図形を形成する。交線PLは、無端の環状線である。
図6は側面視であるため、交線PLが点として示されている。
【0091】
クラウン切除平面CP1により、クラウン外面12aが切り取られる。切り取られたクラウン外面12aとクラウン切除平面CP1とでその外面が構成される立体が、切除立体と称される。この切除立体の体積が、切除体積と称される。交線PLの長さがL(mm)とされ、切除体積がV(mm
3)とされる。長さLは、交線PLそのものの長さである。換言すれば、長さLは、交線PLの道のり長さである。例えば、突出部が円錐であり、クラウン切除平面CP1がこの円錐を切除しており、交線PLが円である場合、長さLはこの円の円周の長さである。
図3の実施形態では、この交線PLは略四角形の無端環状線となりうる。この場合、長さLは、この略四角形の交線PLの道のり長さである。
【0092】
比(V/L)は、クラウン外面12aの突出の度合いを示す指標となりうる。比(V/L)が大きいほど、突出の度合いが大きい。クラウン外面12aは、比(V/L)が閾値Xよりも大きい部分を有するのが好ましい。換言すれば、クラウン外面12aには、比(V/L)が閾値Xよりも大きくなるようなクラウン切除平面CP1が設定されうるのが好ましい。
【0093】
比(V/L)が閾値Xより大きい部分は、突出部20の少なくとも一部となりうる。好ましくは、比(V/L)が閾値Xより大きいときの交線PLの全てが、突出部20とクラウン切除平面CP1との交線であるのがよい。換言すれば、突出部20には、比(V/L)が閾値Xより大きくなるようなクラウン切除平面CP1を設定しうるのが好ましい。
図6に示されるクラウン切除平面CP1も、交線PLの全てが突出部20とクラウン切除平面CP1との交線になる位置に設定されている。交線PLの全てが突出部20とクラウン切除平面CP1との交線になるときの、切除体積Vの最大値は、突出部20の体積に対して、50%以上であるのが好ましく、60%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのがより好ましい。なお、突出部20の体積は、仮想延長面12cで切り取られる部分の体積とされうる。交線PLの全てが突出部20とクラウン切除平面CP1との交線になるときに、当該クラウン切除平面CP1が仮想延長面12cと交差していてもよい。
【0094】
突出部20の突出の度合いを大きくして、ヒール投影図の付加面積S2を大きくする観点から、閾値Xは、20以上が好ましく、30以上がより好ましく、40以上がより好ましい。過度な突出は、形状上の違和感を生じさせうる。この観点から、閾値Xは、500以下が好ましく、450以下がより好ましく、400以下がより好ましい。
【0095】
図14は、第2実施形態のヘッド40の平面図である。このヘッド40と上述のヘッド4との相違は、突出部の形状のみである。
【0096】
ヘッド40は、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。クラウン部12は、クラウン外面12aを形成している。ソール部14は、ソール外面14aを形成している。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。打撃フェース10aは、上述の通り定義されたフェースセンターFcを有する。クラウン部12は、クラウン外面12aに、突出部50を有する。突出部50は中空である。突出部50は、クラウン外面12aにおいて凸を形成し、且つクラウン内面に凹を形成している。
【0097】
ヘッド4と同様に、ヘッド40でも、フェース側から見たヘッドの正面図では、突出部40は見えない。突出部50の全体が、クラウン外面12aに設けられている。ヘッド40は、ヘッド40の平面図(平面視)における外輪郭線CL2を有する。突出部50は外輪郭線CL2に達していない。突出部50は、クラウン外面12a以外の部分にまで延在していない。突出部50の全体が、フェースセンターよりもヒール側にある。
【0098】
クラウン外面12aは、クラウン基面12bを有する。クラウン外面12aのうち、突出部50が無い部分は、クラウン基面12bにより構成されている。クラウン基面12bは、滑らかに連続する凸曲面である。この凸曲面は、ヘッド40の外側に向かって凸の曲面である。
【0099】
突出部50は、輪郭線CL50と、上面52と、側壁面54とを有する。輪郭線CL50は、クラウン基面12bと突出部50との間の境界線である。ヘッド40の平面図において、突出部50は、略四角形(略台形)である。輪郭線CL50により、略四角形が形成されている。輪郭線CL50は、第1辺CL51、第2辺CL52、第3辺CL53及び第4辺CL54を有する。
【0100】
第1辺CL51は、突出部50におけるフェース側の辺を構成している。第1辺CL51は、トウ側にいくにつれてバック側にいくように延びている。第1辺CL51は第2辺CL52と第4辺CL54とを繋いでいる。
【0101】
第2辺CL52は、突出部50におけるヒール側の辺を構成している。第2辺CL52は、トウ側にいくにつれてバック側にいくように延びている。第2辺CL52は第1辺CL51と第3辺CL53とを繋いでいる。第2辺CL52はヘッド40の外側に向かって凸の曲線である。
【0102】
第3辺CL53は、突出部50におけるバック側の辺を構成している。第3辺CL53は、トウ側にいくにつれてバック側にいくように延びている。第3辺CL53は第2辺CL52と第4辺CL54とを繋いでいる。
【0103】
第4辺CL54は、突出部50におけるトウ側の辺を構成している。第4辺CL54は、トウ側にいくにつれてバック側にいくように延びている。第4辺CL54は第3辺CL53と第1辺CL51とを繋いでいる。
【0104】
第2辺CL52、第3辺CL53及び第4辺CL54は、それぞれ、側壁面54の基点となっている。すなわち、第2辺CL52、第3辺CL53及び第4辺CL54は、それぞれ、側壁面54とクラウン基面12bとの境界線を構成している。一方、第1辺CL51は、側壁面54の基点となっていない。第1辺CL51は、クラウン基面12bと上面52との境界線を構成している。
【0105】
図15は、第3実施形態のヘッド60の平面図である。このヘッド60と上述のヘッド4との相違は、突出部の形状のみである。
【0106】
ヘッド60は、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。クラウン部12は、クラウン外面12aを形成している。ソール部14は、ソール外面14aを形成している。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。打撃フェース10aは、上述の通り定義されたフェースセンターFcを有する。クラウン部12は、クラウン外面12aに、突出部70を有する。突出部70は中空である。突出部70は、クラウン外面12aにおいて凸を形成し、且つクラウン内面に凹を形成している。
【0107】
ヘッド4と同様に、ヘッド60でも、フェース側から見たヘッドの正面図では、突出部70は見えない。突出部70の全体が、クラウン外面12aに設けられている。ヘッド60は、ヘッド60の平面図(平面視)における外輪郭線CL2を有する。突出部70は外輪郭線CL2に達していない。突出部70の全体が、フェースセンターよりもヒール側にある。
【0108】
クラウン外面12aは、クラウン基面12bを有する。クラウン外面12aのうち、突出部50が無い部分は、クラウン基面12bにより構成されている。クラウン基面12bは、滑らかに連続する凸曲面である。
【0109】
突出部70は、輪郭線CL70と、上面72と、側壁面74とを有する。輪郭線CL70は、クラウン基面12bと突出部70との間の境界線である。ヘッド60の平面図(平面視)において、突出部70は、略五角形である。輪郭線CL70により、略五角形が形成されている。この略五角形を構成する全ての辺が、側壁面74を有している。
図15の角度では見えないが、外輪郭線CL2に最も近い辺も、側壁面74を有している。
【0110】
図16は、第4実施形態のヘッド80の平面図である。このヘッド80と上述のヘッド4との相違は、突出部の形状のみである。
【0111】
ヘッド80は、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。クラウン部12は、クラウン外面12aを形成している。ソール部14は、ソール外面14aを形成している。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。打撃フェース10aは、上述の通り定義されたフェースセンターFcを有する。クラウン部12は、クラウン外面12aに、突出部90を有する。突出部90は中空である。突出部90は、クラウン外面12aにおいて凸を形成し、且つクラウン内面に凹を形成している。
【0112】
ヘッド4と同様に、ヘッド80でも、フェース側から見たヘッドの正面図では、突出部90は見えない。突出部90の全体が、クラウン外面12aに設けられている。ヘッド80は、ヘッド80の平面図(平面視)における外輪郭線CL2を有する。突出部90は外輪郭線CL2に達していない。突出部90の全体が、フェースセンターよりもヒール側にある。
【0113】
クラウン外面12aは、クラウン基面12bを有する。クラウン外面12aのうち、突出部90が無い部分は、クラウン基面12bにより構成されている。クラウン基面12bは、滑らかに連続する凸曲面である。
【0114】
突出部90は、輪郭線CL90と、上面92と、側壁面94とを有する。輪郭線CL90は、クラウン基面12bと突出部90との間の境界線である。ヘッド80の平面図において、突出部90は、略四角形である。輪郭線CL90により、略四角形が形成されている。この略四角形を構成する全ての辺が、側壁面94を有している。
図16の角度では見えないが、外輪郭線CL2に最も近い辺も側壁面94を有している。
【0115】
図17は、第5実施形態のヘッド100の平面図(平面視)である。このヘッド100と上述のヘッド4との相違は、突出部の形状のみである。
【0116】
ヘッド100は、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。クラウン部12は、クラウン外面12aを形成している。ソール部14は、ソール外面14aを形成している。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。打撃フェース10aは、上述の通り定義されたフェースセンターFcを有する。クラウン部12は、クラウン外面12aに、突出部110を有する。突出部110は中空である。突出部110は、クラウン外面12aにおいて凸を形成し、且つクラウン内面に凹を形成している。
【0117】
ヘッド4と同様に、ヘッド100でも、フェース側から見たヘッドの正面図では、突出部110は見えない。突出部110の全体が、クラウン外面12aに設けられている。ヘッド100は、ヘッド100の平面図(平面視)における外輪郭線CL2を有する。突出部110は外輪郭線CL2に達していない。突出部110の全体が、フェースセンターよりもヒール側にある。
【0118】
クラウン外面12aは、クラウン基面12bを有する。クラウン外面12aのうち、突出部110が無い部分は、クラウン基面12bにより構成されている。クラウン基面12bは、滑らかに連続する凸曲面である。
【0119】
突出部110は、輪郭線CL110と、頂点により形成された稜線112と、側壁面114とを有する。稜線112は、側壁面114同士が交わることで形成されている。突出部110は、上面を有していない。輪郭線CL110は、クラウン基面12bと突出部110との間の境界線である。突出部110は、1つの稜線112と2つの側壁面114とにより形成されている。突出部110は、稜線を有する凸条部を構成している。
【0120】
図18は、第6実施形態のヘッド120の平面図である。このヘッド120と上述のヘッド4との相違は、突出部の形状のみである。
【0121】
ヘッド120は、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。クラウン部12は、クラウン外面12aを形成している。ソール部14は、ソール外面14aを形成している。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。打撃フェース10aは、上述の通り定義されたフェースセンターFcを有する。クラウン部12は、クラウン外面12aに、突出部130を有する。突出部130は中空である。突出部130は、クラウン外面12aにおいて凸を形成し、且つクラウン内面に凹を形成している。
【0122】
ヘッド4と同様に、ヘッド120でも、フェース側から見たヘッドの正面図では、突出部130は見えない。突出部130の全体が、クラウン外面12aに設けられている。ヘッド120は、ヘッド120の平面図(平面視)における外輪郭線CL2を有する。突出部130は外輪郭線CL2に達していない。突出部130の全体が、フェースセンターよりもヒール側にある。
【0123】
クラウン外面12aは、クラウン基面12bを有する。クラウン外面12aのうち、突出部130が無い部分は、クラウン基面12bにより構成されている。クラウン基面12bは、滑らかに連続する凸曲面である。
【0124】
突出部130は、複数(2つ)に分断されている。突出部130は、第1部分132と、第2部分134とを有する。第1部分132と第2部分134とは、互いに分かれている。第1部分132と第2部分134との間に、分断溝136が形成されている。この分断溝136は曲がって延在している。
【0125】
図19(a)は、第7実施形態のヘッド140をトウ側且つバック側の方向から見たときの、ヘッド140の外輪郭線の一部を示す。ヘッド140は、突出部150を有する。輪郭線CL20の第3辺CL23に沿った側壁面24が凹んでいる点を除き、突出部150は、第1実施形態の突出部20と同じである。ヘッド140では、突出部150の最も高い部位152とクラウン外面12aとの間に空間SPが形成されている。最も高い部位152は、高さH1が最大である部位である。高さH1の定義は上述の通りである。ポジション9における抗力を高める観点から、空間SPは、輪郭近接壁面CW(後述)に設けられるのが好ましい。
【0126】
図19(b)は、第8実施形態のヘッド154をトウ側且つバック側の方向から見たときの、ヘッド154の外輪郭線の一部を示す。ヘッド154は、突出部156を有する。突出部156は、クラウン部の外周縁(外輪郭線CL4)に到達している。ヘッド154の平面視において、突出部156の輪郭線の一部は、クラウン部の外輪郭線CL4に一致している。
【0127】
図20(a)は、第9実施形態のヘッド160の斜視図であり、
図20(b)は
図20(a)のb-b線に沿った断面図である。
図21(a)は、ヘッド160のヘッド本体160hの斜視図であり、
図21(b)は
図21(a)のb-b線に沿った断面図である。
図20(b)及び
図21(b)では、ヘッド本体の断面の記載が省略されており、ヘッド本体については、外面の断面線のみが示されている。
【0128】
ヘッド160は、ヘッド本体160hと、突出部170と、固定治具172とを有する。突出部170は、ヘッド本体160hに対して、着脱可能である。突出部170は、ヘッド本体とは別の部材である突出部材174により構成されている。突出部材174は、固定治具172により、ヘッド本体160hに、着脱可能に固定されている。
【0129】
ヘッド本体160hは、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。クラウン部12は、クラウン外面12aを形成している。ソール部14は、ソール外面14aを形成している。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。打撃フェース10aは、上述の通り定義されたフェースセンターFcを有する。クラウン部12は、クラウン外面12aに、突出部170を有する。突出部170は、突出部材174により構成されている。クラウン外面12aに、突出部材174が、着脱可能に固定されている。
【0130】
ヘッド4と同様に、ヘッド160でも、フェース側から見たヘッドの正面図では、突出部170は見えない。突出部170の全体が、クラウン外面12aに設けられている。ヘッド160は、ヘッド160の平面図(平面視)における外輪郭線CL2を有する。
【0131】
クラウン外面12aは、クラウン基面12bを有する。クラウン外面12aのうち、突出部170が無い部分は、クラウン基面12bにより構成されている。クラウン基面12bは、滑らかに連続する凸曲面である。
【0132】
ヘッド本体160hは、ポート162を有する。本実施形態では、ポート162は、雌ネジを構成するネジ孔を構成している。本実施形態では、固定治具172は、雄ネジである。固定治具172は、ポート162にネジ結合しうる。なお、
図20(b)において、ポート162及び固定治具172におけるネジ部分の凹凸の記載は省略されている。
【0133】
突出部材174は、基部174aと、基部174aから立ち上がる立壁部174bとを有する。立壁部174bは、基部174aの縁に形成されている。平面視において、突出部材174は略多角形(略四角形)である。平面視において、突出部材174は複数(4つ)の辺を有する。このうち、1つの辺に、立壁部174bが設けられている。基部174aは、固定治具172が挿通される貫通孔174cを有する。
【0134】
このように、本実施形態では、突出部材174は、固定治具172によりネジ止めされている。突出部材174の固定構造は、ネジ止めに限定されない。
【0135】
立壁部174bを有する本構造は、ポジション6における空気抵抗を抑制しつつ、付加面積S2を増やすことができる。立壁部174bは、輪郭近接辺CS(後述)のみに設けられている。立壁部174bは、輪郭近接壁面CW(後述)を構成している。立壁部174bにより、付加面積S2が効果的に増大している。
【0136】
図22(a)は、第10実施形態のヘッド180の斜視図であり、
図22(b)は
図22(a)のb-b線に沿った断面図であり、
図22(c)は
図22(a)のc-c線に沿った断面図である。
図23(a)は、ヘッド180のヘッド本体180hの斜視図であり、
図23(b)は
図23(a)のb-b線に沿った断面図であり、
図23(c)は
図23(a)のc-c線に沿った断面図である。
図22(b)、
図22(c)、
図23(b)及び
図23(c)では、ヘッド本体の断面の記載が省略されており、ヘッド本体については、外面の断面線のみが示されている。
【0137】
ヘッド180は、ヘッド本体180hと、突出部190と、固定治具192とを有する。固定治具192は、ネジ部材194と、ネジ孔部材196とを有する。突出部190は、ヘッド本体180hに対して、着脱可能である。突出部190は、ヘッド本体180hとは別の部材である突出部材198により構成されている。突出部材198は、固定治具192により、ヘッド本体180hに、着脱可能に固定されている。
【0138】
ヘッド本体180hは、フェース部10、クラウン部12、ソール部14及びホーゼル部16を有する。フェース部10は、打撃フェース10aを有する。打撃フェース10aは、フェース部10の外面である。クラウン部12は、クラウン外面12aを形成している。ソール部14は、ソール外面14aを形成している。ホーゼル部16は、シャフト孔16aを有する。クラウン部12は、クラウン外面12aに、突出部190を有する。突出部190は、突出部材198により構成されている。クラウン外面12aに、突出部材198が、着脱可能に固定されている。
【0139】
ヘッド4と同様に、ヘッド180でも、フェース側から見たヘッドの正面図では、突出部190は見えない。突出部190の全体が、クラウン外面12aに設けられている。
【0140】
クラウン外面12aは、クラウン基面12bを有する。クラウン外面12aのうち、突出部190が無い部分は、クラウン基面12bにより構成されている。クラウン基面12bは、滑らかに連続する凸曲面である。
【0141】
ヘッド本体180hは、ポート182を有する。本実施形態では、ポート182は、凹部である。このポート182に、ネジ孔部材196が固定されている。この固定は、例えば、接着、溶接等によりなされうる。ネジ孔部材196は、ネジ孔196aを有する。ネジ孔196aに、ネジ部材194がネジ結合している。なお、
図22(b)、
図22(c)、
図23(b)及び
図23(c)において、ネジ部材194及びネジ孔196aにおけるネジ部分の凹凸の記載は省略されている。
【0142】
突出部材198は、基部198aと、基部198aから立ち上がる立壁部198bとを有する。立壁部198bは、基部198aの縁に形成されている。平面視において、突出部材198は略多角形(略四角形)である。平面視において、突出部材198は複数(4つ)の辺を有する。このうち、1つの辺に、立壁部198bが設けられている。基部198aは、ネジ部材194が挿通される貫通孔198cを有する。
【0143】
このように、本実施形態でも、突出部材198は、固定治具192によりネジ止めされている。本実施形態では、ネジ孔がネジ孔部材196により形成されている。本実施形態は、ヘッド本体180hにネジ孔を設ける必要が無い点で、第9実施形態と相違する。
【0144】
なお、ネジ孔部材196がヘッド本体180hに取り外し可能に取り付けられていても良い。例えばネジ孔部材196がヘッド本体180hにネジ結合で取り付けられていても良い。この場合、ネジ孔部材196を交換することができる。この交換により、ネジ孔部材196の重量を調整することができる。例えば、突出部材198が装着されているときはネジ孔部材196を比較的軽くし、突出部材198が装着されていないときはネジ孔部材196を比較的重くすることができる。この場合、突出部材198が装着されている場合と装着されていない場合とで、ヘッド重量の差を小さくすることができる。また、突出部材198が装着されている場合と装着されていない場合とで、ヘッド重量を一致させることが可能である。
【0145】
図24は、ダウンスイングにおけるゴルフクラブ2の動きを示している。スイングは、バックスイングから始まり、トップオブスイングを経てダウンスイングに移行し、インパクトを迎える。ダウンスイングの進行に伴い、ヘッドスピードは加速される。また、ダウンスイングの進行に伴い、ヘッドの姿勢が変化する。
【0146】
ダウンスイング中の一時点において、ゴルフクラブ2のシャフト6が地面と平行になる。このときのゴルフクラブ2の位置が、ポジション9とも称される。また、インパクトにおけるクラブの位置が、ポジション6とも称される。ポジション9とポジション6との中間の位置が、ポジション7.5とも称される。これらの称呼では、スイング中のゴルフクラブ2を時計の針に見立てている。すなわち、例えばポジション9は、針時計(アナログ時計)における9時の位置に起因している。
【0147】
ダウンスイングにおけるヘッドの姿勢は、次の通りである。ダウンスイング中にリストターンが起こり、インパクトの時点までにフェースが返る。よってインパクトでは、ヘッドは、そのフェース側を先行させて動く。即ち、インパクトでは、フェース-バック方向のフェース側にヘッドが動く。リストターンが起こる前までは、ヘッドは、そのヒール側を先行させて動く。従来、リストターンが起こる前までは、ヘッドは、トウ-ヒール方向のヒール側に動いていると見なされていた。
【0148】
しかし、本発明者は、ポジション9におけるヘッドの進行方向は、実質的には、トウ-ヒール方向のヒール側ではなく、傾斜トウ-ヒール方向のヒール側であることを見出した。すなわち、ポジション9では、ヒール投影図(
図5)を正面としてヘッドが動くことを見出した。トップオブスイングからポジション9にかけてヘッドに作用する遠心力により、ポジション9ではトウダウンが生じている。また、ポジション9では、リストコックの開放が起こっている。リストコックが開放されると、クラブがグリップを中心に回転し、トウダウンと同じようにヘッドの姿勢が変化する。これらに起因して、ポジション9におけるヘッドの進行方向は、実質的に、傾斜トウ-ヒール方向となることが分かった。
【0149】
クラウン部12に突出部20を設け、前記ヒール投影図のシルエット面積を増やすことで、ポジション9においてヘッド4が受ける抗力(空気抵抗の力)が増加する。この抗力は、ヘッド重心CGに作用する遠心力の一部を打ち消す。よって、この抗力が増加することで、トウダウンを起こす力が小さくなり、トウダウンが抑制される。
【0150】
更に、クラウン部12に設けた突出部20により、揚力が生じうる。ポジション9において、空気は傾斜トウ-ヒール方向に流れる。この空気は、飛行機の翼に作用する揚力と同じ原理で、ヘッド4に揚力を生じさせる。突出部20を設けることで、ポジション9における揚力が高まる。
【0151】
突出部20は、フェース側からの正面図において、視認されない。突出部20は、フェース側から見たヘッドの正面図において、ヘッドの外輪郭線を構成していない。このため、突出部20は、実質的に、ポジション6における抗力(空気抵抗の力)に影響しない。実質的に、突出部20によってヘッドスピードは低下しない。
【0152】
図25(a)及び
図25(b)は、ポジション9においてヘッド200に作用する力を図示した概念図である。
図25(c)は、インパクトでのヘッド200を示す。ヘッド200は、クラウン部に突出部を有さない。
図26(a)及び
図26(b)は、ポジション9においてヘッド4に作用する力を図示した概念図である。
図26(c)は、インパクトでのヘッド4を示す。ヘッド4は、前述した第1実施形態である。
【0153】
ポジション9のヘッド200には、遠心力が作用する。この遠心力は、ゴルフクラブ2の回転中心とヘッド重心CGとを結ぶ直線に沿って作用する。この遠心力は、シャフト軸線Zに平行な成分F1と、シャフト軸線Zに垂直な成分F2とに分解される。一方、ポジション9のヘッド200には、抗力(空気抵抗の力)及び揚力が作用する。抗力及び揚力は、遠心力を打ち消す方向に作用する。抗力及び揚力の合力は、シャフト軸線Zに平行な成分F3と、シャフト軸線Zに垂直な成分F4とに分解される。これらの力F1からF4は、概念的に矢印で示されている。抗力及び揚力よりも遠心力は大きく、トウダウンが生じる。この結果、
図25(c)が示すように、ヘッド200のトウ側が下がり、ヘッド200のバック側が下がり、打撃フェース10aが開く。
【0154】
突出部20を設けることで、ポジション9における抗力及び揚力が増加する。突出部20によりヒール投影図の付加面積S2が増加し、抗力が増加する。また、突出部20により、ポジション9のヘッド4の上側において空気の流速が増加し、揚力が増加する。抗力及び揚力の増加により、力F3及び力F4が増加する(
図26(a)及び
図26(b)の黒塗り矢印参照)。結果として、遠心力を打ち消す力が大きくなり、トウダウンが抑制される。すなわち、ヘッド4においてトウ側への下がり及びバック側への下がりが抑制され、打撃フェース10aの開きが抑制される(
図26(c)参照)。
【0155】
なお、
図25(a)、(b)及び
図26(a)、(b)において、力を示す矢印の大きさ及びその大小関係は正確ではない。同様に、
図25(c)及び
図26(c)において、ヘッドの姿勢及びその関係は正確ではない。これらの図面は、本実施形態の効果を定性的に理解するためのものである。
【0156】
図17の実施形態を除き、上述の各実施形態では、突出部が、上面と、上面から前記突出部の外縁にまで延びる側壁面とを有している。側壁面を設けることで、突出部の高さH1を大きくすることができ、効果的に付加面積S2を増やすことが可能となる。
【0157】
第1実施形態のヘッド4では、上面22の高さH1が、ヘッド中央側にいくに従って低くなっている。ヘッド中央側のヘッド中央とは、ヘッド4の平面図における図心CRを意味しうる(
図3参照)。上記基準状態のヘッドにおいて、接地平面HPに垂直で上面22と交差し且つ図心CRとを通る平面が複数設定されうる。これらの平面による断面において、上面22の高さH1はヘッド中央側(図心CR側)にいくに従って低くなっている。この構成では、付加面積S2を大きくしつつ、突出部20の体積を下げることができる。また、ポジション9における空気の流れにおいて、空気の流れが乱れることが抑制され、空気がクラウン外面12aを沿って流れやすくなる。この空気の流れは揚力の増加に寄与する。
【0158】
第1実施形態のヘッド4では、上面22の高さH1が、フェース側にいくに従って低くなっている。即ち、フェース-バック方向に沿った断面(上述したクラウン縦断面線)において、上面22の高さH1が、フェース側にいくに従って低くなっている。このため、付加面積S2を大きく且つフェース側から見えない突出部20が容易に構成されうる。また、インパクトにおける空気の流れ(フェース-バック方向の流れ)に対する影響が小さくなり、ヘッドスピードへの影響も小さくできる。
【0159】
第4実施形態のヘッド80では、上面92の高さH1が、バック側にいくに従って低くなっている。即ち、フェース-バック方向に沿った断面(上述したクラウン縦断面線)において、上面92の高さH1が、バック側にいくに従って低くなっている。このため、インパクトにおける空気の流れ(フェース-バック方向の流れ)において乱流の発生が抑制され、ヘッドスピードの低下が抑制される。
【0160】
第7実施形態のヘッド140では、突出部150の最も高い部位152とクラウン外面12aとの間に空間SPが形成されている。この空間SPを有する構成は、空気の流れを受け止めやすい。この構成は、ポジション9における抗力の増加に寄与する。
【0161】
第5実施形態のヘッド100では、突出部110が、頂点により形成された稜線112と、稜線112から突出部110の外縁CL110にまで延びる側壁面114とを有している。この構成では、付加面積S2を大きくしつつ突出部110の体積を小さくすることができる。この突出部110では、ポジション9での抗力を大きくしながら、インパクト(ポジション6)での空気の流れに対する影響を小さくすることができる。
【0162】
第9実施形態のヘッド160では、ヘッド160が、クラウン部12を構成するヘッド本体160hと、ヘッド本体160hに着脱可能に固定され突出部170を構成する突出部材174とを有している。この構成では、突出部170をヘッド本体160hとは異なる材質(樹脂等)で製造することができ、突出部170を軽量化したり、突出部170の成形自由度を高めたりすることができる。また、突出部材174の着脱により、ヘッドの性能を変えることができる。突出部材174は、固定治具172によりヘッド本体160hに着脱可能に固定されている。このため、突出部材174の着脱を容易とすることができる。また、専用工具を用いて突出部材174を着脱する構成を達成することでき、ルールへの適合が容易となる。
【0163】
高さH1を大きくすることで、付加面積S2を増やすことができる。この観点から、突出部における高さH1の最大値は、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上がより好ましい。ヘッド重心位置の設計自由度の観点から、突出部20における高さH1の最大値は、20mm以下が好ましく、17mm以下がより好ましく、15mm以下がより好ましい。
【0164】
フェースセンターFcよりもヒール側におけるクラウン外面12aの面積がSh(mm
2)とされる。また、突出部の面積がSt(mm
2)とされる。面積Sh及び面積Stは、ヘッドの平面図(
図3等)において測定される。
図3において、面積Shは、フェースセンターFcを通りフェース-バック方向に延びる直線Lcよりもヒール側の部分の面積である。ポジション9において抗力及び揚力を高める観点から、面積Shのうち面積Stが占める割合は、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がより好ましい。ヘッド重心位置の設計自由度の観点から、面積Shのうち面積Stが占める割合は、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がより好ましい。
【0165】
図3で説明した通り、突出部20は、輪郭線CL20を有する。輪郭線CL20上の各点と外輪郭線CL2との距離D1が定義される。
図7が示すように、この距離D1は、横断面線における距離(直線距離)と定義される。
【0166】
輪郭線CL20を構成する各辺は、輪郭線CL20に最も近い辺を含む。
図3の実施形態では、輪郭線CL20に最も近い辺は、第3辺CL23である。この辺が、複数の辺のうちで外輪郭線CL2に最も近い輪郭近接辺CSである。
図14の実施形態では、第2辺CL52が、輪郭近接辺CSである。輪郭近接辺CSにおける距離D1の最小値は、他の辺における距離D1の最小値よりも小さい。輪郭近接辺CSにおける距離D1の最大値は、他の辺における距離D1の最大値よりも小さい。輪郭近接辺CSにおける距離D1の最大値は、他の辺における距離D1の最小値よりも小さい。
【0167】
図3が示すように、輪郭近接辺CSは、外輪郭線CL2に略沿っている。外輪郭線CL2は、ヘッドの平面図におけるクラウン部12の外輪郭線CL4を含む。輪郭近接辺CSは、外輪郭線CL4に略沿っている。
【0168】
輪郭近接辺CSを設けることで、突出部20がヒール側の外輪郭線CL4に近づく。このため、ヒール投影図における付加面積S2を効果的に大きくすることができる。この観点から、輪郭近接辺CSの全体における距離D1の最大値は、25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、15mm以下がより好ましい。この最大値は、0mmであってもよい。突出部20がクラウン部12の外輪郭線CL4に到達している場合、距離D1の最大値は0mmである。
【0169】
輪郭近接辺CSは、外輪郭線CL4に沿っているのが好ましい。この場合、効果的に付加面積S2を大きくすることができる。この観点から、輪郭近接辺CSにおけるD1の最大値D1maxとD1minとが考慮される。輪郭近接辺CSが外輪郭線CL4に沿っていると、差(D1max-D1min)が小さくなる。この観点から、差(D1max-D1min)は、15mm以下が好ましく、13mm以下がより好ましく、10mm以下がより好ましい。差(D1max-D1min)は0mmであるのがより好ましい。
【0170】
付加面積S2を効率よく増やす観点から、輪郭近接辺CSの長さは、20mm以上が好ましく、30mm以上がより好ましく、40mm以上がより好ましい。フェース側への過度な延在を抑制して、ポジション6における空気抵抗を下げる観点から、輪郭近接辺CSの長さは、90mm以下が好ましく、80mm以下がより好ましく、70mm以下がより好ましい。この輪郭近接辺CSの長さは、(三次元的な)輪郭近接辺CSの実際の長さ(道のり長さ)である。
【0171】
輪郭近接辺CSは、側壁面を有しているのが好ましい。すなわち、突出部は、輪郭近接辺CSを下縁とする側壁面を有するのが好ましい。
図3の実施形態において、輪郭近接辺CSは、側壁面24を有する。輪郭近接辺CSを下縁とする側壁面24が、輪郭近接壁面とも称される。輪郭近接壁面CWは、ヒール投影図の付加面積S2を効率よく増やすことができる。
【0172】
輪郭近接壁面CWを高くすることで、付加面積S2を効率よく増やすことができる。この観点から、輪郭近接壁面CWの上縁の高さH1は、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上がより好ましい。ヘッドの重心位置の設計自由度の観点から、輪郭近接壁面CWの上縁の高さH1は、20mm以下が好ましく、18mm以下がより好ましく、15mm以下がより好ましい。
【0173】
ヒール投影図における付加面積S2を増やしつつ、ポジション6における空気抵抗を下げる観点から、輪郭近接壁面CWの上縁は、突出部20において高さH1が最大の点を含んでいても良い。
【0174】
図3の平面図において、突出部20の輪郭線CL20の第1辺CL21は、輪郭近接辺CSに対向する辺である。この対向辺PSの長さは、輪郭近接辺CSの長さよりも短いのが好ましい。対向辺PSを短くすることで、付加面積S2を増やしつつポジション6における空気の流れに対する影響を小さくすることできる。この対向辺PSの長さは、(三次元的な)対向辺PSの実際の長さ(道のり長さ)である。対向辺PSの長さは、輪郭近接辺CSの長さの90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がより好ましい。対向辺PSの長さは、輪郭近接辺CSの長さの0%であってもよい。
【0175】
対向辺PSを低くすることで、ポジション6における空気抵抗を下げることができる。この観点から、対向辺PSは側壁面を有さないのが好ましい。
【0176】
ヘッド4の平面図(
図3)において、突出部20は、輪郭近接壁面CWから対向辺PSに近づくにつれて幅W1が小さくなるテーパー形状部を有している。このテーパー形状部は、付加面積S2を増やしつつポジション6における空気の流れに対する影響を小さくするのに寄与する。幅W1は、対向辺PSの両端を結ぶ直線の方向に沿って測定されうる。
【実施例0177】
以下、実施例によって本開示の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本開示が限定的に解釈されるべきではない。
【0178】
[テスト1:実打評価]
複数のテスターが、突出部のあるクラブAと突出部のないクラブBとで実際に打撃して、突出部の効果を確認した。
【0179】
テスターは、ドライバーでのヘッドスピードが34~39m/sである9名のゴルファーとされた。突出部のないクラブAとして、ゼクシオイレブンのドライバー(シャフトフレックスR、ロフト角10.5°)が用いられた。突出部のあるクラブBとして、上記クラブAのヘッドのクラウンに、スポンジモックアップで成形された突出部を貼り付けたクラブが用いられた。スポンジモックアップは、スポンジ素材(EVAフォーム)からなり、軽量であった。また、クラブAとクラブBとで、ヘッド重量が同一になるように調整がなされた。突出部の位置及び形状は、上述した第1実施形態のヘッド4と同じとされた。
【0180】
9名のテスターが各クラブで8球ずつ打撃した。各打撃について、ヘッドスピード、打点位置、インパクトでのフェース角及びボール初速を測定した。これらのデータより、各テスターの各クラブについて、ヘッドスピードの平均値、ヘッドスピードのばらつき(標準偏差σ)、打点とフェースセンターとの距離の平均値、打点とフェースセンターとの距離のばらつき(標準偏差σ)、フェース角の平均値、フェース角のばらつき(標準偏差σ)及びミート率を算出した。
【0181】
図27(a)は、テスター1から9のヘッドスピード(H/S)の平均値を示す。棒グラフの左側がクラブA(突出部無し)の結果であり、右側がクラブB(突出部有り)の結果である。各矢印は、突出部の有無によりヘッドスピードが増えたのか減ったのかを示している。突出部の有無で、ヘッドスピードは同等であった。突出部を設けてもヘッドスピードは低下しないことが確認された。
【0182】
図27(b)は、テスター1から9の、打点とフェースセンターとの距離の平均値を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。各矢印は、突出部の有無によりこの距離が増えたのか減ったのかを示している。9名のテスターのうち、この距離が減ったのが8名であった。突出部を設けることで、トウダウンが適正化(抑制)され、打点がフェースセンターに近づくことが確認された。
【0183】
図28(a)は、テスター1から9の、フェース角の平均値を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。各矢印は、突出部の有無によりフェース角が増えたのか減ったのかを示している。フェース角は、0°であるのが最も好ましい。9名のテスターのうち、フェース角が0°に近づいたのが5名であり、このうち3名では、クラブBでフェース角がほぼ0°であった。突出部を設けることで、トウダウンが適正化(抑制)され、フェースの向きがスクエアに近づくことが確認された。
【0184】
図28(b)は、テスター1から9の、ミート率の平均値を示す。ミート率は、ボール初速(B/S)をヘッドスピード(H/S)で除することで算出される。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。各矢印は、突出部の有無によりミート率が増えたのか減ったのかを示している。9名のテスターのうち、ミート率が上昇したのが8名であった。突出部を設けることで、トウダウンが適正化(抑制)され、打点や衝突角度が改善し、ミート率が高まることが確認された。
【0185】
図29(a)は、テスター1から9の、ヘッドスピード(H/S)の標準偏差を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。各矢印は、突出部の有無によりヘッドスピードのばらつきが増えたのか減ったのかを示している。突出部の有無で、ヘッドスピードのばらつきは同等であった。
【0186】
図29(b)は、テスター1から9の、打点とフェースセンターとの距離の標準偏差を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。各矢印は、突出部の有無により当該ばらつきが増えたのか減ったのかを示している。9名のテスターのうち、このばらつきが減ったのが6名であった。突出部を設けることで、トウダウンが安定化され、打点のばらつきが減少することが確認された。
【0187】
図30は、テスター1から9の、フェース角の標準偏差を示す。棒グラフの左側がクラブAの結果であり、右側がクラブBの結果である。各矢印は、突出部の有無により当該ばらつきが増えたのか減ったのかを示している。9名のテスターのうち、このばらつきが減ったのが6名であった。突出部を設けることで、トウダウンが安定化され、フェース角のばらつきが減少することが確認された。
【0188】
[テスト2:スイングマシンによる評価]
上述したクラブA及びクラブBを用いて、スイングマシンによるスイングでトウダウンを観測した。スイングマシンとしてGolf Laboratories, Inc.社製のCOMPUTER CONTROLLED HITTING MACHINEを用い、インパクトでのヘッドスピードを40m/sに設定してテストを行った。シャフトに歪みゲージを貼り付けてインパクトにおけるシャフトの撓り量を観測した。この結果、クラブB(突出部有り)は、クラブA(突出部無し)に比べて、インパクトにおけるトウダウン側への撓り量が4%(約3mm)減少した。また、感圧紙を用いて、打点の変化量を測定した。クラブBは、クラブAに比べて、打点がヒール側且つソール側に移動した。この打点の移動距離は約6mmであった。このように、スイングマシンでのテストで、突出部によりトウダウンが抑制されることが確認された。
【0189】
[テスト3:空力シミュレーション]
シミュレーションにより、ヘッドに作用する抗力及び揚力の変化を確認した。ソフトウェアとして、Siemens Digital Industries Software社製の「STAR-CCM」を用い、ポリヘドラル後部fineMeshを採用して、シミュレーションを行った。突出部の形状及び位置は第1実施形態のヘッド4と同じとし、突出部の高さH1の最大値は3mmとされた。ダウンスイングにおけるヘッドスピードが、ポジション9で20m/s、ポジション7.5で30m/s、ポジション6で40m/sに設定された。この結果、ポジション9における抗力は、ポジション9におけるヘッド進行方向(即ち傾斜トウ-ヒール方向)において、13%大きくなった。一方、ポジション6(インパクト)における抗力は、ポジション6におけるヘッド進行方向(即ちフェース-バック方向)において、2%低下した。また、ポジション9における揚力は、ポジション9におけるヘッド進行方向(即ち傾斜トウ-ヒール方向)に対して垂直な方向において、28%大きくなった。これらの増加した抗力及び揚力は、遠心力を打ち消し、シャフト軸線に対して垂直な方向に作用する力を減少させた。増加した抗力及び揚力に起因して、ポジション9において、シャフト軸線に対して垂直な方向に作用する力が、約1%減少した。このように、突出部によりポジション9で抗力及び揚力が上昇し、トウダウンが抑制されることが確認された。
【0190】
これらの評価結果が示すように、本開示の優位性は明らかである。
【0191】
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
打撃フェースを形成するフェース部と、
クラウン外面を形成するクラウン部と、
ソール外面を形成するソール部と、
シャフトが取り付けられシャフト軸線を特定するホーゼル部と、
を有するゴルフクラブヘッドであって、
前記クラウン部が、前記クラウン外面に、突出部を有しており、
フェース側から見たヘッドの正面図において、前記突出部が前記ヘッドの外輪郭線を構成しておらず、
前記シャフト軸線を接地平面に対して垂直とし且つフェース角を0度としたヘッドを前記接地平面に沿ってヒール側から見たヒール投影図において、前記突出部が前記ヘッドの外輪郭線を構成しているゴルフクラブヘッド。
[付記2]
前記突出部が、上面と、前記上面から前記突出部の外縁にまで延びる側壁面とを有している付記1に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記3]
前記上面の高さが、ヘッド中央側にいくに従って低くなる付記2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記4]
前記突出部の前記上面の高さが、フェース側にいくに従って低くなる付記2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記5]
前記突出部の前記上面の高さが、バック側にいくに従って低くなる付記2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記6]
前記突出部の最も高い部位と前記クラウン外面との間に空間が形成されている付記1から5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記7]
前記突出部が、頂点により形成された稜線と、前記稜線から前記突出部の外縁にまで延びる側壁面とを有している付記1に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記8]
前記ヘッドが、前記クラウン部を構成するヘッド本体と、前記ヘッド本体に着脱可能に固定され前記突出部を構成する突出部材とを有している付記1から7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記9]
前記突出部材が固定治具により前記ヘッド本体に着脱可能に固定されている付記8に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記10]
前記ヘッドの平面視において、フェースセンターよりもヒール側における前記クラウン外面の面積がShとされ、前記突出部の面積がStとされとき、
面積Shのうち面積Stが占める割合が、5%以上70%以下である付記1から9のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記11]
付記1から10のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドと、グリップと、シャフトとを備えており、
前記シャフトの先端部に前記ゴルフクラブヘッドが装着され、前記シャフトの後端部に前記グリップが装着されているゴルフクラブ。