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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110689
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】導電性糸及び伸縮配線付き布地
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/38 20060101AFI20220722BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20220722BHJP
   D02G 3/12 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
D02G3/38
D03D15/08
D02G3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006245
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594149804
【氏名又は名称】カジナイロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】奥宮 保郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克典
(72)【発明者】
【氏名】谷高 幸司
(72)【発明者】
【氏名】梶 政隆
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆平
(72)【発明者】
【氏名】吉村 貫生
【テーマコード(参考)】
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L036MA04
4L036MA05
4L036MA06
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA21
4L036PA46
4L036PA47
4L036RA25
4L036UA25
4L048AA04
4L048AA18
4L048AA19
4L048AA20
4L048AA24
4L048AA25
4L048AA26
4L048AA52
4L048AB17
4L048AB28
4L048AC12
(57)【要約】
【課題】本発明は、伸縮性に優れる伸縮配線に形成できる導電性糸を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る導電性糸10は、溶解によって除去可能な犠牲材料1aを含む芯糸1と、芯糸1の周囲に螺旋状に巻かれた、導電性線材2aを含む鞘糸2とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解によって除去可能な犠牲材料を含む芯糸と、
前記芯糸の周囲に螺旋状に巻かれた、導電性線材を含む鞘糸と
を備える導電性糸。
【請求項2】
前記犠牲材料が水溶性である請求項1に記載の導電性糸。
【請求項3】
前記犠牲材料の主成分が、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールである請求項2に記載の導電性糸。
【請求項4】
前記導電性線材は、有機繊維と、この有機繊維を被覆する金属層とを有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の導電性糸。
【請求項5】
前記有機繊維は、パラ型アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維及びポリベンゾビスオキサゾール繊維からなる群より選択される少なくとも1種である請求項4に記載の導電性糸。
【請求項6】
前記導電性線材は、金属線である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の導電性糸。
【請求項7】
前記導電性線材は、金属蒸着層を有するテープである請求項1、請求項2又は請求項3に記載の導電性糸。
【請求項8】
前記導電性線材は、最表面に絶縁被覆を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の導電性糸。
【請求項9】
前記芯糸又は前記鞘糸は、前記導電性線材を伸長限界以下の長さに保つストッパー糸をさらに含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性糸。
【請求項10】
前記ストッパー糸は、前記鞘糸に含まれており、
単位長あたりの前記ストッパー糸の巻き数が、前記導電性線材よりも少ない請求項9に記載の導電性糸。
【請求項11】
前記ストッパー糸は、前記芯糸に含まれており、
前記ストッパー糸の伸長弾性率が、前記導電性線材の伸長弾性率よりも小さい請求項9に記載の導電性糸。
【請求項12】
前記ストッパー糸が、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維及びシリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項9、請求項10又は請求項11に記載の導電性糸。
【請求項13】
導電性線材を含む伸縮配線と、
布地と
を備え、
前記導電性線材は、螺旋状であり、伸長限界以下に保たれるように前記布地に配置されている伸縮配線付き布地。
【請求項14】
前記導電性線材は、複数の取付部で前記布地に取り付けられており、
前記布地は、前記導電性線材の隣接する前記取付部間の長さをそれぞれ伸長限界以下に保つ請求項13に記載の伸縮配線付き布地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性糸及び伸縮配線付き布地に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮に対する抵抗体の抵抗変化から歪みを検出する歪みセンサーが知られている。この歪みセンサーは、例えばロボットの屈曲部又は可動部や被服等に取り付けて用いられる。この歪センサーは、取り付け対象の伸縮に対応して抵抗体を伸縮させることで伸縮歪みを検知可能に構成される。
【0003】
この歪みセンサーは、配線と電気的に接続され、この配線を介して検知信号を出力する。そのため、この歪みセンサーに接続される配線は、取り付け対象の伸縮に追随可能な十分な伸縮性を有することが望まれる。歪みセンサーに接続される配線として、伸縮性を有する芯材と、この芯材の周囲に巻き付けられた導電性線材とを備える伸縮性配線が発案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/130477号
【特許文献2】特表2016-500869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている伸縮性配線は、芯材が伸縮性を有していることで、芯材の伸縮に合わせて導電性線材を伸縮させることができる。しかしながら、この伸縮性配線は、芯材が伸縮する範囲内でのみ導電性線材を伸縮させることができるに過ぎず、導電性線材の伸縮性を十分に高め難い。
【0006】
なお、特許文献2には、波形に蛇行しており、NFCアンテナ等として用いられる伸縮性のコイルが可撓性基板上に環状に配置されてなる装置が記載されている。このコイルは、蛇行、ジグザグ、溝、波紋状等に2次元で湾曲した導電性材料で構成されており、伸縮方向が限定されやすい。そのため、このコイルは、可撓性基板の伸縮に追随して伸縮し難い場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、伸縮性に優れる伸縮配線に形成できる導電性糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る導電性糸は、溶解によって除去可能な犠牲材料を含む芯糸と、前記芯糸の周囲に螺旋状に巻かれた、導電性線材を含む鞘糸とを備える。
【0009】
前記犠牲材料が水溶性であるとよい。
【0010】
前記犠牲材料の主成分が、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールであるとよい。
【0011】
前記導電性線材は、有機繊維と、この有機繊維を被覆する金属層とを有するとよい。
【0012】
前記有機繊維は、パラ型アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維及びポリベンゾビスオキサゾール繊維からなる群より選択される少なくとも1種であるとよい。
【0013】
前記導電性線材は、金属線であってもよい。
【0014】
前記導電性線材は、金属蒸着層を有するテープであってもよい。
【0015】
前記導電性線材は、最表面に絶縁被覆を有するとよい。
【0016】
前記芯糸又は前記鞘糸は、前記導電性線材を伸長限界以下の長さに保つストッパー糸をさらに含むとよい。
【0017】
前記ストッパー糸は、前記鞘糸に含まれており、単位長あたりの前記ストッパー糸の巻き数が、前記導電性線材よりも少ないとよい。
【0018】
前記ストッパー糸は、前記芯糸に含まれており、前記ストッパー糸の伸長弾性率が、前記導電性線材の伸長弾性率よりも小さいとよい。
【0019】
前記ストッパー糸が、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維及びシリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むとよい。
【0020】
本発明の他の一態様に係る伸縮配線付き布地は、導電性線材を含む伸縮配線と、布地とを備え、前記導電性線材は、螺旋状であり、伸長限界以下に保たれるように前記布地に配置されている。
【0021】
前記導電性線材は、複数の取付部で前記布地に取り付けられており、前記布地は、前記導電性線材の隣接する前記取付部間の長さをそれぞれ伸長限界以下に保つとよい。
【0022】
なお、本発明において、「主成分」とは、質量換算で最も含有量が大きい成分を意味しており、例えば含有量が50質量%以上の成分を意味する。「伸長弾性率」とは、JIS L1013:2010の伸長弾性率A法に準拠して求められる値を意味する。「伸長限界」とは、伸長可能な最大長さを意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係る導電性糸は、前記鞘糸が前記芯糸の周囲に螺旋状に巻かれている状態で、布地やラバーシート等の伸縮部材に配置される。当該導電性糸は、前記伸縮部材に配置された後に前記犠牲材料を溶解によって除去することで、伸縮配線として用いられる。当該導電性糸は、前記伸縮部材に配置される際には前記犠牲材料が存在しているので、前記伸縮部材に配置された状態で前記導電性線材を所望の螺旋状に保ちやすい。また、当該導電性糸は、伸縮配線として使用される際には前記犠牲材料が除去されているので、前記導電性線材の伸縮が前記芯糸によって妨げられ難い。従って、当該導電性糸は、伸縮性に優れる伸縮配線に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る導電性糸を示す模式的側面図である。
図2図2は、図1の導電性糸に用いられる導電性線材の軸と垂直な方向の模式的断面図である。
図3図3は、図2の導電性線材とは異なる形態に係る導電性線材の軸と垂直な方向の模式的断面図である。
図4図4は、図2及び図3の導電性線材とは異なる形態に係る導電性線材の軸と垂直な方向の模式的断面図である。
図5図5は、図2から図4の導電性線材とは異なる形態に係る導電性線材の軸と垂直な方向の模式的断面図である。
図6図6は、図1の導電性糸を用いて形成される伸縮配線を示す模式的側面図である。
図7図7は、図1の導電性糸を用いて形成される伸縮配線付き布地を示す模式的断面図である。
図8図8は、図7の伸縮配線付き布地を製造するための縫製工程を示す模式的断面図である。
図9図9は、図7の伸縮配線付き布地を製造するための貼付け工程を示す模式的断面図である。
図10図10は、図7の伸縮配線付き布地とは異なる実施形態に係る伸縮配線付き布地を示す模式的平面図である。
図11図11は、図1の導電性糸とは異なる実施形態に係る導電性糸を示す模式的側面図である。
図12図12は、図11の導電性糸を用いて形成される伸縮配線を示す模式的側面図である。
図13図13は、図1及び図11の導電性糸とは異なる実施形態に係る導電性糸を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0026】
[第一実施形態]
<導電性糸>
図1の導電性糸10は、溶解によって除去可能な犠牲材料1aを含む芯糸1と、芯糸1の周囲に螺旋状に巻かれた、導電性線材2aを含む鞘糸2とを備える。当該導電性糸10は、犠牲材料1aが溶解によって除去された状態で伸縮配線として用いられる。より詳しくは、当該導電性糸10は、布地やラバーシート等の伸縮部材に配置され、この伸縮部材に配置された後に犠牲材料1aが除去されることで、この伸縮部材に追随して伸縮可能な伸縮配線として構成される。
【0027】
(芯糸)
芯糸1は、当該導電性糸10が前記伸縮部材に配置される際(配線パターンの形成時)における導電性線材2aの螺旋ピッチを制御する。すなわち、螺旋状の導電性線材2aを単独で前記伸縮部材に縫い付けると、縫い付け時に導電性線材2aが引き伸ばされる。導電性線材2aが引き伸ばされた状態で縫い付けられると、導電性線材2aの伸長幅が小さくなり、伸縮性が低下する。これに対し、導電性線材2aが芯糸1に巻き付けられていることで、縫い付け時に導電性線材2aが引き伸ばされるのを抑制し、使用時(伸縮配線として使用される際)における導電性線材2aの伸長幅を大きくすることができる。なお、「螺旋ピッチ」とは、螺旋の中心軸方向における単位ループ(一巻き分)のピッチを意味する。
【0028】
本実施形態において、芯糸1は、犠牲材料1aからなる。芯糸1は、犠牲材料1aの溶解によって使用時には除去される。犠牲材料1aは、完全に除去されてもよいし、一部が残存していてもよい。犠牲材料1aは、溶解によって除去されることで、導電性線材2aの螺旋内部に空間を形成する。この構成によると、導電性線材2aの伸縮性を高めると共に、導電性線材2aを所望の方向に曲げやすい。
【0029】
犠牲材料1aの溶解方法としては、特に限定されるものではない。犠牲材料1aは、例えば酸処理、アルカリ処理等の化学処理、熱処理、電解処理等によって溶解するよう構成されてもよい。但し、犠牲材料1aは、水に溶解することが好ましい。つまり、犠牲材料1aは水溶性であることが好ましい。前述のように、犠牲材料1aは、通常伸縮部材に配置された後に除去される。犠牲材料1aが水溶性であることで、犠牲材料1aを除去する際に、伸縮部材等の他の部材を劣化し難い。
【0030】
犠牲材料1aは、例えば糸状である。犠牲材料1aが糸状である場合(すなわち、犠牲材料1aが犠牲糸である場合)、芯糸1は、複数の犠牲材料1aを撚糸加工、好ましくは合撚加工、することで形成される。芯糸1に使用される犠牲材料1aの本数としては、特に限定されないが、例えば1本以上16本以下とすることができる。また、芯糸1の平均径としては、例えば200μm以上1000μm以下とすることができる。芯糸1の平均径が前記下限に満たないと、導電性線材2aの螺旋ループの径が小さくなり、溶解後における導電性線材2aの伸縮性が十分に得られないおそれがある。逆に、芯糸1の平均径が前記上限を超えると、当該導電性糸10を縫い付け難くなるおそれがある。なお、「芯糸の平均径」とは、芯糸の軸と垂直な任意の5つの断面における最大径を平均した値を意味する。
【0031】
犠牲材料1aが水溶性である場合、犠牲材料1aの主成分としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミド、水溶性エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。中でも、犠牲材料1aの主成分としては、溶解処理が容易なポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールが好ましい。
【0032】
(鞘糸)
鞘糸2は、芯糸1に対してS方向又はZ方向に1重に巻き付けられている。本実施形態において、鞘糸2は、導電性線材2aからなる。つまり、当該導電性糸10は、導電性線材2a以外の鞘糸2を有しない。当該導電性糸10は、芯糸1の周囲に導電性線材2aが螺旋状に巻かれたシングルカバリング糸である。
【0033】
〔導電性線材〕
導電性線材2aは、芯糸1の周面に密着している。この構成によると、当該導電性糸10を縫い付けやすい。また、この構成によると、前記伸縮部材への配置時に導電性線材2aが引き伸ばされ難い。導電性線材2aの螺旋ピッチは、必要とされる伸縮性に対応して定めることができる。導電性線材2aの平均径は、特に限定されないが、縫い付けやすさ等の観点から芯糸1の平均径以下とすることができる。導電性線材2aの軸と垂直な断面形状としては、特に限定されなく、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形等が挙げられる。また、導電性線材2aは内部に中空部を有していてもよい。導電性線材2aは、単線であってもよく、複数の単線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
【0034】
導電性線材2aの螺旋ループの平均外径Rの下限としては、500μmが好ましく、700μmがより好ましい。一方、前記平均外径Rの上限としては、1200μmが好ましく、1000μmがより好ましい。前記平均外径Rが前記下限に満たないと、導電性線材2aの伸縮性を十分に大きくし難くなるおそれがある。逆に、前記平均外径Rが前記上限を超えると、当該導電性糸10から形成される伸縮配線の配置スペースが大きくなり、複数の伸縮配線を狭ピッチで配置し難くなるおそれがある。なお、「導電性線材の螺旋ループの平均外径」は、芯糸の平均径と導電性線材の平均径を2倍した値とを足し合わせることで算出することができる。また、「導電性線材の平均径」とは、導電性線材の軸と垂直な任意の5つの断面における最大径を平均した値を意味する。
【0035】
図2を参照して、導電性線材2aの具体的な構成について説明する。導電性線材2aは、有機繊維11aと、有機繊維11aを被覆する金属層12aとを有する。導電性線材2aは、有機繊維11a及び金属層12aを有することで、柔軟性を向上させると共に、軽量化を図ることができる。導電性線材2aは、有機繊維11aの周囲に金属層12aをコーティングすることで形成される。導電性線材2aは、例えば有機繊維11aの周囲に金属層12aをメッキしたメッキ糸である。
【0036】
有機繊維11aとしては、例えばポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、全芳香族ポリエステル繊維等のポリエステル繊維;ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維;アラミド繊維;ポリベンゾビスオキサゾール繊維;ポリアクリロニトリル繊維;ポリビニルアルコール繊維などが挙げられる。中でも、引張強度に優れるアラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維及びポリベンゾビスオキサゾール繊維からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。また、アラミド繊維としては、パラ型アラミド繊維が好ましい。
【0037】
金属層12aの主成分としては、例えば電気抵抗が小さい金又は銀や、比較的安価な銅等が挙げられる。
【0038】
図2に示すように、導電性線材2aは、最表面に絶縁被覆13aを有する。この構成によると、金属層12aの破損や損傷を容易に抑制することができる。また、導電性線材2aの伸縮に起因して金属層12a同士が接触することを防止して、伸縮に起因して電気抵抗が変化することを抑制することができる。
【0039】
導電性線材2aは、有機繊維11aの外周に金属層12aが積層され、金属層12aの外周に絶縁被覆13aが積層された3層体である。絶縁被覆13aの主成分としては、例えば合成樹脂及びエラストマーが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドなどが挙げられる。前記エラストマーとしては、例えば天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、シリコーンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。
【0040】
〔導電性線材の変形例〕
次に、図3から図5を参照して、導電性線材2aの変形例について説明する。図3の導電性線材2b、図4の導電性線材2c及び図5の導電性線材2dは、図2の導電性線材2aに代えて用いることができる。
【0041】
図3の導電性線材2bは、金属線である。導電性線材2bは、金属線であることで、導体の断面積を大きくすることがきる。その結果、電気抵抗を低くすることができる。
【0042】
導電性線材2bは、線状の導体11bを有する。導体11bは金属繊維を用いて構成される。前記金属繊維の主成分としては、例えば鉄、銅及びこれらの合金等が挙げられる。鉄合金としては、例えばステンレス鋼が挙げられる。導体11bは、単線であってもよく、複数の単線を撚り合わせた撚り線であってもよい。また、導体11bは、前記金属繊維の周囲に金属層をメッキしたメッキ線を含んでいてもよい。前記メッキ線としては、例えば錫メッキ軟銅線が挙げられる。
【0043】
導電性線材2bは、最表面に絶縁被覆13bを有する。導電性線材2bは、導体11bの外周に絶縁被覆13bが積層された多層体である。導電性線材2bは、前記金属繊維の外周に絶縁被覆13bが積層された2層体であってもよく、前記メッキ線の外周に絶縁被覆13bが積層された3層体であってもよい。絶縁被覆13bの主成分としては、図2の絶縁被覆13aの主成分と同様の合成樹脂及びエラストマーが挙げられる。
【0044】
図4の導電性線材2cは、金属蒸着層12cを有するテープである。具体的には、導電性線材2cは、シート状の基材層11cと、基材層11cに蒸着によって積層されている金属蒸着層12cとを有する。導電性線材2cは、金属蒸着層12cを有するテープであることで、製造コストを抑えることができる。また、導電性線材2cは、金属蒸着層12cを有するテープであることで、例えば幅に対して厚さの小さい断面略長方形状に設けられる。これにより、薄型化を図ることができる。
【0045】
基材層11cの主成分としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、フッ素樹脂等の合成樹脂や、セラミックなどが挙げられる。金属蒸着層12cの主成分としては、例えば銅、アルミニウム等が挙げられる。
【0046】
導電性線材2cは、最表面に絶縁被覆13cを有する。導電性線材2cは、基材層11c、金属蒸着層12c及び絶縁被覆13cの3層体である。絶縁被覆13cの主成分としては、図2の絶縁被覆13aの主成分と同様の合成樹脂及びエラストマーが挙げられる。
【0047】
図5の導電性線材2dは、有機繊維11aと、有機繊維11aを被覆する金属層12aとを有する。図5の導電性線材2dは、最表面に絶縁被覆を有しない以外、図2の導電性線材2aと同様の構成を有する。導電性線材2dは、最表面に絶縁被覆を有しないことで、犠牲材料1aが除去された状態(後述の伸縮配線20に形成された状態)における布地31等に対する滑り性を高めることができる。なお、導電性線材2dは螺旋状であるので、伸縮時に導電性線材2dの部分同士が比較的接触し難い。そのため、導電性線材2dは、絶縁被覆を有しない構成であっても、伸縮に起因する電気抵抗の変化を抑えやすい。
【0048】
なお、導電性線材2aの変形例としては、図3の導電性線材2b又は図4の導電性線材2cの絶縁被覆13b、13cを有しない構成を採用することも可能である。
【0049】
<利点>
当該導電性糸10は、鞘糸2が芯糸1の周囲に螺旋状に巻かれている状態で、布地やラバーシート等の伸縮部材に配置される。当該導電性糸10は、前記伸縮部材に配置された後に犠牲材料1aを溶解によって除去することで、伸縮配線として用いられる。当該導電性糸10は、前記伸縮部材に配置される際には犠牲材料1aが存在しているので、前記伸縮部材に配置された状態で導電性線材2aを所望の螺旋状に保ちやすい。また、当該導電性糸10は、伸縮配線として使用される際には犠牲材料1aが除去されているので、導電性線材2aの伸縮が芯糸1によって妨げられ難い。従って、当該導電性糸10は、伸縮性に優れる伸縮配線に形成できる。
【0050】
<伸縮配線>
図6の伸縮配線20は、図1の導電性糸10を用いて形成される。図6の伸縮配線20は、螺旋状の導電性線材2aを含む。より詳しくは、当該伸縮配線20は、螺旋状の導電性線材2aからなる。当該伸縮配線20は、図1の導電性糸10の犠牲材料1aを溶解させたものである。
【0051】
<利点>
当該伸縮配線20は、螺旋ピッチ等が適切に制御された状態で前記伸縮部材に配置される。そのため、当該伸縮配線20は伸縮性に優れる。また、当該伸縮配線20は、導電性線材2aが螺旋状であるので、所望の方向に曲がりやすい。当該伸縮配線20は、芯糸1の周囲に導電性線材2aを螺旋状に巻き付けて前記伸縮部材に配置されるので、例えば芯糸1の径を調節することで、螺旋ループの形状や螺旋ピッチ等を容易かつ適切に制御できる。
【0052】
<伸縮配線付き布地>
図7の伸縮配線付き布地30は、図6の伸縮配線20と、布地31とを備える。また、当該伸縮配線付き布地30は、伸縮性を有する保護シート32を備える。伸縮配線20は、螺旋状の導電性線材2aからなる。導電性線材2aは、布地31と保護シート32とに挟まれて保持されている。布地31は伸縮性を有する。布地31としては、例えば不織布、織物、編物等が挙げられる。保護シート32としては、例えばラバーシート、合成樹脂シート等が挙げられる。
【0053】
導電性線材2aは、伸長限界以下に保たれるように布地31に配置されている。換言すると、導電性線材2aは、伸長限界までは引き伸ばされないように布地31に配置されている。この構成によると、導電性線材2aの断線や損傷等を容易に抑制することができる。
【0054】
導電性線材2aは、例えば布地31に固定されて伸長限界以下に保たれてもよく、保護シート32に固定されて伸長限界以下に保たれてもよい。また、導電性線材2aは、長手方向に沿って散点的に布地31又は保護シート32に位置決めされ、位置決めされた部分同士の間がそれぞれ伸長限界以下に保たれるように保持されてもよい。導電性線材2aが長手方向に沿って散点的に位置決めされる場合、導電性線材2aは、布地31又は保護シート32対して固定される複数の固定点を有する。
【0055】
図7では、導電性線材2aは、複数の取付部33で布地に取り付けられている。取付部33は、それぞれ前述の固定点を構成している。布地31は、導電性線材2aの隣接する取付部33間の長さをそれぞれ伸長限界以下に保っている。この構成によると、当該伸縮配線付き布地30は、導電性線材2aを布地31の伸縮及び屈曲に容易に追随させつつ、導電性線材2aの断線や損傷等を容易に抑制することができる。
【0056】
図8及び図9を参照して、当該伸縮配線付き布地30の製造方法の一例について説明する。当該伸縮配線付き布地の製造方法は、導電性糸10を布地31に縫い付ける工程(縫製工程)と、前記縫製工程後に、導電性糸10を挟み込むように保護シート32を布地31に貼り付ける工程(貼付け工程)と、前記貼付け工程後に、導電性糸10の犠牲材料1aを除去する工程(除去工程)とを備える。
【0057】
図8に示すように、前記縫製工程では、例えば導電性糸10を下糸として、導電性糸10を布地31に縫い付ける。また、前記縫製工程では、上糸34としては、水溶性糸を用いる。
【0058】
図9に示すように、前記貼付け工程では、導電性糸10が配置されている側から保護シート32を布地31に貼り付ける。保護シート32の貼付け方法としては、特に限定されるものではないが、例えば熱圧着等が挙げられる。
【0059】
前記除去工程では、布地31に保護シート32が貼り付けられた状態で、犠牲材料1a及び上糸34を溶解によって除去する。これにより、図7の伸縮配線付き布地30が得られる。図7に示すように、当該伸縮配線付き布地30は、導電性線材2aが所定の間隔を空けて散点的に布地31に取り付けられている。導電性線材2aの具体的な取付構造は特に限定されるものではない。例えば導電性線材2aは、縫い付けによって布地31に取り付けられてもよく、その螺旋形状が布地31と絡まり合うことで布地31に取り付けられてもよい。当該伸縮配線付き布地30は、例えば前記縫製工程で、導電性糸10を布地31を厚さ方向に貫通するように縫い付けることで、導電性線材2aを布地31に取り付けやすい。
【0060】
<利点>
当該伸縮配線付き布地30は、伸縮配線20の伸縮性及び屈曲性に優れる。
【0061】
[第二実施形態]
<伸縮配線付き布地>
図10を参照して、図7とは異なる実施形態に係る伸縮配線付き布地40について説明する。図10では、布地41がグローブ用の生地として構成されている。より具体的には、布地41は、手の甲及び5本の指の背側部分を覆う背側生地として構成されている。当該伸縮配線付き布地40を備えるグローブは、例えば着用者の手の指の動きを検出可能なデータグローブとして構成される。当該伸縮配線付き布地40は、導電性線材2aを含む伸縮配線20と、布地41とを備える。また、当該伸縮配線付き布地40は、伸縮性を有する保護シート42を備える。伸縮配線20としては、図6の伸縮配線20が用いられている。なお、当該伸縮配線付き布地40において、導電性線材2aは歪センサーXに接続される配線として構成されている。
【0062】
導電性線材2aは、螺旋状である。導電性線材2aは、伸長限界以下に保たれるように布地41に配置されている。より具体的には、導電性線材2aは、伸長限界以下に保たれるように保護シート42に固定されている。
【0063】
当該伸縮配線付き布地40の製造方法の一例について説明する。当該伸縮配線付き布地の製造方法は、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の工程フィルム(不図示)に導電性糸10を固定する工程(固定工程)と、前記固定工程後に、導電性糸10を挟み込むように保護シート42を前記工程フィルムに貼り付ける工程(第1貼付け工程)と、前記第1貼付け工程後に、導電性糸10の犠牲材料1aと前記工程フィルムとを除去する工程(除去工程)と、前記除去工程後に、犠牲材料1aの除去によって形成された伸縮配線20を挟み込むように布地41を保護シート42に貼り付ける工程(第2貼付け工程)とを備える。
【0064】
前記固定工程では、例えば導電性糸10を前記工程フィルムの表面に配置したうえ、水溶性糸を用いて導電性糸10を前記工程フィルムに縫い付ける。前記除去工程では、保護シート42が前記工程フィルムに貼り付けられた状態で、犠牲材料1aと前記水溶性糸とを溶解によって除去する。これにより、前記工程フィルムが保護シート42から取り除かれる。なお、当該伸縮配線付き布地の製造方法は、前記固定工程で導電性糸10を前記工程フィルムに固定した後に、導電性糸10のうち配線として使用されない部分(歪センサーXが配置される部分)を打ち抜き加工する工程(打抜き工程)を備えていてもよい。
【0065】
<利点>
当該伸縮配線付き布地40は、図7の伸縮配線付き布地30と同様に、伸縮配線20の伸縮性及び屈曲性に優れる。
【0066】
[第三実施形態]
<導電性糸>
図11の導電性糸50は、溶解によって除去可能な犠牲材料51aを含む芯糸51と、芯糸51の周囲に螺旋状に巻かれた、導電性線材2aを含む鞘糸2とを備える。また、当該導電性糸50は、導電性線材2aを伸長限界以下の長さに保つストッパー糸51bをさらに備える。当該導電性糸50は、犠牲材料51aが溶解によって除去された状態で伸縮配線として用いられる。ストッパー糸51bは、芯糸51に含まれている。当該導電性糸50は、芯糸51がストッパー糸51bを含んでいる以外、図1の導電性糸10と同様の構成とすることができる。そのため、以下では芯糸51についてのみ説明する。
【0067】
(芯糸)
前述のように、芯糸51は、犠牲材料51aとストッパー糸51bとを含む。犠牲材料51aの具体的な構成としては、図1の犠牲材料1aと同様とすることができる。芯糸51は、1又は複数の犠牲材料51aと、1又は複数のストッパー糸51bとを撚糸加工、好ましくは合撚加工、することで形成される。
【0068】
ストッパー糸51bの材質としては、導電性線材2aの断線や伸び切りを抑制できる限り特に限定されるものではない。但し、ストッパー糸51bは、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維及びシリコーンゴムからなる群より選択される少なくも1種を含むことが好ましい。ストッパー糸51bは、前記繊維又はゴムを含むことで、導電性線材2aの伸縮性が阻害されることを抑制しつつ、導電性線材2aの断線や伸び切りを抑制しやすい。
【0069】
当該導電性糸50の単位長あたりにおけるストッパー糸51bの最大伸長長さは、導電性線材2aの最大伸長長さよりも小さい。この構成により、ストッパー糸51bは、導電性線材2aを伸長限界以下の長さに保つ。
【0070】
ストッパー糸51bは、伸縮性を有していていることが好ましい。ストッパー糸51bの伸長弾性率は、導電性線材2aの伸長弾性率よりも小さいことが好ましい。この構成によると、ストッパー糸51bによって導電性線材2aの断線や伸び切りをより確実に抑制できる。また、ストッパー糸51bが導電性線材2aの伸縮に及ぼす影響を低減することができる。
【0071】
<利点>
当該導電性糸50は、図1の導電性糸10と同様に、伸縮性に優れる伸縮配線に形成できる。また、当該導電性糸50は、導電性線材2aを伸長限界以下の長さに保つストッパー糸51bを備えているので、導電性線材2aの断線や伸び切りを容易かつ確実に抑制することができる。
【0072】
<伸縮配線>
図12の伸縮配線60は、図11の導電性糸50を用いて形成される。図12の伸縮配線60は、螺旋状の導電性線材2aを含む。当該伸縮配線60は、図11の導電性糸50の犠牲材料51aを溶解させたものである。当該伸縮配線60は、ストッパー糸51bを備える以外、図6の伸縮配線20と同様の構成を有する。図12に示すように、ストッパー糸51bは、導電性線材2aの伸縮方向に沿って導電性線材2aの螺旋内部に配置される。
【0073】
<利点>
当該伸縮配線60は、図6の伸縮配線20と同様に、伸縮性に優れると共に所望の方向に曲がりやすい。また、当該伸縮配線60は、ストッパー糸51bを備えているので、導電性線材2aの断線や伸び切りを容易かつ確実に抑制することができる。
【0074】
[第四実施形態]
<導電性糸>
図13の導電性糸70は、溶解によって除去可能な犠牲材料1aを含む芯糸1と、芯糸1の周囲に螺旋状に巻かれた、導電性線材72aを含む鞘糸72とを備える。また、当該導電性糸70は、導電性線材72aを伸長限界以下の長さに保つストッパー糸72bをさらに備える。当該導電性糸70は、犠牲材料1aが溶解によって除去された状態で伸縮配線として用いられる。ストッパー糸72bは、鞘糸72に含まれている。当該導電性糸70は、鞘糸72がストッパー糸72bを含んでいる以外、図1の導電性糸10と同様の構成とすることができる。そのため、以下では鞘糸72についてのみ説明する。
【0075】
(鞘糸)
前述のように、鞘糸72は、導電性線材72aとストッパー糸72bとを含む。導電性線材72aの具体的な構成としては、図1の導電性線材2aと同様とすることができる。また、ストッパー糸72bの具体的な構成としては、図11のストッパー糸51bと同様とすることができる。
【0076】
鞘糸72は、芯糸1の周囲にストッパー糸72bが螺旋状に巻かれ、さらにストッパー糸72bの外側から導電性線材72aが螺旋状に巻かれることで構成されていることが好ましい。この構成によると、当該導電性糸70の単位長あたりにおけるストッパー糸72bの最大伸長長さを、導電性線材72aの最大伸長長さよりも小さくしやすい。
【0077】
導電性線材72aとストッパー糸72bとの巻き方向は特に限定されるものではない。当該導電性糸70は、芯糸1の周囲にストッパー糸72bをS方向又はZ方向に巻き付け、さらに導電性線材72aをストッパー糸72bとは反対方向に巻き付けたダブルカバリング糸である場合、布地等の伸縮部材に配置する際に導電性線材72aが引き伸ばされることを抑制しやすい。
【0078】
当該導電性糸70の単位長あたりのストッパー糸72bの巻き数は、特に限定されるものではないが、導電性線材72aの巻き数よりも少ないことが好ましい。この構成によると、ストッパー糸51bによって導電性線材2aの断線や伸び切りを容易に抑制することができる。
【0079】
<利点>
当該導電性糸70は、図1の導電性糸10と同様に、伸縮性に優れる伸縮配線に形成できる。また、当該導電性糸70は、導電性線材72aを伸長限界以下の長さに保つストッパー糸72bを備えているので、導電性線材72aの断線や伸び切りを容易かつ確実に抑制することができる。
【0080】
<伸縮配線>
当該導電性糸70の犠牲材料1aを除去して得られた伸縮配線は、ストッパー糸72bが導電性線材72aの伸縮方向に沿って導電性線材72aの螺旋内部に配置される。当該伸縮配線は、図6の伸縮配線20と同様に、伸縮性に優れると共に所望の方向に曲がりやすい。また、当該伸縮配線は、ストッパー糸72bを備えているので、導電性線材72aの断線や伸び切りを容易かつ確実に抑制することができる。
【0081】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0082】
前記第一実施形態から第四実施形態に記載されている構成は、任意に組み合わせることが可能である。例えば図11の導電性糸50及び図13の導電性糸70は、図1の導電性糸10に代えて、図7の伸縮配線付き布地30又は図10の伸縮配線付き布地40に用いることができる。
【0083】
前記ストッパー糸は、導電性を有していてもよい。この構成によると、ストッパー糸の電気抵抗を測定することで、ストッパー糸の断線を検出することができる。その結果、前記導電性線材の劣化の有無等を把握しやすい。
【0084】
前記導電性線材の具体的な構成は、前述の実施形態に記載の構成に限定されない。例えば前記導電性線材は、カーボンナノチューブを含んで構成されてもよく、導電性高分子繊維を含んで構成されてもよく、有機繊維中に金属粉末や導電性高分子等を練り込んで構成されてもよい。また、前記導電性線材に含まれる繊維は、フィラメント(長繊維)であってもよく、ステープル(短繊維)であってもよい。
【0085】
当該導電性糸を布地等の伸縮部材に配置する手順は特に限定されるものではない。例えば当該導電性糸は、刺繍ミシン等を用いて伸縮部材に直接縫い付けられてもよい。また、当該導電性糸を下糸とし、他の糸を上糸として縫い付ける際に、前記他の糸として、溶解によって除去されない糸を用いることも可能である。さらに、当該導電性糸を縫い付ける際に伸縮部材が伸縮しないように、この伸縮部材に非伸縮性のシートを積層し、当該導電性糸を、伸縮部材とシートとに同時に縫い付けることも可能である。この場合でも、例えば非伸縮性のシートとして水溶性シートを用いたり、上糸として水溶性糸を用いることで、縫い付け後に非伸縮性のシートを伸縮部材から容易に分離することができる。
【0086】
当該伸縮配線は、必ずしも布地等の伸縮部材や保護シートなどに固定されていなくてもよい。例えば前記伸縮部材に当該伸縮配線を配置するための筒状の通路を形成し、当該伸縮配線をこの通路に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明の一態様に係る導電性糸は、伸縮性に優れる伸縮配線を形成するのに適している。
【符号の説明】
【0088】
1、51 芯糸
1a、51a 犠牲材料
2、72 鞘糸
2a、2b、2c、2d、72a 導電性線材
10、50、70 導電性糸
11a 有機繊維
11b 導体
11c 基材層
12a 金属層
12c 金属蒸着層
13a、13b、13c 絶縁被覆
20、60 伸縮配線
30、40 伸縮配線付き布地
31、41 布地
32、42 保護シート
33 取付部
34 上糸
51b、72b ストッパー糸
R 導電性線材の螺旋ループの平均外径
X 歪センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13