(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110735
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】殺菌装置及び殺菌方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20060101AFI20220722BHJP
G01N 5/02 20060101ALN20220722BHJP
【FI】
C02F1/32
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006334
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 江梨
(72)【発明者】
【氏名】冨田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】北川 尚男
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
(57)【要約】
【課題】殺菌装置における紫外線照射量低下時に、その原因を正しく判断することができる殺菌装置を提供すること。
【解決手段】液体の流路4を形成する流路部材3と、前記流路4を流れる液体に紫外線11を照射するための紫外線光源15と、前記液体と接触する前記紫外線光源15の接液部材の表面に付着するスケールの付着量を検知するスケール検知センサ20と、前記接液部材の表面を洗浄する洗浄機構と、前記スケール検知センサ20の測定データに基づいて、(1)前記紫外線光源の出力を調整する動作、(2)前記洗浄機構を稼働して接液部材の表面を洗浄する動作、(3)殺菌装置のメンテナンス方法を報知する動作、のいずれかの動作を行う制御部と、を具備する殺菌装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流路を形成する流路部材と、
前記流路を流れる液体に紫外線を照射するための紫外線光源と、
前記液体と接触する前記紫外線光源の接液部材の表面に付着するスケールの付着量を検知するスケール検知センサと、
前記接液部材の表面を洗浄する洗浄機構と、
前記スケール検知センサの測定データに基づいて、下記(1)、(2)又は(3)のいずれかの動作を行う制御部と、
を具備する殺菌装置。
(1)前記紫外線光源の出力を調整する動作
(2)前記洗浄機構を稼働して接液部材の表面を洗浄する動作
(3)殺菌装置のメンテナンス方法を報知する動作
【請求項2】
液体の流路を形成する流路部材と、
前記流路を流れる液体に紫外線を照射するための紫外線光源と、
前記液体と接触する前記紫外線光源の接液部材の表面に付着するスケールの付着量を検知するスケール検知センサと、
前記流路を透過した紫外線の強度を測定する紫外線強度計と、
前記接液部材の表面を洗浄する洗浄機構と、
前記スケール検知センサの測定データ及び前記紫外線強度計の測定データに基づいて、下記(1)、(2)又は(3)のいずれかの動作を行う制御部と、
を具備する殺菌装置。
(1)前記紫外線光源の出力を調整する動作
(2)前記洗浄機構を稼働して接液部材の表面を洗浄する動作
(3)殺菌装置のメンテナンス方法を報知する動作
【請求項3】
前記スケール検知センサの接液面と前記紫外線光源の接液面とが同一平面上にある、請求項1又は2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記スケール検知センサとしてQCM(水晶振動子マイクロバランス)センサを用いる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記紫外線光源は、複数のLED光源を有する1個の紫外線LEDモジュールを備えており、前記スケール検知センサは、前記複数のLED光源のうちの隣接する2個のLED光源の中心部から前記スケール検知センサの中心部までの距離が略等距離となる位置で、かつ、前記紫外線強度計に極力対向する位置で、かつ、前記紫外線LEDモジュールと重ならない位置に設置されている、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記紫外線光源は2個以上の紫外線LEDモジュールを備えており、前記スケール検知センサは、より多くの紫外線LEDモジュールによって囲まれ、前記スケール検知センサと前記紫外線LEDモジュールとの距離が略等距離であるようにし、前記紫外線強度計に極力対向する位置で、かつ、前記紫外線LEDモジュールと重ならない位置に設置されている、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記洗浄機構が、前記接液部材の表面をワイパー部材で払拭して洗浄する洗浄機構である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記殺菌装置における前記紫外線LEDモジュールが設置された面が角型であるか、または、前記殺菌装置の紫外線光源が1個の紫外線LEDモジュールからなっており、前記洗浄機構が紫外線LEDモジュール面の幅以上の長さのワイパーが紫外線LEDモジュール面の両端間を水平に往復運動するようにした洗浄機構である、請求項7に記載の殺菌装置。
【請求項9】
前記殺菌装置における前記紫外線LEDモジュールが設置された面が円形であり、かつ、前記紫外線光源が複数の紫外線LEDモジュールからなっており、前記洗浄機構が、前記ワイパーが紫外線LEDモジュール設置面の中心を中心軸として、前記紫外線LEDモジュール面全体を旋回運動するようにした洗浄機構である請求項7に記載の殺菌装置。
【請求項10】
前記洗浄機構が、前記接液部材の表面に超音波振動子を設けることによって前記接液部材の表面を超音波洗浄する洗浄機構である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の殺菌装置。
【請求項11】
前記超音波振動子が前記接液部材面上の、照射エリアの中心付近でかつ前記紫外線LEDモジュールと重ならない位置に少なくとも1個設けた、請求項10に記載の殺菌装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の殺菌装置を用いて、液体の殺菌を行うことを特徴とする殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置及び殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線には殺菌能力があることが知られており、医療や食品加工の現場などでの殺菌処理に紫外線を照射する装置が用いられている。また、水などの液体に紫外線を照射することで、液体を連続的に殺菌する装置も用いられている。
【0003】
浄水施設においては、被処理水にクリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物が混入するおそれがある場合には、厚生労働省の「クリプトスポリジウム対策指針 健水発第0330005号(平成19年3月30日)」に基づき、クリプトスポリジウムを殺菌するために浄水に紫外線を照射する紫外線殺菌装置を設置する必要がある。
【0004】
ところで、紫外線殺菌装置は、紫外線光源の劣化等に伴う紫外線の出力強度の低下により、流路を流れる液体の殺菌効果が低減する。したがって、紫外線光源は所望の殺菌効果が得られなくなったタイミングで交換することが望ましい。
特許文献1には
図17に示すような、紫外線殺菌装置の発光素子の交換時期を報知することを目的とした紫外線殺菌装置7Aが示されている。
殺菌装置7Aは、流路を形成する流路部材と、紫外線を発する発光素子を備えて流路を流れる液体に紫外線を照射する光源部12Aと、発光素子の点灯を制御し、発光素子を点灯した点灯時間を累積する制御部13Aと、制御部13Aにより累積された点灯時間が所定値以上となった場合に発光素子の交換時期であることを報知する表示部30とを具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術は、紫外線殺菌装置の運転中に、紫外線光源と被処理水とが接触する部分において紫外線光源の発光面をカバーする部材(以下「接液部材」という)に徐々に蓄積するスケールに由来する被処理水への紫外線照射量低下を検知できない。
なお、水処理装置の処理水出口に紫外線強度計を設置することで、被処理水への紫外線照射量をモニタリングすることはできるが、この手法では、検知した紫外線照射量がスケールだけでなく、被処理水の水質の変化や光源の寿命によっても影響を受けるため、紫外線照射量の低下の原因を見極められない。
本発明は、紫外線殺菌装置における紫外線照射量低下時に、その原因を正しく判断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、下記[1]に記載する通りの紫外線殺菌装置に関するものであり、また、本発明は下記[2]~[12]を実施形態として含む。
[1]液体の流路を形成する流路部材と、
前記流路を流れる液体に紫外線を照射するための紫外線光源と、
前記液体と接触する前記紫外線光源の接液部材の表面に付着するスケールの付着量を検知するスケール検知センサと、
前記接液部材の表面を洗浄する洗浄機構と、
前記スケール検知センサの測定データに基づいて、下記(1)、(2)又は(3)のいずれかの動作を行う制御部と、
を具備する殺菌装置。
(1)前記紫外線光源の出力を調整する動作
(2)前記洗浄機構を稼働して接液部材の表面を洗浄する動作
(3)殺菌装置のメンテナンス方法を報知する動作
[2]液体の流路を形成する流路部材と、
前記流路を流れる液体に紫外線を照射するための紫外線光源と、
前記液体と接触する前記紫外線光源の接液部材の表面に付着するスケールの付着量を検知するスケール検知センサと、
前記流路を透過した紫外線の強度を測定する紫外線強度計と、
前記接液部材の表面を洗浄する洗浄機構と、
前記スケール検知センサの測定データ及び前記紫外線強度計の測定データに基づいて、下記(1)、(2)又は(3)のいずれかの動作を行う制御部と、
を具備する殺菌装置。
(1)前記紫外線光源の出力を調整する動作
(2)前記洗浄機構を稼働して接液部材の表面を洗浄する動作
(3)殺菌装置のメンテナンス方法を報知する動作
[3]前記スケール検知センサの接液面と前記紫外線光源の接液面とが同一平面上にある、上記[1]又は[2]に記載の殺菌装置。
[4]前記スケール検知センサとしてQCM(水晶振動子マイクロバランス)センサを用いる、上記[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の殺菌装置。
[5]前記紫外線光源は、複数のLED光源を有する1個の紫外線LEDモジュールを備えており、前記スケール検知センサは、前記複数のLED光源のうちの隣接する2個のLED光源の中心部から前記スケール検知センサの中心部までの距離が略等距離となる位置で、かつ、前記紫外線強度計に極力対向する位置で、かつ、前記紫外線LEDモジュールと重ならない位置に設置されている、上記[2]乃至[4]のいずれか1項に記載の殺菌装置。
[6]前記紫外線光源は2個以上の紫外線LEDモジュールを備えており、前記スケール検知センサは、より多くの紫外線LEDモジュールによって囲まれ、前記スケール検知センサと前記紫外線LEDモジュールとの距離が略等距離であるようにし、前記紫外線強度計に極力対向する位置で、かつ、前記紫外線LEDモジュールと重ならない位置に設置されている、上記[2]乃至[4]のいずれか1項に記載の殺菌装置。
[7]前記洗浄機構が、前記接液部材の表面をワイパー部材で払拭して洗浄する洗浄機構である、[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の殺菌装置。
[8]前記殺菌装置における前記紫外線LEDモジュールが設置された面が角型であるか、または、前記殺菌装置の紫外線光源が1個の紫外線LEDモジュールからなっており、前記洗浄機構が紫外線LEDモジュール面の幅以上の長さのワイパーが紫外線LEDモジュール面の両端間を水平に往復運動するようにした洗浄機構である、上記[7]に記載の殺菌装置。
[9]前記殺菌装置における前記紫外線LEDモジュールが設置された面が円形であり、かつ、前記紫外線光源が複数の紫外線LEDモジュールからなっており、前記洗浄機構が、前記ワイパーが紫外線LEDモジュール設置面の中心を中心軸として、前記紫外線LEDモジュール面全体を旋回運動するようにした洗浄機構である上記[7]に記載の殺菌装置。
[10]前記洗浄機構が、前記接液部材の表面に超音波振動子を設けることによって前記接液部材の表面を超音波洗浄する洗浄機構である、上記[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の殺菌装置。
[11]前記超音波振動子が前記接液部材面上の、照射エリアの中心付近でかつ前記紫外線LEDモジュールと重ならない位置に少なくとも1個設けた、上記[10]に記載の殺菌装置。
[12]上記[1]乃至[11]のいずれか1項に記載の殺菌装置を用いて、液体の殺菌を行うことを特徴とする殺菌方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紫外線殺菌装置における紫外線照射量低下時に、その原因を正しく判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】紫外線光源の接液部材に付着するスケールの状態を示す図である。
【
図4】QCMセンサと紫外線光源の接液部材との位置関係を示す図である。
【
図5】本発明の殺菌装置の実施形態の一つを示す図である。
【
図6】本発明の殺菌装置の実施形態の一つを示す図である。
【
図7】本発明の殺菌装置の実施形態の一つを示す図である。
【
図8】本発明の殺菌装置の実施形態の一つを示す図である。
【
図9】本発明の殺菌装置の実施形態の一つを示す図である。
【
図10】本発明の殺菌装置の実施形態の一つを示す図である。
【
図11】本発明の殺菌装置における、ワイパーを用いた洗浄機構の実施形態の一つを示す図である。
【
図12】本発明の殺菌装置における、ワイパーを用いた洗浄機構の実施形態の一つを示す図である。
【
図13】本発明の殺菌装置における、ワイパーを用いた洗浄機構の実施形態の一つを示す図である。
【
図14】本発明の殺菌装置における、超音波振動子を用いた洗浄機構の実施形態の一つを示す図である。
【
図15】本発明の殺菌方法のフローチャートを示す図である。
【
図16】本発明の実施例で得られた、殺菌装置の運転時間-紫外線強度-周波数変化量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(殺菌装置)
本発明の殺菌装置の概要を
図1に示した殺菌装置100に基づいて説明する。
被処理水1は流路管3の流入口5から流路管3内に供給され流路4に沿って流れる。
殺菌装置100の底部には紫外線光源15が設けられており、被処理水1は流路4を流れる間に紫外線光源15で発生した紫外線11によって照射されて殺菌処理される。
殺菌処理により得られた処理水2は流路管3の流出口6から排出される。
殺菌装置100の底部にはスケール検知センサ(QCMセンサ)20が設けられており、殺菌装置100の頂部には紫外線強度計40が設けられている。
【0011】
(紫外線光源)
図2に紫外線光源として紫外線LEDを用いた場合の紫外線光源の模式図を示す(「紫外線照射装置JWRC技術審査基準(UV-LED編)(案)」の第2頁参照)。
LEDチップ12は紫外線を発光する半導体である。LEDパッケージ13はLEDチップ12をプリント配線基板18などに取り付けられるように外部接続用端子と一体化したものである。紫外線LEDモジュール15は、一つの光源として扱えるように、1個以上のLEDパッケージ13をプリント配線基板18などで平面的又は立体的に配列して、機械的、電気的及び光化学的構造部品を含む多数の要素で光源としたユニットまたはその集合体である。LED単位モジュール14は紫外線LEDモジュール15を構成する1個のLEDパッケージ13とレンズ16及びリフレクタ17などの光学的構造部品を組み合わせたものをいう。
紫外線LEDモジュール15には被処理水との接触面に接液部材19が設けられている。
以下では紫外線LEDモジュール15を「紫外線光源」ということがある。
【0012】
殺菌装置100の運転を長時間継続すると、被処理水1中の物質が接液部材19の表面に付着してスケールSを形成する。
スケールSが付着すると、被処理水1に照射される紫外線11の照射量が低下し、また、紫外線強度計40で測定される紫外線量も低下する。
そこで、被処理水1に照射される紫外線11の照射量を確保する必要がある。
そのための方法としては、紫外線光源15の出力を増強する方法と、スケールSを除去する方法とがある。
本発明においてはスケールSの付着量のデータを得るためにスケール検知センサ20を設ける。スケール検知センサ20としては水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサ(以下「QCMセンサ」という。)を用いることができる。
【0013】
(QCMセンサ)
QCMセンサ(スケール検知センサ)20の概要を
図3A、
図3Bに基づいて説明する。
図3Aは電極26にスケールSが付着する前の状態を示し、
図3Bは電極26にスケールSが付着した状態を示す。
QCMセンサ20は、水晶振動子25と、水晶振動子25の表面に形成される電極26とを有する。水晶振動子25の電極26に交流電源27によって交流電圧を印加し一定の周波数で振動させる。水晶振動子25は、その主共振周波数が水晶振動子25の板厚と反比例する現象を呈する。
電極26面にスケールSが付着するとQCMセンサ20は周波数が減少する現象を示す。QCMセンサ20は周波数が減少する現象から付着した質量を計測する方法であり、表面に存在する物質の付着物の質量に対応した周波数のシフトが起きる。このQCMセンサ20に付着したスケール量を周波数変化量として検知することで、紫外線光源15のスケール発生状況や経時変化をモニタリングすることができる。
【0014】
QCMセンサの原理について説明する。
周波数の変化量と付着物質の質量との関係は、Sauerbreyの式と呼ばれる下記式(1)で表される。
【数1】
Δf : 周波数変化量(Hz)
f
0 : 基本周波数(Hz)
A : 電極面積(cm
2)
ρq : 水晶の密度(2.648 g/cm
3)
μq : ATカット水晶の剛性率(2.947x10
11g/cm・s
2)
Δm : 質量変化量(g)
上記式(1)によると、付着物質量が増加すると周波数が減少し、付着物質量が減少すると周波数が増加する。この現象を利用し、水晶振動子の周波数変化量を検出することで、その電極上での物質の質量変化を計測することができる。
【0015】
(紫外線強度計)
紫外線強度計40は、流出口直近に照射される紫外線の照射強度を測定できる位置に設置する。具体的には、
図6、7、9,10に示すように、紫外線強度計40は流路4を挟んで紫外線光源15と対向する位置で、かつ、流出口直近の位置に配置されており、流路4を透過してきた紫外線11の強度を測定する。
また、
図5、8に示すものでは、紫外線強度計40は図示されていないが、紫外線光源15と対向する位置で、かつ流出口直近の位置に配置される。
紫外線強度計40は制御部24に接続されており、紫外線強度計40からの測定データ及びスケール検知センサ20からの測定データに基づいて、制御部24は所定の制御を行う。
【0016】
(スケール検知装置)
図4に基づいてQCMセンサ20を備えたスケール検知装置23の概要を説明する。
スケール検知装置23はQCMセンサ20、発振器21及び周波数検知器22からなる。QCMセンサ20のスケール検知部20Aは接液部材19と同じ高さに設置する。接液部材19の表面に付着するスケールSを検知するためには、接液部材19と同じ平面上にQCMセンサ20を配置する必要がある。
また、紫外線光源15が集光レンズ等を用いており、接液部材19が平面状でない場合には、接液部材19の最頂部の位置とQCMセンサ20のスケール検知部20Aの位置とを合わせる。
【0017】
QCMセンサは従来、真空蒸着等の真空中での膜厚のモニタリングに用いられていた。この場合は水晶上に設けられる電極の材料は電気を通す導体であれば適用可能であった。しかし、QCMセンサを水中で用いる場合には、QCMセンサ20の電極26の材料としては、被処理水中の成分と反応しにくい金、白金など化学的に安定なものを用いる。なお、被処理水の水質によっては、ステンレス鋼、ニッケル基合金、コバルト基合金など水溶液と反応しないことが予め分かっている金属を電極として用いることもできる。
【0018】
QCMセンサ20によって微量なスケール付着をモニタリングし、モニタリング結果に応じて、紫外線光源15の出力を増強することによって殺菌装置100の殺菌性能を維持することができる。またQCMセンサ20のモニタリング結果に基づいて、接液部材19の洗浄等のメンテナンス時期の判断が可能となり、殺菌装置100の運転コストを低減することができる。
【0019】
QCMセンサ20は、紫外線強度計40のモニタリング値とQCMセンサ20の検出値との相関をとるため、紫外線強度計40に極力対向する位置で、かつ、紫外線LEDモジュール15と重ならない位置に設置する。
【0020】
紫外線LEDモジュール15は通常複数個のLED光源12を有している。
図5に示すように複数個のLED光源12を有する紫外線LEDモジュール15を1個設ける場合には、QCMセンサ20は、隣接する2個のLED光源12の中心部から前記スケール検知センサ20の中心部までの距離dが略等距離となる位置で、かつ、前記紫外線強度計40に極力対向する位置で、かつ、前記紫外線LEDモジュール15と重ならない位置に設置される。
このように配置することにより、殺菌装置全体の接液部材19の状態を最も平均的にセンシングすることができ、かつ、QCMセンサ20がより多くのLED光源12の平均的な検知値を得ることができる。
【0021】
図8に示すように紫外線LEDモジュール15を2個以上設ける場合には、前記スケール検知センサ20は、より多くの紫外線LEDモジュール15によって囲まれ、前記スケール検知センサ20と前記紫外線LEDモジュール15との距離が略等距離であるようにし、前記紫外線強度計40に極力対向する位置で、かつ、前記紫外線LEDモジュール15と重ならない位置に設置される。
このような配置とすることにより、殺菌装置全体の接液部材19の状態を最も平均的にセンシングすることができ、かつ、QCMセンサ20がより多くのLED光源12の平均的な検知値を得ることができる。
【0022】
以下に、殺菌装置内における紫外線LEDモジュール15及びQCMセンサ20の配置の仕方について説明する。
図5~
図7に1個の紫外線LEDモジュール15を備えた殺菌装置を示す。
図5は、殺菌装置100における紫外線LEDモジュール15及びQCMセンサ20の配置状態を示している。
図5に示した実施形態においては、殺菌装置100の流路4の方向と紫外線11の照射方向とが直交するようにしたものである。
【0023】
図6は殺菌装置の流路管3を流路4が水平方向になるように配置し、かつ、被処理水1の流れる方向と紫外線11の照射方向とが同じ向きになるように配置した図である。
【0024】
図7は殺菌装置の流路管3を流路4が水平方向になるように配置し、かつ、被処理水1の流れる方向と紫外線11の照射方向とが対向するになるように配置した図である。
【0025】
図8~
図10に、2個以上の紫外線LEDモジュール15を備えた殺菌装置を示す。
図8~
図10を用いて紫外線LEDモジュール15及びQCMセンサ20の配置の仕方について説明する。
図8は殺菌装置100における被処理水の流路の方向が紫外線の照射方向と直交するように設けたものであり、殺菌装置100における紫外線LEDモジュール15及びQCMセンサ20の配置状態を示している。
【0026】
図9は殺菌装置の流路管3を流路4が水平方向になるように配置し、かつ、被処理水1の流れる方向と紫外線11の照射方向とが同じ向きになるように配置した図である。
【0027】
図10は殺菌装置の流路管3を流路4が水平方向になるように配置し、かつ、被処理水1の流れる方向と紫外線11の照射方向とが対向するになるように配置した図である。
【0028】
(洗浄機構)
本発明においては、紫外線LEDモジュール15の接液部材19の表面を清浄化するための洗浄機構を設ける。
図11に殺菌装置が紫外線LEDモジュール15を1個有する場合の洗浄機構の実施形態を示す。
本実施形態では洗浄機構としてワイパー30を用いる。
ワイパー30は、紫外線LEDモジュール15の面の幅以上の長さを有し、紫外線LEDモジュール15の面の一方の端部から他方の端部まで水平に往復運動するように駆動機構を設ける。
【0029】
図12に、殺菌装置の紫外線LEDモジュール15が設置された面が角形であり、紫外線LEDモジュール15を複数個設けた場合の洗浄機構を示す。
ワイパー30は、紫外線LEDモジュール15を複数配置した面の幅以上の長さを有し、紫外線LEDモジュール15を配置した面の一方の端部から他方の端部まで水平に往復運動できるように駆動機構を設ける。
【0030】
図13に、紫外線LEDモジュール15が設置された面が円形であり、かつ、紫外線LEDモジュール15を複数個設けた場合の洗浄機構の実施形態を示す。
本実施形態では、ワイパー30が紫外線LEDモジュール15の設置面の中心31を通る軸を回転軸として、紫外線LEDモジュール15の設置面に沿って旋回駆動するように駆動機構を設ける。
この場合、QCMセンサ20はより多くの紫外線LEDモジュール15に同一距離で囲まれた部分である紫外線LEDモジュール15の設置面の中心には設置できない。この場合には、各紫外線LEDモジュール15から同一距離ではないが各紫外線LEDモジュール15にできるだけ囲まれた部分に配置する。
【0031】
図14に洗浄手段として超音波振動子32を用いた実施形態を示す。
本実施形態では接液部材19の表面に付着したスケールを洗浄するために接液部材19の表面に超音波振動子32を設置する。
図14に示した殺菌装置は、被処理水の流路の方向と、紫外線の照射方向とが直交するようにしたものであり、紫外線LEDモジュール15を6個と、超音波振動子32を1個設けたものである。
超音波振動子32は紫外線LEDモジュール15が設置された接液部材19面上の、照射エリアのできるだけ中心部付近で、かつ、紫外線LED単位モジュール14直上でない位置に設置する。
図14に示した例では超音波振動子32を1個設置しているが、超音波振動子32は複数個を設置してもよい。
【0032】
QCMセンサの周波数変化量及び紫外線強度計の測定値に基づく本発明の殺菌方法による制御方法を下記の表1に示す。
また、本発明の殺菌方法による制御方法のフローシートを
図15に示す。
【表1】
【0033】
(殺菌装置のメンテナンス)
上記表1に示したスケール検知センサの周波数変化量データと紫外線強度データとの関係から、どのような問題が起こっているかを判断し、各問題の解決にどのメンテナンス作業(具体的には、ランプ交換、殺菌装置の開放点検等)が必要かを制御部がアラームで報知するように設定しておく。報知されたそのアラームに応じて、適宜ランプ交換、殺菌装置の開放点検等のメンテナンス作業を実施する。
【実施例0034】
以下に記載する実験装置及び運転条件で被処理水の殺菌処理を行った。
[装置]
直径:10cm
高さ:30cm
装置内の水の容積:2.4L
底面にLEDランプとQCMセンサを設置
LEDランプの対面に紫外線強度計を設置
[運転条件]
流量:72L/min
HRT(水理学的滞留時間):2秒
[実験方法]
(1)200日間連続で、被処理水として河川水を装置に通水した。
その間に次の1)、2)、3)の操作をおこなった。
1)60日目に、LEDランプを一時的に(5時間)消灯した。
2)120日目に、流入させる被処理水を一時的に(5時間)河川水から清水に変更した。
3)180日目に、LEDランプの点灯個数を2割増強した。
(2)QCMセンサにより光源エリアの周波数変化量を、また、紫外線強度計により装置内の被処理水の紫外線照射量をモニタリングした。
[実験結果]
図16に実験結果を示す。
操作1)、操作2)にかかわらず、周波数変化量は徐々に低下したことから、QCMによりスケールの蓄積を正しく検知できたことが分かる。
スケール付着由来による紫外線照射量低下を検知できることから、本発明による、操作3)のようなランプ出力増強等の装置制御や装置洗浄・メンテナンスの実施判断に対する有効性を確認できた。