(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110739
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】流体採取用架台
(51)【国際特許分類】
E21B 19/00 20060101AFI20220722BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
E21B19/00
E21B43/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006343
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 清志
(72)【発明者】
【氏名】本岡 功成
(72)【発明者】
【氏名】木村 康司
(72)【発明者】
【氏名】山岸 寛
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA08
2D129BA17
2D129EC31
(57)【要約】
【課題】配管の施工やメンテナンスを容易に行うことができる流体採取用架台を提案する。
【解決手段】流体採取用穴Hに配置される複数本の短配管S1の連結または取り外しを行うための流体採取用架台である。流体採取用穴Hの地上開口部H1を跨ぐように構築された架台本体100と、架台本体100の内部において昇降可能であるとともに、短配管S1を挟持可能な上側チャック50と、架台本体100の内部において上側チャック50の下方に設けられ、短配管S1を挟持可能な下側チャック60と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体採取用穴に配置される複数本の短配管の連結または取り外しを行うための流体採取用架台であって、
前記流体採取用穴の地上開口部を跨ぐように構築された架台本体と、
前記架台本体の内部において昇降可能であるとともに、前記短配管を挟持可能な上側チャックと、
前記架台本体の内部において前記上側チャックの下方に設けられ、前記短配管を挟持可能な下側チャックと、
を備えたことを特徴とする流体採取用架台。
【請求項2】
前記短配管を連結する場合に、
前記上側チャックは、上位置に移動されて前記短配管を挟持した後、下位置に移動され、
前記下側チャックは、前記上側チャックの下位置への移動に伴って下降した前記短配管を挟持し、
前記短配管を取り外す場合に、
前記上側チャックは、下位置に移動されて前記短配管を挟持した後、上位置に移動され、
前記下側チャックは、前記上側チャックの上位置への移動に伴って上昇した前記短配管を挟持することを特徴とする請求項1に記載の流体採取用架台。
【請求項3】
前記上側チャックの上側チャック部材と前記下側チャックの下側チャック部材とは、前記短配管の軸方向から見たときに周方向に異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体採取用架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体採取用架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在するエネルギーを利用した設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。
そのような設備の中で、地熱発電は、地下深部に存在する高温の流体である地熱流体を取り出し、地熱流体の蒸気や熱水によりタービンを回転させることにより発電する。
地熱流体を地上に取り出すための方法として、地熱井戸(生産井)の地下深部にある地熱流体を揚湯ポンプで吸い込み、揚湯管を通じて地上の設備に送る方法がある。揚湯管は、所定長さの短配管を例えば百本程度繋げて全長の長い配管として構成されている。地下深部に配管する際には、200t級の大型クレーンで全体を吊り下げながら短配管を1本ずつ繋げて地下深部に降ろしている。また、地熱発電プラント稼働後のメンテナンス時または揚湯管引き抜き時には、大型クレーンで揚湯管全体を引き上げつつ短配管を1本ずつ取り外している。短配管同士はネジの螺合により連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
短配管を1本ずつ繋げて地下深部に降ろす際、及びメンテナンス時または揚湯管引き抜き時に短配管を1本ずつ取り外す際には、生産井の開口部に配管全体を支持可能な支持構造物を設け、この支持構造物に揚湯管を一時的に預けた支持状態で螺合作業または螺合の解除作業を行う必要がある。支持構造物に揚湯管を預ける方法として、揚湯管の外周面にくさび形の保持部材を巻き付け、これを支持構造物との間に介在させることが考えられるが、保持部材は、重量があり着脱作業を作業員の人力で行うには重労働であった。また、メンテナンス後の再起動時に揚湯管の熱伸び調整(インペラースペーシング)を行う必要があり、これを作業員の人力で行うには重労働であった。
一方、地熱発電プラントは、山岳地帯に存在していることが多い。このため、大型クレーンの搬入が煩雑であり、大型クレーンを用いない施工やメンテナンスの方法が望まれていた。特に、冬期の降雪時期には、地熱発電プラントまで山道を通って大型クレーンを通行させることが難しく、故障、トラブル等により発電が停止した場合でも迅速に対応できなかった。
大型クレーンを用いずに揚湯管を引き上げる方法の一つとして、例えば、掘削リグ装置を利用することが考えられるが、堀削リグ装置は、ウィンチによるワイヤー式となるため、揚重重量を確保するために必然的にワイヤーの掛け数が多くなり装置が大掛かりとなるという問題が生じる。また、ワイヤーの掛け数が多くなると、ウィンチに対するワイヤー角度(フリートアングル)の関係で装置の高さが大きくなるという問題も生じる。
本発明は、前記した課題を解決し、配管の施工やメンテナンスを容易に行うことができる流体採取用架台を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、流体採取用穴に配置される複数本の短配管の連結または取り外しを行うための流体採取用架台である。流体採取用架台は、前記流体採取用穴の地上開口部を跨ぐように構築された架台本体と、前記架台本体の内部において昇降可能であるとともに、前記短配管を挟持可能な上側チャックと、前記架台本体の内部において前記上側チャックの下方に設けられ、前記短配管を挟持可能な下側チャックと、を備えている。
本発明では、上側チャック及び下側チャックを作動させることにより、短配管の連結または取り外しを行うことができる。例えば、下側チャックと上側チャックとで交互に短配管を挟持しつつ、上側チャックの昇降を組み合わせて、短配管を順に連結したり短配管を順に取り外したりできる。したがって、大型クレーンを用いることなく揚湯管等の配管の施工やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0006】
また、前記短配管を連結する場合に、前記上側チャックは、上位置に移動されて前記短配管を挟持した後、下位置に移動され、前記下側チャックが、前記上側チャックの下位置への移動に伴って下降した前記短配管を挟持することが好ましい。また、前記短配管を取り外す場合に、前記上側チャックは、下位置に移動させて前記短配管を挟持した後、上位置に移動され、前記下側チャックが、前記上側チャックの上位置への移動に伴って上昇した前記短配管を挟持することが好ましい。このように構成することで、短配管の連結または取り外しを容易に行うことができる。したがって、大型クレーンを用いることなく揚湯管等の配管の施工やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0007】
また、前記上側チャックの上側チャック部材と前記下側チャックの下側チャック部材とは、前記短配管の軸方向から見たときに周方向に異なる位置に配置されていることが好ましい。
このように構成することで、上側チャック部材と下側チャック部材との挟持位置の干渉を好適に回避しつつ、短配管の連結または取り外しを好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る流体採取用架台によれば、配管の施工やメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体採取用架台を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る流体採取用架台を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る流体採取用架台を示す図であり、(a)は
図1のIIIA-IIIA線に沿う拡大平面図、(b)は、
図1のIIIB-IIIB線に沿う拡大平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る流体採取用架台で用いられる揚湯管を構成する短配管の拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る流体採取用架台に備わる上側チャックを示す側面図であり、(a)は上側チャックを閉じた状態を示す側面図、(b)は上側チャックを開いた状態を示す側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る流体採取用架台に備わる下側チャックを示す側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る流体採取用架台に備わる下側チャックの移動を平面視で模式的に示す図であり、
図1のVII-VII線に沿う模式拡大図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る流体採取用架台に備わる上側チャックと下側チャックとの両方を閉じて短配管を挟持した状態を示す図であり、(a)は平面視で模式的に示す図、(b)は側面視で模式的に示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る流体採取用架台を用いて短配管を繋げる際の手順を示す図であり、(a)は上側チャックに連結されるストランドを持ち上げた状態を示す図、(b)は架台内に短配管を降ろして短配管のシャフト及び内管を繋ぐ際の様子を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る流体採取用架台を用いて短配管を繋げる際の手順を示す図であり、(a)は架台内に降ろした短配管の外管を繋ぐ際の様子を示す図、(b)は繋げた短配管を上側チャックで挟持した状態を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る流体採取用架台を用いて短配管を繋げる際の手順を示す図であり、(a)は上側チャックで挟持した短配管を下側チャックに預け渡す際の様子を示した図、(b)は短配管を繋げた後にストランドをストランド預け台に預けた状態を示す側面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る流体採取用架台を用いて試運転時やメンテナンス後のインペラースペーシング時の調整を行う際の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。以下では、地熱発電に利用する地熱流体を採取するための流体採取用架台について説明するが、流体採取用架台の用途を限定するものではない。
図1は本発明の実施形態に係る流体採取用架台を示す正面図であり、
図2は本発明の実施形態に係る流体採取用架台を示す側面図である。
図3は本発明の実施形態に係る流体採取用架台を示す図であり、(a)は
図1のIIA-IIA線に沿う拡大平面図、(b)は、
図1のIIB-IIB線に沿う拡大平面図である。
【0011】
本実施形態の流体採取用架台は、地熱流体を採取するための生産井(流体採取用穴)Hの内側に挿入される複数本の短配管S1(
図3,
図8(a)参照)の連結または取り外しを行うための架台である。流体採取用架台は、生産井Hの地上開口部H1を跨ぐように設置される架台本体100を備える。
架台本体100は、
図1,
図2に示すように、生産井Hの地上開口部H1に設けられた基礎F上に、鋼製のフレーム部材を櫓状に枠組みした構造を備えている。架台本体100は、ベースフレーム1,1と、ベースフレーム1,1の前部から立ち上がる左右一対の前柱2,2と、ベースフレーム1,1の後部から立ち上がる左右一対の後柱3,3(
図2参照)と、上下3つの作業フロア10,20,30と、昇降階段40とを備えている。また、架台本体100の内部には、上側チャック50と、下側チャック60と、作業クレーン70とが備わる。架台本体100の上部にはストランド預け台5が備わる。
【0012】
生産井Hの内側には、地下深部の地熱採取地点までケーシング配管90が延設されている。ケーシング配管90の上端部は、支持台95に支持されている。支持台95の両端部は、基礎F(生産井Hの地上開口部H1の開口縁部)に支持されている。ケーシング配管90には、図示しない地熱採取ポンプ及びこれに接続された配管P(
図4参照)が挿通される。ケーシング配管90を通じて、地熱採取ポンプ及び配管Pが地熱採取地点まで吊り降ろされる。地上開口部H1の基礎F上には、ケーシング配管90の挿入口が開口している。図示はしないが、ケーシング配管90の挿入口は、平面視で前柱2,2及び後柱3,3で囲われる領域の中央部に位置している。
上部の作業フロア10は、架台本体100の上部に設けられている。上部の作業フロア10は、前柱2,2間及び後柱3,3間に架設された上部前後フレーム11,11と、前後の柱2,3間に架設された上部左右フレーム12,12と、上部前後フレーム11,11間に架設された上部中央フレーム13,13と、メッシュ状の金属板からなるフロア部材14とを備えている。
上部の作業フロア10上には安全柵8が設けられている。また、上部の作業フロア10上には、ストランド預け台5が立設されている。
【0013】
上部中央フレーム13,13の前後中央部には、重量物を昇降可能とする周知構造のセンターホールジャッキ15,15が取り付けられている。センターホールジャッキ15,15は、上側チャック50を昇降するためのジャッキであり、軸線方向が上下方向となる向きで上部中央フレーム13,13から上方に向けて立ち上がっている。センターホールジャッキ15は、円筒状のシリンダ部16と、シリンダ部16の内部に挿入されシリンダ部16に対して挿抜可能な円筒状のロッド部17と、を有している。センターホールジャッキ15は、ロッド部17がシリンダ部16に対して上側に突出した姿勢と、ロッド部17がシリンダ部16に挿入された姿勢との間で昇降可能となっている。センターホールジャッキ15,15には、PC鋼より線からなるストランド18,18が備わる。各ストランド18,18の下端部は上側チャック50に連結されている。このようなセンターホールジャッキ15は図示しない油圧ユニットにより作動される。油圧ユニットは下方の作業フロア20の資材スペース26等を利用して配置される。
ストランド預け台5は、上側チャック50の不使用時にセンターホールジャッキ15のストランド18を預け置くための台であり、ストランド18を預け置くことができる高さを備えている。ストランド預け台5の上部には、側面視で半円弧状の載置部5a,5aが設けられている。
【0014】
作業フロア20は、上部の作業フロア10の下方に設けられるフロアであり、上位置に移動した上側チャック50の下方に配置される。作業フロア20は、
図3(a)に示すように、前柱2,2間及び後柱3,3間に架設された前後フレーム21,21と、前後の柱2,3間に架設された左右フレーム22,22と、メッシュ状の金属板からなるフロア部材24及び資材スペース26とを備えている。
図3(a)では、短配管S1の上端部に備わるカラー部材84も図示している。
フロア部材24の中央部には、上側チャック50の昇降を可能にする略四角形状の挿通孔25が開口形成されている。資材スペース26は、フロア部材24の前部、左部及び後部に連続するスペースであり、その後部右側部分が昇降階段40の同じ高さ位置に設けられた踊り場に繋がっている。
作業フロア20は、主として、上側チャック50で短配管S1を挟持する挟持作業、及び上側チャック50による短配管S1の挟持を解放する解放作業を行う際の作業足場として使用される。
【0015】
下部の作業フロア30は、架台本体100の下部に設けられるフロアであり、下側チャック60の上方に配置されている。作業フロア30は、
図3(b)に示すように、前柱2,2間及び後柱3,3間に架設された前後フレーム31,31と、前後の柱2,3間に架設された左右フレーム32,32と、長板状の金属板33aを複数敷き詰めてなるフロア部材33と、メッシュ状の金属板からなる下部資材スペース36とを備えている。
図3(b)では、短配管S1の上端部に備わるカラー部材84も図示している。
フロア部材33の中央部には、下側チャック60の左右スライドを可能にする略四角形状の挿通孔35が開口形成されている。挿通孔35には、下側チャック60の支持部材64及び下側チャック部材65の一部が挿通されている。金属板33aは、左右フレーム32,32に沿う図示しない支持部材に対して着脱可能である。これにより、必要に応じて金属板33aの撤去が可能である。
下部資材スペース36は、フロア部材33の前部、左部及び後部に連続するスペースであり、その後部右側部分が昇降階段40の同じ高さ位置に設けられた踊り場に繋がっている。
作業フロア30は、主として、短配管S1の連結作業あるいは短配管S1の連結解除作業を行う際の作業足場として使用される。
【0016】
図4は本実施形態に係る流体採取用架台で用いられる揚湯管を構成する短配管の拡大縦断面図である。揚湯管S(
図12参照)は、短配管S1を複数(例えば、百本程度)繋ぎ合わせて構成されている。短配管S1は、
図4に示すように、大径の外配管81と、外配管81の内側に円筒状のスペースSP1を空けて配置された内配管82と、内配管82の内側に配置されたシャフト部材83とを備えた多重構造を呈している。
外配管81と内配管82との間のスペースSP1は、地熱採取地点の揚湯ポンプ(不図示)から送られてくる熱水の採取路となる。外配管81の上端外周部には、カラー部材84が螺合されている。カラー部材84の下端面84aは、上側チャック50、下側チャック60で短配管S1を挟持した際(
図5(a)、
図6参照)に、上側チャック部材53の上端部または下側チャック部材65の上端部に引っ掛かり、落下防止部として機能する。外配管81の上端部及び下端部には、カラー部材84を介して他の短配管S1の外配管81が連結可能である。
【0017】
内配管82は、シャフト部材83を回転可能に支持している。内配管82は、複数の短管82aをベアリング85で連結して、内配管82とシャフト部材83との間に潤滑油を充填し、外配管81に相当する長さを有するように形成されている。ベアリング85の外周面には、雄ネジが形成されており、短管82aの端部の内周面には、雌ネジが形成されている。内配管82の上端部及び下端部には、ベアリング85を介して他の内配管82(複数の短管82aを連結してなるもの)が連結可能である。
シャフト部材83は、地上(架台本体100内)に設置される電動モータ120(
図12参照)の回転駆動力を地下深部の地熱採取地点に配置された揚湯ポンプ(不図示)に伝達するための部材である。シャフト部材83の上端部及び下端部には、ねじが形成されており、シャフト用カラー部材86を介して他のシャフト部材83が連結可能である。
以上のような短配管S1の外配管81、内配管82及びシャフト部材83は、図示しないワイヤー等の連結具を利用した落下防止部材により相互に連結されている。これにより、短配管S1を連結する際に短配管S1を縦向きの姿勢で吊り下げても、外配管81から内配管82及びシャフト部材83が落下しないようになっている。
【0018】
次に、上側チャック50と下側チャック60とについて説明する。
図5(a)は上側チャックを閉じた状態を示す側面図、
図5(b)は上側チャックを開いた状態を示す側面図である。また、
図6は下側チャックを示す側面図であり、
図7は下側チャックの移動を平面視で模式的に示す図である。また、
図8は上側チャックと下側チャックとの両方を閉じて短配管を挟持した状態を示す図であり、(a)は平面視で模式的に示す図、(b)は側面視で模式的に示す図である。
【0019】
上側チャック50は、
図5(a)(b)に示すように、前後方向に開閉するチャックである。上側チャック50は、センターホールジャッキ15,15(
図1,
図2参照)により、架台本体100内において昇降可能に設けられている。上側チャック50は、前後一対の上側チャックフレーム51,51と、各上側チャックフレーム51,51の左右方向の中央部に相互に対向するように設けられた上側チャック部材53,53(
図3(a)参照)とを備えている。各上側チャックフレーム51,51は、左右方向に延在する鋼材からなる。上側チャックフレーム51,51は、吊下げワイヤー57,57を介してセンターホールジャッキ15,15に挿通されたストランド18,18(
図1,
図2参照)に吊り下げられている。各上側チャックフレーム51の左部及び右部には、
図8(a)に示すように、対向する他の上側チャックフレーム51に向けて突出するブラケット部54,54が設けられている。ブラケット部54,54は、平面視で突端側を頂点とする略三角形状を呈している。対向して配置されるブラケット部54,54は、チャック部材53,53で短配管S1をチャックした状態で先端部同士が相互に重なり合うように構成されており、ピン部材55によってチャック状態がロックされる構造となっている。なお、上側チャックフレーム51,51には、チャックを開閉するための図示しない上側チャック開閉機構が設けられている。
【0020】
上側チャック部材53,53は、板状の金属製部材からなる。上側チャック部材53,53の内面は、短配管S1の外周面に密着するように平面視で円弧状に形成されている(
図3(a),
図8(a)参照)。上側チャック部材53,53は、上側チャック開閉機構の操作により上側チャックフレーム51,51同士を接近させることで、
図5(a)に示すように、短配管S1のカラー部材84の下側部分を径方向(前後方向)から挟持する。短配管S1を上側チャック部材53,53で挟持して吊り下げると、短配管S1の自重によって上側チャック部材53,53の上端部にカラー部材84の下端面84aが当接して引っ掛かり、短配管S1が脱落不能に保持される。この保持状態を維持して上側チャック50の昇降が行われる。
【0021】
下側チャック60は、
図1,
図2に示すように、作業フロア30の下方に設けられている。下側チャック60は、
図6,
図7に示すように、左右方向に開閉するチャックであり、上側チャック50に対してチャック方向が90度異なっている(
図8(a)参照)。下側チャック60を支持するフレーム構造は、
図7に示すように、前柱2,2間及び後柱3,3間に架設されたチャック用前後フレーム61,61と、前後の柱2,3間に架設されたチャック用左右フレーム62,62と、チャック用左右フレーム62,62間に架設された前後一対のレールフレーム67,67とを備えて構成されている。
下側チャック60は、左右一対の下側チャックフレーム63,63と、各下側チャックフレーム63,63の前後方向の中央部に立設された支持部材64,64と、相互に対向するように各支持部材64,64に設けられた下側チャック部材65,65(
図6参照)とを備えている。下側チャックフレーム63は、前後方向に延在する2つの鋼材63a,63aを複数の連結鋼材63bで連結してなる。各下側チャックフレーム63,63は、レールフレーム67,67上を左右方向に移動可能に設けられている。なお、下側チャックフレーム63,63には、チャックを開閉するための図示しない下側チャック開閉機構が設けられている。
【0022】
下側チャック部材65,65は、上側チャック部材53,53と同様に板状の金属製部材からなる。下側チャック部材65,65の内面も、短配管S1の外周面に密着するように平面視で円弧状に形成されている(
図3(b),
図8(a)参照)。下側チャック部材65,65は、支持部材64,64を介して下側チャックフレーム63,63の上方に配置されている。支持部材64,64及び下側チャック部材65,65は、
図8(a)に示すように、短配管S1の軸方向から見て、上側チャック50の上側チャック部材53,53と干渉しないように90度位置を異ならせて配置されている。これにより、
図8(b)に示すように、支持部材64,64及び下側チャック部材65,65は、上側チャック50の上側チャック部材53,53の側方に進入した状態で短配管S1の外周面を挟持可能である。つまり、下側チャック部材65,65は、上側チャック50との間で短配管S1を挟持しながら(短配管S1の脱落を防止しながら)短配管S1の受け渡しが可能となっている。
【0023】
作業クレーン70は、
図1,
図2に示すように、下側の作業フロア30の上方に設けられている。作業クレーン70は、主として、短配管S1の連結作業や連結解除作業時の油圧パワートング130(
図9(b),
図10(a)参照)のハンドリングに使用される。作業クレーン70は、前後左右の柱2,3間に枠状に設けられたクレーン用フレーム71と、クレーン用フレームに吊り下げられた前後移動用レール72,72と、前後移動用レール72,72に吊り下げられた左右移動用レール73と、左右移動用レール73に取り付けられたフック74とを備えている。
【0024】
次に、流体採取用架台による短配管S1を繋げる際の施工手順について説明する。
図9(a)は上側チャックに連結されるストランドを持ち上げた状態を示す図、
図9(b)は架台内に短配管を降ろして短配管のシャフト及び内管を繋ぐ際の様子を示す図である。また、
図10(a)は架台内に降ろした短配管の外管を繋ぐ際の様子を示す図、
図10(b)は繋げた短配管を上側チャックで挟持した状態を示す図である。また、
図11(a)は上側チャックで挟持した短配管を下側チャックに預け渡す際の様子を示した図、
図11(b)は短配管を繋げた後にストランドをストランド預け台に預けた状態を示す側面図である。
【0025】
はじめに、地熱採取地点に配置するポンプ(不図示)に短配管S1を1本連結し、これらを小型クレーンでケーシング配管90内に挿入する。この場合、接続した短配管S1の上端部を、治具等を用いて吊り上げ、下方のポンプを短配管S1を介して吊り下げるようにしてケーシング配管90内に降ろす。そして、短配管S1のカラー部材84が下側チャック60に近づいたら、下側チャック開閉機構を操作して、下側チャック60を閉じる。これにより、
図9(a)に示すように、下側チャック60により短配管S1が挟持される。なお、ポンプの仕様により、ポンプに連結した短配管S1の内配管82及びシャフト部材83は、外配管81の上方に突出する状態に配置される。この状態で、シャフト部材83の上端部にシャフト用カラー部材86を螺合により取り付ける。以下では、下側チャック60で挟持している短配管S1を「既設の短配管S1」と称する。
また、上側チャック50に連結されるストランド18を小型クレーンのフックU1で持ち上げ、上側チャック50を昇降可能状態に待機しておく。
【0026】
その後、図示しない資材置き場から次に繋げる短配管S1を治具を用いて他の小型クレーンのフックU2で吊り下げ、
図9(b)に示すように、架台本体100内に降ろす。このとき、上側チャック50は開いており、上側チャック50の内側を通じて短配管S1が架台本体100内に降ろされる。なお、吊り下げられた短配管S1は、外配管81、内配管82及びシャフト部材83が図示しない治具で連結されているので、内配管82及びシャフト部材83が外配管81から必要以上に下方へ垂れ下がることがない。
そして、作業クレーン70に油圧パワートング130を吊り下げ、既設の短配管S1のシャフト部材83を油圧パワートング130で挟持して本締めする。
【0027】
その後、クレーンのフックU2を下降させて短配管S1のシャフト部材83を、既設の短配管S1のシャフト用カラー部材86に螺合させてシャフト部材83,83同士を連結する。シャフト部材83,83同士の連結が済んだら、既設の短配管S1の内配管82を油圧パワートング130で挟持して本締めし、クレーンのフックU2を下降させて短配管S1の内配管82を、既設の短配管S1の内配管82のベアリング85(
図4参照)に螺合させて内配管82,82同士を連結する。内配管82,82同士を連結が済んだら、
図10(a)に示すように、クレーンのフックU2を下降させて短配管S1の外配管81を、既設の短配管S1の外配管81のカラー部材84に螺合させて外配管81,81同士を連結する。
その後、上側チャック開閉機構を操作して上側チャック50を閉じ、繋げた短配管S1を上側チャック50で挟持する。そして、上側チャック50のフランジ部54,54にピン部材55を差し込んで(
図3(a)参照)、上側チャック50を閉じた状態にロックする。
【0028】
次に、
図10(b)に示すように、下側チャック開閉機構を操作して下側チャック60を開く。そして、センターホールジャッキ15,15を油圧ユニットにより作動させて、ストランド18,18を下降させ、上側チャック50を下降させる。この場合、
図11(a)に示すように、センターホールジャッキ15,15を所定回数ストロークさせることにより、上側チャック50を下側チャック60の預け渡し位置(下位置)まで下降させることができる。なお、上側チャック50の下降に合わせてクレーンのフックU2を適宜下降させてストランド18,18の弛みを取り除く。ここで、下側チャック60の預け渡し位置とは、
図8(a)(b)に示すように、下側チャック60の下側チャック部材65,65が上側チャック50の上側チャック部材53,53の周方向の側方に入り込んで短配管S1のカラー部材84の下方部分を挟持可能な位置である。
【0029】
下側チャック60の預け渡し位置まで上側チャック50を下降させたら、
図11(a)に示すように、下側チャック60を閉じて下側チャック60の下側チャック部材65,65で短配管S1を挟持する(
図3(b)、
図8(a)(b)参照)。この状態では、上側チャック50と下側チャック60との両方で短配管S1を挟持している。
その後、上側チャック50を開いて上側チャック50による挟持状態を解除する。これにより、短配管S1が上側チャック50から下側チャック60に預け渡される。そして、
図11(b)に示すように、センターホールジャッキ15,15を作動させて、上側チャック50を上位置に移動させる。なお、上側チャック50の上昇に合わせてクレーンのフックU2を適宜上昇させてストランド18,18の弛みを取り除く。なお、センターホールジャッキ15,15を弛め、クレーンのフックU2により上側チャック部材53,53を上方へ移動することも可能である。
【0030】
以上のような短配管S1を繋ぐ作業を繰り返し行うことにより、地下深部の地熱流体採取地点までポンプ及び複数の短配管S1からなる配管Sを降ろすことができる。短配管S1を繋ぐ作業が終了したら、クレーンK1を操作してストランド18,18をストランド預け台5の載置部5a,5aに載置する。
なお、メンテナンス時等に配管Sを引き上げて短配管S1を1本ずつ取り外す場合には、短配管S1を繋ぐときの手順と逆の手順で上側チャック50、下側チャック60等を作動させることにより行うことができる。
【0031】
図12は流体採取用架台を用いて試運転時やメンテナンス後のインペラースペーシング時の調整を行う際の様子を示す図である。上記のようにして所定本数の短配管S1を繋いだら、
図12に示すように、ケーシング配管90の支持台95の上側にモータユニット150を取り付けて、ポンプ及び配管Sを用いた地熱流体の採取試運転を行う。この場合、モータユニット150のモータ軸151にけん引治具152を取り付け、このけん引治具152を上側チャック50で挟持し、センターホールジャッキ15,15で上方に引き上げる操作を行う。これにより、配管S内を地熱流体が通流することによるシャフト部材83等(不図示)の熱膨張による伸長を好適に調整することができる。
【0032】
以上説明した本実施形態によれば、上側チャック50及び下側チャック60を作動させることにより、短配管S1の連結または取り外しを容易に行うことができる。つまり、下側チャック60と上側チャック50とで交互に短配管S1を挟持しつつ、上側チャック50の昇降を組み合わせて、短配管S1を順に連結したり短配管S1を順に取り外したりできる。したがって、200t級の大型クレーンを用いることなく配管Sの施工やメンテナンスを容易に行うことができる。
また、上側チャック50のチャック部材と下側チャック60のチャック部材とは、短配管S1の軸方向から見たときに周方向に異なる位置に配置されているので、上側チャック部材53,53と下側チャック部材65,65との挟持位置の干渉を好適に回避しつつ、短配管S1の連結または取り外しを容易に行うことができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、2つの小型クレーンを用いて短配管S1の吊り下げやストランド18,18の吊り下げを行ったが、これに限られることはなく、一つのクレーンを使い回して行ってもよい。
また、上側チャック50は、センターホールジャッキ15,15により昇降する構成を示したが、これに限られることはなく、他のジャッキ装置等で代用してもよい。
また、上側チャック50の上側チャック部材53,53と下側チャック60の下側チャック部材65,65とは、短配管S1の軸方向から見て周方向に90度異ならせて配置したが、これに限られることはなく、上側チャック部材53,53と下側チャック部材65,65とが干渉しなければ、周方向に適宜の角度異ならせて配置してもよい。
また、上側チャック50及び下側チャック60の形状等は、前記実施形態のものに限られることはなく、種々の形状のものを採用することができる。
また、前記実施形態では、地熱発電に利用する地熱流体を採取するための流体採取用架台について説明したが、これに限られることはなく、温泉に利用する流体を採取したり、油田から石油を含む鉱物油を採油したりする架台としても用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
50 上側チャック
53 上側チャック部材
60 下側チャック
65 下側チャック部材
100 架台本体
H 生産井(流体採取用穴)
H1 地上開口部
S 揚湯管(配管)
S1 短配管