(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110797
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】高所作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20220722BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20220722BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20220722BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B66F9/24 F
B66F11/04
B66F9/06 Q
B66C23/88 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006424
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】宮古 尚
(72)【発明者】
【氏名】大場 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡安 良王
【テーマコード(参考)】
3F205
3F333
【Fターム(参考)】
3F205AA20
3F205CA03
3F205CA09
3F205HA02
3F205HA03
3F205HA06
3F205HB01
3F205HC02
3F333AA09
3F333AB04
3F333AC12
3F333FA09
3F333FA23
3F333FD06
3F333FD07
3F333FD08
3F333FD09
(57)【要約】
【課題】作業の安全性を向上させることが可能な高所作業車の安全装置を提供する。
【解決手段】高所作業車の安全装置が、ロープを介してウインチ機構(ウインチ駆動モータ78)に作用するウインチ荷重を検出するウインチ荷重算出部205と、ウインチ荷重算出部205により検出されたウインチ荷重が予め設定された規制荷重を超えるとウインチ機構の巻き取り作動を規制するウインチ作動規制部206とを備え、規制荷重は、ウインチ機構の巻き取り作動により水平方向成分を有する外側方への引張力(例えば、斜め下方向の外方への引張力)がロープに作用しても車体が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、前記車体に少なくとも起伏動可能に設けられたブームと、前記ブームの先端部に設けられた作業台と、前記ブームの先端部に上下方向に揺動可能に設けられたサブブームと、前記サブブームの先端部に設けられたシーブと、前記シーブにかけられたロープの巻き取り作動および繰り出し作動を行うウインチ装置とを備えた高所作業車の安全装置であって、
前記ロープを介して前記ウインチ装置に作用するウインチ荷重を検出するウインチ荷重検出部と、
前記ウインチ荷重検出部により検出されたウインチ荷重が予め設定された規制荷重を超えると前記ウインチ装置の前記巻き取り作動を規制するウインチ作動規制部とを備え、
前記規制荷重は、前記ウインチ装置の前記巻き取り作動により水平方向成分を有する外側方への引張力が前記ロープに作用しても前記車体が転倒しない場合のウインチ荷重に設定されることを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
前記規制荷重は、前記ウインチ装置の前記巻き取り作動により水平方向の外方への引張力が前記ロープに作用しても前記車体が転倒しない場合のウインチ荷重に設定されることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安全装置。
【請求項3】
前記ウインチ荷重検出部により検出されたウインチ荷重が前記規制荷重を超えると前記ウインチ作動規制部が前記ウインチ装置の前記巻き取り作動を規制する規制モードと、前記ウインチ作動規制部が非作動状態になる非規制モードとに切り替える操作が行われる切り替えスイッチと、
前記車体に作用するモーメントを検出するモーメント検出部と、
前記作業台の位置を検出する位置検出部と、
前記切り替えスイッチの前記操作により前記非規制モードに切り替えられた場合に、前記モーメント検出部により検出されたモーメントが予め設定された規制モーメントを超えるような前記ブームの作動を規制し、前記切り替えスイッチの前記操作により前記規制モードに切り替えられた場合に、前記位置検出部により検出された前記作業台の位置が予め設定された許容作業範囲を超えるような前記ブームの作動を規制するブーム作動規制部とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の高所作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体上に設けられたブームの先端部に作業台およびサブブームを有する吊り上げ装置が設けられる高所作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の高所位置で作業を行うための高所作業車には、車体上に少なくとも起伏動可能に取り付けられたブームと、そのブームの先端部に作業台支持部材を介して取り付けられた作業台と、作業台支持部材の上部に設けられた吊り上げ装置とを備えて構成されるものが知られている。吊り上げ装置は、作業台支持部材の上部に水平旋回可能に設けられた旋回部と、その旋回部上に取り付けられたサブブーム支持部材と、サブブーム支持部材に上下に揺動可能に取り付けられたサブブームとを有して構成される。このような吊り上げ装置は、ウインチ機構をさらに備え、このウインチ機構によりサブブーム先端のシーブ(案内滑車)にかけられたロープの巻き取りおよび繰り出しを行って作業用の部材等の吊り上げ作業を行うために用いられる(例えば、特許文献1~3を参照)。
【0003】
このような高所作業車においては、ブームから車体に作用するモーメントが過大となって車体が不安定となることを防止する安全装置が設けられている。この安全装置の一例としては、モーメントが大きくなって所定の規制値に達した場合に、該モーメントが増大する方向へのブームの作動を規制するモーメントリミッタ制御が知られている。車体に作用するモーメントは、例えば、ブームを上下に起伏動させる起伏シリンダの軸力の大きさに基づいて算出される。そのため、起伏シリンダの上端部には、起伏シリンダに作用する軸力を検出する軸力検出器が設けられており、その検出情報はブームの作動を制御するコントローラに入力される。そして、コントローラでは、軸力検出器により検出される起伏シリンダの軸力に基づいてブームから車体に作用するモーメントを算出し、ブームの作動を規制するか否かを判断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-219500号公報
【特許文献2】特許第3234942号公報
【特許文献3】特許第4349834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吊り上げ装置を用いれば、先端側が斜め上方を向く斜め位置にサブブームを揺動変位させ、ロープをシーブから斜め下方向に繰り出した状態で、ウインチ機構によりロープの巻き取りを行って電線等を斜め上方向に引っ張る作業(以下、斜め引き作業と称する)を行うことも可能である。斜め引き作業を行う場合、電線等からの斜め下方向の反力がロープを介してブームに作用する。しかしながら、水平方向成分を有する斜め下方向の反力に応じて起伏シリンダに作用する軸力は、ブームの起伏角度によって変化するため、軸力検出器を用いて電線等からの斜め下方向の反力を正確に検出することが困難である。そのため、車体に作用するモーメントを正確に算出できずに、車体が不安定になって作業の安全性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、作業の安全性を向上させることが可能な高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る高所作業車の安全装置は、走行可能な車体と、前記車体に少なくとも起伏動可能に設けられたブームと、前記ブームの先端部に設けられた作業台と、前記ブームの先端部に上下方向に揺動可能に設けられたサブブームと、前記サブブームの先端部に設けられたシーブと、前記シーブにかけられたロープの巻き取り作動および繰り出し作動を行うウインチ装置とを備えた高所作業車の安全装置であって、前記ロープを介して前記ウインチ装置に作用するウインチ荷重を検出するウインチ荷重検出部(例えば、実施形態におけるウインチ荷重算出部205およびウインチ油圧検出器255等)と、前記ウインチ荷重検出部により検出されたウインチ荷重が予め設定された規制荷重を超えると前記ウインチ装置の前記巻き取り作動を規制するウインチ作動規制部とを備え、前記規制荷重は、前記ウインチ装置の前記巻き取り作動により水平方向成分を有する外側方への引張力が前記ロープに作用しても前記車体が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。
【0008】
上述の高所作業車の安全装置において、前記規制荷重は、前記ウインチ装置の前記巻き取り作動により水平方向の外方への引張力が前記ロープに作用しても前記車体が転倒しない場合のウインチ荷重に設定されることが好ましい。
【0009】
上述の高所作業車の安全装置において、前記ウインチ荷重検出部により検出されたウインチ荷重が前記規制荷重を超えると前記ウインチ作動規制部が前記ウインチ装置の前記巻き取り作動を規制する規制モード(例えば、実施形態における巻き取りモード)と、前記ウインチ作動規制部が非作動状態になる非規制モード(例えば、実施形態における高所モード)とに切り替える操作が行われる切り替えスイッチ(例えば、実施形態におけるモード切り替えスイッチSW9)と、前記車体に作用するモーメントを検出するモーメント検出部(例えば、実施形態におけるモーメント算出部203および軸力検出器254等)と、前記作業台の位置を検出する位置検出部(例えば、実施形態における位置算出部204、ブーム起伏角度検出器251、ブーム長さ検出器252、およびブーム旋回角度検出器253等)と、前記切り替えスイッチの前記操作により前記非規制モードに切り替えられた場合に、前記モーメント検出部により検出されたモーメントが予め設定された規制モーメントを超えるような前記ブームの作動を規制し、前記切り替えスイッチの前記操作により前記規制モードに切り替えられた場合に、前記位置検出部により検出された前記作業台の位置が予め設定された許容作業範囲を超えるような前記ブームの作動を規制するブーム作動規制部とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウインチ作動規制部における規制荷重は、ウインチ装置の巻き取り作動により水平方向成分を有する外側方への引張力がロープに作用しても車体が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。これにより、水平方向成分を有する外側方への引張力として、斜め下方向の外方への引張力がロープに作用しても車体が転倒しない場合のウインチ荷重を基準に、ウインチ作動規制部によりウインチ装置の巻き取り作動が規制されることで、斜め引き作業を行う場合でも、車体が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0011】
また、吊り上げ装置を用いれば、先端側が垂直上方(鉛直上方)を向く垂直位置にサブブームを揺動変位させ、ロープをシーブから水平方向に繰り出した状態で、ウインチ機構によりロープの巻き取りを行って電線等を水平方向に引っ張る作業(以下、水平引き作業と称する)を行うことも可能である。水平引き作業を行う場合、ウインチ作動規制部における規制荷重は、ウインチ装置の巻き取り作動により水平方向の外方への引張力がロープに作用しても車体が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。これにより、水平方向成分を有する外側方への引張力として、水平方向の外方への引張力がロープに作用しても
車体が転倒しない場合のウインチ荷重を基準に、ウインチ作動規制部によりウインチ装置の巻き取り作動が規制されることで、水平引き作業を行う場合でも、車体が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0012】
なお、ブームに作用する電線等からの斜め下方向の反力は、反力の水平方向成分と垂直方向成分とに分かれる。これにより、ブームに作用する反力の一部は、圧縮力としてブームで受け止められるため、ブームの起伏角度およびウインチ荷重が同じ場合、ブームに作用する電線等からの水平方向の反力は、水平引き作業を行う場合よりも斜め引き作業を行う場合の方が小さくなる。そのため、水平方向の外方への引張力がロープに作用しても車体が転倒しない場合のウインチ荷重を基準に、ウインチ作動規制部によりウインチ装置の巻き取り作動が規制されることで、斜め引き作業を行う場合でも、車体が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0013】
また、ブーム作動規制部は、非規制モードに切り替えられた場合に、モーメント検出部により検出されたモーメントが予め設定された規制モーメントを超えるようなブームの作動を規制し、規制モードに切り替えられた場合に、位置検出部により検出された作業台の位置が予め設定された許容作業範囲を超えるようなブームの作動を規制する。これにより、ウインチ作動規制部によりウインチ装置の巻き取り作動を規制することが可能な規制モードに切り替えられた場合に、ブーム作動規制部により作業台の位置に基づいてブームの作動が規制されるため、斜め引き作業(および水平引き作業)を行う場合でも、車体に作用するモーメントを正確に算出できずに車体が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る安全装置を備えた高所作業車の側面図である。
【
図2】上記高所作業車の作業台および吊り上げ装置を示す図であり、(A)は側面図、(B)は斜視図である。
【
図3】上記作業台に備えられた上部操作装置を示す図である。
【
図4】上記高所作業車に備えられた安全装置の機能ブロック図である。
【
図5】上記高所作業車における許容作業範囲の一例を示す模式図である。
【
図6】上記高所作業車の作業台および吊り上げ装置を示す斜視図である。
【
図7】上記吊り上げ装置を用いて斜め引き作業を行う場合を示す斜視図である。
【
図8】上記吊り上げ装置を用いて水平引き作業を行う場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る高所作業車1を
図1に示しており、まず、この図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0016】
高所作業車1は、
図1に示すように、車体2の前部に運転キャブ7を有し、車体2の前後に配設された左右一対の前輪5fおよび後輪5rにより走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、前輪5fおよび後輪5rが配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0017】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置が設けられている。ジャッキ装置は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた
状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0018】
車体2における運転キャブ7後方の架装領域には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が設けられている。
【0019】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30bおよび先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0020】
先端ブーム30cの先端部には、
図2(A)および(B)に示すように、揺動ピン33により垂直ポスト32が上下方向に揺動自在に取り付けられている。垂直ポスト32は、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏角度に拘わらず常に垂直姿勢が保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。
【0021】
垂直ポスト32の上部には、作業台ブラケット38が垂直ポスト32に対して旋回可能(水平旋回可能)に取り付けられ、この作業台ブラケット38の側部に作業台昇降装置36を介して上方が開口した箱状の作業台40が取り付けられている。垂直ポスト32の上部と作業台ブラケット38とは、カバー35によりその周りを覆われている。カバー35の内部には首振りモータ34が設けられており、首振りモータ34を駆動させることにより図示しないウォームギヤおよびホイールギヤ等からなる回転伝達機構を介して作業台ブラケット38および作業台40を、垂直ポスト32まわりに水平旋回(首振り作動)させることができるように構成されている。
【0022】
前述したように、垂直ポスト32は常に垂直姿勢が保持されるようにレベリング制御されているため、作業台40の床面はブーム30の起伏角度に拘わらず常に水平に保持されるようになっている。作業台昇降装置36は、昇降シリンダ(図示せず)を有して構成されており、この昇降シリンダを駆動することにより作業台ブラケット38に対して作業台40を昇降移動させるように構成されている。
【0023】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーやスイッチ等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。
【0024】
車体2に設けられた高所作業装置等(上述の旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、伸縮シリンダ31、起伏シリンダ23、首振りモータ34および作業台昇降装置36の昇降シリンダ(図示せず)等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ55」と称する)を制御するコントローラ200(
図4を参照)と、上述した
油圧アクチュエータ55を作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50(
図4を参照)と、高所作業装置等を駆動するための車体2のエンジンE(
図4を参照)等から構成される。
【0025】
油圧ユニット50は、
図4に示すように、油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51を駆動させるためのパワーテイクオフ機構52と、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータ55に供給する作動油の供給方向および供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。パワーテイクオフ機構52は、車体2のエンジンEの動力を変速して後輪5rに伝達するトランスミッション(図示せず)に組み込まれている。運転キャブ7内に配設されたPTO操作レバー(図示せず)がオフ位置からオン位置に操作されると、パワーテイクオフ機構52によってエンジンEによる駆動先が後輪5rから油圧ポンプ51に切り替えられ、エンジンEの動力を利用して油圧ポンプ51が駆動される。制御バルブ53は、コントローラ200からの制御信号(上部操作装置45および下部操作装置27からの操作信号に応じた制御信号)に応じて油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータ55に供給される作動油の供給方向および供給量を制御し、各油圧アクチュエータ55の作動方向および作動速度を制御する(ジャッキ装置および高所作業装置の作動方向および作動速度を制御する)。
【0026】
また、詳細な図示を省略するが、油圧ユニット50には、電動モータ(図示せず)により駆動される第2の油圧ポンプ(図示せず)が設けられている。電動モータは、架装部バッテリ59からインバータを介して供給される電力により回転駆動される。油圧ユニット50は、車体2のエンジンEおよびパワーテイクオフ機構52により駆動される(第1の)油圧ポンプ51に代えて、コントローラ200からの制御信号に応じて第2の油圧ポンプから各油圧アクチュエータ55に供給される作動油の供給方向および供給量を制御し、各油圧アクチュエータ55の作動方向および作動速度を制御することができるように構成されている。
【0027】
また、
図2(A)に示すように、垂直ポスト32の上端部には、吊り上げ装置70が設けられている。吊り上げ装置70は、垂直ポスト32の上端部に水平旋回可能に設けられた旋回体71と、旋回体71の上部に上下方向へ揺動自在に取り付けられたサブブーム支持部材72と、サブブーム支持部材72の上部に着脱可能に取り付けられる長尺状のサブブーム74とを有して構成されている。サブブーム74は、例えば高所作業車1の移動時などには、サブブーム支持部材72から取り外されて、
図1に示すように基端ブーム30aに取り付けられる。
【0028】
旋回体71は、垂直ポスト32の上端部に旋回可能に取り付けられた旋回部材71aと、旋回部材71aの周りを覆うカバー71bとを有して構成される。旋回部材71aは、内部に設けられたウインチ旋回モータ76(
図4を参照)を駆動させることにより作業台40(作業台ブラケット38)の旋回軸Aと同軸上で旋回可能に設けられている。旋回部材71aの上部には、水平方向に延びる揺動ピン72aが設けられており、この揺動ピン72aを中心として上下方向に揺動自在にサブブーム支持部材72が取り付けられている。
【0029】
サブブーム支持部材72は、旋回体71のカバー71bの内部に設けられたサブブーム起伏シリンダ77(
図4を参照)を駆動させることにより、旋回部材71aに対して揺動ピン72aを中心に上下方向に揺動可能に構成されている。サブブーム支持部材72の上部には、揺動ピン72aと直交する方向に延びるサブブーム装着孔(図示せず)が形成されており、このサブブーム装着孔にサブブーム74が挿入されて固定ピン77によりサブブーム支持部材72に固定保持される。これにより、サブブーム74は、サブブーム支持部材72の揺動に伴って、サブブーム74の先端側が水平方向を向く水平位置(
図2(A
)を参照)と、サブブーム74の先端側が垂直上方を向く垂直位置(
図8を参照)との間で上下方向に揺動変位することができる。なお、サブブーム74は、固定ピン77の差し込み位置を変えることにより、サブブーム支持部材72から
図2(A)における作業台40側へ延びる長さを調節可能になっている。
【0030】
サブブーム支持部材72の上端部には、サブブーム74の先端部に設けられたシーブ部材74a(案内滑車)に掛け回されるウインチロープ79(
図6~
図8を参照)の繰り出しおよび巻き取り作動を行うウインチ機構75が設けられている。ウインチ機構75は、内蔵されたウインチ駆動モータ78(
図4を参照)を駆動させることによりウインチロープ79の繰り出しおよび巻き取り作動を行うように構成されている。ウインチロープ79の先端部には、フック79a(
図6~
図8を参照)が取り付けられている。
【0031】
ウインチ旋回モータ76、サブブーム起伏シリンダ77、およびウインチ駆動モータ78に関しても、上述の油圧アクチュエータ55と同様に、上部操作装置45からの操作信号を受けたコントローラ200により制御バルブ53の作動が制御される。この制御バルブ53により油圧ポンプ51(もしくは、前述の第2の油圧ポンプ)から供給される作動油の供給方向および供給量が制御されることで、ウインチ旋回モータ76、サブブーム起伏シリンダ77、およびウインチ駆動モータ78(以下、まとめて「サブブームアクチュエータ56」と称する)の作動方向および作動速度が制御されるようになっている。
【0032】
次に、本実施形態に係る上部操作装置45について、
図3を参照して説明する。上部操作装置45は、作業台40に取り付けられる箱状の操作ボックス45aと、ジョイスティックJSと、各種操作レバーLV1~LV6と、各種スイッチSW1~SW11とを有して構成される。なお、
図3においては、操作ボックス45aの上部の一部が示されている。操作ボックス45aの上部における作業台40の中央部に近い側には、
図3の右側から順に、ジョイスティックJSと、首振り操作レバーLV1と、ウインチ操作レバーLV2と、サブブーム揺動操作レバーLV3と、サブブーム旋回操作レバーLV4と、昇降操作レバーLV5と、アタッチメント切り替え操作レバーLV6とが設けられる。
【0033】
ジョイスティックJSは、旋回台20の旋回作動、ブーム30の起伏作動、およびブーム30の伸縮作動を行わせるための操作機具である。首振り操作レバーLV1は、作業台40の首振り作動を行わせるための操作レバーである。ウインチ操作レバーLV2は、ウインチ機構75の繰り出し作動、およびウインチ機構75の巻き取り作動を行わせるための操作レバーである。サブブーム揺動操作レバーLV3は、サブブーム74の揺動作動を行わせるための操作レバーである。サブブーム旋回操作レバーLV4は、旋回部材71aの旋回作動を行わせるための操作レバーである。昇降操作レバーLV5は、作業台40の昇降作動を行わせるための操作レバーである。アタッチメント切り替え操作レバーLV6は、各種アタッチメント(図示せず)の切り替え作動を行わせるための操作レバーである。
【0034】
操作ボックス45aの上部における作業台40の外周部に近い側には、
図3の右側から順に、作動停止スイッチSW1と、電源スイッチSW2と、駆動切り替えスイッチSW3と、エンジンスイッチSW4と、アクセルスイッチSW5と、自動格納スイッチSW6と、水平垂直作動スイッチSW7と、干渉防止機能解除スイッチSW8と、モード切り替えスイッチSW9とが設けられる。また、操作ボックス45aの上部におけるジョイスティックJSと電源スイッチSW2および駆動切り替えスイッチSW3との間の部分には、
図3の右側から順に、照明スイッチSW10と、バッテリチェックスイッチSW11とが設けられる。
【0035】
作動停止スイッチSW1は、高所作業装置等(旋回台20、ブーム30、作業台40等
)の作動を停止させるための操作スイッチである。作動停止スイッチSW1は、プッシュプル方式のボタンスイッチ等を用いて構成され、押し操作により高所作業装置等の作動を停止させ、引き操作により高所作業装置等の作動を停止させた状態を解除できるようになっている。なお、操作ボックス45aの上部における作動停止スイッチSW1と電源スイッチSW2との間の部分に、作動停止ランプLP1が設けられる。作動停止スイッチSW1の押し操作により高所作業装置等の作動を停止させた場合に、作動停止ランプLP1が点灯するようになっている。
【0036】
電源スイッチSW2は、上部操作装置45の電源をオン/オフさせるための操作スイッチである。駆動切り替えスイッチSW3は、作動油を供給する油圧ポンプを、車体2のエンジンEおよびパワーテイクオフ機構52により駆動される(第1の)油圧ポンプ51と、電動モータ(図示せず)により駆動される第2の油圧ポンプ(図示せず)とに切り替えるための操作スイッチである。エンジンスイッチSW4は、エンジンEを始動または停止させるための操作スイッチである。アクセルスイッチSW5は、エンジンEの回転数を高低自動に制御する自動モードと、エンジンEの回転数を一定の低速回転数に制御する低速モードとに切り替えるための操作スイッチである。
【0037】
自動格納スイッチSW6は、ブーム30を車体2上の所定の格納位置に格納する自動格納制御をコントローラ200に行わせるための操作スイッチである。水平垂直作動スイッチSW7は、作業台40を水平方向または垂直方向に直線移動させる水平垂直作動制御をコントローラ200に行わせるための操作スイッチである。干渉防止機能解除スイッチSW8は、干渉防止機能を一時的に解除するための操作スイッチである。なお、干渉防止機能は、障害物等との接触を防止するために作業台40の移動が規制される干渉防止規制領域を設定する機能である。電源スイッチSW2、駆動切り替えスイッチSW3、エンジンスイッチSW4、アクセルスイッチSW5、自動格納スイッチSW6、水平垂直作動スイッチSW7、および干渉防止機能解除スイッチSW8は、トグルスイッチ等を用いて構成される。
【0038】
モード切り替えスイッチSW9は、高所モードと、巻き取りモードとに切り替えるための操作スイッチである。モード切り替えスイッチSW9は、トグルスイッチ等を用いて構成され、押し操作により、高所モードから、巻き取りモード、高所モード、巻き取りモード…の順に切り替えることができるようになっている。高所モードは、高所作業等を行うことが可能な制御モードである。巻き取りモードは、吊り上げ装置70を用いて斜め引き作業(または、水平引き作業)を行うことが可能な制御モードである。
【0039】
また、巻き取りモードにおいてモード切り替えスイッチSW9を長押し操作することにより、巻き取りモードから使用前点検モードに切り替えることができるようになっている。さらに、使用前点検モードにおいてモード切り替えスイッチSW9を長押し操作することにより、使用前点検モードから巻き取りモードに切り替えることができるようになっている。使用前点検モードは、巻き取りモードにおいて使用前点検を行うための制御モードである。なお、モード切り替えスイッチSW9は、トグルスイッチに限らず、プッシュボタンスイッチやロータリースイッチ等を用いて構成されてもよい。
【0040】
照明スイッチSW10は、上部操作装置45の上部を照明する照明ランプ(図示せず)を点灯/消灯させるための操作スイッチである。バッテリチェックスイッチSW11は、バッテリチェックランプLP2を点灯/消灯させるための操作スイッチである。照明スイッチSW10およびバッテリチェックスイッチSW11は、トグルスイッチ等を用いて構成される。操作ボックス45aの上部におけるバッテリチェックスイッチSW11の側方(
図3における左方)に、バッテリチェックランプLP2が設けられる。バッテリチェックランプLP2は、バッテリチェックスイッチSW11の点灯操作により、作業台40に
設けられた上部バッテリ(図示せず)の残量を2段階で点灯表示するようになっている。また、操作ボックス45aの上部におけるバッテリチェックスイッチSW11の側方(
図3における左方)に、バッテリチェックランプLP2と並んで、負荷率表示ランプLP3と、バッテリユニット残量表示ランプLP4と、巻き取りモード表示ランプLP5と、仮支持モード表示ランプLP6とが設けられる。
【0041】
なお、モード切り替えスイッチSW9の押し操作により、高所モードから巻き取りモードに切り替えられると、巻き取りモード表示ランプLP5が点灯する。モード切り替えスイッチSW9の押し操作により、巻き取りモードから高所モードに切り替えられると、巻き取りモード表示ランプLP5が消灯する。また、モード切り替えスイッチSW9の長押し操作により、巻き取りモードから使用前点検モードに切り替えられると、巻き取りモード表示ランプLP5が点滅する。
【0042】
次に、高所作業車1に備えられた安全装置(転倒防止装置)について
図4および
図5を参照して説明する。本実施形態に係る安全装置は、
図4に示すように、各種のセンサ類と、コントローラ200とを備えて構成されている。
【0043】
図4に示すように、センサ類は、ブーム起伏角度検出器251と、ブーム長さ検出器252と、ブーム旋回角度検出器253と、軸力検出器254と、ウインチ油圧検出器255と、ジャッキ張出量検出器256等からなる。これらの検出器はコントローラ200と電気的に接続されており、各検出器251~256の検出情報(検出信号)はコントローラ200に入力されるようになっている。
【0044】
ブーム起伏角度検出器251は、ブーム30の基端部に設けられて、ブーム30の起伏角度を検出する。ブーム長さ検出器252は、ブーム30内に設けられて、ブーム30の長さ(伸縮量)を検出する。ブーム旋回角度検出器253は、車体2に設けられて、ブーム30(旋回台20)の旋回角度を検出する。軸力検出器254は、起伏シリンダ23の上端部に設けられて、起伏シリンダ23に作用する軸力(軸方向荷重)を検出する。ウインチ油圧検出器255は、制御バルブ53においてウインチ駆動モータ78に供給する作動油の供給方向および供給量を制御するウインチ制御バルブ(図示せず)に設けられて、ウインチ駆動モータ78に供給される作動油の油圧力を検出する。ジャッキ張出量検出器256は、車体2に設けられて、ジャッキ10f,10rの張出量を検出する。
【0045】
コントローラ200は、作動制御部201と、エンジン制御部202と、モーメント算出部203と、位置算出部204と、ウインチ荷重算出部205と、ウインチ作動規制部206と、ブーム作動規制部207と、モード判定部208と、異常判定部209とを有している。なお、コントローラ200の各部201~209は、該コントローラ200に設けられたCPU、ROM、RAM、電子回路等のハードウェアおよび制御プログラム等のソフトウェアにより構成されるものを機能的に表現したものである。
【0046】
作動制御部201は、上部操作装置45または下部操作装置27からの操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動して、各油圧アクチュエータ55およびサブブームアクチュエータ56を作動させることで、ジャッキ10f,10rや、ブーム30、作業台40、サブブーム74およびウインチ機構75等の作動を制御する。
【0047】
エンジン制御部202は、上部操作装置45のエンジンスイッチSW4(もしくは、下部操作装置27のエンジンスイッチ)からエンジンEの始動操作信号が入力されると、エンジンEを始動させる制御を行い、エンジンEの停止操作信号が入力されると、エンジンEを停止させる制御を行う。また、エンジン制御部202は、上部操作装置45のアクセルスイッチSW5(もしくは、下部操作装置27のアクセルスイッチ)から自動モードに
切り替える切り替え操作信号が入力された場合、エンジンEの回転数を高低自動に制御し、低速モードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、エンジンEの回転数を一定の低速回転数に制御する。なお、エンジン制御部202は、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9から巻き取りモードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、アクセルスイッチSW5からの操作信号の如何に拘わらず、エンジンEの回転数を一定の低速回転数に制御する。
【0048】
モーメント算出部203は、軸力検出器254により検出された起伏シリンダ23の軸力、ブーム起伏角度検出器251により検出されたブーム30の起伏角度等の検出情報に基づいて、ブーム30のフートピン22回り(起伏軸回り)に作用するモーメントを算出する。このモーメントは、起伏シリンダ23に作用する軸力をフートピン22回りに作用するモーメントとして換算したものである。つまり、このモーメントは、ブーム30や作業台40等の自重、作業台40にかかる積載荷重、吊り上げ装置70を用いた場合の吊り上げ荷重等によって車体2に作用するモーメントを、起伏シリンダ23に作用する軸力に基づいて算出したものである。
【0049】
位置算出部204は、ブーム起伏角度検出器251により検出されたブーム30の起伏角度、ブーム長さ検出器252により検出されたブーム30の長さ、ブーム旋回角度検出器253により検出されたブーム30の旋回角度等の検出情報に基づいて、車体2を基準とする作業台40の底部(もしくは、ブーム30の先端部)の位置を算出する。ウインチ荷重算出部205は、ウインチ油圧検出器255により検出されたウインチ駆動モータ78に供給される作動油の油圧力の検出情報に基づいて、ウインチロープ79を介してウインチ機構75に作用するウインチ荷重を算出する。
【0050】
ウインチ作動規制部206は、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9から巻き取りモードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、ウインチ荷重算出部205により算出されたウインチ荷重と、予め設定された規制荷重とを比較する。ウインチ作動規制部206は、ウインチ荷重算出部205により算出されたウインチ荷重が規制荷重を超えると、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらずウインチ機構75(ウインチ駆動モータ78)の巻き取り作動を規制する(停止する)。本実施形態において、規制荷重は、ウインチ機構75の巻き取り作動により斜め下方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。
【0051】
ウインチ作動規制部206は、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9から高所モードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、ウインチ荷重と規制荷重との比較や、ウインチ機構75(ウインチ駆動モータ78)の巻き取り作動規制を行わない。すなわち、ウインチ作動規制部206は、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9から高所モードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、非作動状態になる。
【0052】
ブーム作動規制部207は、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9から高所モードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、モーメント算出部203により算出されたモーメントと、予め設定された規制モーメントとを比較する。ブーム作動規制部207は、モーメント算出部203により算出されたモーメントが規制モーメントに達すると、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらず、ブーム30の作動のうち、ブーム30に作用する転倒モーメントが増加する方向の作動(倒伏動、伸長動、所定方向への旋回動)を規制する。なお、規制モーメントは、ブーム30の旋回角度や、ジャッキ10f,10rの張出量等に応じて設定される。
【0053】
ブーム作動規制部207は、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9から巻
き取りモードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、位置算出部204により算出された作業台40(底部)の位置と、予め設定された許容作業範囲とを比較する。ブーム作動規制部207は、位置算出部204により算出された作業台40の位置が許容作業範囲の外縁部に達すると、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらず、ブーム30の作動のうち、作業台40が許容作業範囲の外側へ移動する方向の作動を規制する。
図5に、許容作業範囲の一例として、垂直面内での許容作業範囲Sを示す。
図5において、許容作業範囲Sを示すグラフの縦軸は、作業台40(底部)の高さを示し、許容作業範囲Sを示すグラフの横軸は、ブーム30(旋回台20)の旋回中心Cを中心とする作業半径を示す。本実施形態における許容作業範囲Sは、ウインチ機構75の巻き取り作動により斜め下方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合の許容作業範囲に設定される。なお、許容作業範囲Sは、ジャッキ10f,10rの張出量等に応じて設定される。
【0054】
モード判定部208は、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9から巻き取りモードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、ジャッキ張出量検出器256により検出されたジャッキ10f,10rの張出量が予め設定された規制張出量よりも大きく、且つ、位置算出部204により算出された作業台40(底部)の位置が許容作業範囲内であるか否かを判定する。モード判定部208は、判定がYESの場合、正常報知信号を上部操作装置45に出力する。モード判定部208は、判定がNOの場合、すなわち、巻き取りモードにおいて、ジャッキ10f,10rの張出量が規制張出量以下であるか、作業台40が許容作業範囲の外側に位置する場合、異常報知信号を上部操作装置45に出力し、各油圧アクチュエータ55およびサブブームアクチュエータ56の作動を停止させる作動停止信号を作動制御部201に出力する。
【0055】
異常判定部209は、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9から使用前点検モードに切り替える切り替え操作信号が入力された場合、上部操作装置45のウインチ操作レバーLV2から入力される作動操作信号、ウインチ油圧検出器255から入力される検出信号等に基づいて、ウインチ機構75(ウインチ駆動モータ78)の繰り出しおよび巻き取り作動によって、ウインチ油圧検出器255により検出される油圧力が上昇するか否かを判定する。異常判定部209は、判定がYESの場合、正常報知信号を上部操作装置45に出力する。異常判定部209は、判定がNOの場合、すなわち、使用前点検モードにおいて、ウインチ油圧検出器255により検出される油圧力が上昇しない場合、異常報知信号を上部操作装置45に出力する。さらに、異常判定部209は、各サブブームアクチュエータ56の作動を停止させる作動停止信号を作動制御部201に出力してもよい。
【0056】
続いて、
図6および
図7を参照して、高所モードから巻き取りモード切り替えて斜め引き作業を行う場合の制御について説明する。高所モードにおいて、コントローラ200の作動制御部201は、上部操作装置45または下部操作装置27からの操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動して、各油圧アクチュエータ55およびサブブームアクチュエータ56を作動させることで、ジャッキ10f,10rや、ブーム30、作業台40、サブブーム74およびウインチ機構75等の作動を制御する。
【0057】
ところで、ブーム30が車体2に対して起仰した状態で、作業用の部材等の吊り上げ作業を行う場合、作業台40に搭乗した作業者OPは、
図6に示すように、先端側が斜め上方を向くようにサブブーム74を揺動変位させ、ウインチロープ79をシーブ部材74aから垂直下方向に繰り出した状態で、ウインチ機構75によりウインチロープ79の巻き取りおよび繰り出しを行う。このとき、ブーム30や作業台40等の自重、作業台40にかかる積載荷重、吊り上げ装置70にかかる吊り上げ荷重等によるモーメントが車体2に作用する。
【0058】
高所モードにおいて、コントローラ200のブーム作動規制部207は、モーメント算出部203により算出されたモーメントと、予め設定された規制モーメントとを比較する。ブーム作動規制部207は、モーメント算出部203により算出されたモーメントが規制モーメントに達すると、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらず、ブーム30の作動のうち、ブーム30に作用する転倒モーメントが増加する方向の作動を規制する。なお、高所モードにおいて、コントローラ200のウインチ作動規制部206は非作動状態になる。
【0059】
また、ブーム30を車体2に対して起仰させて、電柱間に架設された電線の斜め引き作業を行う場合、作業台40に搭乗した作業者OPは、
図7に示すように、先端側が斜め上方を向く斜め位置にサブブーム74を揺動変位させ、フック79aを電線(図示せず)に引っ掛けてウインチロープ79をシーブ部材74aから斜め下方向に繰り出した状態で、ウインチ機構75によりウインチロープ79の巻き取りを行う。斜め引き作業を行う場合、電線からの斜め下方向の反力がウインチロープ79を介してブーム30に作用する。しかしながら、水平方向成分を有する斜め下方向の反力に応じて起伏シリンダ23に作用する軸力は、ブーム30の起伏角度によって変化するため、軸力検出器254を用いて電線からの斜め下方向の反力を正確に検出することが困難である。そのため、モーメント算出部203が車体2に作用するモーメントを正確に算出できずに、車体2が不安定になって作業の安全性が低下する可能性がある。
【0060】
そこで、電柱間に架設された電線の斜め引き作業を行う場合、作業台40に搭乗した作業者OPは、上部操作装置45を操作して高所モードから巻き取りモードに切り替える。高所モードから巻き取りモードに切り替えるには、まず、作業者OPは、上部操作装置45の作動停止スイッチSW1に対して押し操作を行い、高所作業装置等(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動を停止させる。次に、作業者OPは、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9に対して1回だけ押し操作を行った後、作動停止スイッチSW1に対して引き操作を行い、高所作業装置等の作動を停止させた状態を解除する。このとき、モード切り替えスイッチSW9は、高所モードから巻き取りモードに切り替える切り替え操作信号をコントローラ200に出力する。
【0061】
高所モードから巻き取りモードに切り替える切り替え操作信号がコントローラ200に入力されると、コントローラ200のモード判定部208は、ジャッキ張出量検出器256により検出されたジャッキ10f,10rの張出量が予め設定された規制張出量よりも大きく、且つ、位置算出部204により算出された作業台40(底部)の位置が許容作業範囲内であるか否かを判定する。モード判定部208は、判定がNOの場合、異常報知信号を上部操作装置45に出力し、各油圧アクチュエータ55およびサブブームアクチュエータ56の作動を停止させる作動停止信号を作動制御部201に出力する。これにより、上部操作装置45の作動停止ランプLP1と、巻き取りモード表示ランプLP5および仮支持モード表示ランプLP6とが交互に点滅し、作業者OPに対して異常であることが報知される。また、作動制御部201は、各油圧アクチュエータ55およびサブブームアクチュエータ56の作動を停止させる制御を行う。なお、モード判定部208から異常報知信号が出力された場合、作業者OPは、上部操作装置45の作動停止スイッチSW1に対して押し操作を行った後、モード切り替えスイッチSW9に対して押し操作を行うことで、高所モードに戻すことが可能である。
【0062】
一方、モード判定部208は、判定がYESの場合、正常報知信号を上部操作装置45に出力する。これにより、上部操作装置45の巻き取りモード表示ランプLP5が点灯し、作業者OPに対して巻き取りモードに切り替えられたことが報知される。モード判定部208から正常報知信号が出力された場合、巻き取りモードから使用前点検モードに切り
替えることが可能である。
【0063】
巻き取りモードから使用前点検モードに切り替えるには、作業者OPは、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9に対して長押し操作を行う。このとき、モード切り替えスイッチSW9は、巻き取りモードから使用前点検モードに切り替える切り替え操作信号をコントローラ200に出力する。また、上部操作装置45の巻き取りモード表示ランプLP5が点滅し、作業者OPに対して使用前点検モードに切り替えられたことが報知される。
【0064】
次に、作業者OPは、上部操作装置45のサブブーム揺動操作レバーLV3に対してサブブーム74の揺動作動を行わせる揺動作動操作を行い、
図6に示すように、先端側が斜め上方を向くようにサブブーム74を揺動変位させて、ウインチロープ79をシーブ部材74aから垂直下方向に繰り出した状態にする。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、サブブーム揺動操作レバーLV3からの揺動作動操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動してサブブーム起伏シリンダ77を作動させることで、サブブーム74の揺動作動を制御する。
【0065】
次に、作業者OPは、上部操作装置45のウインチ操作レバーLV2に対してウインチ機構75の繰り出し作動を行わせる繰り出し作動操作を行い、予め設定された繰り出し時間(例えば、3秒)以上の時間にわたり、ウインチ機構75によりウインチロープ79の繰り出しを行う。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、ウインチ操作レバーLV2からの繰り出し作動操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動してウインチ駆動モータ78を作動させることで、ウインチ機構75の繰り出し作動を制御する。続いて、作業者OPは、ウインチ操作レバーLV2に対してウインチ機構75の巻き取り作動を行わせる巻き取り作動操作を行い、予め設定された巻き取り時間(例えば、2秒)以上の時間にわたり、ウインチ機構75によりウインチロープ79の巻き取りを行う。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、ウインチ操作レバーLV2からの巻き取り作動操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動してウインチ駆動モータ78を作動させることで、ウインチ機構75の巻き取り作動を制御する。
【0066】
巻き取りモードから使用前点検モードに切り替える切り替え操作信号がコントローラ200に入力されると、コントローラ200の異常判定部209は、ウインチ操作レバーLV2から入力される作動操作信号、ウインチ油圧検出器255から入力される検出信号等に基づいて、ウインチ機構75(ウインチ駆動モータ78)の繰り出し作動および巻き取り作動によって、ウインチ油圧検出器255により検出される油圧力が上昇するか否かを判定する。異常判定部209は、判定がNOの場合、異常報知信号を上部操作装置45に出力する。これにより、上部操作装置45の作動停止ランプLP1と、巻き取りモード表示ランプLP5および仮支持モード表示ランプLP6とが交互に点滅し、作業者OPに対して異常であることが報知される。なお、異常判定部209から異常報知信号が出力された場合、作業者OPは、上部操作装置45の作動停止スイッチSW1に対して押し操作を行った後、モード切り替えスイッチSW9に対して押し操作を行うことで、高所モードに戻すことが可能である。
【0067】
一方、異常判定部209は、判定がYESの場合、正常報知信号を上部操作装置45に出力する。これにより、上部操作装置45の巻き取りモード表示ランプLP5および仮支持モード表示ランプLP6が点灯し、作業者OPに対して使用前点検モードで異常が検出されなかったことが報知される。異常判定部209から正常報知信号が出力された場合、使用前点検モードから巻き取りモードに切り替えることが可能である。
【0068】
使用前点検モードから巻き取りモードに切り替えるには、作業者OPは、上部操作装置
45のモード切り替えスイッチSW9に対して長押し操作を行う。このとき、モード切り替えスイッチSW9は、使用前点検モードから巻き取りモードに切り替える切り替え操作信号をコントローラ200に出力する。また、上部操作装置45の仮支持モード表示ランプLP6が消灯して巻き取りモード表示ランプLP5のみが点灯し、作業者OPに対して巻き取りモードに切り替えられたことが報知される。
【0069】
このようにして、高所モードから巻き取りモードに切り替えることで、電柱間に架設された電線の斜め引き作業を行うことが可能になる。巻き取りモードにおいて斜め引き作業を行う場合、作業台40に搭乗した作業者OPは、上部操作装置45を操作して、サブブーム74が電柱間に架設された電線の斜め上方に位置するように、作業台40およびサブブーム74の位置を調整する。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、上部操作装置45からの操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動して、各油圧アクチュエータ55およびサブブームアクチュエータ56を作動させることで、ブーム30、作業台40、サブブーム74等の作動を制御する。
【0070】
巻き取りモードにおいて、ブーム作動規制部207は、位置算出部204により算出された作業台40(底部)の位置と、予め設定された許容作業範囲とを比較する。ブーム作動規制部207は、位置算出部204により算出された作業台40の位置が許容作業範囲の外縁部に達すると、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらず、ブーム30の作動のうち、作業台40が許容作業範囲の外側へ移動する方向の作動を規制する。巻き取りモードにおいては、ブーム作動規制部207により作業台2の位置に基づいてブーム30の作動が規制されるため、斜め引き作業を行う場合でも、車体2に作用するモーメントを正確に算出できずに車体2が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0071】
次に、作業者OPは、上部操作装置45のサブブーム揺動操作レバーLV3に対して揺動作動操作を行い、
図7に示すように、先端側が斜め上方を向く斜め位置にサブブーム74を揺動変位させ、フック79aを電線(図示せず)に引っ掛けてウインチロープ79をシーブ部材74aから斜め下方向に繰り出した状態にする。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、サブブーム揺動操作レバーLV3からの揺動作動操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動してサブブーム起伏シリンダ77を作動させることで、サブブーム74の揺動作動を制御する。
【0072】
次に、作業者OPは、上部操作装置45のウインチ操作レバーLV2に対して巻き取り作動操作を行い、ウインチ機構75によりウインチロープ79の巻き取りを行う。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、ウインチ操作レバーLV2からの巻き取り作動操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動してウインチ駆動モータ78を作動させることで、ウインチ機構75の巻き取り作動を制御する。なお、巻き取りモードにおいて、作動制御部201は、ウインチ操作レバーLV2から巻き取り作動操作信号が入力されると、その後、ウインチ操作レバーLV2から繰り出し作動操作信号が入力されない限り、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらず、サブブームアクチュエータ56を除く他の油圧アクチュエータ55の作動を停止させる制御を行う。これにより、斜め引き作業時に、ブーム30や作業台40等が動くことはないため、車体2が不安定になって作業の安全性が低下するのを防止することができる。
【0073】
巻き取りモードにおいて、ウインチ作動規制部206は、ウインチ荷重算出部205により算出されたウインチ荷重と、予め設定された規制荷重とを比較する。ウインチ作動規制部206は、ウインチ荷重算出部205により算出されたウインチ荷重が規制荷重を超えると、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらずウインチ機構75(ウインチ駆動モータ78)の巻き取り作動を規制する。本実施形態において、規制荷重は、ウ
インチ機構75の巻き取り作動により斜め下方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。これにより、斜め下方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重を基準に、ウインチ作動規制部206によりウインチ機構75の巻き取り作動が規制されることで、斜め引き作業を行う場合でも、車体2が不安定になって転倒することがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。また、斜め下方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合の許容作業範囲を基準に、ブーム作動規制部207によりブーム30の作動が規制されることで、斜め引き作業を行う場合でも、車体2が不安定になって転倒することがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0074】
斜め引き作業が終了すると、作業者OPは、上部操作装置45のウインチ操作レバーLV2に対して繰り出し作動操作を行い、ウインチ機構75によりウインチロープ79の繰り出しを行った後、フック79aを電線(図示せず)から取り外す。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、ウインチ操作レバーLV2からの繰り出し作動操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動してウインチ駆動モータ78を作動させることで、ウインチ機構75の繰り出し作動を制御する。
【0075】
斜め引き作業の終了後、作業台40に搭乗した作業者OPは、上部操作装置45を操作して巻き取りモードから高所モードに切り替える。巻き取りモードから高所モードに切り替えるには、まず、作業者OPは、上部操作装置45の作動停止スイッチSW1に対して押し操作を行い、高所作業装置等(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動を停止させる。次に、作業者OPは、上部操作装置45のモード切り替えスイッチSW9に対して1回だけ押し操作を行った後、作動停止スイッチSW1に対して引き操作を行い、高所作業装置等の作動を停止させた状態を解除する。このとき、モード切り替えスイッチSW9は、巻き取りモードから高所モードに切り替える切り替え操作信号をコントローラ200に出力する。また、上部操作装置45の巻き取りモード表示ランプLP5(および仮支持モード表示ランプLP6)が消灯し、作業者OPに対して高所モードに切り替えられたことが報知される。
【0076】
以上で説明したように、本実施形態によれば、ウインチ作動規制部206における規制荷重は、ウインチ機構75の巻き取り作動により斜め下方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。これにより、斜め下方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重を基準に、ウインチ作動規制部206によりウインチ機構75の巻き取り作動が規制されることで、斜め引き作業を行う場合でも、車体2が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0077】
また、ブーム作動規制部207は、高所モード(非規制モード)に切り替えられた場合に、モーメント算出部203により算出されたモーメントが予め設定された規制モーメントを超えるようなブーム30の作動を規制し、巻き取りモード(規制モード)に切り替えられた場合に、位置算出部204により算出された作業台40の位置が予め設定された許容作業範囲を超えるようなブーム30の作動を規制する。これにより、ウインチ作動規制部206によりウインチ機構75の巻き取り作動を規制することが可能な巻き取りモード(規制モード)に切り替えられた場合に、ブーム作動規制部207により作業台40の位置に基づいてブーム30の作動が規制されるため、斜め引き作業を行う場合でも、車体2に作用するモーメントを正確に算出できずに車体2が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0078】
本実施形態において、規制荷重は、水平方向成分を有する外側方への引張力として、斜
め下方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重に設定されているが、これに限られるものではない。例えば、規制荷重は、水平方向成分を有する外側方への引張力として、水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重に設定されてもよい。
【0079】
そこで、高所作業車1に備えられた安全装置の変形例について説明する。本変形例において、ウインチ作動規制部206における規制荷重は、ウインチ機構75の巻き取り作動により水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。ブーム作動規制部207における許容作業範囲は、ウインチ機構75の巻き取り作動により水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合の許容作業範囲に設定される。
【0080】
続いて、
図8を参照して、高所モードから巻き取りモード切り替えて水平引き作業を行う場合の制御について説明する。本変形例においては、斜め引き作業の場合と同様にして高所モードから巻き取りモードに切り替えることで、電柱間に架設された電線の水平引き作業を行うことが可能である。巻き取りモードにおいて水平引き作業を行う場合、作業台40に搭乗した作業者OPは、上部操作装置45を操作して、サブブーム74が電柱間に架設された電線の側方に位置するように、作業台40およびサブブーム74の位置を調整する。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、上部操作装置45からの操作信号に基づいて、斜め引き作業の場合と同様に、ブーム30、作業台40、サブブーム74等の作動を制御する。
【0081】
ブーム作動規制部207は、斜め引き作業の場合と同様に、位置算出部204により算出された作業台40の位置が許容作業範囲の外縁部に達すると、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらず、ブーム30の作動のうち、作業台40が許容作業範囲の外側へ移動する方向の作動を規制する。巻き取りモードにおいては、ブーム作動規制部207により作業台2の位置に基づいてブーム30の作動が規制されるため、水平引き作業を行う場合でも、車体2に作用するモーメントを正確に算出できずに車体2が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0082】
次に、作業者OPは、上部操作装置45のサブブーム揺動操作レバーLV3に対して揺動作動操作を行い、
図8に示すように、先端側が垂直上方を向く垂直位置にサブブーム74を揺動変位させ、フック79aを電線(図示せず)に引っ掛けてウインチロープ79をシーブ部材74aから水平方向に繰り出した状態にする。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、サブブーム揺動操作レバーLV3からの揺動作動操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動してサブブーム起伏シリンダ77を作動させることで、サブブーム74の揺動作動を制御する。
【0083】
次に、作業者OPは、ウインチ操作レバーLV2に対して巻き取り作動操作を行い、ウインチ機構75によりウインチロープ79の巻き取りを行う。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、ウインチ操作レバーLV2からの巻き取り作動操作信号に基づいて、斜め引き作業の場合と同様に、ウインチ機構75の巻き取り作動を制御する。なお、斜め引き作業の場合と同様に、作動制御部201は、ウインチ操作レバーLV2から巻き取り作動操作信号が入力されると、その後、ウインチ操作レバーLV2から繰り出し作動操作信号が入力されない限り、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらず、サブブームアクチュエータ56を除く他の油圧アクチュエータ55の作動を停止させる制御を行う。これにより、水平引き作業時に、ブーム30や作業台40等が動くことはないため、車体2が不安定になって作業の安全性が低下するのを防止することができる。
【0084】
斜め引き作業の場合と同様に、ウインチ作動規制部206は、ウインチ荷重算出部20
5により算出されたウインチ荷重が規制荷重を超えると、各操作装置27,45からの操作信号の如何に拘わらずウインチ機構75(ウインチ駆動モータ78)の巻き取り作動を規制する。本変形例において、規制荷重は、ウインチ機構75の巻き取り作動により水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。これにより、水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重を基準に、ウインチ作動規制部206によりウインチ機構75の巻き取り作動が規制されることで、水平引き作業を行う場合でも、車体2が不安定になって転倒することがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。また、水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合の許容作業範囲を基準に、ブーム作動規制部207によりブーム30の作動が規制されることで、水平引き作業を行う場合でも、車体2が不安定になって転倒することがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0085】
水平引き作業が終了すると、作業者OPは、上部操作装置45のウインチ操作レバーLV2に対して繰り出し作動操作を行い、ウインチ機構75によりウインチロープ79の繰り出しを行った後、フック79aを電線(図示せず)から取り外す。このとき、コントローラ200の作動制御部201は、ウインチ操作レバーLV2からの繰り出し作動操作信号に基づいて、斜め引き作業の場合と同様に、ウインチ機構75の繰り出し作動を制御する。水平引き作業の終了後、作業台40に搭乗した作業者OPは、斜め引き作業の場合と同様に、上部操作装置45を操作して巻き取りモードから高所モードに切り替える。
【0086】
本変形例によれば、ウインチ作動規制部206における規制荷重は、ウインチ機構75の巻き取り作動により水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重に設定される。これにより、水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重を基準に、ウインチ作動規制部206によりウインチ機構75の巻き取り作動が規制されることで、水平引き作業を行う場合でも、車体2が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0087】
なお、本変形例においては、電柱間に架設された電線の斜め引き作業を行うことも可能である。斜め引き作業を行う場合、前述したように、電線からの斜め下方向の反力がウインチロープ79を介してブーム30に作用する。ブーム30に作用する電線からの斜め下方向の反力は、反力の水平方向成分と垂直方向成分とに分かれる。これにより、ブーム30に作用する反力の一部は、圧縮力としてブーム30で受け止められるため、ブーム30の起伏角度およびウインチ荷重が同じ場合、ブーム30に作用する電線からの水平方向の反力は、水平引き作業を行う場合よりも斜め引き作業を行う場合の方が小さくなる。そのため、水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合のウインチ荷重を基準に、ウインチ作動規制部206によりウインチ機構75の巻き取り作動が規制されることで、斜め引き作業を行う場合でも、車体2が不安定になることがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0088】
また、ブーム作動規制部207は、高所モード(非規制モード)に切り替えられた場合に、モーメント算出部203により算出されたモーメントが予め設定された規制モーメントを超えるようなブーム30の作動を規制し、巻き取りモード(規制モード)に切り替えられた場合に、位置算出部204により算出された作業台40の位置が予め設定された許容作業範囲を超えるようなブーム30の作動を規制する。これにより、ウインチ作動規制部206によりウインチ機構75の巻き取り作動を規制することが可能な巻き取りモード(規制モード)に切り替えられた場合に、ブーム作動規制部207により作業台40の位置に基づいてブーム30の作動が規制されるため、水平引き作業を行う場合でも、車体2に作用するモーメントを正確に算出できずに車体2が不安定になることがなく、作業の安
全性を向上させることが可能になる。なお、ウインチ機構75の巻き取り作動により水平方向の外方への引張力がウインチロープ79に作用しても車体2が転倒しない場合の許容作業範囲を基準に、ブーム作動規制部207によりブーム30の作動が規制されることで、斜め引き作業を行う場合でも、車体2が不安定になって転倒することがなく、作業の安全性を向上させることが可能になる。
【0089】
上述の実施形態において、斜め引き作業を行う際、サブブーム74は、先端側が斜め上方を向く斜め位置に揺動変位しているが、これに限られるものではなく、先端側が垂直上方を向く垂直位置に揺動変位してもよい。また、水平引き作業を行う際、サブブーム74は、上述の垂直位置に揺動変位しているが、これに限られるものではなく、上述の斜め位置に揺動変位してもよい。
【0090】
上述の実施形態において、ウインチ荷重算出部205は、ウインチ油圧検出器255により検出されたウインチ駆動モータ78に供給される作動油の油圧力の検出情報に基づいて、ウインチ荷重を算出するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、ウインチ荷重算出部205は、張力検出器(図示せず)を用いて検出したウインチロープ79に作用する張力に基づいて、ウインチ荷重を算出するようにしてもよい。また、ウインチ荷重算出部205は、張力検出器を用いて検出したウインチロープ79に作用する張力および、角度検出器(図示せず)を用いて検出したウインチロープ79の対地角度に基づいて、ウインチ機構75の巻き取り作動によりウインチロープ79に作用するウインチ荷重(斜め下方向の引張力)の水平方向成分を算出するようにしてもよい。
【0091】
上述の実施形態において、高所モードと、巻き取りモードとが設けられているが、さらに仮支持モードが設けられてもよい。なお、仮支持モードは、仮支持装置(図示せず)を用いて電線を仮支持することが可能な制御モードである。またこの場合、モード切り替えスイッチSW9は、押し操作により、高所モード(非規制モード)から、巻き取りモード(規制モード)、仮支持モード、高所モード、巻き取りモード…の順に切り替えることができるようにしてもよい。
【0092】
上述の実施形態において、作動油を供給する油圧ポンプを、車体2のエンジンEおよびパワーテイクオフ機構52により駆動される(第1の)油圧ポンプ51と、電動モータ(図示せず)により駆動される第2の油圧ポンプ(図示せず)とに切り替えることができるように構成されているが、これに限られるものではない。例えば、車体2のエンジンEおよびパワーテイクオフ機構52により駆動される油圧ポンプのみが設けられてもよく、電動モータ(図示せず)により駆動される油圧ポンプのみが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 高所作業車
2 車体
30 ブーム
40 作業台
45 上部操作装置(SW9 モード切り替えスイッチ)
70 吊り上げ装置
74 サブブーム(74a シーブ部材)
75 ウインチ機構
78 ウインチ駆動モータ
79 ウインチロープ
200 コントローラ
203 モーメント算出部
204 位置算出部
205 ウインチ荷重算出部
206 ウインチ作動規制部
207 ブーム作動規制部
251 ブーム起伏角度検出器
252 ブーム長さ検出器
253 ブーム旋回角度検出器
254 軸力検出器
255 ウインチ油圧検出器