(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110804
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】作業保証システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20220722BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006437
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】宮郷 正澄
(72)【発明者】
【氏名】小栗 武己
(72)【発明者】
【氏名】朝賀 浩
(72)【発明者】
【氏名】川面 怜哉
(72)【発明者】
【氏名】貞富 博一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】作業中に作業者が不適正な作業が行われたことを認識することのできる作業保証システムを提供する。
【解決手段】作業動作保証システム10は、作業者12及び加工対象物14を撮像する撮像装置30と、前記加工対象物上に情報を投影する情報投影装置20と、前記加工対象物を複数のエリアに分割したエリア分割情報と、前記エリアごとに実施される適正な作業動作を規定した適正作業動作情報と、を記憶する記憶部42と、前記適正作業動作情報と前記撮像装置によって取得された撮像データに含まれる前記作業者が実施した作業動作情報とに基づいて、前記作業者が実施した作業動作が適正であるか否かを前記エリアごとに判定する適正判定部44と、前記適正判定部によって不適正と判定されたエリアに不適正であることを知らせる情報と、エリア分割表示体を投影させるように前記情報投影装置を制御する投影情報制御部48と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者及び加工対象物を撮像する撮像装置と、
前記加工対象物上に情報を投影する情報投影装置と、
前記加工対象物に実施される作業内容に基づいて前記加工対象物を複数のエリアに分割したエリア分割情報と、前記エリアごとに実施される適正な作業動作を規定した適正作業動作情報と、を記憶する記憶部と、
前記適正作業動作情報と前記撮像装置によって取得された撮像データに含まれる前記作業者が実施した作業動作情報とに基づいて、前記作業者が実施した作業動作が適正であるか否かを前記エリアごとに判定する適正判定部と、
前記適正判定部によって不適正と判定されたエリアに不適正であることを知らせる情報と、エリア分割表示体を投影させるように前記情報投影装置を制御する投影情報制御部と、を備えたことを特徴とする作業保証システム。
【請求項2】
前記投影情報制御部は、前記適正判定部によって不適正と判定された場合に、不適正と判定された前記作業者の作業動作情報を前記情報投影装置によって、前記加工対象物及び/又は前記加工対象物の近傍に設置された表示部に投影させることを特徴とする請求項1に記載の作業保証システム。
【請求項3】
前記加工対象物に対する作業後に取得された前記撮像データに含まれる前記作業者の所定の動作又は所定の姿勢に基づいて、前記複数のエリアから少なくとも1つのエリアを選択するエリア選択部を備え、
前記投影情報制御部は、前記情報投影装置によって、前記エリア選択部が選択したエリアに、作業中に取得された前記撮像データに含まれる当該エリアに対する前記作業者の作業動作情報を投影させることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業保証システム。
【請求項4】
前記エリア選択部は、前記撮像データに含まれる前記作業者の指差し動作に基づいて、前記複数のエリアから1つのエリアを選択することを特徴とする請求項3に記載の作業保証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業保証システムに関し、特に、撮像装置によって作業者の作業動作を撮像した撮像データに基づいて、作業動作の適正判定を行う作業保証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の生産ラインでは、作業者が行う作業工程において、如何に作業ミスを防止するかが課題となっている。作業ミスを防止するための対策として、従来、センサを用いて作業者の動作情報を取得し、取得した情報をコンピュータで解析することで、正しく作業が行われているかを確認する作業保証システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業者が行う製品仕分け等の単純作業の適否を判断する作業保証システムが開示されている。この作業保証システムは、動作センサによって作業者の動作を読み取り、動作センサが取得したデータを制御装置で解析する。制御装置は、予め登録された作業者による単純作業の正しい動作と、動作センサで読み取られた作業者による動作とが一致するか否かを判断する。この作業保証システムでは、制御装置が一致しないと判断した場合に、作業現場に設置されたディスプレイに警告を出力する。このように、人による作業工程において作業者の作業動作の保証を行うことで、作業ミスの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の作業保証システムでは、作業に集中していると、ディスプレイに表示された警告情報を見逃してしまい、どの作業動作が不適正であったのかを把握できないことがある。特に、多数の構成部品からなるエンジンの組付け作業など、作業者が、1つの加工対象物に対して異なる複数の部位に作業を実施する作業工程では、作業中にディスプレイに表示された警告を見逃してしまうことで、どの作業部位に不適正な作業が実施されたのかが分からなくなってしまい、不適正な作業箇所を探すことでその後の作業が遅れてしまうという問題が発生する。
【0006】
それ故、このような加工対象物に対しては、作業中に作業動作の適正判断を行うことなく、作業後に検査工程を設けて、製品が正常に作動するか否かを検査していた。
【0007】
しかしながら、製品に不備があった場合、組立てられた製品を分解して不備を探す作業に多大な労力がかってしまうという問題があった。そのため、作業者が不適正な作業を実施してしまった場合に、作業中にその作業部位を容易に特定できる作業保証システムが求められていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、作業者が1つの加工対象物に対して複数の部位に作業を実施する作業工程において、作業中に作業者が不適正な作業が実施されたことを認識することのできる作業保証システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る作業保証システムは、作業者及び加工対象物を撮像する撮像装置と、前記加工対象物上に情報を投影する情報投影装置と、前記加工対象物に実施される作業内容に基づいて前記加工対象物を複数のエリアに分割したエリア分割情報と、前記エリアごとに実施される適正な作業動作を規定した適正作業動作情報と、を記憶する記憶部と、前記適正作業動作情報と前記撮像装置によって取得された撮像データに含まれる前記作業者が実施した作業動作情報とに基づいて、前記作業者が実施した作業動作が適正であるか否かを前記エリアごとに判定する適正判定部と、前記適正判定部によって不適正と判定されたエリアに不適正であることを知らせる情報と、エリア分割表示体を投影させるように前記情報投影装置を制御する投影情報制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、加工対象物を作業内容に基づいて分割したエリアごとに作業者の作業動作が適正であったか否かを判定することができるので、1つの加工対象物に対して複数の部位に作業を実施する作業工程において、分割されたエリアごとに作業保証を行うことができる。また、作業動作が不適正であったエリアに不適正であることを知らせる情報と、エリア分割表示体が投影されるので、作業者は、作業中に不適正な作業が実施されたことを認識することができる。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、前記作業保証システムにおいて、前記投影情報制御部は、前記適正判定部によって不適正と判定された場合に、不適正と判定された前記作業者の作業動作情報を前記情報投影装置によって、前記加工対象物及び/又は前記加工対象物の近傍に設置された表示部に投影させることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、不適正な作業が実施された際に、作業者が情報投影装置によって投影された作業者の不適正な作業動作を視認することで、どの作業が不適正であったのかを認識することができる。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、前記作業保証システムにおいて、前記加工対象物に対する作業後に取得された前記撮像データに含まれる前記作業者の所定の動作又は所定の姿勢に基づいて、前記複数のエリアから1つのエリアを選択するエリア選択部を備え、前記投影情報制御部は、前記情報投影装置によって、前記エリア選択部が選択したエリアに、作業中に取得された前記撮像データに含まれる当該エリアに対する前記作業者の作業動作情報を投影させることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、作業者が加工対象物に対する作業を完了した後に、作業者が対象物に対して所定の動作等をすることで、複数のエリアから1つのエリアを指定することができ、指定したエリアに、作業者が実施した作業動作の情報を投影させることができる。これにより、作業者は、作業を実施した後に、指定したエリアに投影された作業動作情報を視認しながら作業が適正であったか否かを確認することができる。
【0015】
また、本発明の一実施形態は、前記作業保証システムにおいて、前記エリア選択部は、前記撮像データに含まれる前記作業者の指差し動作に基づいて、前記複数のエリアから1つのエリアを選択することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、作業者が指差しをする簡易な動作で加工対象物上のエリアを任意に指定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る作業保証システムによれば、作業者が1つの加工対象物に対して複数の部位に作業を実施する作業工程において、作業中に作業者が、不適正な作業が行われたことを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る作業保証システムの概略説明図である。
【
図2】作業保証システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】作業保証システムにおいて、制御装置が実行する制御処理を説明するフローチャートである。
【
図4】作業保証システムの変形例を示す
図1と同様の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る作業保証システム10の概略説明図であり、
図2は、作業保証システム10の構成を示すブロック図である。作業保証システム10は、加工対象物に対して作業者が実施する作業動作が適切であるかを確認する作業動作保証を行うシステムである。
図1に示す例では、加工対象物の一例として車両搭載用のエンジンを構成するエンジン構成物14を記載している。
【0020】
本実施形態の作業保証システム10は、エンジン構成物14及び表示部28に情報を投影可能な情報投影装置20と、作業者12及び作業台13に載置されたエンジン構成物14を撮像可能な撮像装置30と、これらの装置と電気的に接続された制御装置40と、を備える。
【0021】
情報投影装置20は、制御装置40から送信される電子的情報(文字情報や画像情報など)を対象物上に映像として投影する機能を有するものである。情報投影装置20としては、例えば、DLP(Digital Light Processing)プロジェクタや液晶プロジェクタなどのプロジェクタを用いることができる。作業保証システム10は、情報投影装置20及び制御装置50により、平面のスクリーンに映像を投影するだけでなく、曲面や立体物の表面に映像を投影する、いわゆる、プロジェクションマッピング技術を利用して、立体物であるエンジン構成物14の表面に、エンジンを組付ける際に使用する工具や、組付け作業の手順などの作業内容情報を投影する。
【0022】
図1に示す例では、情報投影装置20として1つのプロジェクタを用いているが、プロジェクタの数は2つ以上であってもよい。
図1では、情報投影装置20によってエンジン構成物14上に情報が投影される情報投影領域22を二点鎖線で示している。情報投影装置20によって投影される情報は、制御装置40の投影情報制御部48によって制御される。
【0023】
情報投影装置20は、さらに、エンジン構成物14の近傍に設置された表示部28に情報を投影することができる。表示部28は、例えば、白色板や、スクリーンとすることができる。表示部28に投影される投影情報29は、エンジン構成物14に対して投影される情報と同一のものであっても、異なるものであってもよい。表示部28は、作業者12が作業中に投影情報29を視認できるようにエンジン構成物14の近傍に設置され、本実施形態では、作業台13の近傍に配置されている。
【0024】
撮像装置30は、画像を撮像可能なものであり、例えば、動画を撮像可能なカメラを使用することができる。本実施形態では、撮像装置30として、撮像対象となる領域を異なる2方向から同時に撮像するステレオカメラを使用しており、このステレオカメラにより、対象物までの距離を計測可能にしている。撮像装置30は、作業現場において、加工対象物であるエンジン構成物14と、エンジン構成物14に対して作業を実施している作業者12とを撮像可能な位置に設置される。
【0025】
撮像装置30は、エンジン構成物14とともに、少なくとも作業を実施している作業者12の手の動きが撮像可能となる位置に設置されていればよいが、作業中に作業者12の姿勢の状態が撮像可能となるように、エンジン構成物14とその周辺の作業領域とを撮像可能な位置に設置されることが好ましい。本実施形態では、
図1に示すように、情報投影装置20による情報投影領域22とその周辺の領域とが、撮像装置30の撮像範囲内に含まれるように設置している。
【0026】
制御装置40は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、中央処理装置(CPU)や特定用途向け集積回路(ASIC)等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部等を有して構成される。制御装置40は、中央処理装置が記憶部に記録されているプログラムを読み出して実行することで、各種機能実現部(例えば、制御部、演算部、処理部等)として機能する。
図2に示すように、本実施形態の制御装置40は、情報入力部41と、記憶部42と、適正判定部44と、エリア選択部46と、作業完了判定部47と、投影情報制御部48と、を備える。
【0027】
制御装置40の情報入力部41は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、他の装置との入力接続部など、制御装置40に対して情報の入力を可能とするものである。入力部41を介して入力された情報は、記憶部42に格納したり、データ処理部で処理したりすることができる。
【0028】
制御装置40の記憶部42には、各種処理を実行するプログラムが記憶されているとともに、情報投影装置20によって投影される情報に関するデータが記憶されている。本実施形態において、記憶部42は、分割エリア記憶部42Aと、作業内容記憶部42Bと、適正動作記憶部42Cと、撮像装置30から取得されたデータを記憶する作業者動作記憶部42Dと、を備える。分割エリア記憶部42A、作業内容記憶部42B及び適正動作記憶部42Cの各情報は、情報入力部41を介して設定することができる。
【0029】
分割エリア記憶部42Aは、エンジン構成物14に実施される作業内容に基づいてエンジン構成物14を複数のエリアに分割したエリア分割情報を記憶している。エリア分割情報において、エリアを分割する基準となる作業内容とは、例えば、作業者による作業動作が共通するエリアで複数に分割する、作業が実施される順番で複数のエリアに分割する、又は、共通の工具を用いるエリアで複数に分割する等が挙げられる。
【0030】
本実施形態では、エンジン構成物14を作業動作が共通するエリアで複数に分割している。エリア分割情報に含まれる作業動作が共通するエリアの一例として、
図1では、エンジン構成物14において、オイルの拭取り作業をするオイル拭取りエリア24にドットを付している。
【0031】
作業内容記憶部42Bは、分割エリア記憶部42Aで分割された各エリアに実施される作業内容に関する情報を各エリアに関連付けて作業内容情報として記憶している。作業内容記憶部42Bに記憶される作業内容情報は、各エリアの作業の順番、各エリアで使用する部品や工具、エンジンの組付け作業で実施される各エリアの作業内容及び作業の手順などのデータを含んでいる。
【0032】
適正動作記憶部42Cは、分割エリア記憶部42Aで分割された各エリアに実施される適正な作業動作を規定した適正作業情報を記憶している。本実施形態では、適正動作記憶部42Cに記憶された各エリアの適正な作業動作が、分割エリア記憶部42Aで設定された各エリアと関連付けられて記憶されている。
【0033】
作業者動作記憶部42Dは、撮像装置30が取得した撮像データに含まれる作業者12の作業動作情報(以下、「作業者動作情報」とも称する)を記憶する。作業者動作情報は、分割エリア記憶部42Aで分割されたエリアごとに記憶される。作業者動作情報は、作業者12が各エリアに対して作業を実施している様子を撮像した撮像データそのもの、及び/又は、この撮像データに含まれる作業者12の作業動作や作業エリアを抽出した情報、などとすることができる。
【0034】
適正判定部44は、適正動作記憶部42Cに記憶された適正作業動作情報と、撮像装置30によって取得された撮像データに含まれる作業者12の動作情報とに基づいて、作業者12が実施した作業動作が適正であるか否かを分割されたエリアごとに判定する。本実施形態では、適正作業動作情報と、撮像データにおける作業者12の動作情報とを比較して、作業者12の動作が適正な動作の範囲に含まれる場合に適正な動作であると判定し、含まれない場合に不適正な動作であると判定する。
【0035】
投影情報制御部48は、記憶部42に記憶された情報に基づいて、エンジン構成物14上に、分割されたエリアごとに当該エリアに関連付けられた作業内容情報を投影させるように情報投影装置20を制御する。本実施形態では、予め設定された順番でエリアごとに作業内容情報を投影されるように、情報投影装置20を制御する。投影情報制御部48は、情報投影装置20により作業内容情報とともにエリアを分割する枠(エリア分割表示体)をエンジン構成物14に投影させることができる。
【0036】
また、投影情報制御部48は、作業が実施されたエリアに対して適正判定部44が不適正な動作であると判定した場合に、当該エリアに不適正であることを知らせる情報を投影させるように情報投影装置20を制御する。本実施形態では、不適正と判定された場合に、情報投影装置20によって、エンジン構成物14の全エリアを赤色に表示させるようにし、さらに、表示部28に、適正判定部44によって不適正と判定された作業者12の作業動作情報(例えば、不適正と判断された作業動作の映像)を適正な作業動作の情報(例えば、適正動作記憶部42Cに記憶された適正な動作を撮像した映像)と一緒に表示させるようにしている。なお、不適正と判定された場合に投影される情報は、これに限られず、例えば、不適正と判定されたエリアのみを赤色に表示させる、又は、不適正と判定されたエリアに不適正と判定された作業者12の作業動作情報を投影する等、少なくとも、作業者12が作業中に不適正な作業が行われたことを認識できるように情報が投影されればよい。
【0037】
エリア選択部46は、エンジン構成物14に対する作業後に撮像装置30から取得された撮像データに含まれるエンジン構成物14に対する作業者12の所定の動作又は所定の姿勢に基づいて、エリア分割情報で規定された複数のエリアから1つのエリアを選択する。ここで、作業後とは、分割された複数のエリアのうち、少なくとも一部のエリアの作業が実施された後を意味する。エリア選択部46は、例えば、作業者12が指差し動作をした場合に指差しの先にあるエリアを選択する、作業者12の身体の向き及び視線の方向からエリアを選択する、又は、エンジン構成物14に対する作業者12の手の位置からエリアを選択する、などにより、複数のエリアから1つのエリアを選択することができる。
【0038】
本実施形態のエリア選択部46は、全てのエリアの作業が実施された後に、作業者12の指差し動作に基づいてエリアを選択するように設定されている。以下の説明では、エリア選択部46がエリアを選択するための作業者12の指差し動作を所定のエリア選択動作とも称する。
【0039】
投影情報制御部48は、エリア選択部46によって1つのエリアが選択された場合に、情報投影装置20によって、エリア選択部46が選択したエリアに、当該エリアに対して実施された作業者12の作業動作情報を投影させる。
【0040】
作業完了判定部47は、所定の条件を満たしている場合に、作業が完了したと判定する。本実施形態の作業完了判定部47は、分割された全てのエリアに対して、適正判定部44が、適正な作業が実施されたと判定し、その後、作業者12が予め設置された所定の作業完了を示す動作を行った場合に、作業完了と判定する。作業者12による作業完了動作の有無の判定は、撮像装置30で取得された撮像データに含まれる作業者12の動作から行うことができる。一例として、作業完了動作は、作業者12がエンジン構成物14上で片方の手を開いた状態で、左右に所定回数(例えば3回)振る動作とすることができる。
【0041】
次に、
図3を用いて、本実施形態の作業保証システム10において制御装置40が実行する処理について説明する。
【0042】
作業保証システム10が起動すると、制御装置40は、撮像装置30から撮像データを取得し(ステップS11)、情報投影装置20によって、分割された複数のエリアのうち、1つのエリアに対する作業内容情報を投影させる(ステップS12)。各エリアに対する作業内容情報の投影は、記憶部42に予め設定された順番に従って行われる。
【0043】
作業内容情報が投影されると、制御装置40の適正判定部44は、作業が実施されたエリアに対して、撮像データに含まれる作業者動作情報と、適正動作記憶部42Cに記憶された適正作業動作情報とに基づいて、作業者12が実施した作業動作が適正であるか否かを判定する(ステップS13)。適正判定部44が不適正であると判定すると(ステップS13:No)、エンジン構成物14及び表示部28に、不適正であることを知らせる情報を投影し(ステップS14)、その後、ステップ13に戻り、やり直された作業が適正であるか否かを判定する。
【0044】
ステップS13で作業が適正であると判定された場合(ステップS13:Yes)、制御装置40は、次に作業内容情報を投影する作業エリアがあるか否かを判定し(ステップS15)、ある場合には(ステップS15:Yes)、ステップS12へ移行して、次の作業エリアに作業内容情報を投影する。
【0045】
ステップS15において、次の作業エリアがない、すなわち、全てのエリアに対して適正な作業が行われた場合(ステップS15:No)、制御装置40は、ステップS15の判定後に取得された撮像データから、作業者12による所定のエリア選択動作があるか否かを判断し(ステップS16)。エリア選択動作があった場合(ステップS16:Yes)、エリア選択部46は、1つのエリアを選択し、エンジン構成物14及び表示部28に、選択されたエリアに実施された作業者12の作業動作情報を投影する。
【0046】
ステップS16において、所定のエリア選択動作がない場合、作業完了判定部47は、撮像データに所定の作業完了を示す動作が含まれるか否かを判定し(ステップS18)、作業完了動作がある場合には(ステップS18:Yes)、作業完了と判定し、処理を終了する。作業完了動作がない場合には(ステップS18:No)、ステップS16へ移行して、その後の処理を継続する。
【0047】
上述したように、本実施形態の作業保証システム10では、エンジン構成物14を作業内容に基づいて複数に分割したエリアごとに、作業者12の作業動作が適正であったか否かを判定することができるので、エンジン構成物14に対して1人の作業者12が複数の部位に作業を実施する作業工程において、分割されたエリアごとに作業保証を行うことができる。また、作業動作が不適正であった場合には、当該エリアに不適正であることを知らせる情報が投影されるので、作業者12は、作業中に不適正な作業が実施されたことを認識することができる。
【0048】
また、本実施形態の作業保証システム10では、不適正な作業が実施された際に、情報投影装置20によって不適正な作業動作を示す情報が投影されるので、作業者12は投影された情報を見て、どの作業が不適正であったのかを認識することができる。このように、分割されたエリアごとに作業後の適正判定を行うことで、不適正な作業動作がなされた場合に、その部位をピンポイントで見つけることができ、作業性を向上させることができる。また、作業確認のスピードを向上させて、製造ラインをスムーズに流すことができる。
【0049】
また、本実施形態の作業保証システム10では、作業者12が、作業後に特定の部位の作業を確認したい場合に、作業者12がこの部位が含まれるエリアを指で指し示すことで、このエリアに実施された作業動作の映像を加工対象物14及び表示部28に表示させて、確認することができる。本実施形態のように、加工対象物14とは別に、表示部28にも映像を表示させることで、作業者12は、視認しやすい方の情報を見て作業を確認することができる。
【0050】
なお、作業保証システム10において、表示部28はオプションであって表示部28を備えていない構成であってもよい。表示部28を設けることで、上述したように、作業者12が視認しやすい方を選んで見ることができる。また、例えば、情報量が多い場合に、エンジン構成物14と表示部28とに別々の情報を投影させたりすることも可能である。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、本発明に係る作業保証システム10において、エリア選択部46は、全てのエリアの作業が完了する前であっても、一部のエリアの作業が完了している場合に、完了したエリアに対して作業者12が行った指差し動作に基づいて1つのエリアを選択する構成とすることができる。投影情報制御部48は、1つのエリアが選択された場合、作業内容情報の投影を一時停止して、選択されたエリアに対して実施された作業者12の作業動作情報を投影させるようにすることができる。
【0053】
また、本発明に係る作業保証システム10は、エリア選択部46を備えていない構成であってもよい。かかる場合、
図3に示す制御処理において、ステップS15で次の作業エリアがないと判断された場合(すなわち、全てのエリアに適正な作業が実施されたと判定された場合)に、作業完了判定部47は作業が完了したと判定し、処理を終了することができる。
【0054】
また、本発明に係る作業保証システム10は、情報投影装置20によって、エンジン構成物14上に、エリアを分割した枠を表示させる構成とすることができる。
図4は、エンジン構成物14上に、エンジン構成物14を複数のエリアに分割した格子状の枠26を投影させた例を示している。情報投影装置20は、枠26で区分されたエリアごとに作業動作情報の投影することができ、適正判定部44は、区分されたエリアごとに実施された作業の適正判定を行うことができる。
図4に示す例では、作業者12が指差し動作によって指定したエリア27に作業者12が実施した作業動作の情報が投影されている。
【0055】
また、本発明に係る作業保証システム10において、情報投影装置20は、プロジェクタに限られず、視覚的に加工対象物上に情報を投影できる装置であればよく、例えば、作業者12と加工対象物との間に設置された透明又は半透明な透過型ディスプレイ上に映像等の情報を投影する透過型ディスプレイ装置であってもよい。透過型ディスプレイ装置は、例えば、拡張現実用のスマートグラス等のメガネ型のウェアラブル端末とすることができる。情報投影装置としてスマートグラスを使用する場合、作業者はスマートグラスを装着した状態で、メガネ型のレンズ(すなわち透過型ディスプレイ)越しに加工対象物を視認することができ、さらに、この加工対象物に重畳するようにレンズに作業内容情報をAR(Augmented Reality:拡張現実)表示させることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 作業保証システム
12 作業者
14 エンジン構成物(加工対象物)
20 情報投影装置
28 表示部
30 撮像装置
40 制御装置
42 記憶部
44 適正判定部
46 エリア選択部
47 作業完了判定部
48 投影情報制御部