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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110822
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220722BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220722BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220722BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20220722BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20220722BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220722BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/18 F
A01P1/00
A01N25/10
A01N59/20 Z
C09J7/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006470
(22)【出願日】2021-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.刊行物名 バイプロ▲TM▼テープ(Virus PROtection)抗菌・抗ウイルステープ 製品パンフレット 2.発行者名 株式会社サンエー化研 3.発行年月日 令和2年9月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】風間 悠来
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕貴
【テーマコード(参考)】
4F100
4H011
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AA05
4F100AA05B
4F100AA10
4F100AA10B
4F100AA17
4F100AA17B
4F100AB17
4F100AB17B
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB05
4F100CB05C
4F100EH20
4F100GB08
4F100GB66
4F100JB16
4F100JB16B
4F100JK06
4F100JK14
4F100JK14A
4F100JK14B
4F100JL13
4F100JL13C
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA08
4H011DH02
4J004AA05
4J004AA06
4J004AA09
4J004AA10
4J004AA14
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC03
4J004CD02
4J004CE01
4J004FA10
(57)【要約】
【課題】高い透明性を有し、かつ、抗菌性や抗ウイルス性を有する積層体を有する積層体を提供する。
【解決手段】基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗ウイルス層とを備える積層体において、前記基材層に熱可塑性樹脂を配合し、前記抗ウイルス層に熱可塑性樹脂および一価の銅化合物を配合し、蛍光X線分析法により測定される前記抗ウイルス層に含まれる前記一価の銅化合物の銅元素の量が、前記抗ウイルス層の総質量に対して0.04~0.15質量%となるように調整し、前記基材層の表面におけるエチレングリコールの接触角と前記抗ウイルス層の表面におけるエチレングリコールの接触角との差の絶対値が0~10、全光線透過率が85%以上、ヘーズが40%以下となるようにそれぞれ調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗ウイルス層とを備える積層体であって、
前記基材層が熱可塑性樹脂を含み、
前記抗ウイルス層が熱可塑性樹脂および一価の銅化合物を含み、
蛍光X線分析法により測定される前記抗ウイルス層に含まれる前記一価の銅化合物の銅元素の量が、前記抗ウイルス層の総質量に対して0.04~0.15質量%であり、
前記基材層の表面におけるエチレングリコールの接触角と前記抗ウイルス層の表面におけるエチレングリコールの接触角との差の絶対値が0~10であり、
全光線透過率が85%以上であり、
ヘーズが40%以下である、前記積層体。
【請求項2】
前記一価の銅化合物が、塩化銅(I)、酢酸銅(I)、ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、酸化銅(I)、硫化銅(I)およびチオシアン酸銅(I)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材層の表面におけるエチレングリコールの接触角が40~90°である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記抗ウイルス層の表面におけるエチレングリコールの接触角が40~90°である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
粘着剤層と請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体とを備える積層物品であって、前記粘着剤層の反対側に前記積層体の抗ウイルス層が位置する、積層物品。
【請求項6】
共押出積層物品である、請求項5に記載の積層物品。
【請求項7】
マスキングテープである、請求項5または6に記載の積層物品。
【請求項8】
(a)熱可塑性樹脂を含む基材層を準備する工程、
(b)熱可塑性樹脂および一価の銅化合物を混合して抗ウイルス層を得る工程、および
(c)前記基材層の少なくとも一方の面に前記抗ウイルス層を積層する工程
を含む積層体の製造方法であって、
蛍光X線分析法により測定される前記抗ウイルス層に含まれる前記一価の銅化合物の銅元素の量が、前記抗ウイルス層の総質量に対して0.04~0.15質量%となるように調整され、
前記基材層の表面におけるエチレングリコールの接触角と前記抗ウイルス層の表面におけるエチレングリコールの接触角との差の絶対値が0~10であり、
全光線透過率が85%以上であり、
ヘーズが40%以下である、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスの増殖を防止する抗ウイルス層を備えた積層体およびその製造方法、ならびに前記積層体を備えた積層物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生の観点から、細菌や菌類等の微生物、ウイルス等を除去および増殖防止のために様々な試みがなされている。家庭の水回り等の生活空間においては特に微生物やウイルス等が増殖しやすく、近年では、これらの生活空間で用いられることが多いプラスチック製品等の樹脂製品に、微生物やウイルス等の増殖を防止する効果(抗菌性、抗ウイルス性)を付与する試みもなされている。具体的には、抗菌性や抗ウイルス性を有する物質を樹脂製品に配合する、樹脂製品の表面を抗菌性や抗ウイルス性を有する物質でコーティングする等の方法が採られている。
【0003】
一方で、抗菌性や抗ウイルス性を付与することができる物質の探索がなされており、銀化合物又は銅化合物が抗菌性、抗ウイルス性を有し、かつ安全に使用できることが知られている(例えば、特許文献1~5)。
【0004】
ところで、樹脂製品は、その用途によって高い透明性を有すること、具体的には、該樹脂製品を介した場合であっても反対側を良好に視認することができる高い透明性が求められる場合がある。しかしながら、樹脂製品に抗菌性や抗ウイルス性を有する物質を配合する場合、または樹脂製品の表面を抗菌性や抗ウイルス性を有する物質でコーティングする場合には、それらの物質の性質上、予めそれらの物質を樹脂および/または液体に十分に分散させた中間体を作製し、そのような中間体を用いて抗菌性や抗ウイルス性を付与する必要があるのが一般的である。一方で、それらの中間体が樹脂製品の全光透過率を低下させ、結果として樹脂製品の透明性の低下を引き起こす場合があることも知られている。近年使用されている銅化合物も例外ではなく、銅化合物を含む従来のプラスチック製品は、銅化合物の配合またはコーティングに起因して全光透過率が低く、透明性が低いものであった。
【0005】
このような状況下、高い透明性を有し、かつ、抗菌性や抗ウイルス性を有する樹脂製品が依然として求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/40048号公報
【特許文献2】特開2017-178942号公報
【特許文献3】特開2015-113340号公報
【特許文献4】特開2014-104376号公報
【特許文献5】特開平9-248883号公報
【0007】
本発明の目的は、高い透明性を有し、かつ、抗菌性や抗ウイルス性を有する積層体およびその製造方法、ならびに該積層体を備えた積層物品を提供することにある。
【0008】
今般、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、基材層と抗ウイルス層とを備える積層体において、抗ウイルス層に一価の銅化合物を配合し、蛍光X線分析法により測定される抗ウイルス層に含まれる一価の銅化合物の銅元素の量が0.04~0.15質量%となるように調整することにより、積層体に高い抗ウイルス性と高い透明性とを付与することができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0009】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた抗ウイルス層とを備える積層体であって、
前記基材層が熱可塑性樹脂を含み、
前記抗ウイルス層が熱可塑性樹脂および一価の銅化合物を含み、
蛍光X線分析法により測定される前記抗ウイルス層に含まれる前記一価の銅化合物の銅元素の量が、前記抗ウイルス層の総質量に対して0.04~0.15質量%であり、
前記基材層の表面におけるエチレングリコールの接触角と前記抗ウイルス層の表面におけるエチレングリコールの接触角との差の絶対値が0~10であり、
全光線透過率が85%以上であり、
ヘーズが40%以下である、前記積層体。
[2]前記一価の銅化合物が、塩化銅(I)、酢酸銅(I)、ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、酸化銅(I)、硫化銅(I)およびチオシアン酸銅(I)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、[1]に記載の積層体。
[3]前記基材層の表面におけるエチレングリコールの接触角が40~90°である、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]前記抗ウイルス層の表面におけるエチレングリコールの接触角が40~90°である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]粘着剤層と[1]~[4]のいずれかに記載の積層体とを備える積層物品であって、前記粘着剤層の反対側に前記積層体の抗ウイルス層が位置する、積層物品。
[6]共押出積層物品である、[5]に記載の積層物品。
[7]マスキングテープである、[5]または[6]に記載の積層物品。
[8](a)熱可塑性樹脂を含む基材層を準備する工程、
(b)熱可塑性樹脂および一価の銅化合物を混合して抗ウイルス層を得る工程、および
(c)前記基材層の少なくとも一方の面に前記抗ウイルス層を積層する工程
を含む積層体の製造方法であって、
蛍光X線分析法により測定される前記抗ウイルス層に含まれる前記一価の銅化合物の銅元素の量が、前記抗ウイルス層の総質量に対して0.04~0.15質量%となるように調整され、
前記基材層の表面におけるエチレングリコールの接触角と前記抗ウイルス層の表面におけるエチレングリコールの接触角との差の絶対値が0~10であり、
全光線透過率が85%以上であり、
ヘーズが40%以下である、前記製造方法。
【0010】
本発明によれば、基材層と抗ウイルス層とを備える積層体において、抗ウイルス層に一価の銅化合物を配合し、蛍光X線分析法により測定される抗ウイルス層に含まれる一価の銅化合物の銅元素の量が0.04~0.15質量%となるように調整することにより、積層体に高い抗ウイルス性と高い透明性とを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、基材層と該基材層の一方の面に設けられた抗ウイルス層とを有する本発明の積層体の一実施形態を示した断面模式図である。
図2図2は、基材層と該基材層の両方の面に設けられた抗ウイルス層とを有する本発明の積層体の一実施形態を示した断面模式図である。
図3図3は、粘着剤層と本発明の積層体とを備える積層物品の一実施形態を示した断面模式図である。
【発明の具体的説明】
【0012】
積層体
本発明の積層体を、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明の積層体の一実施形態を示した断面模式図である。本発明の積層体1は、基材層10と、基材層10の少なくとも一方の面に設けられた抗ウイルス層11とを備えている。すなわち、本発明の積層体は、図1に示すように、基材層10の一方の面に抗ウイルス層11を備えていてもよく、また、図2に示すように、基材層10の両方の面に抗ウイルス層11を備えていてもよい。また、本発明の積層体1は、基材層10と抗ウイルス層11との間にプライマー層を備えていてもよい。なお、本発明の積層体は、薄い膜状のもの全般を指し、一般にシート、フィルム、膜、箔等(以下、「シート等」ともいう)と呼ばれるものが包含される。
【0013】
基材層10と抗ウイルス層11とを積層する方法としては、積層体を成形する際に通常用いられる方法を用いることができる。かかる成形方法としては、例えば、積層体を構成する各層を予め別々のシート等として成形した後に各層をなすシート等を接着させて積層する方法、押出法によって各層の形成および積層を同一行程で行う方法等が挙げられる。前者の例としては、空冷インフレーション成形法、空冷二段冷却インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、水冷インフレーション成形法等が挙げられる。また、後者の例としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法等が挙げられる。また汎用性の観点から、溶液塗工法を用いて、抗ウイルス性を有する物質を含む分散液を基材層10の表面に塗工した後、オーブン等を用いて乾燥させることにより分散液の溶媒を蒸発させて積層体を成形することもできる。
【0014】
積層体1は85%以上の全光線透過率を有し、かつ、40%以下のヘーズを有し、それにより積層体1を介した場合であっても反対側を良好に視認することができる。積層体1の全光線透過率およびヘーズは、積層体を構成する各層の成分および厚さ等を適宜選択することによって調整することができる。
【0015】
積層体1の全光線透過率およびヘーズは、例えば、以下のようにして測定される。すなわち、積層体1を縦50mm×横50mmに切断して試験片を作製し、該試験片についてヘーズメーターNDH7000II(日本電色工業株式会社製)を用いて、全光線透過率についてはJIS K7361、ヘーズについてはJIS K7136にそれぞれ準拠した方法により測定される。
【0016】
本発明の積層体1の厚さは、積層体の用途および要求される品質レベルにより適宜設定することができるが、一般的には成形性、使いやすさ等の観点から、好ましくは30~300μm、より好ましくは40~200μm、より一層好ましくは50~100μmである。
【0017】
以下、本発明の積層体を構成する各層について具体的に説明する。
[基材層]
基材層10は、積層体の形態の維持、物理的な強度の確保等の役割を担うものである。基材層10は、熱可塑性樹脂を含んでなる。基材層10の形態としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、シート、フィルム等の形態とすることができる。
【0018】
基材層10は、熱可塑性樹脂を含み、好ましくは熱可塑性樹脂からなる。基材層10を構成する熱可塑性樹脂としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、基材層10は単層で構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよいが、好ましくは単層で構成される。
【0019】
好ましい実施形態によれば、基材層10を構成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含んでなる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、エチレン-シクロオレフィンコポリマー樹脂(環状オレフィンコポリマー)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー樹脂、エチレン-アクリルコポリマー樹脂等が用いられる。
【0020】
好ましい実施形態によれば、基材層10は、熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を単独で含む。ポリエチレン樹脂を構成するポリエチレンとしては、その密度によらず、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンのいずれのポリエチレンも用いることができる。
【0021】
基材層10を構成する熱可塑性樹脂としては、後述する抗ウイルス層11との関係において、基材層10の表面におけるエチレングリコールの接触角と抗ウイルス層11の表面におけるエチレングリコールの接触角との差の絶対値(すなわち、|(基材層10の表面におけるエチレングリコールの接触角)-(抗ウイルス層11の表面におけるエチレングリコールの接触角)|の値)が0~10となるような熱可塑性樹脂が選択される。基材層10の表面におけるエチレングリコールの接触角と抗ウイルス層11の表面におけるエチレングリコールの接触角との差の絶対値が上記範囲となるように調整することにより、基材層10と抗ウイルス層とが高い密着性をもって積層される。好ましい実施形態によれば、基材層10と抗ウイルス層11との密着性は、以下のようにして測定される。すなわち、基材層10と抗ウイルス層11とを備える積層体1の両面に25mm幅のセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製)を、2kg荷重ローラーを用いて100mmの長さにわたり貼着させ、裁断して幅25mm×長さ100mmの短冊状の試験片を作製する。次いで、試験片を一昼夜静置し、積層体の両面に貼着されたセロテープをチャックで固定し、剥離速度300m/分でT字剥離試験を行い、基材層10と抗ウイルス層11との間の剥離の有無で積層体1の密着性を評価する。
【0022】
好ましい実施形態によれば、基材層10は、その表面におけるエチレングリコールの接触角が40~90°となるように調整される。
【0023】
基材層10の表面におけるエチレングリコールの接触角は、例えば、以下のようにして測定される。すなわち、基材層10の単層を作製し、接触角計DropMaster500(協和界面科学株式会社製)を用いて、JIS R3257(1999)に準拠した液適法により接触角N=5として測定される。
【0024】
基材層10は、本発明の効果が奏されるのを妨げない範囲において、必要に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑沢剤、分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、熱可塑性樹脂をシート状またはフィルム状に成形する際に、基材層10の他の構成成分と混合して押出成形するか、または予めこれらの添加剤を基材層10の他の構成成分と混合したマスターバッチを、押出成形の際にさらに基材層10の他の構成成分と混合して成形することで基材層10に配合することができる。
【0025】
基材層10の単層10μmの全光線透過率は、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、積層体の透明性(積層体1を介した場合における反対側の良好な視認性)の確保の観点から、好ましくは90%以上であり、より好ましくは92%以上であり、より一層好ましくは95%以上である。なお、基材層10を構成する熱可塑性樹脂の全光線透過率は、該熱可塑性樹脂の縦50mm×横50mm×厚さ10μmの試験片を用いて、上記の積層体1の全光線透過率の測定方法と同様の方法により測定される。
【0026】
基材層10の単層10μmのヘーズは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、積層体の透明性の確保の観点から、好ましくは35%以下であり、より好ましくは30%以下であり、より一層好ましくは25%以下である。なお、基材層10の全光線透過率は、縦50mm×横50mm×厚さ10μmの試験片を用いて、上記の積層体1の全光線透過率の測定方法と同様の方法により測定される。
【0027】
基材層10の厚さは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、積層体の用途に応じて適宜設定することができるが、積層体の透明性の確保の観点から、基材層10の単層10μmの全光線透過率が90%以上、かつヘーズが40%以下となるように調整することが好ましい。積層体の形態の維持、物理的な強度の確保等の観点も考慮すると、例えば、20~100μm程度とすることができる。
【0028】
[抗ウイルス層]
抗ウイルス層11は、上記した基材層10の少なくとも一方の面に設けられて、積層体1の抗ウイルス層11が設けられた側の面において、抗ウイルス作用を奏するものである。
【0029】
抗ウイルス層11が奏する「抗ウイルス作用」には、抗ウイルス層11にウイルスが付着した場合に、そのウイルス自体を不活性化する作用、およびそのウイルスが増殖することを阻害する作用が包含される。
【0030】
抗ウイルス層11は、ウイルスが有するゲノムの種類(DNAであるかRNAであるか、また、一本鎖であるか二本鎖であるか)、エンベロープの有無等によらず、様々なウイルスに対して抗ウイルス作用を奏し得る。抗ウイルス層11は、例えば、ライノウイルス、ポリオウイルス、口蹄疫ウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、ヘパトウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、E型肝炎ウイルス、A型、B型、C型インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)、麻疹ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型、C型肝炎ウイルス、東部および西部馬脳炎ウイルス、オニョンニョンウイルス、風疹ウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルウス、グアナリトウイルス、サビアウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、スナバエ熱、ハンタウイルス、シンノンブレウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マーブルグウイルス、コウモリリッサウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトコロナウイルス、SARSコロナウイルス、ヒトポルボウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、水痘、帯状発疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、モラシポックスウイルス、パラポックスウイルス等のウイルスに対して抗ウイルス作用を奏し得る。
【0031】
抗ウイルス層11は、ウイルスの他に、ウイルスの代謝、増殖に資する物質(タンパク質、核酸等)が付着した場合であっても、抗ウイルス作用を奏し得る。すなわち、抗ウイルス層11は、ウイルスを含む体液(血液、唾液、汗等)が付着した場合であっても、該体液に含まれるウイルスを不活性化し、その増殖を阻害する作用を奏し得る。
【0032】
抗ウイルス層11は、熱可塑性樹脂および一価の銅化合物を含んでなる。一価の銅化合物は、抗ウイルス層11にそのまま配合してもよく、また、一価の銅化合物を含む中間体として抗ウイルス層11に配合してもよい。好ましい実施形態において、抗ウイルス層11は、熱可塑性樹脂、および一価の銅化合物を含む中間体を含む。
【0033】
[中間体]
抗ウイルス層に配合される中間体は、一価の銅化合物を抗ウイルス層11内に適切に存在させ、抗ウイルス作用を効率よく発現する役割を担うものである。
【0034】
中間体を構成する物質としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、溶液塗工法を用いて抗ウイルス層11を形成する場合、純水、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、キシレン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。また、例えば、押出法、共押出法を用いて抗ウイルス層11を成形する場合、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましく用いられる。
【0035】
中間体の製造には、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、ボールミル、ビーズミル、エクストルーダー、ニーダー、バンバリミキサー等の混錬及び分散装置を用いることができる。
【0036】
抗ウイルス層11を構成する熱可塑性樹脂としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、抗ウイルス層11は単層で構成されていてもよく、複数層で構成されていてもよいが、好ましくは単層で構成される。
【0037】
好ましい実施形態によれば、抗ウイルス層11を構成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含んでなる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、エチレン-シクロオレフィンコポリマー樹脂(環状オレフィンコポリマー)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー樹脂、エチレン-アクリルコポリマー樹脂等が用いられる。
【0038】
好ましい実施形態によれば、抗ウイルス層11は、熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂を単独で含む。ポリエチレン樹脂を構成するポリエチレンとしては、その密度によらず、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンのいずれのポリエチレンも用いることができる。
【0039】
抗ウイルス層11を構成する熱可塑性樹脂としては、上記の基材層10を構成する熱可塑性樹脂との関係において、基材層10に含まれる熱可塑性樹脂の表面におけるエチレングリコールの接触角と抗ウイルス層11に含まれる熱可塑性樹脂の表面におけるエチレングリコールの接触角との差の絶対値が0~10となるような熱可塑性樹脂が選択される。
【0040】
好ましい実施形態によれば、抗ウイルス層11を構成する熱可塑性樹脂は、その表面におけるエチレングリコールの接触角が40~90°となるように調整される。なお、抗ウイルス層11を構成する熱可塑性樹脂の表面におけるエチレングリコールの接触角は、上記の基材層10を構成する熱可塑性樹脂の表面におけるエチレングリコールの接触角と同様の方法により測定される。
【0041】
抗ウイルス層11を構成する一価の銅化合物としては、例えば、一価銅の各種の塩が挙げられる。一価銅の塩としては、例えば、塩化物(CuCl)、酢酸物(酢酸化合物)(CuOOCCH)、硫化物(CuS)、ヨウ化物(CuI)、臭化物(CuBr)、酸化物(CuO)、チオシアン化物(CuSCN)およびそれらの混合物が挙げられる。これらの一価の銅化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい実施形態によれば、抗ウイルス層11を構成する一価の銅化合物としては、塩化物(CuCl)、ヨウ化物(CuI)、臭化物(CuBr)が単独で用いられる。
【0042】
一価の銅化合物の形態としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、ナノ粒子等の微粒子、鱗片状の粉末等の形態とすることができる。好ましい態様において、一価の銅化合物は、ナノ粒子の形態で用いられる。
【0043】
抗ウイルス層11における一価の銅化合物の含有量は、抗ウイルス層内で一価の銅化合物が均一に分散されれば規定することができるが、比重等の影響による局在化、または性能向上のため偏在化させるように構成する場合も考慮し、蛍光X線分析法により測定した抗ウイルス層11における銅元素の量が抗ウイルス層11の総質量に対して0.04~0.15質量%になるように調整することが好ましい。
【0044】
抗ウイルス層11は、本発明の効果が奏されるのを妨げない範囲において、必要に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑沢剤、分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、熱可塑性樹脂をシート状またはフィルム状に成形する際に、抗ウイルス層11の他の構成成分と混合して押出成形するか、または予めこれらの添加剤を抗ウイルス層11の他の構成成分と混合したマスターバッチを、押出成形の際にさらに抗ウイルス層11の他の構成成分と混合して成形することで抗ウイルス層11に配合することができる。
【0045】
抗ウイルス層11の単層10μmの全光線透過率は、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、積層体の透明性の確保の観点から、好ましくは80%以上であり、より好ましくは82%以上であり、より一層好ましくは85%以上である。なお、抗ウイルス層11の全光線透過率は、該熱可塑性樹脂の縦50mm×横50mm×厚さ10μmの試験片を用いて、上記の積層体1の全光線透過率の測定方法と同様の方法により測定される。
【0046】
抗ウイルス層11の単層10μmのヘーズは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではないが、積層体の透明性の確保の観点から、好ましくは35%以下であり、より好ましくは30%以下であり、より一層好ましくは25%以下である。なお、抗ウイルス層11のヘーズは、該熱可塑性樹脂の縦50mm×横50mm×厚さ10μmの試験片を用いて、上記の積層体1の全光線透過率の測定方法と同様の方法により測定される。
【0047】
抗ウイルス層11の厚さは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、積層体の用途に応じて適宜設定することができるが、積層体の透明性の確保の観点から、抗ウイルス層11を厚さ10μmの単層とした場合の全光線透過率が80%以上、かつヘーズが35%以下となるように調整することが好ましい。例えば、抗ウイルス層11の厚さは、1~10μm程度とすることができる。
【0048】
基材層10と抗ウイルス層11との間には、プライマー層を塗工して形成することもできる。プライマー層を塗工して形成することにより、基材層10と抗ウイルス層11との良好な接着性を実現することができ、基材層10と抗ウイルス層11とを接着させるに当たり、コロナ放電処理によりぬれ性(ぬれ張力)を向上させる必要がなくなる。その結果、設備等の要因によりコロナ放電処理を行うのが困難な場合であっても本発明の積層体を製造することが可能となる。プライマー層を構成する成分としては、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、接着樹脂、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0049】
プライマー層を構成する接着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン-アクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等)、ポリビニルアセタール樹脂(例えば、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等)、セルロース樹脂が挙げられる。これらの接着樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、後述するゴム系粘着剤と組み合わせて用いてもよい。
【0050】
プライマー層を構成するゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタン樹脂が挙げられる。これらのゴム系粘着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、上述した接着樹脂と組み合わせて用いてもよい。
【0051】
積層体1は、上述した各層以外のさらなる層を備える積層物品とすることができる。したがって、本発明の一つの態様によれば、本発明の積層体と粘着剤層とを備える積層物品が提供される。
【0052】
積層体1に設けられるさらなる層として、例えば、基材層10の一方の面に粘着剤層を形成することができる。具体的には、基材層10の一方の面に抗ウイルス層11が設けられている場合には抗ウイルス層11が設けられている面と反対側の面、また、基材層10の両方の面に抗ウイルス層11が設けられている場合にはいずれかの面に粘着剤層を形成し、積層体1と粘着剤層とを備える積層物品を得ることができる。積層体1に粘着剤層を設けることにより、積層体1を被着体に接着させることが可能となる。
【0053】
粘着剤層を構成する成分は、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体系粘着剤、ニトリル―ブタジエン共重合体系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤、ポリブタジエン系粘着剤、ウレタン樹脂、スチレン系熱可塑性樹脂、アクリル系熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらのうち、好ましくはアクリル系粘着剤が用いられる。
【0054】
粘着剤層の厚さは、本発明の効果が奏されるのを妨げない限り特に限定されるものではなく、積層物品の用途に応じて適宜設定することができる。粘着剤層の厚さが小さすぎることにより、被着体への積層体1の密着が不足するのを回避するために、粘着剤層の厚さの下限値は、例えば5μm程度とすることができる。一方、粘着剤層の厚さが大きすぎることにより、被着体への積層体1の密着が過度になり、剥離性および作業性が低下することを避けるために、粘着剤層の厚さの上限値は、例えば50μm程度とすることができる。
【0055】
粘着剤層の粘着力は、積層物品の用途や粘着剤層の厚さとの関係で適宜設定することができるが、適度な密着性および剥離時の糊残りの抑制の観点から、例えば、0.7~3.0N/25mmとすることができる。
【0056】
基材層10と粘着剤層との間には、プライマー層を塗工して形成することもできる。基材層10と粘着剤層との間に形成されるプライマー層の成分、形成方法等は、上記の基材層10と抗ウイルス層11との間に形成されるプライマー層と同様のものとすることができる。
【0057】
このように、積層体1と粘着剤層とを備える積層物品としては、例えば、マスキングテープ、保護フィルム等が挙げられる。
【0058】
積層体の製造方法
本発明の一つの態様によれば、高い抗ウイルス性と高い透明性とを両立した積層体の製造方法が提供される。本発明の製造方法は、積層体を構成する抗ウイルス層に一価の銅化合物を配合し、蛍光X線分析法により測定される抗ウイルス層に含まれる一価の銅化合物の銅元素の量が0.04~0.15質量%となるように調整することを含む。
【0059】
好ましい実施形態によれば、抗ウイルス層に配合される一価の銅化合物は、塩化銅(I)、酢酸銅(I)、ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、酸化銅(I)、硫化銅(I)、チオシアン酸銅(I)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0060】
好ましい実施形態によれば、基材層に含まれる熱可塑性樹脂の表面におけるエチレングリコールの接触角が40~90°となるように調整される。
【0061】
好ましい実施形態によれば、抗ウイルス層に含まれる熱可塑性樹脂の表面におけるエチレングリコールの接触角が40~90°となるように調整される。
【0062】
本発明の製造方法によれば、積層体は、従来公知の多層フィルム成形方法に従って製造することができる。かかる成形方法としては、例えば、積層体を構成する各層を予め別々のフィルムまたはシートとして成形した後に各層をなすフィルムまたはシートを接着させて積層する方法、押出法によって各層の形成および積層を同一行程で行う方法等が挙げられる。前者の例としては、空冷インフレーション成形法、空冷二段冷却インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、水冷インフレーション成形法等が挙げられる。また、後者の例としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法等が挙げられる。また汎用性の観点から、溶液塗工法を用いて、抗ウイルス性を有する物質を含む分散液を基材層10の表面に塗工した後、オーブン等を用いて乾燥させることにより分散液の溶媒を蒸発させて積層体を成形することもできる。
【実施例0063】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本実施例は、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図するものではない。また、本明細書において、特段の記載がない限り、測定値の単位および測定方法はJIS(日本工業規格)による規定に従うものとする。
【0064】
積層体の作製
基材層を構成する熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂1(ノバテックLD LF580、日本ポリエチレン社製)およびポリエチレン樹脂2(ノバテックLD LC522、日本ポリエチレン社製)を準備した。また、抗ウイルス層を構成する熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂1(ノバテックLD LF580、日本ポリエチレン社製)、ポリエチレン樹脂2(LC522、日本ポリエチレン社製)およびポリプロピレン樹脂(PC600A、サンアロマー社製)を準備した。また、抗ウイルス層を構成する一価の銅化合物の中間体として、抗ウイルス剤1(TPPCP0105C01、NBCメッシュテック社製)を準備した。下記表1に示す量で混合して各層を作製し、表1に示す厚さとなるように押出成形加工して、実施例1~7および比較例1~4の各積層体を得た。なお、各層の表面におけるエチレングリコール接触角を、各層の単層の試験片を作製し、接触角計DropMaster500(協和界面科学株式会社製)を用いて、JIS R3257(1999)に準拠した液滴法により接触角N=5として測定した。測定された各層の表面におけるエチレングリコール接触角の差の絶対値を算出した。また、各層の単層10μmの全光線透過率およびヘーズを、各層の縦50mm×横50mm×厚さ10μmの試験片を作製し、ヘーズメーターNDH7000II(日本電色工業株式会社製)を用いて、全光線透過率についてはJIS K7361、ヘーズについてはJIS K7136にそれぞれ準拠した方法により測定した。さらに、各積層体の全光線透過率およびヘーズについても同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0065】
銅元素の量の測定
作製した積層体の抗ウイルス層をハンドヘルド型蛍光X線分析装置X-MET8000Expert(日立ハイテク社製)を用いて、銅元素の濃度を測定、測定値を抗ウイルス層の総質量に対する銅元素の量(存在比率)とした。結果を表1に示す。
【0066】
抗ウイルス性の評価
各積層体の抗ウイルス性を、ISO21702に準拠した方法により測定および評価した。すなわち、各積層体について縦50mm×横50mmの試験片を作製し、各試験片の抗ウイルス層の表面に0.4mLのウイルス(A型インフルエンザウイルス)液を滴下し、縦40mm×横40mmのフィルムをかぶせてウイルス液を抗ウイルス層の表面に密着させた。25℃、相対湿度65%の環境下で24時間静置した後、各試験片を洗浄してウイルス液を除去し、試験片の1cm当たりのウイルス感染価を測定した。式R=Ut-Atに従い、抗ウイルス活性値を算出した。なお、式中、Rは抗ウイルス活性値、Utは無加工試験片の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm)の常用対数の平均、Atは抗ウイルス加工試験片の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm)の常用対数の平均をそれぞれ意味する。算出された抗ウイルス活性値Rが2.0以上である場合に、積層体はウイルスに対する抗ウイルス性を有すると判定した。結果を表1に示す。
【0067】
層間剥離性の評価
各積層体の基材層と抗ウイルス層との密着性を、以下のようにして測定した。すなわち、各積層体の両面に25mm幅のセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製)を、2kg荷重ローラーを用いて100mmの長さにわたり貼着させ、裁断して幅23mm×長さ100mmの短冊状の試験片を作製した。次いで、各試験片を一昼夜静置し、積層体の両面に貼着されたセロテープをチャックで固定し、剥離速度300m/分でT字剥離試験を行い、各積層体の基材層と抗ウイルス層との間の剥離の有無で積層体の密着性を評価した。結果を表1に示す。表1中、「○」の評価は基材層と抗ウイルス層とが分離しなかったことを示し、「×」の評価は基材層と抗ウイルス層とが分離したことを示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1の結果から、抗ウイルス層における一価の銅化合物の銅元素の量が、抗ウイルス層の総質量に対して0.04~0.15質量%の範囲にある場合には、良好な抗ウイルス性と高い透明性とが両立し得ることが示された。また、基材層表面におけるエチレングリコール接触角と抗ウイルス層表面におけるエチレングリコール接触角との差の絶対値が0~10の範囲にある場合には、基材層と抗ウイルス層との密着性が高く、両層が分離しないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、高い抗ウイルス性と高い透明性とを有する積層体を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 積層体
10 基材層
11 抗ウイルス層
12 粘着層
図1
図2
図3