(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110824
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】疎水性皮膜形成剤およびそれを用いる疎水性皮膜形成方法ならびに腐食・摩耗防止剤およびそれを用いる腐食・摩耗防止方法
(51)【国際特許分類】
C23F 11/12 20060101AFI20220722BHJP
B22D 11/124 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C23F11/12 101
B22D11/124 Q
B22D11/124 F
B22D11/124 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006474
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(71)【出願人】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅敏
【テーマコード(参考)】
4E004
4K062
【Fターム(参考)】
4E004KA06
4E004KA16
4E004KA20
4E004MD10
4K062AA03
4K062BA11
4K062BB06
4K062BB12
4K062DA10
4K062FA20
(57)【要約】
【課題】ボイラ設備を除く、純水および軟水を除く水と共存するプラント、特に連続鋳造設備における構成材の腐食、スケール付着によるすきま腐食や製品に発生するもらい錆や汚れを防止することにより、操業時のトラブルやメンテナンスの負荷を低減することができる疎水性皮膜形成剤およびそれを用いる疎水性皮膜形成方法ならびに腐食・摩耗防止剤およびそれを用いる腐食・摩耗防止方法を提供することを課題とする。
【解決手段】有機二塩基酸とアンモニア系化合物との塩を有効成分として含むことを特徴とする、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントの構成材用の疎水性皮膜形成剤、およびその疎水性皮膜形成剤に、有効成分として対象水のMアルカリ度を調整し得る中和剤をさらに含むことを特徴とする、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントの構成材用の腐食・摩耗防止剤により、上記の課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機二塩基酸とアンモニア系化合物との塩を有効成分として含むことを特徴とする、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントの構成材用の疎水性皮膜形成剤。
【請求項2】
前記有機二塩基酸が、炭素数8~12の有機二塩基酸である請求項1に記載の疎水性皮膜形成剤。
【請求項3】
前記アンモニア系化合物が、アンモニアまたは炭素数1~4の低分子量アミン化合物である請求項1または2に記載の疎水性皮膜形成剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の疎水性皮膜形成剤に、有効成分として対象水のMアルカリ度を調整し得る中和剤をさらに含むことを特徴とする、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントの構成材用の腐食・摩耗防止剤。
【請求項5】
前記中和剤が、重炭酸のアルカリ金属塩、重炭酸のアルカリ土類金属塩および炭素数1~4の低分子量のアミン化合物から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の腐食・摩耗防止剤。
【請求項6】
プラントと共存する水(但し、純水および軟水を除く)に、請求項1~3のいずれか1つに記載の疎水性皮膜形成剤を添加して、該プラントの構成材に疎水性皮膜を形成することを特徴とする疎水性皮膜形成方法。
【請求項7】
プラントと共存する水(但し、純水および軟水を除く)に、請求項4または5に記載の腐食・摩耗防止剤を添加して、該水のMアルカリ度を20~150mgCaCO3/Lに調整して、該プラントの構成材の腐食・摩耗を防止することを特徴とする腐食・摩耗防止方法。
【請求項8】
前記プラントが、連続鋳造設備または熱延設備である請求項7に記載の腐食・摩耗防止方法。
【請求項9】
前記連続鋳造設備において蒸気が発生する工程前の冷却水に、前記腐食・摩耗防止剤を添加する請求項8に記載の腐食・摩耗防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性皮膜形成剤およびそれを用いる疎水性皮膜形成方法ならびに腐食・摩耗防止剤およびそれを用いる腐食・摩耗防止方法に関する。本発明は、例えば、連続鋳造法による鋼の製造において、鋳造鋼にスプレーする冷却水に曝される連続鋳造設備中の金属部材の腐食・磨耗防止に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
1960年代までは、鋳型に溶鋼を流し込み、自然冷却して得られた鋼塊を再び加熱し、分塊圧延機で圧延して鋼片をつくる製鋼法が主流であったが、1970年代以降は、溶鋼から直接鋼片をつくる連続鋳造法が拡大してきた。
連続鋳造法では、まず溶鋼が取鍋からタンディッシュ(トラフ)に注入される。タンディッシュ中の溶鋼には、溶鋼表面の酸化を防止し、溶鋼に潤滑性を与えるために、離型剤として可融性粉末(パウダー)が添加される。次いで溶鋼がタンディッシュ底の1以上の開口から鋳型に注入され、一次冷却水で冷却された鋳型により溶鋼が冷却され、溶鋼側面から凝固が始まる。次いで凝固を開始した鋼(スラブ、ビレットまたはブルーム)が二次冷却スプレー帯に送られる。二次冷却スプレー帯は、鋼片の膨張を防止するロールと鋼片の側面に二次冷却水をスプレーして鋼片の凝固を促進するスプレー装置からなる。ロールは、例えば、湾曲型に配置され、垂直に注入された鋼片はロールなどにより曲げられ水平にされ、さらに水平部のロールにより引き出される。次いで完全に凝固した鋼片が適当な長さに切断される。
【0003】
タンディッシュ中の溶鋼に添加されるパウダーとしては、フッ素換算で3~15重量%のフッ化物が多く用いられる。これらのフッ化物のパウダーは、鋳型内で溶鋼に接して溶融し、鋳型内の溶鋼の表面を正常化したのち、鋼片表面に付着しながら鋳型内を通過後、二次冷却水により大部分が鋼片より剥離する。このとき、フッ化物が二次冷却水と反応してフッ酸を生成し、冷却水のpHを著しく低下させ、冷却帯付近のロール、支持部材、スプレーノズル、配管などの金属部材が腐食し、連続鋳造設備の耐用年数を著しく短縮させてしまう。このために、パウダーに由来するフッ酸による悪影響を防止するさまざまな試みがなされてきた。
【0004】
例えば、本願出願人は、フートロールおよび複数のセグメントを有する連続鋳造設備において、フートロールおよびセグメント毎に、鋼にスプレーした冷却水を採取し、そのMアルカリ度を測定し、測定したMアルカリ度が10mgCaCO3/L未満となった場合に、該当するフートロールおよびセグメントにおけるスプレー前の冷却水に炭酸水素アルカリ金属塩を添加して、Mアルカリ度を10mgCaCO3/L以上に調整することを特徴とする連続鋳造設備の腐食・磨耗防止方法を提案している(特開2007-125570号公報:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、連続鋳造品の生産性を向上させるために、装置(設備)の大型化や生産速度の高速化が図られ、生産条件が苛酷になり、上記の先行技術では充分な腐食・摩耗効果が得られないという課題がある。
他方、上記の連続鋳造のような鉄鋼以外の非鉄金属およびセラミックスを取り扱う技術分野においても、プラントおよびその周辺設備の構成材が水やその蒸気(水蒸気)に触れてそれらの構成材が腐食や摩耗を起こすことがあり、それらを防止することが求められている。
【0007】
このようなプラントとしては、高温加工や切削加工などの設備が挙げられる。例えば、切削加工の回転刃の冷却水が飛散または蒸発によりその設備および周辺の構造材に付着してその付着部分が腐食されることがあり、特に高温加熱を伴う設備では顕著である。また、冷却水が加工品自体に付着してその製品価値を低下させることもある。
上記のような課題は、通常、工業規格により水質管理が厳格に規定され、純水や軟水を用いるボイラ設備では発生することはなく、一般上水や工業用水を用いる設備において発生し易い。
【0008】
そこで、本発明は、上記の従来技術の課題や現状に鑑みてなされたものであり、ボイラ設備を除く、純水および軟水を除く水と共存するプラント、特に連続鋳造設備における構成材(金属部材)の腐食、スケール付着によるすきま腐食や製品に発生するもらい錆や汚れを防止することにより、操業時のトラブルやメンテナンスの負荷を低減することができる疎水性皮膜形成剤およびそれを用いる疎水性皮膜形成方法ならびに腐食・摩耗防止剤およびそれを用いる腐食・摩耗防止方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントに用いる水に、(1)有機二塩基酸とアンモニア系化合物との塩を含む疎水性皮膜形成剤を用いることにより、構造材の表面に皮膜が形成されて撥水性が向上し、構造材の腐食が抑制されること、(2)疎水性皮膜形成剤に対象水のMアルカリ度を調整し得る中和剤をさらに含む腐食・摩耗防止剤を用いることにより、構造材の腐食・摩耗が防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、有機二塩基酸とアンモニア系化合物との塩を有効成分として含むことを特徴とする、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントの構成材用の疎水性皮膜形成剤が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記の疎水性皮膜形成剤に、有効成分として対象水のMアルカリ度を調整し得る中和剤をさらに含むことを特徴とする、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントの構成材用の腐食・摩耗防止剤が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、プラントと共存する水(但し、純水および軟水を除く)に、上記の疎水性皮膜形成剤を添加して、該プラントの構成材に疎水性皮膜を形成することを特徴とする疎水性皮膜形成方法が提供される。
【0013】
さらにまた、本発明によれば、プラントと共存する水(但し、純水および軟水を除く)に、上記の腐食・摩耗防止剤を添加して、該水のMアルカリ度を20~150mgCaCO3/Lに調整して、該プラントの構成材の腐食・摩耗を防止することを特徴とする腐食・摩耗防止方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボイラ設備を除く、純水および軟水を除く水と共存するプラント、特に連続鋳造設備における構成材(金属部材)の腐食、スケール付着によるすきま腐食や製品に発生するもらい錆や汚れを防止することにより、操業時のトラブルやメンテナンスの負荷を低減することができる疎水性皮膜形成剤およびそれを用いる疎水性皮膜形成方法ならびに腐食・摩耗防止剤およびそれを用いる腐食・摩耗防止方法を提供することができる。
本発明の疎水性皮膜形成のメカニズムは明らかではないが、有機二塩基酸、アンモニア系化合物およびそれらにより形成される塩が疎水性の分子である有機二塩基酸分子を金属表面に吸着する作用により、プラントの構成材表面に疎水性皮膜を形成して撥水性を付与し、接触する水から保護している、すなわち水をはじき、腐食などの攻撃を防止しているものと、発明者は考えている。
また、本発明の腐食・摩耗の防止は、中和剤がプラントと共存する水のMアルカリ度を腐食・摩耗が生じ難い状態に調整することを共存させることにより達成されるものと考えられる。
【0015】
本発明の疎水性皮膜形成剤は、次の条件のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(1)有機二塩基酸が、炭素数8~12の有機二塩基酸である。
(2)アンモニア系化合物が、アンモニアまたは炭素数1~4の低分子量アミン化合物である。
本発明の腐食・摩耗防止剤は、次の条件を満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(3)中和剤が、重炭酸のアルカリ金属塩、重炭酸のアルカリ土類金属塩および炭素数1~4の低分子量のアミン化合物から選択される少なくとも1種である。
本発明の腐食・摩耗防止方法は、次の条件のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(4)プラントが、連続鋳造設備または熱延設備である。
(5)連続鋳造設備において蒸気が発生する工程前の冷却水に、前記腐食・摩耗防止剤を添加する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.疎水性皮膜形成剤
本発明の疎水性皮膜形成剤は、有機二塩基酸とアンモニア系化合物との塩を有効成分として含むことを特徴とする、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントの構成材用の疎水性皮膜形成剤である。
【0018】
[有機二塩基酸]
有機二塩基酸としては、アンモニア系化合物と共に作用して、プラントの構成材の表面に疎水性皮膜形成し得るものであれば特に限定されない。
有機二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、ドデカン二酸、トリデカンニ酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、グルタコン酸およびアセチレンジカルボン酸が挙げられ、これらの中でも、炭素数8~12の有機二塩基酸が好ましい。
本発明においては、これらの1種を単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの有機二塩基酸の中でも、アンモニア系化合物との塩により形成される疎水性皮膜の均一性とその効果の点でスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸およびドデカン二酸が好ましく、アンモニア系化合物の塩としての溶解性が比較的大きく分子量が大きすぎないものは、塩自体が過剰付着して汚れの原因となることが少ないなどの点で炭素数9または10の二塩基酸のアゼライン酸およびセバシン酸が特に好ましい。
【0019】
例えば、アゼライン酸およびセバシン酸の水100gに対する溶解度は、それぞれ0.24gおよび0.1g程度であり、アゼライン酸アンモニウムおよびセバシン酸アンモニウムの水100gに対する溶解度は、それぞれ2.5gおよび1g程度と考えられ、本発明において有機二塩基酸のアンモニア系化合物の塩の水100gに対する溶解度は、0.5~2g程度のものが好ましい。
【0020】
[アンモニア系化合物]
アンモニア系化合物としては、有機二塩基酸と共に作用して、プラントの構成材の表面に疎水性皮膜形成し得るものであれば特に限定されない。
アンモニア系化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、1-ブタンアミン、2-ブタンアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルプロピルアミン、トリエチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミンおよびメトキシプロピルアミンが挙げられる。
本発明において「アンモニア系化合物」とは、後述するように有機二塩基酸のアンモニウム塩を形成し得る、アンモニアおよび上記のようなアミン化合物を意味する。
【0021】
これらの中でも、アンモニアおよび炭素数1~4の低分子量アミン化合物、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、1-ブタンアミン、2-ブタンアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミンおよびメチルエチルアミンが好ましい。
本発明においては、アンモニアを含めてこれらの1種を単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのアンモニア系化合物の中でも、有機二塩基酸との塩により形成される疎水性皮膜の均一性とその効果点でアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、プロピルアミンおよびイソプロピルアミンが好ましく、有機二塩基酸との塩としての溶解性や塩自体が過剰付着して汚れの原因となることが少ないなどの点でアンモニアが特に好ましい。
【0022】
[有機二塩基酸とアンモニア系化合物との配合比および剤形]
有機二塩基酸とアンモニア系化合物との配合比は、中和塩が皮膜形成をすることからモル比よりアルカリ側を多くする点で1:2~3であるのが好ましく、理論比率に近い1:2~2.5であるのが特に好ましい。
本発明の疎水性皮膜形成剤は、通常、水性製剤であり、有機二塩基酸とアンモニア系化合物とを水に溶解させることにより調製することができる。
有機二塩基酸とアンモニア系化合物とは、水中において有機二塩基酸のアンモニウム塩を形成することから、本発明においては、有機二塩基酸のアンモニウム塩を用いてもよく、例えば、有機二塩基酸のアンモニウム塩の水溶液の形態で上市されている、ナルコ社製のNalco10000を用いることができる。
本発明の疎水性皮膜形成剤中の有効成分の濃度は、有効成分の安定性、製剤の輸送コストなどを考慮して、通常、0.5~2質量%程度である。
【0023】
[他の有効成分]
本発明の疎水性皮膜形成剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、当該分野で用いられる他の薬剤を必要に応じて併用してもよい。
このような薬剤としては、スケール防止剤、スライムコントロール剤などが挙げられる。
【0024】
スケール防止剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などの単量体から構成される重合体;1,1-ヒドロキシエタンジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩などの有機ホスホン酸系化合物;ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、アクリル酸・2-アクリロイルアミノ-2-メチル-1-プロパンスルホン酸・次亜リン酸付加重合物およびそれらのナトリウム塩などの有機ホスフィン酸系化合物が挙げられる。
【0025】
スライム除去剤としては、モノクロログリオキシム、ジクロログリオキシム、メチレンビスチオシアネート、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3オン、α-クロロベンズアルドキシム、ビス(トリブロモメチル)スルホン、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、2-ブロモ-2-ニトロ-1-プロパン-1,3-ジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロ-1-エタノール、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-ジアセトキシプロパン、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)プロパン、1,4-ビス(ブロモアセトキシ)-2-ブテン、1,2,3-トリス(ブロモアセトキシ)プロパン、5-クロロ-2,4,6-トリフルオロイソフタロニトリル、6-クロロ-2,4-ジフルオロ-6-メトキシイソフタロニトリル、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、β-ブロモ-ニトロスチレン、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、ビス(トリクロロメチル)スルホン、4,5-ジクロロ-2-n-イソチアゾリン-3-オンなどの有機化合物;過酸化水素、過酢酸、次亜塩素酸塩、オゾンなどの無機化合物が挙げられる。
【0026】
上記のスケール防止剤やスライムコントロール剤などの他の薬剤を添加する場合には、これらの薬剤の添加量に比例させた量の水溶性蛍光トレーサーを冷却水に添加して、これらの薬剤の添加量を制御してもよい。このような方法としては、例えば、特公平6-11437号公報に記載の「工業用水システムを監視する方法」および特許第2771611号公報に記載の「クーリングタワーの水の連続的オンストリームの監視方法」が挙げられる。
【0027】
[対象プラント]
本発明の疎水性皮膜形成剤の対象プラントは、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントであれば、特に限定されない。
上記のように、ボイラ設備は、工業規格により水質管理が厳格に規定され、純水や軟水を用いることから、通常、本発明の課題は発生しないことから、本発明から除外される。すなわち、本発明の疎水性皮膜形成剤は、本発明の課題が発生する、一般上水や工業用水を用いるプラントのすべてに適用し得る。
このようなプラントとしては、例えば、ステンレス製品および鉄鋼製品の製造工程におけるスラブ、ブルームおよびビュレット製造の連続鋳造設備;厚板および薄板を製造する熱間圧延設備および分塊圧延設備;H鋼、棒鋼、ワイヤー、シームレスパイプを製造する熱間圧延設備および連続鋳造設備;銅および銅合金の連続鋳造および熱間圧延製造設備;各種セラミックスの切断加工設備で高温になる切断設備およびノコ歯および加工される製品を冷却するために水を使う設備が挙げられる。
【0028】
2.疎水性皮膜形成方法
本発明の疎水性皮膜形成方法は、プラントと共存する水(但し、純水および軟水を除く)に、本発明の疎水性皮膜形成剤を添加して、該プラントの構成材に疎水性皮膜を形成することを特徴とする。
【0029】
添加方法は、特に限定されず、既存の設備を用いるなどして対象水に添加すればよい。
添加条件は、添加対象の状態や所望の効果により適宜設定すればよく、疎水性皮膜形成剤の濃度が高濃度であれば、用事に水で希釈すればよい。
通常、対象水中の疎水皮膜形成剤の有効成分濃度が0.003~0.3ppm(=mg/L)になるように添加すればよい。
【0030】
3.腐食・摩耗防止剤
本発明の腐食・摩耗防止剤は、本発明の疎水性皮膜形成剤に、有効成分として対象水のMアルカリ度を調整し得る中和剤をさらに含むことを特徴とする、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントの構成材用の腐食・摩耗防止剤である。
【0031】
中和剤としては、本発明の疎水性皮膜形成剤による皮膜形成を阻害せず、対象水のMアルカリ度を調整し、プラントの構成材の腐食・摩耗効果を発揮し得るものであれば特に限定されないが、重炭酸のアルカリ金属塩、重炭酸のアルカリ土類金属塩および炭素数1~4の低分子量のアミン化合物から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
重炭酸のアルカリ金属塩(炭酸水素塩)としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが挙げられる。
重炭酸のアルカリ土類金属塩(炭酸水素塩)としては、例えば、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムが挙げられる。
【0032】
炭素数1~4の低分子量のアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、1-ブタンアミン、2-ブタンアミン、イソブチルアミンおよびtert-ブチルアミンが挙げられる。
本発明においては、これらの中和剤の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、特にMアルカリ度の低下が激しく、pHの低下が著しい場合には、上記の無機炭酸水素塩とアミン化合物から2種以上を組み合わせて用いることが有効である。
これらの中でも、Mアルカリ度を上昇させる効果が大きい点で、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、プロピルアミンおよびイソプロピルアミンが好ましく、緩衝力が高く、安価で安全にMアルカリ度を上げる効果が大きい点で、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムが特に好ましい。
【0033】
[剤形]
本発明の腐食・摩耗防止剤は、通常、水性製剤であり、本発明の疎水性皮膜形成剤に中和剤を溶解させることにより調製することができる。
また、本発明の疎水性皮膜形成剤と、中和剤のみを含む水性製剤との2液製剤としてもよい。
さらに、本発明の疎水性皮膜形成剤のアンモニア系化合物と、本発明の腐食・摩耗防止剤の対象水のMアルカリ度を調整し得る中和剤とが共通の化合物である場合、本発明の疎水性皮膜形成剤が過剰のアンモニア系化合物を含む場合には、本発明の腐食・摩耗防止剤となり得る。
本発明の腐食・摩耗防止剤中の有効成分の濃度は、有効成分の安定性、製剤の輸送コストなどを考慮して、通常、0.5~40質量%程度である。
【0034】
[他の有効成分]
本発明の腐食・摩耗防止剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、当該分野で用いられる他の薬剤を必要に応じて併用してもよい。
他の有効成分は、上記の疎水性皮膜形成剤と同様である。
【0035】
[対象プラント]
本発明の腐食・摩耗防止剤の対象プラントは、水(但し、純水および軟水を除く)と共存するプラントであれば、特に限定されず、上記の疎水性皮膜形成方法と同様であり、特に連続鋳造設備または熱延設備に好適に用いることができる。
【0036】
4.腐食・摩耗防止方法
本発明の腐食・摩耗防止方法は、プラントと共存する水(但し、純水および軟水を除く)に、本発明の腐食・摩耗防止剤を添加して、該水のMアルカリ度を20~150mgCaCO3/Lに調整して、該プラントの構成材の腐食・摩耗を防止することを特徴とする。
【0037】
添加方法は、特に限定されず、対象水のMアルカリ度が20~150mgCaCO3/Lになるように、既存の設備を用いるなどして対象水に添加すればよい。
対象水のMアルカリ度が20mgCaCO3/L未満では、腐食および摩耗が大きくなることがある。一方、対象水のMアルカリ度が150mgCaCO3/Lを超えると、水中に溶解している硬度成分が析出することがある。好ましい対象水のMアルカリ度は30~130mgCaCO3/Lである。
ここで、「Mアルカリ度」とは、対象水がメチルレッド-ブロムクレゾールグリーン混合指示薬の変色点(pH4.8)まで中和するのに要する酸の量であり、対象水中の弱アルカリ性成分を含めたアルカリの全量を示す。この「Mアルカリ度」は、「酸消費量pH4.8」ともいい、単位:mgCaCO3/Lで表される(例えば、JIS B0130参照)。
【0038】
添加条件は、添加対象の状態や所望の効果により適宜設定すればよく、疎水性皮膜形成剤の濃度が高濃度であれば、用事に水で希釈すればよい。
本発明の腐食・摩耗防止方法は、対象プラントが連続鋳造設備または熱延設備であるときに好適に用いられる。
【0039】
[一実施形態]
本発明の腐食・磨耗防止方法を適用し得る連続鋳造設備は、当該分野において、フートロールおよび複数のセグメントを有する鋼の連続鋳造に用いられる設備であれば特に限定されず、具体的には、垂直型、垂直ペンディング型、垂直プログレッシブペンディング型などの垂直型連続鋳造機、円弧湾曲型、多段円弧湾曲型などの円弧湾曲型連続鋳造機が挙げられる。
その腐食・磨耗防止の対象は、連続鋳造設備中の金属部材、すなわち、冷却帯付近のロール、支持部材、スプレーノズル、配管および点検整備用の通路、階段、作業用のスペースなどである。
【0040】
まず、フートロールおよびセグメント毎に、鋼にスプレーした冷却水を採取し、そのMアルカリ度を測定する。具体的には、鋼にスプレーした冷却水をセグメント毎にサンプリングし、そのMアルカリ度を公知の方法および装置を用いて測定する。
【0041】
次いで、測定したMアルカリ度が20mgCaCO3/L未満となった場合に、該当するフートロールおよびセグメントにおけるスプレー前の冷却水に本発明の腐食・磨耗防止剤を添加して、Mアルカリ度を20~150mgCaCO3/Lに調整する。すなわち、フートロールおよびセグメント毎において測定した冷却水のMアルカリ度が20mgCaCO3/L未満となったときに、該当するセグメントにおけるスプレー前の冷却水に本発明の腐食・磨耗防止剤を添加する。
また、このMアルカリ度が150mgCaCO3/Lを超えると、pHの上昇によりスケール化傾向になる可能性があり、また経済的なデメリットもあるので好ましくない。
【0042】
通常、本発明の腐食・磨耗防止剤の添加によりMアルカリ度が上昇し、対照水への希釈水の導入や操業の状況などにより、Mアルカリ度が下降することから、下限値のみで腐食・磨耗防止剤の添加を手動または自動で管理すればよいが、Mアルカリ度が上昇する場合には、対照水への希釈水の導入などにより、Mアルカリ度を手動または自動で調整すればよい。また、Mアルカリ度とpHとは水質が安定していれば相関があるので対象プラントに固有となる2つのパラメータの相関を取っておきpHで自動コントロールする方法も可能である。
Mアルカリ度が20~150mgCaCO3/Lの範囲内であれば、連続鋳造設備中の金属部材の腐食および磨耗を良好に防止できる。
腐食・磨耗防止剤の水溶液の濃度は、連続鋳造設備や冷却条件にもよるが、過飽和溶液が好ましく、中和剤の有効成分が炭酸水素ナトリウムの場合、5重量%程度であり、炭酸水素カリウムの場合、35重量%程度である。
【0043】
連続鋳造機が垂直型連続鋳造機の場合には、フートロールおよびフートロール直後に連続する2つのセグメントを、冷却水の採取とMアルカリ度の測定および腐食・磨耗防止剤の添加の対象とするのが好ましい。
また、連続鋳造機が円弧湾曲型連続鋳造機の場合には、フートロールおよびフートロール直後に連続する4つのセグメントを、冷却水の採取とMアルカリ度の測定および腐食・磨耗防止剤の添加の対象とするのが好ましい。
【0044】
次に、
図1を用いて本発明の連続鋳造設備の腐食・磨耗防止方法についてより具体的に説明する。しかしながら、以下の説明は本発明の一例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
図1は、円弧湾曲型連続鋳造機の模式図である。
この連続鋳造機では、溶鋼(MS)はタンディッシュ(T)にチャージされ、冷却されながらモールド(M)、フートロール(FR)およびフートロール直後に連続するセグメント(
図1では、第0~4セグメント(S0~S4))を経て、鋳鋼(鋳片、CS)に加工され、所望の長さに切断される(切断工程は図示せず)。冷却水(CW)は冷却水タンク(WT)から送液され、フートロール(FR)および各セグメント(
図1では、S0~S4)で熱間鋼にスプレーされ、回収水(回収された冷却水:DW)となり、最終的にスケールピット(図示せず)に回収され、その一部または全部がろ過器(図示せず)を通過した後に、冷却水タンク(WT)に戻り、冷却水(CW)として再利用される。
【0046】
本発明の腐食・磨耗防止方法では、フートロールに使用した冷却水のサンプリングと分析(AF)および各セグメントに使用した冷却水のサンプリングと分析(
図1では、第0~4セグメントであり、A0~A4)を実施し、その結果に基づいて、フートロールのスプレー前の冷却水への腐食・磨耗防止剤の添加(CF)および各セグメントのスプレー前の冷却水への腐食・磨耗防止剤の添加(
図1では、第0~4セグメントであり、C0~C4)を実施する。
以上は、円弧湾曲型連続鋳造機の一例であるが、垂直型連続鋳造機は、前者の円弧湾曲部分が垂直方向、すなわち鉛直方向に配列された構造であり、基本構成は前者と同様である。
【0047】
上記のように、本発明においては、連続鋳造設備において蒸気が発生する工程前の冷却水に、前記腐食・摩耗防止剤を添加するのが好ましい。
【実施例0048】
以下、試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0049】
(試験例1:水滴の接触角測定による撥水効果の評価)
本発明の疎水性皮膜形成剤の基本的な効果を確認するために、本発明の疎水性皮膜形成剤を添加した水および蒸気でテストピースを処理し、その表面における水滴の接触角を測定して撥水効果を評価した。
容量1Lのオートクレープに0.5Lの純水を投入し、疎水性皮膜形成剤の有効成分として純水に対して濃度0.1ppmになるようにアゼライン酸アンモニウムを添加し、純水中にテストピース(材質:冷間圧延鋼鈑SPCC 400番研磨加工品、寸法:30mm×50mm×1mm)を浸漬した。このとき、オートクレーブ中の水の常温(約20℃)でのpHは9.5であった。
次いで、オートクレーブを密閉、温度300℃に加熱し、高温高圧条件下で60分間保持して、テストピースを処理し、その後、オートクレーブを常温に冷却してテストピースを取り出した。
処理後のテストピース表面に水を滴下し、テストピースの側面から水滴を写真撮影し、得られた画像の水滴下部の法線とテストピースの表面との角度を測定し、接触角(度)とした(実施例1)。
処理中にテストピースが蒸気に曝されるように、オートクレーブ中の水面から20mmの位置にテストピースを懸垂させること以外は、実施例1と同様にしてテストピースを処理して、水滴の接触角を測定した(実施例2)。
アゼライン酸アンモニウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様にしてテストピースを処理して、水滴の接触角を測定した(比較例1)。
得られた結果を、処理条件と共に表1に示す。
【0050】
【0051】
表1から次のことがわかる。
(1)本発明の疎水性皮膜形成剤を添加していない水中にテストピースを浸漬した場合(比較例1)には、経験的に充分な撥水性が得られるとされる90度以上の接触角に到達しないこと
(2)これに対して、本発明の疎水性皮膜形成剤を添加した水中にテストピースを浸漬した場合(実施例1)、その水上にテストピースを懸垂した場合(実施例2)には、110度以上の大きな接触角が得られ、テストピース表面に充分な撥水性皮膜が形成されていること
【0052】
(試験例2:腐食・摩耗効果の評価)
本発明の腐食・摩耗防止剤の腐食・摩耗効果(減肉防止や汚れ付着防止の効果)を確認するために、某製鉄所の連続鋳造設備において2ヵ月間実機試験を行った。
図1に示すような某製鉄工場内の円弧湾曲型連続鋳造機(但し、図示されていない第5セグメント(S5)を備える)におけるフートロール直後から連続する第0セグメント、第1セグメント、第2セグメント、第3セグメント、第4セグメントおよび第5セグメントの各セグメント内にそれぞれテストピース(材質:冷間圧延鋼鈑SPCC 400番研磨加工品、寸法:30mm×50mm×1mm)を吊るし、連続鋳造機を操業し、試験開始(テストピースの設置)から2ヵ月後の該テストピースの腐食速度(減肉速度:1日当たりの腐食減量(MDD)、単位:mg/dm2・日)を測定して腐食防止効果確認試験を行った。
【0053】
連続鋳造機のフートロール(FR)およびフートロール直後から連続する各セグメント(S0~S5)に設置したサンプル水の採水ポットから3回/月の頻度でサンプリングされた操業中の水のpH及びMアルカリ度(単位:mgCaCO3/L)およびpHを測定し、それらの平均値を算出した(表2)。
疎水性皮膜形成剤の有効成分として冷却水に対して濃度0.06ppmになるようにアゼライン酸アンモニウムを添加(注入)した。
また、上部フ―トロール近傍の冷却水のMアルカリ度が20mgCaCO3/L以上になるように、腐食・摩耗防止剤の有効成分として炭酸水素カリウムを濃度170ppmで添加(注入)した(実施例3)。
アゼライン酸アンモニウムの代わりにセバシン酸アンモニウムを濃度0.08ppmで添加すること、炭酸水素カリウムの代わりに炭酸水素ナトリウムを濃度200ppmで添加すること以外は、実施例3と同様にして試験した(実施例4)。
疎水性皮膜形成剤および腐食・摩耗防止剤を添加しないこと以外は、実施例3と同様にして試験した(比較例2:ブランク)。
疎水性皮膜形成剤を添加せず、腐食・摩耗防止剤のみを添加すること以外は、実施例3と同様にして試験した(比較例3)。
得られた結果を、処理条件と共に表2に示す。
【0054】
【0055】
表2から次のことがわかる。
(1)本発明の腐食・摩耗防止剤を添加した場合(実施例1および2)ならびに本発明の腐食・摩耗防止剤の有効成分のみを添加した場合(比較例3)では、薬剤を添加しないブランクの場合(比較例2)と比較して、pH、Mアルカリ度ともに高めに処理できること、薬剤を添加しないブランクの場合(比較例2)と比較して、高い腐食抑制効果を示すが、本発明の腐食・摩耗防止剤を添加した場合(実施例1および2)では、はるかに低い腐食速度で、より高い腐食抑制効果を示すこと
(2)本発明の腐食・摩耗防止剤を添加した場合(実施例1および2)には、従来の本発明の腐食・摩耗防止剤の有効成分のみを添加した場合(比較例3)と比較して、はるかに低いレベルまで設備及びその周辺の腐食環境を低減でき、より高いレベルで製品および装置や付帯設備の腐食防止、設備の寿命化、製品の歩留まり向上、メンテナンスコストの大幅な低減、生産性の著しい向上に期待できること