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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110826
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】射出成形機及びコントローラ
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20220722BHJP
   G06F 12/0842 20160101ALI20220722BHJP
   G06F 12/0888 20160101ALI20220722BHJP
   G06F 12/0897 20160101ALI20220722BHJP
【FI】
B29C45/76
G06F12/0842
G06F12/0888 102
G06F12/0897 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006476
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】茂木 浩
【テーマコード(参考)】
4F206
5B205
【Fターム(参考)】
4F206AM19
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP30
4F206JQ88
5B205JJ13
5B205MM05
5B205UU32
(57)【要約】
【課題】優先度の高いタスクを実行するタイミングのジッタを抑制することが可能な射出成形機を提供する。
【解決手段】型締装置、射出装置、及びエジェクタ装置を制御するコントローラが、複数の階層からなるキャッシュメモリ、及びプロセッサを有する。プロセッサは、各々に優先度が対応付けられた複数のタスクを、キャッシュメモリを使用して実行する。プロセッサは、実行するタスクの優先度に基づいて、使用するキャッシュメモリの階層を決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された前記金型に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が固化した後、前記金型から成形品を取り出すエジェクタ装置と、
前記型締装置、前記射出装置、及び前記エジェクタ装置を制御するコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
複数の階層からなるキャッシュメモリと、
各々に優先度が割り当てられた複数のタスクを、前記キャッシュメモリを使用して実行するプロセッサと
を含み、
前記プロセッサは、実行するタスクの優先度に基づいて、使用するキャッシュメモリの階層を決定する射出成形機。
【請求項2】
タスクの優先度に前記キャッシュメモリの階層が割り当てられており、前記プロセッサは、実行すべきタスクの優先度に対応付けられている階層のキャッシュメモリを使用してタスクを実行する請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記複数のタスクに、第1周期で周期的に実行される第1タスクと、前記第1周期より長い第2周期で周期的に実行される第2タスクとが含まれており、前記第1タスクの優先度は前記第2タスクの優先度より高い請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項4】
複数の階層からなるキャッシュメモリと、
各々に優先度が割り当てられた複数のタスクを、前記キャッシュメモリを使用して実行するプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、実行するタスクの優先度に基づいて、使用するキャッシュメモリの階層を決定するコントローラ。
【請求項5】
タスクの優先度に前記キャッシュメモリの階層が割り当てられており、前記プロセッサは、実行すべきタスクの優先度に対応付けられている階層のキャッシュメモリを使用してタスクを実行する請求項4に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記複数のタスクに、第1周期で周期的に実行される第1タスクと、前記第1周期より長い第2周期で周期的に実行される第2タスクとが含まれており、前記第1タスクの優先度は前記第2タスクの優先度より高い請求項4または5に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、及び射出成形機等を動作させるコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機においては、型締モータや射出モータ等の電流制御、種々のセンサからのデータ取得、種々の可動部の速度制御や位置制御、通信制御等を行う複数のタスクが周期的に実行される(例えば、特許文献1等参照。)。射出成形機等を制御するコントローラに用いられる高速マイクロプロセッサは、これら複数のタスクを高速に実行するために複数の階層のキャッシュメモリを備えている。各種機械を制御するコントローラでは、マルチタスク機能を利用して、優先度の異なる複数のタスクが同時に実行されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-132229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
種々のタスクには、ほぼ正確に一定の周期で実行する必要があるもの(優先度の高いタスク)、実行周期にある程度のジッタが許容されるもの、必要に応じて不定期に実行されるもの等がある。従来の射出成形機等においては、優先度の高いタスクの実行周期にジッタが生じる場合があることが判明した。本発明の目的は、優先度の高いタスクを実行するタイミングのジッタを抑制することが可能な射出成形機、及びコントローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
金型を型締する型締装置と、
前記型締装置により型締された金型に成形材料を充填する射出装置と、
前記射出装置により充填された成形材料が固化した後、前記金型から成形品を取り出すエジェクタ装置と、
前記型締装置、前記射出装置、及び前記エジェクタ装置を制御するコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
複数の階層からなるキャッシュメモリと、
各々に優先度が割り当てられた複数のタスクを、前記キャッシュメモリを使用して実行するプロセッサと
を含み、
前記プロセッサは、実行するタスクの優先度に基づいて、使用するキャッシュメモリの階層を決定する射出成形機が提供される。
【0006】
本発明の他の観点によると、
複数の階層からなるキャッシュメモリと、
各々に優先度が割り当てられた複数のタスクを、前記キャッシュメモリを使用して実行するプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、実行するタスクの優先度に基づいて、使用するキャッシュメモリの階層を決定するコントローラが提供される。
【発明の効果】
【0007】
実行するタスクの優先度に基づいて、使用するキャッシュメモリの階層が決定されるため、優先度の高いタスクが使用するキャッシュメモリの階層と、優先度が低いタスクが使用するキャッシュメモリの階層とを分けることができる。これにより、優先度の高いタスクの命令及びデータが、優先度の低いタスクの実行のためにキャッシュメモリから退出させられる事態が回避される。このため、優先度の高いタスクの命令及びデータをキャッシュメモリに再格納することなく、優先度の高いタスクを実行することができる。その結果、優先度の高いタスクを実行するタイミングのジッタを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例によるコントローラのブロック図である。
図2図2は、コントローラが実行する複数のタスクに割り当てられる優先度とメモリ階層との関係を示す図表である。
図3図3は、1つのタスクが起動されたときに、使用するメモリを決定するフローチャートである。
図4図4は、比較例によるコントローラが、優先度TP1のタスクT1を周期p1で周期的に実行し、優先度TP1のタスクと並行して優先度TP4のタスクT2を周期p1より長い周期で周期的に実行する場合のタイミングチャートである。
図5図5は、実施例によるコントローラが、優先度TP1のタスクT1を周期p1で周期的に実行し、優先度TP1のタスクと並行して優先度TP4のタスクT2を周期p1より長い周期で周期的に実行する場合のタイミングチャートである。
図6図6は、他の実施例によるコントローラにおいて、1つのタスクが起動されたときに使用するメモリを決定するフローチャートである。
図7図7は、さらに他の実施例による射出成形システムの、型開完了時の概略図である。
図8図8は、図7に示した射出成形システムの、型締時の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図5を参照して、本願発明の実施例によるコントローラについて説明する。
図1は、実施例によるコントローラ90のブロック図である。実施例によるコントローラ90は、プロセッサ(CPU)91、複数の階層からなるキャッシュメモリ、メインメモリ92C、補助記憶装置93、及び入出力インタフェース94を備えている。複数の階層からなるキャッシュメモリには、1次キャッシュメモリ92A及び2次キャッシュメモリ92Bが含まれる。
【0010】
1次キャッシュメモリ92Aのアクセス速度は2次キャッシュメモリ92Bのアクセス速度より速く、2次キャッシュメモリ92Bのアクセス速度はメインメモリ92Cのアクセス速度より速い。例えば、1次キャッシュメモリ92A、2次キャッシュメモリ92Bには、スタティックRAMが用いられ、メインメモリ92CにはダイナミックRAMが用いられる。
【0011】
補助記憶装置93には、例えば、USBメモリやSDカード等のリムーバブル記録媒体、シリアルフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等が用いられる。補助記憶装置93に、各種プログラム及び各種データが格納されている。CPU91は、補助記憶装置93からプログラムやデータをメインメモリ92Cに転送し、メインメモリ92Cに格納されたプログラムを実行する。また、必要に応じて、メインメモリ92C内のプログラム(命令)やデータを1次キャッシュメモリ92Aまたは2次キャッシュメモリ92Bに転送して、1次キャッシュメモリ92Aまたは2次キャッシュメモリ92Bを使用して種々のタスクを実行する。
【0012】
コントローラ90は、入出力インタフェース94を介して制御対象機械100に制御信号や情報信号等の種々の信号を送信し、制御対象機械100から制御信号や情報信号等の種々の信号を受信する。
【0013】
図2は、コントローラ90が実行する複数のタスクに割り当てられる優先度とメモリ階層との関係の一例を示す図表である。CPU91が実行する複数のタスクのそれぞれに、最も高い優先度TP1から最も低い優先度TP9までの9段階の優先度のうち1つが割り当てられる。タスクの優先度に対してメモリ階層が割り当てられている。メモリ階層L1、L2、L3のメモリは、それぞれ1次キャッシュメモリ92A、2次キャッシュメモリ92B、及びメインメモリ92Cに対応する。タスクの優先度とメモリ階層との割り当てを定義する情報が、メインメモリ92Cに格納されている。
【0014】
本実施例において、優先度TP1、TP2、及びTP3に、メモリ階層L1のメモリ、すなわち1次キャッシュメモリ92Aが割り当てられている。優先度TP4、TP5、TP6、及びTP7に、メモリ階層L2のメモリ、すなわち2次キャッシュメモリ92Bが割り当てられている。優先度TP8及びTP9に、メモリ階層L3のメモリ、すなわちメインメモリ92Cが割り当てられている。
【0015】
一例として、制御対象機械100の異常を監視する処理を実行するタスクに、最も高い優先度TP1が割り当てられている。
【0016】
制御対象機械100の電流制御を行うタスクに、2番目に高い優先度TP2が割り当てられている。電流制御は、例えば、指令された大きさの電流の流す装置、例えばインバータに対して行うフィードバック制御である。
【0017】
制御対象機械100の速度制御を行うタスクに、3番目に高い優先度TP3が割り当てられている。速度制御は、例えば、指令された速度で可動部を移動させるアクチュエータに対して行うフィードバック制御である。
【0018】
制御対象機械100の位置制御を行うタスクに、4番目に高い優先度TP4が割り当てられている。位置制御は、例えば、可動部を指令された位置に移動させるアクチュエータに対して行うフィードバック制御である。
【0019】
制御対象機械100の上位コントローラ通信処理を行うタスクに、5番目に高い優先度TP5が割り当てられている。上位コントローラ通信処理は、例えば、コントローラ90が上位コントローラと通信を行う処理である。上位コントローラは、例えば複数の制御対象機械100を管理する管理サーバであり、コントローラ90は通信ネットワークを介して上位コントローラと通信を行う。
【0020】
制御対象機械100の軌道生成を行うタスクに、6番目に高い優先度TP6が割り当てられている。軌道生成は、金型に樹脂を充填するときのスクリュの速度の時間変化プロファイルを生成する処理である。
【0021】
制御対象機械100の種々のシーケンス制御を行うタスクに、7番目に高い優先度TP7が割り当てられている。シーケンス制御は、型閉工程、型締工程、樹脂充填工程、型開工程、成形品の突出し工程等の一連の工程を順番に実行する制御である。
【0022】
制御対象機械100のメンテナンス機能を実行するタスクに、8番目に高い優先度TP8が割り当てられている。制御対象機械100のログ保存機能を実行するタスクに、最も低い優先度TP9が割り当てられている。
【0023】
図3は、1つのタスクが起動されたときに、CPU91が使用するメモリを決定するフローチャートである。CPU91は、図2に示した割り当てを定義する情報を参照して、起動されたタスクの優先度に割り当てられたメモリ階層を決定する。
【0024】
実行するタスクの優先度に割り当てられたメモリ階層がL1である場合、CPU91は、1次キャッシュメモリ92Aを使用してタスクを実行する(ステップS1)。実行するタスクの命令及びデータが1次キャッシュメモリ92Aに格納されていない場合には、命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納した後、1次キャッシュメモリ92Aを使用してタスクを実行する。
【0025】
実行するタスクの優先度に割り当てられたメモリ階層がL2である場合、CPU91は、2次キャッシュメモリ92Bを使用してタスクを実行する(ステップS2)。実行するタスクの命令及びデータが2次キャッシュメモリ92Bに格納されていない場合には、命令及びデータを2次キャッシュメモリ92Bに格納した後、2次キャッシュメモリ92Bを使用してタスクを実行する。
【0026】
実行するタスクの優先度に割り当てられたメモリ階層がL3である場合、CPU91は、キャッシュメモリを使用せず、メインメモリ92Cを使用してタスクを実行する(ステップS3)。
【0027】
次に、図4及び図5を参照して、本実施例の優れた効果について説明する。
図4は、比較例によるコントローラが、優先度TP1のタスクT1を周期p1で周期的に実行し、優先度TP1のタスクと並行して優先度TP4のタスクT2を周期p1より長い周期で周期的に実行する場合のタイミングチャートである。比較例においては、タスクの優先度に対して特定のメモリ階層が割り当てられておらず、いずれの優先度のタスクも1次キャッシュメモリ92Aを優先的に使用する。
【0028】
優先度TP1のタスクT1が起動されると(時刻t1)、CPU91はタスクT1を実行する。このとき、1次キャッシュメモリ92Aには、タスクT1の命令及びデータが、既に格納されていると仮定する。図4の1次キャッシュメモリ92Aの段に示されたタイミングチャートの濃いハッチングが付された領域は、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうちタスクT1の命令及びデータが占める領域を表しており、白抜きの領域は、空き領域を表している。
【0029】
タスクT1が終了すると、それよりも優先度の低いタスクT2が起動される(時刻t2)。タスクT2が起動されると、CPU91は、1次キャッシュメモリ92AにタスクT2の命令及びデータが格納済か否かを判定する。本比較例では、時刻t2において1次キャッシュメモリ92AにタスクT1の命令及びデータが格納されており、タスクT2の命令及びデータは格納されていない。このときCPU91は、メインメモリ92CからタスクT2の一部の複数の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納する。図4の1次キャッシュメモリ92Aの段に示されたタイミングチャートの淡いハッチングが付された領域は、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうちタスクT2の命令及びデータが占める領域を表している。
【0030】
1次キャッシュメモリ92Aの空き領域が無くなると、CPU91は、タスクT2の一部の複数の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納するとともに、タスクT1の命令及びデータの一部を1次キャッシュメモリ92Aから退出させる。
【0031】
タスクT2の実行中に、1次キャッシュメモリ92Aに格納されていない命令を実行するとき、またはデータを使用するときに、実行すべき命令または使用すべきデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納する。1次キャッシュメモリ92Aに空き領域が無くなったのち後は、タスクT2の命令及びデータの一部を1次キャッシュメモリ92Aに格納する処理と、タスクT1の命令及びデータの一部を1次キャッシュメモリ92Aから退出させる処理とを実行する。これにより、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうち、タスクT2の命令及びデータが占める領域が増大する。図4では、一例として、タスクT2の命令及びデータが占める領域が時間の経過とともに直線的に増大しているが、実際には、直線的に増大するとは限らない。
【0032】
タスクT1の次の実行周期が到来すると、CPU91はタスクT2の実行を中断し、タスクT1を起動する(時刻t3)。このとき、タスクT1の命令及びデータの一部は1次キャッシュメモリ92Aから退出させられている。CPU91は、1次キャッシュメモリ92Aから退出させられた命令を実行するとき、または退出させられたデータを使用するとき、実行すべき命令及び使用すべきデータを1次キャッシュメモリ92Aに再格納するとともに、1次キャッシュメモリ92AからタスクT2の命令及びデータの一部を退出させる。このように、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納する処理と、タスクT2の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aから退出させる処理とを実行しながら、タスクT1を実行する。
【0033】
タスクT1が起動された時刻t3から終了する時刻t4までの期間、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうちタスクT1の命令及びデータが占める領域が増大する。時刻t4においてタスクT1が終了すると、CPU91はタスクT2を中断点から再開する。このとき、時刻t2~t3の期間と同様に、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうちタスクT2の命令及びデータが占める領域が時間の経過とともに増大する。
【0034】
タスクT1の次の実行周期が到来すると、CPU91はタスクT2を中断し、タスクT1を起動する(時刻t5)。タスクT1の起動時点(時刻t5)からタスクT1の終了時点(時刻t6)までの期間は、時刻t3~t4の期間と同様に、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうちタスクT1の命令及びデータが占める領域が増大する。
【0035】
時刻t6においてタスクT1が終了すると、CPU91は、中断中のタスクT2を中断点から再開する。タスクT2は、タスクT1の実行周期の到来前の時刻t7に終了する。時刻t6~t7の期間は、時刻t2~t3の期間と同様に、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうちタスクT2の命令及びデータが占める領域が増大する。時刻t7から、タスクT1の次の実行周期が到来するまでの期間は、1次キャッシュメモリ92Aへの命令及びデータの格納は行われない。
【0036】
タスクT1の次の実行周期が到来すると、CPU91はタスクT1を起動する(時刻t8)。タスクT1の起動時点(時刻t8)からタスクT1の終了時点(時刻t9)までの期間は、時刻t3~t4の期間と同様に、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうちタスクT1の命令及びデータが占める領域が増大する。
【0037】
タスクT1が終了すると(時刻t9)と、CPU91は、次にタスクT1が起動される時刻t10まで待機する。時刻t10においてタスクT1が起動された時点では、タスクT1のすべての命令及びデータが1次キャッシュメモリ92Aに残されている。このため、CPU91は、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納する処理を行うことなく、タスクT1を実行する。
【0038】
時刻t11から、タスクT1の次の実行周期が到来するまでの期間t11~t12も、タスクT1のすべての命令及びデータが1次キャッシュメモリ92Aに残された状態が維持される。このため、時刻t12~t13の期間は、時刻t10~t11の期間と同様に、CPU91は、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納する処理を行うことなく、タスクT1を実行する。
【0039】
上述のように、時刻t3~t4の期間、時刻t5~t6の期間、時刻t8~t9の期間は、CPU91は、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納する処理を実行しながら、タスクT1を実行する。これに対して時刻t1~t2の期間、時刻t10~t11の期間、時刻t12~t13の期間は、CPU91は、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納する処理を実行することなく、タスクT1を実行する。このため、タスクT1の起動から終了までの時間にばらつきが生じてしまう。タスクT1の起動から終了までの時間のばらつきにより、タスクT1の特定の命令を実行するタイミングにジッタが生じてしまう。
【0040】
図5は、実施例によるコントローラ90(図1)が、優先度TP1のタスクT1を周期p1で周期的に実行し、優先度TP1のタスクと並行して優先度TP4のタスクT2を周期p1より長い周期で周期的に実行する場合のタイミングチャートである。
【0041】
時刻t1でタスクT1が起動され、時刻t2でタスクT1が終了する。このとき、1次キャッシュメモリ92Aには、タスクT1の命令及びデータが格納されているとする。図5の1次キャッシュメモリ92Aの段に示されたタイミングチャートの濃いハッチングが付された領域は、1次キャッシュメモリ92Aの記憶領域のうちタスクT1の命令及びデータが占める領域を表しており、白抜きの領域は空き領域を表している。
【0042】
タスクT1が終了すると(時刻t2)、それよりも優先度の低いタスクT2が起動される。タスクT2の優先度TP4に、メモリ階層L2が割り当てられている(図2)。このため、CPU91は、メインメモリ92CからタスクT2の命令及びデータを2次キャッシュメモリ92Bに格納する処理を実行しながら、タスクT2を実行する。タスクT1の命令及びデータは、1次キャッシュメモリ92Aから退出させられない。図5の2次キャッシュメモリ92Bの段に示されたタイミングチャートの淡いハッチングが付された領域は、2次キャッシュメモリ92Bの記憶領域のうちタスクT2の命令及びデータが占める領域を表しており、白抜きの領域は空き領域を表している。タスクT2の実行中、2次キャッシュメモリ92Bの記憶領域のうちタスクT2の命令及びデータが占める領域が増大する。
【0043】
タスクT1の実行周期が到来すると、CPU91はタスクT2を中断し、タスクT1を起動する(時刻t4)。このとき、タスクT1の命令及びデータは1次キャッシュメモリ92Aに残されているため、CPU91は、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに格納する処理を実行することなく、タスクT1を実行する。タスクT1が終了すると、CPU91は、中断中のタスクT2を中断点から再開する(時刻t6)。時刻t6から、タスクT1の次の実行周期が到来する時刻t7までの期間、2次キャッシュメモリ92Bの記憶領域のうちタスクT2の命令及びデータが占める領域が増大する。
【0044】
時刻t7において、CPU91はタスクT1を起動し、時刻t8においてタスクT1が終了する。タスクT1が終了すると、CPU91は、中断中のタスクT2を中断点から再開する(時刻t8)。時刻t8から、タスクT2が終了する時刻t9までの期間、2次キャッシュメモリ92Bの記憶領域のうちタスクT2の命令及びデータが占める領域が増大する。その後、CPU91は、時刻t10、t11、t12において、タスクT1を周期的に起動する。
【0045】
本実施例においては、タスクT2を実行する際に、それよりも優先度の高いタスクT1の命令及びデータが1次キャッシュメモリ92Aから退出させられない。タスクT2が中断した時刻t4、t7においても、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに再格納する必要がない。その結果、タスクT1の起動から終了までの時間が、いずれの周期においてもほぼ同一になる。このため、タスクT1の特定の命令を実行するタイミングにジッタが生じにくい。
【0046】
例えば、短い周期でフィードバック制御を行う処理において、フィードバック制御のタスクの特定の命令の実行タイミングにジッタが生じにくい。このため、フィードバック制御の精度を高めることができる。
【0047】
さらに、比較例では、時刻t3~t4の期間、時刻t5~t6の期間、及び時刻t8~t9の期間に、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに再格納するための時間が必要である。これに対して本実施例では、タスクT1の命令及びデータを1次キャッシュメモリ92Aに再格納するための時間が不要であるため、CPU91の使用効率を高めることができる。
【0048】
次に、上記実施例の変形例について説明する
上記実施例では、キャッシュメモリを1次と2次との2階層に区分しているが、キャッシュメモリの階層の数を3以上にしてもよい。この場合には、タスクの優先度を、3以上の階層のキャッシュメモリ及びメインメモリのいずれかに関連付ければよい。
【0049】
次に、図6を参照して他の実施例によるコントローラについて説明する。以下、図1図5に示した実施例によるコントローラ90と共通の構成については説明を省略する。
【0050】
図6は、本実施例によるコントローラ90において、1つのタスクが起動されたときに使用するメモリを決定するフローチャートである。図3に示した実施例では、実行するタスクの優先度に割り当てられたメモリ階層がL2である場合、CPU91は2次キャッシュメモリ92Bを使用する。これに対して図6に示した実施例では、実行すべきタスクの優先度がTP2である場合、1次キャッシュメモリ92Aに、実行すべきタスクの優先度より優先度の高いタスクに割り当てられている領域以外に、使用可能領域が残っているか否かを判定する(ステップS4)。
【0051】
1次キャッシュメモリ92Aに使用可能領域が残っていない場合には、図3に示した実施例と同様に、2次キャッシュメモリ92Bを使用して優先度TP2のタスクを実行する(ステップS2)。1次キャッシュメモリ92Aに使用可能領域が残っている場合には、1次キャッシュメモリ92Aを使用して優先度TP2のタスクを実行する(ステップS1)。
【0052】
次に、図6に示した実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においても、優先度TP1のタスクの命令及びデータが、優先度の低いタスクの実行のために1次キャッシュメモリ92Aから退出させられることがない。このため、図1図5を参照して説明した実施例と同様に、周期的に実行される優先度の高いタスクの実行タイミングにジッタが生じにくいという優れた効果が得られる。
【0053】
次に、図7及び図8を参照して、他の一つの実施例として、上述のいずれかの実施例によるコントローラ90を搭載した射出成形機を含む射出成形システムについて説明する。
【0054】
図7及び図8は、本実施例による射出成形システム1の概略図である。図7は、射出成形機2の型開完了時の状態を示しており、図8は、射出成形機2の型締時の状態を示している。射出成形システム1は、複数の射出成形機2、外部装置4、及び通信ネットワーク6を含む。複数の射出成形機2の構成は同一である。図7及び図8では、一つの射出成形機2のみについて詳細構成を示している。複数の射出成形機2は、それぞれ成形品を得るための一連の動作を行う。
【0055】
複数の射出成形機2は、通信ネットワーク6を介して外部装置4と通信を行う。外部装置4は、例えば工場内の複数の射出成形機2の稼働状態を管理する管理端末や管理サーバ等である。射出成形機2は、外部装置4から、例えば各種設定に関する情報や更新用のプログラム等のメンテナンスに関する情報等の各種情報を取得することができる。また、複数の射出成形機2は、通信ネットワーク6を介して相互に双方向の通信を行う。これにより、複数の射出成形機2の各々は、他の射出成形機2から、例えば各種設定に関する情報や、更新用のプログラム等のメンテナンスに関する情報等の各種情報を取得することができる。これらの通信処理の機能を実現するタスクには、例えば優先度TP5(図2)が割り当てられる。
【0056】
射出成形機2は、フレームFr、型締装置10、射出装置40、エジェクタ装置50、コントローラ90、入力装置95、出力装置96、記憶装置97、及び電源リレー98を含む。コントローラ90として、図1図3に示した実施例、または図6に示した実施例によるコントローラ90が用いられる。
【0057】
まず、型締装置10及びエジェクタ装置50について説明する。以下、型締装置10等の説明では、型閉時の可動プラテン13の移動方向(図7及び図8において右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン13の移動方向(図7及び図8において左方向)を後方と定義する。
【0058】
型締装置10は、金型装置30の型閉、型締、及び型開を行う。型締装置10は、固定プラテン12、可動プラテン13、サポートプラテン15、タイバー16、トグル機構20、型締モータ21、及び運動変換機構25を含む。固定プラテン12はフレームFrに対して固定される。固定プラテン12の、可動プラテン13に対向する面に、固定金型32が取り付けられる。
【0059】
可動プラテン13は、フレームFr上に固定されるガイド機構17に沿って移動可能である。具体的には、可動プラテン13は、固定プラテン12に対して前方及び後方に移動可能である。可動プラテン13の、固定プラテン12に対向する面に、可動金型33が取り付けられる。固定金型32と可動金型33とで、金型装置30が構成される。固定プラテン12に対して可動プラテン13を前方及び後方に移動させることにより、型閉、型締、及び型開が行われる。
【0060】
サポートプラテン15は、固定プラテン12と間隔を置いて固定プラテン12に連結され、フレームFr上に、型開閉方向に移動可能に載置されている。
【0061】
複数のタイバー16が、固定プラテン12とサポートプラテン15とを間隔を置いて連結する。タイバー16の各々は、型開閉方向に平行であり、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー16に型締力検出器18が取り付けられている。型締力検出器18として、例えばタイバー16の歪量を測定することによって型締力を検出する歪ゲージが用いられる。型締力検出器18による検出結果を示す信号が、コントローラ90に取り込まれる。
【0062】
トグル機構20は、固定プラテン12に対して可動プラテン13を移動させる。トグル機構20は、クロスヘッド20aと一対のリンク群等で構成される。各リンク群は、ピン等で屈伸自在に連結される複数のリンク20b、20cを有する。一方のリンク20bは可動プラテン13に揺動自在に取り付けられ、他方のリンク20cはサポートプラテン15に揺動自在に取り付けられている。クロスヘッド20aを進退させると、複数のリンク20b、20cが屈伸し、サポートプラテン15に対して可動プラテン13が進退する。
【0063】
型締モータ21は、サポートプラテン15に取り付けられており、クロスヘッド20aを進退させることにより、可動プラテン13を進退させる。
【0064】
運動変換機構25は、型締モータ21の回転運動を直線運動に変換してクロスヘッド20aに伝達する。運動変換機構25として、例えばボールねじ機構が用いられる。
【0065】
型締装置10の動作は、コントローラ90によって制御される。具体的には、コントローラ90は、型閉工程、型締工程、及び型開工程における型締装置10の動作を制御する。
【0066】
型閉工程では、コントローラ90は、型締モータ21を駆動してクロスヘッド20aを設定速度で前進させることにより、可動プラテン13を前進させて可動金型33を固定金型32に接触させる。クロスヘッド20aの位置や速度は、例えば型締モータ21のエンコーダ21aにより検出される。エンコーダ21aの検出結果を示す信号がコントローラ90に取り込まれる。型締モータ21の速度制御を行うタスクには、例えば優先度TP3(図2)が割り当てられる。
【0067】
型締工程では、コントローラ90は、型締モータ21をさらに駆動して、クロスヘッド20aを設定位置までさらに前進させる。図8に示した型締時に可動金型33と固定金型32との間にキャビティ34が形成される。キャビティ34に液状の成形材料が充填される。キャビティ34に充填された成形材料が固化されることにより、成形品が得られる。型締工程でのクロスヘッド20aの位置制御を行うタスクには、例えば優先度P4が割り当てられる。
【0068】
型開工程では、コントローラ90は、型締モータ21を駆動してクロスヘッド20aを設定速度で後退させることにより、可動プラテン13を後退させる。これにより、可動金型33が固定金型32から離れる。
【0069】
エジェクタ装置50は、金型装置30から成形品を突き出す。エジェクタ装置50は、エジェクタモータ51、運動変換機構52、及びエジェクタロッド53を有する。エジェクタモータ51は、可動プラテン13に取り付けられている。エジェクタロッド53は、可動プラテン13の貫通穴内に挿入されて、型開閉方向に移動可能である。運動変換機構52は、エジェクタモータ51の回転運動を直線運動に変換してエジェクタロッド53に伝達する。運動変換機構52として、例えばボールねじ機構が用いられる。可動部材35が可動金型33内に配置されている。エジェクタロッド53の前方の端部が可動部材35に接触している。
【0070】
エジェクタ装置50の動作は、コントローラ90によって制御される。具体的には、コントローラ90は、突出し工程等におけるエジェクタ装置50の動作を制御する。
【0071】
突出し工程では、コントローラ90は、エジェクタモータ51を駆動してエジェクタロッド53を前進させることにより、可動部材35を前進させ、成形品を突き出す。その後、コントローラ90は、エジェクタモータ51を駆動してエジェクタロッド53を後退させ、可動部材35を元の位置まで後退させる。エジェクタロッド53の位置及び速度は、例えばエジェクタモータ51のエンコーダ51aにより検出される。エンコーダ51aの検出結果を示す信号がコントローラ90に取り込まれる。エジェクタモータ51の速度制御を行うタスクには、例えば優先度TP3(図2)が割り当てられる。
【0072】
次に、射出装置40について説明する。射出装置40の説明では、型締装置10の説明とは異なり、充填時のスクリュ43の移動方向(図7及び図8において左方向)を前方と定義し、計量時のスクリュ43の移動方向(図7及び図8において右方向)を後方と定義する。
【0073】
射出装置40は、フレームFrに対して前後方向に移動可能なスライドベースSbに設置され、金型装置30に対して前後方向に移動可能である。射出装置40は、金型装置30に接触し、金型装置30のキャビティ34(図8)に成形材料を充填する。射出装置40は、シリンダ41、ノズル42、スクリュ43、冷却器44、計量モータ45、射出モータ46、圧力検出器47、加熱器48、及び温度検出器49を有する。
【0074】
シリンダ41は、供給口41aから内部に供給された成形材料を加熱する。供給口41aはシリンダ41の後部に配置されている。シリンダ41の後部の外周には、水冷シリンダ等の冷却器44が設けられている。冷却器44よりも前方において、シリンダ41の外周に、バンドヒータ等の加熱器48と温度検出器49とが配置されている。
【0075】
シリンダ41は、その軸方向(図7及び図8において左右方向)に関して複数のゾーンに区分されている。シリンダ41の各ゾーンに加熱器48と温度検出器49とが配置されている。コントローラ90は、ゾーンごとに、温度検出器49の実測温度が設定温度になるように加熱器48を制御する。加熱器48を制御するタスクには、例えば優先度TP2が割り当てられる。
【0076】
スクリュ43は、シリンダ41内に、回転可能にかつ前後方向に移動可能に配置されている。
【0077】
計量モータ45は、スクリュ43を回転させることにより、スクリュ43のらせん状の溝に沿って成形材料を前方に送る。成形材料は、前方に送られながらシリンダ41からの熱によって溶融する。液状の成形材料がスクリュ43の前方に送られ、シリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退する。
【0078】
射出モータ46は、スクリュ43を前進させることにより、シリンダ41の前部に蓄積された液状の成形材料をシリンダ41から射出し、金型装置30のキャビティ34(図8)に充填させる。その後、射出モータ46は、スクリュ43を前方に押し、金型装置30のキャビティ34内の成形材料に圧力を加える。これにより、不足分の成形材料が補充され得る。射出モータ46とスクリュ43との間には、射出モータ46の回転運動をスクリュ43の直線運動に変換する運動変換機構が設けられている。
【0079】
圧力検出器47は、射出モータ46とスクリュ43との間に配置され、スクリュ43が成形材料から受ける圧力、スクリュ43に対する背圧等を検出する。圧力検出器47による検出結果を示す信号がコントローラ90に取り込まれる。
【0080】
射出装置40の動作は、コントローラ90によって制御される。コントローラ90は、充填工程、保圧工程、及び計量工程における射出装置40の動作を制御する。
【0081】
充填工程では、コントローラ90は、射出モータ46を駆動して、スクリュ43を設定速度で前進させ、シリンダ41の前部に蓄積された液状の成形材料を金型装置30のキャビティ34に充填する。スクリュ43の位置及び速度は、例えば射出モータ46のエンコーダ46aにより検出される。エンコーダ46aによる検出結果を示す信号がコントローラ90に取り込まれる。スクリュ43の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切り替えが行われる。スクリュ43の速度を制御するタスクには、例えば優先度TP3(図2)が割り当てられ、位置を制御するタスクには、例えば優先度TP4(図2)が割り当てられる。
【0082】
保圧工程では、コントローラ90は、射出モータ46を駆動してスクリュ43を設定圧力で前方に押し、金型装置30のキャビティ34内の成形材料に圧力を加える。成形材料に加えられる圧力は、例えば圧力検出器47により検出される。圧力検出器47による検出結果を示す信号がコントローラ90に取り込まれる。圧力を制御するタスクには、例えば優先度TP3(図2)が割り当てられる。
【0083】
成形材料に圧力が加えられた状態で金型装置30のキャビティ34内の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時には、キャビティ34の入口が、固化した成形材料で塞がれる。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ34内の成形材料が固化される。
【0084】
計量工程では、コントローラ90は、計量モータ45を駆動してスクリュ43を設定回転数で回転させ、スクリュ43のらせん状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が溶融する。液状の成形材料がスクリュ43の前方に送られ、シリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退される。スクリュ43の回転数は、例えば計量モータ45のエンコーダ45aによって検出される。エンコーダ45aによる検出結果を示す信号がコントローラ90に取り込まれる。スクリュ43の回転数を制御するタスクには、例えば優先度TP3(図2)が割り当てられる。
【0085】
計量工程では、コントローラ90は、スクリュ43の急激な後退を制限するために、射出モータ46を駆動してスクリュ43に設定背圧を加えてもよい。スクリュ43に対する背圧は、例えば圧力検出器47により検出される。圧力検出器47による検出結果を示す信号がコントローラ90に取り込まれる。スクリュ43が設定位置まで後退し、シリンダ41の前部に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が終了する。背圧を加えるときの射出モータ46の制御を行うタスクには、例えば優先度TP4(図2)が割り当てられる。
【0086】
入力装置95に対して、ユーザによる射出成形機2に対する各種操作入力が行われる。入力装置95は、ユーザによる操作入力に応じた操作信号をコントローラ90に送信する。コントローラ90が入力装置95からの信号を受信するタスクには、例えば優先度TP5(図2)が割り当てられる。
【0087】
出力装置96は、コントローラ90による制御の下で、各種情報を表示する。例えば、出力装置96は、射出成形機2における各種設定の現状に関する情報を表示する。
【0088】
記憶装置97は、コントローラ90と通信可能に接続される。記憶装置97には、例えばUSBメモリ、DVDメディアが挿入されたDVDドライブ等が用いられる。コントローラ90が記憶装置97と通信を行うタスクには、例えば優先度TP5(図2)が割り当てられる。
【0089】
電源リレー98は、射出成形機2の駆動装置と商用電源との間の電力経路に挿入される。射出成形機2が起動されると、電源リレー98がオンにされる。これにより、駆動装置に電力が供給可能な状態になる。
【0090】
次に、本実施例による射出成形システム1の優れた効果について説明する。
本実施例による射出成形システム1には、図1図3に示した実施例、または図6に示した実施例によるコントローラ90が用いられている。このため、モータ等のアクチュエータを制御するための優先度の高いタスクの実行タイミングのジッタを少なくすることができる。その結果、アクチュエータの制御の精度を高めることができる。
【0091】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0092】
1 射出成形システム
2 射出成形機
4 外部装置
6 通信ネットワーク
10 型締装置
12 固定プラテン
13 可動プラテン
15 サポートプラテン
16 タイバー
17 ガイド機構
18 型締力検出器
20 トグル機構
20a クロスヘッド
20b リンク
20c リンク
21 型締モータ
21a エンコーダ
25 運動変換機構
30 金型装置
32 固定金型
33 可動金型
34 キャビティ
35 可動部材
40 射出装置
41 シリンダ
41a 供給口
42 ノズル
43 スクリュ
44 冷却器
45 計量モータ
45a エンコーダ
46 射出モータ
46a エンコーダ
47 圧力検出器
48 加熱器
49 温度検出器
50 エジェクタ装置
51 エジェクタモータ
51a エンコーダ
52 運動変換機構
53 エジェクタロッド
90 コントローラ
91 CPU
92A 1次キャッシュメモリ
92B 2次キャッシュメモリ
92C メインメモリ
93 助記憶装置
94 入出力インタフェース
95 入力装置
96 出力装置
97 記憶装置
98 電源リレー
100 制御対象機械
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8