(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110844
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】飛沫拡散防止装置
(51)【国際特許分類】
G10D 9/00 20200101AFI20220722BHJP
G10D 7/10 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
G10D9/00 140
G10D7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006512
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】加々美 豊
(72)【発明者】
【氏名】岡本 美信
(72)【発明者】
【氏名】石塚 信
(57)【要約】
【課題】管楽器の演奏時に飛沫の拡散を防止することができる。
【解決手段】音響放射部の先端に着脱可能に設けられる円筒形状の枠体の内周面には、音響放射部の先端が挿入される第1溝部と、シート状の濾材が挿入される第2溝部とが設けられており、第1溝部及び第2溝部は内周面の全周にわたって設けられている。第1溝部は、枠体の一方の端面である第1端面に露出し、第2溝部は、第1端面と、枠体の第1端面と反対側の端面である第2端面との中間位置よりも第2端面寄りに設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管楽器が有する音響放射部の先端に形成された開口端を覆うように設けられる飛沫拡散防止装置であって、
シート状の濾材と、
前記音響放射部の先端に着脱可能に設けられる円筒形状の枠体と、
を備え、
前記枠体の内周面には、前記音響放射部の先端が挿入される第1溝部と、前記濾材が挿入される第2溝部とが設けられており、
前記第1溝部及び前記第2溝部は、前記内周面の全周にわたって設けられており、
前記第1溝部は、前記枠体の一方の端面である第1端面に露出し、
前記第2溝部は、前記第1端面と、前記枠体の前記第1端面と反対側の端面である第2端面との中間位置よりも前記第2端面寄りに設けられている
ことを特徴とする飛沫拡散防止装置。
【請求項2】
前記枠体は、高分子発泡体で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の飛沫拡散防止装置。
【請求項3】
前記第1溝部と前記第2溝部との距離は略20mm以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の飛沫拡散防止装置。
【請求項4】
前記第1溝部は、前記枠体の中心軸に沿った切断面で切断したときの断面形状が略コの字形状であり、
前記第1溝部の底面には、前記中心軸に向けて突出する突起が設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の飛沫拡散防止装置。
【請求項5】
前記第2溝部の側面のうちの前記第2端面側に位置する側面には、前記第2溝部の開口部に沿って面取りが設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の飛沫拡散防止装置。
【請求項6】
前記濾材は、2枚の第1不織布と、前記第1不織布に挟まれた第2不織布とを有し、
前記第1不織布の坪量は、前記第2不織布の坪量より高い
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の飛沫拡散防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛沫拡散防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、唾液の出口部分に、唾液を収集する唾液収集具を着脱可能に貼着した吹奏楽器の唾液収集具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、丸孔の周囲に円環形状の唾液収集具が貼付されている。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、唾液収集具を貼着しても音響放射部の開口が露出することに変わりはなく、飛沫の拡散を防止することができない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、管楽器の演奏時に飛沫の拡散を防止することができる飛沫拡散防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る飛沫拡散防止装置は、例えば、管楽器が有する音響放射部の先端に形成された開口端を覆うように設けられる飛沫拡散防止装置であって、シート状の濾材と、前記音響放射部の先端に着脱可能に設けられる円筒形状の枠体と、を備え、前記枠体の内周面には、前記音響放射部の先端が挿入される第1溝部と、前記濾材が挿入される第2溝部とが設けられており、前記第1溝部及び前記第2溝部は、前記内周面の全周にわたって設けられており、前記第1溝部は、前記枠体の一方の端面である第1端面に露出し、前記第2溝部は、前記第1端面と、前記枠体の前記第1端面と反対側の端面である第2端面との中間位置よりも前記第2端面寄りに設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る飛沫拡散防止装置によれば、音響放射部の先端に着脱可能に設けられる円筒形状の枠体の内周面には、音響放射部の先端が挿入される第1溝部と、シート状の濾材が挿入される第2溝部とが設けられており、第1溝部及び第2溝部は内周面の全周にわたって設けられている。すなわち、飛沫拡散防止装置が音響放射部の先端を覆う。これにより、管楽器の演奏時に飛沫の拡散を防止することができる。また、濾材の交換が可能であるため、衛生的であり、かつ飛沫拡散防止装置のメンテナンスが容易である。さらに、第1溝部は、枠体の一方の端面である第1端面に露出し、第2溝部は、第1端面と、枠体の第1端面と反対側の端面である第2端面との中間位置よりも第2端面寄りに設けられている。すなわち、第1溝部と第2溝部とが離れて設けられており、その結果音響放射部の開口端と濾材とが離れて配置される。したがって、演奏中の息苦しさを軽減することができる。
【0008】
前記枠体は、高分子発泡体で形成されていてもよい。これにより、枠体を介して呼気や音を飛沫拡散防止装置の外部に放出することで、飛沫の拡散を抑えつつ、音質を保つことができる。
【0009】
前記第1溝部と前記第2溝部との距離は略20mm以上であってもよい。これにより、濾材に向かう呼気の流れを枠体に向けて流すことができ、演奏中の息苦しさを軽減することができる。
【0010】
前記第1溝部は、前記枠体の中心軸に沿った切断面で切断したときの断面形状が略コの字形状であり、前記第1溝部の底面には、前記中心軸に向けて突出する突起が設けられていてもよい。これにより、第1溝部からベルを抜け難くすることができる。
【0011】
前記第2溝部の側面のうちの前記第2端面側に位置する側面には、前記第2溝部の開口部に沿って面取りが設けられていてもよい。これにより、濾材の第2溝部への着脱が容易になる。
【0012】
前記濾材は、2枚の第1不織布と、前記第1不織布に挟まれた第2不織布とを有し、前記第1不織布の坪量は、前記第2不織布の坪量より高くてもよい。これにより、濾材の表面強度が保たれ、濾材の破損、変形等を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、管楽器の演奏時に飛沫の拡散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】飛沫拡散防止装置1をトランペット100に取り付けた状態の概略を示す斜視図である。
【
図2】飛沫拡散防止装置1の概略を示す分解斜視図である。
【
図3】飛沫拡散防止装置1をトランペット100に取り付けた状態の概略を示す断面図である。
【
図6】飛沫拡散防止の効果を測定した様子を示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は正面図である。
【
図7】飛沫拡散防止効果を測定した様子を示す図であり、(A)は開口端102と濾材10-1との距離が10mmの場合であり、(B)は開口端102と濾材10-1との距離が20mmの場合であり、(C)は開口端102と濾材10-1との距離が30mmの場合であり、(D)は開口端102と濾材10-1との距離が40mmの場合である。
【
図8】第1溝部21A、第2溝部22Aを有する枠体20Aの概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の飛沫拡散防止装置は、管楽器が有する音響放射部の先端に形成された開口端を覆うように設けられ、管楽器の演奏時に飛沫の拡散を防止するものである。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態である飛沫拡散防止装置1をトランペット100に取り付けた状態の概略を示す斜視図である。
図2は、飛沫拡散防止装置1の概略を示す分解斜視図である。
図3は、飛沫拡散防止装置1をトランペット100に取り付けた状態の概略を示す断面図である。なお、
図3では、一部の部材について断面を示すハッチングを省略する。
【0017】
トランペット、ホルン、サクソフォン等の管楽器は、呼気を取り込むマウスピースと、呼気が通過する管状部と、音の出口である音響放射部とを有する。本実施の形態では、管楽器としてトランペット100を例に説明するが、飛沫拡散防止装置1をトランペット100以外の管楽器に適用することも可能である。トランペット100は、音響放射部であるベル101を有し、ベル101の先端は開口している。この開口を開口端102とする。
【0018】
以下、トランペット100の本体側から開口端102に向かう方向を前方とする。開口端102はトランペット100の最も前側に位置し、飛沫拡散防止装置1は、開口端102の前方(正面側)に取り付けられる。飛沫拡散防止装置1及びトランペット100を前方(正面)から見た状態を正面視とし、飛沫拡散防止装置1及びトランペット100を後方(背面)から見た状態を背面視とする。
【0019】
飛沫拡散防止装置1は、主として、濾材10と、枠体20と、を有する。飛沫拡散防止装置1が開口端102に設けられると、開口端102が飛沫拡散防止装置1により覆われる。その結果、飛沫拡散防止装置1が演奏時の飛沫の拡散を防止する。
【0020】
濾材10は、シート状であり、複数の濾紙を積層して形成されている。
図4は、濾材10の正面図である。濾材10は、厚さ方向に沿って見たときの形状が円形状であり、周縁に沿って溶着(例えば、熱溶着)されている。言い換えれば、溶着部10aが濾材10の周縁に沿って並んでいる。
【0021】
本実施の形態では、濾紙として不織布を用いる。不織布は、例えば、ポリプロピレン(PP)を用いたメルトブロー不織布である。なお、不織布は、メルトブロー不織布に限られず、例えばスパンボンド不織布やサーマルボンド不織布であってもよい。また、不織布の材料は、ポリプロピレンに限られず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)であってもよい。
【0022】
図5は、濾材10の分解斜視図である。濾材10は、2枚の第1不織布11、12と、第2不織布13とを有する。第2不織布13の両側を第1不織布11、12に挟むことで、シート状の濾材10となる。
【0023】
第1不織布11、12の坪量は、第2不織布13の坪量よりも高い。本実施の形態では、第1不織布11、12の坪量は略30g/m2であり、第2不織布13の坪量は略15g/m2である。これにより、濾材10の表面強度が保たれ、濾材10の破損、変形等を防止する。
【0024】
図1~3の説明に戻る。枠体20は、円筒形状であり、ベル101の先端に着脱可能に設けられる。また、枠体20には、濾材10が着脱可能に設けられる。
【0025】
枠体20は、高分子発泡体で形成されている。高分子発泡体とは、高分子に発泡剤を添加することで、高分子材料全体にわたって多数の気泡を包含する成型体である。高分子とは、例えば、合成樹脂(ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等)、シリコン樹脂、合成ゴム、天然ゴム等を含む。本実施の形態では、枠体20は、ポリウレタン発泡体、ポリスチレン発泡体又はポリオレフィン発泡体である。
【0026】
高分子発泡体は、空気は透過するが、唾液や水分を含む飛沫等の大部分を補足する。また、高分子発泡体は、弾性を有するため、ベル101への装着時には容易に変形可能である。
【0027】
以下、
図3を用いて枠体20について詳しく説明する。枠体20の内周面20aには、ベル101の先端が挿入される第1溝部21と、濾材10が挿入される第2溝部22とが設けられている。第1溝部21及び第2溝部22は、内周面20aの全周にわたって設けられている。
【0028】
第1溝部21は、枠体20の中心軸20axに沿った切断面で切断したときの断面形状が略コの字形状である。第1溝部21は、第1端面20bに露出する。第1溝部21の直径は開口端102の直径と略同一であるが、枠体20は弾性を有するため、第1溝部21の直径が開口端102の直径以下でもよい。
【0029】
第2溝部22は、枠体20の中心軸20axに沿った切断面で切断したときの断面形状が略コの字形状又は略U字形状である。
図3においては、中心軸20axに沿った切断面で切断したときの第2溝部22の断面形状は略コの字形状である。第2溝部22は、第1端面20bと第2端面20c(枠体20の第1端面20bと反対側の端面)との中間位置cよりも第2端面20c寄りに設けられている。
【0030】
第2溝部22の幅は濾材10の厚さと略同一であるが、濾材10を押圧することで厚さが薄くなるため、第2溝部22の幅が濾材10の厚さ以下でもよい。第2溝部22の幅を濾材10の厚さ以下とし、濾材10を第2溝部22に圧入することで、呼気による濾材10の変形が防止できる。
【0031】
第1溝部21と第2溝部22との距離dは略20mm以上である。本実施の形態では、枠体20の把持しやすさを考慮して距離dを略30mmとしている。
【0032】
ここで、距離dについて説明する。
図6は、飛沫拡散防止の効果を測定した様子を示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は正面図である。
【0033】
トランペット100のマウスピース103に隣接してスモーク発生装置111を設け、マウスピース103の周囲にスモークを発生させた(
図6の白抜き矢印参照)。また、マウスピース103の後方にエアブロー発生装置112及び流量計113を設け、エアブロー発生装置112で前方に向けたエアブローを発生させる(
図6の黒矢印参照)とともに、エアブロー、すなわちスモークの流量を流量計113で測定した。本測定では、流量を100L/分に設定した。
【0034】
また、開口端102の前方に濾材10-1を設けた。濾材10-1の構成は濾材10と同様であり、直径が100mmである。なお、本実験において、開口端102の直径は略120mmであった。
【0035】
濾材10-1は、図示しないホルダにより保持した。ホルダは、正面視においてトランペット100と重ならないように配置した。本測定は、開口端102と濾材10-1との距離を10mm~60mmの間で変更した。
【0036】
また、レーザ発生装置114を設け、レーザ発生装置114により開口端102から排出されるスモーク(
図6点線矢印参照)に向けてレーザ光を照射した。また、開口端102の側面に動画撮像装置115を設け、スモークの様子を連続的に撮像した。
【0037】
飛沫拡散防止効果の測定は、暗室内で、マウスピース103から呼気に相当するスモークをトランペット100内に吹き込み、開口端102から排出されるスモークが濾材10-1により遮られる様子を動画撮像装置115で測定するとともに、スモークの様子を目視することで行った。
【0038】
飛沫拡散防止の効果を測定した結果を表1に示す。表1における数値は、開口端102と濾材10-1との距離である。また、表1における×、△、〇は、スモークを目視することにより、スモークが前方に移動していないかどうかの官能評価を行った評価結果である。
図7は、飛沫拡散防止効果を測定した様子を示す図であり、(A)は開口端102と濾材10-1との距離が10mmの場合であり、(B)は開口端102と濾材10-1との距離が20mmの場合であり、(C)は開口端102と濾材10-1との距離が30mmの場合であり、(D)は開口端102と濾材10-1との距離が40mmの場合である。なお、
図7は、スモークが開口端102から排出され始めてから略5秒経過したときに動画撮像装置115により撮像された画像である。
図7においては、紙面右方向が前方である。
【表1】
【0039】
表1における評価結果が△の場合には、
図7(A)に示すように、開口端102から排出されたスモークが一旦濾材10-1に当たるが、そのまま前方に移動している。それに対し、表1における評価結果が〇の場合には、
図7(B)~(D)に示すように、開口端102から排出されたスモークが濾材10-1に当たり、その後、開口端102と濾材10-1との間の隙間を鉛直上向き又は鉛直下向きに移動している。すなわち、開口端102と濾材10-1との距離が略20mm以上の場合には、スモーク(呼気)が濾材10-1に当たることで、呼気の流れの向きが変えられることが分かった。
【0040】
以上、飛沫拡散防止効果を測定した結果、開口端102と濾材10-1との距離、すなわち第1溝部21と第2溝部22との距離dは、略20mm以上とすることが望ましいことが分かった。なお、飛沫拡散防止装置1の内部での呼気の滞留や使い勝手等を考慮すると、距離dを略20mm~略40mmとしてもよい。
【0041】
図3の説明に戻る。開口端102から正面に向けて飛散した飛沫は、濾材10により遮られ、飛沫拡散防止装置1の外に拡散しない。また、第1溝部21と第2溝部22との距離dを略20mm以上であるため、開口端102から正面に向けて流れる呼気は、濾材10に当たることで流れの向きが変わり、濾材10の外周縁、すなわち枠体20に向けて流れる(
図3の白抜き矢印参照)。枠体20で呼気に含まれる飛沫等が遮られるため、飛沫等が飛沫拡散防止装置1の外にほとんど拡散しない。
【0042】
呼気は枠体20を通過する(
図3の点線矢印参照)ため、トランペット100演奏時の息苦しさが軽減される。また、枠体20が発泡材であるため、ベル101から放射された音が側面から飛沫拡散防止装置1の外に伝えることができる。
【0043】
本実施の形態によれば、飛沫拡散防止装置1により管楽器の演奏時に飛沫の拡散を防止することができる。また、濾材10の交換が可能であるため、衛生的であり、かつ飛沫拡散防止装置1のメンテナンスが容易である。
【0044】
また、本実施の形態によれば、第1溝部と第2溝部とが離れて設けられている、すなわち開口端102と濾材10とが離れているため、演奏中の息苦しさを軽減することができる。例えば、ベル101の開口端102に濾材10を当接させる場合には、飛沫拡散防止の効果は高いが、息苦しさは避けられない。それに対し、本実施の形態では、開口端102と濾材10とを離すことで、演奏中の息苦しさを軽減し、飛沫拡散防止装置1の使い勝手をよくすることができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、枠体20を高分子発泡体で形成することにより、枠体20を介して呼気や音を飛沫拡散防止装置1の外部に放出することができる。したがって、飛沫の拡散を抑えつつ、音質を保つことができる。例えば、ベル101の開口端102に濾材10を当接させる場合には、飛沫拡散防止の効果は高いが、音質の大幅な劣化は避けられない。それに対し、本実施の形態では、枠体20を介して音を飛沫拡散防止装置1の外部に放出することができるため、音質の劣化を抑えることができる。すなわち、飛沫拡散防止効果と音質の良さとのバランスが取れた飛沫拡散防止装置1を提供することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、第1溝部21と第2溝部22との距離dを略20mm以上とすることで、濾材10に向かう呼気の流れを枠体20に向けて流れの向きを変えることができる。その結果、濾材10が開口端102に当接させて飛沫の拡散を防止する飛沫拡散防止装置に対し、演奏中の息苦しさを軽減することができる。さらに、枠体20を高分子発泡体とすることで、息苦しさを軽減させる効果が高くなる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、第1不織布11、12の坪量を第2不織布13の坪量よりも高くすることで、濾材10の表面強度を高くし、呼気が直接濾材10に当たることによる濾材10の変形等を防止する。
【0048】
なお、本実施の形態では、第1溝部21及び第2溝部22は枠体20の中心軸20axに沿った切断面で切断したときの断面形状が略コの字形状であったが、第1溝部21及び第2溝部22の形状はこれに限られない。
【0049】
図8は、変形例にかかる第1溝部21A、第2溝部22Aを有する枠体20Aの概略を示す断面図である。枠体20Aは、枠体20と同様、円筒形状であり、高分子発泡体で形成されている。
【0050】
枠体20Aは、内周面20aに形成された第1溝部21A及び第2溝部22Aを有する。第1溝部21Aにベル101の先端が挿入されることで、枠体20Aがベル101に着脱可能である。第2溝部22Aに濾材10が挿入されることで、濾材10が枠体20Aに着脱可能である。
【0051】
第1溝部21Aは、枠体20の中心軸20axに沿った切断面で切断したときの断面形状が略コの字形状の溝本体部21aと、溝本体部21aに設けられた突起21bと、を有する。突起21bは、溝本体部21aの底面21cに設けられており、中心軸20axに向けて突出する。
【0052】
突起21bは、第1端面20bに隣接して設けられている。そのため、第1溝部21Aにベル101が挿入されたときに、突起21bがベル101の背面に当接し、第1溝部21Aからベル101が抜け難くなる。
【0053】
第2溝部22Aは、枠体20の中心軸20axに沿った切断面で切断したときの断面形状が略コの字形状又は略U字形状である溝本体部22aと、溝本体部22aに設けられた面取り22bと、を有する。面取り22bは、第2溝部22Aの側面のうちの第2端面20c側に位置する側面22cに、第2溝部22Aの開口部に沿って設けられている。面取り22bにより、濾材10の第2溝部22Aへの着脱が容易になる。
【0054】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0055】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略U字形状」とは、厳密にU字形状の場合には限られない。また、例えば、単に略中央等と表現する場合において、厳密に中央等の場合のみでなく、略中央等の場合を含むものとする。
【符号の説明】
【0056】
1 :飛沫拡散防止装置
10、10-1:濾材
10a :溶着部
11、12 :第1不織布
13 :第2不織布
20、20A :枠体
20a :内周面
20ax :中心軸
20b :第1端面
20c :第2端面
21、21A :第1溝部
21a :溝本体部
21b :突起
21c :底面
22、22A :第2溝部
22a :溝本体部
22b :面取り
22c :側面
100 :トランペット
101 :ベル
102 :開口端
103 :マウスピース
111 :スモーク発生装置
112 :エアブロー発生装置
113 :流量計
114 :レーザ発生装置
115 :動画撮像装置