(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110863
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】連結部材
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20220722BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
E04H9/02 351
F16F15/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006558
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB00
2E139AC19
2E139BC06
2E139BD31
3J048AA01
3J048BA11
3J048DA04
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】軸方向力が作用するダンパーと構造物の間にあって、構造が簡単で軸方向および面外方向それぞれに直交する方向の変位に追従可能な連結部材を提供する。
【解決手段】連結部材1は、ダンパー4と構造物2との間に設けられ、構造物2に連結された一方側ベースプレート3と、ダンパー4に連結された他方側ベースプレート5と、一方側ベースプレート3と構造物2との間に形成された隙間部6に設けられ一方側ベースプレート3と対向する面が円弧形状の鋼棒7を有する上下変位追従機構9と、一方側ベースプレート3に連結しダンパー4方向に延びる一方側係合部10と、他方側ベースプレート5に連結し構造物2方向に延びる他方側係合部11とを備え、一方側係合部10と他方側係合部11とはダンパー4の軸方向に対する面外方向へ回動自在に連結され、構造物2と一方側ベースプレート3とは軸方向及び面外方向それぞれに直交する方向に変位可能に連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向力が作用するダンパーと構造物との間に設けられる連結部材であって、
前記構造物に連結された一方側ベースプレートと、
前記ダンパーに連結された他方側ベースプレートと、
前記一方側ベースプレートと前記構造物との間に形成された隙間部に設けられ、
少なくとも前記一方側ベースプレートと対向する面が円弧形状の鋼棒を有する上下変位追従機構と、
前記一方側ベースプレートに連結し前記ダンパー方向に延びる一方側係合部と、
前記他方側ベースプレートに連結し前記構造物方向に延びる他方側係合部と、を備え、
前記一方側係合部と前記他方側係合部とは、前記ダンパーの軸方向に対する面外方向へ回動自在に連結され、
前記構造物と前記一方側ベースプレートとは、前記軸方向および前記面外方向それぞれに直交する方向に変位可能に連結されていることを特徴とする連結部材。
【請求項2】
前記鋼棒は、断面半円形状である、
請求項1に記載の連結部材。
【請求項3】
前記一方側ベースプレートには、前記構造物と連結するボルトを挿通するボルト孔が形成され、
前記ボルト孔は、前記構造物に対する前記ダンパーの面外方向および直交方向の許容移動距離を考慮した大きさで形成されている、
請求項1または2に記載の連結部材。
【請求項4】
前記一方側ベースプレートと前記構造物とは、前記ボルト孔を通じて前記ボルトにより手締め程度の締め具合により連結されている、
請求項3に記載の連結部材。
【請求項5】
前記上下変位追従機構は、前記鋼棒の両側に弾性部材が配設されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の連結部材。
【請求項6】
前記一方側ベースプレートにおける前記弾性部材と対向する箇所にビス穴が穿孔されており、
前記弾性部材は、前記ビス穴に対向する箇所に前記弾性部材の軸方向の厚みの約半分の座ぐりが形成され、
前記一方側ベースプレートは、前記座ぐりに嵌合され前記ビス穴に挿通されたビスにより前記弾性部材と連結されている、
請求項5に記載の連結部材。
【請求項7】
前記上下変位追従機構は、前記ダンパーと前記他方側ベースプレートとの間にも設けられている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の連結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパーと構造物との間に設けられる連結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の制振架構や免震架構などで用いられるダンパーは、ダンパーの軸方向の変位だけでなく、面外方向への変位にも対応するために、その両端の連結部材にユニバーサルジョイントやクレビスが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
また、縦揺れを伴う地震によっても構造物、特に免震構造物の上下方向に大きな変位が生じる場合があることから、上記に加えて軸方向および面外方向(例えば、水平方向)それぞれに直交する方向(例えば、上下方向)の変位にも対応できる連結部材として、球面滑り軸受(スフェリカル)をクレビスピン部に設けたクレビスも製品化されており、地震発生時における横揺れおよび縦揺れ両方への対策がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、スフェリカルを持たず面外方向(水平方向)の変位のみに対応するクレビスも連結部材として製品化されている。
この連結部材の構成は、スフェリカルを持たない分、コストが安価になるという利点があるが、上下方向の変位に対応する嵌合部の変位への余裕幅が小さいことから上下方向の相対的な変位に追従できないという課題もある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、軸方向力が作用するダンパーと構造物との間にあって、構造が簡単で軸方向および面外方向それぞれに直交する方向の変位に追従可能な連結部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る連結部材は、軸方向力が作用するダンパーと構造物との間に設けられる連結部材であって、前記構造物に連結された一方側ベースプレートと、前記ダンパーに連結された他方側ベースプレートと、前記一方側ベースプレートと前記構造物との間に形成された隙間部に設けられ、少なくとも前記一方側ベースプレートと対向する面が円弧形状の鋼棒を有する上下変位追従機構と、前記一方側ベースプレートに連結し前記ダンパー方向に延びる一方側係合部と、前記他方側ベースプレートに連結し前記構造物方向に延びる他方側係合部と、を備え、前記一方側係合部と前記他方側係合部とは前記ダンパーの軸方向に対する面外方向へ回動自在に連結され、前記構造物と前記一方側ベースプレートとは、軸方向および面外方向それぞれに直交する方向に変位可能に連結されていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成を有することで、連結部材により構造物とダンパーが一体となった機構に対して、軸方向および面外方向それぞれに直交する方向の負荷が作用した際に、一方側ベースプレートが鋼棒との接点を中心として回動することで変位に対して追従することが可能となる。
また、面外方向、例えば水平方向の負荷を受けた場合は、回動自在に連結された一方側係合部と他方側係合部とが、負荷の方向および大きさに応じて回動することで負荷による変位に追従することが可能になる。また、面外方向と軸方向および面外方向それぞれに直交する方向の合成負荷を受けた場合についても上記の機構により、それぞれの方向の変位に追従することが可能となる。
【0008】
本発明の連結部材において、前記鋼棒は、断面半円形状を備えてもよい。
【0009】
上記の構成を有することで、一方側ベースプレートは負荷の作用による変位から発生する破損を防止することができ、負荷の作用による変位に対して滑らかに追従することが可能となる。また、断面半円形状の直線部分(平面部分)により鋼棒を構造物に取り付け易くすることができる。
【0010】
本発明の連結部材において、前記一方側ベースプレートには、前記構造物と連結するボルトを挿通するボルト孔が形成され、前記ボルト孔は、前記構造物に対する前記ダンパーの面外方向および直交方向の許容移動距離を考慮した大きさで形成されてもよい。
【0011】
上記の構成を有することで、連結部材により構造物とダンパーが一体となった機構のうち、一方側ベースプレートと構造物の連結が維持されるため、一方側ベースプレートは、負荷の作用による変位に対して追従することが可能となる。
【0012】
本発明の連結部材において、前記一方側ベースプレートと前記構造物とは、前記ボルト孔を通じて前記ボルトにより手締め程度の締め具合により連結されてもよい。
【0013】
上記の構成を有することで、ボルトと一方側ベースプレートとが相対移動可能に連結されるため、一方側ベースプレートは、負荷の作用による変位に対して追従することが可能となる。
【0014】
本発明の連結部材において、前記上下変位追従機構は、前記鋼棒の両側に弾性部材が配設されてもよい。
【0015】
上記の構成を有することで、突発的、極大等不測の軸方向および面外方向それぞれに直交する方向の負荷が作用した場合に、負荷による変位を緩やかにすることで、連結部材の破損が防止され、負荷の方向および大きさに応じて変位に追従することが可能となる。また、適正な弾性力の弾性部材を配置することで、負荷が解放された際に一方側ベースプレートを元の位置に復元させることも可能となる。
【0016】
本発明の連結部材において、前記一方側ベースプレートにおける前記弾性部材と対向する箇所にビス穴が穿孔されており、前記弾性部材は、前記ビス穴に対向する箇所に前記弾性部材の軸方向の厚みの約半分の座ぐりが形成され、前記一方側ベースプレートは、前記座ぐりに嵌合され前記ビス穴に挿通されたビスにより前記弾性部材と連結されてもよい。
【0017】
上記の構成を有することで、弾性部材と一方側ベースプレートとは安定して連結され、弾性部材に挟まれた鋼棒とともに落下を防止することができる。
【0018】
本発明の連結部材において、前記上下変位追従機構は、前記ダンパーと前記他方側ベースプレートとの間にも設けられてもよい。
【0019】
上記の構成を有することで、連結部材により構造物とダンパーが一体となった機構に対して、軸方向および面外方向それぞれに直交する方向の負荷が作用した際に、一方側ベースプレートと他方側ベースプレートがそれぞれ対向する鋼棒との接点を中心として回動することで変位に対して追従することが可能となる。この際、ダンパーについても傾く等の変位を防止し、連結部材により構造物とダンパーが一体となった機構について、外力の作用に対してより安定した状態を維持することが可能となる。
また、面外方向、例えば水平方向の負荷を受けた場合は、回動自在に連結された一方側係合部と他方側係合部とが、負荷の方向および大きさに応じて回動することで負荷による変位に追従することが可能になる。また、面外方向と軸方向および面外方向それぞれに直交する方向の合成負荷を受けた場合についても上記の機構により、それぞれの方向の変位に追従することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軸方向力が作用するダンパーと構造物の間にあって、構造が簡単で軸方向および面外方向それぞれに直交する方向の変位に追従可能な連結部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態による連結部材の一例を示す正面視の部分断面図である。
【
図5】本発明の実施形態における一方側ベースプレートと弾性部材の連結構成の一例を示す断面図である。
【
図6】本実施形態の連結部材の変位状態を示す正面視の部分断面図である。
【
図7】本実施形態の連結部材の変位状態を示す平面図である。
【
図8】本実施形態の連結部材の変形例を示す正面視の部分断面図である。
【
図9】本実施形態の連結部材の変形例の変位状態を示す正面視の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態によるクレビス(連結部材)について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態によるクレビス1は、軸方向力が作用するダンパー4と、ダンパー4により制振される構造物2との間に設けられている。
なお、ダンパー4の軸方向をX方向、X軸に直交する構造物2の面外方向(水平方向)をY方向、X方向およびY方向それぞれに直交する方向(上下方向)をZ方向とおいて説明する。
【0023】
クレビス1は、構造物2に近接して一方側ベースプレート3が設けられ、構造物2と一方側ベースプレート3との間が隙間部6として形成されている。
一方側ベースプレート3は、構造物2に対してYZ方向に平行に設けられる。形状は板状部材であり、XZ平面内にある面がZ方向に偏長になっている。また、外力に対して一定の強度を有する。例えば、ステンレス製の板状部材が用いられる。
隙間部6には、鋼棒7と弾性部材8を備えている上下変位追従機構9が配設されている。
【0024】
鋼棒7は、構造物2に接地して隙間部6に設けられ、一方側ベースプレート3と対向する面に円弧形状を備えている。鋼棒7はY方向に偏長で円弧形状を備えた棒状部材で、隙間部6のX方向の幅に同等の長さを有し、一方側ベースプレート3とはY方向に同等の長さを有する。また、材質は例えば、ステンレス製の鋼棒が用いられる。
【0025】
鋼棒7は、円弧形状の円頂部を一方側ベースプレート3と対向する面側の接点とする。鋼棒7の円弧面の形状は、R-2000程度となっている。また、鋼棒7はY方向の断面に半円形状を備えており、断面形状の直線部分により構造物2への取り付けを容易にすることができる。
なお、円弧面の形状は、R-2000程度に限らず、一方側ベースプレート3が延長部との接点を中心として円弧面を滑らかに回動できればよい。
【0026】
構造物2にはボルト穴13aが形成されている。一方側ベースプレート3にはボルト孔13bが形成されている。ボルト穴13aとボルト孔13bはX方向に対向した位置に複数形成されている。ボルト孔13bの大きさは、構造物2に対するダンパー4のY方向およびZ方向の許容移動距離を考慮した大きさで形成されている。
【0027】
ボルト孔13bの直径は、ボルト12の直径より2mm大きいのが通常の寸法であるが、本実施形態においてはボルト12の直径より4mm程度大きく設けられている。
なお、ボルト穴13aの直径は、ボルト12が締結される寸法で形成されている。
【0028】
一方側ベースプレート3は、ボルト12をボルト穴13a、ボルト孔13bに挿通させ構造物2に連結される。
この際、ボルト12は、手締め程度の締め具合により過大なトルクを与えずに連結される。また、ボルト12は、上下変位追従機構9のZ方向の両側に設けられる。
【0029】
図3および
図4に示すように、本実施形態においてボルト12は、一方側ベースプレート3のY方向に複数設けられる。ボルト12を複数設ける場合は、ボルト12間の間隔は等間隔とする。また、ボルト12の数に応じて構造物2と一方側ベースプレート3の対応する箇所にボルト穴13aとボルト孔13bが形成される。
なお、一方側ベースプレートのY方向の辺長が短く、ボルト12を複数設けることが困難な場合はこの限りではない。
【0030】
弾性部材8は、鋼棒7のZ方向両側(上下)に備えられる。弾性部材8はY方向に偏長な板状部材である。また、クレビス1に作用するZ方向の変位に対して追従できる硬度を有する。例えば、天然ゴム製の部材が用いられる。
【0031】
弾性部材8と鋼棒7とは、X方向に同等の長さを有し、隙間部6内に構成される。
また、弾性部材8と一方側ベースプレート3とは、Y方向に同等の長さを有する。
【0032】
一方側ベースプレート3は、少なくとも上下変位追従機構9と上下変位追従機構9のZ方向の両側に設けられるボルト12とを、設けることができるZ方向の長さを有している。
【0033】
図5に示すように、一方側ベースプレート3は、弾性部材8と対向する箇所にビス穴14が穿孔されている。
弾性部材8は、ビス穴14に対向する箇所にX方向の厚みの約半分の長さの座ぐり15が形成されている。
【0034】
弾性部材8は、座ぐり15に嵌合されビス穴14に挿通されたビス16により一方側ベースプレート3と連結される。これにより、弾性部材8は一方側ベースプレート3と安定して連結される。
また、この機構により、弾性部材8に挟まれた鋼棒7についても落下を防止できる。
【0035】
図3および
図4に示すように、本実施形態においてビス16は、弾性部材8のZ方向中央に設けられる。また、ビス16はボルトであってもよい。
【0036】
ビス16は、鋼棒7の両側に設けられた弾性部材8それぞれに対して少なくとも1つ以上用いられる。また、ビス16は、それぞれの弾性部材8に対してY方向に複数設けられている。ビス16をY方向に複数設ける場合は、隣り合うビス16の間隔はY方向に等間隔とする。また、ビス16の数に応じて一方側ベースプレート3と弾性部材8の対応する箇所にビス穴14と座ぐり15が形成される。
なお、一方側ベースプレート3のY方向の辺長が短く、ビス16を複数設けることが困難な場合はこの限りではない。
【0037】
クレビス1は、他方側ベースプレート5を介してダンパー4と連結されている。
また、ダンパー4と他方側ベースプレート5とは、相対変位が生じないよう連結されている。
他方側ベースプレート5の形状は、一方側ベースプレート3と同等であり、外力による負荷への耐久性を有する。例えば、ステンレス製の板状部材が用いられる。
なお、本実施形態におけるダンパー4と他方側ベースプレート5との連結方法は、相対変位が生じない条件のもとで限定されない。
【0038】
クレビス1は、一方側ベースプレート3に連結しダンパー4に向かってX方向に延びる一方側係合部10と、他方側ベースプレート5に連結し構造物2に向かってX方向に延びる他方側係合部11と、を備える。
【0039】
一方側係合部10と他方側係合部11の形状は、ともにX方向に偏長な板状部材で、外力に対して一定の強度を有する。材質は例えば、ステンレス製の鋼棒が用いられる。
また、他方側係合部11は、一方側係合部10のZ方向の辺長以上の間隔を設けた一対の板状部材から構成される。
【0040】
一方側係合部10は、一方側ベースプレート3のダンパー4に対向する面の中央に設けられる。
他方側係合部11を構成する一対の板状部材は、他方側ベースプレート5のYZ平面に設けられ、一方側係合部10に対してZ方向に前後するよう設けられる。
【0041】
一方側係合部10と他方側係合部11とは、それぞれX方向に偏長な面の中央のZ方向に同じ形状の連結孔が穿孔されている。
一方側係合部10は、他方側係合部11を構成する一対の板状部材にZ方向に嵌合されている。
一方側係合部10と他方側係合部11の連結孔は、嵌合された際、Z方向に重なっている。
【0042】
一方側係合部10と他方側係合部11とは、同じ形状に穿孔されZ方向に重なっている連結孔の形状に対応する連結ピン17によりそれぞれが回動自在に連結されている。この機構により、クレビス1により構造物2とダンパー4が連結された機構も追従してXY平面内において回動自在となる。
連結孔は 一方側係合部10と他方側係合部11のXY平面内における回転半径を考慮して穿孔される。
なお、連結構造は所望の機能を果たす構成であれば上述の構造に限定されない。例えば、連結孔に一方側係合部10と他方側係合部11の嵌合厚さに対して上下に余裕しろを設けて、上下から連結孔の径より大きいキャップ等の嵌合部材を嵌め合わせて連結する方法が挙げられる。
【0043】
一方側係合部10と他方側係合部11がXY平面内において回動自在に連結されるのであれば、一方側係合部10と他方側係合部11を構成する板状部材の組み合わせは限定されない。例えば、他方側係合部11を構成する一対の板状部材は、一方側係合部10に設けられてもよいし、一方側係合部と他方側係合部の両方に設けられてもよい。
【0044】
次に上述した本実施形態によるクレビスの作用・効果について
図6および
図7に基づいて説明する。
図6に示すように上述した本実施形態におけるクレビス1は、構造物2およびダンパー4に両端部がそれぞれ連結されることにより、一体化する。この一体となった機構にZ方向の荷重が作用した際に発生する変位に追従する機構について説明する。
【0045】
構造物2と一方側ベースプレート3とを連結するボルト12を挿通するボルト孔13bは、ボルト12より直径を4mm程度大きく穿孔され、挿通したボルト12を手締め程度の締め具合で設けられている。この機構により、一方側ベースプレート3は構造物2に対して相対移動できる。
ボルト12は上下変位追従機構9のZ方向の両側に設けられるため、一方側ベースプレート3は構造物2に対して相対移動できる。
【0046】
また、鋼棒7の一方側ベースプレート3に対向する面に備えられた円弧形状と、円弧表面の円頂部が一方側ベースプレート3との接点となっている機構により、一方側ベースプレート3は、上記変位による破損を防止され、鋼棒7の円弧形状との接点を中心として回動することが可能となる。
【0047】
これらの機構を有することで、クレビス1により構造物2とダンパー4が一体となった機構は、Z方向の荷重の作用による変位に対して、鋼棒7の接点を中心に回動することで変位に対して追従することが可能となる。
【0048】
また、
図7に示すように上記の実施形態では、Z方向を含む合成負荷を受けた場合についても、変位に追従することが可能となる。
【0049】
また、鋼棒7の上下に設けられた弾性部材8は、作用する負荷による変位の大きさ、向きに応じて自在に潰れることで変位に追従することができる。
【0050】
この機構を有することで、突発的、極大等不測の負荷が作用した場合に、負荷による変位を緩やかにすることで、変位に追従すると同時にクレビス1により一体となった機構の破損を防止できる。
また、適正な弾性力の弾性部材8を配置することで、作用した負荷が解放された際に一方側ベースプレート3を元の位置に復元させることも可能となる。
【0051】
また、X方向に作用するダンパー4の反力がクレビス1に作用する際は、鋼棒7がその反力を負担する。
このとき、一方側ベースプレート3のダンパー4に対向する面の中央に一方側係合部10が設けられ、構造物2に対向する面の中央に一方側ベースプレート3と鋼棒7との接点が設けられていると、一方側ベースプレート3に上記反力による過度な回転モーメントが作用せず、鋼棒7がダンパー4の反力を安定して負担することが可能となる。
【0052】
また、
図7に示すように本実施形態においては、Y方向の負荷およびY方向を含む合成負荷を受けた場合に、連結ピン17により嵌合された一方側係合部10と他方側係合部11が負荷の方向および大きさに応じて連結ピン17を中心としてXY平面内において自在に回動することで、負荷による変位に追従することが可能となる。
【0053】
以上、本発明によるクレビスの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、上下変位追従機構9およびボルト12、ビス16を構造物2側のみに設けているが、
図8に示すようなダンパー4側との両端部に設けてもよい。
【0054】
上記の構成によれば、
図9に示すようにZ方向の負荷を受けた場合、構造物2側とダンパー4側のそれぞれに設けられた鋼棒7の上下に設けられた弾性部材8について、X方向の対角線に位置する弾性部材8が作用する負荷の方向および大きさに応じて自在に潰れることで負荷による変位に追従することが可能となる。この際、ダンパー4についても傾く等の変形を防止し、クレビス1により構造物2とダンパー4が一体となった機構について、外力の作用に対してより安定した状態を維持することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、上下変位追従機構9を構造物2に対向する一方側ベースプレート3側だけに設けているが、ダンパー4に対向する他方側ベースプレート5側だけに設けてもよい。この際、ボルト12、ビス16も他方側ベースプレート5に連結して設けられる。
【0056】
また、本実施形態では、Z方向に作用する負荷による変位に追従できる機構をクレビス1に設けたが、クレビス1以外で適用が可能な連結部材であれば、当該の連結部材に上記機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 クレビス(連結部材)
2 構造物
3 一方側ベースプレート
4 ダンパー
5 他方側ベースプレート
6 隙間部
7 鋼棒
8 弾性部材
9 上下変位追従機構
10 一方側係合部
11 他方側係合部
12 ボルト
13a ボルト穴
13b ボルト孔
14 ビス穴
15 座ぐり
16 ビス
17 連結ピン