(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110865
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】芋焼き器
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
A47J37/06 356
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006562
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】520443929
【氏名又は名称】株式会社キューボック
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】田坂 敏章
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA02
4B040AD03
4B040AE12
4B040JA06
4B040JA12
(57)【要約】
【課題】サツマイモをおいしく調理する芋焼き器の提供。
【解決手段】この芋焼き器10は、支持体11と網袋12とを有する。これらは銅合金からなる。支持体11は、銅線が屈曲乃至湾曲されることにより形成されている。支持体11は、枠部13及び把手14を有する。把手14は、指掛部15及び鉤状部16を有する。網袋12は、メッシュ生地20からなる。網袋12は、銅薄線21がメリヤス編みされて形成されている。銅薄線21の断面形状は矩形であり、周囲にエッジが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成された枠部を有する支持体と、
上記枠部に支持され、当該枠部に沿う開口が形成された銅合金からなる網袋とを有する芋焼き器。
【請求項2】
上記網袋は、断面形状が矩形の銅薄線からなり、且つ当該銅薄線はメリヤス編みされている請求項1に記載の芋焼き器。
【請求項3】
上記網袋は、二重構造である請求項1又は2に記載の芋焼き器。
【請求項4】
上記銅薄線の肉厚は、0.03mm~0.5mmである請求項3に記載の芋焼き器。
【請求項5】
上記支持体は銅合金からなり、把手が一体的に形成されている請求項1から4のいずれかに記載の芋焼き器。
【請求項6】
上記支持体は、
線径が1.2mm~2.0mmの所定長さの銅線が屈曲ないし湾曲されることにより形成されており、
上記把手は、上記枠部に連続して形成された環状指掛部及び鉤状部を有する請求項5に記載の芋焼き器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芋を焼く際に使用される器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえばサツマイモは、焼くことによって柔らかく且つ甘くなるように調理され、従来から「焼き芋」として親しまれている。
【0003】
サツマイモがよりおいしくなるように、従来からさまざまな調理法(焼き方)が提案されているが、その本質は、外部から加えられる熱がサツマイモに適切に伝えられることである。「熱が適切に伝えられる」とは、熱がサツマイモに対して所要の伝導態様となることであり、そのために、サツマイモを収容する器や加熱装置が工夫されている(たとえば、特許文献1~特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-171940号公報
【特許文献2】特開2001-292914号公報
【特許文献3】特開昭59-232063号公報
【特許文献4】登録実用新案公報第3227791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の調理方法では、サツマイモへの熱の伝導を上手く調整できず、また、加熱中にサツマイモに残存する水分を調整することができず、焼き上がったサツマイモが硬すぎたり柔らかすぎたりすることがあった。
【0006】
本願発明者は、試行錯誤の末、サツマイモに所定の伝導態様にて熱を加えることにより、上記不都合を解決できるとの知見を得た。
【0007】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、サツマイモに所定の伝導態様にて熱を加え、よりおいしい理想的な焼き芋を調理するための芋焼き器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る芋焼き器は、環状に形成された枠部を有する支持体と、上記枠部に支持され、当該枠部に沿う開口が形成された銅合金からなる網袋とを有する。
【0009】
この構成によれば、調理される芋は、上記開口から網袋に収容される。この網袋は銅合金からなるので、可撓性に富む。したがって、上記網袋は、上記芋の表面に沿いながら全体を優しく包むことができ、且つ加熱調理中の芋の外形が崩れるのを防止することができる。また、上記網袋は熱伝導性に優れるので、外部から加えられた熱が均等に効率良く上記芋に伝えられる。加えて、加熱された芋から発せられる水分は、網袋を通じてゆっくりと排出される。
【0010】
(2) 上記網袋は、断面形状が矩形の銅薄線からなり、且つ当該銅薄線はメリヤス編みされているのが好ましい。
【0011】
この構成では、上記網袋は、銅薄線がメリヤス編みされることにより形成されるから伸縮性に富む。したがって、芋は、上記網袋により優しく包み込まれ、調理中の芋の形崩れが防止される。ところで、芋が加熱されると、液状化した糖分(いわゆる「蜜」)がしみ出す。この蜜は熱により焦げる場合があり、焼き上がった芋の外観が悪化する。ところが、上記銅薄線の断面形状が矩形であるから、焼き上がった芋が上記網袋から取り出される際に、上記焦げた蜜が上記銅薄線のエッジにより削り落とされる。したがって、焼き上がった芋の表面が美しくなる。
【0012】
(3) 上記網袋は、二重構造であるのが好ましい。
【0013】
この構成では、芋の内部全体が均等に加熱調理される。本願に係る発明者は、この理由について定量的に解析していないが、網袋を二重にすることにより、遠赤外線効果が発揮され、外部から加えられる熱がより均一に芋に伝わるようになったのではないかと考えている。また、上記網袋が二重構造にされると、調理中の芋の加熱具合を調べるために調理者の手が網袋と共に芋に触れたとき、高熱を感じない。このため、芋の焼き加減を確かめる作業が容易であるという利点もある。
【0014】
(4) 上記銅薄線の肉厚は、0.03mm~0.5mmであるのが好ましい。
【0015】
この構成では、網袋が極めて柔らかくなり、芋の表面全体が包み込まれる。その結果、外部から加えられる熱がより均一に芋に伝わる。
【0016】
(5) 上記支持体は銅合金からなり、把手が一体的に形成されていてもよい。
【0017】
この構成では、支持体も銅合金からなるので、外部から加えられる熱がなお一層均一に芋に伝わる。しかも、調理する際に把手が当該芋焼き器のハンガーとして機能すると共に調理者が把手を把持しつつ芋の出し入れを容易に行うことができる。
【0018】
(6) 上記支持体は、線径が1.2mm~2.0mmの所定長さの銅線が屈曲ないし湾曲されることにより形成されており、上記把手は、上記枠部に連続して形成された環状指掛部及び鉤状部を有するのが好ましい。
【0019】
この構成では、支持体が十分な剛性を備え、芋を安定的に保持することができる。しかも、調理者が環状指掛部に指を掛けることにより、芋を当該芋焼き器に収容したまま操作することができる。また、芋の加熱調理は、典型的には加熱釜に芋焼き器を収容して行われるが、その場合、上記鉤状部によって当該芋焼き器が加熱釜に容易に係止される。したがって、外部から加えられる熱が一層均一に芋に伝えられる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、芋、特にサツマイモがおいしく調理される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る芋焼き器10の外観斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る網袋12の要部拡大図である。
【
図7】
図7は、サツマイモの加熱調理の様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明に係る芋焼き器の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る芋焼き器10の外観斜視図、
図2は、
図1におけるII-矢視図であり、芋焼き器10を側面から見た図である。
【0024】
この芋焼き器10は、典型的にはサツマイモを焼く際に使用され、調理されるサツマイモを収容し保持する。もっとも、調理される芋の種類が限定されることはなく、他の種類の芋も収容され得る。
【0025】
芋焼き器10は、支持体11と、網袋12とを有する。なお、
図3は、芋焼き器10の側面図であり、網袋12を明瞭に示している。
【0026】
支持体11は、円形に形成された枠部13及び把手14を有する。支持体11は、銅合金(本実施形態では銅線)からなり、枠部13及び把手14を有する。本実施形態では、この銅線が湾曲ないし屈曲されることによって上記枠部13及び把手14が一体的に形成されている。本明細書において、銅合金とは、銅の純度が99.9重量%以上のものであり、純銅を含む。本実施形態では、上記銅線は、いわゆる電気銅が採用されており、線径が1.6mmである。もっとも、この銅線の線径は、1.2mm~2.0mmの範囲で適宜設定され得る。
【0027】
図1~
図3が示すように、円形の枠部13は、所定長さの銅線が裁断され、これが湾曲されることにより形成されている。本実施形態では、枠部13の内径は、80mmに設定されている。同図では、銅線が単純に円形に湾曲されることにより枠部13が形成されているが、この銅線が二重にあるいはそれ以上に巻回されることによって枠部13が形成されてもよい。枠部13の内径は特に限定されるものではなく、芋の加熱調理に対して合目的的に設計され得る。枠部13は円形に限定されるものではなく、要するに環状を呈するように形成されていればよい。
【0028】
上記把手14は、枠部13に連続している。すなわち、枠部13に連続する銅線が捻られ、枠部13に連続して上方に延びるように把手14が形成されている。把手14は、脚部17、指掛部15(特許請求の範囲に記載された「環状指掛部」に相当)及び鉤状部16を有し、これらは一体的に形成されている。脚部17は、枠部13に連続する銅線が捻られ、上方に立ち上がるように形成されている。指掛部15は、脚部17に連続する銅線が円形に湾曲されることにより形成されている。なお、指掛部15の形状は円形に限定されるものではなく、要するに指が引っ掛かる環状に形成されていればよい。さらに、脚部17に連続する銅線が屈曲及び湾曲されることにより、鉤状部16が形成されている。鉤状部16は、脚部17の上部から斜め上方に延びる基部18と、この基部18に連続する腕部19とを有する。このように鉤状部16が折り曲げられた形状となっていることによる作用効果については後述される。
【0029】
本実施形態では、銅線が屈曲ないし湾曲されることにより支持体11が形成されているが、上記枠部13、脚部17、指掛部15及び鉤状部16がたとえば鍛造あるいは鋳造により、または切削加工(いわゆる削り出し)により構成されてもよい。
【0030】
図4は、
図2におけるIV-IV断面図である。
図5は、網袋12の要部拡大図、
図6は、
図5におけるVI-VI断面図である。
【0031】
図4が示すように、網袋12は、銅合金からなるメッシュ生地20により形成されている。
図5が示すように、本実施形態では、メッシュ生地20は、銅薄線21がメリヤス編みされることにより構成されている。もっとも、銅薄線21がメリヤス編み以外の編み方がなされ、網袋12が形成されていてもよい。銅薄線21がメリヤス編みされることによる作用効果については後述される。
【0032】
図6が示すように、銅薄線21の断面形状は矩形である。銅薄線21の肉厚寸法22は0.05mm、幅寸法23は0.5mmに設定されている。ただし、肉厚寸法22は、0.03mm~0.5mmの範囲で適宜設定され、幅寸法23は、0.3mm~1.0mmの範囲で適宜設定され得る。
【0033】
図3が示すように、上記枠部13は、メッシュ生地20に縫い込まれるように挿通されている。そして、この状態でメッシュ生地20は、枠部13によって折り返されるように垂下している。したがって、
図3及び
図4が示すように、一対のメッシュ生地20が枠部13の径方向に沿って対向した状態となり、その結果、網袋12は、二重構造となっている。上記枠部13から垂下するメッシュ生地20は、下方において圧着コネクタ24により束ねられ、固定されている。
【0034】
このようにメッシュ生地20が枠部13に支持されることによって、網袋12は、上記枠部13に沿う開口25を有する袋状に形成され、サツマイモを収容する所定の深さの収容室26(
図1及び
図2参照)が形成される。もっとも、網袋12は、上記メッシュ生地20の多重構造から構成されていてもよいし、単一のメッシュ生地20から構成されていてもよい。
【0035】
図7は、芋焼き器10を用いたサツマイモの加熱調理の様子を示す斜視図である。
【0036】
本実施形態では、芋焼き器10が加熱釜(陶器)27の内部に吊り下げられることにより、サツマイモが加熱調理されるようになっている。加熱釜27は、図示されていない発熱器を備えており、内部温度が自動制御されるようになっている。
【0037】
同図では示されていないが、調理されるサツマイモは、枠部13の開口25から網袋12に収容される。網袋12は銅合金からなるので、可撓性に富む。したがって、網袋12は、収容されるサツマイモの表面を覆いつつ全体を優しく包む。この状態で、同図が示すように、芋焼き器10が加熱釜27に引っ掛けられ、芋焼き器10に収容されたサツマイモが加熱釜27の内部環境(たとえば160℃)に晒される。
【0038】
網袋12は、銅合金からなるので熱伝導性に優れる。前述のように、網袋12はサツマイモの表面全体を包んでいるから、加熱釜27の内部において、熱がサツマイモに均等に効率良く伝えられる。しかも、加熱されたサツマイモから発せられる水分が網袋12を通じて、ゆっくりと排出される。加えて、網袋12は、サツマイモを優しく包み込んでいるから、加熱調理中のサツマイモの形崩れが防止される。その結果、サツマイモがおいしく調理される。
【0039】
本実施形態では、網袋12は、メリヤス編みされた銅薄線21からなるので、網袋12は優れた伸縮性を持つ。したがって、サツマイモはより優しく網袋12に包まれ、調理中の形崩れが防止される。しかも、上記銅薄線21の肉厚寸法22が0.03mm~0.5mmに設定されることにより、網袋12が極めて柔らかくなり、調理中のサツマイモへの傷付きが防止されると共に、熱がサツマイモにより均一に伝わる。
【0040】
サツマイモが加熱された場合、糖分が液状化して表面にしみ出す。一般にこれは「蜜」と称されるが、この蜜は、加熱釜27の内部で熱により焦げる場合があり、焼き上がったサツマイモの外観が悪化する。ところが、本実施形態では、網袋12を構成する銅薄線21の断面形状が矩形であるから、焼き上がったサツマイモを調理者が網袋12から取り出す際に、上記焦げた蜜が銅薄線21のエッジにより削り落とされる。これにより、焼き上がったサツマイモの表面が美しくなり、よりおいしそうな焼き芋が完成する。
【0041】
本実施形態では、網袋12が二重構造であるから、サツマイモの内部にわたって全体が均等に加熱調理されるという利点がある。これは、網袋12を構成する外側のメッシュ生地20によって遠赤外線効果が発揮され、熱がサツマイモにより均一伝わると考えられる。
【0042】
ところで、調理中にサツマイモの加熱具合を調べる必要があり、その場合、調理者は、網袋の外側からサツマイモに手を触れ、焼き加減を確かめる。この際に調理者は、手に高熱を感じない。その理由は定量的に解析されていないが、銅合金からなる網袋12が二重構造であることに起因すると考えられる。そのため、芋の焼き加減を確かめる作業が容易になる。
【0043】
本実施形態では、網袋12を支持する支持体11も銅合金からなる。したがって、熱がなお一層均一にサツマイモに伝わる。しかも、
図7が示すように、把手14の鉤状部16が折り曲げられた形状であり、芋焼き器10のハンガーとして機能する。具体的には、鉤状部16の腕部19が加熱釜27の所定部に引っ掛けられる。調理者は、把手14を把持して加熱釜27からサツマイモの出し入れを容易に行うことができる。また、サツマイモが芋焼き器10と共に加熱釜27の内部に吊り下げられるので、加熱釜27の熱が均等にサツマイモに伝わる。
【0044】
加えて、支持体11は、線径が1.2mm~2.0mmの所定長さの銅線からなるので、十分な剛性を備え、サツマイモを安定的に保持することができる。さらに、調理者が指掛部15に指を掛けることにより、サツマイモを芋焼き器10に収容したまま容易に操作することができる。
【符号の説明】
【0045】
10・・・芋焼き器
11・・・支持体
12・・・網袋
13・・・枠部
14・・・把手
15・・・指掛部
16・・・鉤状部
17・・・脚部
20・・・メッシュ生地
21・・・銅薄線
22・・・肉厚寸法
23・・・幅寸法
25・・・開口