(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110871
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】電流刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006570
(22)【出願日】2021-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・令和2年12月22日、http://www.medical.itolator.co.jp/news-article/ 等のウェブサイト掲載 ・令和2年12月22日、https://prtimes.jp/ 等のウェブサイト掲載
(71)【出願人】
【識別番号】591032518
【氏名又は名称】伊藤超短波株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 康至
(72)【発明者】
【氏名】上田 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】幾原 武志
(72)【発明者】
【氏名】徳村 篤志
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053BB13
4C053JJ15
4C053JJ18
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】電極に応じて定電流制御と定電圧制御を自動で選択する電流刺激装置を提供する。
【解決手段】電気信号を身体に供給するための電流刺激装置であって、前記電気信号を身体に供給する電極と、前記電気信号を定電圧制御または定電流制御によって出力する波形成形部を備えるとともに前記電流刺激装置に接続された前記電極を示す情報に応じて、前記電気信号の特性を変更するように前記波形形成部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする電流刺激装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を身体に供給するための電流刺激装置であって、
前記電気信号を身体に供給する電極と、
前記電気信号を定電圧制御または定電流制御によって出力する波形生成部を備えるとともに前記電流刺激装置に接続された前記電極を示す情報に応じて、前記電気信号の特性を変更するように前記波形生成部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする電流刺激装置。
【請求項2】
前記電極を示す情報はピン電極を示す情報である請求項1に記載の電流刺激装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ピン電極を示す情報に応じて前記定電圧制御によって前記電気信号を出力するように前記波形生成部を制御する請求項2に記載の電流刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮的な電流刺激による物理療法に使用される電流刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流刺激治療器について、経皮的電流刺激や干渉電流、高電圧刺激、微弱電流(マイクロカレント)といった公知の電流刺激法に沿った電流刺激信号を供給する、各種動作モードを搭載あるいは専用機タイプの低周波治療器に関する技術が開示されている。電流刺激としては、例えば、1mA以下の微小電流を生体に流すことで損傷電流が流れたことと同様の効果から細胞の修復促進を図り、例えば、筋肉や関節のダメージ又は創傷の治癒に用いられる微弱電流(マイクロカレント)刺激法が用いられる。例えば、マイクロカレントを用いた電流刺激装置について特許文献1のように筋収縮を起こさせない微弱な電流刺激を機能回復させたい筋の経皮上から与えることにより、即時的に筋出力の向上又は低下を実現することで運動機能障害を回復することができる。上記電流刺激信号の生体への供給は特許文献1のようにシート型の電極にて行われるケースが多い。また、マイクロカレントを用いた電流刺激は損傷部位の回復に使用される。損傷部位は一般にマイナス電位に傾くことから体内のプラスイオンをひきつけ、体内でプラスマイナスの偏りが生じ、電流の流れが悪くなる、すなわちインピーダンスが増加する。損傷の治癒が進むとプラスマイナスのバランスがとれることでインピーダンスは下がり、電流はスムーズに流れるようになる。従って、インピーダンスが治癒度合いの目安になることから、インピーダンスを測定しながら、損傷部位に電流刺激を与えることが重要で、そのためにピン電極を備えた棒形状のスティック型の導子も用いられることがある。
【0003】
据え置き型の治療器の場合、商用電源いわゆる家庭用電源から所定の電圧を作り出して使用される。その際、一般的には公知のトランスや電源ICを用いて昇圧または降圧して所定の電圧を得る。例えば、特許文献2では商用電源からトランスを用いて各種電圧を作り出す電界作動型の睡眠補助器が提案されている。
【0004】
また上記各種電圧を作る場合、特許文献3のようにダイオード接続された少なくとも1つのMOSFETを直列に接続して形成された回路を用いて各種電圧を生成している。
【0005】
電流刺激出力については、安全性の観点から、電流出力調整機能を設けることが多く、例えば特許文献4のように、選択された電圧レベルに従って自動的に電流レベルを調節している機能を有する筋肉刺激装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-202445号公報
【特許文献2】特開平09-028813号公報
【特許文献3】特開平10―289023号公報
【特許文献4】特表2009―517176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、シート型電極および棒形状のスティック型導子を両方使用可能な機器では治療内容に応じて、シート型電極とスティック型導子の両者を使い分けて使用する。シート型電極とスティック型導子に対する出力の制御に関して、シート型電極の場合は、定電流制御が使用できる。一方、スティック型導子の場合は、皮膚に接触する部分がピンタイプのピン電極のため皮膚との接触面積が小さく、特にピン電極と皮膚が接触または離間する瞬間には、当該接触面積は極めて小さくなり抵抗値が上がる方向に変化するので、定電流制御では、接触部位の電流密度が高くなり、使用者が痛みを感じることがあるため、定電流よりは定電圧制御の方がよい。すなわち、接続する導子を機器で自動判定して、定電流制御と定電圧制御を切り換える制御が望ましい。すなわち、導子を使い分ける際に、安全で使い勝手のよい電流刺激装置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明において以下のような手段を講じた。即ち本発明においては、(1)電気信号を身体に供給するための電流刺激装置であって、前記電気信号を身体に供給する電極と、前記電気信号を定電圧制御または定電流制御によって出力する波形生成部を備えるとともに前記電流刺激装置に接続された前記電極を示す情報に応じて、前記電気信号の特性を変更するように前記波形生成部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする電流刺激装置である。
【0009】
さらに本発明では、(2)前記電極を示す情報はピン電極を示す情報であることを特徴とする電流刺激装置である。
【0010】
さらに本発明では、(3)前記制御部は、前記ピン電極を示す情報に応じて前記定電圧制御によって前記電気信号を出力するように前記波形生成部を制御することを特徴とする電流刺激装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電流刺激装置について、電流刺激を与える導子を、装置側で自動判別し、出力制御を適切に切り替えることで、安全性を高め、かつ筋肉や関節のダメージ又は創傷に対する治療効果を高めることができる。特に1mA以下の微小電流を使用する機器について有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明における電流刺激装置の説明図である。
【
図2】本発明における電流刺激装置本体の六面図である。
【
図3】本発明における電流刺激装置の使用方法を示す説明図である。
【
図4】本発明における電流刺激装置のブロック図である。
【
図5】本発明における定電圧調整部1111の回路図である。
【
図6】本発明における定電圧微調整部1112の回路図である。
【
図7】本発明における定電流調整部1113の回路図である。
【
図8】本発明におけるインピーダンス測定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は本発明における電流刺激装置1を示している。本装置は電流刺激を供給する本体11、本体11に搭載され、押すことで電流刺激出力をONにする出力スイッチA121および出力スイッチB122、電流刺激を人体に供給するシート型電極A13、およびピン電極B14、ピン電極B14とペアで使用される使用者が握って保持する不関電極C15からなる。ピン電極B14はスティック型導子16の先端に取り付けられる。各電極はケーブルおよびソケットで本体11と接続される。
図1ではY型に分岐するケーブルの分岐した遠方端に、電極がコネクタを介して接続され、ケーブルの他端はコネクタを介して本体11と接続されている。また、本説明ではシート型電極A13は1対構成であるが、一方を不関電極C15とした構成であってもよい。また本体11はシート型電極A13を接続するためのコネクタが2組、すなわち、シート型電極A13を2対使用することも可能とする2チャンネル構成にしているが、本発明はこの構成に限定されず、1対でもよいし、3対以上の構成であってもよい。また、本実施形態ではピン電極B14とペアで使用される電極として上記の不関電極C15を使用しているが、これに限定されず、シート型の電極、例えばシート型電極A13を使用してもよい。この場合は不関電極C15を握る代わりにシート型電極A13を皮膚に張り付けて使用される。
【0014】
図2は本発明における電流刺激装置の本体11を示している。
図2(a)は上面図、
図2(b)は正面図、
図2(c)は背面図、
図2(d)は右側面図、
図2(e)は底面図、
図2(f)は左側面図を示している。本体11の底面にはシート型電極A13を接続するためのシート型電極用コネクタA171、シート型電極用コネクタB172、スティック型導子16を接続するためのスティック型導子用コネクタ18が配置されている。なお、本構成ではシート型電極A13が2対(2チャンネル)構成のため、シート型電極用コネクタA171、シート型電極用コネクタB172と2基備えているが、1対構成でも3対以上の構成であってもよい。正面図の導子おき19は接続中の導子を一時的に置いておく収納部である。導子おき19はスティック型導子16を置いておくために凹型構造としているが、電極の落下や、転がり落ちることを防止する構造であればよい。表示部20では電流刺激出力のパラメータや制御モードを含む治療に必要な設定が表示される。上記設定の入力は図示しない入力スイッチやつまみによる入力であってもよいし、表示部20をタッチパネルとして表示部20による入力であってもよい。
【0015】
図3は本発明における電流刺激装置1の使用時装着例である。シート型電極A13を使用する場合、例えば
図3(A)のように治療を要する部位にシート型電極A13を張り付けて使用される。シート型電極A13は、電極の機能を有する薄型のシート状である。シート型電極A13の構造としてはシート状の基材と、当該基材と生体との接触面には導電性ゲルを備えていてもよい。基材としては例えば、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、ステンレスといった導電性の金属箔の部材からなっていてもよく、また部材は金属箔にかぎらず、表面をめっき加工した薄型の部材や、導電性粉末、導電性繊維を混入した導電性材料による薄型の部材、銀繊維や導電性繊維で作られたメッシュ状のあるいは布状の薄型の部材であってもよい。あるいは基材としては絶縁性の材料、例えば布を使用し、導電性ゲルを基材表面に配置して生体との接触や生態に対する導電性を確保するような構成でもよい。一方、ピン電極B14を使用する場合
図3(B)のように、スティック型導子16の先端にピン電極B14を取付け、ピン電極B14を、治療を要する部位に当接させてスライドさせながら使用される。ピン電極B14は上記金属箔部材と同様の金属部材あるいは表面をめっき加工した部材、導電性材料による部材からなっていてもよく、ピン型の構造が形成できるものであればよい。ピン電極使用時は、治療対象者は不関電極C15を握ることで、電気回路が構成されて電流が流れる。不関電極C15もピン電極B14同様に、金属部材、めっき加工部材、導電性材料部材からなり、握って使用されることから、手で掴む程度の大きさの固体を形成できるものであればよい。
【0016】
不関電極C15の形状として、
図3(B)のようにリング型の形状であってもよい。リング形状の場合、治療対象者が指を通し、軽く握って保持する。例えば棒形状の場合、掴み損ねたり、滑らしたりすることで落としてしまうこともあり得るが、リング形状にすることで落とすこともなく、治療対象者の皮膚との接触を確実に維持できるため、スティック型導子16の先端のピン電極B14から人体を通り、不関電極C16と電流刺激装置間で構成される電気回路を安定して構成可能であり、より確実に不関電極として機能する。
【0017】
本実施例では、スティック型導子16の先端に接触面積の小さいピン電極B14を使用する例であるが、治療方法に応じて、ピン型の電極に代えて、球体形状あるいはローラー形状の電極、また導電性を有する綿棒を使用してもよい。これら電極も金属部材、めっき加工部材、導電性材料部材によって構成されても、水や電解液をしみこませることによって導電性を与えてもよい。
【0018】
図4は本発明の電流刺激装置のブロック図である。本体11は刺激電流を発生する波形生成部111、各部の制御、信号計測および波形生成部111の出力波形やタイミングを生成する制御部112、出力スイッチ12からのON信号、ユーザによる電流刺激信号出力値や波形の設定、また後述のインピーダンス設定等の各種設定の入力を受け付けるユーザIF部113、各部に電力供給する電源部114で構成される。さらに波形生成部111は定電圧調整部1111、定電圧微調整部1112、定電流調整部1113を有する。出力スイッチ12がONになると、ユーザIF部113からの設定に応じて制御部112からの制御信号が波形生成部111に入力されることで電流刺激出力が電極に供給される。ここで、波形生成部111の構成は
図4にあるように定電圧調整部1111の出力が、定電圧微調整部1112に入力され、定電圧微調整部1112からシート型電極A13に出力された後に、最終的に定電流調整部1113に入力される。ここでは電極をシート型電極A13としているが、ピン電極B14と不関電極C15であってもよい。定電圧微調整部1112は定電圧調整部1111だけでは正確な電圧調整が困難なところを微調整するための回路であって、具体的には0V付近までの電圧を出力可能とするために設けられている。定電圧調整部1111、定電圧微調整部1112、最後に定電流調整部1113が出力段にあることで定電圧制御と定電流制御と両方が可能な構成となっている。
【0019】
図5に定電圧調整部1111の回路構成を示す。いわゆるフライバック方式のDCDC変換であって、電源部114からの電圧Vccがトランス21の1次巻き線側に入力される。MOSFET22のスイッチング動作でONのとき、トランス21の1次巻き線側に電流が流れ、エネルギーが蓄積される。MOSFET22がOFFになると、トランス21に逆起電力が生じ、2次巻き線側に電力が出力される。すなわち、MOSFET22のON/OFFが出力電圧を制御することになる。この電力は整流ダイオード231と平滑コンデンサ241によって半波整流されて直流化される。ここで出力電圧Voutを抵抗A261と抵抗B262で抵抗分圧した電圧を基準電圧IC232に入力する。このとき、基準電圧IC基準電圧および抵抗分圧比によって出力電圧Voutが決定される。そして基準電圧ICの出力を、フォトカプラ28を介してスイッチングレギュレータA271にフィードバックすることで、MOSFET22のスイッチング動作を制御、すなわちトランス21のON/OFFによるフライバックで電圧制御動作に繋がり、これは負帰還によるフィードバック制御となり定電圧動作を得る。またトランス21とフォトカプラ28によって入力側と出力側に絶縁構造を持たせている。ここで制御部112からの制御信号(PWM(Pulse Width ModulAtion)信号1)を抵抗G267、パスコンデンサであるコンデンサ243B、抵抗D264を介して基準電圧IC232に入力することで、基準電圧IC232の出力を変更できることから、出力電圧Voutの大きさをPWM信号で制御することができる。
【0020】
また、本発明では定電圧調整部1111の出力にDCDCコンバータが接続されており、フライバック方式のDCDC出力電圧を利用し、そこにスイッチングレギュレータを接続して3.3Vが生成される。抵抗E265と抵抗F266の抵抗分圧によって出力電圧を検出し、スイッチングレギュレータB272に負帰還によるフィードバック制御が行われて、安定した3.3Vを得る。出力はインダクタンス25およびコンデンサ242Aで整流される。この3.3Vは絶縁された波形生成部(定電圧調整部1111、定電圧微調整部1112、定電流調整部1113)の各回路を構成する素子、例えばOpアンプやアイソレータ、アンプ等の各種素子の電源として使用される。すなわち、治療用の信号出力から3.3Vの電源出力を得るため、別途このための電源電圧用IC又はトランスが不要となる。3.3Vを供給する各種素子の電源はそれほど高くないため、スイッチングレギュレータのスイッチング周波数はそれほど低くする必要はなく、一般的にスイッチング周波数が大きい場合、スイッチングレギュレータの外付けのインダクタやコンデンサの大きさは小さいものでよく、スイッチング周波数が小さい場合は、それらの大きさは大きいものが必要であるので、スイッチングレギュレータの外付けのインダクタやコンデンサの値は比較的小さいものを選択することができる。一般的に素子の大きさはインダクタンスおよび容量に比例する。別途電源IC又はトランスが不要なことと併せて、装置の小型化と低ノイズの電気信号出力を可能とし、可搬性のある電流刺激装置で効率のよい治療を可能とする。
【0021】
図6は定電圧微調整部1112の回路構成を示す。微調整のために、トランジスタA311、トランジスタB312、OpアンプA32、抵抗H331、抵抗I332、抵抗J333、抵抗K334、から成る回路で定電圧動作を実現する。制御部112からの制御信号(PWM(Pulse Width ModulAtion)信号2)を抵抗L335、パスコンデンサであるコンデンサC34を介してOpアンプA32に入力し、OpアンプA32の出力をトランジスタB312のベースに入力する。OpアンプA32の非反転入力に、制御信号(PWM信号2)、反転入力に定電圧調整部1111同様、抵抗H331と抵抗I332で抵抗分圧した中間点に生じる電圧をフィードバックして入力する。すなわちOpアンプA32は比較回路となる。トランジスタB312のベース入力がベースエミッタ電圧(VBE)以上になると、トランジスタB312のコレクターエミッタ間に電流が流れる。次にトランジスタA311のベース電流が増え、コレクターエミッタが導通することでVoutに出力が現れる。すなわち、トランジスタA311は制御回路である。Voutを抵抗H331および抵抗I332によって分圧して比較回路にフィードバックすることで微小レベルの定電圧動作を実現する。すなわち抵抗H331、抵抗I332は検出回路である。例えば、Voutが負荷変動により、上昇した場合、抵抗H331と抵抗I332の間の分圧は上昇する。その場合負帰還であるからOpアンプA32の出力は減少し、トランジスタB312のベース電流が減少して、トランジスタB312のコレクターエミッタ間の電流は減る。そして、トランジスタA311のベース電流が減少し、トランジスタA311のコレクターエミッタ間電流が減ることでVoutが下がる方向に調整される。Voutが負荷変動により、下降した場合、この動作の反対の作用が働いてVoutが上がる方向に調整される。すなわち負帰還フィードバックによる制御で定電圧動作を実現している。ここで制御信号(PWM信号)を大きくした場合、OpアンプA32の出力が大きくなることから、上記動作説明に従い、トランジスタB312の出力増加からトランジスタA311の出力増加となり、Voutを上げることができる。一方、制御信号(PWM信号)を小さくした場合、この動作の反対の作用が働いて、Voutを下げることができる。このような動作によってVout出力を0V付近まで微調整することが可能になる。
【0022】
図7は定電流調整部1113の回路構成を示す。トランジスタC41、OpアンプB42、抵抗M431で構成される。シート型電極A13からの入力電流Iを定電流調整部1113によって定電流制御する。制御部112からの制御信号(PWM信号3)を抵抗N432、パスコンデンサであるコンデンサD44を介してOpアンプB42の非反転入力に、トランジスタC41のエミッタからの出力がOpアンプB42の反転入力に入力された後、OpアンプB42で差分が増幅され、トランジスタC41のベースに入力される。トランジスタC41のベース入力がベースエミッタ電圧(VBE)以上になると、トランジスタC41がONになり、トランジスタC41のコレクタからエミッタ方向に電流Iが流れ始める。電流Iが抵抗M431に流れ、抵抗M431の電圧が大きくなると、OpアンプB42の反転入力が大きくなり、PWM信号3との差分が小さくなることから、OpアンプB42の出力が小さくなる。すなわちトランジスタC41のベース電流が小さくなり、トランジスタC41のコレクタからエミッタ方向に流れる電流Iが減少する。電流IトランジスタC41のエミッタ電流はOpアンプB42の反転入力にフィードバックされ、制御部112からの制御信号(PWM信号2)との差分出力がトランジスタC41の制御信号となって、電流Iの大きさの制御が行われる。つまり、トランジスタC41は制御回路、抵抗M431は検出回路、OpアンプB42は比較回路の役割を果たし、負帰還フィードバックによる定電流制御を実現している。
【0023】
本発明の電流刺激装置は、動作モードとして定電流制御による電気信号を出力することで電流刺激を行うための微小電流刺激モード(MCRモード)と、定電圧制御による電気信号を出力することで電流刺激やインピーダンス測定を行うためのインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)との2つのモードを有する。すなわち、本発明の電流刺激装置は、定電圧制御都による電気信号の出力または定電圧制御による電気信号の出力が可能である。デフォルト設定で、どちらかのモードにしておいてもよく、例えばデフォルトをインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)としてもよいし、微小電流刺激モード(MCRモード)としてもよい。ここでは、デフォルトをインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)とする。微小電流刺激モード(MCRモード)を使用する時は、ユーザIF部113、例えば、電流刺激装置上に設けた表示部20を構成するタッチパネル上のスイッチボタンイメージ、あるいは物理的なスイッチで、ユーザ操作により当該モード選択される。電極としては一般的なシート型電極A13が使用される。このとき、ユーザIF部113での選択を受けて、電流刺激の制御としては定電流制御が用いられる。すなわち、
図4の制御部112は主に定電流調整部1113の制御を行うように波形生成部111を制御する。シート型電極A13が、シート型電極用コネクタA171に接続されている場合、出力スイッチA121をオンにすることで、定電流制御による電流刺激を対象部位に与える。シート型電極A13がシート型電極用コネクタB172に接続されている場合は、出力スイッチB122をオンにすることで定電流制御による電流刺激を対象部位に与える。なお、後述の説明において出力スイッチA121は上記の接続構成を前提としており、シート型電極用コネクタB172に接続した場合は、出力スイッチB122をオンにすることになる。
【0024】
シート型電極A13が接続された場合、スティック型導子16ではないとの判断で微小電力刺激モード(MCRモード)に自動的に切り替えてもよい。例えば、スティック型導子が接続されてなくて、インピーダンス測定が不可であることの判断結果や、本体11のシート型電極用コネクタ17やスティック型導子用コネクタ18における挿入を検知する物理的なスイッチによる電極や導子の検出結果、電気的な接続による検出結果によって、接続された電極や導子の種類の判断を行ってもよい。
【0025】
スティック型導子16のピン電極B14を使用してインピーダンス測定しながら電流刺激を与えるインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)のときは、本体11のスティック型導子用コネクタ18にスティック型導子16を接続し、さらにピン電極B14をスティック型導子16の遠位端に接続する。ここで、インピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)でなく微小電流刺激モード(MCRモード)になっていたときは、ユーザ操作でユーザIF部113を通じてインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)へモード選択する。例えば、電流刺激装置上に設けた表示部20を構成するタッチパネル上のスイッチボタンイメージ、あるいは物理的なスイッチでのインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)へのモード選択が行われると、制御部112によって人体のインピーダンス測定が行われる。インピーダンス測定結果は、本体11に表示機能を持たせて表示させる。例えば、表示部20を構成するディスプレイに、グラフ、メーター、ゲージ等で視覚的に分かりやすく表示させてもよい。さらに、本体11に発音機能を持たせて、ビープ音を断続的に鳴らしてもよい。例えばインピーダンスが低いときはピピピと早いテンポで鳴り、インピーダンスが高いときは、ピ-ピーピーと遅いテンポで鳴ることで聴覚的に知らせるようにしてもよい。電流刺激を与える電気信号の出力は、制御部112において定電圧動作を行うよう定電圧調整部1111および定電圧微調整部1112を制御することで定電圧制御にて制御され、出力スイッチ122Bをオンにすること出力される。すなわち制御部112は定電圧制御による電流刺激を出力するように波形生成部111を制御することで電流刺激が対象部位に与えられる。この場合、出力スイッチB122は、シート型電極用コネクタB172およびスティック型導子用コネクタ18にて共用で使用される。
【0026】
ここで定電圧制御への切り替えは、使用者によってインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)が選択されたことに基づいて行われたがこれに限定されず、スティック型導子16やピン電極B14やこれらが使用されたことを示す情報、すなわち使用される電極を示す情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。
【0027】
また、スティック型導子16を微小電流刺激モード(MCRモード)で使用することも可能である。その場合は、ユーザ操作でユーザIF部113を通じて微小電流刺激モード(MCRモード)にモード選択する。例えば電流刺激装置上に設けた表示部20を構成するタッチパネル上のスイッチボタンイメージ、あるいは物理的なスイッチでのインピーダンス測定兼電流刺激モード(MCRモード)へのモード選択が行われると、制御部112において定電流動作を行うよう定電流調整部1113を制御することで定電流制御にて制御され、出力スイッチ122Bをオンにすることで、電流刺激を対象部位に与える。
【0028】
上記動作に代えて、人体のインピーダンス測定結果で、事前に設定した所定の値との比較で、モード選択を自動で行う実装としてもよい。例えば、スティック型導子16にピン電極B14を使用するときは、既述したように皮膚表面を滑らせて使用するので測定されたインピーダンスは大きく変動する傾向があり、したがって測定されたインピーダンスの変動が所定値以上の場合はピン電極B14であると判断できる。すなわち、使用する電極を示す情報、例えばピン電極を示す情報として測定したインピーダンスでありこれを基に使用する電極を判断している。このほかに、ピン電極B14は皮膚を滑らせて使用することを前提としているが、ピン電極B14は皮膚から一時的あるいは瞬間的に離れる場合が多く、測定されたインピーダンスは非常に大きくなる。このようにインピーダンスが事前に設定された値を超えることでピン電極B14が使用されていると判断することもできる。この場合は測定されたインピーダンスも測定されたインピーダンスが事前に設定された値を超えた情報もピン電極B14が使用されることを示す情報である。この情報を判断基準として定電圧動作であるインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)が自動選択される制御としてもよい。スティック型導子16やピン電極B14に代えて、例えば、シート型電極A13を使用する場合は、電極は人体に添付されるため、インピーダンス変動もそれほど大きくないことから、事前に設定した値以下のインピーダンス値であるあるいは当該値を測定されたインピーダンスが超えないという判断基準で、モード選択を自動で微小電流刺激モード(MCRモード)に切り替えてもよい。この場合は測定されたインピーダンスも測定されたインピーダンスが事前に設定された値を超えないという情報もシート型電極が使用されることを示す情報、つまり使用される電極を示す情報に該当する。
【0029】
さらに、モード選択後に上記の導子・電極の種類判定を行って、モード選択と導子・電極の組み合わせが不適切な場合には、適切なモードに自動的に切換えしてもよい。例えば、微小電流刺激モード(MCRモード)を選択後に、スティック型導子16にピン電極B14が使用された場合、インピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)に自動的に切り替わる。逆にインピーダンス測定兼電流刺激モード(IMモード)を選択後に、シート型電極A13が使用された場合、微小電流刺激モード(MCRモード)に自動的に切り替わる。ピン電極B14が使用されているか否かは、このほかにピン電極B14が使用される専用のコネクタ部を本体11に設け、当該コネクタにケーブルが接続された場合に電流刺激は定電圧動作で出力されるような構成でもよい。すなわち、ピン電極B14が使用されることを示す情報に基づいて、制御部112は定電圧制御によって電流刺激を行うように切り替えるような構成でもよい。使用される電極を示す情報としては例えば動作モード、測定されたインピーダンス、使用されるコネクタなどがあげられるがこれに限らない。本発明では定電圧による出力への切り替えに限らず、定電流への切り替えを行ってもよく、使用され電極を示す情報に基づいて定電流制御に切り替えるような制御であってもよい。例えばシート型電極A13が使用されたことを示す情報に従って定電流制御に切り替えることもできる。
【0030】
さらに、手動でのモード選択と、接続されている導子・電極が不適切な場合、モード選択に合わせた導子を接続するよう使用者に警告メッセージを表示するような実装であってもよい。この場合、適切な導子・電極が接続されたと判定されるまで、出力されないような実装にすることが望ましい。
【0031】
電流刺激出力の制御について、微小電流刺激モード(MCRモード)のときは定電流動作であり、定電流調整部1113が機能して定電流制御で出力可能な最大電流である最大電流リミット(仕様上1mA)がかかる。治療の際の火傷のリスクを低減するために、インピーダンス測定兼治療モード(IMモード)時は定電圧動作であるが、治療の際の火傷のリスクを低減するために出力電流に最大リミットが設けられている。ここで、定電圧動作時の最大リミットは定電流制動作時の最大電流リミット(仕様上1mA)より小さくすること、すなわち500μAや800μAなどに設定することができる。定電圧動作は上記のごとくピン電極B14を使用するときであるので、ピン電極B14と皮膚との接触面積が小さく電流密度が大きくなりやすく、したがって痛みややけどが発生しやすい。そこでピン電極B14を使用することでピン電極B14と皮膚との接触面積が小さくなって電流密度が大きくなった場合であっても痛みや火傷が発生しないあるいは発生しにくい電流値に最大リミットを設定するような制御でもよい。なお、定電圧時の最大リミットは出力電圧に応じて変動してもよい。
【0032】
具体的には、さらに火傷のリスクを低減するために、制御部112において、設定電圧に応じて電流に最大リミットをかける設定としている。例えば、0.5V毎に電流制限上限は数10μA上昇させ、インピーダンス測定兼治療モード(IMモード)時の電圧MAX値まで段階的な出力上限制御としている。これには、低電圧出力時の刺激感の緩和の効果もある。また、min値0.5V設定時は一定量のオフセット電流が適用される設定として、最大リミットは例えば次ようなの制御となる。出力電圧が0.5Vのとき、最大リミット=オフセット電流+20=(オフセット電流+20)μA、出力電圧が1.0Vのとき、最大リミット=オフセット電流+20×2=(オフセット電流+40)μA、出力電圧が1.5Vのとき、最大リミット=オフセット電流+20×3=(オフセット電流+60)μA。ここで、電流リミットは最大で1mAを超えない制限制御としている。特に20V程度の出力は、大きな接触面積のローラー型の電極に対して使用される場合があり、この場合は電流密度が低下しすぎないように比較的大きな出力電流が必要となる。このように制御部112は定電圧動作において、出力される電流の最大値は、初期値に出力電圧に基づいて変動する変動値を加えたものとすることができる。初期値として上記ではオフセット電流を加えているがこれに限定されず、オフセット電流がなくてもよい。また変動値は出力電圧のステップである0.5Vごとに変化するように設定されているがこれに限定されず、ステップとしは0.5V以下で変動値が変動しても0.5V以上で変動してもよく、変動する値である変動割合も20μA以下でも以上でもよい。例えば出力電圧に対してリニアに変化してもよいし、非線形に変化してもよい。例えば出力電圧が低い場合は0.5Vごとに20μAずつ変動してもよいが、出力電圧が高くなると例えば0.5Vごとに10μAずつ変動するように変動割合を変化させてもよい。すなわち出力電圧によって変動割合が変化するような構成でもよい。さらには、最大リミットは、上記のように出力電圧に伴って大きくなるように制御されるが、その最大値は、一定値以上に大きくならないように制御されてもよい。例えば定電流制御時の最大電流リミットとしてもよい。すなわち、上記の実施形態では1000μAとしてもよいし、当該最大電流リミットと異なる値が設定されてもよい。例えば定電流制御時の最大電流リミットを超えない特定の値に制御されてもよい。特定の値としては定電流制御時の最大電流リミットより低い電流である500μAや800μA等のようにしてもよい。
【0033】
上記の実施形態において、ピン電極B14が使用されている情報に基づいて電気刺激を与える出力を定電圧制御で行うことを記載しているが、定電圧制御への切り替えは次のような場合に行ってもよい。例えば、シート型電極A13を使用する場合は、定電流制御によって出力がされる場合に、シート型電極A13のインピーダンスを測定することよって、例えばインピーダンスが事前に設定した値である閾値を超えた場合は定電圧制御に切り替えてもよい。シート型電極A13のような導電性シートを治療用電極として使用する場合は、シートが皮膚に完全に密着する必要があるが、この密着が不十分な場合は電極と皮膚との接触面積が小さくなり、定電流制御の場合は出力された電流がこの小さな接触面積に集中して電流集中が発生し、電流集中による痛みや火傷が発生しやすくなる。また、導電性シートが劣化した場合もシートの一部が高抵抗となりあるいは電流が一部のみに流れることになり、やはり電流集中が発生して電流集中による痛みや火傷が発生しやすくなる。このように電流が流れる面積が低下した場合であっても、定電圧制御であれば、痛みや火傷が発生しないように出力電流を維持することができる。よって定電流制御によって出力している場合であってもインピーダンスを測定し、インピーダンスが事前に設定した値を超えると定電圧制御に切り替えるような構成でもよい。この場合のインピーダンスの測定の代わりに、出力電圧をモニターして、出力の電圧が事前に設定した値を超えると定電圧制御に切り替えるような構成でもよい。さらにこのような定電圧制御に切り替わった場合は、定電圧に切り替わったことや、電流集中の発生可能性があること、電極の皮膚への接触が不十分であること、あるいは導電性シートの劣化などを示す情報を使用者に報知してもよいし、電極の確認を促すまたは電極の交換を促す情報を報知してもよい。報知として表示部20にこれらを表示したり、LEDを点灯させる、あるいはビープ音を鳴らすなどでもよい。
【0034】
本実施例のインピーダンス測定については、
図8の機構にて測定される。電極が人体に接触している状態を負荷55とみなし、電流Iについては供給回路に挿入したシャント抵抗54を流れる電流を電流測定IC52で測定する。電圧Vについては負荷55にかかる電圧を電圧測定IC53で測定する。インピーダンスは上記VおよびIから計算されるが、ここで電圧V、電流Iの測定を制御部112で切換回路51を制御して交互にすばやく測定することで、インピーダンスを得る。本構成にすることで、同時に測定するよりも回路構成を小さくすることが可能になり、より可搬性に優れる電流刺激装置を実現可能となる。ただし、切換回路51を使用せずに電圧V、電流Iを同時に測定してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 電流刺激装置
11 本体
13 シート型電極A
14 ピン電極B
15 不関電極
16 スティック型導子
18 スティック型導子用コネクタ
19 導子おき
20 表示部
21 トランス
22 MOSFET
25 インダクタンス
28 フォトカプラ
32 OpアンプA
34 コンデンサC
41 トランジスタC
42 OpアンプB
44 コンデンサD
51 切換回路
52 電流測定IC
53 電圧測定IC
54 シャント抵抗
55 負荷
111 波形生成部
112 制御部
113 ユーザIF部
114 電源部
121 出力スイッチA
122 出力スイッチB
171 シート型電極用コネクタA
172 シート型電極用コネクタB
231 整流ダイオード
232 基準電圧IC
241 平滑コンデンサ
242 コンデンサA
243 コンデンサB
261 抵抗A
262 抵抗B
263 抵抗C
264 抵抗D
265 抵抗E
266 抵抗F
267 抵抗G
271 スイッチングレギュレータA
272 スイッチングレギュレータB
311 トランジスタA
312 トランジスタB
331 抵抗H
332 抵抗I
333 抵抗J
334 抵抗K
335 抵抗L
431 抵抗M
432 抵抗N
1111 定電圧調整部
1112 定電圧微調整部
1113 定電流調整部