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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110934
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】回転装置、及び動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/14 20060101AFI20220722BHJP
   F16F 15/134 20060101ALI20220722BHJP
   F16H 45/02 20060101ALI20220722BHJP
   F16H 25/14 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
F16F15/14 Z
F16F15/134 A
F16H45/02 Y
F16H25/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006681
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】富山 直樹
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB31
3J062AC07
3J062CC13
(57)【要約】
【課題】遠心子とガイド面との接触音の発生を抑制する。
【解決手段】第1回転体2は、第1及び第2ガイド面211,212を含む収容部21を有する。第2回転体3は、第1回転体2とともに回転可能であり、且つ第1回転体2と相対回転可能に配置される。遠心子4は、収容部21内に配置されている。遠心子4は、径方向に移動する際に自転するように構成されている。第1及び第2転動部材5a、5bは、第1ガイド面211と遠心子4との間に配置される。第1及び第2転動部材5a、5bは、遠心子4の自転によって第1ガイド面211上を転動するように構成される。連結機構7は、第1転動部材5aと第2転動部材5bとを連結する。第2転動部材5bは、第1転動部材5aに対して径方向の外側に配置される。遠心子4の一部は、第1転動部材5aと第2転動部材5bとの間に配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向を向く第1ガイド面及び第2ガイド面を含む収容部を有し、回転可能に配置される第1回転体と、
前記第1回転体とともに回転可能であり、且つ前記第1回転体と相対回転可能に配置される第2回転体と、
前記第1回転体又は前記第2回転体の回転による遠心力を受けて径方向移動可能に前記収容部内に配置され、径方向に移動する際に自転するように構成された遠心子と、
前記第1ガイド面と前記遠心子との間に配置され、前記遠心子の自転によって前記第1ガイド面上を転動するように構成される第1転動部材と、
前記第1ガイド面と前記遠心子との間に配置され、前記遠心子の自転によって前記第1ガイド面上を転動するように構成される第2転動部材と、
前記第1転動部材と前記第2転動部材とを連結する連結機構と、
を備え、
前記第2転動部材は、前記第1転動部材に対して径方向の外側に配置され、
前記遠心子の一部は、前記第1転動部材と前記第2転動部材との間に配置される、
回転装置。
【請求項2】
前記遠心子は、前記第2ガイド面上を転動するように構成される、
請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記遠心子及び前記第1転動部材は、円筒状又は円柱状であり、
前記第1ガイド面と前記第2ガイド面との距離は、前記遠心子の直径と前記第1転動部材の直径との合計よりも小さい、
請求項2に記載の回転装置。
【請求項4】
前記第2ガイド面と前記遠心子との間に配置され、前記遠心子の自転によって前記第2ガイド面上を転動する第3転動部材をさらに備える、
請求項1に記載の回転装置。
【請求項5】
前記遠心子は、
周方向において第1端部及び第2端部を含む遠心子本体部と、
前記遠心子本体部の第1端部に回転可能に取り付けられる第1回転部と、
前記遠心子本体部の第2端部に回転可能に取り付けられる第2回転部と、
を有し、
前記第1転動部材は、前記第1ガイド面と前記第1回転部との間に配置され、前記第1回転部の自転によって第1ガイド面上を転動し、
前記第3転動部材は、前記第2ガイド面と前記第2回転部との間に配置され、前記第2回転部の自転によって第2ガイド面上を転動する、
請求項4に記載の回転装置。
【請求項6】
前記遠心子に作用する遠心力を受けて、前記遠心力を前記第1回転体と前記第2回転体との回転位相差が小さくなる方向の周方向力に変換するカム機構、をさらに備え、
前記カム機構は、
前記遠心子に形成されるカム面と、
前記カム面と当接し、前記遠心子と前記第2回転体との間で力を伝達するカムフォロアと、
を有する、
請求項1から5のいずれかに記載の回転装置。
【請求項7】
前記カムフォロアは、前記カム面上を転動する、
請求項6に記載の回転装置。
【請求項8】
前記遠心子は、軸方向に貫通する第1貫通孔を有し、
前記カム面は、前記第1貫通孔の内壁面によって構成される、
請求項6又は7に記載の回転装置。
【請求項9】
前記カムフォロアは、前記第2回転体に自転可能に取り付けられる、
請求項6から8のいずれかに記載の回転装置。
【請求項10】
前記第2回転部材は、第2貫通孔を有し、
前記カムフォロアは、前記第2貫通孔の内壁面上を転動する、
請求項6から9のいずれかに記載の回転装置。
【請求項11】
前記カムフォロアは、円柱状又は円筒状のコロである、
請求項6から10のいずれかに記載の回転装置。
【請求項12】
前記連結機構は、前記第1転動部材と前記第2転動部材との間を延びる連結部材を有し、
前記連結部材は、第1端部及び第2端部を有し、
前記第1転動部材は、前記連結部材の前記第1端部に回転可能に取り付けられ、
前記第2転動部材は、前記連結部材の前記第2端部に回転可能に取り付けられる、
請求項1から11のいずれかに記載の回転装置。
【請求項13】
前記連結部材は、少なくとも一部に弾性部を有する、
請求項12に記載の回転装置。
【請求項14】
前記連結機構は、介在部材と、前記介在部材と前記第1転動部材とを連結する第1連結部材と、前記介在部材と前記第2転動部材とを連結する第2連結部材と、を有する、
請求項1から11のいずれかに記載の回転装置。
【請求項15】
前記第1及び第2連結部材の少なくとも一方は、少なくとも一部に弾性部を有する、
請求項14に記載の回転装置。
【請求項16】
入力部材と、
前記入力部材からトルクが伝達される出力部材と、
請求項1から15のいずれかに記載の回転装置と、
を備える、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転装置、及び動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸周りに回転する回転体に遠心子が取り付けられた回転装置が知られている。この回転装置は、遠心子が回転体の回転による遠心力を受けることによって、機能を発揮する。このような回転装置の一例として、トルク変動抑制装置がある。
【0003】
トルク変動抑制装置は、入力部材及びイナーシャ部材を備えている。例えば、特許文献1に記載のトルク変動抑制装置では、ハブフランジの凹部内に遠心子が径方向移動可能に配置されている。遠心子は、ハブフランジの回転による遠心力を受けて、凹部内において径方向外側に移動する。そして、この遠心子がスムーズに径方向に移動できるように、遠心子はローラを有している。遠心子のローラは、凹部の内壁面(ガイド面)上を転動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-132161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したトルク変動抑制装置では、製造の精度の観点から、遠心子とガイド面との間のクリアランスを無くすことは困難である。このため、遠心子とガイド面との間にはクリアランスが形成される。このようにクリアランスがあるため、トルク変動が正方向から負方向に切り替わるとき、遠心子と内壁面との接触音が発生するという問題がある。
【0006】
そこで、本願発明では、遠心子とガイド面との接触音の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面に係る回転装置は、第1回転体、第2回転体、遠心子、第1転動部材、第2転動部材、及び連結機構を備える。第1回転体は、第1及び第2ガイド面を含む収容部を有する。第1及び第2ガイド面は、周方向を向く。第1回転体は、回転可能に配置される。第2回転体は、第1回転体とともに回転可能であり、且つ第1回転体と相対回転可能に配置される。遠心子は、収容部内に配置されている。遠心子は、第1回転体又は第2回転体の回転による遠心力を受けて径方向移動可能に配置されている。遠心子は、径方向に移動する際に自転するように構成されている。第1転動部材は、第1ガイド面と遠心子との間に配置される。第1転動部材は、遠心子の自転によって第1ガイド面上を転動するように構成される。第2転動部材は、第1ガイド面と遠心子との間に配置される。第2転動部材は、遠心子の自転によって第1ガイド面上を転動するように構成される。連結機構は、第1転動部材と第2転動部材とを連結する。第2転動部材は、第1転動部材に対して径方向の外側に配置される。遠心子の一部は、第1転動部材と第2転動部材との間に配置される。
【0008】
この構成によれば、遠心子と第1ガイド面との間に第1転動部材が配置されている。この第1転動部材によって、遠心子と第1ガイド面との隙間を埋めることができ、この結果、遠心子と第1ガイド面との接触音の発生を抑制することができる。なお、遠心子が自転するとは、遠心子全体が自転することだけでなく、遠心子の一部の部材が自転することも含む概念である。
【0009】
ここで、第2転動部材を有しない回転装置では、回転装置が停止したときに遠心子及び第1転動部材が回転軸よりも上方に位置している場合、第1転動部材が収容部内において下方に落下して落下音が発生するおそれがある。これに対して、本発明では、第1転動部材と第2転動部材との間に遠心子の一部が配置されているため、第2転動部材は、遠心子に支持されて下方に落下しない。そして、第1転動部材は連結機構によって第2転動部材に連結されているため、第1転動部材も下方に落下しない。この結果、第1転動部材の落下音の発生を防止することができる。
【0010】
好ましくは、遠心子は、第2ガイド面上を転動するように構成される。
【0011】
好ましくは、遠心子及び第1転動部材は、円筒状又は円柱状である。第1ガイド面と第2ガイド面との距離は、遠心子の直径と第1転動部材の直径との合計よりも小さい。
【0012】
好ましくは、回転装置は、第3転動部材をさらに備える。第3転動部材は、第2ガイド面と遠心子との間に配置される。第3転動部材は、遠心子の自転によって第2ガイド面上を転動する。
【0013】
好ましくは、遠心子は、遠心子本体部と、第1回転部と、第2回転部とを有する。遠心子本体部は、周方向において第1端部及び第2端部を含む。第1回転部は、遠心子本体部の第1端部に回転可能に取り付けられる。第2回転部は、遠心子本体部の第2端部に回転可能に取り付けられる。第1転動部材は、第1ガイド面と第1回転部との間に配置される。第1転動部材は、第1回転部の自転によって第1ガイド面上を転動する。第3転動部材は、第2ガイド面と第2回転部との間に配置される。第3転動部材は、第2回転部の自転によって第2ガイド面上を転動する。
【0014】
好ましくは、回転装置は、カム機構をさらに備える。カム機構は、遠心子に作用する遠心力を受けて、遠心力を第1回転体と第2回転体との回転位相差が小さくなる方向の周方向力に変換する。カム機構は、カム面と、カムフォロアとを有する。カム面は、遠心子に形成される。カムフォロアは、カム面と当接する。カムフォロアは、遠心子と第2回転体との間で力を伝達する。
【0015】
好ましくは、カムフォロアは、カム面上を転動する。
【0016】
好ましくは、遠心子は、軸方向に貫通する第1貫通孔を有する。カム面は、第1貫通孔の内壁面によって構成される。
【0017】
好ましくは、カムフォロアは、第2回転体に自転可能に取り付けられる。
【0018】
好ましくは、第2回転体は、第2貫通孔を有する。カムフォロアは、第2貫通孔の内壁面上を転動する。
【0019】
好ましくは、カムフォロアは、円柱状又は円筒状のコロである。
【0020】
好ましくは、連結機構は、連結部材を有する。連結部材は、第1転動部材と第2転動部材との間を延びる。連結部材は、第1端部及び第2端部を有する。第1転動部材は、連結部材の第1端部に回転可能に取り付けられる。第2転動部材は、連結部材の第2端部に回転可能に取り付けられる。
【0021】
好ましくは、連結部材は、少なくとも一部に弾性部を有する。
【0022】
好ましくは、連結機構は、介在部材と、第1連結部材と、第2連結部材とを有する。第1連結部材は、介在部材と第1転動部材とを連結する。第2連結部材は、介在部材と第2転動部材とを連結する。
【0023】
好ましくは、第1及び第2連結部材の少なくとも一方は、少なくとも一部に弾性部を有する。
【0024】
本発明の第2側面に係る動力伝達装置は、入力部材と、入力部材からトルクが伝達される出力部材と、上記いずれかの回転装置と、を備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、遠心子とガイド面との接触音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】トルクコンバータの模式図。
図2】一方のイナーシャリングが取り外された状態のトルク変動抑制装置の正面図。
図3図2のIII-III線断面図。
図4】トルク変動抑制装置の拡大正面図。
図5】トルク変動抑制装置の正面図。
図6】トルク変動抑制装置の拡大正面図。
図7】トルク変動抑制装置の拡大正面図。
図8】連結機構の拡大正面図。
図9】トルク変動が入力されていない状態の遠心子、カムフォロア、イナーシャリング、及び第1転動部材の位置関係を示す概略図。
図10】トルク変動が入力された状態の遠心子、カムフォロア、イナーシャリング、及び第1転動部材の位置関係を示す概略図。
図11】トルク変動抑制装置の特性の一例を示すグラフ。
図12】変形例に係るトルク変動抑制装置の拡大正面図。
図13】変形例に係るトルク変動抑制装置の拡大正面図。
図14】ダンパ装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本実施形態に係るトルク変動抑制装置(回転装置の一例)及びトルクコンバータ(動力伝達装置の一例)について図面を参照しつつ説明する。図1は、トルクコンバータの模式図である。なお、以下の説明において、軸方向とはトルク変動抑制装置の回転軸Oが延びる方向である。また、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。なお、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向に完全に一致している必要はなく、例えば、図6において、遠心子を基準とした左右方向も含む概念である。また、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の直径方向に完全に一致している必要はなく、例えば、図6において、遠心子を基準とした上下方向も含む概念である。
【0028】
[全体構成]
図1に示すように、トルクコンバータ100は、フロントカバー11、トルクコンバータ本体12と、ロックアップ装置13と、出力ハブ14(出力部材の一例)と、を有している。フロントカバー11にはエンジンからトルクが入力される。トルクコンバータ本体12は、フロントカバー11に連結されたインペラ121と、タービン122と、ステータ(図示せず)と、を有している。タービン122は出力ハブ14に連結されている。トランスミッションの入力軸(図示せず)が出力ハブ14にスプライン嵌合している。
【0029】
[ロックアップ装置13]
ロックアップ装置13は、クラッチ部や、油圧等によって作動するピストン等を有し、ロックアップオン状態と、ロックアップオフ状態と、を取り得る。ロックアップオン状態では、フロントカバー11に入力されたトルクは、トルクコンバータ本体12を介さずに、ロックアップ装置13を介して出力ハブ14に伝達される。一方、ロックアップオフ状態では、フロントカバー11に入力されたトルクは、トルクコンバータ本体12を介して出力ハブ14に伝達される。
【0030】
ロックアップ装置13は、入力側回転体131(入力部材の一例)と、ダンパ132と、トルク変動抑制装置10と、を有している。
【0031】
入力側回転体131は、軸方向に移動自在なピストンを含み、フロントカバー11側の側面に摩擦部材133が固定されている。この摩擦部材133がフロントカバー11に押し付けられることによって、フロントカバー11から入力側回転体131にトルクが伝達される。
【0032】
ダンパ132は、入力側回転体131と、後述するハブフランジ2との間に配置されている。ダンパ132は、複数のトーションスプリングを有しており、入力側回転体131とハブフランジ2とを周方向に弾性的に連結している。このダンパ132によって、入力側回転体131からハブフランジ2にトルクが伝達されるとともに、トルク変動が吸収、減衰される。
【0033】
[トルク変動抑制装置10]
図2はトルク変動抑制装置10の正面図、図3図2のIII-III線断面図である。なお、図2では、一方(手前側)のイナーシャリング3が取り外されている。
【0034】
図2図3に示すように、トルク変動抑制装置10は、ハブフランジ2(第1回転体の一例)、一対のイナーシャリング3(第2回転体の一例)、遠心子4、第1転動部材5a、第2転動部材5b、カム機構6、及び連結機構7を有している。
【0035】
<ハブフランジ2>
ハブフランジ2は、回転可能に配置される。ハブフランジ2は、入力側回転体131と軸方向に対向して配置されている。ハブフランジ2は、入力側回転体131と相対回転可能である。ハブフランジ2は、出力ハブ14に連結されている。すなわち、ハブフランジ2は、出力ハブ14と一体的に回転する。なお、ハブフランジ2は、出力ハブ14と一つの部材で構成されていてもよい。
【0036】
ハブフランジ2は、環状に形成されている。ハブフランジ2の内周部が出力ハブ14に連結されている。ハブフランジ2は、複数の収容部21を有している。本実施形態では、ハブフランジ2は6個の収容部21を有している。複数の収容部21は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。各収容部21は、ハブフランジ2の外周部に形成されている。各収容部21は、径方向外側に向かって開口する。収容部21は、所定の深さを有している。
【0037】
図4は、一方のイナーシャリング3、遠心子4、第1転動部材5a、第2転動部材5b、及び連結機構7を取り外した状態のトルク変動抑制装置10の拡大図である。図4に示すように、収容部21を画定する内壁面は、第1ガイド面211及び第2ガイド面212、及び底面213を有している。
【0038】
第1ガイド面211及び第2ガイド面212は、周方向(図4の左右方向)を向いている。第1ガイド面211及び第2ガイド面212は、遠心子4を向いている。図4のように遠心子4がない状態において、第1ガイド面211及び第2ガイド面212は、対向する。第1ガイド面211と第2ガイド面212とは、互いに略平行に延びている。第1及び第2ガイド面211,212は、平面である。
【0039】
底面213は、第1ガイド面211と第2ガイド面212とを連結している。底面213は、正面視(軸方向視)において、略円弧状である。底面213は、径方向外側を向いている。遠心子4が取り付けられた状態では、底面213は、遠心子4の外周面と対向している。
【0040】
<イナーシャリング3>
図3及び図5に示すように、イナーシャリング3は、環状のプレートである。詳細には、イナーシャリング3は、連続した円環状に形成されている。イナーシャリング3は、トルク変動抑制装置10の質量体として機能する。
【0041】
一対のイナーシャリング3は、軸方向においてハブフランジ2を挟むように配置されている。一対のイナーシャリング3は、軸方向においてハブフランジ2の両側に所定の隙間をあけて配置されている。すなわち、ハブフランジ2と一対のイナーシャリング3とは、軸方向に並べて配置されている。イナーシャリング3の回転軸は、ハブフランジ2の回転軸と同じである。イナーシャリング3は、ハブフランジ2とともに回転可能で、かつハブフランジ2に対して相対回転可能である。
【0042】
イナーシャリング3は、複数の第2貫通孔31を有している。第2貫通孔31は、イナーシャリング3を軸方向に貫通している。第2貫通孔31の径は、後述するカムフォロア62の小径部622の径よりも大きい。また、第2貫通孔31の径は、カムフォロア62の大径部621よりも小さい。
【0043】
一対のイナーシャリング3は、複数のリベット32によって固定されている。したがって、一対のイナーシャリング3は、互いに、軸方向、径方向、及び周方向に移動不能である。すなわち、一対のイナーシャリング3は、互いに一体的に回転する。
【0044】
図2に示すように、一対のイナーシャリング3の間には、複数のイナーシャブロック34が配置されている。複数のイナーシャブロック34は、周方向において、互いに間隔をあけて配置されている。例えば、周方向において、イナーシャブロック34と遠心子4とが交互に配置されている。イナーシャブロック34は、一対のイナーシャリング3に固定されている。具体的には、イナーシャブロック34は、リベット32によって一対のイナーシャリング3に固定されている。なお、イナーシャブロック34は、遠心子4よりも厚い。
【0045】
<遠心子4>
遠心子4は、収容部21内に配置されている。遠心子4は、ハブフランジ2の回転によって遠心力を受けるように構成されている。遠心子4は、収容部21内において径方向に移動可能である。なお、遠心子4は、径方向に移動する際に自転するように構成されている。本実施形態では、遠心子4の全体が自転する。遠心子4の軸方向の移動は、一対のイナーシャリング3によって規制されている。
【0046】
図6に示すように、遠心子4は、円板状であり、中央部に第1貫通孔41を有する。すなわち、遠心子4は円筒状である。遠心子4は、ハブフランジ2よりも厚い。遠心子4は、一つの部材によって構成することができる。
【0047】
遠心子4は、第2ガイド面212、第1転動部材5a、及び第2転動部材5bに接触している。このため、遠心子4は、周方向への移動が規制される。一方、遠心子4は径方向に移動可能である。遠心子4は、径方向に移動する際、収容部21の第2ガイド面212上を転動する。また、遠心子4は、径方向に移動する際、第1転動部材5aを介して第1ガイド面211上を転動する。すなわち、遠心子4は、第1転動部材5aの外周面上を転動する。同様に、遠心子4は、第2転動部材5bを介して第1ガイド面211上を転動する。
【0048】
遠心子4の外周面のうち、遠心子4が転動したときに第1転動部材5aの外周面と転がり接触する面を第1接触面42aとする。また、遠心子4の外周面のうち、遠心子4が転動したときに第2ガイド面212と転がり接触する面を第2接触面42bとする。この第1接触面42a及び第2接触面42bは、軸方向視において円弧状である。
【0049】
第1貫通孔41は、遠心子4を軸方向に貫通している。第1貫通孔41の径は、カムフォロア62の径よりも大きい。詳細には、第1貫通孔41の径は、カムフォロア62の大径部621の径よりも大きい。この第1貫通孔41を画定する内壁面の一部は、カム面61を構成する。
【0050】
<第1転動部材5a>
第1転動部材5aは、第1ガイド面211と遠心子4との間に配置されている。詳細には、第1転動部材5aは、第1ガイド面211と遠心子4とによって挟まれている。第1転動部材5aは、第1ガイド面211と遠心子4とに接触している。
【0051】
第1転動部材5aの中心は、遠心子4の中心よりも径方向内側に位置している。第1転動部材5aは、円柱状のコロとして構成されている。すなわち、第1転動部材5aは、ベアリングではない。なお、第1転動部材5aは、円筒状であってもよい。
【0052】
第1転動部材5aは、遠心子4の自転によって第1ガイド面211上を転動するように構成されている。すなわち、遠心子4が自転することによって、第1転動部材5aも自転する。なお、遠心子4の回転方向と第1転動部材5aの回転方向とは逆となる。そして、第1転動部材5aは、自転することによって、第1ガイド面211上を転動する。
【0053】
図7に示すように、第1ガイド面211と第2ガイド面212との距離Hは、遠心子4の直径D1と第1転動部材5aの直径D2との合計よりも小さい。すなわち、H<D1+D2の式が成り立つ。これにより、トルク変動抑制装置10の動作中において、遠心子4は常時、第2ガイド面212と第1転動部材5aとに接触している。
【0054】
第1転動部材5aの直径D2は、遠心子4の外周面と第1ガイド面211との隙間が最も狭い部分である最狭部の長さよりも大きいため、第1転動部材5aが径方向外側に飛び出すことが規制される。
【0055】
<第2転動部材5b>
図6に示すように、第2転動部材5bは、第1ガイド面211と遠心子4との間に配置されている。詳細には、第2転動部材5bは、第1ガイド面211と遠心子4とによって挟まれている。第2転動部材5bは、第1ガイド面211と遠心子4とに接触している。
【0056】
第2転動部材5bは、第1転動部材5aに対して径方向の外側に配置されている。第2転動部材5bの中心は、遠心子4の中心よりも径方向外側に位置している。このため、遠心子4の一部が、第1転動部材5aと第2転動部材5bとの間に配置されている。すなわち、遠心子4と第1ガイド面211との隙間が最も狭い部分である最狭部を基準にして、径方向内側に第1転動部材5aが配置され、径方向外側に第2転動部材5bが配置される。
【0057】
なお、最狭部の長さは、第1転動部材5aの直径D2よりも小さい。また、最狭部の長さは、第2転動部材5aの直径D3よりも小さい。すなわち、遠心子4の一部は、第1転動部材5aと第2転動部材5bとの間に配置されている。
【0058】
第2転動部材5bは、円柱状のコロとして構成されている。すなわち、第2転動部材5bは、ベアリングではない。なお、第2転動部材5bは、円筒状であってもよい。
【0059】
第2転動部材5bは、遠心子4の自転によって第1ガイド面211上を転動するように構成されている。すなわち、遠心子4が自転することによって、第2転動部材5bも自転する。なお、遠心子4の回転方向と第2転動部材5bの回転方向とは逆となる。そして、第2転動部材5bは、自転することによって、第1ガイド面211上を転動する。
【0060】
図7に示すように、第1ガイド面211と第2ガイド面212との距離Hは、遠心子4の直径D1と第2転動部材5bの直径D3との合計よりも小さい。すなわち、H<D1+D3の式が成り立つ。
【0061】
第2転動部材5bの直径D3は、遠心子4の外周面と第1ガイド面211との間の最狭部の長さよりも大きいため、第2転動部材5bが径方向内側に移動することが規制される。
【0062】
<連結部材7>
図8に示すように、連結機構7は、第1転動部材5aと第2転動部材5bとを連結するように構成されている。連結機構7は、連結部材71を有している。連結部材71は、第1転動部材5aと第2転動部材5bとの間を延びている。
【0063】
連結部材71は第1端部711と第2端部712とを有している。第1転動部材5aは、連結部材71の第1端部711に回転可能に取り付けられている。第2転動部材5bは、連結部材71の第2端部712に回転可能に取り付けられている。
【0064】
連結部材71は、少なくとも一部に弾性部を有している。例えば、連結部材71は、コイルばね、又は弾性ゴムによって構成されていてもよい。
【0065】
<カム機構6>
図6に示すように、カム機構6は、遠心子4に作用する遠心力を受けて、その遠心力をハブフランジ2とイナーシャリング3との回転位相差が小さくなる方向の周方向力に変換するように構成されている。なお、カム機構6は、ハブフランジ2とイナーシャリング3との間に回転位相差が生じたときに機能する。
【0066】
カム機構6は、カム面61とカムフォロア62とを有している。カム面61は、遠心子4に形成されている。詳細には、カム面61は、遠心子4の第1貫通孔41の内壁面の一部である。カム面61は、カムフォロア62が当接する面であり、軸方向視において円弧状である。カム面61は、径方向外側を向いている。
【0067】
カムフォロア62は、カム面61と当接している。カムフォロア62は、遠心子4と一対のイナーシャリング3との間で力を伝達するように構成されている。詳細には、カムフォロア62は、第1貫通孔41内と第2貫通孔31内を延びている。カムフォロア62は、自転可能に、イナーシャリング3に取り付けられている。
【0068】
カムフォロア62は、第1貫通孔41のカム面61上を転動する。また、カムフォロア62は、第2貫通孔31の内壁面上を転動する。なお、カムフォロア62は、第2貫通孔31の内壁面のうち、径方向内側を向く面と当接している。すなわち、カムフォロア62は、カム面61と、第2貫通孔31の内壁面とによって挟まれている。
【0069】
詳細には、カムフォロア62は、径方向内側においてカム面61と当接し、径方向外側において第2貫通孔31の内壁面と当接している。これによって、カムフォロア62は、位置決めされている。また、このようにカムフォロア62がカム面61と第2貫通孔31の内壁面とによって挟まれているため、カムフォロア62は、遠心子4と一対のイナーシャリング3との間で力を伝達する。
【0070】
カムフォロア62は、円柱状のコロとして構成されている。すなわち、カムフォロア62はベアリングではない。カムフォロア62は、大径部621と、一対の小径部622とを有している。大径部621と小径部622とは、互いの中心が一致している。大径部621は、小径部622よりも径が大きい。大径部621は、第1貫通孔41よりも径が小さく、第2貫通孔31よりも径が大きい。大径部621は、カム面61上を転動する。
【0071】
各小径部622は、大径部621から軸方向の両側に突出している。小径部622は、第2貫通孔31の内壁面上を転動する。小径部622は、第2貫通孔31よりも径が小さい。カムフォロア62は、一つの部材によって構成することができる。すなわち、カムフォロア62の大径部621と一対の小径部622とは一つの部材によって構成されている。なお、カムフォロア62は、径が一定の円柱状であってもよい。また、カムフォロア62は、円筒状であってもよい。
【0072】
カムフォロア62とカム面61との接触、及びカムフォロア62と第2貫通孔31の内壁面との接触によって、ハブフランジ2とイナーシャリング3との間に回転位相差が生じたときに、遠心子4に生じた遠心力は、回転位相差が小さくなるような周方向の力に変換される。
【0073】
<ストッパ機構>
トルク変動抑制装置10は、ストッパ機構8をさらに備えている。ストッパ機構8は、ハブフランジ2とイナーシャリング3との相対回転角度範囲を規制する。ストッパ機構8は、凸部81と凹部82とを有する。
【0074】
凸部81は、イナーシャブロック34から径方向内側に突出している。凹部82は、ハブフランジ2の外周面に形成されている。凸部81は、凹部82内に配置されている。この凸部81が凹部82の端面に当接することによって、ハブフランジ2とイナーシャリング3との相対回転角度範囲が規制される。
【0075】
[トルク変動抑制装置10の作動]
図9及び図10を用いて、トルク変動抑制装置10の作動について説明する。なお、図9及び図10では、図解を容易にするため、第2転動部材5b及び連結機構7の記載は省略する。
【0076】
ロックアップオン時には、フロントカバー11に伝達されたトルクは、入力側回転体131及びダンパ132を介してハブフランジ2に伝達される。
【0077】
トルク伝達時にトルク変動がない場合は、図9に示すような状態で、ハブフランジ2及びイナーシャリング3は回転する。この状態では、カム機構6のカムフォロア62はカム面61のもっとも径方向内側の位置(周方向の中央位置)に当接する。また、この状態では、ハブフランジ2とイナーシャリング3との回転位相差は「0」である。
【0078】
前述のように、ハブフランジ2とイナーシャリング3との間の周方向の相対変位量を、「回転位相差」と称しているが、これらは、図9及び図10では、遠心子4及びカム面61の周方向の中央位置と、第2貫通孔31の中心位置と、のずれを示すものである。
【0079】
ここで、トルクの伝達時にトルク変動が存在すると、図10に示すように、ハブフランジ2とイナーシャリング3との間には、回転位相差θが生じる。
【0080】
図10に示すように、ハブフランジ2とイナーシャリング3との間に回転位相差θが生じた場合、カム機構6のカムフォロア62は、図9に示す位置から図10に示す位置まで移動する。このとき、カムフォロア62は、カム面61上を転動しながら相対的に左側に移動する。また、カムフォロア62は、第2貫通孔31の内壁面上も転動している。詳細には、カムフォロア62の大径部621がカム面61上を転動し、カムフォロア62の小径部622が第2貫通孔31の内壁面上を転動する。なお、カムフォロア62は、反時計回りに自転している。
【0081】
このカムフォロア62が左側に移動することによって、カムフォロア62がカム面61を介して遠心子4を径方向内側(図9及び図10の下側)に押圧し、遠心子4を径方向内側に移動させる。この結果、遠心子4は、図9に示す位置から図10に示す位置まで移動する。このとき、遠心子4は、第2ガイド面212上を転動する。遠心子4は、時計回りに自転している。なお、遠心子4が時計回りに自転することによって、第1転動部材5aは反時計回りに自転する。そして、第1転動部材5aは、第1ガイド面211上を転動して径方向内側に移動する。なお、記載を省略した第2転動部材5bも第1転動部材5aと同様に第1ガイド面211上を転動して径方向内側に移動する。
【0082】
このように図10の位置に移動した遠心子4には遠心力が作用しているので、遠心子4は径方向外側(図10の上側)に移動する。詳細には、遠心子4は、第2ガイド面212上を転動して、径方向外側に移動する。なお、遠心子4は、反時計周りに自転する。このように遠心子4が反時計回りに自転することによって、第1転動部材5aは時計回りに自転する。そして、第1転動部材5aは、第1ガイド面211上を転動して径方向外側に移動する。
【0083】
また、遠心子4に形成されたカム面61がカムフォロア62を介して、イナーシャリング3を図10の右側に押圧し、イナーシャリング3を図10の右側に移動させる。このとき、カムフォロア62の大径部621はカム面61上を転動し、カムフォロア62の小径部622は第2貫通孔31の内壁面上を転動する。なお、カムフォロア62は、時計回りに自転している。この結果、図9の状態に戻る。
【0084】
なお、逆方向に回転位相差が生じた場合は、カムフォロア62がカム面61に沿って相対的に図10の右側に移動するが、作動原理は同じである。このとき、遠心子4は、第1転動部材5aを介して第1ガイド面211上を転動する。
【0085】
以上のように、トルク変動によってハブフランジ2とイナーシャリング3との間に回転位相差が生じると、遠心子4に作用する遠心力及びカム機構6の作用によって、ハブフランジ2は、両者の回転位相差を小さくする周方向の力を受ける。この力によって、トルク変動が抑制される。なお、カムフォロア62を介して、遠心子4とイナーシャリング3との間で力が伝達される。
【0086】
以上のトルク変動を抑制する力は、遠心力、すなわちハブフランジ2の回転数によって変化するし、回転位相差及びカム面61の形状によっても変化する。したがって、カム面61の形状を適宜設定することによって、トルク変動抑制装置10の特性を、エンジン仕様等に応じた最適な特性にすることができる。
【0087】
また、遠心子4は、第1ガイド面211又は第2ガイド面212上を間接的に又は直接的に転動することによって径方向に移動する。このため、遠心子4は、第1ガイド面211、又は第2ガイド面212上を摺動するものに比べて、スムーズに径方向に移動することができる。また、カムフォロア62は、カム面61上及び第2貫通孔31の内壁面上を転動している。このため、よりスムーズに遠心子4とイナーシャリング3との間で力を伝達することができる。
【0088】
[特性の例]
図11は、トルク変動抑制装置10の特性の一例を示す図である。横軸は回転数、縦軸はトルク変動(回転速度変動)である。特性Q1はトルク変動を抑制するための装置が設けられていない場合、特性Q2はカム機構を有さない従来のダイナミックダンパ装置が設けられた場合、特性Q3は本実施形態のトルク変動抑制装置10が設けられた場合を示している。
【0089】
この図11から明らかなように、カム機構を有さないダイナミックダンパ装置が設けられた装置(特性Q2)では、特定の回転数域のみについてトルク変動を抑制することができる。一方、カム機構6を有する本実施形態(特性Q3)では、すべての回転数域においてトルク変動を抑制することができる。
【0090】
[変形例]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0091】
<変形例1>
遠心子4は、円板状でなくてもよい。例えば、遠心子4は、第1及び第2接触面42a、42b以外の部分は、正面視において円弧状に形成されていなくてもよい。
【0092】
<変形例2>
カムフォロア62は、軸受部材を介して、第2貫通孔31に取り付けられていてもよい。
【0093】
<変形例3>
上記実施形態では、連結機構7は、第1転動部材5aと第2転動部材5bとを直接的に連結しているが、連結機構7の構成はこれに限定されない。例えば、図12に示すように、連結機構7は、第1転動部材5aと第2転動部材5bとを間接的に連結していてもよい。
【0094】
具体的には、連結機構7は、介在部材72、第1連結部材73、及び第2連結部材74を有している。介在部材72は、遠心子4の第1貫通孔41内に配置されている。介在部材72は、円筒状又は円柱状であって、回転可能に第1貫通孔41内に配置されている。すなわち、介在部材72は、第1貫通孔41の内壁面上を転動可能である。
【0095】
第1連結部材73は、介在部材72と第1転動部材5aとを連結している。詳細には、第1連結部材73が、介在部材72と第1転動部材5aとの間を延びている。介在部材72が、第1連結部材73の一方の端部に回転可能に取り付けられている。そして、第1転動部材5aが第1連結部材73の他方の端部に回転可能に取り付けられている。
【0096】
第2連結部材74は、介在部材72と第2転動部材5bとを連結している。詳細には、第2連結部材74が、介在部材72と第2転動部材5bとの間を延びている。介在部材72が、第2連結部材74の一方の端部に回転可能に取り付けられている。そして、第2転動部材5bが第2連結部材74の他方の端部に回転可能に取り付けられている。
【0097】
第1連結部材73及び第2連結部材74の少なくとも一方は、少なくとも一部に弾性部を有する。例えば第1及び第2連結部材73,74は、コイルばね、又は弾性ゴムによって構成されていてもよい。
【0098】
<変形例4>
上記実施形態では、遠心子4の全体が自転するように構成されているが、遠心子4の構成はこれに限定されず、遠心子4の一部が自転するように構成されていてもよい。例えば図13に示すように、遠心子4は、遠心子本体部43、複数の第1回転部44a、及び複数の第2回転部44bを有している。なお、本変形例では、第1回転部44a及び第2回転部44bの数はそれぞれ2つである。
【0099】
遠心子本体部43は、周方向において第1端部431及び第2端部432を含む。第1端部431は第1ガイド面211側に配置され、第2端部432は第2ガイド面212側に配置される。遠心子本体部43は、一対のプレートによって構成されている。複数の第1回転部44a及び第2回転部44bは、一対のプレートによって軸方向において挟まれている。遠心子本体部43は、好ましくはハブフランジ2と接触していない。
【0100】
第1回転部44aは、遠心子本体部43の第1端部431に回転可能に取り付けられている。すなわち、第1回転部44aは、自転するように構成されている。第1回転部44aは、第1ガイド面211と間隔をあけて配置されている。
【0101】
第2回転部44bは、遠心子本体部43の第2端部432に回転可能に取り付けられている。すなわち、第2回転部44bは、自転するように構成されている。第2回転部44bは、第2ガイド面212と間隔をあけて配置されている。
【0102】
第1及び第2転動部材5a、5bは、第1ガイド面211と遠心子4との間に配置されている。詳細には、第1及び第2転動部材5a、5bは、第1ガイド面211と第1回転部44aとの間に配置されている。第1及び第2転動部材5a、5bは、第1ガイド面211と第1回転部44aとに接触している。第1及び第2転動部材5a、5bの直径は、第1回転部44aと第1ガイド面211との隙間の最狭部よりも大きい。
【0103】
第1転動部材5aの中心は、第1回転部44aの中心よりも径方向内側に位置している。第2転動部材5bは、第1転動部材5aに対して径方向の外側に配置されている。第2転動部材5bの中心は、第1回転部44aの中心よりも径方向外側に位置している。このため、遠心子4の一部が、第1転動部材5aと第2転動部材5bとの間に配置されている。詳細には、第1回転部44aの一部が、第1転動部材5aと第2転動部材5bとの間に配置されている。すなわち、第1回転部44aと第1ガイド面211との隙間の最狭部を基準にして、径方向内側に第1転動部材5aが配置され、径方向外側に第2転動部材5bが配置される。
【0104】
第1及び第2転動部材5a、5bは、遠心子4の自転によって第1ガイド面211上を転動する。詳細には、第1及び第2転動部材5a、5bは、第1回転部44aの自転によって第1ガイド面211上を転動する。
【0105】
第3及び第4転動部材5c、5dは、第2ガイド面212と遠心子4との間に配置されている。詳細には、第3及び第4転動部材5c、5dは、第2ガイド面212と第2回転部44bとの間に配置されている。第3及び第4転動部材5c、5dは、遠心子4の自転によって第2ガイド面212上を転動する。詳細には、第3及び第4転動部材5c、5dは、第2回転部44bの自転によって第2ガイド面212上を転動する。なお、第3及び第4転動部材5c、5dは、第1及び第2転動部材5a、5bと同様の構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0106】
<変形例5>
上記実施形態では、遠心子4をハブフランジ2に設けたが、遠心子4をイナーシャリング3に設けてもよい。この場合、イナーシャリング3が本発明の第1回転体に相当し、ハブフランジが本発明の第2回転体に相当する。
【0107】
<変形例6>
上記実施形態では、第1回転体の一例としてハブフランジ2を例示しているが、第1回転体はこれに限定されない。例えば、トルク変動抑制装置を本実施形態のようにトルクコンバータに取り付ける場合、トルクコンバータ100のフロントカバー11又は入力側回転体131などを第1回転体とすることができる。
【0108】
<変形例7>
上記実施形態では、トルク変動抑制装置10を、トルクコンバータ100に取り付けているが、クラッチ装置などの他の動力伝達装置にトルク変動抑制装置10を取り付けることもできる。
【0109】
例えば、図14に示すように、ダンパ装置101にトルク変動抑制装置10を取り付けることができる。このダンパ装置101は、例えば、ハイブリッド車に搭載される。ダンパ装置101は、入力部材141と、出力部材142と、ダンパ143と、トルク変動抑制装置10と、を備えている。入力部材141には駆動源からのトルクが入力される。ダンパ143は、入力部材141と出力部材142との間に配置されている。出力部材142は、ダンパ143を介して入力部材141からのトルクが伝達される。トルク変動抑制装置10は、例えば出力部材142に取り付けられている。
【0110】
<変形例8>
上記実施形態では、連結部材71は、少なくとも一部に弾性部を有していたが、連結部材71の構成はこれに限定されない。例えば、連結部材71は、弾性部を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10 トルク変動抑制装置
100 トルクコンバータ
2 ハブフランジ
21 収容部
211 第1ガイド面
212 第2ガイド面
3 イナーシャリング
31 第2貫通孔
4 遠心子
41 第1貫通孔
43 遠心子本体部
44a 第1回転部
44b 第2回転部
5a 第1転動部材
5b 第2転動部材
5c 第3転動部材
6 カム機構
61 カム面
62 カムフォロア
7 連結機構
71 連結部材
72 介在部材
73 第1連結部材
74 第2連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14