(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022110989
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】リッド開閉構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20220722BHJP
E05B 83/34 20140101ALI20220722BHJP
【FI】
B60K15/05 B
E05B83/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006764
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ48
2E250LL13
2E250MM03
3D038CA33
3D038CB01
3D038CC16
(57)【要約】
【課題】リッドの開閉を行う電動アクチュエータなどに故障が生じたときにもリッドの開閉を確保すること。
【解決手段】リッド開閉構造は、基材に対して全閉位置と全開位置との間で開閉可能なリッドと、リッドを基材に対して開閉動作させる第一動力をリッドに付与する第一動力付与機構と、第一動力とは異なる、外力操作によりリッドを基材に対して開閉動作させる第二動力をリッドに付与する第二動力付与機構と、を備える。第二動力付与機構は、係合部と、係合部に係合可能な被係合部と、を有する。係合部と被係合部とは、リッドが第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作するときは互いに係合せず、一方、外力操作が行われたときは第二動力がリッドに付与されることによりリッドが開閉動作するように互いに係合する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対して全閉位置と全開位置との間で開閉可能なリッドと、
前記リッドを前記基材に対して開閉動作させる第一動力を前記リッドに付与する第一動力付与機構と、
前記第一動力とは異なる、外力操作により前記リッドを前記基材に対して開閉動作させる第二動力を前記リッドに付与する第二動力付与機構と、
を備えるリッド開閉構造であって、
前記第二動力付与機構は、係合部と、前記係合部に係合可能な被係合部と、を有し、
前記係合部と前記被係合部とは、前記リッドが前記第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作するときは互いに係合せず、一方、前記外力操作が行われたときは前記第二動力が前記リッドに付与されることにより前記リッドが開閉動作するように互いに係合する、リッド開閉構造。
【請求項2】
前記第一動力付与機構は、前記第一動力を発生する電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータと前記リッドとの間に介在し、前記第一動力を前記リッドに付与する回転可能な回転シャフトと、を有し、
前記第二動力付与機構は、外力により操作される緊急用操作部材と、前記緊急用操作部材の操作による前記第二動力を前記回転シャフトを介して前記リッドに伝達する伝達部材と、を有し、
前記係合部は、前記緊急用操作部材に設けられ、
前記被係合部は、前記伝達部材に設けられ、
前記係合部と前記被係合部とは、前記第一動力により前記回転シャフトが回転されるときは互いに係合せず、一方、前記緊急用操作部材が操作されたときは前記第二動力により前記回転シャフトが回転されるように互いに係合する、請求項1に記載されたリッド開閉構造。
【請求項3】
前記伝達部材は、前記緊急用操作部材の操作による前記第二動力を前記電動アクチュエータを介して前記回転シャフトに付与する、請求項2に記載されたリッド開閉構造。
【請求項4】
前記回転シャフトと前記伝達部材とは、互いに連結され又は一体化されており、
前記伝達部材は、前記第一動力により前記回転シャフトが回転されるときは、前記係合部と前記被係合部とが互いに係合しない空転角度範囲で回転し、一方、前記緊急用操作部材が操作されたときは、前記係合部と前記被係合部とが互いに係合した状態で回転する、請求項2又は3に記載されたリッド開閉構造。
【請求項5】
前記回転シャフトと前記電動アクチュエータと前記伝達部材とは、互いに一体化されている、請求項4に記載されたリッド開閉構造。
【請求項6】
前記緊急用操作部材は、外力を付与する外力付与部を介して操作される、請求項2乃至5の何れか一項に記載されたリッド開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車体基材の開口を塞ぐリッドを開閉動作させることが可能なリッド開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電口や給油口などが設けられた車体基材の開口を塞ぐリッドを開閉動作させるリッド開閉構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載のリッド開閉構造は、リッドを全閉位置にロック可能なロック部材と、ロック部材を規制位置と規制解除位置との間で進退させる電動アクチュエータと、を備えている。上記のリッド開閉構造は、また、電動アクチュエータに故障などが生じた緊急時にロック部材を規制位置から規制解除位置へ後退させることが可能な緊急用操作部材を備えている。
【0003】
上記リッド開閉構造において、リッドがロック部材により全閉位置にロックされている状態で、緊急用操作部材が操作者により操作されると、ロック部材が規制解除位置へ後退することでリッドロックが解除され、リッドが開動作することが可能である。このため、電動アクチュエータが故障しても、リッドをロック解除して開状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1記載の電動アクチュエータは、リッドを全閉位置にロックするロック部材を規制位置と規制解除位置との間で進退させる機器であって、決してリッド自体を開閉させる機器ではない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、リッドの開閉を行う電動アクチュエータなどに故障が生じたときにもリッドの開閉を確保することが可能なリッド開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、基材に対して全閉位置と全開位置との間で開閉可能なリッドと、前記リッドを前記基材に対して開閉動作させる第一動力を前記リッドに付与する第一動力付与機構と、前記第一動力とは異なる、外力操作により前記リッドを前記基材に対して開閉動作させる第二動力を前記リッドに付与する第二動力付与機構と、を備えるリッド開閉構造であって、前記第二動力付与機構は、係合部と、前記係合部に係合可能な被係合部と、を有し、前記係合部と前記被係合部とは、前記リッドが前記第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作するときは互いに係合せず、一方、前記外力操作が行われたときは前記第二動力が前記リッドに付与されることにより前記リッドが開閉動作するように互いに係合する、リッド開閉構造である。
【0008】
この構成によれば、第二動力付与機構により外力操作が行われると、係合部と被係合部とが互いに係合することで、その外力による第二動力がリッドに付与され、リッドが開閉動作される。従って、第一動力付与機構による第一動力によりリッドを開閉動作させることができなくても、第二動力付与機構による第二動力によりリッドを開閉動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係るリッド開閉構造のリッド全閉位置での正面図である。
【
図2】第一実施形態のリッド開閉構造のリッド全開位置での正面図である。
【
図3】第一実施形態のリッド開閉構造の要部の斜視図である。
【
図4】第一実施形態のリッド開閉構造の要部の正面図である。
【
図5】
図4に示すV-Vで切断した際の断面図である。
【
図6】第一実施形態のリッド開閉構造の要部の分解図である。
【
図7】第一実施形態のリッド開閉構造の開閉動作時における要部の位置関係を表した図である。
【
図8】第二実施形態に係るリッド開閉構造の要部の斜視図である。
【
図9】第二実施形態のリッド開閉構造の要部の正面図である。
【
図10】
図9に示すX-Xで切断した際の断面図である。
【
図11】
図9に示すXI-XIで切断した際の断面図である。
【
図12】第二実施形態のリッド開閉構造の要部の分解図である。
【
図13】第三実施形態に係るリッド開閉構造の要部の斜視図である。
【
図14】第三実施形態のリッド開閉構造に用いられているワイヤの斜視図である。
【
図15】第三実施形態のリッド開閉構造の要部の断面図である。
【
図16】第三実施形態のリッド開閉構造の開閉動作時における要部の位置関係を表した図である。
【
図17】第四実施形態に係るリッド開閉構造の要部の斜視図である。
【
図18】第四実施形態のリッド開閉構造の要部の正面図である。
【
図19】
図18に示すXIX-XIXで切断した際の断面図である。
【
図20】第四実施形態のリッド開閉構造の要部の分解図である。
【
図21】第一変形形態に係るリッド開閉構造の要部の斜視図である。
【
図22】第一変形形態のリッド開閉構造の要部の断面図である。
【
図23】第二変形形態に係るリッド開閉構造の要部の斜視図である。
【
図24】第二変形形態のリッド開閉構造の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1-
図24を用いて、本発明に係るリッド開閉構造の具体的な実施形態について説明する。
【0011】
[第一実施形態]
第一実施形態のリッド開閉構造1は、開口を塞ぐリッド20を開閉動作させる構造である。リッド開閉構造1は、
図1及び
図2に示す如く、基材10と、リッド20と、駆動装置30と、を備えている。リッド開閉構造1は、駆動装置30によってリッド20を基材10に対して回動させることによりリッド20を全閉位置と全開位置との間で開閉動作させることが可能である。
【0012】
基材10は、容器状或いは箱状に形成された部材である。具体的には、基材10は、一端側(すなわち、奥側)にて底壁11が形成されかつ他端側(すなわち、手前側)にて開口12が形成された筒状の有底部材である。基材10は、四角筒状或いは円筒状に形成されている。基材10は、例えば車両の車体側壁やボンネットなどに設けられた取付孔に取り付けられる。この取付孔には、例えば車両の充電口や給油口などが設けられる。基材10は、樹脂などにより成形された射出成形体である。
【0013】
基材10の底壁11には、所定形状の取出口13が設けられている。取出口13は、上記の給油口や充電口に連通している。取出口13には、燃料タンクやバッテリなどに接続する配管やケーブルの一端が表出している。この配管やケーブルの一端は、リッド20の全閉位置を含む閉位置で基材10の開口内側に隠れる一方、リッド20の全開位置を含む開位置で燃料供給や充電が可能となるように外部に露出する。
【0014】
リッド20は、基材10の開口12を塞ぐ板状の部材である。リッド20は、基材10に回動可能に支持されている。リッド20は、水平に延びる軸を中心にして基材10に対して上下方向に回動することが可能である。リッド20は、開口12を閉じることが可能であると共にその開口12を開放することが可能であり、全閉位置と全開位置との間で開閉される。リッド20は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。
【0015】
駆動装置30は、リッド20を基材10に対して開閉動作させる動力をリッド20に付与してリッド20を開閉動作させる装置である。駆動装置30は、
図3、
図4、
図5、及び
図6に示す如く、それぞれ動力を発生する二つの動力付与機構40,50を有している。以下、動力付与機構40を第一動力付与機構40と、動力付与機構50を第二動力付与機構50と、それぞれ称す。また、第一動力付与機構40が付与する動力を第一動力と、第二動力付与機構50が付与する動力を第二動力と、それぞれ称す。
【0016】
第一動力付与機構40は、電動アクチュエータ41と、回転シャフト42と、を有している。電動アクチュエータ41は、第一動力を発生する回転可能な電動モータである。電動アクチュエータ41は、正方向及び逆方向の双方に回転することが可能である。電動アクチュエータ41は、操作者によりスイッチ開操作が行われた場合に制御装置からの開指令に従って正方向に回転駆動される。また、電動アクチュエータ41は、操作者によりスイッチ閉操作が行われた場合に制御装置からの閉指令に従って逆方向に回転駆動される。
【0017】
電動アクチュエータ41は、駆動装置30のボックス部材31内に収容されている。ボックス部材31は、ロアボックス31aとアッパボックス31bとにより構成されている。電動アクチュエータ41は、ロアボックス31aとアッパボックス31bとにより覆われており、ロアボックス31aとアッパボックス31bとの締結によりボックス部材31内に収容される。
【0018】
回転シャフト42は、電動アクチュエータ41の発生した第一動力をリッド20に付与する回転可能な軸部材である。回転シャフト42は、軸中心Cを中心にして回転可能である。回転シャフト42は、電動アクチュエータ41とリッド20との間に介在している。回転シャフト42は、軸方向一端で電動アクチュエータ41に軸嵌合されており、電動アクチュエータ41の回転に伴って一体で回転する。
【0019】
回転シャフト42の軸方向他端は、ボックス部材31のロアボックス31aの貫通孔31cから軸方向外方へ突出している。ボックス部材31の貫通孔31cの周囲は、Oリング43によりシールされている。回転シャフト42は、軸方向他端でリッド20に嵌合されており、回転により電動アクチュエータ41の発生した第一動力をリッド20に付与する。電動アクチュエータ41の発生した第一動力がリッド20に付与されると、その第一動力によりリッド20が開閉動作される。
【0020】
第二動力付与機構50は、緊急用操作部材51と、ワイヤ52と、伝達部材53と、を有している。緊急用操作部材51は、外力により操作される操作部材である。緊急用操作部材51は、回転可能な円盤状のアーム部材である。緊急用操作部材51の外縁には、径方向外方に向けて開口する溝が形成されている。緊急用操作部材51は、アッパボックス31bに設けられた収容部31dに回転可能に収容される。緊急用操作部材51は、回転シャフト42と同軸上で軸中心Cを中心にして回転可能である。緊急用操作部材51は、回転中心に設けられて軸方向に延びる軸体51aを有している。
【0021】
ワイヤ52は、緊急用操作部材51に外力を付与する外力付与部である。ワイヤ52は、緊急用操作部材51の外縁の溝に沿うように巻かれている。ワイヤ52の一端は緊急用操作部材51の外周上の所定位置に取り付け固定されており、ワイヤ52の他端は操作者により引っ張り操作されるレバーなどの操作部(図示せず)に連結されている。ワイヤ52が操作者による外力により引っ張り操作されると、ワイヤ52が緊急用操作部材51の外端部における接線方向に引かれて、その外力が緊急用操作部材51を回転させる力として緊急用操作部材51に付与されることにより、その緊急用操作部材51が軸中心Cを中心にして回転操作される。
【0022】
伝達部材53は、緊急用操作部材51の回転操作による外力を第一動力とは異なる第二動力として回転シャフト42を介してリッド20に伝達するシャフト部材である。伝達部材53は、回転シャフト42及び緊急用操作部材51の軸体51aと同軸上で軸中心Cを中心にして回転可能である。伝達部材53の軸部は、ボックス部材31のアッパボックス31bの貫通孔を介してボックス部材31内に挿入されている。ボックス部材31の貫通孔の周囲は、Oリング56によりシールされている。伝達部材53は、軸方向一端で電動アクチュエータ41に軸嵌合されており、回転シャフト42に連結されている。伝達部材53は、電動アクチュエータ41及び緊急用操作部材51の回転に伴って一体で回転する。伝達部材53は、回転中心に設けられて軸方向に延びる軸孔53aを有している。軸孔53aには、緊急用操作部材51の軸体51aが挿入されている。
【0023】
第二動力付与機構50は、また、係合部54と、係合部54に係合可能な被係合部55と、を有している。係合部54は、緊急用操作部材51に設けられている。被係合部55は、伝達部材53に設けられている。緊急用操作部材51及び伝達部材53は、係合部54と被係合部55とが所定のタイミングでのみ互いに係合し、その他のタイミングでは互いに係合しないように形成されている。
【0024】
すなわち、係合部54と被係合部55とは、リッド20が電動アクチュエータ41による第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作されるときすなわち第一動力により回転シャフト42が回転されるときは、互いに係合しない。一方、係合部54と被係合部55とは、緊急用操作部材51がワイヤ52からの外力により回転操作されたときは、その外力による第二動力が電動アクチュエータ41を介してリッド20に付与されることによりそのリッド20が開閉動作するようにすなわち第二動力により回転シャフト42が回転されるように、互いに係合する。
【0025】
係合部54は、緊急用操作部材51の軸体51aに形成されている。係合部54は、軸体51aの外面から径方向外側に向けて突出するように凸状に形成されている。係合部54は、軸体51aの周方向全域のうち一部の角度範囲(例えば150°)のみに設けられている。尚、係合部54は、上記した周方向全域のうち上記した一部の角度範囲全体に亘って突出するように設けられていてもよいが、その一部の角度範囲の少なくとも両端に突出するように設けられていればよい。
【0026】
被係合部55は、伝達部材53の軸孔53aに形成されている。被係合部55は、その軸孔53aを形成する壁の内面から軸中心Cに向けて突出するように凸状に形成されている。被係合部55は、軸孔53aの周方向全域のうち一部の角度範囲(例えば90°)のみに設けられている。係合部54の角度範囲と被係合部55の角度範囲との合算値は、360°未満となるように設定されている。尚、被係合部55は、上記した周方向全域のうち上記した一部の角度範囲全体に亘って突出するように設けられていてもよいが、その一部の角度範囲の少なくとも両端に突出するように設けられていればよい。
【0027】
係合部54及び被係合部55はそれぞれ、凸状部の周方向に向いた側面が周方向に向くように形成されている。係合部54と被係合部55とは、その側面同士が当接することにより互いに係合する。
【0028】
緊急用操作部材51及び伝達部材53は、緊急用操作部材51の軸体51aが伝達部材53の軸孔53aに挿入された状態で、係合部54と被係合部55とが互いに係合しないことで相対的に回転可能な空転区間部と、係合部54と被係合部55とが互いに係合することで一体的に回転可能な同期区間部と、を有するように形成されている。この空転区間部は、リッド20が全閉位置から電動アクチュエータ41による第一動力により全開位置まで開動作する過程で、緊急用操作部材51の係合部54と伝達部材53の被係合部55とが互いに係合しないように設定されている。また、上記の同期区間部は、リッド20が全閉位置から緊急用操作部材51による第二動力により全開位置まで開動作する過程で、係合部54と被係合部55とが互いに係合するように設定されている。
【0029】
次に、
図7を参照して、リッド開閉構造1の動作について説明する。
リッド開閉構造1において、リッド20は、電動アクチュエータ41が回転駆動されておらずかつワイヤ52が引っ張り操作されていないときは、摩擦力などにより開閉停止状態にロックされている。そして、リッド20の全閉位置では、緊急用操作部材51の係合部54と伝達部材53の被係合部55とが、
図7に示す如き位置関係に維持される。
【0030】
かかるリッド20の全閉位置で操作者によりスイッチ開操作が行われると、電動アクチュエータ41がリッド20を開動作させる第一動力を発生する。電動アクチュエータ41により第一動力が発生すると、その電動アクチュエータ41の回転に伴って一体で回転シャフト42が回転することにより、その第一動力が回転シャフト42を介してリッド20に付与される。第一動力がリッド20に付与されると、その第一動力によりリッド20が開動作される。このリッド20の開動作は、全開位置まで継続して行われる。
【0031】
また、上記の如く電動アクチュエータ41が第一動力を発生すると、その電動アクチュエータ41の回転に伴って一体で伝達部材53が回転する(
図7において左回転方向)。この際、伝達部材53の回転は、リッド20が第一動力により全閉位置から全開位置まで自動的に開動作される過程で係合部54と被係合部55とが互いに係合しない状態が継続するように行われる。
【0032】
更に、リッド20の全開位置で操作者によりスイッチ閉操作が行われた場合も同様に、電動アクチュエータ41の第一動力によりリッド20が全閉位置まで閉動作されると共に、その過程で係合部54と被係合部55とが互いに係合しない状態が継続するように伝達部材53の回転が行われる。
【0033】
従って、リッド20が電動アクチュエータ41による第一動力により全閉位置と全開位置との間で自動的に開閉動作されるときは、緊急用操作部材51の係合部54と伝達部材53の被係合部55とが互いに係合しないことで、伝達部材53の回転によって緊急用操作部材51にその緊急用操作部材51を回転させる力が付与されることは無い。
【0034】
一方、リッド20の全閉位置で操作者による外力によりワイヤ52が引っ張り操作されると、緊急用操作部材51が回転操作される(
図7において左回転方向)。緊急用操作部材51が回転操作されると、その緊急用操作部材51の係合部54と伝達部材53の被係合部55とが互いに係合することで、その緊急用操作部材51の回転に伴って一体で伝達部材53が回転する。この伝達部材53の回転は、リッド20が全開位置に達するまで継続される。伝達部材53が緊急用操作部材51の回転に伴って一体で回転すると、操作者による外力が第二動力として電動アクチュエータ41及び回転シャフト42を介してリッド20に付与される。第二動力がリッド20に付与されると、その第二動力によりリッド20が全開位置まで開動作される。
【0035】
従って、リッド20の全閉位置でワイヤ52が操作者による外力により引っ張り操作されたときは、緊急用操作部材51の係合部54と伝達部材53の被係合部55とが互いに係合することで、その外力が緊急用操作部材51から伝達部材53→電動アクチュエータ41→回転シャフト42を介してリッド20にそのリッド20を開動作させるための第二動力として付与される。この場合、リッド20は、緊急用操作部材51による第二動力により全閉位置から全開位置まで開動作される。
【0036】
このように、電動アクチュエータ41に故障が生じていないときは、その電動アクチュエータ41の発生する第一動力によりリッド20を開閉させることができる。また、電動アクチュエータ41に故障が生じたときは、ワイヤ52ひいては緊急用操作部材51への外力操作に伴う第二動力によりリッド20を開閉させることができる。このため、電動アクチュエータ41に故障が生じた緊急時にも、リッド20の開閉を確保することができるので、燃料供給や充電を実施することが可能となる。
【0037】
また、電動アクチュエータ41に故障が生じていないリッド自動開閉時は、リッド20が第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作される過程で、係合部54と被係合部55とが互いに係合しないので、緊急用操作部材51が回転せずワイヤ52が操作されることはない。このため、リッド自動開閉に伴ってワイヤ52に緩みなどが生ずるのを回避することができ、これにより、ワイヤ52の劣化を抑えることができると共に、ワイヤ52の緩みに伴う他部品との干渉を抑えるためのスペースを設けることが不要となり、駆動装置30の小型化を図ることができる。
【0038】
[第二実施形態]
第二実施形態のリッド開閉構造100は、第一実施形態のリッド開閉構造1において、駆動装置30に代えて駆動装置110を用いることにより実現される。尚、リッド開閉構造100において、第一実施形態のリッド開閉構造1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0039】
駆動装置110は、第一実施形態の駆動装置30において、第二動力付与機構50に代えて第二動力付与機構120を用いることにより実現される。すなわち、駆動装置110は、
図8、
図9、
図10、
図11、及び
図12に示す如く、動力を発生する第二動力付与機構120を有している。
【0040】
第二動力付与機構120は、緊急用操作部材121と、ワイヤ122と、伝達部材123と、を有している。緊急用操作部材121は、外力により操作される操作部材である。緊急用操作部材121は、回転可能な径方向に延びるレバー状のアーム部材である。緊急用操作部材121は、伝達部材123に回転可能にスクリュ126を介して軸支されている。緊急用操作部材121は、回転シャフト42と同軸上で軸中心Cを中心にして回転可能である。緊急用操作部材121は、回転中心に設けられて軸方向に延びる軸孔121aを有している。
【0041】
ワイヤ122は、緊急用操作部材121に外力を付与する外力付与部である。ワイヤ122の一端は、緊急用操作部材121の径方向外端部に相対的に回動可能に支持されている。ワイヤ122の他端は、操作者により引っ張り操作されるレバーなどの操作部(図示せず)に連結されている。ワイヤ122が操作者による外力により引っ張り操作されると、ワイヤ122が緊急用操作部材121の外端部における接線方向に引かれて、その外力が緊急用操作部材121を回転させる力として緊急用操作部材121に付与されることにより、その緊急用操作部材121が軸中心Cを中心にして回転操作される。
【0042】
伝達部材123は、緊急用操作部材121の回転操作による外力を第一動力とは異なる第二動力として回転シャフト42を介してリッド20に伝達するシャフト部材である。伝達部材123は、回転シャフト42及び緊急用操作部材121の軸部と同軸上で軸中心Cを中心にして回転可能である。伝達部材123の軸部は、ボックス部材31のアッパボックス31bの貫通孔を介してボックス部材31内に挿入されている。伝達部材123は、軸方向一端で電動アクチュエータ41に軸嵌合されており、回転シャフト42に連結されている。伝達部材123は、電動アクチュエータ41及び緊急用操作部材121の回転に伴って一体で回転する。伝達部材123は、回転中心に設けられて軸方向に延びる軸体123aを有している。軸体123aは、緊急用操作部材121の軸孔121aに挿入されている。
【0043】
第二動力付与機構120は、また、係合部124と、係合部124に係合可能な被係合部125と、を有している。係合部124は、緊急用操作部材121に設けられている。被係合部125は、伝達部材123に設けられている。緊急用操作部材121及び伝達部材123は、係合部124と被係合部125とが所定のタイミングでのみ互いに係合し、その他のタイミングでは互いに係合しないように形成されている。
【0044】
すなわち、係合部124と被係合部125とは、リッド20が電動アクチュエータ41による第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作されるときすなわち第一動力により回転シャフト42が回転されるときは、互いに係合しない。一方、係合部124と被係合部125とは、緊急用操作部材121がワイヤ122からの外力により回転操作されたときは、その外力による第二動力が電動アクチュエータ41を介してリッド20に付与されることによりそのリッド20が開閉動作するようにすなわち第二動力により回転シャフト42が回転されるように、互いに係合する。
【0045】
係合部124は、緊急用操作部材121の軸孔121aに形成されている。係合部124は、その軸孔121aを形成する壁の内面から軸中心Cに向けて突出するように凸状に形成されている。係合部124は、軸孔121aの周方向全域のうち一部の角度範囲(例えば90°)のみに設けられている。尚、係合部124は、上記した周方向全域のうち上記した一部の角度範囲全体に亘って突出するように設けられていてもよいが、その一部の角度範囲の少なくとも両端に突出するように設けられていればよい。
【0046】
被係合部125は、伝達部材123の軸体123aに形成されている。被係合部125は、軸体123aの外面から径方向外側に向けて突出するように凸状に形成されている。被係合部125は、軸体123aの周方向全域のうち一部の角度範囲(例えば150°)のみに設けられている。係合部124の角度範囲と被係合部125の角度範囲との合算値は、360°未満となるように設定されている。尚、被係合部125は、上記した周方向全域のうち上記した一部の角度範囲全体に亘って突出するように設けられていてもよいが、その一部の角度範囲の少なくとも両端に突出するように設けられていればよい。
【0047】
係合部124及び被係合部125はそれぞれ、凸状部の周方向に向いた側面が周方向に向くように形成されている。係合部124と被係合部125とは、その側面同士が当接することにより互いに係合する。
【0048】
緊急用操作部材121及び伝達部材123は、緊急用操作部材121の軸孔121aに伝達部材123の軸体123aが挿入された状態で、係合部124と被係合部125とが互いに係合しないことで相対的に回転可能な空転区間部と、係合部124と被係合部125とが互いに係合することで一体的に回転可能な同期区間部と、を有するように形成されている。この空転区間部は、リッド20が全閉位置から電動アクチュエータ41による第一動力により全開位置まで開動作する過程で、緊急用操作部材121の係合部124と伝達部材123の被係合部125とが互いに係合しないように設定されている。また、上記の同期区間部は、リッド20が全閉位置から緊急用操作部材121による第二動力により全開位置まで開動作する過程で、係合部124と被係合部125とが互いに係合するように設定されている。
【0049】
次に、リッド開閉構造100の動作について説明する。
このリッド開閉構造100において、リッド20が電動アクチュエータ41による第一動力により全閉位置と全開位置との間で自動的に開閉動作されるときは、緊急用操作部材121の係合部124と伝達部材123の被係合部125とが互いに係合しないことで、伝達部材123の回転によって緊急用操作部材121にその緊急用操作部材121を回転させる力が付与されることは無い。
【0050】
一方、リッド20の全閉位置で操作者による外力によりワイヤ122が引っ張り操作されると、緊急用操作部材121が回転操作される。緊急用操作部材121が回転操作されると、その緊急用操作部材121の係合部124と伝達部材123の被係合部125とが互いに係合することで、その緊急用操作部材121の回転に伴って一体で伝達部材123が回転する。この伝達部材123の回転は、リッド20が全開位置に達するまで継続される。伝達部材123が緊急用操作部材121の回転に伴って一体で回転すると、操作者による外力が第二動力として電動アクチュエータ41及び回転シャフト42を介してリッド20に付与される。第二動力がリッド20に付与されると、その第二動力によりリッド20が全開位置まで開動作される。
【0051】
従って、リッド20の全閉位置でワイヤ122が操作者による外力により引っ張り操作されたときは、緊急用操作部材121の係合部124と伝達部材123の被係合部125とが互いに係合することで、その外力が緊急用操作部材121から伝達部材123→電動アクチュエータ41→回転シャフト42を介してリッド20にそのリッド20を開動作させるための第二動力として付与される。この場合、リッド20は、緊急用操作部材121による第二動力により全閉位置から全開位置まで開動作される。
【0052】
このように、リッド開閉構造100においても、電動アクチュエータ41に故障が生じたときは、ワイヤ122ひいては緊急用操作部材121への外力操作に伴う第二動力によりリッド20を開閉させることができる。このため、電動アクチュエータ41に故障が生じた緊急時にも、リッド20の開閉を確保することができるので、燃料供給や充電を実施することが可能となる。
【0053】
また、電動アクチュエータ41に故障が生じていないリッド自動開閉時は、リッド20が第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作される過程で、係合部124と被係合部125とが互いに係合しないので、緊急用操作部材121が回転せずワイヤ122が操作されることはない。このため、リッド自動開閉に伴ってワイヤ122に緩みなどが生ずるのを回避することができ、これにより、ワイヤ122の劣化を抑えることができると共に、ワイヤ122の緩みに伴う他部品との干渉を抑えるためのスペースを設けることが不要となり、駆動装置110の小型化を図ることができる。
【0054】
[第三実施形態]
第三実施形態のリッド開閉構造200は、第一実施形態のリッド開閉構造1において、駆動装置30に代えて駆動装置210を用いることにより実現される。尚、リッド開閉構造200において、第一実施形態のリッド開閉構造1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0055】
駆動装置210は、第一実施形態の駆動装置30において、第二動力付与機構50に代えて第二動力付与機構220を用いることにより実現される。すなわち、駆動装置210は、
図13、
図14、及び
図15に示す如く、動力を発生する第二動力付与機構220を有している。
【0056】
第二動力付与機構220は、緊急用操作部材221と、伝達部材223と、を有している。緊急用操作部材221は、外力により操作される操作部材である。緊急用操作部材221は、レバーなどの操作部(図示せず)を介して操作者により引っ張り操作可能なワイヤである。
【0057】
伝達部材223は、緊急用操作部材221の引っ張り操作による外力を第二動力として回転シャフト42を介してリッド20に伝達する円盤部材である。伝達部材223の外縁には、径方向外方に向けて開口する溝が形成されている。上記の緊急用操作部材221は、伝達部材223の外縁の溝に沿って嵌るように巻かれている。伝達部材223は、回転シャフト42と同軸上で軸中心Cを中心にして回転可能である。伝達部材223の軸部は、ボックス部材31のアッパボックス31bの貫通孔を介してボックス部材31内に挿入されている。伝達部材223は、軸方向一端で電動アクチュエータ41に軸嵌合されており、回転シャフト42に連結されている。伝達部材223は、電動アクチュエータ41の回転に伴って一体で回転すると共に、緊急用操作部材221の移動に伴って回転する。
【0058】
第二動力付与機構220は、また、係合部224と、係合部224に係合可能な被係合部225と、を有している。係合部224は、緊急用操作部材221に設けられている。被係合部225は、伝達部材223に設けられている。緊急用操作部材221及び伝達部材223は、係合部224と被係合部225とが所定のタイミングでのみ互いに係合し、その他のタイミングでは互いに係合しないように形成されている。
【0059】
すなわち、係合部224と被係合部225とは、リッド20が電動アクチュエータ41による第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作されるときすなわち第一動力により回転シャフト42が回転されるときは、互いに係合しない。一方、係合部224と被係合部225とは、緊急用操作部材221が外力により引っ張り操作されたときは、その外力による第二動力が電動アクチュエータ41を介してリッド20に付与されることによりそのリッド20が開閉動作するようにすなわち第二動力により回転シャフト42が回転されるように、互いに係合する。
【0060】
係合部224は、緊急用操作部材221の本体部に比べて幅広に形成された板状である。係合部224は、緊急用操作部材221の一端に設けられている。被係合部225は、上記の係合部224が周方向に移動可能に嵌る孔部である。被係合部225は、伝達部材223における緊急用操作部材221が嵌る外縁の溝を挟んだ軸方向両端面それぞれに設けられている。被係合部225は、径方向外端部付近で軸方向に貫通すると共に周方向に帯状に延びるように形成されている。被係合部225は、周方向全域のうち一部の角度範囲(例えば90°)のみに設けられている。
【0061】
係合部224は、被係合部225において周方向に移動可能に嵌っている。係合部224と被係合部225とは、係合部224が被係合部225の周方向端を形成する内面に当接することにより互いに係合する。
【0062】
緊急用操作部材221及び伝達部材223は、係合部224と被係合部225とが互いに係合しないことで相対的に回転可能な空転区間部と、係合部224と被係合部225とが互いに係合することで一体的に回転可能な同期区間部と、を有するように形成されている。この空転区間部は、リッド20が全閉位置から電動アクチュエータ41による第一動力により全開位置まで開動作する過程で、緊急用操作部材221の係合部224と伝達部材223の被係合部225とが互いに係合しないように設定されている。また、上記の同期区間部は、リッド20が全閉位置から緊急用操作部材221による第二動力により全開位置まで開動作する過程で、係合部224と被係合部225とが互いに係合するように設定されている。
【0063】
次に、
図16を参照して、リッド開閉構造200の動作について説明する。
このリッド開閉構造200において、リッド20が電動アクチュエータ41による第一動力により全閉位置と全開位置との間で自動的に開閉動作されるときは、緊急用操作部材221の係合部224と伝達部材223の被係合部225とが互いに係合しないことで、伝達部材223の回転によって緊急用操作部材221にその緊急用操作部材221を回転させる力が付与されることは無い。
【0064】
一方、リッド20の全閉位置で操作者による外力により緊急用操作部材221が引っ張り操作されると、その緊急用操作部材221の係合部224と伝達部材223の被係合部225とが互いに係合することで、その緊急用操作部材221の回転に伴って一体で伝達部材223が回転する(
図16において左回転方向)。この伝達部材223の回転は、リッド20が全開位置に達するまで継続される。伝達部材223が緊急用操作部材221の回転に伴って一体で回転すると、操作者による外力が第二動力として電動アクチュエータ41及び回転シャフト42を介してリッド20に付与される。第二動力がリッド20に付与されると、その第二動力によりリッド20が全開位置まで開動作される。
【0065】
従って、リッド20の全閉位置で緊急用操作部材221が操作者による外力により引っ張り操作されたときは、緊急用操作部材221の係合部224と伝達部材223の被係合部225とが互いに係合することで、その外力が緊急用操作部材221から伝達部材223→電動アクチュエータ41→回転シャフト42を介してリッド20にそのリッド20を開動作させるための第二動力として付与される。この場合、リッド20は、緊急用操作部材221による第二動力により全閉位置から全開位置まで開動作される。
【0066】
このように、リッド開閉構造200においても、電動アクチュエータ41に故障が生じたときは、緊急用操作部材221への外力操作に伴う第二動力によりリッド20を開閉させることができる。このため、電動アクチュエータ41に故障が生じた緊急時にも、リッド20の開閉を確保することができるので、燃料供給や充電を実施することが可能となる。
【0067】
また、電動アクチュエータ41に故障が生じていないリッド自動開閉時は、リッド20が第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作される過程で、係合部224と被係合部225とが互いに係合しないので、緊急用操作部材221が回転することはない。このため、リッド自動開閉に伴って緊急用操作部材221に緩みなどが生ずるのを回避することができ、これにより、緊急用操作部材221の劣化を抑えることができると共に、緊急用操作部材221の緩みに伴う他部品との干渉を抑えるためのスペースを設けることが不要となり、駆動装置210の小型化を図ることができる。
【0068】
[第四実施形態]
第四実施形態のリッド開閉構造300は、第一実施形態のリッド開閉構造1において、駆動装置30に代えて駆動装置310を用いることにより実現される。尚、リッド開閉構造300において、第一実施形態のリッド開閉構造1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0069】
駆動装置310は、第一実施形態の駆動装置30において、第二動力付与機構50に代えて第二動力付与機構320を用いることにより実現される。すなわち、駆動装置310は、
図17、
図18、
図19、及び
図20に示す如く、動力を発生する第二動力付与機構320を有している。
【0070】
本実施形態において、電動アクチュエータ41は、駆動装置310のボックス部材311内に収容されている。ボックス部材311は、ロアボックス311aとアッパボックス311bとにより構成されている。電動アクチュエータ41は、ロアボックス311aとアッパボックス311bとにより覆われており、ロアボックス311aとアッパボックス311bとの締結によりボックス部材311内に収容される。
【0071】
ボックス部材311には、板状のカバー部材312が取り付けられている。カバー部材312は、アッパボックス311bの軸方向外方に収容空間313を形成する部材である。
【0072】
第二動力付与機構320は、緊急用操作部材321と、ワイヤ322と、伝達部材323と、を有している。緊急用操作部材321は、外力により操作される操作部材である。緊急用操作部材321は、伝達部材323の外端部における接線方向に移動可能なプッシャ部材である。緊急用操作部材321は、収容空間313内に収容されている。緊急用操作部材321は、アッパボックス311bの軸方向端面に形成されたガイド孔311b-1とカバー部材312の軸方向端面に形成されたガイド孔312aとに移動可能に嵌っている。
【0073】
ワイヤ322は、緊急用操作部材321に外力を付与する外力付与部である。ワイヤ322の一端は、緊急用操作部材321におけるガイド孔312aから突出した突部に取り付け固定されている。緊急用操作部材321は、ワイヤ322の引っ張り操作によりガイド孔311b-1,312aに沿って移動する。ワイヤ322の他端は、操作者により引っ張り操作されるレバーなどの操作部(図示せず)に連結されている。ワイヤ322が操作者による外力により引っ張り操作されると、ワイヤ322が伝達部材323の外端部における接線方向に引かれて、その外力が緊急用操作部材321に付与されることにより、その緊急用操作部材321がガイド孔311b-1,312aに沿って伝達部材323の外端部における接線方向に移動操作される。
【0074】
伝達部材323は、緊急用操作部材321の移動操作による外力を第一動力とは異なる第二動力として回転シャフト42を介してリッド20に伝達するシャフト部材である。伝達部材323は、回転シャフト42と同軸上で軸中心Cを中心にして回転可能である。伝達部材323の軸部は、ボックス部材31のアッパボックス31bの貫通孔を介してボックス部材31内に挿入されている。伝達部材323は、軸方向一端で電動アクチュエータ41に軸嵌合されており、回転シャフト42に連結されている。伝達部材323は、電動アクチュエータ41の回転に伴って一体で回転すると共に、緊急用操作部材321の移動に伴って回転する。
【0075】
伝達部材323は、軸中心Cから径方向に延びるレバー部323aを有している。レバー部323aは、伝達部材323の本体部と一体で軸中心Cを中心にして回転可能である。上記の緊急用操作部材321は、レバー部323aの後側に配置されている。レバー部323aは、上記の如く電動アクチュエータ41の回転に伴って回転すると共に、緊急用操作部材321の移動に伴ってその緊急用操作部材321に当接されて押圧されることにより軸中心Cを中心にして回転する。
【0076】
第二動力付与機構320は、また、係合部324と、係合部324に係合可能な被係合部325と、を有している。係合部324は、緊急用操作部材321に設けられており、レバー部323aに当接する部位のことである。被係合部325は、伝達部材323に設けられており、上記のレバー部323aのことである。緊急用操作部材321及び伝達部材323は、係合部324と被係合部325とが所定のタイミングでのみ互いに係合し、その他のタイミングでは互いに係合しないように形成されている。
【0077】
すなわち、係合部324と被係合部325とは、リッド20が電動アクチュエータ41による第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作されるときすなわち第一動力により回転シャフト42が回転されるときは、互いに係合しない。一方、係合部324と被係合部325とは、緊急用操作部材321が外力により引っ張り操作されたときは、その外力による第二動力が電動アクチュエータ41を介してリッド20に付与されることによりそのリッド20が開閉動作するようにすなわち第二動力により回転シャフト42が回転されるように、互いに係合する。
【0078】
緊急用操作部材321及び伝達部材323は、係合部324と被係合部325とが互いに係合しないことで相対的に回転可能な空転区間部と、係合部324と被係合部325とが互いに係合することで一体的に回転可能な同期区間部と、を有するように形成されている。この空転区間部は、リッド20が全閉位置から電動アクチュエータ41による第一動力により全開位置まで開動作する過程で、緊急用操作部材321の係合部324と伝達部材323の被係合部325とが互いに係合しないように設定されている。また、上記の同期区間部は、リッド20が全閉位置から緊急用操作部材321による第二動力により全開位置まで開動作する過程で、係合部324と被係合部325とが互いに係合するように設定されている。
【0079】
次に、リッド開閉構造300の動作について説明する。
このリッド開閉構造300において、リッド20が電動アクチュエータ41による第一動力により全閉位置と全開位置との間で自動的に開閉動作されるときは、緊急用操作部材321の係合部324と伝達部材323の被係合部325とが互いに係合しないことで、伝達部材323の回転によって緊急用操作部材321にその緊急用操作部材321を移動させる力が付与されることは無い。
【0080】
一方、リッド20の全閉位置で操作者による外力により緊急用操作部材321が引っ張り操作されると、その緊急用操作部材321の係合部324と伝達部材323の被係合部325とが互いに係合することで、その緊急用操作部材321の移動に伴って伝達部材323が回転する。この伝達部材323の回転は、リッド20が全開位置に達するまで継続される。伝達部材323が緊急用操作部材221の移動に伴って回転すると、操作者による外力が第二動力として電動アクチュエータ41及び回転シャフト42を介してリッド20に付与される。第二動力がリッド20に付与されると、その第二動力によりリッド20が全開位置まで開動作される。
【0081】
従って、リッド20の全閉位置で緊急用操作部材321が操作者による外力により引っ張り操作されたときは、緊急用操作部材321の係合部324と伝達部材323の被係合部325とが互いに係合することで、その外力が緊急用操作部材321から伝達部材323→電動アクチュエータ41→回転シャフト42を介してリッド20にそのリッド20を開動作させるための第二動力として付与される。この場合、リッド20は、緊急用操作部材321による第二動力により全閉位置から全開位置まで開動作される。
【0082】
このように、リッド開閉構造300においても、電動アクチュエータ41に故障が生じたときは、緊急用操作部材321への外力操作に伴う第二動力によりリッド20を開閉させることができる。このため、電動アクチュエータ41に故障が生じた緊急時にも、リッド20の開閉を確保することができるので、燃料供給や充電を実施することが可能となる。
【0083】
また、電動アクチュエータ41に故障が生じていないリッド自動開閉時は、リッド20が第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作される過程で、係合部324と被係合部325とが互いに係合しないので、緊急用操作部材321が移動することはない。このため、リッド自動開閉に伴って緊急用操作部材321に緩みなどが生ずるのを回避することができ、これにより、緊急用操作部材321の劣化を抑えることができると共に、緊急用操作部材321の緩みに伴う他部品との干渉を抑えるためのスペースを設けることが不要となり、駆動装置310の小型化を図ることができる。
【0084】
[変形形態]
ところで、上記の第一乃至第四実施形態においては、第一動力付与機構40の回転シャフト42と第二動力付与機構50,120,220,320の伝達部材53,123,223,323とが、別体で形成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、回転シャフト42と伝達部材53,123,223,323とが互いに一体化されて形成されたものであってもよい。尚、
図21及び
図22には、第一実施形態における回転シャフト42と伝達部材53とが互いに一体化されて形成されたものが示されている。
【0085】
また、上記の第一乃至第四実施形態においては、第一動力付与機構40の回転シャフト42と第二動力付与機構50,120,220,320の伝達部材53,123,223,323と電動アクチュエータ41とが、別体で形成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、回転シャフト42と伝達部材53,123,223,323と電動アクチュエータ41とが互いに一体化されて形成されたものであってもよい。尚、
図23及び
図24には、第一実施形態における回転シャフト42と伝達部材53と電動アクチュエータ41とが互いに一体化されて形成されたものが示されている。
【0086】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1,100,200,300:リッド開閉構造、20:リッド、30,110,210,310:駆動装置、40:第一動力付与機構、41:電動アクチュエータ、42:回転シャフト、50,120,220,320:第二動力付与機構、51,121,221,321:緊急用操作部材、52,122,322:ワイヤ、53,123,223,323:伝達部材、54、124,224,324:係合部、55,125,225,325:被係合部。