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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111041
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201N
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166447
(22)【出願日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0006926
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヒー スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョウン ウク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒェグ スーン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ク タク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、エウン ハ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信頼性の高い小型、高容量の積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、第1方向に交互に配置される誘電体層と内部電極を含む活性部及び活性部の第1方向の両端面に配置されるカバー部及び第3方向に対向する第5及び第6面に配置されるサイドマージン部115とを含み、活性部とサイドマージン部の境界から活性部側に3μm離隔された領域までをa、活性部とサイドマージン部の境界からサイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm、mから上記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm2とするとき、誘電体層及びサイドマージン部はSiを含み、上記mのSi平均含有量は、上記aのSi平均含有量及び上記m2のSi平均含有量よりも高い。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、前記第1面から前記第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を有する本体と、
前記第5及び第6面に配置されるサイドマージン部と、
前記第3及び第4面に配置される外部電極と、を備え、
前記本体は、前記誘電体層と、前記第1方向に交互に配置される内部電極を含む活性部と、前記活性部の前記第1方向の両端面に配置されるカバー部と、を有し、
前記活性部と前記サイドマージン部の境界から前記活性部側に3μm離隔された領域までをa、前記活性部と前記サイドマージン部の境界から前記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm、前記mから前記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm2とするとき、
前記誘電体層及び前記サイドマージン部はSiを含み、前記mのSi平均含有量は、前記aのSi平均含有量及び前記m2のSi平均含有量よりも高い、積層型電子部品。
【請求項2】
前記aでの誘電体結晶粒の平均大きさをDa、前記mでの誘電体結晶粒の平均大きさをDmとするとき、Da/Dmは0.5超過1.5未満である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層及び前記サイドマージン部はAlをさらに含み、
前記mのAl平均含有量は、前記aのAl平均含有量及び前記m2のAl平均含有量よりも高い、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記mのSi含有量及びAl含有量のピーク値は、前記m2のSi含有量及びAl含有量のピーク値よりも高い、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記mでSi含有量がピーク値を有する地点と、前記Al含有量がピーク値を有する地点との距離の差は0.3μm以下である、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記mのSi平均含有量は、BaTiO100モルに対し2モル以上7モル以下である、請求項4または5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記mのAl平均含有量は、BaTiO100モルに対し1.5モル以上3モル以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層及び前記サイドマージン部はMg及びDyのうちの一つ以上をさらに含む、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層は、第1セラミックグリーンシートを第1方向に積層して形成され、
前記サイドマージン部は第2セラミックグリーンシートを第3方向に積層して形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第1セラミックグリーンシートのBaTiO100モルに対するSi及びAl含有量を、それぞれC1a及びC1bとし、前記第2セラミックグリーンシートのBaTiO100モルに対するSi及びAl含有量を、それぞれC2a及びC2bとするとき、0.4<C1a/C2a<1及び0.5<C1b/C2b<2を満たす、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記外部電極は、前記第3面に配置される第1外部電極及び前記第4面に配置される第2外部電極を含み、前記内部電極は、前記第1外部電極と接触する第1内部電極及び前記第2外部電極と接触する第2内部電極を含み、
前記第1及び第2内部電極の前記第3方向の両端部は、前記サイドマージン部と接触する、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
複数の誘電体層を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、前記第1面から前記第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を有する本体と、
前記第5及び第6面に配置されるサイドマージン部と、
前記第3及び第4面に配置される外部電極と、を備え、
前記本体は、前記誘電体層と、前記第1方向に交互に配置される内部電極を含む活性部と、前記活性部の前記第1方向の両端面に配置されるカバー部と、を有し、
前記活性部と前記サイドマージン部の境界から前記活性部側に3μm離隔された領域までをa、前記aでの誘電体結晶粒の平均大きさをDa、前記活性部と前記サイドマージン部の境界から前記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm、前記mでの誘電体結晶粒の平均大きさをDmとするとき、Da/Dmは0.5超過1.5未満である、積層型電子部品。
【請求項13】
前記Da/Dmは0.88以上1.38以下である、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記mから前記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm2とするとき、
前記誘電体層及び前記サイドマージン部はSiを含み、前記mのSi平均含有量は、前記aのSi平均含有量及び前記m2のSi平均含有量よりも高い、請求項12または13に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品のうちの一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシタは、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器などの各種電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増加しつつある。
【0004】
また、最近では自動車用の電装部品に対する業界の関心が高まり、積層セラミックキャパシタにも自動車またはインフォテイメントシステムに使用されるために、高信頼性及び高強度特性が要求されている。
【0005】
積層セラミックキャパシタの小型及び高容量化のためには、電極有効面積の最大化(容量の実現に必要な有効体積分率の増加)が求められる。
【0006】
上記のように小型及び高容量の積層セラミックキャパシタを実現するために、積層セラミックキャパシタを製造するにあたり、内部電極が本体の幅方向に露出するようにすることで、マージンのない設計によって内部電極の幅方向の面積を最大化するとともに、かかるチップの製作後、焼成前の段階で、チップの幅方向の電極露出面にサイドマージン部を別途に付着して完成する方法が適用されている。
【0007】
サイドマージン部を別途に付着する方法により、キャパシタの単位体積当たりの容量は向上させることができるが、サイドマージン部の厚さの減少などにより耐湿信頼性が低下するおそれがあるという問題点があった。また、サイドマージン部を別途に付着する方法を使用する場合、一般的にサイドマージン部の誘電体結晶粒の平均大きさが活性部の誘電体結晶粒の大きさよりも増加するようになり、これに伴い、活性部とサイドマージン部の誘電体結晶粒の大きさの偏差によって信頼性が低下するという問題点が発生するおそれがあった。
【0008】
したがって、サイドマージン部の粒成長を抑制して、サイドマージン部と活性部との誘電体層の誘電体結晶粒の大きさの偏差を減らすことで、信頼性を向上させることができる方案が要求されている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明のいくつかの目的のうちの一つは、積層型電子部品の信頼性を向上させることである。
【0010】
本発明のいくつかの目的のうちの一つは、活性部とサイドマージン部の誘電体結晶粒の大きさの偏差を減らすことである。
【0011】
本発明のいくつかの目的のうちの一つは、信頼性の高い小型、高容量の積層型電子部品を提供することである。
【0012】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、複数の誘電体層を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、上記第5及び第6面に配置されるサイドマージン部と、上記第3及び第4面に配置される外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層と、上記第1方向に交互に配置される内部電極を含む活性部及び上記活性部の上記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含み、上記活性部とサイドマージン部の境界から上記活性部側に3μm離隔された領域までをa、上記活性部とサイドマージン部の境界から上記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm、上記mから上記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm2とするとき、上記誘電体層及びサイドマージン部はSiを含み、上記mのSi平均含有量は、上記aのSi平均含有量及び上記m2のSi平均含有量よりも高い。
【0014】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、複数の誘電体層を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、上記第5及び第6面に配置されるサイドマージン部と、上記第3及び第4面に配置される外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層と、上記第1方向に交互に配置される内部電極を含む活性部及び上記活性部の上記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含み、上記活性部とサイドマージン部の境界から上記活性部側に3μm離隔された領域までをa、上記aでの誘電体結晶粒の平均大きさをDa、上記活性部とサイドマージン部の境界から上記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm、上記mでの誘電体結晶粒の平均大きさをDmとするとき、Da/Dmは0.5超過1.5未満である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のいくつかの効果のうちの一つは、位置別のSi含有量を制御することにより積層型電子部品の信頼性を向上させたものである。
【0016】
本発明のいくつかの効果のうちの一つは、活性部とサイドマージン部の誘電体結晶粒の大きさの偏差を減らしたものである。
【0017】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものである。
図2図1の積層型電子部品において外部電極を除いて示す斜視図である。
図3図1の積層型電子部品において外部電極及びサイドマージン部を除いて示す斜視図である。
図4図1のI-I'線に沿った断面図である。
図5図1のII-II'線に沿った断面図である。
図6図5のK1領域を拡大した図面である。
図7】試験番号15に対する活性部とマージン部の界面付近をTEM-EDSを用いてラインプロファイル(line profile)した結果である。
図8】試験番号5に対する活性部とマージン部の界面付近をTEM-EDSを用いてラインプロファイル(line profile)した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0020】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のため任意に示したものであって、本発明が必ずしも図示されたものに限定されるものではない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一の構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0021】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0022】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、図2は、図1の積層型電子部品において外部電極を除いて示す斜視図であり、図3は、図1の積層型電子部品において外部電極及びサイドマージン部を除いて示す斜視図であり、図4は、図1のI-I'線に沿った断面図であり、図5は、図1のII-II'線に沿った断面図であり、図6は、図5のK1領域を拡大した図面である。
【0023】
以下、図1図6を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。
【0024】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、複数の誘電体層111を含み、第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面3、4、上記第1から第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を含む本体110と、上記第5及び第6面に配置されるサイドマージン部114、115と、上記第3及び第4面に配置される外部電極131、132と、を含み、上記本体は、上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む活性部Ac及び上記活性部の上記第1方向上部及び下部に配置されるカバー部112、113を含み、上記活性部とサイドマージン部の境界から上記活性部側に3μm離隔された領域までをa、上記活性部とサイドマージン部の境界から上記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm、上記mから上記サイドマージン部の外側に3μm離隔された領域までをm2とするとき、上記誘電体層及びサイドマージン部はSiを含み、上記mのSi平均含有量は、上記aのSi平均含有量及び上記m2のSi平均含有量よりも高い。
【0025】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0026】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図面に示すように、本体110は六面体形状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれるセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0027】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、且つ第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0028】
本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末は、一例として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCa)TiO、Ba(Ti1-yCa)O、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)OまたはBa(Ti1-yZr)Oなどが挙げられることができる。
【0030】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて、様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0031】
一方、誘電体層111の厚さtdは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために誘電体層111の厚さtdは、0.6μm以下であることができる。ここで、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0032】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される活性部Acと、上記活性部Acの第1方向上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0033】
また、上記活性部Acはキャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成することができる。
【0034】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を活性部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0035】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0036】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0037】
一方、カバー部112、113の厚さは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するためにカバー部112、113の厚さtpは20μm以下であることができる。
【0038】
また、上記活性部Acの側面には、サイドマージン部114、115が配置されることができる。
【0039】
サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114と第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。すなわち、サイドマージン部114、115は、本体110の第3方向の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0040】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0041】
サイドマージン部114、115は、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を活性部Acの第3方向の両端面(end surfaces)に第3方向に積層して形成することができる。
【0042】
図6を参照すると、活性部Acとサイドマージン部114、115の境界から上記活性部Ac側に3μm離隔された領域までをa、上記活性部Acとサイドマージン部114、115の境界から上記サイドマージン部114、115の外側に3μm離隔された領域までをm、上記mから上記サイドマージン部114、115の外側に3μm離隔された領域までをm2とするとき、上記誘電体層111及びサイドマージン部114、115はSiを含み、上記mのSi平均含有量は、上記aのSi平均含有量及び上記m2のSi平均含有量よりも高くなることができる。一方、図6は、第2サイドマージン部115を図示しているが、第2サイドマージン部115に限定されるものではなく、第1サイドマージン部114にも同様に適用することができる。
【0043】
小型及び高容量の積層セラミックキャパシタを実現するために、積層セラミックキャパシタを製造するにあたり、内部電極が本体の幅方向に露出するようにすることで、マージンのない設計によって内部電極の幅方向の面積を最大化するとともに、かかるチップの製作後、焼成前の段階で、チップの幅方向の電極露出面にサイドマージン部を別途に付着して完成する方法が適用されている。サイドマージン部を別途に付着する方法を使用する場合、一般的にサイドマージン部の誘電体結晶粒の平均大きさが活性部の誘電体結晶粒の大きさよりも増加するようになり、これに伴い、活性部とサイドマージン部の誘電体結晶粒の大きさの偏差によって信頼性が低下するという問題点が発生するおそれがあった。
【0044】
サイドマージン部を形成するためのセラミックグリーンシートと誘電体層を形成するためのセラミックグリーンシートが同一組成を有する場合、一般的に積層及び焼成過程を経た後にm2でのSi平均含有量が最も高く表れ、mでの誘電体結晶粒が過度に成長し、結晶粒の大きさが大きくなる。
【0045】
一方、本発明の一実施形態によると、mのSi平均含有量をaのSi平均含有量及びm2のSi平均含有量よりも高く制御することで、mが低温緻密化に有利な組成を有することになり、信頼性を向上させることができる。Siは、焼成中の液状化によって低温緻密化に寄与する元素である。したがって、mのSi含有量をa及びm2より相対的に高く制御することで、mが低温緻密化に有利な組成を有することにより、mの誘電体結晶粒の大きさが大きくなることを抑制して耐電圧の破壊が主に発生するおそれがあるmでの緻密度を向上させ、活性部の誘電体結晶粒の大きさとの偏差を減らして信頼性を向上させることができる。
【0046】
一実施形態において、上記aでの誘電体結晶粒の平均大きさをDa、上記mでの誘電体結晶粒の平均大きさをDmとするとき、Da/Dmは0.5超過1.5未満であることができる。
【0047】
Da/Dmが0.5以下または1.5以上である場合には、活性部Acとサイドマージン部114、115の誘電体結晶粒の大きさの偏差が大きくなり、信頼性が低下するおそれがある。したがって、Da/Dmは0.5超過1.5未満であることが好ましく、Da/Dmは0.88以上1.38以下であることがより好ましい。
【0048】
このとき、位置別の誘電体の平均結晶粒の大きさ(Da、Dm)は、第1及び第3方向に切断した断面(cross-section)で測定されたものであることができる。また、第2方向の中央で第1及び第3方向に切断した断面で測定されたものであることができる。
【0049】
一実施形態において、上記誘電体層及びサイドマージン部はAlをさらに含み、上記mのAl平均含有量は、上記aのAl平均含有量及び上記m2のAl平均含有量よりも高くなることができる。
【0050】
AlもSiと同様に、焼成中の液状化によって低温緻密化に寄与する元素である。したがって、mのAl含有量をa及びm2より相対的に高く制御することで、mが低温緻密化に有利な組成を有することにより、mの誘電体結晶粒の大きさが大きくなることを抑制し、耐電圧の破壊が主に発生するおそれがあるmでの緻密度を向上させ、活性部の誘電体結晶粒の大きさとの偏差を減らして信頼性を向上させることができる。
【0051】
一実施形態において、mのSi含有量及びAl含有量のピーク値は、m2のSi含有量及びAl含有量のピーク値よりも高くなることができる。
【0052】
サイドマージン部を形成するためのセラミックグリーンシートと誘電体層を形成するためのセラミックグリーンシートが同一組成を有する場合、一般的にm2でSi含有量及びAl含有量がピーク値を有するようになる。
【0053】
一方、本発明の一実施形態によると、mでSi含有量及びAl含有量がピーク値を有することができる。但し、m2でもSi含有量及びAl含有量がピーク値を有することができるが、mのSi含有量及びAl含有量のピーク値がm2のSi含有量及びAl含有量のピーク値よりも高くなることができる。これにより、活性部Acとサイドマージン部114、115の誘電体結晶粒の大きさの偏差を小さくして信頼性を向上させることができる。
【0054】
一実施形態において、mでSi含有量がピーク値を有する地点と、上記Al含有量がピーク値を有する地点との距離の差は0.3μm以下であることができる。すなわち、mでのAl含有量は、Si含有量と同一分布挙動を示すことができる。このとき、mでSi含有量及びAl含有量は、同一地点でピーク値を有することができる。
【0055】
一方、mでのSi含有量及びAl含有量の具体的な数値範囲は、製品規格、製造条件など、様々な条件などを考慮して具体的に決定することができるため、特に限定する必要はない。
【0056】
制限されていない一例として、mのSi平均含有量は、BaTiO100モルに対し2モル以上7モル以下であることができ、mのAl平均含有量は、BaTiO100モルに対し1.5モル以上3モル以下であることができる。
【0057】
一実施形態において、誘電体層111及びサイドマージン部114、115は、Mg及びDyのうちの一つ以上をさらに含むことができる。
【0058】
一実施形態において、誘電体層111は、第1セラミックグリーンシートを第1方向に積層して形成することができ、サイドマージン部114、115は、第2セラミックグリーンシートを活性部Acの第3方向の両端面(end surfaces)に第3方向に積層して形成することができる。
【0059】
このとき、上記第1セラミックグリーンシートのBaTiO100モルに対するSi及びAl含有量を、それぞれC1a及びC1bとし、上記第2セラミックグリーンシートのBaTiO100モルに対するSi及びAl含有量を、それぞれC2a及びC2bとするとき、0.4<C1a/C2a<1及び0.5<C1b/C2b<2を満たすことができる。これにより、積層及び焼成後、mのSi平均含有量をaのSi平均含有量及びm2のSi平均含有量よりも高く確保することができ、mのAl平均含有量をaのAl平均含有量及びm2のAl平均含有量よりも高く確保することができる。
【0060】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に配置されることができる。
【0061】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0062】
図3を参照すると、第1内部電極121は、第4面4と離隔され、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は、第3面3と離隔され、第4面4を介して露出することができる。また、第1内部電極121は、第3、第5及び第6面3、5、6を介して露出することができ、第2内部電極122は、第4、第5及び第6面4、5、6を介して露出することができる。
【0063】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0064】
内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうちの一つ以上を含むことができる。
【0065】
一方、内部電極121、122の厚さteは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さteは、0.6μm以下であってもよい。ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0066】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置される。
【0067】
外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122と、それぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0068】
図1を参照すると、外部電極131、132は、サイドマージン部114、115の第2方向の両端面を覆うように配置されることができる。
【0069】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形や他の目的によって変わることができる。
【0070】
一実施形態において、外部電極131、132は、本体110の第3面に配置される第1外部電極131及び本体110の第4面に配置される第2外部電極131を含み、内部電極121、122は、第1外部電極131と接触する第1内部電極121及び第2外部電極132と接触する第2内部電極122を含み、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端部は、サイドマージン部114、115と接触することができる。
【0071】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであれば、いかなる物質を用いて形成することができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0072】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0073】
電極層131a、132aについての具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0074】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成するか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成するものであることができる。
【0075】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属としては電気導電性に優れた材料を用いることができるが、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びこれらの合金のうちの一つ以上であることができる。
【0076】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定せず、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のうちの一つ以上を含むめっき層であることができ、複数層で形成されることができる。
【0077】
めっき層131b、132bについての具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0078】
積層型電子部品100のサイズは、特に限定する必要はない。
【0079】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があるため、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において本発明に係る信頼性向上の効果がより顕著になることができる。
【0080】
(実施例)
活性用セラミックグリーンシートとサイドマージン部用セラミックグリーンシートのSi含有量及びAl含有量を調節して、サンプルチップを製作した。
【0081】
試験番号1~6の場合、同一組成を有する活性用セラミックグリーンシートとサイドマージン部用セラミックグリーンシートを用いた。試験番号7~31の場合には、サイドマージン部用セラミックグリーンシートのSi含有量に対する活性用セラミックグリーンシートのSi含有量が0.4超過1.0未満を満たし、サイドマージン部用セラミックグリーンシートのAl含有量に対する活性用セラミックグリーンシートのAl含有量が0.5超過2未満を満たす範囲内でSi含有量及びAl含有量を調節した。
【0082】
誘電体の平均結晶粒の大きさは、第2方向の中央で第1及び第3方向に切断した断面で、第1方向の中央の活性部とマージン部の境界付近をZEISS社のSEMを利用して、50k倍率でスキャンしたイメージから測定した。具体的に、上記スキャンしたイメージを粒径測定ソフトウェアのZootosを利用して、各誘電体結晶粒のペレット径(Feret diameter)を測定し、各結晶粒の大きさを求めた。Daは活性部Acとサイドマージン部115の境界から活性部Ac側に3μm離隔された領域までの誘電体結晶粒の平均値であり、Dmは活性部Acとサイドマージン部115の境界からサイドマージン部115の外側に3μm離隔された領域までの誘電体結晶粒の平均値を記載したものである。
【0083】
信頼性は加速寿命評価を行い、各試験番号当たり40個のサンプルチップを用意した後、基準電圧(Vr)の1.5倍を50時間印加して絶縁抵抗が10^5Ω以下となったサンプルを不良と判断し、すべてのサンプルチップに不良が発生した場合をX、不良が発生したサンプルチップが25個以上40個未満の場合を△、不良が発生したサンプルチップが10個以上25個未満の場合を○、不良が発生したサンプルチップが10個未満の場合を◎と示した。
【0084】
【表1】
【0085】
試験番号1~6の場合、Dm/Daが1.5以上と、すべてのサンプルチップが不良と判断され、信頼性が劣位することが確認できる。
【0086】
一方、試験番号7~31の場合、Dm/Daが本発明で提示した0.5超過1.5未満を満たし、信頼性に優れていた。
【0087】
一方、サンプルチップの第2方向の中央で第1及び第3方向に切断した断面(cross-section)でTEM-EDSのラインプロファイルによりSi及びAl含有量を分析した結果、試験番号1~6は、m2でのSi及びAl含有量が最も高いと測定され、試験番号7~31は、mでのSi及びAl含有量が最も高いと測定された。したがって、mでのSi含有量がaのSi含有量及びm2のSi含有量よりも高い場合、Dm/Daが0.5超過1.5未満を満たすことができることが確認できる。
【0088】
図7は、試験番号15に対する活性部とマージン部の界面付近をTEM-EDSを用いてラインプロファイル(line profile)した結果であり、図8は、試験番号5に対する活性部とマージン部の界面付近をTEM-EDSを用いてラインプロファイル(line profile)した結果である。図6を参照すると、図7及び図8は各サンプルチップの本体の第2方向の中央で第1及び第3方向に切断した断面において、第1方向の中央の活性部とマージン部の界面付近をL1に沿ってラインプロファイルにより分析したものである。図7及び図8において、Y軸は絶対値ではなく、Intensity(arbitrary unit)であり、各元素別に測定されたIntensityを容易に比較できるようにY軸方向に移動(shift)させて並べたものである。
【0089】
図7の場合、m領域でSi及びAlがピーク値を有し、m領域がm2領域よりSi及びAl含有量が高いことが確認できる。一方、図8の場合、m2領域でSi及びAlがピーク値を有し、m領域がm2領域よりSi及びAl含有量が低いことが確認できる。
【0090】
下記表2は図7及び図8を分析し、a及びmでの各元素の含有量を記載したものである。下記表2において各元素の含有量は、aまたはmでのBaTiO100モルに対する各元素の平均含有量を記載したものである。
【0091】
【表2】
【0092】
試験番号5の場合、mのSi平均含有量がaのSi平均含有量と類似したレベルである。一方、試験番号15の場合、mのSi平均含有量がaのSi平均含有量の2倍以上と高く、mのSi平均含有量がBaTiO100モルに対し3.7モルであることが確認できる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0094】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 サイドマージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8