(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111063
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】非対称スキューロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2706 20220101AFI20220722BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20220722BHJP
【FI】
H02K1/2706
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197553
(22)【出願日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】17/151,823
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウマン ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズリー ブレント
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA14
5H622PP10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】騒音、振動、性能目標を達成するための非対称スキューロータ、及び、そのようなロータを含む電気モータを提供する。
【解決手段】非対称スキューロータ及びそれを組み込んだ電気モータであって、ロータは、ロータの一部を取り囲むように配置されたステータ内で回転するように構成されている。ステータとロータは、中心線に沿って整列されている。各ロータは非対称形状を含み、その結果、動作中、各ロータ上の非対称形状が中心線に対して垂直に互いに対向して位置合わせされたときの動的バランス結果と、各ロータ上の非対称形状が中心線に対して平行に互いに対向して位置合わせされたときの静的バランス結果とが得られる。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機構を有し、該回転機構が、複数のロータの一部を取り囲むステータを備え、ステータ及びロータが中心線(x)に沿って整列されるモータであって、
各ロータが、動作中に、
各ロータ上の非対称形状が中心線(x)に垂直に互いに対向して整列したときに動的バランスが生じ、
各ロータ上の非対称形状が中心線(x)に平行に互いに対向して整列したときに静的バランスが生じるような非対称形状を含む、モータ。
【請求項2】
交流モータである、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記交流モータが、永久磁石同期モータである、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記永久磁石同期モータが、前記ロータの表面上に配置された、又は前記ロータの本体内に内部に配置された複数の永久磁石を含む、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記永久磁石のそれぞれは、ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)、サマリウム-コバルト(Sm-Co)、アルミニウム-ニッケル-コバルト(アルニコ)、又はフェライト(バリウム及びストロンチウム)として独立して選択される、請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
各ロータが、非対称形状に加えて1つ以上の対称形状を含む積層スタンピングを含む、請求項1に記載のモータ。
【請求項7】
前記1つ以上の対称形状及び非対称形状が、前記ロータに形成された開口部である、請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記開口部が、円形、卵形、正方形、長方形、三角形、菱形、台形、六角形、八角形、又は平行四辺形であるように成形される、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記非対称形状の開口部が、前記対称形状の開口部とは異なる形状である、請求項7に記載のモータ。
【請求項10】
前記非対称形状の開口部が、前記対称形状の開口部の一部を表す、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
モータで使用するための複数のロータであり、該ロータは、ロータの一部を取り囲むように配置されたステータ内で回転するように構成され、ステータ及びロータが中心線(x)に沿って整列されるロータであって、
各ロータが、動作中に、各ロータ上の非対称形状が中心線(x)に垂直に互いに対向して整列したときに動的バランスが生じ、
各ロータ上の非対称形状が中心線(x)に平行に互いに対向して整列したときに静的バランスが生じるような非対称形状を含む、ロータ。
【請求項12】
交流モータであることを特徴とする、請求項11に記載のロータ。
【請求項13】
前記交流モータが永久磁石同期モータであることを特徴とする、請求項12に記載のロータ。
【請求項14】
前記永久磁石同期モータが、前記ロータの表面上に配置された、又は前記ロータの本体内に内部に配置された複数の永久磁石を含む、請求項13に記載のロータ。
【請求項15】
前記永久磁石のそれぞれが、ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)、サマリウム-コバルト(Sm-Co)、アルミニウム-ニッケル-コバルト(アルニコ)、又はフェライト(バリウム及びストロンチウム)として独立して選択される、請求項14に記載のロータ。
【請求項16】
各ロータが、非対称形状に加えて1つ以上の対称形状を有する積層スタンピングを含む、請求項11に記載のロータ。
【請求項17】
前記1つ以上の対称形状及び非対称形状が、前記ロータに形成された開口部である、請求項16に記載のロータ。
【請求項18】
前記開口部が、円形、卵形、正方形、長方形、三角形、菱形、台形、六角形、八角形、又は平行四辺形であるように成形される、請求項17に記載のロータ。
【請求項19】
前記非対称形状の開口部が、前記対称形状の開口部とは異なる形状である、請求項17に記載のロータ。
【請求項20】
前記非対称形状の開口部が、前記対称形状の開口部の一部を表す、請求項19に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、永久磁石同期モータ(PMSM)のような電気モータに使用するように構成された非対称スキューロータに関する。
【背景技術】
【0002】
本章の記述は、単に本開示に関する背景情報を提供するのみであって、従来技術を構成するものではない。
【0003】
高速輸送のような多くの用途における電気モータの使用は、改良されたインバータの開発及びベクトル制御方法論の使用のようなパワーエレクトロニクスの進化により、直流(DC)駆動から交流(AC)駆動に移行した。DC駆動と比較して、AC駆動は、より低いメンテナンス要件と共に、より高い信頼性、高効率、及び優れた電力密度を提供する。AC駆動は、通常、誘導モータ(IM)及び永久磁石同期モータ(PMSM)に関連する。現在の傾向は、この技術がより高い製造コスト及び材料コストにも結びついているにもかかわらず、高効率及び高出力密度の可能性に基づいて、PMSM技術の優先使用に移行しているようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PMSMは、界磁励磁が永久磁石によって与えられる交流同期電動機である。PMSMは、半径方向又は接線方向の磁化を示す、このような磁石を用いて、ロータの表面又は内部に位置する磁石配置を含むことができる。表面実装された磁石を有するPMSMの性能は、ロータの磁束とステータ電流との間の相互作用によってトルクが完全に発生する円筒形ロータを有する同期モータに類似している。PMSMは多くの利点を提供するが、この技術はまた、磁石によって提供される一定のフラックス及び希土類磁石に関連する高いコストのような多くの欠点を示す。さらに、PMSMに関連するロータは、コギングトルクを示すことが知られており、同様に、動作中に高調波及び振動を発生させ、その結果、振動を減少させるために高調波及び軸方向カウンタウェイトを減少させるために使用ロータのスキューイングを必要とし、これにより、サイズ(例えば、端部固定されたカウンタウェイトの使用のための長さ)及びモータアセンブリに関連するコストが増加する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
さらなる適用可能領域は、本明細書の記載から明らかになるであろう。また、記載及び具体例は例示のみを目的としたものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0006】
本開示は、一般に、電気モータ、及びそこから形成される電気モータに使用するための複数の非対称スキューロータを提供する。ロータは、ステータ及びロータが中心線(x)に沿って整列されている状態で、ロータの一部を取り囲むように配置されたステータ内で回転するように構成されている。各ロータは非対称形状を含み、各ロータ上の非対称形状が中心線(x)に垂直に互いに対向して位置合わせされた場合の動作中の動的バランスの結果と、各ロータ上の非対称形状が中心線(x)に平行に互いに対向して位置合わせされた場合の静的バランスの結果となる。
【0007】
本開示の別の態様によれば、非対称スキューロータは、これに限定されないが、永久磁石同期モータ(PMSM)を含む電気モータに組み込まれる。ステータによって少なくとも部分的に囲まれている回転機構を表すロータである。
【0008】
本開示を十分に理解するために、添付の図面を参照して、例として与えられる、本開示の様々な形態をここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】中心線(x)に沿って見たPMSM内の従来のステータ及びロータを示す概略図である。
【
図1B】中心線(x)に沿って見たPMSM内の別の従来のステータ及びロータを示す概略図である。
【
図2A】動的バランスを示す中心線(x)に沿って見た、本開示の教示による、ステータ及び非対称スキューロータを示す概略図である。
【
図2B】更に動的バランスを示す
図2Aの非対称スキューロータを示す斜視図である。
【
図3A】静的バランスを示す中心線(x)に沿って見た、本開示の教示によるステータ及び非対称スキューロータの概略図である。
【
図3B】静的バランスを更に示す
図3Aの非対称スキューロータを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願明細書に記載の図面は、説明目的のみであり、いかなる形であれ本開示の範囲を限定する目的ではない。明細書全体を通して、対応する参照番号は、同様の又は対応する部分及び特徴を示すことを理解されたい。
【0011】
本明細書に記載される様々な実施形態は、電気モータ内の回転機構として使用するように構成された非対称スキューロータに向けて焦点を合わせている。以下の記載は、本質的には例示のみであり、本開示、アプリケーション又は用途を制限することは目的としない。例えば、本明細書に含まれる教示に従って作製され、使用される非対称ロータ要素は、その構造及び使用をより完全に示すために、永久磁石同期モータ(PMSM)と併せて本開示全体にわたって説明される。PMSM、サーボモータなどの電気モータを必要とする任意の機械、産業機器、又は他の装置へのこのようなロータ要素の組込及び使用は、本開示の範囲を超えないことが意図されるが、これらに限定されない。
【0012】
本開示は、一般に、電気モータにおける回転機構の一部として使用するための非対称スキューロータ、及び、そのようなロータを含む電気モータを提供する。騒音、振動、性能目標を達成するためには、モータの回転機構のバランスをとらなければならない。上述し、本明細書でさらに定義するような非対称スキューロータの使用は、設計に外部カウンタウェイトを追加する必要なく、これらの目標を達成し、それにより全体コスト及び軸方向パッケージスペースを低減する。望ましい場合には、補助的なカウンタウェイトを使用することもできるが、そのようなカウンタウェイトのサイズは最小限に抑えることができる。
【0013】
図1A及び
図1Bを参照すると、交流(AC)電気モータを含むがこれに限定されない従来の電気モータ1a,1bは、一般に、ロータ2及びステータ3を含む。交流電動機が永久磁石同期電動機(PMSM)の場合、ロータは複数の永久磁石4を含み、ステータはコイル巻線5を含む。PMSMモータは、表面永久磁石モータ又は内部永久磁石モータ(IPM)の2つの主なタイプに分離できる。具体的には、永久磁石4は、
図1Aに示すように、ロータ2の表面に貼り付けたり、
図1Bに示すように、ロータ2の内部に配置したりすることにより配置することができる。これらのモータタイプはいずれも、ロータに固着又は内部に固着された永久磁石によって磁束を発生する。磁石の表面取付は、アセンブリの機械的強度を弱め、それによって、モータが動作することができる、安全な機械的速度を制限する場合がある。一方、永久磁石4がロータ2に埋め込まれるので、モータは非常に機械的に健全であり、非常に高速での動作に適している。
【0014】
更に
図1A及び
図1Bを参照すると、磁石4は、複数の位置に配置されてもよいが、このような配置は、中心線(x)を中心とする対称パターンが結果として生じるように行われる。各磁石は、大きなブロックとして挿入されてもよく、中心に近づくにつれて互い違いに配置されてもよい。別の方法は、それらをスポークパターンに埋め込ませることである。磁石4の数は、4から約20までの範囲であってもよく、代替的に、12以下であってもよい。あるいは、磁石4の数は、偶数、例えば4(
図1A参照)、6(
図1B参照)、8、10、又は12によって表されるが、これらに限定されない。永久磁石は、ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)、サマリウム-コバルト(Sm-Co)、アルミニウム-ニッケル-コバルト(アルニコ)、又はフェライト(バリウム及びストロンチウム)を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0015】
永久磁石同期モータ(PMSM)1a,1bのステータ3にはステータ巻線5が、永久磁石4が示す磁界を反発させる回転磁界を発生させ、これによりロータ2の回転を作り出す。誘導電動機のような他の電動機に対するPMSMの効率は、ロータ磁界を生成するために追加の電流を誘導する必要がないため、ロータ磁石が独立かつ永久磁界を生成することによるところが大きい。
【0016】
次に、
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bを参照すると、本開示の1態様による永久磁石同期モータ(PMSM)1cは、ロータ2の一部を取り囲むように配置されたステータ3内で回転するように構成された複数のロータ2であって、ステータ3及びロータ2は、中心線(x)に沿って整列されている。各ロータ2は、非対称形状7を含み、その結果、動作中の動的バランス(
図2A及び
図2Bに示す)は、各ロータ2上の非対称形状7が、中心線(x)に対して互いに直交するように互いに対向して整列され、静的バランス(
図3A及び
図3Bに示す)は、各ロータ2上の非対称形状7が中心線(x)に対して互いに平行に互いに対向して整列されたときに生じる。
【0017】
非対称スキューロータ2は、積層スタンピングを備えることができる。この積層スタンピングは、非対称形状7に加えて、1つ以上の対称形状8を含むことができる。コバルト-鉄合金、ニッケル-鉄合金、ケイ素又は電気鋼、鉄-ホウ素-ケイ素合金、及び積層鋼を含むが、これらに限定されない、モータアセンブリのための積層スタンピングに使用するために知られている任意のタイプの材料を利用することができる。さらに
図2A、
図2B、
図3A、及び
図3Bを参照すると、対称形状8及び非対称形状7は、ロータ2内に形成された開口部6であってもよい。これらの開口部6の形状は、任意のタイプの幾何学的形状を含み得る。可能な幾何学的図形の例としては、円形、卵形、正方形、長方形、三角形、菱形、台形、六角形、八角形、又は平行四辺形が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、開口部6の形状は、円形、長方形、菱形、三角形、又は台形である。このような形状がロータの磁気回路に影響を与えないように最適化されていれば、開口部6には任意の形状を使用することができる。非対称形状7の開口部6は、対称形状8の開口部6の一部となるように構成することができる。例えば、対称形状8の開口部6が円である場合、非対称形状7の開口部6は半円であってもよい。
【0018】
ロータ2内の開口部6の数は、4~約20個、あるいは12個以下の範囲とすることができる。あるいは、開口部6の数は、偶数、例えば、4、6(
図2A、
図2B、
図3A、
図3B参照)、8、10、又は12によって表されるが、これらに限定されない。開口部6の数は、ロータの全体質量を低減するために、ロータに組み込まれる磁石又は磁極の数を反映することができる。ロータの他の特徴、例えば、永久磁石の種類及び数、積層スタンピングの材料組成、並びにステータ及びステータ巻線の設計及び構成は、従来のモータに見られるものと類似又は同一であってもよい。
【0019】
本開示の別の態様によれば、PMSMなどの電動機は、上記で説明され、本明細書でさらに定義されるロータを使用して形成される。この電気モータは、ロータを少なくとも部分的に取り囲むように配置されたステータを含む。ステータ及びロータは、それらが中心線(x)に沿って整列するように配置される。
【0020】
本明細書内では、明確かつ簡潔な明細書を書くことを可能にする方法で実施形態を説明したが、実施形態は、本発明から離れることなく、様々に組み合わされ、又は分離され得ることが意図され、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載される全ての好ましい特徴は、本明細書に記載される本発明の全ての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0021】
本発明の様々な形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。開示された厳密な形態は網羅的なものではなく、本発明はこれに限定されるものではない。上記の教示に照らして、多数の修正又は変形が可能である。考察された形態は、本発明の原理の最良の例示及びその実用的用途を提供するために選択され、記載され、それによって、当業者が、意図される特定の使用に適するように、種々の形態及び種々の改変で本発明を利用することを可能にした。そのような変更及びバリエーションは全て、それらが公正、法的、かつ公平に権利を有する範囲に従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内にある。