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特開2022-111083ポリエステル樹脂組成物及び樹脂粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111083
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物及び樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20220722BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20220722BHJP
   C08G 63/668 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C08L67/02
C08J3/16 CFD
C08G63/668
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002839
(22)【出願日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2021006487
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 真一
(72)【発明者】
【氏名】田畠 雄太
(72)【発明者】
【氏名】三好 陽太
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB13
4F070AE04
4F070AE17
4F070DA38
4F070DC07
4J002CF101
4J002FA081
4J002FD090
4J002FD200
4J002FD310
4J002GH00
4J002GQ00
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD02
4J029AE18
4J029BA03
4J029BB13A
4J029BF26
4J029CA06
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029FC36
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB131
4J029JF221
4J029JF321
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE03
4J029KE05
4J029KH03
(57)【要約】
【課題】乳化安定性が良化し粒子化した際の粒径のバラつきが軽減され、他の樹脂との相溶性が良化であるポリエステル樹脂組成物、及び粒度分布と低温定着性に優れた樹脂粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合して得られるポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂組成物であり、アルコール成分(x)がビスフェノールAのAO付加物(x1)を含有し、(x1)の含有量が90~100モル%であり、かつビスフェノールAのPO付加物(x11)の(x1)における含有量が80~100モル%であり、カルボン酸成分(y)が芳香族ジカルボン酸(y1)を含有し、(y1)の含有量が80~100モル%であり、かつ(y1)中のテレフタル酸とイソフタル酸の比が30/70~70/30であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合して得られるポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂組成物であり、
アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有し、(x1)の(x)における含有量が(x)の合計モル数を基準として90~100モル%であり、かつビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x11)の(x1)における含有量が(x1)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、
カルボン酸成分(y)が芳香族ジカルボン酸(y1)を含有し、(y1)の(y)における含有量が(y)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、かつ(y1)中のテレフタル酸とイソフタル酸のモル比(テレフタル酸/イソフタル酸)が30/70~70/30であり、
ポリエステル樹脂の酸価をα(mgKOH/g)、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量をβ(ppm)としたとき、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
7≦α≦15 (1)
β≦α×250-1000 (2)
【請求項2】
請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物を含む樹脂粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂組成物及び樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は大部分が炭素-炭素結合で形成されているため疎水性であり、水には殆ど溶解しない。従って、ポリエステル樹脂の水分散体を調整する方法としては、一般的には1)強制乳化法と2)自己乳化法が知られている。
1)強制乳化法とは、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解するか、もしくは溶融して液状化し、これを乳化剤や分散剤などの界面活性剤を使用して強制的に水中に分散させる方法である。この方法では、多量に低分子量の親水性化合物(界面活性剤)を使用するため、耐水性・保存安定性・電気特性などが著しく劣るという課題がある。
2)自己乳化法とは、分子中に極性基(カルボン酸基、スルホン酸基など)を有するポリエステル樹脂を、有機溶剤と水からなる混合溶液に溶解した後、さらに水を添加することにより、転相、自己乳化させる方法(例えば、特許文献1)である。界面活性剤を使用しないことで1)の課題をクリアできるが、逆に樹脂の物性制御が乳化性に大きく影響するので、樹脂の安定化が課題となる。
また、ポリエステル樹脂をトナー用途に展開する場合、トナーに含まれる他の樹脂との相溶性が重要になるが、上記ポリエステル樹脂の相溶性は、未だ充分とは言えない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-290963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、乳化安定性が良好であり粒子化した際の粒径のバラつきが低減され、他の樹脂との相溶性が良好であるポリエステル樹脂組成物、及び粒度分布と低温定着性に優れた樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合して得られるポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂組成物であり、アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有し、(x1)の(x)における含有量が(x)の合計モル数を基準として90~100モル%であり、かつビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x11)の(x1)における含有量が(x1)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、カルボン酸成分(y)が芳香族カルボン酸(y1)を含有し、(y1)の(y)における含有量が(y)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、かつ(y1)中のテレフタル酸とイソフタル酸のモル比(テレフタル酸/イソフタル酸)が30/70~70/30であり、ポリエステル樹脂の酸価をα(mgKOH/g)、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量をβ(ppm)としたとき、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂組成物;前記ポリエステル樹脂組成物を含む樹脂粒子である。
7≦α≦15 (1)
β≦α×250-1000 …(2)
【発明の効果】
【0006】
本発明により、乳化安定性が良好であり粒子化した際の粒径のバラつきが低減され、他の樹脂との相溶性が良好であるポリエステル樹脂組成物、及び粒度分布と低温定着性に優れた樹脂粒子を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
[ポリエステル樹脂組成物]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合して得られるポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂組成物であり、アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有し、(x1)の(x)における含有量が(x)の合計モル数を基準として90~100モル%であり、かつビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x11)の(x1)における含有量が(x1)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、カルボン酸成分(y)が芳香族カルボン酸(y1)を含有し、(y1)の(y)における含有量が(y)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、かつ(y1)中のテレフタル酸とイソフタル酸のモル比(テレフタル酸/イソフタル酸)が30/70~70/30である。
前記ポリエステル樹脂は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよく、前記アルコール成分(x)及びカルボン酸成分(y)は1種単独でもよく2種以上を併用してもよい。
【0008】
本発明におけるポリエステル樹脂のアルコール成分(x)は、必須構成成分であるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)の他、後述するビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)以外のジオール(x2)及び/又は3価以上の価数のポリオール(x3)が挙げられる。また、アルコール成分(x)には、必要によりモノアルコール(x4)を使用してもよい。
【0009】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)は、ビスフェノールAにアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)を付加して得られる化合物であり、必須構成成分であるビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」をPOと略記する)付加物(x11)の他、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記する)付加物(x12)、及びビスフェノールAのブチレンオキサイド(以下、「ブチレンオキサイド」をBOと略記する)付加物(x13)等が挙げられる。
【0010】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)のアルキレンオキサイドの付加モル数は、帯電性及び保存安定性の観点から、好ましくは2~30であり、より好ましくは2~10であり、さらに好ましくは2~5である。
【0011】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)以外のジオール(x2)としては、炭素数2~12のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール)、炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等)、炭素数4~36の脂環式ジオール(例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等)、上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド〔EO、PO、BO等〕付加物(好ましくは付加モル数1~30)、ビスフェノール類(ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のアルキレンオキサイド(EO、PO、BO等)付加物(好ましくは付加モル数2~30)、ポリラクトンジオール(ポリε-カプロラクトンジオール等)及びポリブタジエンジオール等が挙げられる。
【0012】
3価以上の価数のポリオール(x3)としては、アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物(例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン及びポリグリセリン等)、糖類及びその誘導体(例えばショ糖及びメチルグルコシド等)、トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は好ましくは2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は好ましくは2~30)及びアクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物等]等が挙げられる。
【0013】
モノアルコール(x4)としては、炭素数1~30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコール等)等が挙げられる。
【0014】
アルコール成分(x)として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)以外の成分を含む場合は、乳化安定性の観点から、ジオール(x2)が好ましく、炭素数2~12のアルキレングリコールがより好ましい。
【0015】
ポリエステル樹脂のカルボン酸成分(y)としては、必須構成成分である芳香族ジカルボン酸(y1)の他、後述するジカルボン酸(y2)及び/又は3価以上の価数のポリカルボン酸(y3)及びこれらの酸の無水物や低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)等が挙げられる。また、カルボン酸成分(y)には、必要によりモノカルボン酸(y4)を使用してもよい。
【0016】
芳香族ジカルボン酸(y1)としては、必須構成成分であるテレフタル酸及びイソフタル酸の他、例えば、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸等)等が挙げられる。
【0017】
上記の芳香族ジカルボン酸(y1)以外のジカルボン酸(y2)としては、炭素数2~50のアルカンジカルボン酸{鎖状飽和炭化水素基の両末端にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、鎖状飽和炭化水素基の末端以外にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(デシルコハク酸等)}、炭素数4~50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸及びシトラコン酸等)、炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)等〕等が挙げられる。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0018】
3価以上の価数のポリカルボン酸(y3)としては、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6~36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)及び不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(Mn):450~10,000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、及びスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0019】
モノカルボン酸(y4)としては、炭素数(カルボニル基の炭素を含める)7~37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸等)、炭素数2~50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、(メタ)アクリル酸[「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。]、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等)等が挙げられる。
【0020】
カルボン酸成分(y)として、芳香族ジカルボン酸(y1)以外の成分を含む場合は、乳化安定性及び他の樹脂との相溶性の観点から炭素数2~50のアルカンジカルボン酸が好ましく、より好ましくは鎖状飽和炭化水素基の両末端にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸であり、さらに好ましくは、アジピン酸である。
【0021】
アルコール成分(x)はビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有し、(x1)の(x)における含有量が(x)の合計モル数を基準として90~100モル%であり、他の樹脂との相溶性の観点から、好ましくは95~100モル%であり、より好ましくは100モル%である。
【0022】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x11)の(x1)における含有量は(x1)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、乳化安定性と他の樹脂との相溶性の観点から、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは100モル%である。
【0023】
カルボン酸成分(y)は芳香族ジカルボン酸(y1)を含有し、(y1)の(y)における含有量が(y)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、乳化安定性の観点から、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは99~100モル%であり、更に好ましくは100モル%である。
【0024】
芳香族ジカルボン酸(y1)中のテレフタル酸とイソフタル酸のモル比(テレフタル酸/イソフタル酸)は、30/70~70/30であり、乳化安定性及び他の樹脂との相溶性の観点から、好ましくは50/50~70/30である。
【0025】
アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)との反応比率は、水酸基とカルボキシル基のモル比{[OH]/[COOH]}として、好ましくは1/2~2/1であり、より好ましくは1/1.3~1.5/1、さらに好ましくは1/1.2~1.4/1である。上記水酸基は、アルコール成分(x)由来の水酸基である。
【0026】
本発明においてポリエステル樹脂は、公知のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とを含む成分を、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、より好ましくは160~250℃、さらに好ましくは170~235℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点と乳化安定性の観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは2~40時間、さらに好ましくは20~40時間である。反応速度を向上させるために減圧する工程を有することが好ましく、減圧度は好ましくは0.5~20kPaであり、より好ましくは0.5~15kPaであり、さらに好ましくは0.5~10kPaである。得られるポリエステル樹脂の乳化安定性の観点から、圧力が80~120kPaの工程時間は、8時間以下であることが好ましい。
【0027】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することもできる。
エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006-243715号公報に記載の触媒{チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等}、及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)並びに酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の酸価をα(mgKOH/g)、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量をβ(ppm)としたとき、下記式(1)及び(2)を満たす。
7≦α≦15 (1)
β≦α×250-1000 …(2)
ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量とは、ポリエステル樹脂をTHFに溶解させ、メタノールで沈殿生成しろ過抽出した溶液をLC-MS測定し得られるピーク面積から算出したもののことである。
ポリエステル樹脂の酸価αとポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量βを式(1)、式(2)の範囲とすることで、樹脂の乳化性は良好となる。
α<7では、樹脂の親水性が低すぎて乳化が困難となる。またα>15では逆に親水性が高すぎて乳化による分散粒径が細かくなりすぎてうまく粒径制御ができなくなる。
β>α×250-1000では、残存する未反応のテレフタル酸とイソフタル酸等のカルボン酸が樹脂を乳化したときの乳化安定性を阻害する因子となり、乳化安定性が悪化する。
例えば、ポリエステル樹脂の酸価αは、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)との反応比率やエステル化反応の反応率で制御することができる。また、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量βについては、テレフタル酸とイソフタル酸の添加量や未反応のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量により制御することができる。また、エステル化反応における平衡時間を制御する、具体的には反応温度で平衡安定化させる工程を導入することで上記範囲の達成が容易となる。
【0029】
本発明において、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、低温定着性の観点から好ましくは45~80℃であり、より好ましくは50~70℃である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばTA Instruments(株)製、DSC Q20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
【0030】
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価であるαは、7~15mgKOH/gであり、好ましくは8~14mgKOH/gであり、更に好ましくは8~13mgKOH/gである。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
【0031】
本発明において、ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量は、乳化安定性と低温定着性の観点から、好ましくは4,000~40,000であり、より好ましくは4,000~35,000であり、さらに好ましくは4,000~30,000であり、最も好ましくは5,000~25,000である。重量平均分子量が4000以上でかつポリエステル樹脂の酸価αとポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量βを式(1)、式(2)の範囲とすることで乳化安定性が良好となり、重量平均分子量が40,000以下であると低温定着性が良好となる。
【0032】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述の必須のポリエステル樹脂に加えて必要により、上記以外のポリエステル樹脂を含んでもよく、ポリエステル樹脂(H)、結晶性ポリエステル樹脂(C)を含むことが低温定着性や相溶性の観点から好ましい。
【0033】
本発明において、ポリエステル樹脂(H)は、アルコール成分(X)とカルボン酸成分(Y)を重縮合して得られるポリエステル樹脂であり本発明のポリエステル樹脂で例示したアルコール成分(x)及びカルボン酸成分(y)と同様のものを用いることができる。
アルコール成分(X)として好ましいものは、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)であり、より好ましくはビスフェノールAのPO付加物(x11)、ビスフェノールAのEO付加物(x12)である。
カルボン酸成分(Y)として好ましいものは、芳香族ジカルボン酸(y1)(テレフタル酸、イソフタル酸)、炭素数2~50のアルカンジカルボン酸、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸である。
【0034】
アルコール成分(X)はビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(x1)を含有することが好ましく、(x1)の(X)における含有量が(X)の合計モル数を基準として90~100モル%であることが好ましく、他の樹脂との相溶性の観点から、より好ましくは95~100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。また、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(x11)の(x1)における含有量は(x1)の合計モル数を基準として80~100モル%であることが好ましく、乳化安定性と他の樹脂との相溶性の観点から、より好ましくは90~100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0035】
カルボン酸成分(Y)は芳香族ジカルボン酸(y1)を含有することが好ましく、(y1)の(Y)における含有量が(Y)の合計モル数を基準として80~100モル%であることが好ましく、乳化安定性の観点から、より好ましくは90~100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。また、芳香族ジカルボン酸(y1)中のテレフタル酸とイソフタル酸のモル比(テレフタル酸/イソフタル酸)は、70/30~99/1であることが好ましく、乳化安定性及び他の樹脂との相溶性の観点から、より好ましくは70/30~95/5である。
【0036】
ポリエステル樹脂(H)は、乳化性の観点から、ポリエステル樹脂(H)の酸価をα(mgKOH/g)、ポリエステル樹脂(H)中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量をβ(ppm)としたとき、下記式(3)及び(4)を満たすことが好ましい。
7≦α≦15 (3)
β≦α×250-1000 …(4)
ポリエステル樹脂(H)中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量とは、ポリエステル樹脂(H)をTHFに溶解させ、メタノールで沈殿生成しろ過抽出した溶液をLC-MS測定し得られるピーク面積から算出したもののことである。
ポリエステル樹脂(H)の酸価αとポリエステル樹脂(H)中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量βを式(1)、式(2)の範囲とすることで、重量平均分子量が低い場合でも樹脂の乳化性は良好となる。
【0037】
ポリエステル樹脂(H)の酸価は、7~15mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは7~14mgKOH/gであり、更に好ましくは7~12mgKOH/gである。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
【0038】
ポリエステル樹脂(H)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量は、乳化安定性と相溶性の観点から、好ましくは40,000~100,000であり、より好ましくは40,000~80,000であり、さらに好ましくは40,000~75,000であり、最も好ましくは40,000~70,000である。
【0039】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂(C)は、結晶性を示し、吸熱ピークトップを示す温度Tp(℃)の範囲が40~100℃であるものを意味する。
なお、本発明における「結晶性」とは後述の示差走査熱量計(DSC)測定の第2回目の昇温過程において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。
本発明において、吸熱ピークトップを示す温度TpをDSCにより測定する際は、例えばTA Instruments(株)製、DSC Q20を用いることができる。また、昇温・冷却条件としては、10℃/分の条件で180℃まで昇温する(第1回目の昇温過程)。次いで、180℃で10分間放置後、10℃/分の条件で0℃まで冷却する(第1回目の冷却過程)。次いで、0℃で10分間放置した後、10℃/分の条件で180℃まで昇温する(第2回目の昇温過程)。
【0040】
結晶性ポリエステル樹脂(C)としては、本発明のポリエステル樹脂で例示したアルコール成分(x)及びカルボン酸成分(y)と同様のものを用いることができ、アルコール成分(x)として好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコールであり、より好ましくはエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールである。また、カルボン酸成分(y)として好ましいものは炭素数2~50のアルカンジカルボン酸であり、より好ましくは鎖状飽和炭化水素基の両末端にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸)である。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、必須のポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂(L)とそれ以外のポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂(H)との重量比〔(L)/(H)〕は、30/70~70/30が好ましく、より好ましくは40/60~60/40である。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、必須のポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂(L)のポリエステル樹脂組成物における含有量は、ポリエステル樹脂組成物の重量に基づき、好ましくは20~100重量%、より好ましくは20~75重量%、さらに好ましくは30~65重量%である。
【0043】
ポリエステル樹脂(H)のポリエステル樹脂組成物における含有量は、ポリエステル樹脂組成物の重量に基づき、好ましくは20~75重量%、より好ましくは30~65重量%である。
【0044】
結晶性ポリエステル樹脂(C)のポリエステル樹脂組成物における含有量は、ポリエステル樹脂組成物の重量に基づき、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%である。
【0045】
[樹脂粒子]
本発明の樹脂粒子は、本発明のポリエステル樹脂組成物を必須成分として含む。また必要により本発明のポリエステル樹脂組成物以外の公知の樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの種々の添加剤等を混合することができる。
【0046】
本発明のポリエステル樹脂組成物以外の樹脂としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。分散安定性の観点から、好ましくはビニル樹脂、ウレタン樹脂である。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂組成物の樹脂粒子における含有量は、樹脂粒子の重量に基づき、好ましくは30~97重量%、より好ましくは70~90重量%である。
【0048】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料及び顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト及びフェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
【0049】
着色剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂組成物の合計100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは2~15重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、磁性粉の含有量は、ポリエステル樹脂組成物の合計100重量部に対して、好ましくは20~150重量部、より好ましくは30~120重量部である。
【0050】
離型剤としては、天然ワックス(蜜ろう、カルナバワックス及びモンタンワックス等)、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラタム等)、合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び酸化ポリプロピレンワックス等)、及び合成エステルワックス(炭素数10~30の脂肪酸と炭素数10~30のアルコールから合成される脂肪酸エステル等)等が挙げられ、これらの離型剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有することが好ましい。離型剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂組成物の合計100重量部に対して、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【0051】
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、例えば、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。荷電制御剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂組成物の合計100重量部に対して、0~20重量%であってよく、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7.5重量%である。
【0052】
本発明の樹脂粒子の製造方法は、特に制限はなく、公知の、特開昭62-106473号公報や特開昭63-186253号公報に開示されている様な少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望の粒径のものを得る乳化凝集法、単分散を特徴とする分散重合法、非水溶性有機溶媒に必要な樹脂類を溶解させた後水中で樹脂粒子化する溶解懸濁法、特開2002-284881号公報に開示されているエステル伸長重合法などが挙げられる。
上記の製造方法のうち、樹脂粒子の粒径制御、低温定着性の観点から少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望の粒径のものを得る乳化凝集法が好ましい。
【0053】
本発明の樹脂粒子の製造方法のうち好ましい製造方法である乳化凝集法は、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合し、ポリエステル樹脂組成物を含む樹脂微粒子を得る工程及び樹脂微粒子を凝集させる工程(凝集工程とも記載する)を含む。
【0054】
ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合し、ポリエステル樹脂組成物を含む樹脂微粒子を得る方法は特に限定されないが、以下の〔1〕~〔2〕が挙げられる。
【0055】
〔1〕ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合し、ポリエステル樹脂を水性溶媒中に分散させた後、有機溶剤を除去して樹脂微粒子の分散液を製造する方法。
【0056】
〔2〕ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合し、次いでポリエステル樹脂中のカルボキシル基を中和剤により塩とし、ポリエステル樹脂を水性溶媒中に分散させた後、有機溶剤を除去して樹脂微粒子の分散液を製造する方法。
【0057】
上記〔1〕~〔2〕の方法のうち、樹脂微粒子の製造しやすさの観点から、好ましくは〔2〕の方法である。
【0058】
また、複数のポリエステル樹脂を含む場合は、ポリエステル樹脂を別々に分散させてもよく、あらかじめ混合してから分散させてもよいが、粒度分布の観点から、ポリエステル樹脂を別々に分散させることが好ましい。
また、添加剤を用いる場合、ポリエステル樹脂を含有する樹脂微粒子の分散液と添加剤分散液(着色剤分散液及び離型剤分散液等)とを混合して用いてもよい。
【0059】
本発明の樹脂粒子の製造方法においてポリエステル樹脂の有機溶剤溶液の、有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素溶剤、脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤、ハロゲン溶剤、エステル、エステルエーテル溶剤、エーテル溶剤、ケトン溶剤、アルコール溶剤、アミド溶剤、スルホキシド溶剤、複素環式化合物溶剤及びこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
有機溶剤の具体例としては、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤(n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等のハロゲン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のエステル又はエステルエーテル溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール及びベンジルアルコール等のアルコール溶剤;ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤、N-メチルピロリドン等の複素環式化合物溶剤、並びにこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。上記の有機溶剤の中でも沸点が100℃未満の揮発性のものが好ましい。好ましい有機溶剤としては、酢酸エチル、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
【0060】
ポリエステル樹脂100重量部に対する有機溶剤の使用量は、好ましくは25~300重量部、より好ましくは25~100重量部、さらに好ましくは25~70重量部である。
【0061】
本発明の樹脂粒子の製造方法においてポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性溶媒と混合する工程の水性溶媒としては、水を必須構成成分とする液体であれば制限なく使用でき、後述する、水、有機溶剤の水溶液、界面活性剤(s)の水溶液、水溶性ポリマー(t)の水溶液及びこれらの2以上の混合物等が用いることができる。
【0062】
水性溶媒へのポリエステル樹脂の分散性を良好にする観点から、ポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和するために中和剤を使用してもよい。中和剤としては、アンモニア、トリエチルアミン等の有機化合物、水酸化ナトリウム等の無機化合物が挙げられる。
【0063】
中和剤の使用量は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対して、分散性の観点から、好ましくは1~150モル%、より好ましくは5~100モル%である。
【0064】
樹脂を水性溶媒に分散させる際、必要に応じて乳化剤又は分散剤として、公知の界面活性剤(s)及び無機分散剤を用いることができる。
【0065】
界面活性剤(s)としては、特に限定されず、アニオン界面活性剤(s-1)、カチオン界面活性剤(s-2)、両性界面活性剤(s-3)及び非イオン界面活性剤(s-4)等が挙げられる。界面活性剤(s)は2種以上の界面活性剤を併用したものであってもよい。
【0066】
アニオン界面活性剤(s-1)としては、カルボン酸又はその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤(s-2)としては、4級アンモニウム塩型界面活性剤及びアミン塩型界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤(s-3)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤(s-4)としては、AO付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコ-ル型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
これらの界面活性剤(s)の具体例としては、特開2002-284881号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0067】
無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等のリン酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
【0068】
樹脂を水性溶媒に分散させる際、乳化剤又は分散剤として、公知の水溶性ポリマー(t)を用いることができる。水溶性ポリマー(t)を用いた方が樹脂微粒子の体積平均粒径が小さくなり、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)小さくなり易い点で好ましい。
【0069】
水溶性ポリマー(t)としては、セルロース化合物(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びそれらのケン化物等)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0070】
本発明のポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合する際の、分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体中の微粒子の粒径を小さくするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、一般的に1000~30000rpm、好ましくは5000~20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、一般的に0.1~5分である。温度は5~200℃が好ましく、より好ましくは20~100℃である。
【0071】
分散装置は、例えばホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー[特殊機化工業(株)製]等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー[(株)荏原製作所製]、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー[特殊機化工業(株)製]、コロイドミル[神鋼パンテック(株)製]、ウルトラビスコミル(アイメックス(株)製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機[日本コークス工業(株)製]、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル[太平洋機工(株)製]等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー[みずほ工業(株)製]、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機[冷化工業(株)製]等の膜乳化機、バイブロミキサー[冷化工業(株)製]等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。これらのうち粒径の均一性の観点から好ましいのは、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス及びTKパイプラインホモミキサーである。
【0072】
ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液100重量部に対する水性媒体の使用量は、好ましくは100~500重量部、より好ましくは150~400重量部、さらに好ましくは150~300重量部である。
【0073】
本発明の樹脂粒子の製造方法における分散液中の樹脂粒子等の固形分濃度及び揮発分は、以下の方法で求めたものである。
樹脂粒子等の沈澱が起こらないよう注意しながら、乾燥前の試料約2.00gをはかりとり、120℃で1時間の条件で乾燥する。乾燥後の試料を取り出し重量を小数点第2位まで測定し、(乾燥後の試料の重量/乾燥前の試料の重量)×100から固形分濃度(重量%)を算出し、{(乾燥前の試料の重量-乾燥後の試料の重量)/乾燥前の試料の重量}×100から揮発分(重量%)を算出する。
【0074】
前記の樹脂微粒子を得る工程で得られた樹脂微粒子を凝集させる方法は特に限定されず、攪拌装置を備えた槽内に入れた〔1〕~〔2〕の方法等で得られた樹脂微粒子の分散液を加熱する方法、加熱せずに凝集剤を加える方法、及び加熱と凝集剤の添加を組み合わせる方法等が挙げられる。
樹脂微粒子を攪拌下に凝集して目的とする大きさの凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか、凝集剤を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
【0075】
凝集剤としては、酸(塩酸、硫酸、硝酸、酢酸及びシュウ酸等)、無機酸の金属塩(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅及び炭酸ナトリウム等)、脂肪酸の金属塩(酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム及びシュウ酸ナトリウム等)、芳香族脂肪酸の金属塩(安息香酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム及びサリチル酸カリウム等)、フェノール類の金属塩(ナトリウムフェノレート等)、アミン塩(アミノ酸の金属塩、トリエタノールアミン塩酸塩及びアニリン塩酸塩等)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、無機酸の金属塩及び脂肪酸の金属塩であり、より好ましいのは無機酸の金属塩である。
【0076】
樹脂微粒子を凝集させる際の槽内に入れた分散液の温度は、樹脂粒子の体積平均粒径及び粒度分布制御の観点から、好ましくは5~100℃、より好ましくは20~100℃である。
また、凝集体を形成させる工程において、分散液のpHは樹脂粒子の体積平均粒径及び粒度分布制御の観点から、好ましくは2~10、より好ましくは3~6である。
【0077】
凝集剤の添加量は、樹脂粒子の体積平均粒径及び粒度分布制御の観点から、樹脂微粒子100重量部に対して好ましくは1~20重量部であり、より好ましくは1~15重量部である。
【0078】
凝集剤を用いないで加熱のみによって凝集を行う場合の凝集温度は、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~100℃である。
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、樹脂粒子の粒径が目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度で、少なくとも30分以上保持することが望ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温しても良いし、段階的に昇温することもできる。
【0079】
凝集工程で得られた凝集体の安定性を増すために、凝集工程の後の熟成工程行うことが好ましい。
熟成工程とは加熱処理等により、凝集体における樹脂微粒子同士を融着一体化する工程のことであり、形状は球形に近いものとなる。熟成工程前の凝集体は、樹脂微粒子の静電的あるいは物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、凝集体を構成する樹脂微粒子は互いに融着しており、樹脂粒子の形状を球状に近いものとすることが可能となる。この様な熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、樹脂微粒子が凝集した形状である葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状の樹脂粒子を製造することができる。
【0080】
凝集体を融着させる際の温度は、得られる樹脂粒子の形状制御性の観点から、5~200℃が好ましく、さらに好ましくは30~100℃である。凝集体を融着させる際の液のpHは、好ましくは3~10、より好ましくは5~10である。また、熟成工程に要する時間は、目的とする樹脂粒子の形状により異なるが、前記した所定の温度で、0.1~10時間、好ましくは1~6時間保持することが望ましい。
【0081】
なお、凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、界面活性剤を添加するか、pH値を上げることが好ましい。ここで用いられる界面活性剤としては、公知の界面活性剤(s)を用いることができるが、特に樹脂微粒子を製造した際に用いた界面活性剤(s)と同じものを用いることが好ましい。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に界面活性剤を添加するか、pH値を上げることにより、凝集工程で凝集した凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後の粗大粒子生成を抑制できる場合がある。
【0082】
本発明の樹脂粒子の製造方法は、さらに、樹脂微粒子を凝集させる工程により得られた凝集体の分散体から水性溶媒を除去する工程を有していることが低温定着性の点から好ましい。
【0083】
分散体から水性溶媒を除去する方法としては、以下の〔3〕~〔5〕及びこれらの2以上の組合せの方法等が適用できる。
〔3〕分散体を減圧下又は常圧下で乾燥する方法。
〔4〕分散体を遠心分離器、スパクラフィルター及び/又はフィルタープレスなどにより固液分離し、必要に応じて水等を加え固液分離を繰り返した後、得られた固体を乾燥する方法。
〔5〕分散体を凍結させて乾燥させる方法(いわゆる凍結乾燥)。
【0084】
上記〔3〕及び〔4〕の方法において、乾燥機として、流動層式乾燥機、減圧乾燥機及び循風乾燥機等公知の設備を用いて乾燥を行うことができる。また、必要に応じ、風力分級器又はふるい等を用いて分級し、所定の粒度分布とすることもできる。
【0085】
樹脂粒子100重量部に対する残存する水性溶媒量は低温定着性の観点から、好ましくは0~2重量部、より好ましくは0~1重量部、さらに好ましくは0~0.1重量部、特に好ましくは0~0.01重量部である。
【0086】
本発明の樹脂粒子は、公知の流動化剤(シリカ、チタニア、アルミナ、炭酸カルシウム、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等)を添加することでトナーとして使用することができ、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料として使用される。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
【0087】
本発明の樹脂粒子は、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像又は磁気潜像の現像に好ましく用いることができる。更に好ましくは、フルカラー用の静電荷像又は磁気潜像の現像に用いることができる。
【実施例0088】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り「部」は重量部を示す。
【0089】
ポリエステル樹脂等の各物性値については次の方法により測定した。
【0090】
<ガラス転移温度(Tg)の測定方法>
示差走査熱量計(TA Instruments(株)製、DSC Q20)を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で、以下の条件により測定した。
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で-35℃まで冷却
(4)-35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析しガラス転移温度を求めた。
【0091】
<酸価の測定方法>
JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定した。ただし、酸価の測定溶媒はアセトン、メタノール及びトルエンの混合溶媒(アセトン:メタノール:トルエン=12.5:12.5:75)、水酸基価の測定溶媒はTHFとした。
【0092】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
分子量の測定は、試料をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とし、以下の条件で測定した。
装置 : 東ソー(株)製 HLC-8120
カラム : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
【0093】
<吸熱ピークのピークトップ温度の測定方法>
示差走査熱量計{例えば「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて測定した。試料を20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度を試料の吸熱ピークのピークトップ温度とした。
【0094】
<テレフタル酸とイソフタル酸の合計量の測定方法>
ポリエステル樹脂中に残存するテレフタル酸とイソフタル酸の合計量は液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)を用いた定量法で求めた。
<試料溶液の調整>
ポリエステル樹脂約0.2gをTHF1mlに溶解させた後、撹拌子で撹拌させながらメタノール10gを10g/分で滴下することで樹脂分を沈殿させ、樹脂中に残存するテレフタル酸とイソフタル酸をメタノールに抽出した。メタノール可溶分を0.4μフィルターでろ過したものを試料溶液とした。
<LC/MSの装置条件>
装置:LCMS-8030(島津製作所製)
カラム:Inert Sustain C18(2.0μm×2.1mm×10cm)
移動相A:10mM 酢酸アンモニウム/メタノール=80/20
移動相B:メタノール
流速:0.2ml/min
注入量:0.1μl
検出器:MS
イオン源:ESI(±)
テレフタル酸、イソフタル酸の標準溶液を作成し、検量線法によりポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量を算出した。
【0095】
<製造例1>[チタン含有触媒(チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート))の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、TC-310(オルガチック製)634.0部(33.3モル%)、トリエタノールアミン366.0部(66.6モル%)を入れ、80℃で約1時間反応させて、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)を得た。
【0096】
<製造例2>[結晶性ポリエステル樹脂(C)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、1,6-ヘキサンジオール392.1部(51.1モル%)、ドデカン二酸731.2部(48.9モル%)、エステル化触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)1.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で10時間反応させ、酸価が8になった時点で取り出し、結晶性ポリエステル樹脂(C)を得た。なお、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)は、上記製造例1のチタン含有触媒を用いた。
結晶性ポリエステル樹脂(C)の酸価は8mgKOH/g、吸熱ピークのピークトップ温度は72℃、重量平均分子量(Mw)は20,000だった。
【0097】
<製造例3>[ポリエステル樹脂(L-1)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)401.1部(26.0モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)172.7部(10.0モル%)、ビスフェノールA・EO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBPE-20」)130.5部(9.0モル%)、エチレングリコール13.7部(5.0モル%)テレフタル酸210.6部(28.7モル%)、イソフタル酸90.3部(12.3モル%)、アジピン酸58.1部(9.0モル%)、エステル化触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で20時間反応させ、酸価が12mgKOH/gになった時点で減圧を解除して、常圧、200℃で4時間平衡安定化させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(L-1)を得た。
ポリエステル樹脂(L-1)の酸価(α)は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量(Mw)は11,000、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)は1750ppmだった。
【0098】
<製造例4~20>[ポリエステル樹脂(L-2)~(L-18)の製造]
表1の製造例4~20に記載の原料を用いた以外は製造例3と同様にしてポリエステル樹脂(L-2)~(L-18)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価(α)、Tg、Mw、式(2)右辺、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)を表1に記載した。
【0099】
<製造例21>[ポリエステル樹脂(H-1)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)94.4部(7.2モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)660.0部(44.8モル%)、テレフタル酸200.9部(32.0モル%)、イソフタル酸67.0部(10.7モル%)無水トリメリット酸39.4部(5.4モル%)、エステル化触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で18時間反応させ、酸価が12mgKOH/gになった時点で減圧を解除して、常圧、200℃で4時間平衡安定化させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(H-1)を得た。
ポリエステル樹脂(H-1)の酸価は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は59℃、重量平均分子量(Mw)は55,000、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)は1500ppmだった。
【0100】
<製造例22~29>[ポリエステル樹脂(H-2)~(H-9)の製造]
表2の製造例22~29に記載の原料を用いた以外は製造例21と同様にしてポリエステル樹脂(H-2)~(H-9)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価(α)、Tg、Mw、式(2)右辺、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)を表2に記載した。
【0101】
<製造例30>[ポリエステル樹脂(H-10)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)280.2部(20.7モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)470.5部(31.1モル%)、テレフタル酸175.7部(27.0モル%)、イソフタル酸75.3部(11.6モル%)無水トリメリット酸36.3部(4.8モル%)、アジピン酸27.6部(4.8モル%)エステル化触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で6時間反応させ、酸価が12mgKOH/gになった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(HR-1)を得た。
ポリエステル樹脂(HR-1)の酸価(α)は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は60℃、重量平均分子量(Mw)は51,000、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)は3000ppmだった。
【0102】
<比較製造例1~6>[ポリエステル樹脂(LR-1)~(LR-6)の製造]
表1の比較製造例1~6に記載の原料を用いた以外は製造例3と同様にしてポリエステル樹脂(LR-1)~(LR-6)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価(α)、Tg、Mw、式(2)右辺、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)を表1に記載した。
【0103】
<比較製造例7>[ポリエステル樹脂(LR-7)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)135.6部(10.0モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)607.2部(39.9モル%)、テレフタル酸113.9部(17.6モル%)、イソフタル酸211.5部(32.6モル%)、エステル化触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に220℃まで昇温し、220℃で30時間反応させ、酸価が6mgKOH/gになった時点で減圧を解除して、常圧、200℃で10時間平衡安定化させた後、取り出し、ポリエステル樹脂(LR-7)を得た。
ポリエステル樹脂(LR-7)の酸価(α)は6mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量(Mw)は15,000、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)は150ppmだった。
【0104】
<比較製造例8>[ポリエステル樹脂(LR-8)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)135.7部(10.0モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)607.9部(39.9モル%)、テレフタル酸113.5部(17.5モル%)、イソフタル酸210.7部(32.5モル%)、エステル化触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で8時間反応させ、酸価が7mgKOH/gになった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(LR-8)を得た。
ポリエステル樹脂(LR-8)の酸価(α)は7mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量Mwは13,000、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)は1400ppmだった。
【0105】
<比較製造例9~10>[ポリエステル樹脂(LR-9)~(LR-10)の製造]
表1の比較製造例9~10に記載の原料を用いた以外は比較製造例8と同様にしてポリエステル樹脂(LR-9)~(LR-10)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価(α)、Tg、Mw、式(2)右辺、ポリエステル樹脂中のテレフタル酸とイソフタル酸の合計量(β)を表1に記載した。
【0106】
ポリエステル樹脂(L-1)~(L-18)、(LR-1)~(LR-10)の配合部数及び樹脂物性を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
ポリエステル樹脂(H-1)~(H-10)の配合部数及び樹脂物性を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
<実施例1>[樹脂粒子(Z-1)]
[樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器にポリエステル樹脂(L-1)100部、メチルエチルケトン100部を仕込み、撹拌、均一化を行いポリエステル樹脂(L-1)の有機溶剤溶液を得た。ポリエステル樹脂(L-1)の有機溶剤溶液を25℃に温調し、中和剤として10.0重量%アンモニア水を2.2部添加し、5分間撹拌した。その後、25℃のイオン交換水300部を1時間かけて滴下して転相乳化させ、40℃において30kPaの減圧下でメチルエチルケトンを留去することで樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)を得た。樹脂微粒子(Cl-1)の体積基準のメジアン径は0.15μm、分散液(Clb-1)の固形分濃度は20重量%であった。
【0111】
[樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)の製造]
樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(L-1)をポリエステル樹脂(H-1)に置き換えた以外は同様にして、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)を得た。樹脂微粒子(Ch-1)の体積基準のメジアン径は0.15μm、分散液(Chb-1)の固形分濃度は20重量%であった。
【0112】
[樹脂微粒子(Cc)の分散液(Ccb)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器に結晶性ポリエステル樹脂(C)100部、メチルエチルケトン100部を仕込み、撹拌、均一化を行い結晶性ポリエステル樹脂(C)の有機溶剤溶液を得た。結晶性ポリエステル樹脂(C)の有機溶剤溶液を50℃に温調し、中和剤として10.0重量%アンモニア水を2.2部添加し、5分間撹拌した。その後、50℃のイオン交換水300部を1時間かけて滴下して転相乳化させ、40℃において30kPaの減圧下でメチルエチルケトンを留去することで樹脂微粒子(Cc)の分散液(Ccb)を得た。樹脂微粒子(Cc)の体積基準のメジアン径は0.15μm、分散液(Ccb)の固形分濃度は20重量%であった。
【0113】
[着色剤分散液の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器に、カーボンブラック[三菱化学(株)製:MA100]10部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、イオン交換水40部を投入し、回転数300rpmで撹拌下30℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、更にウルトラビスコミルで湿式粉砕し、黒色着色剤分散液を得た。得られた黒色着色剤分散液の体積基準メジアン径は0.05μm、固形分濃度は20重量%であった。
【0114】
[離型剤分散液の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器に、フィッシャー・トロプッシュワックス[日本精蝋(株)製:FT-0070]10部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、イオン交換水15部を投入し、回転数300rpmで撹拌下95℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、1時間かけて30℃まで冷却してフィッシャー・トロプッシュワックスを微粒子状に晶析させ、さらにウルトラビスコミルで湿式粉砕し、離型剤分散液を得た。得られた離型剤分散液の体積基準のメジアン径は0.25μm、固形分濃度は50重量%であった。
【0115】
[樹脂粒子(Z-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管、温度計および窒素導入管の付いた反応容器に樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)、樹脂微粒子(Cc)の分散液(Ccb)、着色剤分散液、及び離型剤分散液を固形分が表3の部数となるように仕込み、イオン交換水を300部仕込み、液温を30℃に調整した後、撹拌しながら濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整して分散液を得た。
次いで、樹脂微粒子(Cl-1)、樹脂微粒子(Ch-1)、樹脂微粒子(Cc)、着色剤、および離型剤の凝集を行うため、回転数300rpmで撹拌しながら凝集剤として濃度10重量%の塩化マグネシウム水溶液を加えていき、適宜にサンプリングを行い体積平均粒径5μmになったことを確認した後、系の温度を60℃に調整し、続いて0.3M硝酸水溶液を添加することにより、pHを4.5に調節し、30分後にpHを4.0に調整した。撹拌を3時間保持することにより融着及び球状化を行った。
その後、30℃まで冷却してポリエステル樹脂組成物(P-1)、離型剤、着色剤を含有する樹脂粒子の水性分散液を得た。次いで、樹脂粒子を濾過と水による洗浄を3回繰り返したあと、濾別し、40℃の送風循環式乾燥機で18時間乾燥を行い、揮発分が0.5重量%以下である樹脂粒子(Z-1)を得た。
【0116】
<実施例2~3>[樹脂粒子(Z-2)~(Z-3)]
実施例1の樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(H-1)をポリエステル樹脂(H-2)~(H-3)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、樹脂微粒子の分散液(Chb-2)~(Chb-3)を得たのち、
実施例1において、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)を樹脂微粒子(Ch-2)の分散液(Chb-2)、樹脂微粒子(Ch-3)の分散液(Chb-3)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、ポリエステル樹脂組成物(P-2)~(P-3)を含有する樹脂粒子(Z-2)~(Z-3)を得た。
【0117】
<実施例4~8>[樹脂粒子(Z-4)~(Z-8)]
実施例1の樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(L-1)をポリエステル樹脂(L-2)~(L-6)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、樹脂微粒子の分散液(Clb-2)~(Clb-6)を得たのち、
実施例1において、樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)を樹脂微粒子(Cl-2)の分散液(Clb-2)~樹脂微粒子(Cl-6)の分散液(Clb-6)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、ポリエステル樹脂組成物(P-4)~(P-8)を含有する樹脂粒子(Z-4)~(Z-8)を得た。
【0118】
<実施例13~20>[樹脂粒子(Z-13)~(Z-20)]
実施例1の樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(L-1)をポリエステル樹脂(L-11)~(L-18)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、樹脂微粒子の分散液(Clb-11)~(Clb-18)を得たのち、
実施例1において、樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)を樹脂微粒子(Cl-11)の分散液(Clb-11)~樹脂微粒子(Cl-18)の分散液(Clb-18)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、ポリエステル樹脂組成物(P-13)~(P-20)を含有する樹脂粒子(Z-13)~(Z-20)を得た。
【0119】
<実施例21~27>[樹脂粒子(Z-21)~(Z-27)]
実施例1の樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(H-1)をポリエステル樹脂(H-4)~(H-10)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、樹脂微粒子の分散液(Chb-4)~(Chb-10)を得たのち、
実施例1において、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)を樹脂微粒子(Ch-4)の分散液(Chb-4)、樹脂微粒子(Ch-10)の分散液(Chb-10)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、ポリエステル樹脂組成物(P-21)~(P-27)を含有する樹脂粒子(Z-21)~(Z-27)を得た。
【0120】
<比較例1~8>[樹脂粒子(Z’-1)~(Z’-8)]
実施例1の樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(L-1)をポリエステル樹脂(LR-1)~(LR-8)にそれぞれ置き換え、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)の製造においてポリエステル樹脂(H-1)をポリエステル樹脂(H-10)に置き換えた以外は同様にして、樹脂微粒子の分散液(Clrb-1)~(Clrb-8)、(Chb-10)を得たのち、
実施例1において、樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)を樹脂微粒子(Clr-1)の分散液(Clrb-1)~樹脂微粒子(Clr-8)の分散液(Clrb-8)に、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)を樹脂微粒子(Ch-10)の分散液(Chb-10)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、ポリエステル樹脂組成物(P’-1)~(P’-8)を含有する樹脂粒子(Z’―1)~(Z’-8)を得た。
【0121】
<実施例9>[樹脂粒子(Z-9)]
[顔料マスターバッチ[MB1]の製造]
水1200部、カーボンブラック(三菱化学(株)製:MA100)40部、実施例7で製造したポリエステル樹脂(L-7)20部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を3本ロールを用いて90℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して顔料マスターバッチ[MB1]を得た。
【0122】
[微粒子分散液[PD1]の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計をセットした反応容器に、水780部、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業製、エレミノールJS-20)8部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。これを加熱して、系内温度85℃まで昇温させた後、10重量%過硫酸アンモニウム水溶液9部を加えてから、スチレン30部、ブチルアクリレート40部、及びメタクリル酸30部からなるモノマー混合液を2時間かけて滴下した。滴下後、85℃で4時間熟成させることで微粒子分散液を得た。微粒子分散液に含まれる微粒子の体積平均粒径は0.031μmであった。また、微粒子分散液の一部を乾燥して樹脂を単離した該樹脂分のMnは18700、Mwは154000、Tgは64℃、酸価は196mgKOH/gであった。
【0123】
[[水相s1]の製造]
攪拌棒をセットした容器に、水955部、微粒子分散液[PD1]15部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(エレミノールMON7、三洋化成工業製)30部を投入し、乳白色の液体[水相s1]を得た。
【0124】
[[ワックス分散液]の製造]
冷却管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、フィッシャー・トロプッシュワックス[日本精蝋(株)製:FT-0070]15部及び酢酸エチル85部を投入し、80℃に加熱して溶解し、1時間かけて30℃まで冷却し、フィッシャー・トロプッシュワックスを微粒子状に晶析させ、更に「ウルトラビスコミル」(アイメックス製)で湿式粉砕し[ワックス分散液]を作製した。
【0125】
[樹脂粒子(Z-9)の製造]
ビーカー内にポリエステル樹脂(L-7)、ポリエステル樹脂(H-1)、結晶性ポリエステル樹脂(C)、顔料マスターバッチ[MB1]、ワックス分散液を固形分が表3の部数となるように仕込み、さらに50重量%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解・混合均一化し、油相を得た。この油相中に[水相s1]600部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を使用し、25℃で、回転数12000rpm、1分間分散操作を行い、さらにフィルムエバポレータで減圧度-0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤し、ポリエステル樹脂組成物(P-9)を含有する樹脂粒子の分散体を得た。
前記分散体100部を遠心分離し、更に水60部を加えて遠心分離して固液分離する工程を2回繰り返した後、35℃で1時間乾燥した後に、分級装置[エルボジェット〔マツボウ(株)製〕]で、3.17μm以下の微粉が12個数%以下、8.0μm以上の粗粉が3体積%以下となるように、微粉及び粗粉を除去して樹脂粒子(Z-9)を得た。
【0126】
<実施例10~12>[樹脂粒子(Z-10)~(Z-12)]
実施例9において、ポリエステル樹脂(L-7)をポリエステル樹脂(L-8)~(L-10)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、ポリエステル樹脂組成物(P-10)~(P-12)を含有する樹脂粒子(Z-10)~(Z-12)を得た。
【0127】
<比較例9~10>[樹脂粒子(Z’-9)~(Z’-10)]
実施例9において、ポリエステル樹脂(L-7)をポリエステル樹脂(LR-9)~(LR-10)に、ポリエステル樹脂(H-1)をポリエステル樹脂(H-10)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、ポリエステル樹脂組成物(P’-9)~(P’-10)を含有する樹脂粒子(Z’-9)~(Z’-10)を得た。
【0128】
各実施例及び比較例で得られた樹脂粒子の配合部数及び評価結果を表3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
[評価方法]
以下に、得られたポリエステル樹脂組成物の乳化安定性、相溶性、樹脂粒子の低温定着性の測定方法と評価方法を説明する。
【0131】
<乳化安定性>
本発明のポリエステル樹脂組成物の乳化安定性は本発明のポリエステル樹脂を下記方法で分散液とした直後と室温で1週間静置後のメジアン径の変化率(%)で評価した。
具体的には、それぞれのポリエステル樹脂を樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造の手順に従って、樹脂粒子の分散液とし、固形分濃度が10重量%となるようにイオン交換水で調整した後、動的光散乱式粒子分布測定装置「SZ-100」(株式会社堀場製作所製)を用いて分散液とした直後のメジアン径を測定した。その後、1週間室温で静置した後の分散液のメジアン径を再測定して以下の式で変化率を算出した。
変化率(%)=(|1週間後のメジアン径―分散液とした直後のメジアン径|/分散液とした直後の粒径)×100(%)
変化率が小さいほど、乳化安定性に優れていることを示す。
【0132】
<粒度分布>
本発明における樹脂粒子(Z)の粒度分布は、各実施例及び比較例で得られた樹脂粒子(Z)の体積平均粒径、個数平均粒径から以下の式で算出した。
粒度分布=体積平均粒径/個数平均粒径
なお、樹脂粒子(Z)の体積平均粒径、個数平均粒径は「マルチサイザーIV」(コールター社製)等で測定した。
具体的には、電解水溶液であるISOTON-II(ベックマン・コールター社製)100~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1~5mL加えた。さらに測定試料を2~20mg加え、試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパチャーとして50μmアパチャーを用いて、樹脂粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布を算出した。得られた分布から、樹脂粒子の体積平均粒径、個数平均粒径を求めた。
体積平均粒径/個数平均粒子径が1.20以下であれば粒度分布が優れていることを意味する。
【0133】
<相溶性(ΔTg)>
他の樹脂との相溶性は、結晶性ポリエステル樹脂を添加したときの本発明のポリエステル樹脂のTgの変化量(ΔTg)を比較することで評価した。
まず、本発明のポリエステル樹脂(L)とポリエステル樹脂(H)を表3の部数となるように仕込み、20重量%テトラヒドロフラン溶液となるようにテトラヒドロフランを加えて均一溶解し、脱溶剤したポリエステル樹脂のTgを測定した。次に、本発明のポリエステル樹脂(L)とポリエステル樹脂(H)と結晶性ポリエステル樹脂を表3の部数となるように仕込み、20重量%テトラヒドロフラン溶液となるようにテトラヒドロフランを加えて均一溶解し、脱溶剤した結晶性ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物のTgを測定し、ポリエステル樹脂のTgと、結晶性ポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂組成物のTgとの差を以下の式で算出した。
この評価条件では、Tgの差が大きいほど相溶性に優れることを意味し、10℃以上であると他の樹脂との相溶性が良好になる。
なおTgは本発明のポリエステル樹脂のTgと同様の測定方法で測定した。
相溶性(ΔTg)=|ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂組成物のTg―ポリエステル樹脂のTg|
【0134】
<低温定着性>
樹脂粒子の低温定着性の評価については、得られた樹脂粒子(Z-1)~(Z-27)、(Z’-1)~(Z’-10)と疎水性シリカとを以下の配合比率で均一混合しトナーとすることで評価した。
樹脂粒子(Z):疎水性シリカ[日本アエロジル(株)製、アエロジルR972]
=99重量部:1重量部。
トナーを紙面上に0.85mg/cmとなるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。
この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/秒、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cmの条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のポリエステル樹脂組成物及び樹脂粒子は乳化安定性、他の樹脂との相溶性、低温定着性に優れ、電子写真、静電記録及び静電印刷等に用いるトナーとして好適に使用できる。さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤及び電子ペーパー用粒子などの用途として有用である。