(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111092
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ステータ抜板、ステータコア及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20220722BHJP
H02K 1/32 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K1/32 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004467
(22)【出願日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】202110061453.5
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジチアン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】メイリン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ピン ユ
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD17
5H601FF02
5H601GA13
5H601GE03
5H601GE10
5H609PP01
5H609PP08
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609RR63
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷却効率を向上させることができるステータ抜板、ステータコア及びモータを提供する。
【解決手段】本発明には、ステータ抜板、ステータコア及びモータが開示されており、ステータ抜板は、金型で打ち抜かれてなるものであり、当該ステータ抜板の外円には、連続した凹溝及び突起構造が設けられており、前記凹溝及び突起構造は、冷却媒体が流れるためのもので、前記ステータ抜板からなるステータコアの外円の放熱面積を増大し、前記ステータコアの外円の表面上の冷却媒体の流動状態を改善するように、前記ステータ抜板の軸方向に延びており、これにより、モータの定格電力及び定格トルクが向上する。上記ステータ抜板が金型で打ち抜かれてなるものであるため、ステータ抜板の外縁形状を変更することは、モータの製造コストに何の影響もなく、コストを増やさずにモータの定格電力と定格トルクが5~10%向上する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型で打ち抜かれてなるステータ抜板であって、前記ステータ抜板の外円には、連続した凹溝及び突起構造が設けられており、前記凹溝及び突起構造は、冷却媒体が流れるためのもので、前記ステータ抜板からなるステータコアの外円の放熱面積を増大し、前記ステータコアの外円の表面上の冷却媒体の流動状態を改善するように、前記ステータ抜板の軸方向に延びており、これにより、モータの定格電力及び定格トルクが向上する、ことを特徴とするステータ抜板。
【請求項2】
前記凹溝及び突起構造は、波状構造である、ことを特徴とする請求項1に記載のステータ抜板。
【請求項3】
前記波状構造は、正弦型構造、連続矩形構造、又は正弦矩形混在型構造である、ことを特徴とする請求項2に記載のステータ抜板。
【請求項4】
前記凹溝の最低点と前記突起の最高点との間の垂直距離は、0.1~5mmである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ抜板。
【請求項5】
前記凹溝の最低点と前記突起の最高点との間の垂直距離は、2~4mmである、ことを特徴とする請求項4に記載のステータ抜板。
【請求項6】
前記ステータ抜板の外円の周上には、いくつかのラグが設けられており、前記ラグには、前記凹溝及び突起構造が設けられているか、若しくは設けられていない、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のステータ抜板。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のステータ抜板をいくつか積層してなる、ことを特徴とするステータコア。
【請求項8】
各前記ステータ抜板の凹溝及び突起構造は、同じであり、積層時の位置が同じであるか、又は異なる、ことを特徴とする請求項7に記載のステータコア。
【請求項9】
モータであって、請求項7又は8に記載のステータコアを用いており、前記ステータコアによって、モータの定格電力及び定格トルクを5~10%向上させることができる、ことを特徴とするモータ。
【請求項10】
前記モータの冷却媒体は、油、又は、油と水との混合物である、ことを特徴とする請求項9に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ製造の技術分野に属し、特に、ステータ抜板、ステータコア及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新エネルギー自動車産業の急速な発展に伴い、新エネルギー自動車の核心部品である駆動モータ又は発電機に対する要求もますます高くなっている。モータについては、小型化、軽量化した上で、その定格トルク密度、定格電力密度に対する要求が低下することはなく、むしろ、厳しくなってくるように、年々向上している。このことからは、新エネルギー自動車のモータにとって、モータの定格トルク、定格電力の重要性がはっきりと見えてくる。
【0003】
研究によると、モータの定格トルク、定格電力は、新エネルギー自動車の最高速度、負荷能力及び長時間登坂能力に直接影響している。各大手のメーカーは、定格トルク、定格電力への認識が深くなっていくにつれて、それに対する重視度及び要求も高くなっている。また、近年、ますます多くの商用車、特に大型商用車が新エネルギー自動車分野に参入しているにつれ、純粋な電気駆動又はハイブリッド駆動に対する研究開発が始まっている。それらは、負荷要求が高いため、モータの定格電力、定格トルクに対する要求が最も核心的な要件になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの定格電力、定格トルクは、完全にモータ冷却設計案によって決定される。現在、モータの各生産業者は、一般に、油冷設計、水冷設計、混合冷却設計などの冷却案の設計、及び冷却媒体の循環経路の設計を通じて、モータの定格電力と定格トルクを向上させるようにしている。
【0005】
即ち、モータの定格電力と定格トルクを向上させる従来の方式としては、冷却媒体の設計及び冷却媒体の循環経路の設計を通じて、モータの定格電力と定格トルクを向上させることである。しかし、上記のような冷却設計の研究開発段階の理論的分析がますます完備になるにつれて、モータの定格電力と定格トルクを向上させる余地は、限界に近づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題について、本発明は、ステータコアの構造に対して改良を行い、上記問題を解消し、又は、上記問題を少なくとも部分的に解決するために、モータの冷却効率を向上させることができるステータ抜板、ステータコア及びモータを開示している。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明には、以下の技術案が用いられている。
【0008】
本発明の1つの局面には、ステータ抜板が提供されており、前記ステータ抜板は、金型で打ち抜かれてなるものであり、前記ステータ抜板の外円には、連続した凹溝及び突起構造が設けられており、前記凹溝及び突起構造は、冷却媒体が流れるためのもので、前記ステータ抜板からなるステータコアの外円の放熱面積を増大し、前記ステータコアの外円の表面上の冷却媒体の流動状態を改善するように、前記ステータ抜板の軸方向に延びており、これにより、モータの定格電力及び定格トルクが向上する。
【0009】
また、前記凹溝及び突起構造は、波状構造であってもよい。
【0010】
また、前記波状構造は、正弦型構造、連続矩形構造、又は正弦矩形混在型構造であってもよい。
【0011】
また、前記凹溝の最低点と前記突起の最高点との間の垂直距離は、0.1~5mmであってもよい。
【0012】
また、前記凹溝の最低点と前記突起の最高点との間の垂直距離は、2~4mmであってもよい。
【0013】
また、前記ステータ抜板の外円の周上には、いくつかのラグが設けられており、前記ラグには、前記凹溝及び突起構造が設けられているか、又は設けられていないようにしてもよい。
【0014】
本発明の他の局面には、上記のいずれか一項に記載のステータ抜板をいくつか積層してなるステータコアが提供されている。
【0015】
また、各前記ステータ抜板の凹溝及び突起構造は、同じであり、積層時の位置が同じであるか、又は異なるようにしてもよい。
【0016】
本発明のさらに他の局面には、モータが提供されており、前記モータは、請求項7又は8に記載のステータコアを用いており、前記ステータコアによって、モータの定格電力及び定格トルクを5~10%向上させることができる。
【0017】
また、前記モータの冷却媒体は、油、又は、油と水との混合物であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の利点及び有益な効果は、次の通りである。
【0019】
上記ステータ抜板が金型で打ち抜かれてなるものであるため、ステータ抜板の外縁形状を変更することは、モータの製造コストに何の影響もなく、コストを増やさずにモータの定格電力と定格トルクが5~10%向上することにより、モータの定格電力と定格トルクの予想外の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、様々な他の利点及びメリットが当業者にとって明らかになる。図面は、好ましい実施形態を例示するためのものだけであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。また、図面全体において、同じ部品には同じ参照符号が付されている。
【0021】
【
図1】
図1は、先行技術におけるステータ抜板の部分構造模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例におけるステータ抜板の部分構造模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例における正弦波のピーク-ピーク値、即ち、正の波ピークの最高点と負の波ピークの最低点との間の垂直距離の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、本発明の具体的な実施例及び対応する図面と併せて、本発明の技術案を明確かつ完全に説明する。明らかなことに、記載された実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0023】
用語「含む/包含」、「からなる」、又は、他の任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図しているので、一連の要素を含む製品、機器、プロセス又は方法は、それらの要素を含むだけではなく、必要に応じて、明示的に挙げられていない他の要素を含むか、或いは、このような製品、機器、プロセス、又は方法に固有される要素も含んでもよいことを理解されたい。これ以上の制限がない場合、用語「含む/包含」、「からなる」で限定された要素は、上記要素を含む製品、機器、プロセス又は方法には、他の同一の要素があることを排除するものではない。
【0024】
また、用語「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「頂」、「底」、「内」、「外」等の指示方向又は位置関係は、図面に示される方向又は位置関係に基づくものであり、本発明の説明を容易にし、説明を簡単化するためだけであり、言及されている装置、部材、又は構造が、特定の方向を持ち、特定の方向で構築又は操作されなければならないことを指示したり暗示したりするものではなく、本発明への制限として理解してはならない、ということも理解されたい。
【0025】
本発明において、他に明確な規定及び限定がない限り、用語「取付」、「繋がる」、「接続」、「固定」などは、広い意味で理解されるべきであり、例えば、固定接続であっても、取り外し可能な接続であっても、一体になってもよく、機械的接続であっても、電気的接続であってもよく、直接に繋がっても、中間媒体を介して間接に繋がっても、2つの要素の内部の連通であっても、2つの要素間の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、本発明における上記用語の具体的な意味は、具体的な状況に従って理解可能である。
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の各実施例による技術案を詳しく説明する。
【0027】
図1には、先行技術におけるステータ抜板の部分構造模式図が示されている。従来のモータステータ抜板は、通常、金型で打ち抜かれてなるものであり、その外縁は、ある標準円上にあるか、又はステータを取り付けるための1つ又は複数のラグを標準円に追加してなるものであり、ステータ抜板の外縁の全領域を利用して放熱又は冷却するわけではない。
【0028】
これに対して、本発明の実施例には、ステータコアの冷却及び放熱に関する新しい技術案が提出されており、
図2を参照して、当該ステータ抜板は、同様に金型で打ち抜かれてなるものであり、その主な技術構想としては、外円の全体に、連続した凹溝及び突起構造が設けられており、当該凹溝及び突起構造が、冷却媒体を流すために使用され、特に、冷却媒体が前記凹溝を流れる。このように、冷却媒体が空気であったとしても、ステータ抜板の放熱効果を向上させることができる。
【0029】
上記凹溝及び突起の具体的な形状、構造及び具体的な数は、特に制限されなくてもよく、ステータ抜板の厚さ及び外縁は、任意のサイズにすることもでき、具体的に、モータの全体的な設計に応じて調整できる。
【0030】
具体的に、前記凹溝及び突起構造は、冷却媒体が流れるためのもので、前記ステータ抜板の軸方向に延びており、これにより、前記ステータ抜板からなるステータコアの外円の放熱面積を増大し、ステータコア上の冷却媒体の流れ面積を増やすとともに、前記ステータコアの外円の表面上の流動状態を改善することができる。冷却性能が向上すると、モータの定格電力及び定格トルクの向上が可能となる。
【0031】
シミュレーション模擬と実験検証をしたところ、上記設計は、モータの定格電力と定格トルクを予想外に向上させることができ、その増加幅が5%~10%の範囲である。
【0032】
1つの具体的な実施例において、前記凹溝及び突起構造は、波状構造である。
【0033】
好ましくは、前記波状構造は、正弦型構造、連続矩形構造、又は正弦矩形混在型構造であり、
図3に示す拡大図から見て、この
図3における波状構造は、正弦型の波と矩形状の波とが混在しているものである。もちろん、他の任意の規則的な形状や不規則な形状にしてもよい。
【0034】
一般的に、前記ステータ抜板の外縁の全領域に亘って分布するために、正弦型の波の山又は谷の数は5つ以上である。
【0035】
1つの好ましい実施例において、前記ステータコアの構造強度に影響しないように、かつ、冷却媒体の量に対するニーズを考慮して、前記凹溝の最低点と前記突起の最高点との間の垂直距離Hの数値範囲は、0.1~5mmである。もちろん、凹溝及び突起のサイズは、前記データ範囲に制限されず、モータの全体的な設計要求に応じて調整してもよい。
図4には、正弦型ステータ抜板のピーク-ピーク値の間の垂直距離Hの模式図が示されている。同図における垂直距離Hの値は、好ましくは3mmであり得る。
【0036】
1つのより好ましい実施例において、前記凹溝の最低点と前記突起の最高点との間の垂直距離Hの数値範囲は、2~4mmであり、このデータ範囲は、モータの冷却効率を向上させる好ましい範囲であり、通常より優れた技術効果が得られる。
【0037】
図2に示すように、前記ステータ抜板の外円の周上には、いくつかのラグが設けられており、当該ラグは、ステータ抜板とステータ抜板からなるステータコアとを前記モータハウジングに固定するために使用可能であり、また、前記ラグには、前記凹溝及び突起構造が設けられてもよいし、設けられなくてもよい。
【0038】
本発明の実施例の他の局面には、前記ステータ抜板をいくつか積層してなるステータコアが提供されている。
【0039】
1つの好ましい実施例において、同一のステータコアにおける各前記ステータ抜板の凹溝及び突起が同じ又は類似の構造を有し、積層時の凹溝又は突起の位置が同じになることで、ステータコア上の凹溝によって軸方向に直線状流路が形成されるか、若しくは、ステータ抜板上の前記凹溝又は突起の位置がわずかにずれていることで、ステータコアには、湾曲した又はらせん状の冷却媒体流路が形成される。
【0040】
本発明の実施例のさらに他の局面には、モータがさらに提供されており、当該モータは、上記のいずれか一項に記載のステータコアを用いているため、当該ステータコアの適用により、当該モータの定格電力及び定格トルクを5~10%向上させることができ、このように、上記ステータ抜板の構造上の改良により、予想外の技術的効果が得られる。
【0041】
さらに、冷却効果の保証又は向上のために、前記モータの冷却媒体は、単一の水冷形式ではなく、油、又は、油と水との混合物である。
【0042】
上記内容は、あくまでも本発明の実施形態であり、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の精神及び原則内になされたいかなる補正、均等的置換、改良、拡張等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるものとする。