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特開2022-111231メッセンジャーRNAを送達するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111231
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】メッセンジャーRNAを送達するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20220722BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220722BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220722BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K31/573
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/28
A61P43/00 105
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092262
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2018567951の分割
【原出願日】2017-06-30
(31)【優先権主張番号】62/357,189
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/375,292
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513146871
【氏名又は名称】アルブータス・バイオファーマー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・エイブラムス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ジャッジ
(72)【発明者】
【氏名】キュー・モン・ラム
(72)【発明者】
【氏名】ローン・ラルフ・パーマー
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ピー・リード
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ディー・ヤウォルスキー
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、機能性タンパク質の完全なまたは部分的な欠如によって引き起こされる疾患に罹患しているヒト内で機能的形態の該タンパク質を発現させるための組成物及び方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、(c)コルチコステロイド、及び(d)核酸を含み、前記核酸及び前記コルチコステロイドが内部に封入されている脂質ナノ粒子に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質ナノ粒子であって、
(a)カチオン性脂質、
(b)非カチオン性脂質、
(c)コルチコステロイド、及び
(d)核酸を含み、前記核酸及び前記コルチコステロイドが前記脂質ナノ粒子内に封入される、前記脂質ナノ粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子の集団。
【請求項3】
脂質ナノ粒子の集団であって、
(a)各々がカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及びコルチコステロイドを含む脂質ナノ粒子の第一の集団、ならびに
(b)各々がカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び核酸を含む脂質ナノ粒子の第二の集団
から選択される脂質ナノ粒子の少なくとも1つの集団を含み、
脂質ナノ粒子の前記第一の集団は核酸を含まず、脂質ナノ粒子の前記第二の集団はコルチコステロイドを含まない、前記集団。
【請求項4】
請求項3に記載の脂質ナノ粒子の前記第一及び第二の集団を含む脂質ナノ粒子の集団。
【請求項5】
前記核酸がmRNAである、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項6】
前記コルチコステロイドが、3.0より大きいlogPを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項7】
前記コルチコステロイドがグルココルチコイドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項8】
前記コルチコステロイドが鉱質コルチコイドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項9】
前記コルチコステロイドがクロベタゾールである、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項10】
前記非カチオン性脂質が、PEG-脂質コンジュゲート及びリン脂質から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項11】
さらにコレステロールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項12】
前記リン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、またはそれらの混合物を含む、請求項10及び11のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項13】
前記PEG-脂質コンジュゲートが、PEG-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)コンジュゲート、PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)コンジュゲート、PEG-リン脂質コンジュゲート、PEG-セラミド(PEG-Cer)コンジュゲート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10及び11のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項14】
前記PEG-脂質コンジュゲートが、PEG-DAAコンジュゲートである、請求項13に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項15】
前記PEG-DAAコンジュゲートが、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)コンジュゲート、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)コンジュゲート、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)コンジュゲート、PEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)コンジュゲート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項16】
脂質:核酸の質量比が、約9:1~約20:1である、請求項1~15のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項17】
前記mRNAが化学的に修飾される、請求項1~16のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項18】
高電子密度のコアを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項19】
高電子密度のコアを含み、前記mRNAが、前記高電子密度のコア内に位置する、請求項1~17のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項20】
多様な請求項1に記載の脂質ナノ粒子を含む脂質粒子の集団。
【請求項21】
リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項22】
少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲート、及び脂質粒子内に封入されたmRNAを有する請求項1~21のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団であって、前記脂質粒子が、リン脂質を0.5モルパーセント未満含むことを条件とする、前記脂質ナノ粒子またはその集団。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項24】
タンパク質をコードするmRNAを細胞に導入する方法であって、前記mRNAが前記細胞に導入され、そこで発現して前記タンパク質を生成する条件下、前記細胞を請求項5~23のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団と接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
ヒトにおける、前記ヒトのタンパク質の発現障害によって引き起こされる疾患に関連する1つ以上の症状を治療及び/または改善する方法であって、治療有効量の請求項5~23のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子またはその集団を前記ヒトに投与することを含む前記方法であり、前記脂質粒子内に封入された前記mRNAが前記タンパク質をコードする、前記方法。
【請求項26】
多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤であって、各脂質ナノ粒子が、
(a)カチオン性脂質、
(b)非カチオン性脂質、及び
(c)前記脂質粒子内に封入されるmRNAを含み、
リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する、前記脂質ナノ粒子製剤。
【請求項27】
脂質ナノ粒子の製造方法であって、
(a)カチオン性脂質、
(b)非カチオン性脂質、及び
(c)精製されたmRNA
を混合して脂質ナノ粒子を形成することを含む前記方法であり、前記mRNAは、前記脂質ナノ粒子内に封入され、前記脂質ナノ粒子は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する、前記方法。
【請求項28】
多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤の製造方法であって、
(a)カチオン性脂質、
(b)非カチオン性脂質、及び
(c)精製されたmRNA
を混合して多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を形成するステップを含む前記方法であり、前記mRNAは、前記脂質ナノ粒子製剤の脂質粒子内に封入され、前記脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する、前記方法。
【請求項29】
(a)カチオン性脂質、
(b)非カチオン性脂質、及び
(c)精製されたmRNA
を混合して多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を形成するステップを含む工程により製造される、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤であって、前記mRNAは、前記脂質ナノ粒子製剤の脂質粒子内に封入され、前記脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する、前記脂質ナノ粒子製剤。
【請求項30】
(a)カチオン性脂質、
(b)少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲート、及び
(c)脂質粒子内に封入されるmRNA
を含む脂質ナノ粒子であって、前記脂質粒子は、リン脂質を0.5モルパーセント未満含むことを条件とする、前記脂質ナノ粒子。
【請求項31】
脂質ナノ粒子の集団であって、前記集団の各脂質ナノ粒子が、
(a)カチオン性脂質、
(b)少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲート、及び
(c)前記脂質ナノ粒子内に封入されるmRNA
を含み、前記脂質ナノ粒子は、リン脂質を0.5モルパーセント未満含むことを条件とする、前記集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2016年6月30日に出願された米国特許出願第62/357,189号、及び2016年8月15日に出願された米国特許出願第62/375,292号の優先権の利益を主張する。当該出願は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ヒトのいくつかの疾患は、機能性タンパク質が通常存在し、これが活性である細胞型における該タンパク質の欠如またはその機能障害によって引き起こされる。該機能性タンパク質は、例えば、そのコード遺伝子の転写不活性により、または、該タンパク質を完全にもしくは部分的に機能しないようにするコード遺伝子の変異の存在により、完全にまたは部分的に欠ける場合がある。
【0003】
タンパク質の完全なまたは部分的な不活性化によって引き起こされるヒトの疾患の例としては、X連鎖重症複合免疫不全(X-SCID)、及び副腎白質ジストロフィー(X-ALD)が挙げられる。X-SCIDは、免疫系内のB細胞及びT細胞の発生ならびに成熟に関与するいくつかのインターロイキンに対する受容体の成分である共通ガンマ鎖タンパク質をコードする遺伝子における1つ以上の変異によって引き起こされる。X-ALDは、ABCD1と呼ばれるペルオキシソーム膜輸送タンパク質遺伝子における1つ以上の変異によって引き起こされる。X-ALDに罹患した個体は、体全体の組織中に極めて高レベルの長鎖脂肪酸を有し、精神障害または死につながり得る様々な症状を引き起こす。
【0004】
遺伝子治療を用いて、機能性タンパク質が通常存在し、これが活性である細胞型における該タンパク質の欠如またはその機能障害によって引き起こされるいくつかの疾患を治療する試みがなされている。遺伝子治療は通常、影響を受けたタンパク質の機能的形態をコードする遺伝子を含むベクターを、罹患したヒトに導入すること及び該機能性タンパク質を発現させて該疾患を治療することを含む。これまでのところ、遺伝子治療はある程度の成功を収めている。
【0005】
従って、機能性タンパク質の完全なまたは部分的な欠如によって引き起こされる疾患に罹患しているヒト内で機能的形態の該タンパク質を発現させるための組成物及び方法が継続的に必要であり、当該治療に対する免疫反応をそれほど誘発しない方法及び組成物による核酸(例えば、mRNA)の送達が必要である。
【発明の概要】
【0006】
上記に基づき、本発明は、ある特定の実施形態において、例えば、生細胞(例えば、ヒト体内の細胞)で1つ以上のmRNA分子を発現させるため、核酸を送達するのに使用することができる組成物及び方法を提供する。該mRNA分子は、生細胞内で発現される1つ以上のポリペプチドをコードすることができる。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、罹患生物(例えば、ヒト等の哺乳類)内で発現され、該ポリペプチドの発現が当該疾患の1つ以上の症状を改善する。本発明のある特定の実施形態の組成物及び方法は、ヒト体内での機能性ポリペプチドの欠如またはレベルの低下によって引き起こされるヒトの疾患の治療に特に有用である。
【0007】
1つの態様において、本発明は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、(c)コルチコステロイド、及び(d)核酸を含む脂質ナノ粒子(LNP)を提供し、この場合、該核酸及び該コルチコステロイドは、該脂質ナノ粒子内に封入される。本発明のある特定の実施形態は、該脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子の集団を提供する。本発明のある特定の実施形態は、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質粒子の集団を提供する。ある特定の実施形態では、該核酸は、HPLCで精製されたmRNAである。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。
【0008】
本発明のある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子の集団を提供し、これは、(a)各々がカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及びコルチコステロイドを含む脂質ナノ粒子の第一の集団、ならびに(b)各々がカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び核酸を含む脂質ナノ粒子の第二の集団から選択される脂質ナノ粒子の少なくとも1つの集団を含み、この場合、脂質ナノ粒子の該第一の集団は核酸を含まず、脂質ナノ粒子の該第二の集団はコルチコステロイドを含まない。本発明のある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子の該第一及び第二の集団を含む脂質ナノ粒子の集団を提供する。ある特定の実施形態では、該核酸は、HPLCで精製されたmRNAである。
【0009】
本発明のある特定の実施形態は、(a)カチオン性脂質、(b)少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲート、及び(c)当該脂質粒子内に封入されるmRNAを含む脂質ナノ粒子を提供する。ただし、該脂質粒子は、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。
【0010】
ある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子の集団を提供し、この場合、該集団の各脂質ナノ粒子は、(a)カチオン性脂質、(b)少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲート、及び(c)当該脂質ナノ粒子内に封入されるmRNAを含む。ただし、該脂質ナノ粒子は、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、LNPの該集団は、コルチコステロイドを含むLNPを含む。ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。
【0011】
本発明のある特定の実施形態は、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を提供し、この場合、各脂質ナノ粒子は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)当該脂質粒子内に封入されるmRNAを含み、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。
【0012】
本発明のある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子の製造方法を提供し、該方法は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)精製されたmRNAを混合して脂質ナノ粒子を形成することを含み、この場合、該mRNAは、当該脂質ナノ粒子内に封入され、該脂質ナノ粒子は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。
【0013】
本発明のある特定の実施形態は、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤の製造方法を提供し、該方法は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)精製されたmRNAを混合して多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を形成するステップを含み、この場合、該mRNAは、当該脂質ナノ粒子製剤の脂質粒子内に封入され、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。
【0014】
本発明のある特定の実施形態は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)精製されたmRNAを混合して多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を形成するステップを含む工程により製造される、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を提供し、この場合、該mRNAは、当該脂質ナノ粒子製剤の脂質粒子内に封入され、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。
【0015】
従って、1つの態様において、本発明は、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び当該脂質粒子内に封入されるmRNA分子を含む脂質粒子を提供する。
【0016】
本発明はまた、核酸-脂質粒子を提供し、これらは各々、(a)カチオン性脂質、PEG-脂質、及びリン脂質を含む脂質粒子、ならびに(b)mRNA分子を含み、該mRNA分子は、該脂質粒子内に封入される。該脂質粒子は、任意にコレステロールを含むことができる。該mRNAは、該脂質粒子内に完全に封入されても部分的に封入されてもよい。いくつかの実施形態では、該核酸-脂質粒子は、脂質:mRNA質量比が約9:1~約20:1である。特定の実施形態では、該核酸-脂質粒子は、脂質:mRNA質量比が約12:1である。該mRNAは、例えば、ウリジンの代わりにプソイドウリジンを組み込むこと、及び/またはシチジンの代わりに5-メチルシチジンを組み込むことにより、化学的に修飾することができる。本発明はまた、本発明の核酸-脂質粒子を含む医薬組成物を提供する。通常、該医薬組成物は、賦形剤を含む。
【0017】
別の態様において、本発明は、タンパク質をコードするmRNAを細胞に導入する方法を提供する。該方法は各々、該mRNAが該細胞に導入され、そこで発現して該タンパク質を生成する条件下、該細胞を本発明の核酸-脂質粒子(通常、多様な本発明の核酸-脂質粒子)と接触させるステップを含む。該方法は、インビボでもインビトロでも実施することができる。例えば、該細胞は、生体内(例えば、ヒト体内等の哺乳類の体内)にあり、該核酸-脂質粒子は、注入によって該生体内に導入することができる。
【0018】
さらなる態様において、本発明は、ヒトにおける、該ヒトのタンパク質の発現障害によって引き起こされる疾患に関連する1つ以上の症状を治療及び/または改善する方法を提供する。本発明の本態様の方法は、治療有効量の本発明の核酸-脂質粒子(通常、多様な本発明の核酸-脂質粒子)を該ヒトに投与するステップを含み、この場合、該核酸-脂質粒子内に封入されたmRNAが該タンパク質をコードする。コードされたタンパク質は、該ヒト内で発現され、それにより、該疾患の少なくとも1つの症状が改善される。
【0019】
1つの実施形態では、本発明の粒子に使用される脂質粒子における脂質の核酸(例えば、mRNA)に対する比は、約13:1である。
【0020】
本発明の方法及び組成物は、例えば、少なくとも部分的に、ヒト体内の細胞、組織、及び/または器官におけるポリペプチドの欠如によって、もしくはポリペプチドのレベルの低下によって、またはポリペプチドの非機能的な(もしくは部分的に機能的な、または異常に機能的な)形態の発現によって引き起こされる任意の疾患を治療するために使用することができる。
【0021】
本発明の他の目的、特徴、及び利益は、以下の詳細な説明及び図面から当業者には明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載の核酸-脂質粒子、方法、及び製剤処方は、ヒト等の哺乳類生物におけるタンパク質の発現のための重要な新たな組成物及び方法を有利に提供する。本発明の実施形態は、例えば、1日1回、1週間に1回、もしくは数週間に1回(例えば、2週、3週、4週、5週、もしくは6週間に1回)、もしくは1ヶ月に1回、または1年に1回施すことができる。脂質粒子内にmRNAを封入することは、1つ以上の利点、例えば、血流中のヌクレアーゼ分解からmRNAを保護すること、標的組織にmRNAを優先的に蓄積させること、及び当該mRNAがコードされたタンパク質を発現することができる細胞質へのmRNAの導入方法を提供すること等を与える。
【0023】
1つの態様において、本発明は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、(c)コルチコステロイド、及び(d)核酸を含む脂質ナノ粒子を提供し、この場合、該核酸及び該コルチコステロイドは、該脂質ナノ粒子内に封入される。本発明のある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子を含む当該脂質ナノ粒子の集団を提供する。本発明のある特定の実施形態は、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質粒子の集団を提供する。ある特定の実施形態では、該核酸は、HPLCで精製されたmRNAである。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。
【0024】
本発明のある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子の集団を提供し、これは、(a)各々がカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及びコルチコステロイドを含む脂質ナノ粒子の第一の集団、ならびに(b)各々がカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び核酸を含む脂質ナノ粒子の第二の集団から選択される脂質ナノ粒子の少なくとも1つの集団を含み、この場合、脂質ナノ粒子の該第一の集団は核酸を含まず、脂質ナノ粒子の該第二の集団はコルチコステロイドを含まない。本発明のある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子の該第一及び第二の集団を含む脂質ナノ粒子の集団を提供する。ある特定の実施形態では、該核酸は、HPLCで精製されたmRNAである。
【0025】
本発明のある特定の実施形態は、(a)カチオン性脂質、(b)少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲート、及び(c)当該脂質粒子内に封入されるmRNAを含む脂質ナノ粒子を提供する。ただし、該脂質粒子はリン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。
【0026】
ある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子の集団を提供し、この場合、該集団の各脂質ナノ粒子は、(a)カチオン性脂質、(b)少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲート、及び(c)当該脂質ナノ粒子内に封入されるmRNAを含む。ただし、該脂質ナノ粒子は、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、LNPの該集団は、コルチコステロイドを含むLNPを含む。ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。
【0027】
本発明のある特定の実施形態は、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を提供し、この場合、各脂質ナノ粒子は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)当該脂質粒子内に封入されるmRNAを含み、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該mRNAは、精製されたmRNAである。ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3.5モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.05モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。ある特定の実施形態では、該製剤中の実質的にすべての脂質ナノ粒子は、該脂質ナノ粒子内に封入されたコルチコステロイドを含む。例えば、ある特定の実施形態では、該製剤中の脂質ナノ粒子の少なくとも約80%は、さらに、該脂質ナノ粒子内に封入されたコルチコステロイドを含む。ある特定の実施形態では、該製剤中の脂質ナノ粒子の少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%は、さらに、該脂質ナノ粒子内に封入されたコルチコステロイドを含む。
【0028】
本発明のある特定の実施形態は、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を提供し、この場合、各脂質ナノ粒子は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)当該脂質粒子内に封入されるmRNAを含み、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有し、該非カチオン性脂質は、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートである。ただし、該脂質ナノ粒子は、リン脂質を0.5モルパーセント未満含み、該製剤中の脂質ナノ粒子の少なくとも90%は、さらに、該脂質ナノ粒子内に封入されたコルチコステロイドを含む。
【0029】
本発明のある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子製剤を提供し、これは、
(a)各々がカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び当該脂質ナノ粒子内に封入されるコルチコステロイドを含む脂質ナノ粒子の第一の集団、ならびに
(b)各々がカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び当該脂質ナノ粒子内に封入されるmRNAを含む脂質ナノ粒子の第二の集団を含み、この場合、脂質ナノ粒子の該第一の集団はmRNAを含まず、脂質ナノ粒子の該第二の集団はコルチコステロイドを含まず、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。
【0030】
本発明のある特定の実施形態は、脂質ナノ粒子の製造方法を提供し、これは、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)精製されたmRNAを混合して脂質ナノ粒子製剤を形成することを含み、この場合、該mRNAは、当該脂質ナノ粒子内に封入され、該脂質ナノ粒子は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。ある特定の実施形態では、該方法は、さらに、mRNAを精製して、該精製されたmRNAを提供することを含む。
【0031】
本発明のある特定の実施形態は、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤の製造方法を提供し、該方法は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)精製されたmRNAを混合して多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を形成するステップを含み、この場合、該mRNAは、当該脂質ナノ粒子製剤の脂質粒子内に封入され、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。ある特定の実施形態では、該方法は、さらに、mRNAを精製して(例えば、HPLCで)、該精製されたmRNAを提供することを含む。
【0032】
本発明のある特定の実施形態は、(a)カチオン性脂質、(b)非カチオン性脂質、及び(c)精製されたmRNAを混合して多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を形成するステップを含む工程により製造される、多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を提供し、この場合、該mRNAは、当該脂質ナノ粒子製剤の脂質粒子内に封入され、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該LNPは、コルチコステロイドを含む。ある特定の実施形態では、該方法は、さらに、mRNAを精製して(例えば、HPLCで)、該精製されたmRNAを提供することを含む。
【0033】
ある特定の実施形態では、該核酸はmRNAである。
【0034】
ある特定の実施形態では、該核酸は、精製されたmRNAである。
【0035】
ある特定の実施形態では、該mRNAは、HPLCで精製されたmRNAである。
【0036】
ある特定の実施形態では、該コルチコステロイドは、logPが3.0より大きい。
【0037】
ある特定の実施形態では、製剤/集団中の実質的にすべての脂質ナノ粒子は、該脂質ナノ粒子内に封入されたコルチコステロイドを含む。例えば、ある特定の実施形態では、製剤/集団中の脂質ナノ粒子の少なくとも約80%は、さらに、該脂質ナノ粒子内に封入されたコルチコステロイドを含む。ある特定の実施形態では、該製剤/集団中の脂質ナノ粒子の少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%は、さらに、該脂質ナノ粒子内に封入されたコルチコステロイドを含む。
【0038】
ある特定の実施形態では、該コルチコステロイドは、グルココルチコイドである。
【0039】
ある特定の実施形態では、該コルチコステロイドは、鉱質コルチコイドである。
【0040】
ある特定の実施形態では、該コルチコステロイドは、クロベタゾールである。
【0041】
ある特定の実施形態では、該グルココルチコイドは、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、コルチコステロン、デオキシコルチコステロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、アルドステロン、フルチカゾン、クロベタゾン、クロベタゾール、及びロテプレドノール、ならびにそれらの医薬的に許容される塩、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0042】
ある特定の実施形態では、該非カチオン性脂質は、PEG-脂質コンジュゲート及びリン脂質から選択される。
【0043】
ある特定の実施形態では、該非カチオン性脂質は、PEG-脂質コンジュゲート、リン脂質、またはPEG-脂質コンジュゲート及びリン脂質の混合物から選択される。
【0044】
ある特定の実施形態では、該非カチオン性脂質は、リン脂質を含む。
【0045】
ある特定の実施形態では、該非カチオン性脂質は、PEG-脂質コンジュゲートを含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、該非カチオン性脂質は、PEG-脂質コンジュゲート及びリン脂質の混合物を含む。
【0047】
ある特定の実施形態では、該非カチオン性脂質は、リン脂質である。
【0048】
ある特定の実施形態では、該非カチオン性脂質は、PEG-脂質コンジュゲートである。
【0049】
ある特定の実施形態では、該非カチオン性脂質は、PEG-脂質コンジュゲート及びリン脂質の混合物である。
【0050】
ある特定の実施形態では、該脂質ナノ粒子は、さらに、コレステロールを含む。
【0051】
ある特定の実施形態では、該リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、またはそれらの混合物を含む。
【0052】
ある特定の実施形態では、該PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)コンジュゲート、PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)コンジュゲート、PEG-リン脂質コンジュゲート、PEG-セラミド(PEG-Cer)コンジュゲート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
ある特定の実施形態では、該PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-2000-C-DMA、PEG-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)コンジュゲート、PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)コンジュゲート、PEG-リン脂質コンジュゲート、PEG-セラミド(PEG-Cer)コンジュゲート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
ある特定の実施形態では、該PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-DAAコンジュゲートである。
【0055】
ある特定の実施形態では、該PEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)コンジュゲート、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)コンジュゲート、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)コンジュゲート、PEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)コンジュゲート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
ある特定の実施形態では、該脂質ナノ粒子は、脂質:核酸の質量比が約9:1~約20:1である。
【0057】
ある特定の実施形態では、該脂質ナノ粒子製剤の多様な脂質ナノ粒子は、脂質:核酸の質量比が約9:1~約20:1である。
【0058】
ある特定の実施形態では、該mRNAは、化学的に修飾される。
【0059】
ある特定の実施形態では、該脂質ナノ粒子は、高電子密度のコアを含む。
【0060】
ある特定の実施形態では、該脂質ナノ粒子は、高電子密度のコアを含み、該mRNAは該高電子密度のコア内に位置する。
【0061】
ある特定の実施形態は、本明細書に記載の脂質ナノ粒子またはその集団、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0062】
ある特定の実施形態は、タンパク質をコードするmRNAを細胞に導入する方法を提供する。該方法は、該mRNAが該細胞に導入され、そこで発現して該タンパク質を産生する条件下、該細胞を本明細書に記載の脂質ナノ粒子またはその集団と接触させることを含む。
【0063】
ある特定の実施形態は、ヒトにおける、該ヒトのタンパク質の発現障害によって引き起こされる疾患に関連する1つ以上の症状を治療及び/または改善する方法を提供する。該方法は、治療有効量の本明細書に記載の脂質ナノ粒子またはその集団を該ヒトに投与することを含み、この場合、該脂質ナノ粒子内に封入されたmRNAが該タンパク質をコードする。
【0064】
ある特定の実施形態では、該リン脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である。
【0065】
ある特定の実施形態では、該PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-2000-C-DMAである。
【0066】
ある特定の実施形態では、該LNPは、該PEG-脂質コンジュゲートを少なくとも3.5モルパーセント(例えば、少なくとも約3.5、4、4.5、5、5.5、または6モルパーセント)含む。
【0067】
ある特定の実施形態では、PEG-脂質コンジュゲートの量は、少なくとも3モルパーセント(例えば、少なくとも3.1モルパーセント、少なくとも3.2モルパーセント、少なくとも3.3モルパーセント、少なくとも3.4モルパーセント、少なくとも3.5モルパーセント、少なくとも3.6モルパーセント、少なくとも3.7モルパーセント、少なくとも3.8モルパーセント、少なくとも3.9モルパーセント、少なくとも4モルパーセント)である。リン脂質に関しては、ある特定の実施形態では、本発明を実施する上でリン脂質は使用されない。ある特定の実施形態では、該脂質粒子は、リン脂質を2モルパーセント未満、例えば、リン脂質を1.9mol%、リン脂質を1.8mol%、リン脂質を1.7mol%、リン脂質を1.6mol%、リン脂質を1.5mol%、リン脂質を1.4mol%、リン脂質を1.3mol%、リン脂質を1.2mol%、リン脂質を1.1mol%、リン脂質を1.0mol%、リン脂質を0.9mol%、リン脂質を0.8mol%、リン脂質を0.7mol%、リン脂質を0.6mol%、リン脂質を0.5mol%、リン脂質を0.4mol%、リン脂質を0.3mol%、リン脂質を0.2mol%、リン脂質を0.1mol%、またはリン脂質を0.0%、例えば、リン脂質を1.9mol%未満、リン脂質を1.8mol%未満、リン脂質を1.7mol%未満、リン脂質を1.6mol%未満、リン脂質を1.5mol%未満、リン脂質を1.4mol%未満、リン脂質を1.3mol%未満、リン脂質を1.2mol%未満、リン脂質を1.1mol%未満、リン脂質を1.0mol%未満、リン脂質を0.9mol%未満、リン脂質を0.8mol%未満、リン脂質を0.7mol%未満、リン脂質を0.6mol%未満、リン脂質を0.5mol%未満、リン脂質を0.4mol%未満、リン脂質を0.3mol%未満、リン脂質を0.2mol%未満、リン脂質を0.1mol%未満含む。
【0068】
ある特定の実施形態では、該LNPは、少なくとも3モルパーセントの量で存在するPEG-脂質コンジュゲートを含む。ただし、該LNPは、リン脂質を0.5モルパーセント未満含む。ある特定の実施形態では、該PEG-脂質コンジュゲートは、少なくとも3.5モルパーセント(例えば、少なくとも約3.5、4、4.5、5、5.5、または6モルパーセント)の量で存在する。ある特定の実施形態では、該LNPは、リン脂質を0.05モルパーセント未満含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、該脂質ナノ粒子は、脂質:mRNAの質量比が約9:1~約20:1である。
【0070】
ある特定の実施形態は、本明細書に記載の方法に従って調製される脂質ナノ粒子を提供する。
【0071】
ある特定の実施形態は、本明細書に記載の多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を提供する。
【0072】
ある特定の実施形態は、本明細書に記載の多様な脂質ナノ粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を提供し、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水対照の反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、該脂質ナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水対照の反応の約29、28、2、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1倍を超えないIFIT反応を有する。
【0073】
本明細書で使用される以下の用語は、他に規定のない限り、それらに帰属する意味を有する。
【0074】
mRNA等の治療用核酸の「有効量」または「治療有効量」とは、所望の効果、例えば、当該タンパク質が発現される生物において所望の生物学的効果を引き起こす量のタンパク質のmRNA指向性の発現を生じるのに十分な量である。例えば、いくつかの実施形態では、該発現されたタンパク質は、体内のある細胞型で通常発現されるタンパク質の活性型であり、該mRNAの治療有効量は、健康な個体の細胞型で通常発現されるタンパク質の量の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも80%、または少なくとも90%)のコードされたタンパク質量を産生する量である。mRNAまたはタンパク質の発現を測定するのに適切なアッセイとしては、当業者に既知のドットブロット、ノーザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降法、酵素機能、及び表現型アッセイが挙げられるがこれらに限定されない。
【0075】
mRNAによる免疫反応の「減少(decrease)」、「減少(decreasing)」、「低下(reduce)」、または「低下(reducing)」とは、所与のmRNA(例えば、修飾mRNA)に対する免疫反応の検出可能な減少を意味することを意図している。修飾mRNAによる免疫反応の減少量は、未修飾のmRNAの存在下での免疫反応のレベルに対して決定され得る。検出可能な減少は、未修飾のmRNAの存在下で検出される免疫反応より約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、またはそれ以上低い場合がある。mRNAに対する免疫反応の減少は、通常、インビトロでキラー細胞によるサイトカイン(例えば、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-6、もしくはIL-2)産生の減少または該mRNAの投与後の哺乳類対象の血清中でのサイトカイン産生の減少によって測定される。
【0076】
「実質同一性」とは、ストリンジェントな条件下で参照配列にハイブリダイズする配列、または参照配列の特定の領域にわたって特定のパーセント同一性を有する配列を指す。
【0077】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という成句は、核酸が、通常は核酸の複雑な混合物中で、他の配列ではなくその標的配列にハイブリダイズする条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、状況により異なるであろう。配列が長いほど、高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの広範囲な指針は、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見られる。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度pHでの該特定の配列に対する熱融点(T)より約5~10℃低くなるように選択される。該Tは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で該標的配列にハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下で)である(標的配列が過剰に存在するとき、Tで、プローブの50%が平衡状態で使用される)。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミド等の不安定化剤の添加によっても達成され得る。選択的または特異的ハイブリダイゼーションの場合、正のシグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくは、バックグラウンドの10倍のハイブリダイゼーションである。
【0078】
例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下の通りでよい。50%ホルムアミド、5xSSC、及び1%SDS、42℃でインキュベート、または、5xSSC、1%SDS、65℃でインキュベート、0.2xSSC、及び0.1%SDS中65℃で洗浄。PCRの場合、温度約36℃が低ストリンジェンシー増幅に対して典型的であるが、アニーリング温度は、プライマーの長さにより約32℃~48℃の間で変化し得る。高ストリンジェンシーPCR増幅の場合、温度約62℃が典型的であるが、高ストリンジェンシーアニーリング温度は、プライマーの長さ及び特異性によって、約50℃~約65℃に及ぶ場合がある。高及び低ストリンジェンシー増幅の両方にとって典型的なサイクル条件は、90℃~95℃で30秒~2分間の変性段階、30秒~2分間続くアニーリング段階、及び約72℃で1~2分間の伸長段階を含む。低及び高ストリンジェンシー増幅反応のプロトコル及び指針は、例えば、Innis et al.,PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)に示されている。
【0079】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、なお実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが、遺伝暗号によって許容される最大のコドンの縮退を用いて作成される場合に生じる。かかる場合には、該核酸は、通常、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、40%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDSの緩衝液中、37℃でのハイブリダイゼーション、及び1XSSC中、45℃での洗浄を含む。正のハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者には、代替的なハイブリダイゼーション及び洗浄条件を用いて同様のストリンジェンシーの条件を与えることができることが容易に認識されよう。ハイブリダイゼーションパラメータを決定するためのさらなる指針は、多数の参考文献、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al., eds.に示されている。
【0080】
2つ以上の核酸との関連での「実質的に同一」または「実質同一性」という用語は、比較ウィンドウ、または指定された領域にわたる最大の一致について比較及び整列させた場合に、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、もしくは手作業でのアラインメント及び目視検査によって測定されるときの同じである2つ以上の配列もしくは部分配列、または同じであるヌクレオチドを特定のパーセンテージ有する2つ以上の配列もしくは部分配列を指す(すなわち、特定の領域にわたって少なくとも約60%、好ましくは、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一)。この定義は、その文脈が示す場合、配列の相補体も同様に指す。好ましくは、実質同一性は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60ヌクレオチド長である領域にわたって存在する。
【0081】
配列比較に関して、通常は1つの配列が参照配列となり、これに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを用いても、別のパラメータを指定してもよい。該配列比較アルゴリズムは、その後、該プログラムパラメータを基に、該参照配列に対する該試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0082】
本明細書で使用される「比較ウィンドウ」は、約5~約60、通常約10~約45、より通常は約15~約30からなる群から選択される複数の隣接位置のいずれか1つのセグメントへの言及を含み、ここでは、ある配列は、同数の隣接位置の参照配列と、これら2つの配列を最適に並べた後に比較され得る。比較のための配列のアラインメント方法は、当技術分野では周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482(1981)のローカルホモロジーアルゴリズムにより、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443(1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444(1988)の類似性の探索方法により、これらアルゴリズムのコンピュータ化された実施(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESALDHIT、FASTA、及びALDHASTA)により、または手作業でのアラインメント及び目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.(1995 supplement)参照)により行うことができる。
【0083】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの非限定的な例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.,25:3389-3402(1977)及びAltschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403-410(1990)に記載されている。BLAST及びBLAST2.0を本明細書に記載のパラメータとともに使用し、本発明の核酸のパーセント配列同一性を決定する。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)より公表されている。別の例は、タンパク質またはヌクレオチド(例えば、RNA)配列を整列させるための、Needleman-Wunschアルゴリズム等のパーセント配列同一性を決定するためのグローバルアラインメントアルゴリズムである。
【0084】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析も行う(例えば、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873-5787(1993)参照)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間の一致が偶然生じる確率を示す。例えば、核酸は、当該試験核酸と参照核酸の比較における最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合に、参照配列と類似であると見なされる。
【0085】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、少なくとも2つのデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドを一本鎖または二本鎖のいずれかの形態で含むポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、事前濃縮DNA、PCR産物、ベクター(例えば、P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらの群の誘導体及び組み合わせの形態でよい。RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、tRNA、ウイルスRNA(vRNA)、及びそれらの組み合わせの形態でよい。核酸には、既知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基もしくは結合を含む核酸が含まれ、これらは、合成、自然発生、及び非自然発生であり、参照核酸と同様の結合特性を有する。かかる類似体の例としては、制限なく、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、及びペプチド-核酸(PNA)が挙げられる。特に限定されない限り、該用語は、参照核酸と同様の結合特性を有する天然のヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。核酸配列は、ある特定の実施形態では、「ロック解除された核酸塩基類似体」(「UNA」と略す)を含んでもよい。
【0086】
「ロック解除された核酸塩基類似体」(「UNA」と略す)という用語は、リボース環のC2’及びC3’原子が共有結合していない非環式核酸塩基を指す。該「ロック解除された核酸塩基類似体」という用語は、構造Aとして特定される以下の構造を有する核酸塩基類似体を含む。
【化1】
ここで、Rは、ヒドロキシルであり、塩基は、任意の天然または非天然塩基、例えば、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、及びチミン(T)等である。本発明を実施する上で有用なUNAとしては、非環式2’-3’-seco-ヌクレオチドモノマーとして米国特許第8,314,227号で特定されている分子が挙げられる。当該特許は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0087】
別段の指示のない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたその変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補配列を、明確に示された配列と同様に暗黙的に包含する。特に、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの第三の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.,19:5081(1991)、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.,260:2605-2608(1985)、Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes,8:91-98(1994))。
【0088】
本明細書で使用される「低分子干渉RNA」または「siRNA」という用語は、該siRNAが標的遺伝子もしくは配列と同じ細胞にある場合に、該標的遺伝子もしくは配列の発現を低下させることまたは阻害することが可能な(例えば、該siRNA配列に相補的なmRNAの分解を媒介することによって、またはその翻訳を阻害することによって)二本鎖(double-stranded)RNA(すなわち、二本鎖(duplex)RNA)を指す。該siRNAは、該標的遺伝子もしくは配列に対して実質もしくは完全同一性を有する場合もあれば、ミスマッチの領域(すなわち、ミスマッチモチーフ)を含む場合もある。ある特定の実施形態では、該siRNAは、約19~25(二本鎖)ヌクレオチド長を有する場合があり、好ましくは約20~24、21~22、または21~23(二本鎖)ヌクレオチド長である。siRNA二本鎖は、約1~約4ヌクレオチドまたは約2~約3ヌクレオチドの3’突出及び5’リン酸末端を含み得る。siRNAの例としては、制限なく、1本の鎖がセンス鎖であり、他方が相補的アンチセンス鎖である2本の別々の鎖分子から組み立てられた二本鎖ポリヌクレオチド分子が挙げられる。
【0089】
好ましくは、siRNAは化学合成される。siRNAはまた、E.coliのRNaseIIIまたはダイサーによる、より長いdsRNA(例えば、約25ヌクレオチド長を超えるdsRNA)の切断によって生成することもできる。これらの酵素は、該dsRNAを生物学的に活性なsiRNAに加工する(例えば、Yang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:9942-9947(2002)、Calegari et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:14236(2002)、Byrom et al.,Ambion TechNotes,10(1):4-6(2003)、Kawasaki et al.,Nucleic Acids Res.,31:981-987(2003)、Knight et al.,Science,293:2269-2271(2001)、及びRobertson et al.,J.Biol.Chem.,243:82(1968)参照)。好ましくは、dsRNAは、少なくとも50ヌクレオチド~約100、200、300、400、または500ヌクレオチド長である。dsRNAは、1000、1500、2000、5000ヌクレオチド長の長さでも、それより長くてもよい。該dsRNAは、全遺伝子転写物をコードしても部分的な遺伝子転写物をコードしてもよい。場合によっては、siRNAは、プラスミドによってコードされ得る(例えば、ヘアピンループを有する二本鎖に自動的に折りたたまれる配列として転写される)。
【0090】
「ヌクレオチド」は、糖であるデオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、及びリン酸基を含む。ヌクレオチドは、リン酸基を介して結合している。「塩基」には、プリン及びピリミジンが含まれ、これらはさらに、天然化合物アデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、及び天然類似体を含み、また、「塩基」には、プリン及びピリミジンの合成誘導体が含まれ、これらとしては、限定されないが、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、及びアルキルハライド等の新たな反応性の基を付ける修飾が挙げられるがこれらに限定されない。
【0091】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆体ポリペプチドの産生に必要な部分長もしくは全長コード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を指す。
【0092】
本明細書で使用される「遺伝子産物」とは、遺伝子の生成物、例えば、RNA転写物またはポリペプチドを指す。
【0093】
「脂質」という用語は、限定されないが脂肪酸のエステルを含み、水に不溶であるが多くの有機溶媒には可溶であることを特徴とする有機化合物の群を指す。それらは、通常、少なくとも3つのクラス、すなわち、(1)油脂だけでなくワックスを含む「単純脂質」、(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」、ならびに(3)ステロイド等の「誘導脂質」に分けられる。
【0094】
「脂質粒子」という用語は、目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官等)に治療用核酸(例えば、mRNAまたはsiRNA)を送達するために使用することができる脂質製剤を含む。好ましい実施形態では、本発明の脂質粒子は、核酸-脂質粒子であり、これは通常、カチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、該粒子の凝集を防ぐ複合脂質(例えば、PEG-脂質)、及び任意にコレステロールから生成される。通常、該治療用核酸(例えば、mRNA)は、該粒子の脂質部分に封入される場合があり、それにより、酵素分解から保護される。
【0095】
本発明の脂質粒子を説明するために使用される場合、「高電子密度のコア」という用語は、低温透過型電子顕微鏡法(「cryoTEM」)を用いて可視化した際の脂質粒子の内側部分の暗い外観を指す。本発明のいくつかの脂質粒子は、高電子密度のコアを有し、脂質二重層構造を欠いている。本発明のいくつかの脂質粒子は、高電子密度のコアを有し、脂質二重層構造を欠き、逆六方または立方相構造を有する。理論に拘束されることを望むものではないが、非二重層脂質充填は、水及び核酸を内部に含む脂質柱の3次元ネットワーク、すなわち、本質的に、核酸を含む水のチャンネルが相互貫入した脂質滴を与えると考えられる。
【0096】
本明細書で使用される「SNALP」という用語は、安定な核酸-脂質粒子を指す。SNALPは、脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び粒子の凝集を防ぐ複合脂質)から製造される粒子であり、この場合、該核酸(例えば、mRNA)は、該脂質内に完全に封入される。場合によっては、SNALPは、静脈内(i.v.)注射後の循環寿命の延長を示すことができ、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に分離された部位)で蓄積することができ、これら遠位部位でmRNA発現を媒介することができるため、全身適用に極めて有用である。該核酸は、PCT公開第WO00/03683号に記載の通り、縮合剤と複合体を形成し、SNALP内に封入され得る。該公開の開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0097】
本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、通常、平均径が約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、もしくは150nmであり、実質的に非毒性である。さらに、核酸は、本発明の脂質粒子に存在する場合、水溶液中でヌクレアーゼによる分解に対して耐性がある。核酸-脂質粒子及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許公開第20040142025号及び第20070042031号に開示されており、これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0098】
本明細書で使用される「脂質封入」は、mRNA等の治療用核酸を、完全に封入して、部分的に封入して、またはその両方で提供する脂質粒子を指すことができる。好ましい実施形態では、該核酸(例えば、mRNA)は、該脂質粒子に完全に封入される(例えば、SNALPまたは他の核酸-脂質粒子を形成する)。
【0099】
「脂質コンジュゲート」という用語は、脂質粒子の凝集を阻害する複合脂質を指す。かかる脂質コンジュゲートとしては、PEG-脂質コンジュゲート、例えば、ジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(例えば、PEG-DAAコンジュゲート)、ジアシルグリセロールに結合したPEG(例えば、PEG-DAGコンジュゲート)、コレステロールに結合したPEG、ホスファチジルエタノールアミンに結合したPEG、及びセラミドに複合したPEG(例えば、米国特許第5,885,613号参照)、カチオン性PEG脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミドオリゴマー(例えば、ATTA-脂質コンジュゲート)、及びそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。POZ-脂質コンジュゲートのさらなる例は、PCT公開第WO2010/006282号に記載されている。PEGまたはPOZは、脂質に直接複合化することができ、またはリンカー部分を介して脂質に結合してもよい。PEGまたはPOZを脂質に結合させるのに適した任意のリンカー部分を使用することができ、例えば、エステルを含まないリンカー部分及びエステルを含むリンカー部分が含まれる。ある特定の好ましい実施形態では、エステルを含まないリンカー部分、例えば、アミドまたはカルバメートが使用される。上記特許文献の各々の開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
「両親媒性脂質」という用語は、一部には、脂質物質の疎水性部分が疎水性相に配向し、親水性部分が水相に配向する任意の適切な物質を指す。親水性の特徴は、炭水化物、ホスフェート、カルボン酸、スルファト、アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、ヒドロキシル、及び他の類似の基等の極性基または荷電基の存在に由来する。疎水性は、長鎖飽和及び不飽和脂肪族炭化水素基ならびに1つ以上の芳香族、脂環式、またはヘテロ環式基で置換されたかかる基が挙げられるがこれらに限定されない無極性基の包含によって与えられ得る。両親媒性化合物の例としては、リン脂質、アミノ脂質、及びスフィンゴ脂質が挙げられるがこれらに限定されない。
【0101】
リン脂質の代表例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、及びジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられるがこれらに限定されない。リンを欠く他の化合物、例えば、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、及びβ-アシルオキシ酸もまた、両親媒性脂質として指定される群内である。さらに、上記の両親媒性脂質は、トリグリセリド及びステロールを含めた他の脂質と混合することができる。
【0102】
「中性脂質」という用語は、選択されたpHで非荷電または中性双性イオン形態のいずれかで存在する複数の脂質種のいずれかを指す。生理的pHでは、かかる脂質には、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、及びジアシルグリセロールが含まれる。
【0103】
「非カチオン性脂質」という用語は、任意の両親媒性脂質及び任意の他の中性脂質またはアニオン性脂質を指す。
【0104】
「アニオン性脂質」という用語は、生理的pHで負に荷電している任意の脂質を指す。これらの脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質に結合した他のアニオン性修飾基が挙げられるがこれらに限定されない。
【0105】
「疎水性脂質」という用語は、無極性基を有する化合物を指し、これらとしては、限定されないが、長鎖飽和及び不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられ、かかる基は任意に、1つ以上の芳香族、脂環式、またはヘテロ環式基で置換される。適切な例としては、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロール、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパン、及び1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0106】
「カチオン性脂質」及び「アミノ脂質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、1、2、3、もしくはそれ以上の脂肪酸または脂肪族アルキル鎖及びpH滴定可能なアミノ頭部基(例えば、アルキルアミノもしくはジアルキルアミノ頭部基)を有する脂質ならびにその塩を含む。該カチオン性脂質は通常、該カチオン性脂質のpK未満のpHでプロトン化され(すなわち、正に荷電され)、該pKを超えるpHでは実質的に中性である。本発明のカチオン性脂質はまた、滴定可能なカチオン性脂質と呼んでもよい。いくつかの実施形態では、該カチオン性脂質は、プロトン化可能な3級アミン(例えば、pH滴定可能な)頭部基、各アルキル鎖が独立して0~3(例えば、0、1、2、または3)個の二重結合を有するC18アルキル鎖、ならびに該頭部基及びアルキル鎖の間のエーテル、エステル、またはケタール結合を含む。かかるカチオン性脂質としては、DSDMA、DODMA、DLinDMA、DLenDMA、γ-DLenDMA、DLin-K-DMA、DLin-K-C2-DMA(DLin-C2K-DMA、XTC2、及びC2Kとしても知られる)、DLin-K-C3-DMA、DLin-K-C4-DMA、DLen-C2K-DMA、γ-DLen-C2K-DMA、DLin-M-C2-DMA(MC2としても知られる)、DLin-M-C3-DMA(MC3としても知られる)、ならびに(DLin-MP-DMA)(1-B11としても知られる)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0107】
「アルキルアミノ」という用語には、式-N(H)Rの基が含まれ、ここで、Rは、本明細書で定義されるアルキルである。
【0108】
「ジアルキルアミノ」という用語には、式-NRの基が含まれ、ここで、各Rは、独立して、本明細書で定義されるアルキルである。
【0109】
「塩」という用語は、任意のアニオン及びカチオン錯体、例えば、カチオン性脂質と1つ以上のアニオンとの間で形成される錯体を含む。アニオンの非限定的な例としては、無機及び有機アニオン、例えば、ヒドリド、フルオライド、クロリド、ブロミド、ヨージド、オキサレート(例えば、ヘミオキサレート)、ホスフェート、ホスホネート、ハイドロジェンホスフェート、ジハイドロジェンホスフェート、オキシド、カーボネート、ビカーボネート、ニトレート、ニトライト、ニトライド、ビスルファイト、スルフィド、スルファイト、ビスルフェート、スルフェート、チオスルフェート、ハイドロジェンスルフェート、ボレート、ホルメート、アセテート、ベンゾエート、シトレート、タータレート、ラクテート、アクリレート、ポリアクリレート、フマレート、マレエート、イタコネート、グリコレート、グルコネート、マレート、マンデレート、チグレート、アスコルベート、サリシレート、ポリメタクリレート、パークロレート、クロレート、クロライト、ハイポクロライト、ブロメート、ハイポブロマイト、ヨーデート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アーセネート、アーセナイト、クロメート、ジクロメート、シアニド、シアネート、チオシアネート、ヒドロキシド、ペルオキシド、パーマンガネート、及びそれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に開示のカチオン性脂質の塩は、結晶塩である。
【0110】
「アルキル」という用語は、1~24個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐非環式または環式飽和脂肪族炭化水素を含む。代表的な飽和直鎖アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等が挙げられるがこれらに限定されず、飽和分岐アルキルとしては、制限なく、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル等が挙げられる。代表的な飽和環式アルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられるがこれらに限定されず、不飽和環式アルキルとしては、制限なく、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が挙げられる。
【0111】
「アルケニル」という用語は、隣接する炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を含む上記で定義されるアルキルを含む。アルケニルは、cis及びtransの両異性体を含む。代表的な直鎖及び分岐アルケニルとしては、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
「アルキニル」という用語は、隣接する炭素原子間に少なくとも1つの三重結合をさらに含む上記で定義される任意のアルキルまたはアルケニルを含む。代表的な直鎖及び分岐鎖アルキニルとしては、制限なく、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1ブチニル等が挙げられる。
【0113】
「アシル」という用語は、結合点の炭素が以下で定義されるオキソ基で置換された任意のアルキル、アルケニル、またはアルキニルを含む。以下はアシル基の非限定的な例である。-C(=O)アルキル、-C(=O)アルケニル、及び-C(=O)アルキニル。
【0114】
「ヘテロ環」という用語は、5~7員の単環式、または7~10員の二環式のヘテロ環式環を含み、これは飽和、不飽和、または芳香族のいずれかであり、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を含み、該窒素及び硫黄のヘテロ原子は、任意に酸化されてもよく、該窒素ヘテロ原子は、任意に4級化されてもよく、上記ヘテロ環のいずれかがベンゼン環に縮合した二環式環を含む。該ヘテロ環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合され得る。ヘテロ環としては、以下で定義されるヘテロアリール、ならびにモルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプリミジニル(tetrahydroprimidinyl)、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0115】
「任意に置換されるアルキル」、「任意に置換されるアルケニル」、「任意に置換されるアルキニル」、「任意に置換されるアシル」、及び「任意に置換されるヘテロ環」という用語は、置換される場合、少なくとも1つの水素原子が置換基と交換されることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合、2つの水素原子が交換される。これに関して、置換基としては、限定されないが、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRが挙げられ、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、同一または異なって、独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、該アルキル及びヘテロ環置換基の各々は、さらに、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-OR、ヘテロ環、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRのうちの1つ以上で置換されてもよい。「任意に置換される」という用語が置換基のリストの前に使用される場合、該リストの置換基の各々が、本明細書に記載の通りに任意に置換されてもよいことを意味する。
【0116】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを含む。
【0117】
「融合性」という用語は、SNALP等の脂質粒子が細胞膜に融合する能力を指す。これらの膜は、原形質膜でも細胞小器官、例えば、エンドソーム、核等を囲む膜でもよい。
【0118】
本明細書で使用される「水溶液」という用語は、全体または一部において水を含む組成物を指す。
【0119】
本明細書で使用される「有機脂質溶液」という用語は、全体または一部において、脂質を有する有機溶媒を含む組成物を指す。
【0120】
本明細書で使用される「遠位部位」とは、物理的に分離された部位を指し、これは、隣接する毛細血管床に限定されないが、ある生物全体に広く分布する部位を含む。
【0121】
SNALP等の核酸-脂質粒子に関して「血清安定性」とは、遊離のDNAまたはRNAを著しく分解するであろう血清またはヌクレアーゼアッセイへの曝露後に該粒子が大きく分解されないことを意味する。適切なアッセイとしては、例えば、標準血清アッセイ、DNA分解酵素アッセイ、またはRNA分解酵素アッセイが挙げられる。
【0122】
本明細書で使用される「全身送達」とは、生物内でmRNA等の活性薬剤の広い生体内分布をもたらす脂質粒子の送達を指す。いくつかの投与技術は、ある特定の薬剤の全身送達をもたらすことができるが、他のものの全身送達はもたらさない。全身送達とは、有用な、好ましくは治療的な量の薬剤が体の大部分に曝露されることを意味する。広い生体内分布を得ることは一般に、該薬剤が、投与部位に対して遠位の疾患部位に達する前に急速に分解または除去(例えば、初回通過器官(肝臓、肺等)によって、または急速な非特異的細胞結合によって)されないように、血中寿命が必要とされる。脂質粒子の全身送達は、例えば、静脈内、皮下、及び腹腔内等の当技術分野で既知の任意の方法によることができる。好ましい実施形態では、脂質粒子の全身送達は静脈内送達による。
【0123】
本明細書で使用される「局所送達」とは、生物内でmRNA等の活性薬剤を標的部位へ直接送達することを指す。例えば、薬剤を、疾患部位、他の標的部位、または肝臓、心臓、膵臓、腎臓等の標的器官への直接の注入によって局所的に送達することができる。
【0124】
「哺乳類」という用語は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、ウサギ、家畜等の任意の哺乳類種を指す。
【0125】
脂質:mRNAの比を記載するために本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、当該粒子の全脂質を指す。
【0126】
本明細書で特に明記しない限り、「約」という用語は、値または値の範囲に関連して使用される場合、記載された値または値の範囲のプラスマイナス5%を意味する。
【0127】
特定の実施形態の説明
1つの態様において、本発明は、核酸-脂質粒子を提供し、これは各々、(a)カチオン性脂質を含む脂質粒子、及び(b)該脂質粒子内に封入されるmRNA分子を含む。通常、mRNA分子の集団が該脂質粒子内に封入される。該脂質粒子は通常、内側部分を画定する外層を含み、ここで、該mRNA分子(複数可)は該内側部分内に位置する。該mRNA分子(複数可)は、通常、該脂質粒子内に完全に封入される。該脂質粒子は、球状でも非球状でもよい。該脂質粒子は、cryoTEMを用いて可視化した際の高電子密度のコアを有し得る。通常、該高電子密度のコアは、主に脂質からなるが、含水物が該脂質の量未満の量で存在してもよい。
【0128】
1つの態様において、本発明は、PEG脂質、非カチオン性脂質、トリアルキルカチオン性脂質及びテトラアルキルカチオン性脂質から選択されるカチオン性脂質、ならびにmRNAを含む脂質粒子を提供し、該脂質粒子は高電子密度のコアを有し、該mRNAは、該高電子密度のコア内に封入される。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態では、該脂質粒子は、(a)カチオン性脂質、PEG-脂質、及びリン脂質を含む脂質粒子、ならびに(b)mRNA分子を含み、該mRNA分子は、該脂質粒子内に封入される。該脂質粒子は、任意にコレステロールを含むことができる。該mRNAは、該脂質粒子内に完全に封入されても部分的に封入されてもよい。
【0130】
粒子100の生成は、1つ以上の実施形態では、脂質を第一の流体、例えばエタノール中に配置し、mRNAを第二の流体、例えば水性緩衝液中に配置し、該第一及び第二の流体を制御された条件下で混合して粒子100を形成することを含む。得られた粒子100は、低温透過型電子顕微鏡法で見た際に脂質粒子内に高電子密度のコアを含む。
【0131】
mRNA
本発明の粒子において有用なmRNAは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の修飾されたヌクレオチド、例えば2’OMeヌクレオチドを含み得る。好ましくは、該mRNAのウリジン及び/またはグアノシンヌクレオチドが2’OMeヌクレオチドで修飾される。いくつかの実施形態では、該mRNAは、さらに、修飾された(例えば、2’OMeで修飾された)アデノシン及び/または修飾された(例えば、2’OMeで修飾された)シトシンヌクレオチドを含んでもよい。
【0132】
1つの態様において、本発明は、mRNAを含む核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)を提供する。該核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)は、通常、1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA、カチオン性脂質、及び非カチオン性脂質を含む。場合によっては、該核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)は、さらに、粒子の凝集を阻害する複合脂質を含む。好ましくは、該核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)は、1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び粒子の凝集を阻害する複合脂質を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、該mRNA(複数可)は、該核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)に完全に封入される。mRNAカクテルを含む製剤に関しては、該カクテルに存在する異なるタイプのmRNA種(例えば、異なる配列を有するmRNA)が同じ粒子に共に封入されても、該カクテルに存在する各タイプのmRNA種が別々の粒子に封入されてもよい。該mRNAカクテルは、2つ以上の個々のmRNA(各々が固有の配列を有する)の同一の、類似の、もしくは異なる濃度またはモル比の混合物を用いて本明細書に記載の粒子に製剤化され得る。1つの実施形態では、mRNAのカクテル(異なる配列の複数のmRNAに対応する)は、同一の、類似の、もしくは異なる濃度またはモル比の各mRNA種を用いて製剤化され、これら異なるタイプのmRNAが同じ粒子に共に封入される。別の実施形態では、該カクテルに存在する各タイプのmRNA種は、同一の、類似の、もしくは異なるmRNA濃度またはモル比で異なる粒子に封入され、そのようにして生成された粒子(各々が異なるmRNAペイロードを含む)が別々に投与され(例えば、治療計画に応じて異なる時点で)、または、混合されて単一の単位用量として(例えば、医薬的に許容される担体とともに)一緒に投与される。本明細書に記載の粒子は、血清安定性であり、ヌクレアーゼ分解に対して耐性があり、ヒト等の哺乳類に対して実質的に非毒性である。
【0134】
本発明の核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)におけるカチオン性脂質は、例えば、本明細書に記載の式I~IIIの1つ以上のカチオン性脂質または任意の他のカチオン性脂質種を含み得る。1つの特定の実施形態では、該カチオン性脂質は、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、ジリノレイルメチル-3-ジメチルアミノプロピオネート(DLin-M-C2-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA)、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0135】
本発明の核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)における非カチオン性脂質は、例えば、1つ以上のアニオン性脂質及び/または中性脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、該非カチオン性脂質は、以下の中性脂質成分、すなわち、(1)リン脂質及びコレステロールもしくはその誘導体の混合物、(2)コレステロールもしくはその誘導体、または(3)リン脂質のうちの1つを含む。ある特定の好ましい実施形態では、該リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、またはそれらの混合物を含む。特に好ましい実施形態では、該非カチオン性脂質は、DPPC及びコレステロールの混合物である。
【0136】
本発明の核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)における脂質コンジュゲートは、粒子の凝集を阻害し、例えば、本明細書に記載の1つ以上の脂質コンジュゲートを含み得る。1つの特定の実施形態では、該脂質コンジュゲートは、PEG-脂質コンジュゲートを含む。PEG-脂質コンジュゲートの例としては、PEG-DAGコンジュゲート、PEG-DAAコンジュゲート、及びそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、該脂質粒子のPEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)コンジュゲート、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)コンジュゲート、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)コンジュゲート、PEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)コンジュゲート、またはそれらの混合物を含み得る。別の実施形態では、該脂質コンジュゲートは、POZ-脂質コンジュゲート、例えば、POZ-DAAコンジュゲートを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明は、(a)各々がタンパク質をコードする1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA分子、(b)当該粒子に存在する全脂質の約50mol%~約85mol%を構成する1つ以上のカチオン性脂質またはその塩、(c)当該粒子に存在する全脂質の約13mol%~約49.5mol%を構成する1つ以上の非カチオン性脂質、及び(d)当該粒子に存在する全脂質の約0.5mol%~約2mol%を構成する、粒子の凝集を阻害する1つ以上の複合脂質を含む核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)を提供する。
【0138】
本実施形態の1つの態様において、該核酸-脂質粒子は、(a)各々がタンパク質をコードする1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA分子、(b)該粒子に存在する全脂質の約52mol%~約62mol%を構成するカチオン性脂質またはその塩、(c)該粒子に存在する全脂質の約36mol%~約47mol%を構成するリン脂質及びコレステロールまたはその誘導体の混合物、ならびに(d)該粒子に存在する全脂質の約1mol%~約2mol%を構成するPEG-脂質コンジュゲートを含む。核酸-脂質粒子の本実施形態は、通常、本明細書では「1:57」製剤と呼ばれる。1つの特定の実施形態では、該1:57製剤は、約1.4mol%のPEG-脂質コンジュゲート(例えば、PEG2000-C-DMA)、約57.1mol%のカチオン性脂質(例えば、DLin-K-C2-DMA)またはその塩、約7.1mol%のDPPC(もしくはDSPC)、及び約34.3mol%のコレステロール(もしくはその誘導体)を含む4成分系である。
【0139】
本実施形態の別の態様において、該核酸-脂質粒子は、(a)各々がタンパク質をコードする1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA分子、(b)該粒子に存在する全脂質の約56.5mol%~約66.5mol%を構成するカチオン性脂質またはその塩、(c)該粒子に存在する全脂質の約31.5mol%~約42.5mol%を構成するコレステロールまたはその誘導体、及び(d)該粒子に存在する全脂質の約1mol%~約2mol%を構成するPEG-脂質コンジュゲートを含む。核酸-脂質粒子の本実施形態は、通常、本明細書では「1:62」製剤と呼ばれる。1つの特定の実施形態では、該1:62製剤は、リン脂質を含まず、約1.5mol%のPEG-脂質コンジュゲート(例えば、PEG2000-C-DMA)、約61.5mol%のカチオン性脂質(例えば、DLin-K-C2-DMA)またはその塩、及び約36.9mol%のコレステロール(もしくはその誘導体)を含む3成分系である。
【0140】
1:57及び1:62製剤に関連するさらなる実施形態は、PCT公開第WO09/127060号及び公開米国特許出願公開第US2011/0071208A1号に記載されており、これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0141】
他の実施形態では、本発明は、(a)各々がタンパク質をコードする1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA分子、(b)当該粒子に存在する全脂質の約2mol%~約50mol%を構成する1つ以上のカチオン性脂質またはその塩、(c)当該粒子に存在する全脂質の約5mol%~約90mol%を構成する1つ以上の非カチオン性脂質、及び(d)当該粒子に存在する全脂質の約0.5mol%~約20mol%を構成する、粒子の凝集を阻害する1つ以上の複合脂質を含む核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)を提供する。
【0142】
本実施形態の1つの態様において、該核酸-脂質粒子は、(a)各々がタンパク質をコードする1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA分子、(b)該粒子に存在する全脂質の約30mol%~約50mol%を構成するカチオン性脂質またはその塩、(c)該粒子に存在する全脂質の約47mol%~約69mol%を構成するリン脂質及びコレステロールまたはその誘導体の混合物、ならびに(d)該粒子に存在する全脂質の約1mol%~約3mol%を構成するPEG-脂質コンジュゲートを含む。核酸-脂質粒子の本実施形態は、通常、本明細書では「2:40」製剤と呼ばれる。1つの特定の実施形態では、該2:40製剤は、約2mol%のPEG-脂質コンジュゲート(例えば、PEG2000-C-DMA)、約40mol%のカチオン性脂質(例えば、DLin-K-C2-DMA)またはその塩、約10mol%のDPPC(もしくはDSPC)、及び約48mol%のコレステロール(もしくはその誘導体)を含む4成分系である。
【0143】
さらなる実施形態では、本発明は、(a)各々がタンパク質をコードする1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA分子、(b)当該粒子に存在する全脂質の約50mol%~約65mol%を構成する1つ以上のカチオン性脂質またはその塩、(c)当該粒子に存在する全脂質の約25mol%~約45mol%を構成する1つ以上の非カチオン性脂質、及び(d)当該粒子に存在する全脂質の約5mol%~約10mol%を構成する、粒子の凝集を阻害する1つ以上の複合脂質を含む核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)を提供する。
【0144】
本実施形態の1つの態様において、該核酸-脂質粒子は、(a)各々がタンパク質をコードする1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA分子、(b)該粒子に存在する全脂質の約50mol%~約60mol%を構成するカチオン性脂質またはその塩、(c)該粒子に存在する全脂質の約35mol%~約45mol%を構成するリン脂質及びコレステロールまたはその誘導体の混合物、ならびに(d)該粒子に存在する全脂質の約5mol%~約10mol%を構成するPEG-脂質コンジュゲートを含む。核酸-脂質粒子の本実施形態は、通常、本明細書では「7:54」製剤と呼ばれる。場合によっては、該7:54製剤の非カチオン性脂質混合物は、(i)該粒子に存在する全脂質の約5mol%~約10mol%のリン脂質、及び(ii)該粒子に存在する全脂質の約25mol%~約35mol%のコレステロールまたはその誘導体を含む。1つの特定の実施形態では、該7:54製剤は、約7mol%のPEG-脂質コンジュゲート(例えば、PEG750-C-DMA)、約54mol%のカチオン性脂質(例えば、DLin-K-C2-DMA)またはその塩、約7mol%のDPPC(もしくはDSPC)、及び約32mol%のコレステロール(もしくはその誘導体)を含む4成分系である。
【0145】
本実施形態の別の態様において、該核酸-脂質粒子は、(a)各々がタンパク質をコードする1つ以上の(例えば、カクテル)mRNA分子、(b)該粒子に存在する全脂質の約55mol%~約65mol%を構成するカチオン性脂質またはその塩、(c)該粒子に存在する全脂質の約30mol%~約40mol%を構成するコレステロールまたはその誘導体、及び(d)該粒子に存在する全脂質の約5mol%~約10mol%を構成するPEG-脂質コンジュゲートを含む。核酸-脂質粒子の本実施形態は、通常、本明細書では「7:58」製剤と呼ばれる。1つの特定の実施形態では、該7:58製剤は、リン脂質を含まず、約7mol%のPEG-脂質コンジュゲート(例えば、PEG750-C-DMA)、約58mol%のカチオン性脂質(例えば、DLin-K-C2-DMA)またはその塩、及び約35mol%のコレステロール(もしくはその誘導体)を含む3成分系である。
【0146】
7:54及び7:58製剤に関連するさらなる実施形態は、公開米国特許出願公開第US2011/0076335A1号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0147】
本発明はまた、SNALP等の核酸-脂質粒子及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0148】
本発明の核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)は、1つ以上のタンパク質(完全長タンパク質または完全長タンパク質の生物学的に活性な断片等)を発現するmRNAの治療的送達に有用である。いくつかの実施形態では、異なるタンパク質を発現するmRNAのカクテルは、同一または異なる核酸-脂質粒子に製剤化され、該粒子は、かかる治療を必要とする哺乳類(例えば、ヒト)に投与される。場合によっては、治療有効量の該核酸-脂質粒子を該哺乳類に投与することができる。
【0149】
ある特定の実施形態では、本発明は、細胞と本明細書に記載の核酸-脂質粒子(例えば、SNALP製剤)を接触させることにより、1つ以上のmRNA分子を該細胞に導入する方法を提供する。1つの特定の実施形態では、該細胞は、細網内皮細胞(例えば、単球もしくはマクロファージ)、線維芽細胞、内皮細胞、または血小板細胞である。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)は、以下の投与経路、すなわち、経口、鼻腔内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、病巣内、気管内、皮下、及び皮内のうちの1つにより投与される。特定の実施形態では、該核酸-脂質粒子は、全身的に、例えば、経腸または非経口投与経路を介して投与される。
【0151】
特定の実施形態では、本発明の核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)は、他の組織と比較して肝臓に優先的にmRNA等のペイロードを送達することができる。
【0152】
ある特定の態様において、本発明は、タンパク質を、それを必要とする哺乳類(例えば、ヒト)において発現させる方法を提供し、該方法は、1つ以上のタンパク質を該タンパク質(複数可)が該哺乳類で発現できるようにする条件下でコードする1つ以上のmRNAを含む核酸-脂質粒子(例えば、SNALP製剤)の治療有効量を該哺乳類に投与することを含む。例えば、該mRNAが、健康な哺乳類対象で通常発現されるタンパク質をコードする実施形態では、該SNALP内に封入された該mRNAがコードするタンパク質の発現レベルは、健康な哺乳類対象で通常発現される該タンパク質のレベルの少なくとも10%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも100%、または100%超である。
【0153】
他の態様において、本発明は、疾患に伴う1つ以上の症状の治療、予防、発現のリスクもしくは可能性の低減(例えば、それに対する感受性の低減)、発現の遅延、及び/または改善のためのそれを必要とする哺乳類(例えば、ヒト)における方法を提供し、ここで、該疾患は、タンパク質発現の低下または異常によって(少なくとも一部分において)引き起こされる。該方法は各々、治療される対象内で欠如している、または低下したレベルで存在しているタンパク質をコードする1つ以上のmRNA分子を含む核酸-脂質粒子(例えば、SNALP製剤)の治療有効量を当該哺乳類に投与するステップを含む。
【0154】
本発明で有用なmRNA分子は、化学的に修飾されていても、未修飾であってもよい。通常、mRNA分子は、該mRNAが導入される細胞の自然免疫反応を誘導する能力を低下させるために化学的に修飾される。
【0155】
mRNAに対する修飾
本発明の実施に使用されるmRNAとしては、1、2個の、または3個以上のヌクレオシドの修飾を含むことができる。いくつかの実施形態では、該修飾mRNAは、未修飾の対応するmRNAと比較して、mRNAが導入される細胞における分解が低減される。
【0156】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドには、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、及び4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジンが含まれる。
【0157】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドには、5-アザ-シチジン、プソイドイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-プソイドイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-プソイドイソシチジン、及び4-メトキシ-1-メチル-プソイドイソシチジンが含まれる。
【0158】
他の実施形態では、修飾ヌクレオシドには、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、及び2-メトキシ-アデニンが含まれる。
【0159】
特定の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、5’-O-(1-チオホスフェート)-アデノシン、5’-O-(1-チオホスフェート)-シチジン、5’-O-(1-チオホスフェート)-グアノシン、5’-O-(1-チオホスフェート)-ウリジン、または5’-O-(1-チオホスフェート)-プソイドウリジンである。α-チオ置換ホスフェート部分は、非天然ホスホロチオエート骨格結合を介してRNAポリマーに安定性を付与するために提供される。ホスホロチオエートRNAは、ヌクレアーゼ耐性の増加に続いて細胞環境でより長い半減期を有する。ホスホロチオエート結合核酸はまた、細胞の自然免疫分子のより弱い結合/活性化を介して自然免疫反応を低下させると予想される。
【0160】
ある特定の実施形態では、例えば、タンパク質産生の正確なタイミングが望まれる場合、細胞に導入された修飾核酸を細胞内で分解することが望ましい。従って、本発明は、細胞内で指向された様式で作用されることが可能な分解ドメインを含む修飾核酸を提供する。
【0161】
他の実施形態では、修飾ヌクレオシドには、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、及びN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンが含まれる。
【0162】
修飾核酸の任意成分
さらなる実施形態では、該修飾核酸は、他の任意成分を含んでもよく、これはいくつかの実施形態では有益な場合がある。これらの任意成分としては、非翻訳領域、コザック配列、イントロンヌクレオチド配列、配列内リボソーム進入部位(IRES)、キャップ、及びポリAテールが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、5’非翻訳領域(UTR)及び/または3’UTRが提供される場合があり、その一方または両方は、独立して、1つ以上の異なるヌクレオシド修飾を含み得る。かかる実施形態では、ヌクレオシド修飾はまた、翻訳可能領域に存在する場合もある。コザック配列を含む核酸もまた提供する。
【0163】
さらに、当該核酸から切除することができる1つ以上のイントロンヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0164】
非翻訳領域(UTR)
遺伝子の非翻訳領域(UTR)は、転写はされるが翻訳はされない。5’UTRは転写開始部位で始まり、開始コドンまで続くが、開始コドンは含まない。一方、3’UTRは終止コドンの直後に始まり、転写終結シグナルまで続く。核酸分子の安定性及び翻訳の観点から、UTRが果たすこの調節的役割に関する証拠が増えている。UTRの調節的特徴を、本発明で使用されるmRNAに組み込み、該分子の安定性を高めることができる。また、この特異的な特徴を組み込み、それらが望ましくない器官部位に誤って向けられた場合に、転写の制御された下方制御を確実にすることもできる。
【0165】
5’キャッピング
mRNAの5’キャップ構造は、核外輸送に関与し、mRNAの安定性を高め、mRNAキャップ結合タンパク質(CBP)に結合する。CBPは、細胞内でのmRNAの安定性及び翻訳能力に、CBPとポリ(A)結合タンパク質との会合を介して関与し、成熟環状mRNA種を形成する。キャップは、さらに、mRNAスプライシングの過程で5’近位のイントロンの除去を助ける。
【0166】
内因性mRNA分子は、5’-ppp-5’-三リン酸結合を末端グアノシンキャップ残基とmRNA分子の5’末端転写センスヌクレオチドの間に生成する5’末端キャップがなされ得る。この5’-グアニル酸キャップは、その後メチル化されてN7-メチル-グアニル酸残基を生成し得る。このmRNAの5’末端の末端及び/または末端前(anteterminal)での転写ヌクレオチドのリボース糖は、任意に2’-O-メチル化もされ得る。グアニル酸キャップ構造の加水分解及び切断を介した5’-デキャッピングは、核酸分子、例えばmRNA分子を分解の標的にし得る。
【0167】
IRES配列
内部リボソーム進入部位(IRES)を含むmRNAもまた、本発明を実施する上で有用である。IRESは、唯一のリボソーム結合部位として作用する場合も、mRNAの複数のリボソーム結合部位のうちの1つとして機能する場合もある。2つ以上の機能的リボソーム結合部位を含むmRNAは、リボソームによって独立して翻訳されるいくつかのペプチドまたはポリペプチドをコードし得る(「マルチシストロニックmRNA」)。mRNAがIRESを備えている場合、さらに任意に第2の翻訳可能領域を備えている。本発明に従って使用することができるIRES配列の例としては、制限なく、ピコルナウイルス(例えばFMDV)、ペストウイルス(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ブタコレラウイルス(CSFV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(S1V)、またはコオロギ麻痺病ウイルス(CrPV)由来のものが挙げられる。
【0168】
ポリAテール
RNAプロセシングの過程で、長鎖のアデニンヌクレオチド(ポリAテール)がmRNA分子等のポリヌクレオチドに付加され、安定性が高められる場合がある。転写の直後、転写物の3’末端が切断されて3’ヒドロキシルを遊離させることがある。その後、ポリAポリメラーゼがアデニンヌクレオチドの鎖をRNAに付加する。このプロセスは、ポリアデニル化と呼ばれ、100~250残基長であり得るポリAテールを付加する。
【0169】
一般に、ポリAテールの長さは、30ヌクレオチド長より長い。別の実施形態では、ポリAテールは、35ヌクレオチド長より長い(例えば、少なくとも約35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、及び3,000ヌクレオチドであるか、またはそれを超える)。
【0170】
これに関連して、ポリAテールは、修飾mRNAより10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%長くてよい。ポリAテールはまた、それが属する修飾核酸のほんの一部として設計してもよい。これに関連して、ポリAテールは、修飾mRNAの全長または修飾mRNAからポリAテールを引いた全長の10、20、30、40、50、60、70、80、もしくは90%またはそれ以上でよい。
【0171】
mRNA分子の生成
RNAの単離、RNAの合成、核酸のハイブリッド形成、cDNAライブラリの作製及びスクリーニング、ならびにPCRの実施のための方法は、当技術分野では周知であり(例えば、Gubler and Hoffman,Gene,25:263-269(1983)、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd ed.1989)参照)、PCR法も周知である(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,eds,1990)参照)。発現ライブラリもまた当業者には周知である。本発明における一般的な使用方法を開示するさらなる基本的なテキストとしては、Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1994)が挙げられる。これら参考文献の開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0172】
siRNA分子の生成
siRNAは、例えば、1つ以上の単離された低分子干渉RNA(siRNA)二本鎖として、より長い二本鎖RNA(dsRNA)として、またはDNAプラスミド中の転写カセットから転写されたsiRNAまたはdsRNAとして含むいくつかの形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、siRNAは、酵素的に産生されても、一部/完全有機合成によって生成されてもよく、修飾リボヌクレオチドは、インビトロ酵素合成または有機合成によって導入することができる。場合によっては、各鎖は化学的に調製される。RNA分子の合成方法は、当技術分野では既知であり、例えば、Verma and Eckstein(1998)に記載のまたは本明細書に記載の化学合成方法である。
【0173】
RNAの単離、RNAの合成、核酸のハイブリッド形成、cDNAライブラリの作製及びスクリーニング、ならびにPCRの実施のための方法は、当技術分野では周知であり(例えば、Gubler and Hoffman,Gene,25:263-269(1983)、Sambrook et al.,上記、Ausubel et al.,上記、参照)、PCR法も周知である(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,eds,1990)参照)。発現ライブラリもまた当業者には周知である。本発明における一般的な使用方法を開示するさらなる基本的なテキストとしては、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd ed.1989)、Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1994)が挙げられる。これら参考文献の開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0174】
好ましくは、siRNAは、化学合成される。本発明のsiRNA分子を含むオリゴヌクレオチドは、Usman et al.,J.Am.Chem.Soc.,109:7845(1987)、Scaringe et al.,Nucl.Acids Res.,18:5433(1990)、Wincott et al.,Nucl.Acids Res.,23:2677-2684(1995)、及びWincott et al.,Methods Mol. Bio.,74:59(1997)に記載のもの等、当技術分野で既知の様々な技術のいずれかを用いて合成することができる。このオリゴヌクレオチド合成は、5’末端のジメトキシトリチル及び3’末端のホスホロアミデート等の共通の核酸保護及びカップリング基を使用する。非限定的な例として、小規模の合成は、Applied Biosystemsシンセサイザーにて、0.2μmol規模のプロトコルを用いて行うことができる。別の方法として、0.2μmol規模での合成は、Protogene(Palo Alto,CA)製の96ウェルプレートシンセサイザーにて行うことができる。しかしながら、より大きいまたは小さい規模の合成もまた本発明の範囲内である。オリゴヌクレオチド合成用の適切な試薬、RNAの脱保護方法、及びRNAの精製方法は、当業者には既知である。
【0175】
siRNA分子は、2つの異なるオリゴヌクレオチドから組み立てることができ、一方のオリゴヌクレオチドはセンス鎖を含み、他方は該siRNAのアンチセンス鎖を含む。例えば、各鎖を別々に合成し、合成及び/または脱保護の後、ハイブリダイゼーションもしくはライゲーションにより結合させることができる。
【0176】
脂質粒子
ある特定の態様において、本発明は、当該脂質粒子内に封入された1つ以上の治療用mRNA分子を含む脂質粒子を提供する。
【0177】
いくつかの実施形態では、該mRNAは、脂質粒子内の該mRNAが水溶液中でヌクレアーゼ分解に対して耐性があるように、脂質粒子の脂質部分内に完全に封入される。他の実施形態では、本明細書に記載の脂質粒子は、実質的にヒト等の哺乳類に対して非毒性である。本発明の脂質粒子は、通常、平均径が約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、または約70~約90nmである。本発明の脂質粒子はまた、通常、脂質:mRNA比(質量/質量比)が、約1:1~約100:1、約1:1~約50:1、約2:1~約25:1、約3:1~約20:1、約5:1~約15:1、もしくは約5:1~約10:1、もしくは約10:1~約14:1、または約9:1~約20:1である。1つの実施形態では、本発明の脂質粒子は、脂質:mRNA比(質量/質量比)が、約12:1、例えば12:1である。別の実施形態では、本発明の脂質粒子は、脂質:mRNA比(質量/質量比)が約13:1、例えば13:1である。
【0178】
好ましい実施形態では、本発明の脂質粒子は、血清安定性核酸-脂質粒子(SNALP)であり、これは、mRNA、カチオン性脂質(例えば、本明細書に記載の1つ以上の式I~IIIのカチオン性脂質またはそれらの塩)、リン脂質、及び該粒子の凝集を阻害する複合脂質(例えば、1つ以上のPEG-脂質コンジュゲート)を含む。該脂質粒子はまた、コレステロールを含むことができる。該SNALPは、1つ以上のポリペプチドを発現する少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の未修飾及び/または修飾mRNAを含んでもよい。核酸-脂質粒子及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許第5,753,613号、第5,785,992号、第5,705,385号、第5,976,567号、第5,981,501号、第6,110,745号、及び第6,320,017号、ならびにPCT公開第WO96/40964号に記載されており、これらの開示は、各々、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0179】
本発明の核酸-脂質粒子において、該mRNAは、該粒子の脂質部分内に完全に封入されてもよく、それにより、該核酸がヌクレアーゼ分解から保護される。好ましい実施形態では、mRNAを含むSNALPは、該粒子の脂質部分内に完全に封入され、それにより、該核酸がヌクレアーゼ分解から保護される。場合によっては、該SNALPのmRNAは、該粒子をヌクレアーゼに対して37℃で少なくとも約20、30、45、または60分間曝露した後、実質的に分解されない。他の特定の場合には、該SNALPのmRNAは、該粒子を血清中、37℃で少なくとも約30、45、もしくは60分間または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、もしくは36時間インキュベートした後、実質的に分解されない。他の実施形態では、該mRNAは、該粒子の脂質部分と複合化される。本発明の製剤の利点の1つは、該核酸-脂質粒子組成物がヒト等の哺乳類に対して実質的に非毒性であるということである。
【0180】
「完全に封入された」という用語は、核酸-脂質粒子の核酸(mRNA)が、遊離のRNAを著しく分解するであろう血清またはヌクレアーゼアッセイへの曝露後に大きく分解されないということを示す。完全に封入された系では、好ましくは、遊離の核酸を通常100%分解するであろう処理において、該粒子の核酸の約25%未満が分解され、より好ましくは該粒子の核酸の約10%未満、最も好ましくは、約5%未満が分解される。「完全に封入された」はまた、該核酸-脂質粒子が血清安定性であること、すなわち、インビボ投与の際にそれらが急速にそれらの構成成分に分解されないことを示す。
【0181】
核酸との関連で、完全封入は、膜不透過性蛍光色素排除アッセイを行うことで決定され得る。これは、核酸と会合した場合に蛍光を増強する色素を用いる。特定の色素、例えば、OliGreen(登録商標)及びRiboGreen(登録商標)(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)が、プラスミドDNA、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、及び/または一本鎖もしくは二本鎖リボヌクレオチドの定量に利用可能である。封入は、該色素をリポソーム製剤に添加し、得られる蛍光を測定し、これを少量の非イオン洗剤を添加した際に観察される蛍光と比較することによって決定される。洗剤によるリポソーム二重層の破壊で、封入された核酸が放出され、それが該膜不透過性色素と相互作用することが可能になる。核酸封入は、E=(I-I)/Iとして計算することができる。ここで、I及びIは、洗剤の添加の前後の蛍光強度を指す(Wheeler et al.,Gene Ther.,6:271-281(1999)参照)。
【0182】
他の実施形態では、本発明は、複数の核酸-脂質粒子を含む核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)組成物を提供する。
【0183】
いくつかの例では、該SNALP組成物は、当該粒子の約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約30%~約95%、約40%~約95%、約50%~約95%、約60%~約95%、約70%~約95%、約80%~約95%、約85%~約95%、約90%~約95%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、または少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)が、その中に封入されたmRNAを有するように、該粒子の脂質部分内に完全に封入されるmRNAを含む。
【0184】
本発明の脂質粒子の使用目的に応じて、該成分の比率を変更することができ、特定の製剤の送達効率は、例えば、エンドソーム放出パラメータ(ERP)アッセイを用いて測定することができる。
【0185】
カチオン性脂質
任意の様々なカチオン性脂質またはそれらの塩は、単独で、または1つ以上の他のカチオン性脂質種もしくは非カチオン性脂質種と組み合わせてのいずれかで、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)に用いられ得る。該カチオン性脂質は、それらの(R)及び/または(S)エナンチオマーを含む。通常、該カチオン性脂質は、不飽和及び/または飽和炭化水素鎖を含む部分(すなわち、疎水性部分)を含む。
【0186】
1つの態様において、以下の構造を有する式Iのカチオン性脂質が本発明において有用である:
【化2】
またはその塩。式中、
及びRは、同一または異なって、独立して、水素(H)または任意に置換されるC-Cアルキル、C-Cアルケニル、もしくはC-Cアルキニルであるか、またはR及びRは、結合して、4~6個の炭素原子ならびに窒素(N)、酸素(O)、及びそれらの混合物からなる群から選択される1個もしくは2個のヘテロ原子の任意に置換されるヘテロ環式環を形成してもよく、
は、存在しないか、または水素(H)もしくはC-Cアルキルであり4級アミンを与え、
及びRは、同一または異なって、独立して、任意に置換されるC10-C24アルキル、C10-C24アルケニル、C10-C24アルキニル、またはC10-C24アシルであり、ここで、R及びRの少なくとも一方は、少なくとも2つの不飽和部位を含み、
nは、0、1、2、3、または4である。
【0187】
いくつかの実施形態では、R及びRは、独立して、任意に置換されるC-Cアルキル、C-Cアルケニル、またはC-Cアルキニルである。1つの好ましい実施形態では、R及びRは、両方ともメチル基である。他の好ましい実施形態では、nは、1または2である。他の実施形態では、Rは、pHが該カチオン性脂質のpKより高い場合は存在せず、Rは、pHが該カチオン性脂質のpKより低い場合は、水素であり、従って該アミノ頭部基はプロトン化される。代替的な実施形態では、Rは、任意に置換されるC-Cアルキルであり4級アミンを与える。さらなる実施形態では、R及びRは、独立して、任意に置換されるC12-C20もしくはC14-C22アルキル、C12-C20もしくはC14-C22アルケニル、C12-C20もしくはC14-C22アルキニル、またはC12-C20もしくはC14-C22アシルであり、ここで、R及びRの少なくとも一方は、少なくとも2つの不飽和部位を含む。
【0188】
ある特定の実施形態では、R及びRは、独立して、ドデカジエニル部分、テトラデカジエニル部分、ヘキサデカジエニル部分、オクタデカジエニル部分、イコサジエニル部分、ドデカトリエニル部分、テトラデカトリエニル部分、ヘキサデカトリエニル部分、オクタデカトリエニル部分、イコサトリエニル部分、アラキドニル部分、及びドコサヘキサエノイル部分、ならびにそれらのアシル誘導体(例えば、リノレオイル、リノレノイル、γ-リノレノイル等)からなる群から選択される。いくつかの例では、R及びRのうちの一方は、分岐アルキル基(例えば、フィタニル部分)またはそのアシル誘導体(例えば、フィタノイル部分)を含む。場合によっては、該オクタデカジエニル部分はリノレイル部分である。他のある特定の場合には、該オクタデカトリエニル部分はリノレニル部分またはγ-リノレニル部分である。ある特定の実施形態では、R及びRは、両方ともリノレイル部分、リノレニル部分、またはγ-リノレニル部分である。特定の実施形態では、式Iのカチオン性脂質は、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-(N,N-ジメチル)-ブチル-4-アミン(C2-DLinDMA)、1,2-ジリノレオイルオキシ-(N,N-ジメチル)-ブチル-4-アミン(C2-DLinDAP)、またはそれらの混合物である。
【0189】
いくつかの実施形態では、式Iのカチオン性脂質は、1つ以上のアニオンと塩(好ましくは結晶塩)を形成する。1つの特定の実施形態では、式Iのカチオン性脂質は、そのオキサレート(例えば、ヘミオキサレート)塩であり、これは、好ましくは結晶塩である。
【0190】
DLinDMA及びDLenDMA等のカチオン性脂質ならびにさらなるカチオン性脂質の合成は、米国特許公開第20060083780号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。C2-DLinDMA及びC2-DLinDAP等のカチオン性脂質ならびにさらなるカチオン性脂質の合成は、国際特許出願第WO2011/000106号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0191】
別の態様において、以下の構造を有する式IIのカチオン性脂質(またはそれらの塩)が本発明において有用である:
【化3】
式中、R及びRは、同一または異なって、独立して、任意に置換されるC12-C24アルキル、C12-C24アルケニル、C12-C24アルキニル、またはC12-C24アシルであり、R及びRは、同一または異なって、独立して、任意に置換されるC-Cアルキル、C-Cアルケニル、もしくはC-Cアルキニルであるか、または、R及びRは、結合して、4~6個の炭素原子ならびに窒素及び酸素から選択される1個もしくは2個のヘテロ原子の任意に置換されるヘテロ環式環を形成してもよく、Rは、存在しないか、または水素(H)もしくはC-Cアルキルであり4級アミンを与え、m、n、及びpは、同一または異なって、独立して、0、1、または2のいずれかであり、ただし、m、n、及びpは同時に0ではなく、qは、0、1、2、3、または4であり、Y及びZは、同一または異なって、独立して、O、S、またはNHである。好ましい実施形態では、qは2である。
【0192】
いくつかの実施形態では、式IIのカチオン性脂質は、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジリノレイル-5-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキサン、2,2-ジリノレイル-4-N-メチルペピアジノ-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジオレオイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジステアロイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジリノレイル-4-N-モルホリノ-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジリノレイル-4-トリメチルアミノ-[1,3]-ジオキソランクロリド、2,2-ジリノレイル-4,5-ビス(ジメチルアミノメチル)-[1,3]-ジオキソラン、2,2-ジリノレイル-4-メチルピペラジン-[1,3]-ジオキソラン、またはそれらの混合物である。好ましい実施形態では、式IIのカチオン性脂質は、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソランである。
【0193】
いくつかの実施形態では、式IIのカチオン性脂質は、1つ以上のアニオンと塩(好ましくは結晶塩)を形成する。1つの特定の実施形態では、式IIのカチオン性脂質は、そのオキサレート(例えば、ヘミオキサレート)塩であり、これは、好ましくは結晶塩である。
【0194】
2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン等のカチオン性脂質、及びさらなるカチオン性脂質の合成は、その開示がすべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるPCT公開第WO09/086558号、及びその開示がすべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるPCT出願第PCT/US2009/060251号、発明の名称“Improved Amino Lipids and Methods for the Delivery of Nucleic Acids”に記載されている。
【0195】
さらなる態様において、以下の構造を有する式IIIのカチオン性脂質が本発明において有用である:
【化4】
またはその塩。式中、R及びRは、同一または異なって、独立して、任意に置換されるC-Cアルキル、C-Cアルケニル、もしくはC-Cアルキニルであるか、またはR及びRは、結合して、4~6個の炭素原子ならびに窒素(N)、酸素(O)、及びそれらの混合物からなる群から選択される1個もしくは2個のヘテロ原子の任意に置換されるヘテロ環式環を形成してもよく、Rは、存在しないか、または水素(H)もしくはC-Cアルキルであり4級アミンを与え、R及びRは、存在しないまたは存在し、存在する場合は、同一または異なって、独立して、任意に置換されるC-C10アルキルまたはC-C10アルケニルであり、nは、0、1、2、3、または4である。
【0196】
いくつかの実施形態では、R及びRは、独立して、任意に置換されるC-Cアルキル、C-Cアルケニル、またはC-Cアルキニルである。好ましい実施形態では、R及びRは、両方ともメチル基である。別の好ましい実施形態では、R及びRは、両方ともブチル基である。さらに別の好ましい実施形態では、nは1である。他の実施形態では、Rは、pHが該カチオン性脂質のpKより高い場合は存在せず、Rは、pHが該カチオン性脂質のpKより低い場合は、水素であり、従って該アミノ頭部基はプロトン化される。代替的な実施形態では、Rは、任意に置換されるC-Cアルキルであり4級アミンを与える。さらなる実施形態では、R及びRは、独立して、任意に置換されるC-CもしくはC-Cアルキル、またはC-CもしくはC-Cアルケニルである。
【0197】
代替的な実施形態では、式IIIのカチオン性脂質は、該アミノ頭部基と該アルキル鎖の一方または両方との間にエステル結合を含む。いくつかの実施形態では、式IIIのカチオン性脂質は、1つ以上のアニオンと塩(好ましくは結晶塩)を形成する。1つの特定の実施形態では、式IIIのカチオン性脂質は、そのオキサレート(例えば、ヘミオキサレート)塩であり、これは、好ましくは結晶塩である。
【0198】
式IIIのアルキル鎖の各々は、6位、9位、及び12位にcis二重結合を含む(すなわち、cis,cis,cis-Δ,Δ,Δ12)が、代替的な実施形態では、一方または両方のアルキル鎖におけるこれらの二重結合の1つ、2つ、または3つは、trans配置でもよい。
【0199】
1つの実施形態では、式IIIのカチオン性脂質は、構造
【化5】
を有する。
【0200】
γ-DLenDMA等のカチオン性脂質、及びさらなるカチオン性脂質の合成は、国際特許出願第WO2011/000106号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0201】
特定の実施形態では、以下の構造を有するカチオン性脂質が本発明において有用である。
【化6】
【0202】
化合物7等のカチオン性脂質、及びさらなるカチオン性脂質の合成は、米国特許第8,158,601号、及び国際特許出願第PCT/GB2011/000723号に記載されており、それらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0203】
本発明の脂質粒子に含まれ得る他のカチオン性脂質またはそれらの塩の例としては、限定されないが、その開示がすべての目的のため参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるWO2011/000106に記載のもの等のカチオン性脂質だけでなく、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスタ-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-1-(cis,cis-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスタ-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチ-1-(cis,cis-9’,1-2’-オクタデカジエノキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、1,2-ジオエイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DO-C-DAP)、1,2-ジミリストレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DMDAP)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド(DOTAP.Cl)、ジリノレイルメチル-3-ジメチルアミノプロピオネート(DLin-M-C2-DMA、DLin-M-K-DMAまたはDLin-M-DMAとしても知られる)、及びそれらの混合物等のカチオン性脂質が挙げられる。本発明の脂質粒子に含まれ得るさらなるカチオン性脂質またはそれらの塩は、米国特許公開第20090023673号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0204】
別の実施形態では、トリアルキルカチオン性脂質を用いて本明細書に記載の脂質粒子を調製することができる。かかるトリアルキルカチオン性脂質は、通常、各鎖に6個以上の炭素を有する飽和または不飽和炭化水素鎖を3個含む。本明細書に記載の組成物に組み込むことができるトリアルキルカチオン性脂質は、国際特許出願公開第WO2013/126803号に記載の通りに調製することができる。
【0205】
例えば、以下の式Bのトリアルキルカチオン性脂質を用いて本発明の脂質粒子を作製することができる:
X-A-Y-Z
(式B)
またはその塩。式中、
Xは、-N(H)Rまたは-NRであり、
Aは、存在しないか、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、またはC-Cアルキニルであり、該C-Cアルキル、C-Cアルケニル、及びC-Cアルキニルは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの各アルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、
Yは、存在しない、-C(=O)-、-O-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-N(R)C(=O)O-、及び-OC(=O)N(R)-からなる群から選択され、
Zは、3つの鎖を含む疎水性部分であり、該鎖の各々は、C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルから独立して選択され、該C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの任意のアルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、
各Rは、独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、これは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの任意のアルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、
各Rは、HまたはC-Cアルキルである。
【0206】
いくつかの実施形態では、式BのZは構造
【化7】
を有し、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、C-C11アルキル、C-C11アルケニル、またはC-C11アルキニルであり、該C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの任意のアルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環である。
【0207】
別の実施形態では、以下の式Cのカチオン性脂質を用いて本発明の脂質粒子を作製する:
X-A-Y-Z
(式C)
またはその塩。式中、
Xは、-N(H)Rまたは-NRであり、
Aは、存在しないか、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、またはC-Cアルキニルであり、該C-Cアルキル、C-Cアルケニル、及びC-Cアルキニルは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの各アルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、
Yは、存在しない、-C(=O)-、-O-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-N(R)C(=O)O-、及び-OC(=O)N(R)-からなる群から選択され、
は、3つまたは4つのR基で置換されるC-Cアルキルであり、ここで、各Rは、C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルから独立して選択され、該C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの任意のアルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、
各Rは、独立して、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、これは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの任意のアルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、
各Rは、HまたはC-Cアルキルである。
【0208】
いくつかの実施形態では、式CのZは、構造
【化8】
を有し、ここで、R、R、及びRは、各々独立して、C-C11アルキル、C-C11アルケニル、またはC-C11アルキニルであり、該C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの任意のアルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環である。
【0209】
いくつかの実施形態では、式CのZは、構造
【化9】
を有し、ここで、R1z及びR2zの一方は、
【化10】
からなる群から選択され、
1z及びR2zの他方は、
【化11】
からなる群から選択され、
ここで、各R3z、R4z、R5z、R6z、及びR7zは、C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルから独立して選択され、該C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの任意のアルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環である。
【0210】
いくつかの実施形態では、式CのZは、構造
【化12】
を有し、ここで、各R3z、R4z、R5z、及びR6zは、C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルから独立して選択され、該C-C11アルキル、C-C11アルケニル、及びC-C11アルキニルは、オキソ、ハロゲン、ヘテロ環、-CN、-OR、-NR、-NRC(=O)R、-NRSO、-C(=O)R、-C(=O)OR、-C(=O)NR、-SO、及び-SONRから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、nは、0、1、または2であり、R及びRは、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環であり、ここで、R及びRの任意のアルキル及びヘテロ環は、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx’、ヘテロ環、-NRx’y’、-NRx’C(=O)Ry’、-NRx’SOy’、-C(=O)Rx’、-C(=O)ORx’、-C(=O)NRx’y’、-SOn’x’、及び-SOn’NRx’y’から独立して選択される1つ以上の基でさらに置換されてもよく、ここで、n’は、0、1、または2であり、Rx’及びRy’は、各々独立して、水素、アルキル、またはヘテロ環である。
【0211】
いくつかの実施形態では、該カチオン性脂質は、
【化13】
ならびにそれらの塩からなる群から選択される。
【0212】
CLinDMA等のカチオン性脂質及びさらなるカチオン性脂質の合成は、米国特許公開第20060240554号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。DLin-C-DAP、DLinDAC、DLinMA、DLinDAP、DLin-S-DMA、DLin-2-DMAP、DLinTMA.Cl、DLinTAP.Cl、DLinMPZ、DLinAP、DOAP、及びDLin-EG-DMA等のカチオン性脂質、ならびにさらなるカチオン性脂質の合成は、PCT公開第WO09/086558号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。DO-C-DAP、DMDAP、DOTAP.Cl、DLin-M-C2-DMA等のカチオン性脂質及びさらなるカチオン性脂質の合成は、2009年10月9日に出願されたPCT出願第PCT/US2009/060251号、発明の名称“Improved Amino Lipids and Methods for the Delivery of Nucleic Acids”に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。多くの他のカチオン性脂質及び関連する類似体の合成は、米国特許第5,208,036号、第5,264,618号、第5,279,833号、第5,283,185号、第5,753,613号、及び第5,785,992号、ならびにPCT公開第WO96/10390号に記載されており、それらの開示は各々、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。さらに、多くの市販のカチオン性脂質製剤、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMA及びDOPEを含む。Invitrogenより入手可能)、LIPOFECTAMINE(登録商標)(DOSPA及びDOPEを含む。Invitrogenより入手可能)、ならびにTRANSFECTAM(登録商標)(DOGSを含む。Promega Corp.より入手可能)を用いることができる。
【0213】
いくつかの実施形態では、該カチオン性脂質は、当該粒子に存在する全脂質の約50mol%~約90mol%、約50mol%~約85mol%、約50mol%~約80mol%、約50mol%~約75mol%、約50mol%~約70mol%、約50mol%~約65mol%、約50mol%~約60mol%、約55mol%~約65mol%、もしくは約55mol%~約70mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。特定の実施形態では、該カチオン性脂質は、当該粒子に存在する全脂質の約50mol%、51mol%、52mol%、53mol%、54mol%、55mol%、56mol%、57mol%、58mol%、59mol%、60mol%、61mol%、62mol%、63mol%、64mol%、もしくは65mol%(またはその任意の分数)を構成する。
【0214】
他の実施形態では、該カチオン性脂質は、当該粒子に存在する全脂質の約2mol%~約60mol%、約5mol%~約50mol%、約10mol%~約50mol%、約20mol%~約50mol%、約20mol%~約40mol%、約30mol%~約40mol%、もしくは約40mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。
【0215】
本発明の脂質粒子における使用に適したカチオン性脂質のさらなる割合及び範囲は、PCT公開第WO09/127060号、米国公開出願第US2011/0071208号、PCT公開第WO2011/000106号、及び米国公開出願第US2011/0076335号に記載されており、これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらのすべてが本明細書に組み込まれる。
【0216】
本発明の脂質粒子に存在するカチオン性脂質の割合は、目標量であり、製剤中に存在するカチオン性脂質の実際の量は、例えば、±5mol%変動し得ることを理解されたい。例えば、1:57脂質粒子(例えば、SNALP)製剤では、カチオン性脂質の目標量は57.1mol%であるが、カチオン性脂質の実際の量は、その目標量の±5mol%、±4mol%、±3mol%、±2mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%でよく、当該製剤の残部は、他の脂質成分で構成される(合計で粒子に存在する全脂質の100mol%になる)。
【0217】
非限定的な例として、カチオン性脂質は、以下の化合物を含む。


【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0218】
非カチオン性脂質
本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)に使用される非カチオン性脂質は、安定な複合体を生成することが可能な様々な中性非荷電、双性イオン性、またはアニオン性脂質のいずれかでよい。
【0219】
非カチオン性脂質の非限定的な例としては、リン脂質、例えば、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びそれらの混合物が挙げられる。他のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質もまた使用することができる。これらの脂質のアシル基は、好ましくはC10-C24炭素鎖を有する脂肪酸から誘導されるアシル基、例えばラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、またはオレオイルである。
【0220】
非カチオン性脂質のさらなる例としては、ステロール、例えば、コレステロール及びその誘導体が挙げられる。コレステロール誘導体の非限定的な例としては、極性類似体、例えば、5α-コレスタノール、5β-コプロスタノール、コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテル、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル、及び6-ケトコレスタノール、非極性類似体、例えば、5α-コレスタン、コレステノン、5α-コレスタノン、5β-コレスタノン、及びコレステリルデカノエート、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、該コレステロール誘導体は、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル等の極性類似体である。コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテルの合成は、PCT公開第WO09/127060号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0221】
いくつかの実施形態では、該脂質粒子(例えば、SNALP)に存在する非カチオン性脂質は、1つ以上のリン脂質及びコレステロールまたはその誘導体の混合物を含む、またはそれからなる。他の実施形態では、該脂質粒子(例えば、SNALP)に存在する非カチオン性脂質は、1つ以上のリン脂質、例えば、コレステロールを含まない脂質粒子製剤を含む、またはそれからなる。さらに他の実施形態では、該脂質粒子(例えば、SNALP)に存在する非カチオン性脂質は、コレステロールまたはその誘導体、例えば、リン脂質を含まない脂質粒子製剤を含むか、またはそれからなる。
【0222】
本発明における使用に適した非カチオン性脂質の他の例としては、無リンの脂質、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、アセチルパルミテート、グリセロールリシノレアート、ヘキサデシルステアレート、イソプロピルミリステート、両性アクリルポリマー、トリエタノールアミン-ラウリルスルフェート、アルキル-アリールスルフェートポリエチルオキシレート化脂肪酸アミド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド、セラミド、スフィンゴミエリン等が挙げられる。
【0223】
いくつかの実施形態では、該非カチオン性脂質は、当該粒子に存在する全脂質の約10mol%~約60mol%、約20mol%~約55mol%、約20mol%~約45mol%、約20mol%~約40mol%、約25mol%~約50mol%、約25mol%~約45mol%、約30mol%~約50mol%、約30mol%~約45mol%、約30mol%~約40mol%、約35mol%~約45mol%、約37mol%~約42mol%、または約35mol%、36mol%、37mol%、38mol%、39mol%、40mol%、41mol%、42mol%、43mol%、44mol%、もしくは45mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。
【0224】
該脂質粒子がリン脂質及びコレステロールまたはコレステロール誘導体の混合物を含む実施形態では、該混合物は、該粒子に存在する全脂質の最大約40mol%、45mol%、50mol%、55mol%、または60mol%を構成し得る。
【0225】
いくつかの実施形態では、該混合物の該リン脂質成分は、当該粒子に存在する全脂質の約2mol%~約20mol%、約2mol%~約15mol%、約2mol%~約12mol%、約4mol%~約15mol%、もしくは約4mol%~約10mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成し得る。ある特定の好ましい実施形態では、該混合物の該リン脂質成分は、当該粒子に存在する全脂質の約5mol%~約10mol%、約5mol%~約9mol%、約5mol%~約8mol%、約6mol%~約9mol%、約6mol%~約8mol%、または約5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、もしくは10mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。非限定的な例として、リン脂質及びコレステロールの混合物を含む1:57脂質粒子製剤は、DPPCまたはDSPC等のリン脂質を、約7mol%(またはその任意の分数)で、例えば、該粒子に存在する全脂質の約34mol%(またはその任意の分数)でのコレステロールまたはコレステロール誘導体との混合物中に含み得る。別の非限定的な例として、リン脂質及びコレステロールの混合物を含む7:54脂質粒子製剤は、DPPCまたはDSPC等のリン脂質を約7mol%(またはその任意の分数)で、例えば、該粒子に存在する全脂質の約32mol%(またはその任意の分数)でのコレステロールまたはコレステロール誘導体との混合物中に含み得る。
【0226】
他の実施形態では、該混合物の該コレステロール成分は、当該粒子に存在する全脂質の約25mol%~約45mol%、約25mol%~約40mol%、約30mol%~約45mol%、約30mol%~約40mol%、約27mol%~約37mol%、約25mol%~約30mol%、もしくは約35mol%~約40mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成し得る。ある特定の好ましい実施形態では、該混合物の該コレステロール成分は、当該粒子に存在する全脂質の約25mol%~約35mol%、約27mol%~約35mol%、約29mol%~約35mol%、約30mol%~約35mol%、約30mol%~約34mol%、約31mol%~約33mol%、または約30mol%、31mol%、32mol%、33mol%、34mol%、もしくは35mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。通常、リン脂質及びコレステロールの混合物を含む1:57脂質粒子製剤は、コレステロールまたはコレステロール誘導体を約34mol%(またはその任意の分数)で、例えば、該粒子に存在する全脂質の約7mol%(またはその任意の分数)でのDPPCまたはDSPC等のリン脂質との混合物中に含み得る。通常、リン脂質及びコレステロールの混合物を含む7:54脂質粒子製剤は、コレステロールまたはコレステロール誘導体を約32mol%(またはその任意の分数)で、例えば、該粒子に存在する全脂質の約7mol%(またはその任意の分数)でのDPPCまたはDSPC等のリン脂質との混合物中に含み得る。
【0227】
該脂質粒子がリン脂質を含まない実施形態では、該コレステロールまたはその誘導体は、該粒子に存在する全脂質の最大約25mol%、30mol%、35mol%、40mol%、45mol%、50mol%、55mol%、または60mol%を構成し得る。
【0228】
いくつかの実施形態では、該リン脂質を含まない脂質粒子製剤における該コレステロールまたはその誘導体は、該粒子に存在する全脂質の約25mol%~約45mol%、約25mol%~約40mol%、約30mol%~約45mol%、約30mol%~約40mol%、約31mol%~約39mol%、約32mol%~約38mol%、約33mol%~約37mol%、約35mol%~約45mol%、約30mol%~約35mol%、約35mol%~約40mol%、または約30mol%、31mol%、32mol%、33mol%、34mol%、35mol%、36mol%、37mol%、38mol%、39mol%、もしくは40mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成し得る。非限定的な例として、1:62脂質粒子製剤は、該粒子に存在する全脂質の約37mol%(またはその任意の分数)でコレステロールを含み得る。別の非限定的な例として、7:58脂質粒子製剤は、該粒子に存在する全脂質の約35mol%(またはその任意の分数)でコレステロールを含み得る。
【0229】
他の実施形態では、該非カチオン性脂質は、当該粒子に存在する全脂質の約5mol%~約90mol%、約10mol%~約85mol%、約20mol%~約80mol%、約10mol%(例えば、リン脂質のみ)、もしくは約60mol%(例えば、リン脂質及びコレステロールまたはその誘導体)(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。
【0230】
本発明の脂質粒子における使用に適した非カチオン性脂質のさらなる割合及び範囲は、PCT公開第WO09/127060号、米国公開出願第US2011/0071208号、PCT公開第WO2011/000106号、及び米国公開出願第US2011/0076335号に記載されており、これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0231】
本発明の脂質粒子に存在する非カチオン性脂質の割合は、目標量であり、製剤中に存在する非カチオン性脂質の実際の量は、例えば、±5mol%変動し得ることを理解されたい。例えば、1:57脂質粒子(例えば、SNALP)製剤では、リン脂質の目標量は7.1mol%であり、コレステロールの目標量は34.3mol%であるが、リン脂質の実際の量は、その目標量の±2mol%、±1.5mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%でよく、また、コレステロールの実際の量は、その目標量の±3mol%、±2mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%でよく、当該製剤の残部は、他の脂質成分で構成される(合計で粒子に存在する全脂質の100mol%になる)。同様に、7:54脂質粒子(例えば、SNALP)製剤では、リン脂質の目標量は6.75mol%であり、コレステロールの目標量は32.43mol%であるが、リン脂質の実際の量は、その目標量の±2mol%、±1.5mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%でよく、コレステロールの実際の量は、その目標量の±3mol%、±2mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%でよく、当該製剤の残部は、他の脂質成分で構成される(合計で粒子に存在する全脂質の100mol%になる)。
【0232】
脂質コンジュゲート
カチオン性脂質及び非カチオン性脂質に加えて、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、さらに脂質コンジュゲートを含んでよい。この複合脂質は、粒子の凝集を防ぐという点において有用である。適切な複合脂質としては、PEG-脂質コンジュゲート、POZ-脂質コンジュゲート、ATTA-脂質コンジュゲート、カチオン性ポリマー-脂質コンジュゲート(CPL)、及びそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、該粒子は、CPLとともにPEG-脂質コンジュゲートまたはATTA-脂質コンジュゲートのいずれかを含む。
【0233】
好ましい実施形態では、該脂質コンジュゲートは、PEG-脂質である。PEG-脂質の例としては、例えば、PCT公開第WO05/026372号に記載のジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(PEG-DAA)、例えば、米国特許公開第20030077829号及び第2005008689号に記載のジアシルグリセロールに結合したPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミン等のリン脂質に結合したPEG(PEG-PE)、例えば、米国特許第5,885,613号に記載のセラミドに結合したPEG、コレステロールまたはその誘導体に結合したPEG、ならびにそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。これらの特許文献の開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本発明における使用に適したさらなるPEG-脂質としては、制限なく、mPEG2000-1,2-ジ-O-アルキル-sn3-カルバモイルグリセリド(PEG-C-DOMG)が挙げられる。PEG-C-DOMGの合成は、PCT公開第WO09/086558号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに追加の適切なPEG-脂質コンジュゲートとしては、制限なく、1-[8’-(1,2-ジミリストイル-3-プロパノキシ)-カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-ω-メチル-ポリ(エチレングリコール)(2KPEG-DMG)が挙げられる。2KPEG-DMGの合成は、米国特許第7,404,969号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0234】
PEGは、2つの末端ヒドロキシル基を備えたエチレンPEG繰り返し単位の線状水溶性ポリマーである。PEGは、分子量によって分類される。例えば、PEG2000は、平均分子量約2,000ダルトンを有し、PEG5000は、平均分子量約5,000ダルトンを有する。PEGは、Sigma Chemical Co.及び他の会社から市販されており、以下のもの、すなわち、モノメトキシポリエチレングリコール(MePEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシネート(MePEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルスクシネート(MePEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコール-アミン(MePEG-NH)、モノメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(MePEG-TRES)、モノメトキシポリエチレングリコール-イミダゾリル-カルボニル(MePEG-IM)、及び末端メトキシ基の代わりに末端ヒドロキシル基を含むかかる化合物(例えば、HO-PEG-S、HO-PEG-S-NHS、HO-PEG-NH等)を含むがこれらに限定されない。他のPEG、例えば、米国特許第6,774,180号及び第7,053,150号に記載されているもの(例えば、mPEG(20KDa)アミン)もまた、本発明のPEG-脂質コンジュゲートを調製するのに有用である。これら特許の開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。さらに、モノメトキシポリエチレングリコール-酢酸(MePEG-CHCOOH)は、例えば、PEG-DAAコンジュゲートを含めたPEG-脂質コンジュゲートの調製に特に有用である。
【0235】
本明細書に記載のPEG-脂質コンジュゲートのPEG部分は、約550ダルトン~約10,000ダルトンに及ぶ平均分子量を含み得る。場合によっては、該PEG部分は、約750ダルトン~約5,000ダルトンに及ぶ平均分子量を有する(例えば、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトン等)。好ましい実施形態では、該PEG部分は、約2,000ダルトンまたは約750ダルトンの平均分子量を有する。
【0236】
場合によっては、該PEGは、任意に、アルキル、アルコキシ、アシル、またはアリール基で置換することができる。該PEGは、脂質に直接複合化することができ、リンカー部分を介して脂質に結合してもよい。PEGを脂質に結合させるのに適した任意のリンカー部分を使用することができ、例えば、エステルを含まないリンカー部分及びエステルを含むリンカー部分等である。好ましい実施形態では、該リンカー部分は、エステルを含まないリンカー部分である。本明細書で使用される「エステルを含まないリンカー部分」という用語は、カルボン酸エステル結合(-OC(O)-)を含まないリンカー部分を指す。適切なエステルを含まないリンカー部分としては、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、尿素(-NHC(O)NH-)、ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、スクシニル(-(O)CCHCHC(O)-)、スクシンアミジル(-NHC(O)CHCHC(O)NH-)、エーテル、ジスルフィド、ならびにそれらの組み合わせ(カルバメートリンカー部分及びアミドリンカー部分を両方含むリンカー等)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、カルバメートリンカーを用いて該PEGを該脂質に結合させる。
【0237】
他の実施形態では、エステルを含むリンカー部分を用いて該PEGを該脂質に結合させる。適切なエステルを含むリンカー部分としては、例えば、カーボネート(-OC(O)O-)、スクシノイル、ホスフェートエステル(-O-(O)POH-O-)、スルホネートエステル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0238】
各種鎖長及び飽和度の、様々なアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンをPEGに結合させて脂質コンジュゲートを形成することができる。かかるホスファチジルエタノールアミンは、市販されているか、または、当業者に既知の従来の技術を用いて単離もしくは合成することができる。炭素鎖長がC10~C20の範囲の飽和または不飽和脂肪酸を含むホスファチジル-エタノールアミンが好ましい。モノまたはジ不飽和脂肪酸ならびに飽和及び不飽和脂肪酸の混合物のホスファチジルエタノールアミンもまた使用することができる。適切なホスファチジルエタノールアミンとしては、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、及びジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0239】
「ATTA」または「ポリアミド」という用語には、制限なく、米国特許第6,320,017号及び第6,586,559号に記載の化合物が含まれる。これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。これらの化合物には、式
【化19】
を有する化合物が含まれ、式中、Rは、水素、アルキル、及びアシルからなる群から選択される成員であり、Rは、水素及びアルキルからなる群から選択される成員であるか、または、任意に、R及びRならびにそれらが結合する窒素は、アジド部分を形成し、Rは、水素、任意に置換されるアルキル、任意に置換されるアリール、及びアミノ酸の側鎖から選択される群の成員であり、Rは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、ヒドラジノ、アミノ、及びNRからなる群から選択される成員であり、ここで、R及びRは、独立して、水素またはアルキルであり、nは、4~80であり、mは、2~6であり、pは、1~4であり、qは、0または1である。当業者には、他のポリアミドを本発明の化合物に用いることができることは明らかであろう。
【0240】
「ジアシルグリセロール」または「DAG」という用語には、両方が独立して、グリセロールの1及び2位にエステル結合によって結合した2~30個の炭素を有する2つの脂肪族アシル鎖であるR及びRを有する化合物が含まれる。これらのアシル基は、飽和でも、様々な不飽和度を有していてもよい。適切なアシル基としては、ラウロイル(C12)、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)、ステアロイル(C18)、及びイコソイル(C20)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、R及びRは同じであり、すなわち、R及びRは、ともにミリストイル(すなわち、ジミリストイル)であり、R及びRは、ともにステアロイル(すなわち、ジステアロイル)等である。ジアシルグリセロールは、以下の一般式を有する。
【化20】
【0241】
「ジアルキルオキシプロピル」または「DAA」という用語には、両方が独立して2~30個の炭素を有する2つのアルキル鎖であるR及びRを有する化合物が含まれる。これらのアルキル基は、飽和でも、様々な不飽和度を有していてもよい。ジアルキルオキシプロピルは、以下の一般式を有する。
【化21】
【0242】
好ましい実施形態では、該PEG-脂質は、以下の式
【化22】
を有するPEG-DAAコンジュゲートであり、式中、R及びRは、独立して選択され、約10~約22個の炭素原子を有する長鎖アルキル基であり、PEGは、ポリエチレングリコールであり、Lは、上記のエステルを含まないリンカー部分またはエステルを含むリンカー部分である。これら長鎖アルキル基は飽和でも不飽和でもよい。適切なアルキル基としては、デシル(C10)、ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、パルミチル(C16)、ステアリル(C18)、及びイコシル(C20)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、R及びRは同じであり、すなわち、R及びRは、ともにミリスチル(すなわち、ジミリスチル)であり、R及びRは、ともにステアリル(すなわち、ジステアリル)等である。
【0243】
上記式VIIにおいて、該PEGは約550ダルトン~約10,000ダルトンに及ぶ平均分子量を有する。場合によっては、該PEGは、約750ダルトン~約5,000ダルトン(例えば、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトン等)の平均分子量を有する。好ましい実施形態では、該PEGは、約2,000ダルトンまたは約750ダルトンの平均分子量を有する。該PEGは、任意に、アルキル、アルコキシ、アシル、またはアリール基で置換することができる。ある特定の実施形態では、該末端ヒドロキシル基は、メトキシまたはメチル基で置換される。
【0244】
好ましい実施形態では、「L」は、エステルを含まないリンカー部分である。適切なエステルを含まないリンカーとしては、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カルバメートリンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、ジスルフィドリンカー部分、スクシンアミジルリンカー部分、及びそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、該エステルを含まないリンカー部分は、カルバメートリンカー部分である(すなわち、PEG-C-DAAコンジュゲート)。別の好ましい実施形態では、該エステルを含まないリンカー部分は、アミドリンカー部分である(すなわち、PEG-A-DAAコンジュゲート)。さらに別の好ましい実施形態では、該エステルを含まないリンカー部分は、スクシンアミジルリンカー部分である(すなわち、PEG-S-DAAコンジュゲート)。
【0245】
特定の実施形態では、該PEG-脂質コンジュゲートは、
【化23】
から選択される。
【0246】
該PEG-DAAコンジュゲートは、当業者に既知の標準的な技術及び試薬を用いて合成される。該PEG-DAAコンジュゲートは、様々なアミド、アミン、エーテル、チオ、カルバメート、及び尿素結合を含むことが認識されよう。当業者には、これらの結合を形成する方法及び試薬は周知であり、容易に利用可能であることが認識されよう。例えば、March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY(Wiley 1992)、Larock,COMPREHENSIVE ORGANIC TRANSFORMATIONS(VCH 1989)、及びFurniss,VOGEL’S TEXTBOOK OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY,5th ed.(Longman 1989)を参照されたい。また、含まれる任意の官能基が、該PEG-DAAコンジュゲートの合成の異なる点で保護及び脱保護を必要とし得ることが理解されよう。当業者には、かかる技術が周知であることが認識されよう。例えば、Green and Wuts,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS(Wiley 1991)を参照されたい。
【0247】
好ましくは、該PEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)コンジュゲート、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)コンジュゲート、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)コンジュゲート、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)コンジュゲートである。これらの実施形態では、該PEGは、好ましくは、約750または約2,000ダルトンの平均分子量を有する。1つの特定の好ましい実施形態では、該PEG-脂質コンジュゲートは、PEG2000-C-DMAを含み、ここで、「2000」は、該PEGの平均分子量を表し、「C」は、カルバメートリンカー部分を表し、「DMA」はジミリスチルオキシプロピルを表す。別の特に好ましい実施形態では、該PEG-脂質コンジュゲートは、PEG750-C-DMAを含み、ここで、「750」は、該PEGの平均分子量を表し、「C」は、カルバメートリンカー部分を表し、「DMA」はジミリスチルオキシプロピルを表す。特定の実施形態では、該PEGの末端ヒドロキシル基は、メチル基で置換される。当業者には、他のジアルキルオキシプロピルを本発明のPEG-DAAコンジュゲートに使用できることが容易に理解されよう。
【0248】
上記に加えて、当業者には、他の親水性ポリマーをPEGの代わりに用いることができることが容易に明らかであろう。PEGの代わりに用いることができる適切なポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド及びポリジメチルアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ならびにヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが挙げられるがこれらに限定されない。
【0249】
上記成分に加えて、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、さらに、カチオン性ポリ(エチレングリコール)(PEG)脂質またはCPLを含むことができる(例えば、Chen et al.,Bioconj.Chem.,11:433-437(2000)、米国特許第6,852,334号、PCT公開第WO00/62813号参照、これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0250】
適切なCPLとしては、式VIII
A-W-Y(VIII)
の化合物が挙げられ、式中、A、W、及びYは以下に記載の通りである。
【0251】
式VIIIに関して、「A」は、脂質アンカーとして作用する両親媒性脂質、中性脂質、または疎水性脂質等の脂質部分である。適切な脂質の例としては、ジアシルグリセロリル、ジアルキルグリセロリル、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパン、及び1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0252】
「W」は、ポリマーまたはオリゴマー、例えば、親水性ポリマーまたはオリゴマーである。好ましくは、該親水性ポリマーは、非免疫原性であるか、または固有の免疫原性が低い生体適合性のポリマーである。代替的に、該親水性ポリマーは、適切なアジュバントとともに使用された場合に弱抗原性であり得る。適切な非免疫原性ポリマーとしては、PEG、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマー、及びそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、該ポリマーは、約250~約7,000ダルトンの分子量を有する。
【0253】
「Y」は、ポリカチオン性部分である。ポリカチオン性部分という用語は、選択されたpH、好ましくは生理的pHで正電荷、好ましくは少なくとも2つの正電荷を有する化合物、誘導体、または官能基を指す。適切なポリカチオン性部分としては、塩基性アミノ酸及びそれらの誘導体、例えば、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、リシン、及びヒスチジン、スペルミン、スペルミジン、カチオン性デンドリマー、ポリアミン、ポリアミン糖、ならびにアミノ多糖が挙げられる。該ポリカチオン性部分は、構造が線状、例えば、線状テトラリシン、分岐、またはデンドリマーであり得る。ポリカチオン性部分は、約2~約15個の正電荷、好ましくは、約2~約12個の正電荷、より好ましくは約2~約8個の正電荷を選択されたpH値で有する。どのポリカチオン性部分を使用するかの選択は、所望の粒子用途の種類によって決定され得る。
【0254】
該ポリカチオン性部分の電荷は、粒子部分全体の至る所に分布していてもよく、代替的に、該粒子部分の1つの特定の領域での個別の集中電荷密度、例えば、電荷スパイクでもよい。該電荷密度が粒子に分布している場合、該電荷密度は、均等に分布していても不均等に分布していてもよい。該ポリカチオン性部分の電荷分布のすべての変形が本発明によって包含される。
【0255】
脂質「A」及び非免疫原性ポリマー「W」は、様々な方法で、好ましくは共有結合により結合することができる。当業者に既知の方法を「A」及び「W」の共有結合のために用いることができる。適切な結合としては、アミド、アミン、カルボキシル、カーボネート、カルバメート、エステル、及びヒドラゾン結合が挙げられるがこれらに限定されない。当業者には、該結合を生じさせるためには、「A」及び「W」が相補的官能基を有する必要があることが明らかであろう。これら2つの基、すなわち、1つは脂質上及び他方はポリマー上の反応が所望の結合をもたらす。例えば、該脂質がジアシルグリセロールであり、末端ヒドロキシルが、例えば、NHS及びDCCで活性化されて活性エステルが形成され、その後アミノ基を含むポリマー、例えば、ポリアミドと反応した場合(例えば、米国特許第6,320,017号及び第6,586,559号参照。これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)、アミド結合がこれら2つの基の間に生じる。
【0256】
場合によっては、該ポリカチオン性部分は、リガンド、例えば、標的リガンドやカルシウムを錯化するためのキレート化部分が結合していてもよい。好ましくは、リガンドが結合した後、該カチオン性部分は、正電荷を維持する。場合によっては、結合しているリガンドは、正電荷を有する。適切なリガンドとしては、限定されないが、反応性官能基を有する化合物または装置が挙げられ、脂質、両親媒性脂質、担体化合物、生体親和性化合物、生体材料、バイオポリマー、生物医学装置、分析的に検出可能な化合物、治療的に活性な化合物、酵素、ペプチド、タンパク質、抗体、免疫促進剤、放射性標識、蛍光物質、ビオチン、薬物、ハプテン、DNA、RNA、多糖類、リポソーム、ビロソーム、ミセル、免疫グロブリン、官能基、他の標的化部分、または毒素が挙げられる。
【0257】
いくつかの実施形態では、該脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)は、当該粒子に存在する全脂質の約0.1mol%~約2mol%、約0.5mol%~約2mol%、約1mol%~約2mol%、約0.6mol%~約1.9mol%、約0.7mol%~約1.8mol%、約0.8mol%~約1.7mol%、約0.9mol%~約1.6mol%、約0.9mol%~約1.8mol%、約1mol%~約1.8mol%、約1mol%~約1.7mol%、約1.2mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.7mol%、約1.3mol%~約1.6mol%、もしくは約1.4mol%~約1.5mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。
【0258】
他の実施形態では、該脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)は、当該粒子に存在する全脂質の約0mol%~約20mol%、約0.5mol%~約20mol%、約2mol%~約20mol%、約1.5mol%~約18mol%、約2mol%~約15mol%、約4mol%~約15mol%、約2mol%~約12mol%、約5mol%~約12mol%、もしくは約2mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。
【0259】
さらなる実施形態では、該脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)は、当該粒子に存在する全脂質の約4mol%~約10mol%、約5mol%~約10mol%、約5mol%~約9mol%、約5mol%~約8mol%、約6mol%~約9mol%、約6mol%~約8mol%、または約5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、もしくは10mol%(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)を構成する。
【0260】
本発明の脂質粒子における使用に適した脂質コンジュゲートのさらなる割合及び範囲は、PCT公開第WO09/127060号、米国公開出願第US2011/0071208号、PCT公開第WO2011/000106号、及び米国公開出願第US2011/0076335号に記載されており、これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらのすべてが本明細書に組み込まれる。
【0261】
本発明の脂質粒子に存在する脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質)の割合は、目標量であり、製剤中に存在する脂質コンジュゲートの実際の量は、例えば、±2mol%変動し得ることを理解されたい。例えば、1:57脂質粒子(例えば、SNALP)製剤では、脂質コンジュゲートの目標量は1.4mol%であるが、脂質コンジュゲートの実際の量は、その目標量の±0.5mol%、±0.4mol%、±0.3mol%、±0.2mol%、±0.1mol%、または±0.05mol%でよく、当該製剤の残部は、他の脂質成分で構成される(合計で粒子に存在する全脂質の100mol%になる)。同様に、7:54脂質粒子(例えば、SNALP)製剤では、脂質コンジュゲートの目標量は6.76mol%であるが、脂質コンジュゲートの実際の量は、その目標量の±2mol%、±1.5mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%でよく、当該製剤の残部は、他の脂質成分で構成される(合計で粒子に存在する全脂質の100mol%になる)。
【0262】
当業者には、該脂質コンジュゲートの濃度は、使用される脂質コンジュゲートに応じて、及び当該脂質粒子が融合性になる率に応じて変動し得ることが理解されよう。
【0263】
該脂質コンジュゲートの組成及び濃度を制御することにより、該脂質コンジュゲートが当該脂質粒子の外で交換する率、ひいては、該脂質粒子が融合性になる率を制御することができる。例えば、PEG-DAAコンジュゲートが脂質コンジュゲートとして使用された場合、当該脂質粒子が融合性になる率は、例えば、該脂質コンジュゲートの濃度を変えることによって、PEGの分子量を変えることによって、または、該PEG-DAAコンジュゲートのアルキル基の鎖長及び飽和度を変えることによって変動し得る。さらに、例えば、pH、温度、イオン強度等を含めた他の変数を用いて、脂質粒子が融合性になる率を変えること及び/または制御することができる。脂質粒子が融合性になる率を制御するために使用することができる他の方法は、当業者には、本開示を読んだ上で明らかになるであろう。また、該脂質コンジュゲートの組成及び濃度を制御することによって、当該脂質粒子(例えば、SNALP)のサイズを制御することができる。
【0264】
脂質粒子の調製
本発明の脂質粒子、例えば、SNALPは、その中でmRNAが該粒子の脂質部分に取り込まれて分解から保護されており、これらに限定されないが、連続混合法、直接希釈法、及びインライン希釈法を含めた当技術分野で既知の任意の方法で形成することができる。
【0265】
ある特定の実施形態では、本発明は、連続混合法、例えば、第一の容器に核酸(例えば、mRNA)を含む水溶液を準備すること、第二の容器に有機脂質溶液を準備すること(ここでは、該有機脂質溶液に含まれる脂質は、有機溶媒、例えば、エタノール等の低級アルカノールに可溶化される)、及び該水溶液を該有機脂質溶液と混合することを含み、それにより、該有機脂質溶液が該水溶液と混ざり、実質的に即座に脂質小胞(例えば、リポソーム)を生成し、該脂質小胞内に該核酸を封入する工程を介して生成される核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)を提供する。この工程及びこの工程を行うための装置は、米国特許公開第20040142025号に詳細に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0266】
脂質溶液及び緩衝液を混合環境、例えば、混合チャンバーに連続的に導入するという行為が、該脂質溶液の該緩衝液での連続希釈を引き起こし、それにより、混合後実質的に即座に脂質小胞が生成する。本明細書で使用される、「脂質溶液を緩衝液で連続的に希釈する」という表現(及びその変形)は、概して、該脂質溶液が、小胞生成を達成するのに十分な力で、水和過程で十分急速に希釈されることを意味する。核酸を含む該水溶液を該有機脂質溶液と混合することにより、該有機脂質溶液は、該緩衝液(すなわち、水溶液)の存在下で連続的な段階的希釈を受け、核酸-脂質粒子を生成する。
【0267】
該連続混合法を用いて形成された核酸-脂質粒子は、通常、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、約120nm未満、110nm未満、100nm未満、90nm未満、もしくは80nm未満、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、もしくは150nm(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)のサイズを有する。このようにして形成される粒子は、凝集せず、均一な粒径を達成するために任意に分類される。
【0268】
別の実施形態では、本発明は、直接希釈法を介して生成される核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)を提供する。この方法は、脂質小胞(例えば、リポソーム)溶液を形成し、直ちに直接この脂質小胞溶液を、調節された量の希釈用緩衝液を含む収集容器に導入することを含む。好ましい態様において、該収集容器は、該収集容器の内容物を攪拌して希釈を容易にするように構成された1つ以上の要素を含む。1つの態様において、該収集容器に含まれる希釈用緩衝液の量は、そこに導入される脂質小胞溶液の体積と実質的に等しい。非限定的な例として、45%エタノール中の脂質小胞溶液が、同量の希釈用緩衝液を含む収集容器に導入された場合、より小さい粒子を有利に生じるであろう
【0269】
さらに別の実施形態では、本発明は、インライン希釈法を介して生成される核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)を提供し、ここでは、希釈用緩衝液を含む第三の容器が第二の混合領域と流動的に連結されている。この実施形態では、第一の混合領域で生成された脂質小胞(例えば、リポソーム)溶液は、直ちに直接第二の混合領域で希釈用緩衝液と混合される。好ましい態様において、該第二の混合領域は、該脂質小胞溶液の流れと該希釈用緩衝液の流れが対抗する180°の流れとして合流するように配置されたT字型コネクタを含むが、より浅い角度、例えば、約27°~約180°(例えば、約90°)を与えるコネクタを用いてもよい。ポンプ機構が、該第二の混合領域への制御可能な緩衝液の流れを供給する。1つの態様において、該第二の混合領域に提供される希釈用緩衝液の流量は、第一の混合領域からそこに導入される脂質小胞溶液の流量と実質的に等しくなるように制御される。この実施形態は、有利には、第二の混合領域における希釈用緩衝液の流れと脂質小胞溶液の混合を、ひいては、緩衝液中の脂質小胞溶液の濃度もまた、第二の混合過程を通してさらに制御することを可能にする。希釈用緩衝液の流量のかかる制御は、低濃度での小粒径形成を有利に可能にする。
【0270】
これらの方法ならびにこれら直接希釈法及びインライン希釈法を行うための装置は、米国特許公開第20070042031号に詳細に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0271】
該直接希釈法及びインライン希釈法を用いて形成される核酸-脂質粒子は、通常、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、約120nm未満、110nm未満、100nm未満、90nm未満、もしくは80nm未満、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、もしくは150nm(またはその任意の分数もしくはその中の範囲)のサイズを有する。このようにして形成される粒子は、凝集せず、均一な粒径を達成するために任意に分類される。
【0272】
必要に応じて、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、リポソームの分類に利用可能ないずれかの方法によって分類することができる。分類を行い、所望のサイズ範囲及び比較的狭い粒径分布を得てもよい。
【0273】
粒子を所望のサイズに分類するためにいくつかの技術が利用可能である。リポソームに使用され、本発明の粒子に等しく適用可能な1つの分類方法が米国特許第4,737,323号に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。浴またはプローブのいずれかによる超音波処理で粒子懸濁液を超音波処理することで、約50nm未満のサイズの粒子へのサイズの漸減が生じる。ホモジナイズは別の方法であり、これは、大きな粒子を小さい粒子に砕くためのせん断エネルギーに依存している。通常のホモジナイズ手順では、選択された粒径、通常は約60~約80nmが認められるまで、粒子を標準的なエマルションホモジナイザーを通して再循環させる。どちらの方法でも、粒径分布は従来のレーザービーム粒径識別、またはQELSで観察することができる。
【0274】
小孔ポリカーボネート膜または非対称セラミック膜を通す粒子の押し出しもまた、粒径を比較的明確な粒径分布に減少させるための有効な方法である。通常、所望の粒径分布が達成されるまで、この膜を通して懸濁液を1回以上循環させる。粒子を連続してより小孔の膜を通して押し出し、段階的なサイズの減少を達成してもよい。
【0275】
他の実施形態では、これらの方法はさらに、本発明の組成物を用いて細胞のリポフェクションをもたらすのに有用な非脂質ポリカチオンを加えることを含む場合がある。適切な非脂質ポリカチオンの例としては、ヘキサジメトリンブロミド(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wisconsin,USAからPOLYBRENE(登録商標)のブランド名で販売されている。)またはヘキサジメトリンの他の塩が挙げられる。他の適切なポリカチオンとしては、例えば、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リシン、ポリ-D-リシン、ポリアリルアミン、及びポリエチレンイミンの塩が挙げられる。これらの塩の添加は、好ましくは粒子が形成された後である。
【0276】
いくつかの実施形態では、形成される核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)における核酸対脂質比(質量/質量比)は、約0.01~約0.2、約0.05~約0.2、約0.02~約0.1、約0.03~約0.1、または約0.01~約0.08に及ぶ。出発物質(投入量)の比もまたこの範囲内である。他の実施形態では、該粒子調製は、約400μgの核酸を全脂質10mg当たり使用するか、または、核酸対脂質の質量比は、約0.01~約0.08、より好ましくは、約0.04であり、これは、50μgの核酸につき全脂質1.25mgに相当する。他の好ましい実施形態では、該粒子は、核酸:脂質の質量比が約0.08である。
【0277】
他の実施形態では、形成される核酸-脂質粒子(例えば、SNALP)における脂質対核酸比(質量/質量比)は、約1(1:1)~約100(100:1)、約5(5:1)~約100(100:1)、約1(1:1)~約50(50:1)、約2(2:1)~約50(50:1)、約3(3:1)~約50(50:1)、約4(4:1)~約50(50:1)、約5(5:1)~約50(50:1)、約1(1:1)~約25(25:1)、約2(2:1)~約25(25:1)、約3(3:1)~約25(25:1)、約4(4:1)~約25(25:1)、約5(5:1)~約25(25:1)、約5(5:1)~約20(20:1)、約5(5:1)~約15(15:1)、約5(5:1)~約10(10:1)、または約5(5:1)、6(6:1)、7(7:1)、8(8:1)、9(9:1)、10(10:1)、11(11:1)、12(12:1)、13(13:1)、14(14:1)、15(15:1)、16(16:1)、17(17:1)、18(18:1)、19(19:1)、20(20:1)、21(21:1)、22(22:1)、23(23:1)、24(24:1)、もしくは25(25:1)、またはその任意の分数もしくはその中の範囲に及ぶ。出発物質(投入量)の比もまたこの範囲内である。
【0278】
前述の通り、該複合脂質はさらにCPLを含んでもよい。SNALP-CPL(CPLを含むSNALP)を作製するための様々な一般的な方法が本明細書で議論されている。2つの一般的な方法に含まれるのは、「後挿入」技術、すなわち、CPLの、例えば、予め形成されたSNALPへの挿入、及びCPLが脂質混合物に、例えば、SNALP形成段階の間に含まれる「標準的」技術である。該後挿入技術は、SNALPの二重膜の主に外面にCPLを有するSNALPを生じる一方、標準的技術は、CPLを内面と外面の両方に有するSNALPをもたらす。この方法は、特にリン脂質からなる小胞(これはコレステロールを含むことができる)、及び同様にPEG-脂質(例えば、PEG-DAA及びPEG-DAG)を含む小胞にも有用である。SNALP-CPLの作製方法は、例えば、米国特許第5,705,385号、第6,586,410号、第5,981,501号、第6,534,484号、及び第6,852,334号、米国特許公開第20020072121号、ならびにPCT公開第WO00/62813号に教示されており、これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0279】
脂質粒子の投与
形成後、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、細胞に核酸(例えば、mRNA)を導入するのに特に有用である。従って、本発明はまた、細胞に核酸(例えば、mRNA)を導入する方法を提供する。特定の実施形態では、該核酸(例えば、mRNA)は、細網内皮細胞(例えば、マクロファージ、単球等)等の感染細胞、ならびに線維芽細胞、内皮細胞(血管の内面を補強するもの等)、及び/または血小板細胞を含めた他の細胞型に導入される。これらの方法は、最初に本明細書に記載の粒子を形成し、その後、該粒子を細胞に、該細胞に対するmRNAの送達が生じるのに十分な時間接触させることによりインビトロまたはインビボで実施され得る。
【0280】
本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、それらが混合または接触されるほとんどすべての細胞型に吸着することができる。吸着後、これらの粒子は、当該細胞の一部に取り込まれ、細胞膜と脂質を交換する場合も、当該細胞と融合する場合もある。当該粒子の核酸(例えば、mRNA)部分の移動または取り込みは、これらの経路のうちのいずれか1つを介して起こり得る。特に、融合が起こる場合、該粒子の膜は細胞膜に統合され、該粒子の内容物は細胞内液と混合する。
【0281】
本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、単独で投与することも、投与経路及び標準的な薬務に応じて選択される医薬的に許容される担体(例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝液)との混合物で投与することもできる。一般に、通常の緩衝食塩水(例えば、135~150mMのNaCl)が医薬的に許容される担体として使用される。他の適切な担体としては、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等が挙げられ、安定性の向上のため、アルブミン、リポタンパク質、グロブリン等の糖タンパク質を含む。さらなる適切な担体は、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.(1985)に記載されている。本明細書で使用される「担体」には、あらゆるすべての溶媒、分散媒、媒体、コーティング、希釈剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイド等が含まれる。「医薬的に許容される」という表現は、ヒトに投与された場合にアレルギーまたは同様の有害反応を引き起こさない分子実体及び組成物を指す。
【0282】
医薬的に許容される担体は、通常、脂質粒子の形成後に添加される。従って、脂質粒子(例えば、SNALP)が形成された後、該粒子は、通常の緩衝食塩水等の医薬的に許容される担体に希釈され得る。
【0283】
製剤処方中の粒子の濃度は、選択される特定の投与方法に応じて、広く、すなわち、約0.05重量%未満から、通常は約2~5重量%で、または少なくとも約2~5重量%で、約10~90重量%まで変動する場合があり、主に液量、粘度等で選択される。例えば、該濃度を高め、治療に伴う液体負荷を低下させてもよい。これは、特に、アテローム性動脈硬化に伴う鬱血性心不全または重症高血圧を有する患者で望まれる場合がある。代替的に、刺激性の脂質からなる粒子を希釈して低濃度にし、投与部位の炎症を軽減する場合もある。
【0284】
本発明の医薬組成物は、従来周知の滅菌技術で滅菌され得る。水溶液は、使用するために包装しても、無菌条件下で濾過して凍結乾燥してもよく、凍結乾燥された製剤は、投与の前に滅菌水溶液と混合される。該組成物は、生理的条件に近づけるために必要な医薬的に許容される補助物質、例えば、pH調整及び緩衝剤、等張化調整剤等、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化カルシウムを含むことができる。さらに、該粒子の懸濁液は、貯蔵中のフリーラジカル及び脂質の過酸化傷害に対して脂質を保護する脂質保護剤を含んでもよい。脂溶性のフリーラジカルクエンチャー、例えば、アルファトコフェロール、及び水溶性の鉄特異的キレート剤、例えば、フェリオキサミンが適切である。
【0285】
いくつかの実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、1つ以上のmRNAの治療的送達のための方法に特に有用である。
【0286】
インビボ投与
インビボ治療のための全身送達、例えば、循環等の体のシステムを介した遠位標的細胞への治療用核酸の送達は、PCT公開第WO05/007196号、第WO05/121348号、第WO05/120152号、及び第WO04/002453号に記載されているもの等の核酸-脂質粒子を用いて達成されている。これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本発明はまた、完全に封入された脂質粒子を提供し、これらは、核酸を血清中のヌクレアーゼ分解から保護し、非免疫原性であり、サイズが小さく、反復投与に適している。
【0287】
インビボ投与に関しては、投与は当技術分野で既知の任意の方法で、例えば、注入、経口投与、吸入(例えば、鼻腔内もしくは気管内)、経皮投与、または直腸投与によることができる。投与は、単回投与または分割投与を介して達成され得る。該医薬組成物は、非経口的に、すなわち、関節内に、静脈内に、腹腔内に、皮下に、または筋肉内に投与することができる。いくつかの実施形態では、該医薬組成物は、静脈内にまたは腹腔内に、ボーラス注入によって投与される(例えば、米国特許第5,286,634号参照)。細胞内核酸送達はまた、Straubringer et al.,Methods Enzymol.,101:512(1983)、Mannino et al.,Biotechniques,6:682(1988)、Nicolau et al.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.,6:239(1989)、及びBehr,Acc.Chem.Res.,26:274(1993)にも論じられている。脂質系の治療薬のさらに他の投与方法は、例えば、米国特許第3,993,754号、第4,145,410号、第4,235,871号、第4,224,179号、第4,522,803号、及び第4,588,578号に記載されている。これら脂質粒子は、疾患部位での直接注入によって投与することも、疾患部位から遠位部位での注入によって投与することもできる(例えば、Culver,HUMAN GENE THERAPY,MaryAnn Liebert,Inc.,Publishers,New York.pp.70-71(1994)参照)。上記参考文献の開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0288】
本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)が静脈内に投与される実施形態では、注入された粒子の全用量の少なくとも約5%、10%、15%、20%、または25%が注入後約8、12、24、36、または48時間血漿中に存在する。他の実施形態では、注入された脂質粒子の全用量の約20%超、30%超、40%超、及び約60%、70%、または80%が、注入後約8、12、24、36、または48時間血漿中に存在する。場合によっては、複数の粒子の約10%超が、投与後約1時間、哺乳類の血漿中に存在する。ある特定の他の場合では、該脂質粒子の存在は、該粒子の投与後少なくとも約1時間検出可能である。いくつかの実施形態では、mRNA分子等の治療用核酸の存在は、投与後約8、12、24、36、48、60、72、または96時間の時点で、細胞内で検出可能である。他の実施形態では、本発明に従って生体内に導入されたmRNAがコードするポリペプチドの発現は、投与後約8、12、24、36、48、60、72、または96時間の時点で検出可能である。さらなる実施形態では、投与部位の近位もしくは遠位部位での細胞におけるmRNAの存在または効果は、投与後約12、24、48、72、もしくは96時間、または約6、8、10、12、14、16、18、19、20、22、24、26、もしくは28日の時点で検出可能である。さらなる実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、非経口的にまたは腹腔内に投与される。
【0289】
本発明の組成物は、単独でまたは他の適切な成分と組み合わせて、吸入を介して(例えば、鼻腔内にまたは気管内に)投与されるように、エアロゾル製剤にすることができる(すなわち、それらを「霧状にする」ことができる)(Brigham et al.,Am.J.Sci.,298:278(1989)参照)。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の許容される加圧噴射剤に入れることができる。
【0290】
ある特定の実施形態では、該医薬組成物は、鼻内噴霧、吸入、及び/または他のエアロゾル送達媒体によって送達され得る。鼻内エアロゾル噴霧を介して肺に直接核酸組成物を送達する方法は、例えば、米国特許第5,756,353号及び第5,804,212号に記載されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂及びリソホスファチジル-グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号)を用いた薬物送達もまた製薬分野で知られている。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達が米国特許第5,780,045号に記載されている。上記特許の開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0291】
非経口投与、例えば、関節内(関節に)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、及び皮下経路による投与に適切な製剤に含まれるのは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及び当該製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含むことができる水性ならびに非水性の等張滅菌注射液、ならびに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存料を含むことができる水性ならびに非水性の滅菌懸濁液である。本発明の実施において、組成物は好ましくは、例えば、静脈内注入によって、経口的に、局所的に、腹腔内に、膀胱内に、または髄腔内に投与される。
【0292】
一般に、静脈内に投与される場合、該脂質粒子製剤は、適切な医薬担体とともに製剤化される。多くの医薬的に許容される担体が本発明の組成物及び方法に使用され得る。本発明での使用に適切な製剤は、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.(1985)に見出される。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等が用いられる場合があり、アルブミン、リポタンパク質、グロブリン等の糖タンパク質を安定性向上のために含んでもよい。一般に、通常の緩衝食塩水(135~150mMのNaCl)が医薬的に許容される担体として使用されるが、他の適切な担体で十分である。これらの組成物は、濾過等の従来のリポソーム滅菌技術で滅菌することができる。該組成物は、生理的条件に近づけるために必要な医薬的に許容される補助物質、例えば、pH調整及び緩衝剤、等張化調整剤、湿潤剤等、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート等を含むことができる。これらの組成物は、上記の技術を用いて滅菌することができるが、代替的に、それらを無菌条件下で製造してもよい。得られる水溶液は、使用するために包装しても、無菌条件下で濾過して凍結乾燥してもよく、凍結乾燥された製剤は、投与の前に滅菌水溶液と混合される。
【0293】
ある特定の用途では、本明細書に開示する脂質粒子は、経口投与を介して個体に送達され得る。該粒子は、賦形剤と組み合わされ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、丸剤、ロゼンジ剤、エリキシル剤、マウスウォッシュ剤、懸濁液剤、経口噴霧剤、シロップ剤、カシェ剤等の形態で使用され得る(例えば、米国特許第5,641,515号、第5,580,579号、及び第5,792,451号参照。これらの開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。これらの経口剤形はまた、以下のもの、すなわち、結合剤、ゼラチン、賦形剤、滑沢剤、及び/または香味剤を含んでもよい。該単位剤形がカプセル剤の場合、それは、上記の材料に加えて、液体担体を含んでもよい。様々な他の材料がコーティングとして、または該投与単位の物理的形状を変更するために存在してもよい。当然のことながら、あらゆる単位剤形を調製するために使用されるいかなる材料も、医薬的に純粋であるべきであり、使用される量において実質的に非毒性であるべきである。
【0294】
通常、これらの経口製剤は、該脂質粒子を少なくとも約0.1%以上含み得るが、該粒子のパーセンテージは、当然のことながら、変動してもよく、便宜上、製剤全体の重量または体積の約1%もしくは2%~約60%もしくは70%またはそれ以上でよい。必然的に、各々の治療上有用な組成物中の粒子の量は、適切な用量が、当該化合物の任意の所与の単位用量で得られるような方法で調製されうる。溶解性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品の保存期間、及び他の薬理学的留意事項等の要因は、かかる製剤処方を調製する当業者によって企図され、従って、様々な用量及び治療計画が望ましい場合がある。
【0295】
経口投与に適した製剤は、(a)溶液、例えば、水、生理食塩水、またはPEG400等の希釈剤に懸濁された有効量のパッケージされた治療用核酸(例えば、mRNA)、(b)各々が所定量の治療用核酸(例えば、mRNA)を液体、固体、顆粒、またはゼラチンとして含むカプセル剤、サシェ剤、または錠剤、(c)適切な液体の懸濁液、及び(d)適切なエマルションからなることができる。錠剤型は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存料、香味剤、染料、崩壊剤、ならびに医薬的に適合する担体のうちの1つ以上を含むことができる。ロゼンジ型は、香味料、例えばスクロース中に治療用核酸(例えば、mRNA)を含むことができ、同様に、トローチは、該治療用核酸に加えて、当技術分野で既知の担体を含むゼラチン及びグリセリンまたはスクロース及びアカシアゴムエマルション、ゲル等の不活性基剤中に治療用核酸を含む。
【0296】
それらの使用の別の例では、脂質粒子は、様々な局所剤形に組み込むことができる。例えば、SNALP等の核酸-脂質粒子を含む懸濁液を製剤化し、ゲル、油、エマルション、局所クリーム、ペースト、軟膏、ローション、フォーム、ムース等として投与することができる。
【0297】
本発明の脂質粒子の医薬品を調製する場合、空の粒子もしくは核酸等の治療薬が外表面に会合した粒子を減少させるためまたは除去するために精製された量の粒子を使用することが好ましい。
【0298】
本発明の方法は、様々な宿主で実施することができる。好ましい宿主としては、哺乳類種、例えば、霊長類(例えばヒト及びチンパンジーならびに他の非ヒト霊長類)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類(例えば、ラット及びマウス)、ウサギ目、及びブタが挙げられる。
【0299】
粒子の投与量は、治療用核酸(例えば、mRNA)の脂質に対する比、使用される特定の治療用核酸、治療される疾患または障害、患者の年齢、体重、及び状態、ならびに臨床医の判断に依存するが、一般的には、投与(例えば注入)につき、体重1キログラム当たり約0.01~約50mg、好ましくは、体重の約0.1~約5mg/kg、または約10~1010粒子である。
【0300】
インビトロ投与
インビトロ適用に関しては、治療用核酸(例えば、mRNA)の送達は、植物もしくは動物起源、脊椎動物もしくは無脊椎動物、及び任意の組織または型のものにかかわらず、培養された任意の細胞に対してすることができる。好ましい実施形態では、該細胞は、動物細胞、より好ましくは、哺乳類細胞、最も好ましくは、ヒト細胞である。
【0301】
該細胞と脂質粒子の間の接触は、インビトロで行われる場合、生物学的に適合する媒体中で行われる。粒子の濃度は、具体的な用途に応じて大きく異なるが、一般には約1μmol~約10mmolである。該細胞の該脂質粒子による処理は、一般に、生理的温度(約37℃)にて、約1~48時間、好ましくは約2~4時間の期間行われる。
【0302】
1つの好ましい実施形態の群では、脂質粒子懸濁液は、細胞密度約10~約10細胞/ml、より好ましくは、約2×10細胞/mlを有する60~80%コンフルエントの播種細胞に添加される。該細胞に添加される懸濁液の濃度は、好ましくは、約0.01~0.2μg/ml、より好ましくは、約0.1μg/mlである。
【0303】
細胞の組織培養が必要とされ得る程度は、当業者には周知である。例えば、Freshney,Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,3rd Ed.,Wiley-Liss,New York (1994)、Kuchler et al.,Biochemical Methods in Cell Culture and Virology,Dowden,Hutchinson and Ross,Inc.(1977)、及びそこに引用されている参考文献が、細胞培養の一般的な手引きを提供している。培養細胞系は多くの場合細胞の単分子層の形態であるが、細胞の懸濁液もまた使用される。
【0304】
エンドソーム放出パラメータ(ERP)アッセイを用いて、SNALPまたは本発明の他の脂質粒子の送達効率を最適化することができる。ERPアッセイは、米国特許公開第20030077829号に詳細に記載されており、その開示は、すべての目的のため、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。より具体的には、ERPアッセイの目的は、SNALPもしくは他の脂質粒子の様々なカチオン性脂質及びヘルパー脂質成分が、それらの相対的効果に基づいて、エンドソーム膜の結合/取り込みまたは融合/不安定化に及ぼす影響を見分けることである。本アッセイは、SNALPまたは他の脂質粒子の各成分がどのように送達効率に作用するかを定量的に測定することを可能にし、それにより、SNALPまたは他の脂質粒子を最適化する。通常、ERPアッセイは、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)等)の発現を測定し、いくつかの例では、発現プラスミドに最適化されたSNALP製剤もまたmRNAの封入に適切である。様々なSNALPまたは他の脂質粒子の各々に対するERPを比較することで、最適化された系、例えば、細胞内における取り込みが最も大きいSNALPまたは他の脂質粒子を容易に決定することができる。
【0305】
脂質粒子送達用細胞
本発明は、哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、及びモルモット)、ウサギ目、ブタ、ならびに霊長類(例えば、サル、チンパンジー、及びヒト)を含めた任意の脊椎動物種由来の多種多様な細胞型で実施することができる。
【0306】
脂質粒子の検出
いくつかの実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、対象において、約1、2、3、4、5、6、7、8時間、またはそれ以上の時点で検出可能である。他の実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、SNALP)は、対象において、該粒子の投与後約8、12、24、48、60、72、もしくは96時間、または約6、8、10、12、14、16、18、19、22、24、25、もしくは28日の時点で検出可能である。該粒子の存在は、対象由来の細胞、組織、または他の生体試料で検出することができる。該粒子は、例えば、該粒子の直接の検出、及び/または当該脂質粒子内に封入されたmRNA配列の検出、及び/またはmRNAから発現されるポリペプチドの検出によって検出されうる。
【0307】
粒子の検出
本発明のSNALP等の脂質粒子は、当技術分野で既知の任意の方法を用いて検出することができる。例えば、標識を直接または間接的に該脂質粒子の成分に対して、当技術分野で周知の方法を用いて結合させることができる。多種多様な標識を用いることができ、標識の選択は、必要とされる感度、当該脂質粒子成分との結合の容易さ、安定性の必要条件、ならびに利用可能な機器及び廃棄規定に依存する。適切な標識としては、スペクトル標識、例えば、蛍光染料(例えば、フルオレセイン及び誘導体、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びOregon Green(商標)、ローダミン及び誘導体、例えば、テキサスレッド、テトラロジミンイソチオシアネート)TRITC)等、ジゴキシゲニン、ビオチン、フィコエリトリン、AMCA、CyDyes(商標)等、放射性標識、例えば、H、125I、35S、14C、32P、33P等、酵素、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等、分光測色標識、例えば、コロイド金または着色ガラスもしくはプラスチックビーズ、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等が挙げられるがこれらに限定されない。該標識は、当技術分野で既知の任意の方法を用いて検出することができる。
【0308】
核酸の検出
核酸(例えば、mRNA)は、本明細書では、当業者に周知の多くの方法のいずれかで検出及び定量される。核酸の検出は、サザン解析、ノーザン解析、ゲル電気泳動、PCR、放射性標識、シンチレーション測定、及びアフィニティークロマトグラフィー等の周知の方法で進行し得る。さらなる生化学的解析法、例えば、分光測光法、X線撮影、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、及び超拡散クロマトグラフィーもまた使用され得る。
【0309】
核酸ハイブリダイゼーション形式の選択は重要ではない。様々な核酸ハイブリダイゼーション形式が当業者に知られている。例えば、一般的な形式には、サンドイッチアッセイ及び競合または置換アッセイが含まれる。ハイブリダイゼーション技術は、一般に、例えば、“Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,”Eds.Hames and Higgins,IRL Press(1985)に記載されている。
【0310】
ハイブリダイゼーションアッセイの感度は、検出される標的核酸を増加させる核酸増幅システムの使用によって高められる場合がある。分子プローブとして使用するために配列を増幅させるのに適した、または後続のサブクローニングのために核酸フラグメントを生成するのに適したインビトロ増幅技術が知られている。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅、及び他のRNAポリメラーゼによる技術(例えば、NASBA(商標))を含めたかかるインビトロ増幅法で当業者を指揮するのに十分な技術の例は、Sambrook et al.,In Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2000)、及びAusubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,eds., Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.(2002)、ならびに米国特許第4,683,202号、PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications(Innis et al.eds.)Academic Press Inc.San Diego,CA(1990)、Arnheim & Levinson(October 1,1990),C&EN 36、The Journal Of NIH Research,3:81(1991)、Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:1173(1989)、Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:1874(1990)、Lomell et al.,J.Clin.Chem.,35:1826(1989)、Landegren et al.,Science,241:1077(1988)、Van Brunt,Biotechnology,8:291(1990)、Wu and Wallace,Gene,4:560(1989)、Barringer et al.,Gene,89:117(1990)、ならびにSooknanan and Malek,Biotechnology,13:563(1995)に見出される。インビトロ増幅核酸のクローニング法の改良は、米国特許第5,426,039号に記載されている。当技術分野で記載される他の方法は、核酸配列に基づく増幅(NASBA(商標)、Cangene,Mississauga,Ontario)及びQβ-レプリカーゼシステムである。これらのシステムは、PCRまたはLCRプライマーが、選択された配列が存在する場合のみ伸長または結合されるように設計された変異体を直接特定するために使用することができる。代替的に、選択された配列は、一般に、例えば、非特異的PCRプライマーを用いて増幅することができ、増幅された標的領域は、後に、変異を示す特定の配列についてプローブされる。上記の参考文献の開示は、すべての目的のため、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0311】
プローブとして、例えば、インビトロ増幅法における使用のため、遺伝子プローブとしての使用のため、または阻害剤成分としての核酸は、通常、Beaucage et al.,Tetrahedron Letts.,22:1859 1862(1981)に記載の固相ホスホルアミダイトトリエステル法に従い、例えば、Needham VanDevanter et al.,Nucleic Acids Res.,12:6159(1984)に記載の通り、自動合成装置を用いて化学的に合成される。必要に応じて、ポリヌクレオチドの精製は、通常、ネイティブアクリルアミドゲル電気泳動またはPearson et al.,J.Chrom.,255:137 149(1983)に記載の通りアニオン交換HPLCのいずれかによって行われる。合成ポリヌクレオチドの配列は、Maxam and Gilbert(1980)in Grossman and Moldave(eds.)Academic Press,New York,Methods in Enzymology,65:499の化学分解法を用いて確認することができる。
【0312】
転写のレベルを測定するための代替手段は、インサイチュハイブリダイゼーションである。インサイチュハイブリダイゼーションアッセイは、周知であり、概してAngerer et al.,Methods Enzymol.,152:649(1987)に記載されている。インサイチュハイブリダイゼーションアッセイでは、細胞は固体支持体、通常はスライドガラスに固定される。DNAがプローブされる場合、細胞は熱またはアルカリで変性される。細胞はその後、標識される特定のプローブのアニーリングを可能にする適温のハイブリダイゼーション溶液と接触される。プローブは、好ましくは、放射性同位体または蛍光レポーターで標識される。
【実施例0313】
本発明を具体的な実施例によってさらに詳細に説明する。以下の実施例は、例示を目的として提供するものであり、いかなる方法によっても本発明を限定することを意図しない。当業者には、本質的に同じ結果を得るために変更または修正することができる様々な重要でないパラメータが容易に認識されよう。当業者にはまた、「表1」が複数の実施例に含まれ得ると同時に、実施例1の「表1」への言及は、実施例1に含まれる表1を指すことが理解されよう。
【0314】
実施例1~13 脂質ナノ粒子中の核酸ペイロードとステロイドの共送達
コルチコステロイドは、脊椎動物の副腎皮質で産生されるステロイドホルモン及びこれらホルモンの合成類似体の種類である。コルチコステロイドは、ストレス反応、免疫反応、及び炎症の調節、炭水化物代謝、タンパク質異化作用、血中電解質レベル、ならびに行動を含めた広範な生理的過程に関与している。
【0315】
コルチコステロイドには2種類ある。コルチゾール等のグルココルチコイドは、炭水化物、脂肪、及びタンパク質の代謝を制御し、リン脂質の放出を防ぎ、好酸球の作用及びいくつかの他の機序を低下させることによって抗炎症性である。アルドステロン等の鉱質コルチコイドは、主に腎臓でのナトリウム貯留を促進することにより、電解質及び水分のレベルを制御する。
【0316】
「グルココルチコイド」という用語は、炭水化物、タンパク質、及び脂肪の代謝を制御し、抗炎症性及び/または免疫抑制作用を有する天然または合成ステロイドホルモンの群のいずれかを指す。本発明のある特定の実施形態での使用に適したグルココルチコイドとしては、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、コルチコステロン、デオキシコルチコステロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、アルドステロン、フルチカゾン、クロベタゾン、クロベタゾール、及びロテプレドノール、ならびにそれらの医薬的に許容される塩、ならびにそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0317】
ステロイドは、多くの点で治療を助けることができることから、様々な疾患の治療にしばしば使用される。がんの治療では、例えば、ステロイドは、化学療法及び放射線に伴う吐気を低下させ、炎症を低減し、アレルギー反応を低下させ(例えば、輸液前)、または、単に患者が眠れ、食べられ、及び気分がよくなることを可能にすることによって生活の質の向上を助けることができる。
【0318】
脂質ナノ粒子の使用は、証明された送達プラットフォームである一方、いくつかの安全性及び耐容性の問題を克服することによって、LNPの治療的有用性及び患者の利便性をさらに広げることが必要とされる。クリニックでは、及び前投薬がない場合、ほとんどのLNP治療関連の副作用は、容量制限毒性を表し得るある特定の炎症性バイオマーカーの増加に関連する注入型の反応と一致する(例えば、Judge et al.,Review:Overcoming the Innate Immune Response to Small Interfering RNA,Human Gene Therapy,19,2008参照)。
【0319】
グルココルチコイドのLNPへの同時製剤化の効果を調べ、静脈内投与後に炎症反応が抑えられるかどうか、及び該プラットフォームの治療指数が拡大するかどうかが検討されている。マウスモデルで生成された前臨床データでは、ステロイドとLNPの同時製剤化は、同じレベルの遺伝子サイレンシング能力を維持しつつ、免疫刺激の低下を達成するための実行可能な方策であることを示している。さらに、NHP及びブタモデルでの初期の前臨床データは、マウスのデータとよく相関し、この新規な方策にさらなる確信を与えた。
【0320】
一般的手順
脂質ナノ粒子製剤化
脂質ナノ粒子は、Jeffら(米国特許第9,005,654号参照)によって記載された直接希釈またはインライン希釈法のいずれかによって作製した。脂質組成物は、典型的には、特記しない限り、以下の脂質をそれぞれのモル比で含有した。PEG-脂質(PEG2000-C-DMA、1.1mol%)、カチオン性脂質(化合物13、54.9mol%)、コレステロール(33.0mol%)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC、11.0mol%)。核酸は、pH4.5の20mMのEDTAに可溶化した。これらの溶液をT字型コネクタにて流量400mL/分で混合し、pH7.4のPBSで希釈した(インラインまたは直接)。エタノールをその後除去し、Midgeeフープカートリッジ(MWカットオフ500K、GE Healthcare)を用いて接線流限外濾過により、キャリア緩衝液をpH7.4のPBSで置換した。これらのLNPを滅菌濾過し(0.2μmシリンジフィルター)、試料濃度をDENAX-HPLCまたはRiboGreenアッセイのいずれかによって測定した。粒径及び多分散性は、Malvern Nano Series Zetasizerを用いて測定した。脂質及びステロイドの最終濃度は、UPLCで測定した。
【0321】
動物モデル
LPS感作サイトカインマウスモデル
雌のICRマウス(1群当たりn=5、5~6週齢)を、時点=0で0.05mg/kgのリポ多糖(LPS)で前処理し、免疫系を感作する。t=2時間で、これらマウスは、静脈内投与にてLNPを1mg/kgの用量で受ける。LNP処理の4時間後、血液試料をナトリウムEDTAマイクロティナチューブに採取し(末端採血)、16000×gで5分間、16℃での遠心分離により血漿に加工する。血漿試料をインターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、及び単球走化性タンパク質1(MCP-1)サイトカインレベルについてELISAにより分析する。
【0322】
急性サイトカインマウスモデル
雌のICRマウス(1群当たりn=5、5~6週齢)を、10mg/kgのLNPで静脈内投与により処理する。処理後2時間で血液を50mMのEDTAを含むチューブに尾の切れ目を介して採取し、16000×gで5分間、16℃での遠心分離により血漿に加工する。処理後6時間で、末端血液試料をナトリウムEDTAマイクロティナチューブに採取し、上記と同じ手順を用いて血漿まで加工する。血漿試料をELISAによりインターロイキン-6(IL-6)及び単球走化性タンパク質1(MCP-1)サイトカインレベルについて分析する。
【0323】
活性マウスモデル
アポリポタンパク質B(アポB)を標的とするsiRNAとともに製剤化されたLNPをIV投与し、雌のBalb/Cマウス(1群当たりn=3、5~6週齢)における用量反応曲線(典型的な用量:0.01mg/kg~0.05mg/kg全siRNA)を作成した。終了時点は、LNPの静脈内投与後48時間である。肝臓の左葉をRNAlaterに採取し、QuantiGene2.0分析によりアポBレベルをアッセイする。結果は、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化する。
【0324】
実施例1:LPS感作サイトカインマウスモデルにおけるデキサメタゾン21-パルミテートを含むLNP
デキサメタゾン21-パルミテート(Dex-P)は、事実上デキサメタゾンのプロドラッグであり、ステロイド(デキサメタゾン)を放出するための酵素作用を必要とする。これは、遊離型のステロイドと比較してあまり好都合ではない(インビボでその活性型への変換を必要とするため)が、デキサメタゾン21-パルミテートは、遊離のデキサメタゾンよりlogPが高く、より多くのLNPへの組み込みを容易にする。
【0325】
一般的手順に記載のベース組成物を用い、Dex-P含量を徐々に増加させた一連の用量漸増組成物を調製した(0.5mol%、2mol%、または5mol%Dex-P)。Dex-Pは、90%エタノール脂質原液中の追加の脂質成分として単に含めた。粒子特性は、ベース組成物と本質的に同一であった(表1)。
【表1】
【0326】
上記製剤を、一般的手順に記載のLPS感作マウスサイトカインモデルにて試験した。追加の対照として、ベース製剤を遊離のデキサメタゾンとともに投与した。この遊離のステロイドは、0.3mg/kgの用量(臨床的に意義のある用量)で静脈投与した。
【0327】
リポ多糖(LPS)で0.05mg/kgにて前処理したICRマウスは、PBSで前処理した動物と比較してサイトカイン反応を誘導した。LNPの静脈内投与後、3種のサイトカインすべてがさらに増加した。代表的なサイトカインのデータ(MCP-1)を表2に示す。サイトカインのレベルは、ステロイドの非存在下でのベース製剤で処理した群で最も高かった。Dex-PとLNPの共製剤化でサイトカインレベルは著しく低下した。さらに、これらのサイトカインレベルは、LNPに共製剤化された場合、低(0.5mol%)及び高(5mol%)ステロイド用量間で類似しており、潜在的に飽和効果を示した。LNPへの5mol%のDex-Pの組み込みとの単回静脈内注入における投与された遊離のデキサメタゾンの同等の用量は、0.3mg/kgであった。この用量でのDex-P LNPで達成されるサイトカインレベルは、対照のLNPと0.3mg/kgの遊離のデキサメタゾンの2つの別々の連続注入での共投与と同様であった。
【表2】
【0328】
実施例2:急性サイトカインマウスモデルにおけるデキサメタゾン21-パルミテートを含むLNP
コルチコステロイドの共製剤化の概念を、急性サイトカインモデルからのデータでさらに裏付けた。同じ製剤パネルを試験したところ(このモデルでは10mg/kgで投与した)、データは、この場合もやはり、共製剤化されたDex-P LNPは、免疫刺激を低下させる有効な手段であることを示し、LNPと遊離のデキサメタゾンを共投与した場合と、同じかまたはより低い用量で同様のサイトカインレベルを達成した(表3)。
【表3】
【0329】
実施例3:LPS感作モデルにおける減少されたデキサメタゾン21-パルミテートを含むLNP
Dex-Pの濃度をさらに減らした(0.5mol%、0.1mol%、及び0.01mol%まで)。UPLCによる製剤化後の分析で、Dex-Pが容易に粒子に取り込まれたことが示された。粒子の特性は、LNP製剤間で同等であった(表4)。
【表4】
【0330】
代表的なサイトカインの値(MCP-1)についての結果を表5に示す。Dex-P濃度とサイトカインレベルの間に相関関係が認められた(Dex-Pが多いほどサイトカインが低下する)。0.5%のDex-P LNPは、およそ0.03mg/kg用量の遊離デキサメタゾンに相当する。これらの2つの群を比較するデータによって、サイトカインの低下は、コルチコステロイドがLNPに組み込まれた場合に著しく大きいことを示した。実際、このLNP(0.5%Dex-P)は、実質的には0.3mg/kg用量の遊離デキサメタゾン、すなわち、10倍量のコルチコステロイドの用量と同様に機能した。この驚くべき結果は、さらにいっそう効果的なコルチコステロイドの「標的送達」に起因し得ると仮定された。LNPを取り込む、及びそうでなければ免疫反応を引き起こした可能性がある免疫細胞は、同時に免疫抑制性のコルチコステロイドを受けている。
【表5】
【0331】
実施例4:Dex-Pと共製剤化されたLNPの活性
Dex-PのLNPへの組み込みが効力に影響を及ぼさないことを確認するため、製剤を一般的手順に記載の活性マウスモデルで評価した。様々な量のDex-Pを含む試料を2つの用量、すなわち、0.025mg/kg及び0.05mg/kgで試験した。同様のサイレンシング活性がすべての製剤に関して各用量で認められた。0.5%のDex-Pを含むベース製剤及び非標的対照siRNA(siLuc-2)を陰性対照として含めた。このペイロードでは、サイレンシングは予想も観察もされない。結果を表6に示す。
【表6】
【0332】
実施例5:LPS感作マウスモデルにおけるクロベタゾールを含むLNP
次に、コルチコステロイドであるクロベタゾール-17-プロピオネート(クロベタゾール)をLNPに共製剤化することを試み、再度、粒子に対する炎症反応を抑制するその能力を検討した。pH4.5の40mM酢酸緩衝液を用いて核酸を可溶化した。脂質の最終組成を表7に示す。logPが低い(約3.5)クロベタゾールは、Dex-P(logP約9)ほど容易にLNPに組み込まれなかった。従って、最終製品に実際に望まれるより8倍高い濃度のクロベタゾールをこの過程に投入した。UPLCによる分析で、クロベタゾールの組み込みが確認された。
【表7】
【0333】
表8に要約するように、製剤特性はこれら2つの組成間で同等であった。粒径、多分散性、及びペイロードの封入は、均一な粒子集団を示した。
【表8】
【0334】
これら2つの組成物をLPS感作マウスモデルで評価した。代表的なサイトカインの値(MCP-1)を表9に示す。このLNPに対する炎症反応は、クロベタゾールLNPで著しく低下する。これらのMCP-1レベルは、Dex-Pを含むLNPと同様であるが、クロベタゾールはプロドラッグではなく、活性化について酵素作用に依存しない。このことは、LNPをその標的作用部位に送達後、このコルチコステロイドが自発的に作用するため、Dex-Pより著しく有益である。
【表9】
【0335】
実施例6:急性サイトカインマウスモデルにおけるクロベタゾールを含むLNP
同じLNP組成物(ベース及びベース+クロベタゾール)を急性サイトカインモデルで試験した。MCP-1及びIL-6サイトカインレベルを2時間及び6時間の両時点で測定した。どちらのサイトカインも、共製剤化されたクロベタゾールLNPに関して著しく低いレベルを記録した。後者の製剤は、両時点でIL-6のベースラインレベルを記録したのみであった(表10)。
【表10】
【0336】
拡大した急性サイトカイン試験をより多くの時点で行い、クロベタゾールLNPでの最大のサイトカイン反応がより早いまたは遅い時点に単純に移動しないことを確実なものとした。最大のサイトカイン反応は、このモデルでは通常LNP処理後2時間で観察される。結果は、このステロイドが、この試験の時間経過を通して免疫反応を抑制するのに有効であることを確認した(表11)。
【表11】
【0337】
実施例7:マウスの用量反応試験におけるクロベタゾールを含むLNPの活性
クロベタゾールのLNPへの組み込み及びこの方法のわずかな修正が効力に影響を及ぼさないことを確認するため、製剤を一般的手順に記載の活性モデルで評価した。同様のサイレンシング活性が両製剤に関して各用量で認められた(表12)。これは、クロベタゾールLNPが劇的に改善された治療指数を有することを強調している。すなわち、それらは同等の効力と、はるかに優れた耐容性を有する。
【表12】
【0338】
実施例8:シクレソニドを含むLNPによる免疫抑制
次に、コルチコステロイドであるシクレソニドを試験した。脂質の最終組成を表13に示す。UPLCによる分析で、シクレソニドの取り込みが確認された。シクレソニドはlogPが約5.3であり、容易に粒子に組み込まれる。
【表13】
【0339】
表14に要約するように、製剤特性はこれら2つの組成間で同等であった。粒径、多分散性、及びペイロードの封入は、均一な粒子集団を示した。
【表14】
【0340】
このシクレソニドLNPをLPS感作マウスモデルで試験し、ベース製剤及びDex-P LNPと比較した。このシクレソニドLNPもまた、ベース製剤と比較して、著しく低下した炎症性サイトカイン反応を示した。代表的なサイトカイン(MCP-1)のデータを表15に示す。
【表15】
【0341】
実施例9:シクレソニドを含むLNPの活性
シクレソニドLNPを一般的手順に記載の活性モデルでも評価した。Dex-P LNPと同様、シクレソニドLNPは、ベース製剤と同様の効力を示した(表16)。
【表16】
【0342】
実施例10:クロベタゾールを含むLNPは非ヒト霊長類において免疫刺激を低下させた
静脈内薬理学的研究をカニクイザルで実施し、クロベタゾールLNP製剤を評価し、対照の製剤(先に用いた「ベース製剤」)と比較した。実施例5と同様、8倍高い濃度のクロベタゾールをこの過程に投入し、所望の1mol%を最終組成で得た(表17)。pH4.5の40mM酢酸緩衝液を用いて核酸を可溶化した。
【表17】
【0343】
LNP製剤を4匹のカニクイザル(カンボジア起源、雄2匹、雌2匹、2~5歳齢)の群に対して、2.0mg/kg全siRNAの用量にて、60分間の静脈内注入を介して投与した。投与前ならびに注入後2、6、及び24時間での採血を炎症マーカーのパネルについて試験した。クロベタゾールLNPは、いくつかの炎症マーカーの著しい低下を示し、この方策の有効性がさらに確認された。表18は、MCP-1、IL-6、及びIL-1ra(インターロイキン-1受容体アンタゴニスト)のレベルを注入後6時間の2組成物間で比較している。
【表18】
【0344】
実施例11:麻酔雌ゲッティンゲンミニブタにおけるLNP製剤の単回注入の心臓血管系作用の試験
LNP製剤の1時間の単回注入が血行動態パラメータ及び炎症性バイオマーカーに及ぼす被験物質関連の影響を麻酔雌ゲッティンゲンミニブタで評価した。LNPを表19の組成で製剤化した。実施例5と同様、8倍高い濃度のクロベタゾールをこの過程に投入し、所望の1mol%を最終組成で得た。pH4.5の40mM酢酸緩衝液を用いて核酸を可溶化した。
【表19】
【0345】
3匹のナイーブミニブタに外科手術で機器を取り付け、ベースラインデータを集め、その後、媒体(生理食塩水)、ベースLNP、またはクロベタゾールLNPを60分間の静脈内注入により単回投与した。LNP製剤は、0.3mg/kg全核酸の用量にて投与した。最初の注入の直前、ならびに注入開始後約5、60、90、120、180、及び240分で血液試料を取り、血漿と血清に加工し、サイトカイン及びトロンボキサン(11-デヒドロトロンボキサンB2)について分析した。血行動態データを、この実験を通して合計4時間連続して集めた。注入後4時間で、ブタを麻酔下でバルビツール酸過剰投与により安楽死させた。
【0346】
ベース製剤での処理は、ベース製剤による相当な測定可能なトロンボキサン(表20)及びサイトカイン(表21)の増加をもたらした。さらに、肺動脈圧の増加等の血行動態変化が認められた(表22)。これらのパラメータはすべて、ベースLNPに対する炎症反応を示しており、これは、LNP製剤にクロベタゾールを組み込むことによって抑制される。これは、動物が共製剤化ステロイドLNPで処理された場合のホスホリパーゼA2のグルココルチコイドによる阻害及び炎症性サイトカイン転写の転写抑制である可能性がある。
【表20】
【表21】
【表22】
【0347】
実施例12 共製剤化されたクロベタゾールは、mRNAペイロードを有するLNPに対する免疫反応を低下させるのに有効である
ステロイドのLNPとの共製剤化の概念を、mRNAペイロードを担持させてさらに試験した。この実施例は、mRNA-LNPの免疫刺激の低下がコルチコステロイドであるクロベタゾールの組み込みによってどのように達成され得るかを示す。
【0348】
LNP(PL含有及びPLを含まない)をJeffらによって記載された直接希釈法によって調製した。簡潔には、脂質原液を100%エタノール中、全脂質濃度6~7mg/mLで調製した。レポーター遺伝子であるルシフェラーゼをコードするmRNA転写物(TriLink BioTechnologies)をpH4.5の40mMのEDTAに0.366mg/mLで可溶化した。これら溶液の等量をT字型コネクタにて流量250mL/分で混合し、直ちにpH7.4のPBS(脂質原液の4倍量)に希釈した。エタノールをその後除去し、100容量のPBSに対して一夜透析して、キャリア緩衝液をPBSと透析(Slide-A-Lyzerユニット、MWCO 10k)により交換した。透析後、これらの製剤を、VivaSpin濃縮装置(MWCO 100,000)を用いて約0.3mg/mLに濃縮した。siRNAとの製剤と同様に、低logPのクロベタゾールは、約15%しかLNP粒子に組み込まれないため、最終組成の望ましい量の約8倍で投入することが必要であった。残りは透析の間に失われる。これらのLNP試料は、滅菌濾過し(0.2μmシリンジフィルター)、試料濃度をRiboGreenアッセイによって測定した。粒径及び多分散性は、Malvern Nano Series Zetasizerを用いて測定した。最終組成におけるクロベタゾール及び他の脂質の量は、UPLCで測定したとともに、表23に示す。
【表23】
【0349】
注入の前に製剤を0.05mg/mLに希釈した。Balb/Cマウス(n=5)に、外側尾部を介した静脈内経路を介して0.5mg/kg(mRNA)を注入した。注入の4時間後、動物を致死量のケタミン/キシラジンで安楽死させた。末端血液の少量(20μL)を5μLの50mg/Lヘパリンを含むチューブに採取し、残りの血液はナトリウムEDTAのマイクロティナチューブに採取した。これらのチューブはすべて16000×g及び16℃で5分間遠心分離し、血漿を単離した。肝臓の左側葉のごく一部(約200mg)を採取し、RNALater中、4℃で一夜保存した。
【0350】
ヘパリン血漿(ELISA希釈剤で1:4000に希釈)を標準マウスEPO ELISA分析(R&D Systemsのキット)に用いた。表24に示すように、mRNA-LNP内へのクロベタゾールの組み込みで効力がわずかに低下した可能性があるが、恐らくは実験上のばらつきの境界内である。これらマウスの血漿内に見られるEPOの通常のレベルは0.1~0.2ng/mLである。従って、mRNA-LNP内へのクロベタゾールの組み込みは、この製剤の有効性に実際には影響を及ぼさない。
【表24】
【0351】
免疫刺激への影響を評価するため、EDTA血漿試料を希釈し(1:8)、ELISAによりサイトカイン(MCP-1及びIL-6)について分析した(ELISAアッセイならびにキャプチャー及び検出抗体はBD Biosciences製)。表25は、クロベタゾールが製剤に組み込まれた場合にサイトカイン産生が著しく低下することを示している。
【表25】
【0352】
これら2製剤に対する肝臓のIFIT(テトラトリコペプチドリピートを有するインターフェロン誘導タンパク質)の反応もまた測定した。IFITバイオマーカーは、このペイロードに対するI型インターフェロン反応を示す。肝臓試料(20~25mg)をホモジナイズし、QuantiGene2.0アッセイ(Affymetrix)を用いて肝臓のIFITレベルを評価した(ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化した)。結果は、PBS対照群に対する倍数増加としてプロットされており、クロベタゾールの共製剤化が、mRNAペイロードに対するIFIT反応の抑制にも効果的であることを示している(表26)。
【表26】
【0353】
総合すれば、これらの結果は、LNP粒子へのクロベタゾールの組み込みが、mRNA-LNPに対する免疫刺激を著しく無効にし、治療指数の向上が認められることを示している。
【0354】
実施例13 共製剤化されたデキサメタゾンパルミテートは、mRNAペイロードを有するLNPに対する免疫反応を低下させるのに有効である
この実施例は、ステロイドのプロドラッグであるデキサメタゾン21-パルミテート(Dex-P)がどのようにmRNAペイロードを有するLNPに対する炎症反応を低下させるためにも使用され得るかを示す。実施例12に記載のDex-Pを含むmRNA-LNPを表27に記載の組成で製剤化した。マウスEPO mRNA転写物(TriLink BioTechnologies)をペイロードに用いた。
【表27】
【0355】
これらの製剤をBalb/Cマウス(n=5)に0.5mg/kg(全mRNA)の用量で静脈内に注入した。注入の6時間後、動物を致死量のケタミン/キシラジンの投与で安楽死させた。末端血液のごく一部(75μL)を5μLの50mg/Lヘパリンを含むチューブに採取し、残りの血液はナトリウムEDTAのマイクロティナチューブに採取した。血液試料を16000×g及び16℃で5分間遠心分離し、血漿を単離した。
【0356】
ヘパリン血漿(ELISA希釈剤で1:4000に希釈)をEPOレベルについてELISAで分析した(R&D Systemsのキット)。表28に示すように、mRNA-LNP内へのDex-Pの組み込みで効力が向上した可能性があるが、恐らくは実験上のばらつきの範囲内である。
【表28】
【0357】
EDTA血漿をサイトカインレベル(MCP-1及びIL-6)についてELISA(BD Biosciences)で分析した。表29は、mRNA-LNPへのDex-Pの組み込みで、サイトカインレベルの顕著な低下が得られることを示している。
【表29】
このデータは、デキサメタゾン-パルミテートの組み込みで、mRNA-LNPに対する炎症反応が低減され、mRNA-LNPに対する治療指数の顕著な改善がもたらされることを示している。
【0358】
実施例14~20.LNPにおける低または無リン脂質及び高PEG
リン酸エステル結合は極めて不安定であると考えられるため、リン脂質の存在が、脂質ナノ粒子(LNP)の保存期間を短縮する可能性がある。ほとんどすべてのリン脂質をLNPから除去し、mRNAを含むLNPの保存期間への影響を調べた。これらの実験の間で、製剤の免疫原性が、効力に影響を与えることなく大きく減少されることが分かった。本明細書に記載の通り、本発明のある特定の実施形態は、低または無リン脂質及び通常より多いPEGの組み合わせを有するLNPに関する。興味深いことに、低リン脂質及び高モルパーセントのPEGの組み合わせは、siRNAに対するよりmRNAに対する免疫刺激を効果的に減少させる。
【0359】
ある特定の実施形態では、PEGの量は、少なくとも3モルパーセント(例えば、少なくとも3.1モルパーセント、少なくとも3.2モルパーセント、少なくとも3.3モルパーセント、少なくとも3.4モルパーセント、少なくとも3.5モルパーセント、少なくとも3.6モルパーセント、少なくとも3.7モルパーセント、少なくとも3.8モルパーセント、少なくとも3.9モルパーセント、少なくとも4モルパーセント)である。リン脂質に関しては、ある特定の実施形態では、本発明の実施においてリン脂質を使用しない。ある特定の実施形態では、脂質粒子は、2モルパーセント未満のリン脂質、例えば、1.9mol%のリン脂質、1.8mol%のリン脂質、1.7mol%のリン脂質、1.6mol%のリン脂質、1.5mol%のリン脂質、1.4mol%のリン脂質、1.3mol%のリン脂質、1.2mol%のリン脂質、1.1mol%のリン脂質、1.0mol%のリン脂質、0.9mol%のリン脂質、0.8mol%のリン脂質、0.7mol%のリン脂質、0.6mol%のリン脂質、0.5mol%のリン脂質、0.4mol%のリン脂質、0.3mol%のリン脂質、0.2mol%のリン脂質、0.1mol%のリン脂質、または0.0%のリン脂質、例えば、1.9mol%未満のリン脂質、1.8mol%未満のリン脂質、1.7mol%未満のリン脂質、1.6mol%未満のリン脂質、1.5mol%未満のリン脂質、1.4mol%未満のリン脂質、1.3mol%未満のリン脂質、1.2mol%未満のリン脂質、1.1mol%未満のリン脂質、1.0mol%未満のリン脂質、0.9mol%未満のリン脂質、0.8mol%未満のリン脂質、0.7mol%未満のリン脂質、0.6mol%未満のリン脂質、0.5mol%未満のリン脂質、0.4mol%未満のリン脂質、0.3mol%未満のリン脂質、0.2mol%未満のリン脂質、0.1mol%未満のリン脂質を含む。
【0360】
一般的手順
脂質ナノ粒子の製剤化
LNP製剤は、Jeffらによって記載されたLipoMixer法により、直接希釈またはインライン希釈のいずれかを用いて調製した。脂質組成物は、記載の通り、通常、記載のモル比で3または4つの脂質を含有した。脂質を100%エタノールに全脂質濃度約12mg/mLで可溶化した。核酸は、LNPにリン脂質が存在する場合はpH4.5の20mMのEDTAに可溶化し、リン脂質が存在しない場合はpH4.5の40mMのEDTAに可溶化した。等量のこれら溶液をT字型コネクタ内で流量400mL/分で混合し、直ちにpH7.4のPBS(脂質原液の4倍の体積)で希釈した(インラインまたは直接)。エタノールをその後除去し、透析(Slide-A-Lyzerユニット、MWCO 10k)またはMidgeeフープカートリッジ(MWCO 500k、GE Healthcare)を用いた接線流限外濾過のいずれかにより、キャリア緩衝液をPBSで置換した。これらLNP試料を滅菌濾過し(0.2μmシリンジフィルター)、試料濃度をDENAX-HPLCまたはRiboGreenアッセイのいずれかによって測定した。粒径及び多分散性は、Malvern Nano Series Zetasizerを用いて測定した。最終脂質は、UPLCで測定した。
【0361】
動物モデル
3つの動物モデル、すなわち、2つの免疫刺激モデル及び1つの効力モデルを用いて製剤を評価した。説明は以下の通りである。
【0362】
LPS感作サイトカインマウスモデル
雌のICRマウス(n=5、5~6週齢)を、時点=0で0.05mg/kgのリポ多糖(LPS)で前処理し、免疫系を感作する。t=2時間で、これらマウスは、静脈内投与にてLNPを1mg/kgの用量で受ける。LNP処理の4時間後、血液試料をナトリウムEDTAマイクロティナチューブに採取し(末端採血)、16000×gで5分間、16℃での遠心分離により血漿に加工する。血漿試料をIL-1β、IL-6、及びMCP-1のサイトカインレベルについてELISAにより分析する。
【0363】
急性サイトカインマウスモデル
雌のICRマウス(n=5、5~6週齢)を、10mg/kgのLNPで静脈内投与により処理する。処理後2時間で血液を50mMのEDTAを含むチューブに尾の切れ目を介して採取し、16000×gで5分間、16℃での遠心分離により血漿に加工する。処理後6時間で、末端血液試料をナトリウムEDTAマイクロティナチューブに採取し、上記と同じ手順を用いて血漿まで加工する。血漿試料をELISAによりIL-6及びMCP-1のサイトカインレベルについて分析する。
【0364】
活性マウスモデル
アポリポタンパク質Bを標的とするsiRNAとともに製剤化されたLNPをIV投与し、雌のBalb/Cマウス(n=3、5~6週齢)における用量反応曲線(典型的な用量:LNPに封入された全siRNA0.01mg/kg~0.05mg/kg)を作成した。終了時点は、LNPの静脈内投与後48時間である。肝臓の左葉をRNAlaterに採取し、QuantiGene2.0分析によりアポBレベルをアッセイする。結果は、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化し、PBS対照の%として表す。アポBの値が「PBSの20%」である群は、「PBSの80%」のものより強い遺伝子サイレンシング活性を受けている。
【0365】
実施例14:LNP製剤からリン脂質を除去することで効力を損なうことなく免疫刺激が減少される
アポリポタンパク質B(アポB)を標的とするオリゴヌクレオチドsiRNAペイロードを用いて2種のLNP製剤を作製した。「ベース」組成物、及びリン脂質を省略したもの(「リン脂質を含まない」、すなわち「PLフリー」)。組成の詳細を表30に要約する。
【表30】
【0366】
LPS感作マウスサイトカインモデルでは、結果は、PLフリーのLNPは、リン脂質を含むその親組成物より刺激が少ないことを明らかに示している(表31)。
【表31】
【0367】
炎症反応を減少させることは重要な目的であるが、効力が同時に損なわれないこともまた重要である。従って、同じLNPのパネルをアポBサイレンシング活性モデル(一般的手順に記載)において評価した。遺伝子サイレンシングデータ(表32)により、リン脂質を除去することで効力が損なわれないことは明らかである。
【表32】
【0368】
実施例15:リン脂質を含まないLNPにおけるPEG脂質含量を増加させることで、効力に大きな影響を与えることなくさらにサイトカインレベルの減少がもたらされた
アポBのsiRNAペイロードを用いて以下のLNPを製剤化した。「ベース」組成物から始め、リン脂質を第一に除去し、その後PEG含量を2倍または3倍のいずれかにした(表33)。
【表33】
このLNPのパネルを、急性マウスサイトカインモデルにおいて、2時間及び6時間の時点で評価した。この場合もやはり、リン脂質が組成物から除去された場合にサイトカインの減少が認められた。代表的なサイトカインデータ(MCP-1)を表34に示す。続いて、PEG含量が増加するにつれ、さらにいっそう顕著なサイトカインの減少が認められた。
【表34】
興味深いことに、これら高PEGのPLフリー組成物の効力は、大きく影響を受けることはなかった(表35)。先の実験では、PEG含量がより高い製剤は、多くの場合活性が損なわれることが分かった。例えば、標準的なリン脂質含量で、同様のPEGの一連の用量漸増での3つの関連するLNPを評価し(表36)、代表的な活性データを表37に示す。PEG含量が増加するにつれ、活性の顕著な減衰が認められる。それ故、上記の高PEGのPLフリー系でより強い、相応の効力の損失なくサイトカインの顕著な減少を認めることは意外である。
【表35】
【表36】
【表37】
【0369】
実施例16:炎症反応の低下にも有効なリン脂質含量の減少
免疫刺激を無効にするためにLNP製剤から完全にリン脂質を除去する必要はない可能性があること、及び、この効果は、単にPL含量を減じることによって達成することができるということが仮定された。PL含量を減少させたもの(3mol%または8mol%)と親組成物(11mol%)を用いて組成物のパネルを調製した(表38)。
【表38】
これらの組成物を急性サイトカインモデルにおける免疫刺激について評価した。表39に示すように、リン脂質が減少された組成物は、サイトカイン産生を刺激する傾向が減少した。さらに、リン脂質含量の減少は、効力に大きな影響を与えなかった(表40)。
【表39】
【表40】
【0370】
実施例17 リン脂質を除去することで、効力を損なうことなくmRNAを含むLNPの免疫刺激が減少される
この実施例は、mRNA-LNPの免疫刺激の低下がLNP組成物からリン脂質を除去すること(すなわち、PLフリーのmRNA-LNPの生成)によってどのように達成され得るかを示す。これらmRNA-LNP製剤は、表41に示す脂質組成で作製した。2種の異なるベース製剤(1.1:55及び1.6:55)はリン脂質含量を除去し(「PLフリー」組成物)、コレステロール含量は維持またはわずかに増加のいずれかであった。
【表41】
LNP(PL含有及びPLフリー)をJeffらによって記載された直接希釈法によって調製した。簡潔には、脂質原液を100%エタノール中、全脂質濃度6~7mg/mLで調製した。レポーター遺伝子であるルシフェラーゼをコードするmRNA転写物をpH4.5の40mMのEDTAに0.366mg/mLで可溶化した。これら溶液の等量をT字型コネクタにて流量250mL/分で混合し、直ちにpH7.4のPBS(脂質原液の4倍量)に希釈した。エタノールをその後除去し、100容量のPBSに対して一夜透析して、キャリア緩衝液をPBSと透析(Slide-A-Lyzerユニット、MWCO 10k)により交換した。透析後、これらの製剤を、VivaSpin濃縮装置(MWCO 100,000)を用いて約0.6mg/mLに濃縮した。これらのLNP試料は、滅菌濾過し(0.2μmシリンジフィルター)、試料濃度をRiboGreenアッセイによって測定した。粒径及び多分散性は、Malvern Nano Series Zetasizerを用いて測定した。
【0371】
注入の前にLNPを0.05mg/mLに希釈した。Balb/cマウス(n=4)に外側尾静脈を介して0.5mg/kg(全mRNA)の用量(10mL/kgの体積用量を用いて)を投与した。処理の4時間後、動物をケタミン/キシラジンで安楽死させた。末端血液をナトリウムEDTAのマイクロティナチューブに採取し、16000×g及び16℃で5分間遠心分離し、血漿を単離した。肝臓切片をFastPrepチューブに採取し、分析まで-80℃で保存した。
【0372】
効力を評価するため、肝臓を1×培養細胞溶解剤(CCLR)緩衝液にホモジナイズし、その後ルシフェラーゼアッセイ(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を分析した。表42に示すように、組成物からリン脂質を除去した場合に効力に有害作用はない。
【表42】
【0373】
免疫刺激への影響を評価するため、血漿試料を希釈し(1:8)、ELISAによりサイトカイン(MCP-1及びIL-6)について分析した(ELISAアッセイならびにキャプチャー及び検出抗体はBD Biosciences製)。表43は、サイトカイン産生は、リン脂質が除去された場合に両方の「ベース」製剤で著しく減少することを示している。1.1:55ベースに対する影響が特に強い。
【表43】
【0374】
総合すれば、これらの結果は、PLフリー製剤の使用で、PL含有製剤と比較して、製剤の免疫刺激の減少がもたらされることを示している。有効性が影響を受けないと思われることを考えると、このことは、mRNA-LNPの治療指数の向上をもたらすはずである。
【0375】
実施例18 リン脂質を除去することで、効力を損なうことなくmRNAを含むLNPの免疫刺激が減少される
実施例17の結果を2つの異なるmRNA転写物、すなわち、mLuc(表44a)及びmEPO(表44b)を用いて製剤化された組成物のサブセットでさらに裏付けた。使用した転写物は、ルシフェラーゼ(レポーター遺伝子)またはエリスロポエチン(赤血球生成、すなわち、赤血球産生を制御するホルモン)のいずれかをコードした。
【表44】
【0376】
mRNA-LNPを実施例17に記載の通りに調製した。雌のBalb/C(n=4)が0.5mg/kg(mRNA)のLNPの静脈内投与を受けた。6時間後、動物をケタミン/キシラジンで安楽死させた。末端血液のごく一部(75μL)を18.8μLの50mg/Lヘパリンを含むチューブに採取し、残りの血液はナトリウムEDTAのマイクロティナチューブに採取した。これらチューブはすべて16000×g及び16℃で5分間遠心分離し、血漿を単離した。さらに、肝臓の一部をFastPrepチューブに採取し、分析まで-80℃に置いた。
【0377】
肝臓を1×CCLR緩衝液にホモジナイズし、ルシフェラーゼアッセイ(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を分析した。表45に見られるように、PLフリーのmRNA-LNP製剤の有効性は、ベース(PL含有)製剤のものと同様である。
【表45】
【0378】
ヘパリン血漿(ELISA希釈剤で1:4000に希釈)を標準マウスEPO ELISA分析(R&D Systems)に用いた。表46に示すように、mEPO-LNPの有効性の傾向は、mLuc-LNPで見られるものと同様であり、ここでは、PLフリーLuc mRNA-LNPの有効性は、ベース(PL含有)製剤のものと同様である。
【表46】
【0379】
免疫刺激を評価するため、血漿試料をサイトカインMCP-1及びIL-6についてELISAにより分析した(ELISAアッセイならびにキャプチャー/検出抗体はBD Biosciences製)。表47a(mEPO)及び表47b(mLuc)の結果もやはり、PLフリーのLNP組成物に対する炎症反応がどのようにベース組成物と比較して著しく減少されたかを示している。これは、両方のLNP群(ルシフェラーゼ及びEPO)に当てはまる。これらPLフリーの組成物の有効性が影響を受けていないことを考えると、それらのサイトカイン誘導の減少は、治療指数の著しい向上をもたらす。
【表47】
【0380】
実施例19 PEG含量を増加させたPLフリーLNPは刺激性が低い
この実施例は、mRNA-LNPの免疫刺激のさらなる減少が、PLフリーのmRNA-LNPのPEG成分を増加させることによって、この場合もやはり活性を損なうことなく、どのように達成され得るかを示している。以下のmRNA-LNP組成物(表48)を、EPO mRNAペイロードを用いて実施例17に記載の通りに調製した。
【表48】
【0381】
雌のBalb/C(n=4)がその後0.5mg/kg(mRNA)のLNPの静脈内投与を受けた。6時間後、動物をケタミン/キシラジンで安楽死させた。血液をナトリウムEDTAのマイクロティナチューブに採取した。これらチューブはすべて16000×g及び16℃で5分間遠心分離し、血漿を単離した。血漿試料をサイトカインMCP-1及びIL-6についてELISAにより分析した(ELISAアッセイならびにキャプチャー/検出抗体はBD Biosciences製)。表49の結果もやはり、PLフリーのLNP組成物に対する炎症反応がどのようにベース組成物と比較して著しく減少されたかを示している。これらPLフリーの組成物の有効性が影響を受けていないことを考えると、それらのサイトカイン誘導の減少は、治療指数の著しい向上をもたらす。
【表49】
【0382】
これらの結果は、PLフリー製剤内でPEG脂質の量を3.3mol%まで増加させることで(3.3:55の化合物13PLフリーmRNA-LNP)、mRNA-LNPの免疫刺激のさらなる減少が達成され得ることを示している。3.3:55組成物の効力を次に調べた。
【0383】
実施例20 高PEGのPLフリーmRNA-LNPは、驚異的な強さを維持し、より高い治療指数を示す
この実施例は、高PEGのPLフリーの3.3:55mRNA-LNP組成物が、ベースのPL含有組成物と全く同じように有効であることを示す。この場合もやはり、3.3:55組成物の免疫刺激の低下、ひいては治療指数の改善を示している。以下のLNPを、EPOペイロードを用いて実施例17に記載の方法を用いて調製した(表50)。
【表50】
【0384】
雌のBalb/C(n=4)がその後0.5mg/kg(mRNA)のLNPの静脈内投与を受けた。6時間後、動物をケタミン/キシラジンで安楽死させた。2時間、3時間、4時間、及び5時間の時点で採血を行い、20μLの血液を、5μLの50mg/Lヘパリンを含むチューブに採取した。6時間の時点で、動物を致死量のケタミン/キシラジンで安楽死させた。少量(20μL)の末端血液を5μLの50mg/Lヘパリンを含むチューブに採取し、残りの血液はナトリウムEDTAマイクロティナチューブに採取した。チューブは16000×g及び16℃で5分間遠心分離し、血漿を単離した。
【0385】
ヘパリン血漿をEPO濃度についてELISA(R&D Systems製のキット)で分析した。表51に示すように、すべての時点で、PL含有mRNA-LNP及び3.3:55のPLフリー製剤の有効性は同等である。
【表51】
【0386】
血漿試料をサイトカインMCP-1及びIL-6についてELISAにより分析した(ELISAアッセイならびにキャプチャー/検出抗体はBD Biosciences製)。表52の結果は、実施例19のデータを裏付け、この場合もやはり、高PEGのPLフリーのLNP組成物に対する炎症反応がどのようにベース組成物と比較して著しく減少されるかを示している。
【表52】
【0387】
総合すれば、これらの結果は、PLフリー製剤の使用で、mRNA-LNP製剤の治療指数を高めることができ、さらに、PEGをより多くの量(例えば、3.3mol%)含めるように製剤を変更することで、治療指数をさらに高くすることができることを示している。
【0388】
実施例21 mRNA-LNPの免疫刺激の無効化のためのHPLCで精製されたmRNAの使用
この実施例は、通常のシリカ膜で精製されたLNP中のmRNAを、逆相(RP)HPLCで精製されたmRNAで置き換えることによって、どのようにmRNA-LNPの免疫刺激の低減が達成され得るかを示す。いずれかの方法で精製されたマウスエリスロポエチン(EPO)mRNAをLNPに製剤化し、Balb/Cマウスにiv経路で注入した。注入の4時間後、動物をサクリファイスし、血漿及び肝臓組織を有効性ならびに免疫刺激について分析した。
【0389】
LNPは、通常のLipoMixer技術で調製した。簡潔には、100%エタノール中、7.36mg/mLの脂質溶液を、脂質DSPC:コレステロール:PEG2000-C-DMA:化合物13を以下のモル比、すなわち、10.9:32.8:1.64:54.6、mol%で含めて調製した。mRNAペイロードを40mMのEDTA(pH4.5)に濃度0.366mg/mLで可溶化した。Jeffらによって記載された直接希釈法を用いて、各溶液の等量(1.6mL)を、T字型コネクタを通して250mL/分で混合した。得られた混合物を続いて約4容量のpH7.4のPBS(5.9mL)を含むチューブに直接採取した。これらの製剤をSlide-A-Lyzer透析ユニット(MWCO 10,000)に入れ、100容量のpH7.4のPBSに対して一夜透析した。透析後、それらの製剤を、VivaSpin濃縮装置(MWCO 100,000)を用いて約0.6mg/mLに濃縮した。
【0390】
雌のBalb/Cマウス(n=5)が、PBS、または通常通りに精製された(シリカ膜)もしくはHPLCで精製されたmRNAペイロードのいずれかを有するLNPの静脈(尾静脈)投与を受けた。このmRNA転写物は、マウスエリスロポエチン(EPO)をコードした。各動物は、0.5mg/kgのmRNAに相当する用量を受けた。注入の4時間後、動物を致死量のケタミン/キシラジンで安楽死させた。末端血液の少量(20μL)を5μLの50mg/Lヘパリンを含むチューブに採取し、残りの血液はNa EDTAのマイクロティナチューブに採取した。チューブはすべて16000×g及び16℃で5分間遠心分離し、血漿を単離した。左側葉の半分を1.5mLのRNALaterに採取し、4℃で少なくとも16時間保存した。
【0391】
ヘパリン血漿(ELISA希釈剤で1:4000に希釈)を標準マウスEPO ELISA分析(R&D Systemsのキット)に用いた。表53に見られるように、高度に(HPLC)精製されたEPO mRNAを含むLNPの有効性は、通常通り(シリカ膜)精製されたEPO mRNAのものと極めて類似している。PBSで処理されたマウスの血漿内に見られるEPOの通常のレベルは100~200ng/mLである。従って、組み込まれるEPO mRNAの純度にかかわらず、封入されたmEPOからのEPOの肝臓の遺伝子発現のレベルは極めて高い。
【0392】
mRNA-LNPによって引き起こされる免疫刺激のレベルを測定するため、LNPで処理された動物に関する肝臓内のIFIT mRNAの倍数増加(PBSで処理された動物に対して)を測定した。これは、当業者がmRNA-LNPによって引き起こされる免疫刺激のレベルを評価するために使用することができるアッセイの一例である。ある特定の実施形態では、HPLCで精製されたmRNA-LNPは、対照より大幅に低い免疫刺激を誘導し、これは、ある特定の実施形態では、IFIT反応で特徴づけられる。IFN誘導性IFIT1 mRNA、すなわち、I型IFNに反応して最も強く誘導されるmRNAを、免疫刺激のより高感度な尺度として用いた。検出可能な血漿IFNタンパク質の非存在下であっても、核酸を有するLNPで処理されたマウスにおいて、肝臓及び脾臓の両方で強いIFIT1 mRNAの誘導を観察することができる。これは、恐らく全身性のサイトカイン反応として現れない局所的なIFNの誘導を反映する。このIFIT1アッセイでは、IFIT1 mRNAの肝細胞中の量を定量し、通常は一定のままであるハウスキーピング遺伝子(通常はGAPD)のmRNAレベルに対して正規化した。Affymetrix製QuantiGene2.0キット(分岐DNAに基づくアッセイ)を用いて、両遺伝子のmRNAレベルを測定した。
【0393】
肝臓の左側葉約20~25mg(RNALater中で保存)をホモジナイズした。IFIT及びハウスキーピング遺伝子GAPD両方の相対的mRNAレベルを、QuantiGene2.0アッセイを用いて測定した。IFIT値は各動物群についてGAPDに対して正規化し、PBS対照群に対する倍数増加として表した。表54の結果は、シリカ膜で精製されたmRNAペイロードを有するLNPは、PBS群に対して627倍のIFITの増加をもたらしたことを示している。HPLCで精製されたペイロードを有するLNPで処理されたマウスは、PBSに対して21倍の増加しか示していない。従って、それらはシリカ膜で精製されたmRNAを有する粒子より刺激性が約30倍低い。ある特定の実施形態では、HPLCで精製されたmRNAを有するナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の30倍を超えないIFIT反応を有する。ある特定の実施形態では、HPLCで精製されたmRNAを有するナノ粒子製剤は、リン酸緩衝生理食塩水の参照IFIT反応の10もしくは20もしくは30もしくは40もしくは50もしくは60もしくは70もしくは80もしくは90または100倍を超えないIFIT反応を有する。
【0394】
免疫刺激能のさらなる比較を、サイトカイン(MCP-1及びIL-6)ELISAアッセイにおけるEDTA血漿の分析によって得た。血漿をELISA希釈剤に希釈し(1:8または1:80)、BD Biosciences製キャプチャー及び検出抗体によるELISAアッセイを用いて、MCP-1及びIL-6の存在レベルについて分析した。MCP-1のレベルは、HPLCで精製されたmRNAの組み込みで劇的に減少している(37106pg/mLから105pg/mLに減少)。同様に、別のサイトカイン(IL-6)もまた、HPLCで精製されたmRNAを使用した場合に劇的に減少している(4805pg/mLから22pg/mLに減少)。結果を表55に示す。
【0395】
総合すれば、これらの結果は、HPLCで精製されたmRNAペイロードを有するLNP粒子は、精製度が低い(例えば、通常のシリカ膜で精製された)mRNAペイロードを備えたものより大幅に刺激性が低いことを示している。有効性が悪影響を受けないことを考えると、このことは、mRNA-LNPの治療指数の劇的な向上を表す。
【表53】
【表54】
【表55】
【0396】
本明細書で引用されたすべての文書は参照することにより組み込まれる。発明のある特定の実施形態を説明し、多くの詳細を例示の目的で記載してきたが、該詳細の一部は、本発明の基本原則から逸脱することなく変更することができる。
【0397】
発明の実施形態を記載する文脈における「a」及び「an」ならびに「the」という用語ならびに同様の用語の使用は、本明細書で別段に示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈される。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンドな用語であると解釈される(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)。本明細書における値の範囲の記述は、本明細書において別段の指示がない限り、該範囲内に含まれる別々の値の各々に個々に言及する簡単な方法としての機能を果たすことを単に意図し、別々の値の各々は、それが本明細書に個々に記載されたものとして本明細書に組み込まれる。本明細書に詳述された順序に加えて、本明細書に記載の方法は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾がない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書に提供するありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「等」)の使用は、発明の実施形態を単により良好に明らかにすることを意図し、特許請求の範囲において具体的に記載されない限り、必ずしも本発明の範囲を制限するものではない。本明細書におけるいかなる言語も、請求されていない任意の要素が本発明を実施する上で必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】