IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図1
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図2
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図3
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図4
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図5
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図6
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図7
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図8
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図9
  • 特開-車両用灯具の制御装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111259
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】車両用灯具の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/115 20060101AFI20220722BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B60Q1/115
B60Q1/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092752
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2021013674の分割
【原出願日】2011-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2010151180
(32)【優先日】2010-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和緒
(72)【発明者】
【氏名】伴野 寿紀
(72)【発明者】
【氏名】笠羽 祐介
(57)【要約】
【課題】傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる技術を提供する。
【解決手段】照射制御部228L,228Rは、傾斜検出装置から水平面に対する車両300の傾斜角度を受信するための受信部228L1,228R1と、車両停止中の傾斜角度の変化に対して車両用灯具の光軸位置の調節を指示する制御信号を生成し、車両走行中の傾斜角度の変化に対して前記制御信号の生成を回避するか光軸位置の維持を指示する制御信号を生成するよう構成された制御部228L2,228R2と、制御信号を車両用灯具のレベリング制御部236に送信するための送信部228L3,228R3と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方車両の存在状態に応じて定まるADB用配光パターンの形成を制御する機能と、傾斜検出装置の情報に基づいて車両用灯具の車両上下方向の照射方向を制御する機能と、を備える車両用灯具の制御装置であって、
前記傾斜検出装置の車両停止時の検出値に基づいて路面角度に関する情報を算出し、
前記傾斜検出装置の車両停止中の検出値と前記路面角度に関する情報とから得られる車両姿勢角度に関する情報に基づいて前記照射方向を調節する、
車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
前記傾斜検出装置の車両発進時の検出値と、前記傾斜検出装置の車両停止時の検出値との差分から前記路面角度に関する情報を算出する、
請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項3】
車両停止時に、車両の走行前後における前記傾斜検出装置の検出値の差分から前記路面角度に関する情報を算出する、
請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項4】
前方車両の存在状態に応じて定まるADB用配光パターンの形成を制御する機能と、傾斜検出装置の情報に基づいて車両用灯具の車両上下方向の照射方向を制御する機能と、を備える車両用灯具の制御装置であって、
前記傾斜検出装置の車両停止時の検出値と前記傾斜検出装置の車両停止中の検出値との差分と、車両姿勢角度に関する基準値とに基づいて前記照射方向を調節する、
車両用灯具の制御装置。
【請求項5】
前方車両の存在状態に応じて定まるADB用配光パターンの形成を制御する機能と、傾斜検出装置の情報に基づいて車両用灯具の車両上下方向の照射方向を制御する機能と、を備える車両用灯具の制御装置であって、
前記傾斜検出装置の車両停止時の検出値と前記傾斜検出装置の車両停止中の検出値との差分に基づいて前記照射方向を調節する、
車両用灯具の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の制御装置、車両用灯具、および車両用灯具の制御方法に関し、特に自動車などに用いられる車両用灯具の制御装置、車両用灯具、および車両用灯具の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の傾斜角度に応じて車両用前照灯の光軸位置を自動的に調節して照射方向を変化させるオートレベリング制御が知られている。一般にオートレベリング制御では、車両の傾斜検出装置として車高センサが用いられ、車高センサにより検出される車両のピッチ角度に基づいて前照灯の光軸位置が調節される。これに対し、特許文献1には、傾斜検出装置として重力センサを用いてオートレベリング制御を実施する構成が開示されている。また、特許文献2には、傾斜検出装置として三次元ジャイロセンサを用いてオートレベリング制御を実施する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-085459号公報
【特許文献2】特開2004-314856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の傾斜検出装置として加速度センサ(重力センサ)やジャイロセンサ、地磁気センサなどを用いた場合、車高センサを用いた場合に比べてオートレベリングシステムをより安価にすることができ、また軽量化を図ることもできる。一方で、従来の加速度センサなどを用いたオートレベリング制御には次のような課題があることを本発明者らは認識するに至った。
【0005】
すなわち、例えば、加速度センサによって検出される傾斜角度は、水平面に対する路面の傾斜角度と路面に対する車両の傾斜角度とを含む、水平面に対する車両の傾斜角度である。一方、オートレベリング制御に必要な車両の傾斜角度は、路面に対する車両の傾斜角度である。これに対し、従来のオートレベリング制御では加速度センサの検出値が変化すると、その変化が水平面に対する路面の傾斜角度の変化であるか路面に対する車両の傾斜角度の変化であるかを区別することなく光軸位置を調節していた。そのため、従来の加速度センサを用いたオートレベリング制御には光軸位置の調節精度を高める上で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、発明者らによるこうした認識に基づいてなされたものであり、その目的は、傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具の制御装置であり、当該制御装置は、傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を受信するための受信部と、車両停止中の傾斜角度の変化に対して車両用灯具の光軸位置の調節を指示する制御信号を生成し、車両走行中の傾斜角度の変化に対して前記制御信号の生成を回避するか光軸位置の維持を指示する制御信号を生成するよう構成された制御部と、制御信号を車両用灯具の光軸調節部に送信するための送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。
【0009】
上記態様において、水平面に対する車両の傾斜角度を合計角度と呼ぶとき、この合計角度には水平面に対する路面の傾斜角度である第1角度と路面に対する車両の傾斜角度である第2角度とが含まれ、制御装置は、車両停止中に前記合計角度が変化した場合、当該合計角度の変化を第2角度の変化として光軸位置の調節を指示する制御信号を生成してもよい。この態様によっても、傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。
【0010】
上記態様において、制御部は、第1角度の基準値と第2角度の基準値とを保持し、車両停止時に傾斜検出装置の検出値と第2角度の基準値とから得られる第1角度を新たな基準値として保持し、車両停止中に合計角度が変化した場合、傾斜検出装置の検出値と第1角度の基準値とから得られる第2角度を用いて光軸位置の調節を指示する制御信号を生成するとともに、得られる第2角度を新たな基準値として保持してもよい。この態様によっても、傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。
【0011】
また、上記態様において、制御部は、第1角度の基準値と第2角度の基準値とを保持し、車両走行中の合計角度の変化を第1角度の変化として第1角度の基準値を更新し、車両停止中の合計角度の変化を第2角度の変化として第2角度の基準値を更新するとともに、更新後の第2角度の基準値を用いて光軸位置の調節を指示する制御信号を生成してもよい。この態様によっても、傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。
【0012】
また、上記態様において、傾斜検出装置は、車両の傾斜角度をベクトルとして検出可能な加速度センサであり、制御部は、車両発進から所定時間後に車速センサ、あるいは加速度センサから得られる車両の加速度ベクトルの大きさの2乗と加速度センサの検出値ベクトルの大きさの2乗との差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい場合に、保持している第1角度の基準値を0°に近づけるように補正してもよい。また、上記態様において、傾斜検出装置は、車両の傾斜角度をベクトルとして検出可能な加速度センサであり、制御部は、車両停止から所定時間前に車速センサ、あるいは加速度センサから得られる車両の加速度ベクトルの大きさの2乗と加速度センサの検出値ベクトルの大きさの2乗との差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい場合に、車両停止時に得られる第1角度の基準値を0°に近づけるように補正してもよい。これらの態様によれば、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。
【0013】
また、上記態様において、制御部は、制御装置の起動時に、傾斜検出装置の検出値と、第1角度の基準値または制御装置の前回の駆動中最後に検出された傾斜検出装置の検出値とから得られる第2角度を用いて光軸位置の調節を指示する制御信号を生成するとともに、得られる第2角度を新たな基準値として保持してもよい。この態様によれば、オートレベリング制御の精度を向上させることができる。
【0014】
また、上記態様において、制御部は、傾斜検出装置の検出値と第1角度の基準値とから得られる第2角度が所定の範囲を超える場合に、保持している第2角度の基準値を用いて光軸位置の調節を指示する制御信号を生成してもよい。この態様によれば、他車両の運転者にグレアを与えるおそれを低減しながら自車両の運転者の視認性を向上させることができる。また、上記態様において、制御部は、傾斜検出装置の検出値と第1角度の基準値とから得られる第2角度が所定の範囲を超える場合に、その後の光軸位置の調節を指示する制御信号の生成を禁止してもよい。この態様によれば、他車両の運転者に与えるグレアを確実に防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の他の態様は車両用灯具であり、当該車両用灯具は、車両停止中に水平面に対する車両の傾斜角度が変化した場合に光軸位置が調節され、車両走行中に水平面に対する車両の傾斜角度が変化した場合に光軸位置が維持されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のさらに他の態様は車両用灯具の制御方法であり、当該制御方法は、傾斜検出装置により検出された水平面に対する車両の傾斜角度に基づいて車両用灯具の光軸を調節するための車両用灯具の制御方法であって、路面に対する車両の傾斜角度が変化した場合に光軸位置を調節し、水平面に対する路面の傾斜角度が変化した場合に光軸位置を維持するように制御することを特徴とする。
【0017】
これらの態様によっても、傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、傾斜検出装置から水平面に対する車両の傾斜角度を取得して車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る車両用灯具システムの内部構造を説明する概略鉛直断面図である。
図2】前照灯ユニットの照射制御部と車両側の車両制御部との動作連携を説明する機能ブロック図である。
図3】実施形態1に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御フローチャートである。
図4】実施形態2に係る車両用灯具システムによるオートレベリング制御の説明図である。
図5】実施形態2に係る車両用灯具システムにおける車両発進の際の路面水平判定および路面角度補正の制御フローチャートである。
図6】実施形態2に係る車両用灯具システムにおける車両停止の際の路面水平判定および路面角度補正の制御フローチャートである。
図7】実施形態3に係る車両用灯具システムにおける車両姿勢角度θvの判定制御フローチャートである。
図8】実施形態3に係る車両用灯具システムにおける車両姿勢角度θvの他の判定制御フローチャートである。
図9】実施形態4に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御フローチャートである。
図10】変形例に係る車両用灯具システムにおける前照灯ユニット、車両制御部およびレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具システムの内部構造を説明する概略鉛直断面図である。本実施形態の車両用灯具システム200は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された配光可変式前照灯システムである。左右に配置された前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明し、左側の前照灯ユニットの説明は適宜省略する。なお、左側の前照灯ユニットの各部材について記載する場合には、説明の便宜上、各部材に対して前照灯ユニット210Rの対応する部材と同一の符号を付す。
【0022】
前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、その車両後方側にバルブ14の交換時等に取り外すことができる着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成されている。灯室216には、光を車両前方に照射する灯具ユニット10(車両用灯具)が収納されている。
【0023】
灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218は、ランプボディ212の壁面に回転自在に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合している。したがって、灯具ユニット10は、エイミング調整ネジ220の調整状態で定められた灯室216内の所定位置に固定されるとともに、その位置を基準にピボット機構218aを中心として、前傾姿勢または後傾姿勢等に姿勢変化可能である。
【0024】
また、灯具ユニット10の下面には、曲線道路走行時などに進行方向を照らす曲線道路用配光可変前照灯(Adaptive Front-lighing System:AFS)などを構成するためのスイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、車両側から提供される操舵量のデータやナビゲーションシステムから提供される走行道路の形状データ、対向車や先行車を含む前方車と自車との相対位置の関係などに基づいて、灯具ユニット10を、ピボット機構218aを中心に進行方向に旋回(スイブル:swivel)させる。その結果、灯具ユニット10の照射領域が車両の正面ではなく曲線道路のカーブの先に向き、運転者の前方視認性を向上させる。スイブルアクチュエータ222は、例えばステッピングモータで構成することができる。なお、スイブル角度が固定値の場合には、ソレノイドなども利用可能である。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。
【0025】
ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10は、ピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10は、ピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸Oのピッチ角度、すなわち、光軸Oの上下方向の角度を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸Oのピッチ角度を下方に向けるレベリング調整ができる。このようなレベリング調整を実施することで、車両姿勢に応じた光軸調整ができる。その結果、車両用灯具システム200による前方照射光の到達距離を最適な距離に調整することができる。
【0026】
灯具ユニット10下方の灯室216の内壁面には、灯具ユニット10の点消灯制御や配光パターンの形成制御、灯具ユニット10の光軸調節などを実行する照射制御部228(制御装置)が配置されている。図1の場合、前照灯ユニット210Rを制御するための照射制御部228Rが配置されている。この照射制御部228Rは、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226などの制御も実行する。なお、照射制御部228Rは、前照灯ユニット210Rの外に設けられてもよい。
【0027】
灯具ユニット10は、エイミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分に、エイミング調整時の揺動中心となるエイミングピボット機構(図示せず)を配置する。また、ランプブラケット218には前述したエイミング調整ネジ220が車幅方向に間隔を空けて配置されている。例えば2本のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に前傾姿勢となり光軸Oが下方に調整される。同様に2本のエイミング調整ネジ220を時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に後傾姿勢となり光軸Oが上方に調整される。また、車幅方向左側のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に右旋回姿勢となり右方向に光軸Oが調整される。また、車幅方向右側のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に左旋回姿勢となり左方向に光軸Oが調整される。このエイミング調整は、車両出荷時や車検時、前照灯ユニット210Rの交換時に行われる。そして、前照灯ユニット210Rが設計上定められた姿勢に調整され、この姿勢を基準に配光パターンの形成制御や光軸位置の調節制御が行われる。
【0028】
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、および投影レンズ20を備える。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16は、バルブ14から放射された光を反射する。そして、バルブ14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、その一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。
【0029】
回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材であり、軸方向に一部が切り欠かれた切欠部と、複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部またはシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。リフレクタ16は、その少なくとも一部が楕円球面状であり、この楕円球面は、灯具ユニット10の光軸Oを含む断面形状が楕円形状の少なくとも一部となるように設定されている。リフレクタ16の楕円球面状部分は、バルブ14の略中央に第1焦点を有し、投影レンズ20の後方焦点面上に第2焦点を有する。
【0030】
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸O上に配置される。バルブ14は、投影レンズ20の後方焦点を含む焦点面である後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として車両用灯具システム200前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。なお、灯具ユニット10の構成は特にこれに限定されず、投影レンズ20を持たない反射型の灯具ユニットなどであってもよい。
【0031】
図2は、上述のように構成された前照灯ユニットの照射制御部と車両側の車両制御部との動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、上述のように右側の前照灯ユニット210Rおよび左側の前照灯ユニット210Lの構成は基本的に同一であるため、前照灯ユニット210R側のみの説明を行い前照灯ユニット210L側の説明は省略する。
【0032】
前照灯ユニット210Rの照射制御部228Rは、受信部228R1と、制御部228R2と、送信部228R3と、メモリ228R4とを有する。照射制御部228Rは、車両300に搭載された車両制御部302(車両制御ECU)から得られた情報に基づいて電源回路230の制御を行い、バルブ14の点灯制御を実行する。また、照射制御部228Rは、車両制御部302から得られた情報に基づいて可変シェード制御部232、スイブル制御部234、レベリング制御部236(光軸調節部)を制御する。車両制御部302から送信された各種情報は受信部228R1によって受信され、制御部228R2によって当該情報と必要に応じてメモリ228R4に記憶されている情報とから各種制御信号が生成される。そして、送信部228R3によって当該制御信号が灯具ユニット10の電源回路230や可変シェード制御部232、スイブル制御部234、レベリング制御部236等に送信される。メモリ228R4は、例えば不揮発メモリである。
【0033】
可変シェード制御部232は、回転シェード12の回転軸12aにギア機構を介して接続されたモータ238を回転制御して、所望のシェードプレートまたは切欠部を光軸O上に移動させる。なお、可変シェード制御部232には、モータ238や回転シェード12に備えられたエンコーダなどの検出センサから回転シェード12の回転状態を示す回転情報が提供される。これにより、フィードバック制御による正確な回転制御が実現される。また、スイブル制御部234は、スイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸Oの角度を車幅方向(左右方向)について調整する。例えば、曲路走行や右左折走行などの旋回時に灯具ユニット10の光軸Oをこれから進行する方向に向ける。
【0034】
レベリング制御部236は、レベリングアクチュエータ226を制御して、灯具ユニット10の光軸Oを車両上下方向(ピッチ角度方向)について調整する。例えば、積載荷量増減時や乗車人数増減時における車両姿勢の前傾、後傾に応じて灯具ユニット10の姿勢を調整して前方照射光の到達距離を最適な距離に調整する。車両制御部302は、前照灯ユニット210Lに対しても同様の情報を提供し、前照灯ユニット210Lに設けられた照射制御部228L(制御装置)が、照射制御部228Rと同様の制御を実行する。
【0035】
本実施形態の場合、前照灯ユニット210L,210Rによって形成される配光パターンは、運転者によるライトスイッチ304の操作内容に応じて切り替え可能である。この場合、ライトスイッチ304の操作に応じて、照射制御部228L,228Rが可変シェード制御部232を介してモータ238を制御して灯具ユニット10により形成する配光パターンを決定する。
【0036】
本実施形態の前照灯ユニット210L,210Rは、ライトスイッチ304の操作によらず、車両周囲の状況を各種センサで検出して、車両300の状態や車両周囲状況に最適な配光パターンを形成するように自動制御してもよい。例えば、自車の前方に先行車や対向車、歩行者などが存在することが検出できた場合には、照射制御部228L,228Rは車両制御部302から得られた情報に基づいてグレアを防止するべきであると判定し、灯具ユニット10によりロービーム用配光パターンを形成する。また、自車の前方に先行車や対向車、歩行者などが存在しないことが検出できた場合には、照射制御部228L,228Rは運転者の視認性を向上させるべきであると判定して回転シェード12による遮光を伴わないハイビーム用配光パターンを形成する。また、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンに加えて、いわゆる左あるいは右片ハイ用配光パターンやVビーム用配光パターンなどの従来公知の特殊ハイビーム用配光パターンや特殊ロービーム用配光パターンを形成可能な場合には、前方車の存在状態に応じて前方車を考慮した最適な配光パターンを形成してもよい。このような制御モードをADB(Adaptive Driving Beam)モードという場合がある。
【0037】
このように先行車や対向車などの対象物を検出するために、車両制御部302には対象物の認識手段として例えばステレオカメラなどのカメラ305が接続されている。カメラ305で撮影された画像フレームデータは、画像処理部308で対象物認識処理などの所定の画像処理が施され、その認識結果が車両制御部302へ提供される。例えば、画像処理部308から提供された認識結果データの中に車両制御部302が予め保持している車両を示す特徴点を含むデータが存在する場合、車両制御部302は車両の存在を認識して、その情報を照射制御部228L,228Rに提供する。照射制御部228L,228Rは、車両制御部302から車両の情報を受けて、その車両を考慮した最適な配光パターンを決定し、当該配光パターンを形成する。ここで、前記「車両を示す特徴点」とは、例えば前方車の前照灯や、テールランプなどの標識灯の推定存在領域に現れる所定光度以上の光点である。また、例えば、画像処理部308から提供された認識結果データの中に予め保持している歩行者を示す特徴点を含むデータが存在する場合、車両制御部302がその情報を照射制御部228L,228Rに提供し、照射制御部228L,228Rは、その歩行者を考慮した最適な配光パターンを形成する。
【0038】
また、車両制御部302は、車両300に搭載されているステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314、傾斜検出装置としての加速度センサ316などからの情報も取得可能である。そして、これにより照射制御部228L,228Rは、車両300の走行状態や姿勢に応じて形成する配光パターンを選択したり、光軸Oの方向を変化させて簡易的に配光パターンを変化させたりすることができる。たとえば、車両後部の荷室に荷物を載せたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。灯具ユニット10の照射方向も車両300の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、照射制御部228L,228Rは、車両制御部302を経由して加速度センサ316から車両300の傾斜角度を受信し、レベリング制御部236を介してレベリングアクチュエータ226を制御して光軸Oのピッチ角度を車両姿勢に応じた角度とする。このように、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで実行することで車両300の使用状況に応じて車両姿勢が変化しても前方照射の到達距離を最適に調節することができる。このような制御モードをオートレベリング制御モードという場合がある。以上説明した各種制御モードを含む配光パターンの自動形成制御は、例えばライトスイッチ304によって配光パターンの自動形成制御が指示された場合に実行される。
【0039】
なお、本実施形態では、水平面に対する車両300の傾斜角度を検出するための傾斜検出装置の一例として加速度センサ316を用いているが、傾斜検出装置は、加速度センサ316に限定されず、例えば、ジャイロセンサや地磁気センサなどの他のセンサを用いてもよい。
【0040】
続いて、上述の構成を備えた車両用灯具システム200によるオートレベリング制御について詳細に説明する。
【0041】
本実施形態にかかる車両用灯具システム200の加速度センサ316は、例えば互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。加速度センサ316は、センサのX軸が車両300の前後軸と、センサのY軸が車両300の左右軸と、センサのZ軸が車両300の上下軸と沿うように車両300に取り付けられている。加速度センサ316は、重力加速度ベクトルと車両300の移動により生じる運動加速度ベクトルとが合成された合成加速度ベクトルを検出することができ、3軸方向における合成加速度ベクトルの各成分の数値を出力する。加速度センサ316は、車両300が静止状態にある場合、3軸方向における重力加速度ベクトルの各成分の数値を出力する。すなわち、加速度センサ316は、水平面に対する路面の傾斜角度(第1角度)と、路面に対する車両の傾斜角度(第2角度)とが含まれる、水平面に対する車両の傾斜角度(合計角度)をベクトルとして検出することができる。言い換えれば、加速度センサ316の検出値からは、水平面に対する車両の傾斜角度を導出することができる。以下適宜、水平面に対する路面の傾斜角度を「路面角度」と称して符号θrを付し、路面に対する車両の傾斜角度を「車両姿勢角度」と称して符号θvを付し、水平面に対する車両の傾斜角度を「合計角度」と称して符号θを付す。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv、および合計角度θは、それぞれX軸の上下方向の角度、言い換えれば車両300のピッチ方向の角度である。
【0042】
なお、加速度センサ316は、任意の姿勢で車両300に取り付けられてもよい。この場合、加速度センサ316から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、照射制御部228Rによって車両の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換され、合計角度θが導出される。ここで、傾斜検出装置として加速度センサ316が用いられる場合、照射制御部228Rが加速度センサ316から加速度ベクトルの各軸成分の数値を受信して各軸成分の数値から合計角度θを導出することが、「傾斜検出装置から合計角度を受信する」ことに含まれることは、当然に理解されるところである。この場合は、例えば、加速度センサ316と、照射制御部228Rが有する合計角度計算部(図示せず)とによって傾斜検出装置が構成されてもよい。また、傾斜検出装置の検出値は、加速度センサ316の検出値から導出された合計角度θとすることができる。
【0043】
ここで、オートレベリング制御は、車両の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。そこで、本実施形態に係る車両用灯具システム200は、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を調節し、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を維持するように制御する。
【0044】
また、本実施形態では、車両停止中の合計角度θの変化が車両姿勢角度θvの変化と推定され、車両走行中の合計角度θの変化が路面角度θrの変化と推定される。すなわち、走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。一方、車両停止中は車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。照射制御部228Rは、加速度センサ316の検出値から合計角度θを導出し、車両停止中の合計角度θの変化に対して光軸位置の調節を指示する制御信号を生成し、車両走行中の合計角度θの変化に対しては当該制御信号の生成を回避する。そして、制御信号をレベリング制御部236に送信する。なお、照射制御部228Rは、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置の維持を指示する制御信号を生成し、この制御信号をレベリング制御部236に送信するようにしてもよい。
【0045】
具体的には、まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に置かれて基準状態とされる。基準状態では、車両300の運転席に1名乗車している状態、あるいは空車状態とされる。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作、または照射制御部228Rと加速度センサ316とを車両制御部302を介して接続するCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、照射制御部228Rに初期化信号が送信される。照射制御部228Rに送信された初期化信号は、受信部228R1で受信されて制御部228R2に送られる。制御部228R2は、初期化信号を受けると、受信部228R1が受信した加速度センサ316の出力値を基準傾斜角度として用いて、初期エイミング調整を実施する。また、制御部228R2は、路面角度θrの基準値=0°、車両姿勢角度θvの基準値=0°という情報をメモリ228R4に記録することで、これらの基準値を保持する。
【0046】
車両走行中は、制御部228R2(照射制御部228R)は光軸位置の調節を指示する制御信号の生成を回避する。車両300が走行中であることは、例えば車速センサ312から得られる車速により判断することができる。前記「車両走行中」は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときから、車速センサ312の検出値が0となるまでの間である。この「車両走行中」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0047】
そして車両停止時に、制御部228R2は、加速度センサ316の検出値から導出された現在の車両300の傾斜角度、すなわち合計角度θから、メモリ228R4から読み出した車両姿勢角度θvの基準値を減算して、車両停止時の路面角度θrを計算する。そして、この路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値としてメモリ228R4に記録する。前記「車両停止時」は、例えば車速センサ312の検出値が0となった後、加速度センサ316の検出値が安定したときである。加速度センサ316の検出値が安定したときとするのは、車両300が停止してから車両姿勢が安定するまでに若干の時間を要し、車両姿勢が安定していない状態では正確な合計角度θを検出することが困難なためである。この「安定した時」は、加速度センサ316の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときとしてもよいし、車速センサ312の検出値が0になってから所定時間経過後としてもよい。前記「車両停止時」、「所定量」、および「所定時間」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0048】
なお、制御部228R2は、車両停止時の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減じて得られる車両停止時の路面角度θrと、メモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値との差が所定量以上であった場合に、計算された路面角度θrを新たな基準値としてメモリ228R4に記録するようにしてもよい。また、制御部228R2は、車両300の発進時の合計角度θと停止時の合計角度θとが異なる場合に、路面角度θrを計算してもよい。これらによれば、路面角度θrの基準値が頻繁に書き換えられることを回避でき、制御部228R2の制御負担を軽減することができる。
【0049】
車両停止中、制御部228R2は、所定のタイミングで繰り返し車両姿勢角度θvを計算する。車両姿勢角度θvは、現在の合計角度θからメモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値を減じて得られる。計算された車両姿勢角度θvと車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であった場合、制御部228R2は、新たに得られた車両姿勢角度θvに基づいて光軸調節のための制御信号を生成する。そして、この制御信号に基づいて光軸が調節される。また、計算された車両姿勢角度θvは、新たな基準値としてメモリ228R4に記録される。このように、計算された車両姿勢角度θvと基準値との差が所定量以上であった場合に光軸調節を実施することで、頻繁な光軸調節を回避できる。その結果、制御部228R2の制御負担を軽減することができ、またレベリングアクチュエータ226の長寿命化を図ることができる。前記「車両停止中」は、例えば加速度センサ316の検出値が安定したときから車両発進時までであり、この「車両発進時」は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときである。なお、車両姿勢角度θvの計算は、所定のタイミングで繰り返し行わず、車両発進時に行ってもよい。前記「車両停止中」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0050】
また、例えば、イグニッション(IG)のオフ時に照射制御部228Rへ電力が供給されない構成であり、メモリ228R4が不揮発メモリでない場合、制御部228R2は、イグニッションオフの際に車両制御部302側から発進されるIG-OFF信号を受信するか、あるいは照射制御部228Rに供給される電源電圧が所定値以下となった場合に、図示しない不揮発メモリに路面角度θrの基準値を記録する。これにより、イグニッションがオフにされても路面角度θrの基準値を保持することができるため、イグニッションオン後もオートレベリング制御を精度よく実施することができる。
【0051】
また、制御部228R2は、イグニッションがオンにされたとき、すなわち照射制御部228Rの起動時に、加速度センサ316の検出値と路面角度θrの基準値とから車両姿勢角度θvを計算する。そして、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvを用いて光軸位置を決定するとともに、計算された車両姿勢角度θvを新たな基準値としてメモリ228R4に記録することで保持する。これにより、イグニッションがオフにされている間に車両姿勢角度θvが変化していても、イグニッションオン時に光軸Oが適切な位置に調節されるため、オートレベリング制御の精度を向上させることができる。
【0052】
あるいは、イグニッションのオフ時に照射制御部228Rへ電力が供給されない構成であり、メモリ228R4が不揮発メモリでない場合、制御部228R2は、イグニッションオフの際に不揮発メモリに車両姿勢角度θvの基準値と、イグニッションオフの前に最後に検出された加速度センサ316の検出値あるいは合計角度θ、すなわち前回の駆動中(イグニッションオンからイグニッションオフまでの期間)最後に検出された加速度センサ316の検出値あるいは合計角度θを記録する。そして、制御部228R2は、照射制御部228Rの起動時に、現在の加速度センサ316の検出値から得られる合計角度θと、イグニッションオフ前の最後に検出された加速度センサ316の検出値から得られる合計角度θとの差分を算出し、得られた差分と車両姿勢角度θvの基準値とから現在の車両姿勢角度θvを計算する。そして、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvを用いて光軸調節を実施するとともに、計算された車両姿勢角度θvを新たな基準値としてメモリ228R4に記録する。この場合にも、イグニッションオフ中の車両姿勢角度θvの変化に対応した光軸調節が可能となるため、オートレベリング制御の精度を向上させることができる。
【0053】
なお、上述の制御では、合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを算出し、得られた路面角度θrを新たな基準値として保持しているが、この計算に用いられた合計角度θと車両姿勢角度θvの基準値とを保持することでも、実質的には路面角度θrを新たな基準値として保持することになる。よって、本実施形態における路面角度θrの新たな基準値としての保持には、このような、計算に用いた合計角度θと車両姿勢角度θvの基準値を保持することも含まれる。車両姿勢角度θvの計算の場合も同様であり、本実施形態における車両姿勢角度θvの新たな基準値としての保持には、計算に用いた合計角度θと路面角度θrの基準値とを保持することが含まれる。この場合、保持される合計角度θは、この合計角度θに対応する加速度センサ316の検出値であってもよい。
【0054】
図3は、実施形態1に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御フローチャートである。図3のフローチャートではステップを意味するS(Stepの頭文字)と数字との組み合わせによって各部の処理手順を表示する。また、Sと数字との組み合わせによって表示した処理で何らかの判断処理が実行され、その判断結果が肯定的であった場合は、Y(Yesの頭文字)を付加して、例えば(S101のY)と表示し、逆にその判断結果が否定的であった場合は、N(Noの頭文字)を付加して、例えば(S101のN)と表示する。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合に照射制御部228R(制御部228R2)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
【0055】
まず、制御部228R2は、車両走行中であるか判断する(S101)。車両走行中である場合(S101のY)、制御部228R2は、光軸位置の調節を指示する制御信号を生成せず、光軸調節を回避して(S102)、本ルーチンを終了する。車両走行中でない場合(S101のN)、制御部228R2は、車両停止時であるか判断する(S103)。車両停止時である場合(S103のY)、制御部228R2は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減じて路面角度θrを計算し(S104)、計算された路面角度θrを新たな基準値としてメモリ228R4に記録する。そして、照射制御部228Rは、光軸調節を回避して(S102)、本ルーチンを終了する。
【0056】
車両停止時でない場合(S103のN)、この場合は車両停止中であることを意味するため、制御部228R2は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減じて車両姿勢角度θvを計算する(S106)。続いて、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvと車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であるか判断する(S107)。差が所定量未満である場合(S107のN)、制御部228R2は、光軸調節を回避して(S102)、本ルーチンを終了する。差が所定量以上である場合(S107のY)、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvに基づいて光軸位置を調節する(S108)。そして、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvを基準値としてメモリ228R4に記録し(S109)、本ルーチンを終了する。
【0057】
なお、左側の前照灯ユニット210Lについては、照射制御部228L(制御部228L2)が同様の制御を実行する。あるいは、照射制御部228L,228Rの一方が車両姿勢角度θvや路面角度θrを計算し、他方は計算された車両姿勢角度θvや路面角度θrを取得して光軸Oを調節する構成であってもよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具システム200では、照射制御部228L,228Rが加速度センサ316の検出値から導出された合計角度θに基づいてオートレベリング制御を実施する際に、車両姿勢角度θvが変化した場合に光軸位置を調節し、路面角度θrが変化した場合に光軸位置を維持している。また、本実施形態では、車両停止中の合計角度θの変化が車両姿勢角度θvの変化と推定され、車両走行中の合計角度θの変化が路面角度θrの変化と推定されている。そして、照射制御部228L,228Rは、車両停止中の合計角度θの変化に対して光軸位置の調節を指示する制御信号を生成し、車両走行中の合計角度θの変化に対して当該制御信号の生成を回避するか光軸位置の維持を指示する制御信号を生成する。すなわち、照射制御部228L,228Rは、車両停止中に合計角度θが変化した場合、合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化として光軸調節を指示する制御信号を生成する。これにより、水平面に対する車両300の傾斜角度を検出する傾斜検出装置を用いたオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。また、本実施形態では、加速度センサ316等の傾斜検出装置を用いて車両300の傾斜角度を検出しているため、車高センサを用いる必要がない。そのため、車高センサを用いる場合と比べてコスト低減面で有利であり、また、車体設計上の自由度が高い。
【0059】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用灯具システム200は、車両走行中に生じ得る車両姿勢角度θvの変化を考慮して、オートレベリング制御を実施するものである。以下、本実施形態について説明する。なお、車両用灯具システム200の主な構成や、オートレベリング制御の主なフロー、形成可能な配光パターンの形状などは実施形態1と同様であるため、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。図4は、実施形態2に係る車両用灯具システムによるオートレベリング制御の説明図である。
【0060】
実施形態1では、車両走行中の車両傾斜角度(合計角度θ)の変化を路面角度θrの変化と推定している。これにより、簡単な制御構造でオートレベリング制御を高精度に実施することができる。しかしながら、稀ではあるものの、車両走行中に車両姿勢角度θvが変化する場合がある。例えば、車両300がバスなどの大型車両である場合、車両走行中に乗員が車室内を移動する可能性があり、これにより車両姿勢角度θvが変化し得る。そのため、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定した場合、実際の路面角度θrと推定された路面角度θrとの間に誤差が生じる可能性がある。
【0061】
そこで、本実施形態では、車両が発進する際および車両が停止する際の少なくとも一方のタイミングで、路面の水平判定が実施される。そして、路面水平判定の結果に応じて路面角度θrの基準値が補正される。
【0062】
車両発進の際の路面水平判定とその結果に応じた基準値補正は、次のように実施される。まず、制御部228R2は、車両300が発進したか判断する。制御部228R2は、車速センサ312の検出値から得られる単位時間あたりの車速変化量(車両300の運動加速度)が所定値以上である場合に車両300が発進したと判断することができる。車両300が発進したと判断される運動加速度の所定値は、適宜設定可能である。また、制御部228R2は、車両300が直進しているか判断する。制御部228R2は、ステアリングセンサ310の検出値、あるいは加速度センサ316のY軸成分の数値から車両の直進を判断することができる。例えば、制御部228R2は、ステアリングセンサ310の検出値からハンドル角が0°付近である場合に車両300が直進していると判断する。車両300が直進していると判断されるステアリング角の範囲は、適宜設定可能である。
【0063】
車両300が直進している場合、制御部228R2は、車両発進から所定時間後に車速センサ312、あるいは加速度センサ316から得られる車両300の運動加速度ベクトルの大きさの2乗と、加速度センサ316の検出値ベクトルの大きさの2乗とを計算する。そして、その差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい場合に、制御部228R2は、保持している路面角度θrの基準値を0°に近づけるように補正する。
【0064】
また、車両停止の際の路面水平判定とその結果に応じた基準値補正は、次のように実施される。まず、制御部228R2は、車両停止が予測されるか判断する。制御部228R2は、車速センサ312の検出値から得られる単位時間あたりの車速変化量(車両300の運動減速度、すなわち負の運動加速度)が所定値以上である場合に車両300が停止すると予測することができる。車両300の停止が予測される運動減速度の所定値は、適宜設定可能である。また、制御部228R2は、車両300が直進しているか判断する。
【0065】
車両300が直進している場合であって、その後車速が0になって車両300が停止すると、制御部228R2は、車両停止から所定時間前に車速センサ312、あるいは加速度センサ316から得られた車両300の運動加速度ベクトルの大きさの2乗と、加速度センサ316の検出値ベクトルの大きさの2乗とを計算する。そして、その差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい場合に、制御部228R2は、車両停止時に得られる路面角度θrの基準値を0°に近づけるように補正する。
【0066】
図4に示すように、例えばピッチ角度が車両姿勢角度θvだけ傾いた車両300が路面角度θrの道路上で停止する場合、車両300には大きさGの重力加速度と車両300が減速する方向に大きさαの運動加速度(運動減速度)が掛かる。この運動加速度は路面に平行なベクトルである。したがって、この状態における加速度センサ316の検出値ベクトルV=(x,y,z)のX軸成分、Y軸成分、およびZ軸成分は、以下の式(1)~(3)で表すことができる。
【0067】
【数1】
【0068】
そして、この加速度センサ316の検出値ベクトルVの大きさの2乗は、以下の式(4)で表される。
【0069】
【数2】
【0070】
ここで、上記の式(4)を変形して以下の式(5)が得られる。
【0071】
【数3】
【0072】
車両300が水平な道路上で停止する場合、すなわち、路面角度θr=0°である場合、上記の式(5)から、加速度センサ316の検出値ベクトルVの大きさの2乗と運動加速度ベクトルの大きさαの2乗との差が重力加速度ベクトルの大きさGの2乗と等しくなることが分かる。したがって、車速センサ312、あるいは加速度センサ316から得られる車両300の運動加速度ベクトルの大きさαの2乗と、加速度センサ316の検出値ベクトルVの大きさの2乗とを計算し、その差が重力加速度ベクトルの大きさGの2乗と等しいか否かを判断することで、車両300が水平面上にあるか否かを判定することができる。そこで、制御部228R2は、車両停止から所定時間前における運動加速度ベクトルの大きさの2乗と検出値ベクトルの大きさの2乗との差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい場合に、車両停止時に得られる路面角度θrの基準値を0°に近づける補正を実行する。補正量は、例えば0.01°~0.1°の範囲とすることができる。
【0073】
また、車両発進の際についても、加速度センサ316の検出値ベクトル、運動加速度ベクトル、および重力加速度ベクトルは、車両停止の際と同様の関係をとる。そこで、制御部228R2は、車両発進から所定時間後における運動加速度ベクトルの大きさの2乗と検出値ベクトルの大きさの2乗との差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい場合に、保持している路面角度θrの基準値を0°に近づける補正を実行する。上述した補正は、車両発進の際および車両停止の際のどちらか一方で実施することで、制御部228R2の制御負担の増加を抑えながらオートレベリング制御の精度を向上させることができる。また、発進および停止の両方で実施した場合には、オートレベリング制御の精度をより向上させることができる。
【0074】
前記「車両発進から所定時間後」および「車両停止から所定時間前」は、それぞれの補正対象となる路面角度θrの基準値が計算された地点の路面と実質的に路面角度θrが等しい路面上で上述の水平判定を実施することができる時間である。すなわち、車両発進の際であれば、発進直後の路面に対して水平判定を実施することで、補正対象となる路面角度θrの基準値が計算された路面の水平を実質的に判定することができる。また、車両が停止する際であれば、停止直前の路面に対して水平判定を実施することで、補正対象となる路面角度θrの基準値が計算された路面の水平を実質的に判定することができる。そして、判定の結果、路面が水平であるにもかかわらず路面角度θrの基準値が0°でない場合は、実際の路面角度θrと記録されている路面角度θrの基準値との間に誤差があることを意味するため、当該基準値が0°に近づくように補正される。
【0075】
これにより、車両走行中に車両姿勢角度θvが変化した場合であっても、当該変化を考慮した路面角度θrの基準値を得ることができる。そして、補正された路面角度θrの基準値を用いて車両姿勢角度θvが計算されるため、車両姿勢角度θvをより正確に計算することができる。前記「車両発進から所定時間後」および「車両停止から所定時間前」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。また、路面の水平判定は、運動加速度ベクトルの大きさの2乗と検出値ベクトルの大きさの2乗との差が重力加速度ベクトルの大きさの2乗と等しい状態が所定時間、例えば3秒以上継続した場合に、路面が水平であると判定するようにしてもよい。
【0076】
図5は、実施形態2に係る車両用灯具システムにおける車両発進の際の路面水平判定および路面角度補正の制御フローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンされた場合に制御部228R2(照射制御部228R)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフされた場合に終了する。また、このフローは、実施形態1の制御フローに適宜組み込まれる。
【0077】
まず、制御部228R2は、車両停止中であるか判断する(S201)。車両停止中でない場合(S201のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。車両停止中である場合(S201のY)、制御部228R2は、車両300の運動加速度が所定値以上であるか判断する(S202)。すなわち、制御部228R2は、車両300が発進したか判断する。運動加速度が所定値未満である場合(S202のN)、制御部228R2は、車両300の運動加速度が所定値以上であるか繰り返し判断する(S202)。運動加速度が所定値以上である場合(S202のY)、制御部228R2は、ハンドル角が0°付近であるか判断する(S203)。
【0078】
ハンドル角が0°付近でない場合(S203のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。ハンドル角が0°付近である場合(S203のY)、制御部228R2は、路面水平判定を実施する(S204)。そして、制御部228R2は、路面が水平であるか判断する(S205)。路面が水平でない場合(S205のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。路面が水平である場合(S205のY)、制御部228R2は、路面角度θrの基準値を0°に近づけるように補正し(S206)、本ルーチンを終了する。
【0079】
図6は、実施形態2に係る車両用灯具システムにおける車両停止の際の路面水平判定および路面角度補正の制御フローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンされた場合に制御部228R2(照射制御部228R)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフされた場合に終了する。また、このフローは、実施形態1の制御フローに適宜組み込まれる。
【0080】
まず、制御部228R2は、車両走行中であるか判断する(S301)。車両走行中でない場合(S301のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。車両走行中である場合(S301のY)、制御部228R2は、車両300の運動減速度が所定値以上であるか判断する(S302)。運動減速度が所定値未満である場合(S302のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。運動減速度が所定値以上である場合(S302のY)、制御部228R2は、ハンドル角が0°付近であるか判断する(S303)。
【0081】
ハンドル角が0°付近でない場合(S303のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。ハンドル角が0°付近である場合(S303のY)、制御部228R2は、車速センサ312の検出値から車速が0であるか判断する(S304)。車速が0でない場合(S304のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。車速が0である場合(S304のY)、制御部228R2は、路面水平判定を実施し(S305)、路面が水平であるか判断する(S306)。路面が水平でない場合(S306のN)、制御部228R2は、本ルーチンを終了する。路面が水平である場合(S306のY)、制御部228R2は、路面角度θrの基準値を0°に近づけるように補正し(S307)、本ルーチンを終了する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具システム200では、照射制御部228L,228Rが、車両が発進する際および車両が停止する際の少なくとも一方のタイミングで路面の水平判定を実施して、その結果に応じて路面角度θrの基準値を補正する。そのため、車両走行中に車両姿勢角度θvが変化した場合であっても、当該変化を考慮した路面角度θrの基準値を得ることができるため、オートレベリング制御の精度をさらに高めることができる。
【0083】
(実施形態3)
実施形態3に係る車両用灯具システム200は、オートレベリング制御において車両停止中に生じ得る路面角度θrの変化を考慮するものである。以下、本実施形態について説明する。なお、車両用灯具システム200の主な構成や、オートレベリング制御の主なフロー、形成可能な配光パターンの形状などは実施形態1と同様であるため、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
【0084】
実施形態1では、車両停止中の車両傾斜角度(合計角度θ)の変化を車両姿勢角度θvの変化と推定している。これにより、簡単な制御構造でオートレベリング制御を高精度に実施することができる。しかしながら、稀ではあるものの、車両停止中に路面角度θrが変化する場合がある。例えば、車両300が船舶やキャリアカー等で運送、牽引された場合などは、車両停止中に路面角度θrが変化し得る。そのため、車両走行中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定した場合、実際の車両姿勢角度θvと推定された車両姿勢角度θvとの間に誤差が生じる可能性がある。
【0085】
そこで、本実施形態では、合計角度θと路面角度θrの基準値とから得られる車両姿勢角度θvが所定の範囲に含まれるか判定され、その判定結果に応じてオートレベリング制御が実施されるか、あるいはオートレベリング制御が停止される。
【0086】
制御部228R2は、加速度センサ316の検出値から導出された合計角度θと路面角度θrの基準値とから得られる車両姿勢角度θvが所定の範囲を超える場合に、保持している車両姿勢角度θvの基準値を用いて灯具ユニット10の光軸位置を決定する。計算された車両姿勢角度θvが所定の範囲に含まれる場合は、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvを用いて光軸位置を決定する。これにより、他車両の運転者にグレアを与えるおそれを低減しながら自車両の運転者の視認性向上を図ることができる。前記「所定の範囲」は、例えば空車状態での車両姿勢角度θvから荷室に最大荷重が掛けられた状態での車両姿勢角度θvの範囲、すなわち、車両300が実質的にとることができる車両姿勢角度θvの範囲に、マージンとして0.1°を加えた範囲である。計算された車両姿勢角度θvがこの範囲を超える場合は、計算された車両姿勢角度θvが実際の車両姿勢角度θvと異なると推定することができる。
【0087】
なお、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvが所定の範囲を超える場合に、その後の光軸位置の調節を指示する制御信号の生成を禁止するようにしてもよい。具体的には、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvが所定の範囲を超える場合に、制御信号の生成を停止する(オートレベリング制御の停止)。そして、制御部228R2は、車両制御部302を介してインジケータ(図示せず)を点灯してオートレベリング制御の異常を使用者に報知する。また、制御部228R2は、オートレベリング制御停止情報を生成して、メモリ228R4に記録する。以後、制御部228R2は、ライトスイッチ304の操作等によりオートレベリング制御の実行指示がなされても、メモリ228R4からオートレベリング制御停止情報が読み出されると、オートレベリング制御の実行を回避するとともにインジケータを点灯する。制御部228R2は、ディーラの整備工場などでスイッチ操作、またはCANシステムの通信等により照射制御部228Rに送信されたリセット信号を受信すると、車両姿勢角度θvの基準値および路面角度θrの基準値を0°にリセットする。また、制御部228R2は、オートレベリング制御停止情報を消去または無効化して、オートレベリング制御を実行可能な状態に回復させる。これにより、より確実に他車両の運転者にグレアを与えることを防ぐことができる。
【0088】
また、例えば、イグニッションのオフ時に照射制御部228Rへ電力が供給されない構成であり、メモリ228R4が不揮発メモリでない場合、制御部228R2は、イグニッションオフの際に車両制御部302側から発進されるIG-OFF信号を受信するか、あるいは照射制御部228Rに供給される電源電圧が所定値以下となった場合に、図示しない不揮発メモリに路面角度θrの基準値に加えて車両姿勢角度θvの基準値を記録する。これにより、イグニッションがオフにされても車両姿勢角度θvの基準値を保持することができる。
【0089】
上述した船舶やキャリアカー等による車両300の運送、牽引は、イグニッションがオフにされている状態で行われることが多い。そこで、制御部228R2は、イグニッションがオンにされたときに計算される車両姿勢角度θvについて、所定の範囲に含まれるか否か判定し、その判定結果に基づいて上述の制御を実行してもよい。
【0090】
図7は、実施形態3に係る車両用灯具システムにおける車両姿勢角度θvの判定制御フローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンされた場合に制御部228R2(照射制御部228R)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフされた場合に終了する。また、このフローは、実施形態1の制御フローに適宜組み込まれる。
【0091】
まず、制御部228R2は、合計角度θと路面角度θrの基準値とから車両姿勢角度θvを計算し(S401)、計算された車両姿勢角度θvが所定範囲外であるか判断する(S402)。計算された車両姿勢角度θvが所定範囲外である場合(S402のY)、制御部228R2は、記録されている車両姿勢角度θvの基準値を用いて光軸調節を実施し(S403)、本ルーチンを終了する。計算された車両姿勢角度θvが所定範囲内である場合(S402のN)、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvを用いて光軸調節を実施し(S404)、本ルーチンを終了する。
【0092】
図8は、実施形態3に係る車両用灯具システムにおける車両姿勢角度θvの他の判定制御フローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンされた場合に制御部228R2(照射制御部228R)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフされた場合に終了する。また、このフローは、実施形態1の制御フローに適宜組み込まれる。
【0093】
まず、制御部228R2は、オートレベリング制御停止情報がメモリ228R4に記録されているか判断する(S501)。オートレベリング制御停止情報がある場合(S501のY)、制御部228R2は、オートレベリング制御を停止し、インジケータを点灯する(S502)。続いて、制御部228R2は、リセット信号を検出したか判断する(S503)。リセット信号を検出した場合(S503のY)、制御部228R2は、車両姿勢角度θvの基準値および路面角度θrの基準値を0°にリセットし、オートレベリング制御停止情報を消去し、インジケータを消灯して(S504)、本ルーチンを終了する。リセット信号を検出しない場合(S503のN)、本ルーチンを終了する。
【0094】
オートレベリング制御停止情報がない場合(S501のN)、制御部228R2は、合計角度θと路面角度θrの基準値とから車両姿勢角度θvを計算し(S505)、計算された車両姿勢角度θvが所定範囲外であるか判断する(S506)。計算された車両姿勢角度θvが所定範囲外である場合(S506のY)、制御部228R2は、オートレベリング制御停止情報を生成してメモリ228R4に記録する(S507)。そして、制御部228R2は、オートレベリング制御を停止し、インジケータを点灯する(S502)。続いて、制御部228R2は、リセット信号の検出判断(S503)と、車両姿勢角度θvの基準値および路面角度θrの基準値のリセット、オートレベリング制御停止情報の消去、およびインジケータ消灯の制御(S504)とを実施して本ルーチンを終了する。
【0095】
計算された車両姿勢角度θvが所定範囲内である場合(S506のN)、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvを用いて光軸調節を実施し(S508)、本ルーチンを終了する。
【0096】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具システム200では、照射制御部228L,228Rが、計算された車両姿勢角度θvが所定の範囲に含まれるか判定する。そして、照射制御部228L,228Rは、計算された車両姿勢角度θvが所定の範囲から外れる場合に、保持している車両姿勢角度θvの基準値を用いてオートレベリング制御を実施する。そのため、車両停止中に路面角度θrが変化した場合であっても、当該変化を考慮したオートレベリング制御を実施することができるため、他車両の運転者に与えるグレアを軽減しながら自車両の運転者の視認性を向上させることができる。あるいは、照射制御部228L,228Rは、計算された車両姿勢角度θvが所定の範囲から外れる場合に、オートレベリング制御を停止する。これにより、他車両の運転者に与えるグレアを確実に防ぐことができる。
【0097】
(実施形態4)
実施形態4に係る車両用灯具システム200は、オートレベリング制御の方法が実施形態1と異なる。以下、本実施形態について説明する。なお、車両用灯具システム200の構成は実施形態1と同様であるため、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。また、上述した各実施形態と同様に、本実施形態においても、前照灯ユニット210R側のみの説明を行い前照灯ユニット210L側の説明は適宜省略する。
【0098】
本実施形態のオートレベリング制御では、まず車両300が前述した基準状態におかれる。そして、初期化処理装置のスイッチ操作等により、照射制御部228Rに初期化信号が送信される。制御部228R2は、初期化信号を受けると初期エイミング調整を開始し、灯具ユニット10の光軸Oを初期設定位置に合わせる。また、制御部228R2は、車両300が基準状態にあるときの加速度センサ110の出力値を、路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてメモリ228R4に記録する。
【0099】
車両300が実際に使用される状況において、制御部228R2は、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸調節を回避する。制御部228R2は、光軸調節を指示する制御信号の出力を回避することで光軸調節を回避してもよいし、光軸位置の維持を指示する維持信号を生成し、この維持信号を出力することで光軸調節を回避してもよい。制御信号の出力を回避する場合、制御信号を生成しないことで制御信号の出力を回避してもよいし、制御信号を生成した上で生成した制御信号の出力を回避してもよい。
【0100】
また、制御部228R2は、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化として路面角度θrの基準値を更新する。例えば、制御部228R2は、車両停止時に走行前後での合計角度θの差分Δθ1を算出する。そして、制御部228R2は、メモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値に、得られた差分Δθ1を算入して新たな路面角度θrの基準値を算出し(新θr基準値=θr基準値+Δθ1)、これをメモリ228R4に記録する。
【0101】
制御部228R2は、たとえば次のようにして差分Δθ1を算出する。すなわち、制御部228R2は、車両300の発進直後に、発進直前の合計角度θを合計角度θの基準値としてメモリ228R4に記録する。そして、制御部228R2は、車両停止時に、現在(車両停止時)の合計角度θから合計角度θの基準値を減算して差分Δθ1を算出する。なお、制御部228R2は、加速度センサ316から定期的に加速度を受信し、所定期間分の加速度あるいはその加速度から得られた合計角度θを保持している。前記「発進直後」は、例えば車速センサ312の検出値が0を超えたときからの所定期間である。前記「発進直前」は、例えば車速センサ312の検出値が0を超えたときから所定時間前の時間である。前記「発進直後」および「発進直前」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0102】
車両停止中、制御部228R2は、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化として車両姿勢角度θvの基準値を更新するとともに、更新後の車両姿勢角度θvの基準値を用いて光軸位置の調節を指示する制御信号を生成する。例えば、制御部228R2は、車両停止中に現在の合計角度θとメモリ228R4に記録されている合計角度θの基準値との差分Δθ2を算出する。このとき用いられる合計角度θの基準値は、例えば、車両300の停止後最初の差分Δθ2の算出では差分Δθ1の算出後に更新された基準値、すなわち車両停止時の合計角度θであり、2回目以降の場合は前回の差分Δθ2の算出後に更新された基準値である。そして、制御部228R2は、メモリ228R4に記録されている車両姿勢角度θvの基準値に、得られた差分Δθ2を算入して新たな車両姿勢角度θvの基準値を算出し(新θv基準値=θv基準値+Δθ2)、これをメモリ228R4に記録する。
【0103】
なお、制御部228R2は、路面角度θrの基準値および車両姿勢角度θvの基準値をメモリ228R4に保持することなく、車両停止中の合計角度θの変化量に相当する差分Δθ2だけ光軸Oを変位させるように光軸調節を実施してもよい。
【0104】
図9は、実施形態4に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御フローチャートである。まず、制御部228R2は、車両走行中であるか判断する(S601)。車両走行中である場合(S601のY)、制御部228R2は、車両300が発進直後であるか判断する(S602)。発進直後である場合(S602のY)、制御部228R2は、発進直前の合計角度θを合計角度θの基準値としてメモリ228R4に記録(更新)し(S603)、光軸調節を回避して(S604)、本ルーチンを終了する。発進直後でない場合(S602のN)、制御部228R2は、合計角度θの基準値を更新することなく、光軸調節を回避して(S604)、本ルーチンを終了する。
【0105】
車両走行中でない場合(S601のN)、制御部228R2は、車両停止時であるか判断する(S605)。車両停止時である場合(S605のY)、制御部228R2は、現在の合計角度θから合計角度θの基準値を減算して差分Δθ1を計算する(S606)。そして、制御部228R2は、計算した差分Δθ1とメモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値とから新たな路面角度θrの基準値を計算して、路面角度θrの基準値を更新する(S607)。また、制御部228R2は、現在の合計角度θを新たな合計角度θの基準値としてメモリ228R4に記録し(S608)、本ルーチンを終了する。
【0106】
車両停止時でない場合(S605のN)、この場合は車両停止中であることを意味するため、制御部228R2は、現在の合計角度θから合計角度θの基準値を減算して差分Δθ2を計算する(S609)。制御部228R2は、計算した差分Δθ2とメモリ228R4に記録されている車両姿勢角度θvの基準値とから新たな車両姿勢角度θvの基準値を計算して、車両姿勢角度θvの基準値を更新する(S610)。そして、制御部228R2は、更新した車両姿勢角度θvの基準値に応じて光軸調節を実施する(S611)。また、制御部228R2は、現在の合計角度θを新たな合計角度θの基準値としてメモリ228R4に記録し(S612)、本ルーチンを終了する。
【0107】
左側の前照灯ユニット210Lについては、照射制御部228Lが同様の制御を実行してもよいし、照射制御部228L,228Rの一方が車両姿勢角度θvや路面角度θrを計算し、他方は計算された車両姿勢角度θvや路面角度θrを取得して光軸Oを調節してもよい。
【0108】
以上説明したように、本実施形態のオートレベリング制御によっても、オートレベリング制御をより高精度に実施することができる。また、本実施形態のオートレベリング制御では、車両走行中の合計角度θの変化である差分Δθ1を路面角度θrの基準値に加算して新たな路面角度θrを導出し、車両停止中の合計角度θの変化である差分Δθ2を車両姿勢角度θvの基準値に加算して、新たな車両姿勢角度θvを導出している。そのため、実施形態1のオートレベリング制御で生じ得る、路面角度θrの基準値および車両姿勢角度θvの基準値への誤差の累積を回避することができる。
【0109】
なお、各実施形態に係る車両用灯具システム200は本発明の一態様である。この車両用灯具システム200は、光軸Oを調節可能な灯具ユニット10と、水平面に対する車両300の傾斜角度を検出可能な加速度センサ316(傾斜検出部)と、灯具ユニット10を制御するための照射制御部228L,228Rとを備え、照射制御部228L,228Rにより上述したオートレベリング制御を実行する。
【0110】
本発明の他の態様としては、制御装置としての照射制御部228L,228Rを挙げることができる。照射制御部228L,228Rは、傾斜検出装置から水平面に対する車両300の傾斜角度を受信するための受信部228L1,228R1と、上述したオートレベリング制御を実行するための制御部228L2,228R2と、制御部228L2,228R2により生成された制御信号をレベリング制御部236に送信するための送信部228L3,228R3とを備える。車両用灯具システム200における照射制御部228は広義の制御部に相当し、照射制御部228における制御部228L2,228R2は狭義の制御部に相当する。
【0111】
さらに、本発明の他の態様としては、車両用灯具としての灯具ユニット10を挙げることができる。灯具ユニット10は、車両停止中に水平面に対する車両300の傾斜角度が変化した場合に光軸位置が調節され、車両走行中に水平面に対する車両300の傾斜角度が変化した場合に光軸位置が維持される。
【0112】
またさらに、本発明の他の態様としては、車両用灯具の制御方法を挙げることができる。この制御方法は、傾斜検出装置により検出された水平面に対する車両300の傾斜角度に基づいて灯具ユニット10の光軸Oを調節する際に、路面に対する車両300の傾斜角度が変化した場合に光軸位置を調節し、水平面に対する路面の傾斜角度が変化した場合に光軸位置を維持する。
【0113】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施形態同士、および上述の各実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0114】
上述の各実施形態における自車両の走行状態の判断(直進しているか否かや、車両300の運動加速度の計算などを含む)や、光軸位置の決定、配光パターンの決定は、車両制御部302および照射制御部228のどちらが実施してもよい。照射制御部228がこれらの判断を実施する場合、各種センサやナビゲーションシステムからの情報が車両制御部302を経由して照射制御部228に送信される。また、照射制御部228がこれらの判断を実施する場合、照射制御部228Lおよび照射制御部228Rの一方または両方がこれらの判断を実施することができる。また、照射制御部228がレベリング制御部236を介さずに光軸調節部としてのレベリングアクチュエータ226を制御してもよい。すなわち、照射制御部228がレベリング制御部236として機能してもよい。車両制御部302がこれらの判断を実施する場合、照射制御部228は、車両制御部302からの指示に基づいてバルブ14の点消灯や、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226、およびモータ238の駆動などを制御する。この場合、車両制御部302がオートレベリング制御を実行する制御装置を構成する。
【0115】
また、車両用灯具システムの機能構成には、次のような変形例を挙げることができる。図10は、変形例に係る車両用灯具システムにおける前照灯ユニット、車両制御部およびレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、上述のように右側の前照灯ユニット210Rおよび左側の前照灯ユニット210Lの構成は基本的に同一であるため、図10では前照灯ユニット210Rおよび前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。
【0116】
レベリングECU100(車両用灯具の制御装置)は、受信部102、制御部104、送信部106、メモリ108、加速度センサ110および温度センサ112を備える。レベリングECU100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。また、加速度センサ110の設置位置も特に限定されず、例えばレベリングECU100の外に設けられてもよい。例えば、加速度センサ110は、車両本体内の任意の位置や前照灯ユニット210内などに設けることができる。また、エアバックシステム等の、車両300が備える他システムのECUに搭載された加速度センサが流用されてもよい。さらに、オートレベリングシステム用の加速度センサ110および他システムの加速度センサの組み合わせ等、複数の加速度センサが用いられてもよい。レベリングECU100の設置位置と、加速度センサ110の設置位置とは、任意に組み合わせることができる。
【0117】
また、本変形例では、傾斜検出装置の一例として加速度センサ110を用いているが、傾斜検出装置は、加速度センサ110に限定されず、例えば、ジャイロセンサや地磁気センサなどの他のセンサを用いてもよい。
【0118】
レベリングECU100には、車両300に搭載された車両制御部302や、ライトスイッチ304が接続されている。車両制御部302やライトスイッチ304から出力される信号は、受信部102によって受信される。また、受信部102は、加速度センサ110や温度センサ112の出力値を受信する。車両制御部302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314等が接続されており、これらのセンサ等から各種情報を取得して、レベリングECU100等に送信することができる。例えば、車両制御部302は、車速センサ312の出力値をレベリングECU100に送信する。これにより、レベリングECU100は、車両300の走行状態を検知することができる。
【0119】
ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号や、前照灯ユニット210によって形成すべき配光パターンを指示する信号、オートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306や、車両制御部302、レベリングECU100等に送信する。例えば、ライトスイッチ304は、オートレベリング制御の実施を指示する信号をレベリングECU100に送信する。これにより、レベリングECU100は上述した各実施形態のオートレベリング制御を開始する。
【0120】
受信部102が受信した信号は、制御部104に送信される。制御部104は、受信部102から送られてきた加速度センサ110の出力値と必要に応じてメモリ108に保持している情報をもとに車両300の傾斜角度の変化を導出して、灯具ユニット10の光軸調節を指示する制御信号を生成する。制御部104は、生成した制御信号を送信部106からレベリングアクチュエータ226に出力する。
【0121】
車両300には、レベリングECU100、車両制御ECU302、および前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介してバルブ14に電力が供給される。
【0122】
なお、本変形例の構成(図10参照)と実施形態1の構成(図2参照)とを対比すると、本変形例のレベリングECU100が実施形態1の照射制御部228(228R,228L)に対応する。また、受信部102が受信部228L1,228R1に、制御部104が制御部228L2,228R2に、送信部106が送信部228L3,228R3に、メモリ108がメモリ228L4,228R4に、加速度センサ110が加速度センサ316に、それぞれ対応する。
【符号の説明】
【0123】
O 光軸、 10 灯具ユニット、 200 車両用灯具システム、 226 レベリングアクチュエータ、 228,228L,228R 照射制御部、 228L1,228R1 受信部、 228L2,228R2 制御部、 228L3,228R3 送信部、 236 レベリング制御部、 300 車両、 316 加速度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10