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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111288
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
A47C7/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093217
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2021032011の分割
【原出願日】2015-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】杉山 慎二
(72)【発明者】
【氏名】田立 征生
(57)【要約】
【課題】振動装置から生じる振動刺激を効果的に伝搬させることができ、覚醒効果を高めることが可能な椅子を提供する。
【解決手段】脚付き椅子は、バックパンF22と、着座者の身体信号を検出する呼吸センサと着座者に振動刺激を加える振動装置35と振動装置35を制御する制御装置U1とを有して着座者を覚醒させる覚醒装置と、を備える。振動装置35は、バックパンF22に設けられた金属製の取付部材37に取り付けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれと、
着座者の身体信号を検出するセンサと前記着座者に振動刺激を加える振動装置と該振動装置を制御する制御装置とを有して前記着座者を覚醒させる覚醒装置と、を備える椅子であって、
前記振動装置は、前記背もたれに設けられた金属部に取り付けられていることを特徴とする椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に係り、特に、椅子の着座者に刺激を付与する覚醒機器を備える椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両運転時の事故の発生を未然に防ぐことを目的として、車両の運転者の覚醒度低下を防止する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、心拍センサ又は呼吸センサ及びモータ等の電気機器を備える車両用シート用いて、振動刺激を着座者に付与する技術が開示されている。
一方、覚醒度の低下を防止するため、換言すると居眠りを防止するために振動刺激を付与する技術は、車両用シートの他、勉強や仕事を効率的に行う目的や、特定の人を呼び出す目的のために脚付き椅子等に用いられ得る。
【0003】
例えば、劇場内や、会議室内にいる特定の人を呼び出す際に用いられる脚付き椅子として、特許文献2には、椅子の座部の内部にモータを有する振動装置(同文献には、振動子と記載。)を備える脚付き椅子が開示されている。
より詳細には、振動装置の下部が圧縮ばねを介して支持され、振動装置の上部が座部の表皮(同文献には、表皮カバーと記載)に触れるように配設されており、表皮を介して着座者に振動刺激を付与する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-220810号公報
【特許文献2】特開平7-322938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載の脚付き椅子においては、振動装置が合成繊維等から成る表皮に接するように設けられているために、振動装置から生じた振動の伝達効率が低く、高い覚醒効果を発揮することは難しかった。
【0006】
さらに、振動が伝搬する範囲は、振動装置に接する表皮の近傍に限られ、覚醒効果をより高めるために広範な範囲に振動を伝搬させるには、大きな振動装置を座部に取り付ける必要があり、コストがかかっていた。
また、振動刺激を大きくするために振動振幅を大きくした場合には、着座者が居眠り状態であることを周囲の人に振動音によって知られることによって、不都合が生じることも考えられる。
【0007】
また、振動装置を椅子に取り付ける場合に、振動装置の体積分、椅子の厚みが大きくなることが考えられる。
この場合、椅子に凹部を形成して、この凹部に振動装置を収容するようにした場合には、その凹部によって、椅子の厚みを抑えることができるが、剛性を維持することが困難となることがあった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、振動刺激を効果的に着座者に付与して覚醒効果を高めることにある。
他の目的は、背もたれを広範な範囲で振動させることにある。
他の目的は、周囲の人に居眠り状態であることを知られないようにすることにある。
さらに他の目的は、椅子の厚みの増加を防止しつつ、剛性を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明に係る椅子によれば、背もたれと、着座者の身体信号を検出するセンサと前記着座者に振動刺激を加える振動装置と該振動装置を制御する制御装置とを有して前記着座者を覚醒させる覚醒装置と、を備える椅子であって、前記振動装置は、前記背もたれに設けられた金属部に取り付けられていることにより解決される。
【0010】
上記構成によれば、振動装置が金属部に取り付けられていることで、樹脂材料から成るものに取り付けられている場合と比較して、振動装置から生じる振動刺激を着座者に金属部を介して効果的に伝搬させることができ、覚醒効果を高めることができる。
【0011】
前記背もたれは、前記金属部に接触するバックフレームを備え、前記背もたれに広く振動を拡散する振動拡散部が設けられていると好ましい。
上記構成によれば、振動拡散部が設けられていることで、振動装置から金属部に伝わった振動刺激を背もたれに効果的に広く拡散することができ、覚醒効果を高めることができる。
【0012】
また、前記振動拡散部は、周辺よりも突出して形成されたリブであると好ましい。
上記構成によれば、振動拡散部がリブ状であることで、取付工数のかかる別部材を用いずに、振動刺激を拡散することができる。
【0013】
また、前記背もたれは、前記金属部を有する背もたれ本体を備え、前記振動装置の少なくとも一部は、前記背もたれ本体の背面の上端部と下端部とを結んだ線よりも前側に配置されていると好ましい。
上記構成によれば、振動装置の少なくも一部が、背もたれ本体の背面の上端部と下端部とを結んだ線よりも前側に配置されていることで、この線よりも後ろ側に配置されている場合と比較して、振動刺激を着座者に効果的に伝搬させることが可能となる。
【0014】
また、前記背もたれには、複数の線状の金属フレームが設けられており、前記振動装置は、前記複数の線状の金属フレームの間に配置されていると好ましい。
上記構成によれば、振動装置を複数の金属フレームの間に配置することで、振動装置を金属フレームによって保護することができる。
【0015】
また、前記振動装置は、一方に長尺に形成されており、長尺方向が上下方向となるように前記背もたれに取り付けられていてもよい。
着座者の背もたれとの接触範囲は上下方向に広い。上記構成によれば、この接触範囲に沿うように長尺方向が上下方向となるように振動装置が取り付けられていることにより、背もたれの上下に広い範囲で振動を伝搬させることができるため、着座者の覚醒効果を向上させることができる。
【0016】
前記椅子の座部と、該座部と前記背もたれを接続する接続部材と、を備え、前記振動装置と前記制御装置とは、ハーネスで接続されており、該ハーネスは、前記接続部材内を通り、通常の状態において撓んだ状態で配設されていると好ましい。
上記構成によれば、ハーネスが接続部材内を通って配設されていることで、椅子の外部へのハーネスの張り出しを抑制することができ、外部の物がハーネスに引っ掛かることを抑制して、ハーネスを保護することができる。
さらに、ハーネスが撓んだ状態で配設されていることで、背もたれをリクライニングさせる等によって、ハーネスに引張力が加わったときに伸長することができることで、ハーネスに加わる荷重を逃がすことができる。
【0017】
また、前記振動装置は、前記背もたれの下部に設けられていると好ましい。
背もたれの下部は、着座者の姿勢によって離れることの少ない着座者の腰部に対向するため、上記構成によれば、振動装置が背もたれの下部に設けられていることで、着座者に安定して刺激を伝播させることが可能となり覚醒効果を向上させることができる。
【0018】
また、前記背もたれは、前記金属部を有する背もたれ本体と、該背もたれ本体に取り付けられるカバーとを備え、前記振動装置は、前記カバーで覆われていると好ましい。
上記構成によれば、振動装置がカバーで覆われていることで、振動発生の際に生じる音の遮断効果が高まり、着座者以外の周囲の人に振動装置の作動が認知されることを抑制できる。
【0019】
また、前記背もたれ本体又は前記カバーにおける前記振動装置の周囲には、空間を物理的に遮る遮蔽板が設けられていると好ましい。
上記構成によれば、振動装置の周囲に遮蔽版が設けられていることにより、振動装置から生じる音の遮音効果を一層高めることができる。
【0020】
また、前記背もたれ本体又は前記カバーは、周辺よりも突出する複数の突出部を備え、前記振動装置は、前記複数の突出部を避けた位置に設けられていると好ましい。
複数の突出部を備えることで背もたれの剛性を高めることができ、振動装置が突出部を避けた位置に設けられていることで、背もたれの厚み増加を抑制することができる。
【0021】
また、前記背もたれ本体は、バックフレームと、該バックフレームの表面側に設けられるパッド部と、該パッド部を表面側から覆う表皮と、を備え、前記振動装置を覆う前記カバーは、前記表皮の端末を挟みこむように前記バックフレームに取り付けられ、前記振動装置に接触していると好ましい。
上記構成によれば、振動装置が振動すると、振動装置に接触するカバー、カバーに接触する表皮、表皮に触れる着座者へと振動が伝搬することとなる。このため、着座者の覚醒効果を高めることができる。
【0022】
また、前記背もたれ本体は、前記金属部の他に前記背もたれ本体の全体に亘って形成された樹脂部を備え、前記振動装置は、前記金属部及び前記樹脂部に接触していると好ましい。
上記構成によれば、振動装置が金属部の他に背もたれ本体全体に亘って形成された樹脂部に接続されていることで、背もたれ本体全体、ひいては背もたれ全体を振動させることができるため、覚醒効果を高めることができる。
【0023】
また、前記制御装置及び前記振動装置に電力を供給するバッテリを備え、前記制御装置及び前記バッテリは、前記振動装置の上方に設けられていると好ましい。
上記構成によれば、振動装置の上方の空間を制御装置及びバッテリを取り付けるスペースとして有効活用することが可能となる。
【0024】
前記制御装置及び前記振動装置に電力を供給するバッテリを備え、
前記制御装置及び前記バッテリは、前記振動装置の左右に振り分けられて設けられていると好ましい。
上記構成によれば、振動装置の左右の空間を制御装置及びバッテリを取り付けるスペースとして有効活用することが可能となる。
さらに、制御装置及びバッテリを振動装置の上方に配設する場合と比較して、背もたれの重心を下方にすることができるため、椅子の安定感を高めることが可能となる。
【0025】
また、前記振動装置、前記制御装置及び前記バッテリの少なくともいずれか一つは、前記背もたれの背面の凹部に配置されていると好ましい。
上記構成によれば、振動装置、制御装置及びバッテリを取り付けることによる背もたれの厚み増加を抑制することができる。
【0026】
また、前記振動装置、前記制御装置及び前記バッテリは、保持部材に取り付けられてユニット化されていると好ましい。
上記構成によれば、振動装置、制御装置及びバッテリが保持部材によりユニット化されていることにより、振動装置、制御装置及びバッテリの背もたれへの取り付けが容易になるとともに、配線をコンパクトにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、振動装置から生じる振動刺激を効果的に伝搬させることができ、覚醒効果を高めることができる。
また、本発明によれば、振動刺激を背もたれに効果的に広く拡散することができ、覚醒効果を高めることができる。
また、本発明によれば、取付工数のかかる別部材を用いずに、振動刺激を拡散することができる。
また、本発明によれば、振動装置を金属フレームによって保護することができる。
また、本発明によれば、背もたれの上下に広い範囲で振動を伝搬させることができるため、着座者の覚醒効果を向上させることができる。
また、本発明によれば、外部の物がハーネスに引っ掛かることを抑制して、ハーネスを保護することができ、ハーネスに加わる荷重を逃がすことができる。
さらに、本発明によれば、着座者に安定して刺激を伝播させることが可能となり覚醒効果を向上させることができる。
また、本発明によれば、着座者以外の周辺の人に振動装置の作動が認知されることを抑制できる。
さらに、本発明によれば、振動装置から生じる音の遮音効果を一層高めることができる。
また、本発明によれば、背もたれの剛性を高めることができ、背もたれの厚み増加を抑制することができる。
さらに、本発明によれば、背もたれ本体全体、ひいては背もたれ全体を振動させることができるため、覚醒効果を高めることができる。
また、本発明によれば、振動装置の上方の空間を制御装置及びバッテリを取り付けるスペースとして有効活用することが可能となる。
また、本発明によれば、振動装置の左右の空間を制御装置及びバッテリを取り付けるスペースとして有効活用することが可能となる。
さらに、本発明によれば、制御装置及びバッテリを振動装置の上方に配設する場合と比較して、背もたれの重心を下方にすることができるため、椅子の安定感を高めることが可能となる。
また、本発明によれば、振動装置、制御装置及びバッテリを取り付けることによる背もたれの厚み増加を抑制することができる。
さらに、本発明によれば、振動装置、制御装置及びバッテリの背もたれへの取り付けが容易になるとともに、配線をコンパクトにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る脚付き椅子の外観図である。
図2】脚付き椅子に取り付けられる制御装置、バッテリ及び保持カバー等の分解斜視図である。
図3】制御装置及びバッテリを保持した状態の保持カバーを示す斜視図である。
図4】背もたれ本体に対する振動装置の配置を示す図であり、脚付き椅子の側面図である。
図5】振動装置が取り付けられた背もたれ本体の背面を示す図である。
図6】振動装置、制御装置及びバッテリが取り付けられた背もたれ本体の背面を示す図である。
図7】制御装置及びバッテリが他の配置で取り付けられた背もたれ本体の背面を示す図である。
図8】他の例に係るリブを有するバックフレームの背面を示す図である。
図9】バックパンにおける振動装置の配置を示す、図1のIX-IX断面図である。
図10】バックパンに制御装置及びバッテリを保持する保持カバーを取り付ける構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、椅子に関するものであり、特に、振動装置を有する覚醒機器(居眠り防止機器)を備える椅子に関するものである。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
以下、本発明の一実施形態に係る脚付き椅子S、並びに脚付き椅子Sに設けられたECU7、バッテリ8及び振動装置35について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下において、前後方向は、椅子の前後方向を示すものとし、左右方向は椅子の左右方向を示すものとして椅子の幅方向ともいう。
【0030】
まず、図1図4を主に参照して、脚付き椅子Sの主な構成について説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態に係る脚付き椅子Sの外観図、図2は、脚付き椅子Sに取り付けられる制御装置U1、バッテリ8及び保持カバー71等の分解斜視図、図3は、制御装置U1及びバッテリ8を保持した状態の保持カバー71を示す斜視図、図4は、背凭れ本体30に対する振動装置35の配置を示す図であり、脚付き椅子Sの側面図である。
脚付き椅子Sは、主に、脚部材F3と、脚部材F3に取り付けられて着座者の臀部を支持するクッションパンF21と、クッションパンF21に連結された背もたれ部であるバックパンF22と、覚醒機器Uとから構成されている。
【0031】
脚部材F3は、4本に分岐する足部F31と、足部F31に連続的に形成された支柱筒F30とから構成されて、主に樹脂材料から形成されている。
また、足部F31は、本実施形態においては4本に分岐する構成となっているが、3本以上に分岐する構成であってもよい。
【0032】
支柱筒F30は、足部F31の中央に固定されて上方に延在している。支柱筒F30の中に、後述する支柱F21aが通されて固定される。
【0033】
クッションパンF21は、本発明に係る座部に相当するものである。クッションパンF21は、図4に示すように、表皮付きパッド部F21eと、表皮付きパッド部F21eの裏面に取り付けられる座部カバー36と、から構成される。クッションパンF21の裏面における椅子の幅方向の両外側の部位に、留め具に相当するタッピングネジN1(図2参照)によって、保持カバー71が取り付けられている。
【0034】
表皮付きパッド部F21eは、ウレタン等のクッション材から成る図示せぬパッド部と、パッド部を覆う図示せぬ表皮とから構成されており、表皮とパッド部の間に後述する呼吸センサ9が配設されている。
【0035】
座部カバー36は、樹脂材料から成り、制御装置U1及びバッテリ8を保持して表皮付きパッド部F21eの裏面に取り付けられた保持カバー71を含め、表皮付きパッド部F21eの裏面全体を覆っている。
【0036】
バックパンF22は、クッションパンF21の後部と接続部材34によって連結されており、クッションパンF21から略鉛直上方に延在して形成されている。
ここで接続部材34は、中空部分34bを有する樹脂部34aと、中空部分34bを通る金属製の2本の連結パイプF22cと、から構成されている(図5参照)。
バックパンF22は、図4に示すように、着座者側に設けられた背凭れ本体30と、背凭れ本体30の裏面全体を覆う背凭れカバー32と、から構成されている。
背凭れ本体30は、基材と成る樹脂製のバックフレーム30aと、バックフレーム30aの椅子の前後方向前側に設けられたクッション材から成るパッド部30bと、パッド部30bを覆う表皮30dとから構成されている(図9参照)。
背凭れ本体30の中央には、図1に示すように振動装置35が取り付けられており、背凭れカバー32に覆われている。
【0037】
振動装置35は、詳細については後述するが、覚醒機器Uを構成部品であり、ECU7の制御信号に応じて着座者に振動刺激を付加するものである。
振動装置35は、図4に示すように、背凭れ本体30の裏面の上端部と下端部とを結んだ平面A-Aよりも前側に少なくとも一部配設されている。換言すると、振動装置35は、振動装置35の少なくとも一部が背凭れ本体30の裏面に埋め込めまれるように、背凭れ本体30に取り付けられている。
このように振動装置35が背凭れ本体30に取り付けられていることで、振動の発生源である振動装置35が着座者に接触する背凭れ本体30の表面側の近くに配設されることになるため、着座者に振動刺激を効果的に伝搬することができる。
【0038】
また、背凭れカバー32によって振動装置35が覆われていることで、振動装置35の保全性を高めることができ、美観を良好にすることができ、さらに、周囲に振動音が漏れることを抑制することができる。
【0039】
<覚醒機器について>
次いで、覚醒機器Uについて説明する。
本実施形態に係る覚醒機器Uは、ECU7、バッテリ8、呼吸センサ9及び振動装置35から主に構成されている。
【0040】
振動装置35は、公知のアンバランスマスモータから成る所謂「振動モータ」を備える装置である。
【0041】
ECU7は、電気制御を総合的に実行する中枢機能であり、本例においては、呼吸の間隔を示すデジタル信号に変換された電位差信号を基に、振動装置35を駆動制御する機能を有する。
本実施形態に係るECU7は、演算制御用のCPU、ROM、RAM等を備えて構成された、ハード的には汎用のECUである。
ECU7に設けられた図示せぬコネクタの接続口に、図1示す呼吸センサ9に接続されたハーネス11、振動装置35に接続された図4に示すハーネス33、及びバッテリ8に接続された図示せぬケーブルが接続されている。
【0042】
特に、ハーネス33は、接続部材34の中空部分34bを通り、振動装置35と保持カバー71内のECU7とを撓んだ状態で接続している。
ハーネス33は、接続部材34の中空部分34bを通って配設されていることで、接続部材34の内壁に抑えられて、脚付き椅子Sの外方への張り出しが抑制されている。
さらに、撓んだ状態で、振動装置35とECU7とを接続していることで、バックパンF22がリクライニングすることによってハーネス33に引張力が加わったとしても、撓み量の分だけ引張力が生じるのを回避することができる。このため、ハーネス33が断線することを防止することができる。
【0043】
なお、呼吸センサ9からハーネス11を介してECU7に入力される信号は、信号処理回路によってデジタル信号に変換された電位差信号であり、ハーネス33を介して出力されるものは、振動装置35を駆動するための電力である。
RAMは、演算制御中の信号及び入出力される信号を含むパラメータを一時記憶するもので、デジタル信号に変換された電位差信号その他の信号を格納する格納部として機能する。
【0044】
ROMは、CPUが実行するプログラム及び所定値のパラメータを記憶するものであり、例えば、所定の基準値を設定する基準値設定部や、基準値に基づき覚醒状態を判定する判定部、振動装置35を駆動する駆動部等がプログラムとして記録されている。
この駆動部は、CPUの指示に応じて電力を供給することにより振動装置35を駆動する機能を有する。
このCPUの指示信号は、呼吸センサ9からの信号を演算することにより形成される。
つまり、呼吸センサ9から送信される信号により、着座者の覚醒状態を判断し、覚醒状態ではないと判断した場合に、振動装置35を駆動するための信号がCPUから発信されるよう構成されている。なお、当該構成は公知の構成が使用されていればよく、呼吸センサ9の代わりに心拍センサを用いるようにしてもよい。
【0045】
覚醒機器Uを構成するECU7は、図3に示すように、保持カバー71によってクッションパンF21の下面側に取り付けられており、振動装置35は、図1に示すように、バックパンF22の裏面、つまり、着座者側の逆側の面の中央部付近に取り付けられている。
【0046】
バッテリ8は、ECU7及び振動装置35に電力を供給する機能を有し、本実施形態においては板状に形成されている。バッテリ8は、後述する制御装置U1の下方に重ねて取り付けられている。バッテリ8は、図示せぬ充電コードが接続されることによって家庭用電源から充電されるものである。そして、バッテリ8は、スマートフォン等の充電用に使用されるバッテリを転用することが可能である。
なお、バッテリ8は、給電式のものに限定されず、着脱式のものであってもよい。
【0047】
<ECU及びバッテリの取り付けについて>
次いで、図2及び図3を特に参照して、ECU7及びバッテリ8の取り付けについて説明する。
本実施形態においては、ECU7は、ベース部材72及びカバー部材73によって覆われて支持され、さらにバッテリ8とともに、保持カバー71によって保持されてクッションパンF21に取り付けられる。なお、ECU7とベース部材72とカバー部材73とを組み合わせたユニットを制御装置U1ともいう。
【0048】
保持カバー71は、本発明に係る保持部材に相当するものであり、図4に示すように、上方が開放されており鉛直断面が略コ字形状である収容凹溝71aと、その上部の両端から外側上方へとフランジ状に延出するパン取付部71bとを備え、樹脂材料で形成されている。
パン取付部71bには、タッピングネジN1が通されるパン取付孔71cが形成されている。
【0049】
ベース部材72及びカバー部材73は、鉛直断面が略コ字形状の枠体である。
詳細には、ベース部材72は、略コ字形状の断面を有して、幅方向長さよりも長く前後方向に延在している。
一方、カバー部材73は、略コ字形状の断面を有して、前後方向長さよりも長く幅方向に延在している。
これらは、上下に重ね合わせられることで、内部にECU7の格納空間を形成する。
そして、ベース部材72とカバー部材73とは、ECU7を格納した状態で固定ネジN2によって締結され、バッテリ8の上に積層されて、収容凹溝71a内に保持される。
【0050】
制御装置U1は、バッテリ8とともに保持カバー71の溝内部に格納されている。この状態で、保持カバー71は、パン取付部71b(本例では2個存在する)に形成されたパン取付孔71c(本例では4個存在する)からタッピングネジN1により、クッションパンF21に留め付けられる。
【0051】
次いで、図5図8を主に参照して、振動装置35、制御装置U1及びバッテリ8のバックパンF22への取り付け位置について説明する。
ここで、図5は、振動装置35が取り付けられた背凭れ本体30の背面を示す図、図6は、振動装置35、制御装置U1及びバッテリ8が取り付けられた背凭れ本体30の背面を示す図、図7は、制御装置U1及びバッテリ8が他の配置で取り付けられた背凭れ本体30の背面を示す図、図8は、他の例に係るリブ30k,30mを有するバックフレーム300の背面を示す図である。
【0052】
振動装置35は、図5に示すように、バックフレーム30aの下部に取り付けられた金属製の取付部材37上に、長尺方向が上下方向となる向きで取り付けられている。振動装置35は、取付部材37が背凭れ本体30を構成するバックフレーム30aに取り付けられることによって、背凭れ本体30に取り付けられることとなる。
【0053】
特に、振動装置35は、金属製の取付部材37に取り付けられていることで、振動装置35から生じた振動が取付部材37を介して着座者に伝搬することで、減衰を抑制して効果的に伝搬することができる。
また、着座者とバックパンF22との接触範囲は上下方向に広いため、振動装置35が、その長尺方向が上下方向となる向きで取り付けられていることで、着座者との接触範囲に広く振動を伝搬させることが可能となる。
【0054】
さらに、バックパンF22の下部は着座者の腰部に対向することが多く、着座者の腰部は姿勢によって離れることが少ない。このため、振動装置35がバックパンF22の下部に設けられていることで、着座者に安定して刺激を伝播させることが可能となり覚醒効果を向上させることができる。
【0055】
取付部材37は、一体的に形成された上端部37a、中部37g及び下端部37bから構成されており、バックフレーム30aに形成された凹部31a内に配設されている。
【0056】
上端部37a及び下端部37bは、水平断面がΩ状に形成された板状の部位であり、椅子の上下において対称に形成されている。
詳細には、上端部37a及び下端部37bは、水平断面コの字断面の中央部分37c,37eと、中央部分37c,37eのそれぞれ端部から、椅子の幅方向外側に延在する両端部分37d,37fとから構成されている。
取付部材37は、この両端部分37d,37fでタッピングネジ38によってバックフレーム30aの裏面に固定されている。
【0057】
中部37gは、振動装置35が取り付けられる部位であり、上端部37aにおける中央部分37cの上端、下端部37bにおける中央部分37eの下端に連続して形成されて、バックフレーム30aに沿って上下に延在する鉛直断面コの字形状の部材である。
中部37gは、上端部37a及び下端部37bの中央部分37c,37eの椅子の幅方向両端側それぞれから間隔を空けて形成され、中央部分37c,37eよりも椅子の幅方向に短く形成されている。
【0058】
このように形成された、上端部37a及び下端部37bの中央部分37c,37eの椅子の幅方向両端のそれぞれと中央部分37eとの間に2本の連結パイプF22cのそれぞれが配設されて、取付部材37に溶接されている。
つまり、中部37gに取り付けられた振動装置35は、2本の連結パイプF22cに椅子の幅方向両側を保護されることとなる。なお、この連結パイプF22cは、本発明に係る線状の金属フレームに相当する。
【0059】
また、バックフレーム30aの裏面には、格子状に形成されたリブ30jが中央の凹部31a以外の部分において、椅子の前後方向後ろ側に突出して形成されている。
このようにリブ30jが形成されていることで、完全に空間を有しないように形成されたものよりも軽量化することが可能となる。
また、振動装置35及び背凭れ本体30を配設するために形成された凹部31aによる剛性の低下を、リブ30jによって抑制することができる。
さらに、振動装置35から生じる振動を、格子状に全体的に形成されたリブ30jによって、バックフレーム30a全体に伝搬させることが可能となる。
【0060】
さらには、背凭れカバー32をバックフレーム30aに取り付けた状態において、リブ30jと背凭れカバー32との間で複数の閉空間が形成されることにより、振動装置35によって生じる振動による音波の伝搬を遮断することが可能となる。
このため、脚付き椅子Sの周囲の人に、振動装置35が作動していることを音によって気づかれることを抑制することができる。
【0061】
また、上記においては、制御装置U1及びバッテリ8を、クッションパンF21の裏面に取り付けるものとして説明したが、本発明はこのような構成に限定されず、例えば、図6に示すように、バックフレーム30aの裏面に取り付ける、つまり、バックパンF22に取り付けるようにしてもよい。
特に、バックフレーム30aにおける制御装置U1及びバッテリ8を、取付部材37の上方に取り付けるものとし、取付部位に凹部31b,31cを形成するとよい。なお、凹部31b,31cの底面は、制御装置U1及びバッテリ8の当接面よりも大きく形成されている。
このようにすることで、下部に取り付けられた取付部材37の上方のスペースを、制御装置U1及びバッテリ8の取付スペースとして有効に活用することができる。
【0062】
また、制御装置U1及びバッテリ8を取り付けるスペースがあるならば、図7示すように、取付部材37を椅子の幅方向において挟むように、制御装置U1及びバッテリ8が配設されていると好ましい。
【0063】
このような構成によれば、バックパンF22の重心を、制御装置U1及びバッテリ8が取り付けられる下側することができるため、脚付き椅子Sの重量バランスを高くすることができ、脚付き椅子Sを倒れづらくすることができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、格子状のリブ30jを備えるものとして説明したが、本発明は、このような構成に限定されない。
例えば図8に示すように、バックフレーム300に、振動装置35が取り付けられた取付部材37の近傍から放射状に伸びるリブ30kが形成されていてもよい。さらに、バックフレーム300に、リブ30kに交差する方向に延びてリブ30kを連結する円弧状のリブ30mが形成されているとより好ましい。
上記構成によれば、振動装置35から生じた振動を放射状に延びるリブ30kによって、バックフレーム300全体に振動を伝搬することができ、リブ30mによって、リブ30kが連結されていることで、振動を偏りなくバックフレーム300全体に伝搬することができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、振動装置35が金属部に相当する取付部材37上に取り付けられているものとして説明したが、振動装置35に接触する部材は、取付部材37だけでなく、バックフレーム30aに直接接触するようにしてもよい。
例えば、取付部材37の一部に貫通孔を形成して、その貫通孔にバックフレーム30aの一部を挿通させて振動装置35に触れさせることができる。
このようにすることで、振動装置35が金属部である取付部材37に触れることで振動刺激を高めつつ、バックフレーム30aに触れることで、バックフレーム30aへの全体に亘る振動の伝播の効率を高めることができる。
【0066】
(変形例)
次いで、変形例に係る構成について、図9及び図10を参照して説明する。ここで、図9は、バックパンF22における振動装置35の配置を示す、図1のIX-IX断面図、図10は、バックパンF22に振動装置35、制御装置U1及びバッテリ8を保持する保持カバー74を取り付ける構成例を示す平面図である。
【0067】
バックフレーム30aに背凭れカバー32を取り付ける場合には、図9に示すように、パッド部30bの周縁部、及び表皮30dの端末30eをバックフレーム30aとの間で挟みこむように背凭れカバー32を取り付け、振動装置35に背凭れカバー32を接触させると好ましい。
このような構成によれば、振動装置35から生じた振動の伝播ルートとして、図9において矢印で示すように、取付部材37、バックフレーム30a、パッド部30b及び表皮30dを介して伝わるルートR1と、背凭れカバー32、表皮30d及びパッド部30bを介して伝わるルートR2とを形成することができる。このようにすることで、より振動の伝播効率を高めることができる。
【0068】
また、制御装置U1及びバッテリ8についてのバックパンF22へ取り付けは、図6及び図7に示したような個別に取り付けられるものに限定されない。
例えば、図4に示したクッションパンF21に保持カバー71によって制御装置U1とバッテリ8をユニット化して取り付ける構成と同様に、図10に示すように、振動装置35を追加的に保持する保持カバー74を用いて取り付けるようにしてもよい。
つまり、バックパンF22の前後方向の厚みが問題とならなければ、振動装置35、制御装置U1及びバッテリ8を前後にまとめて配設するようにしてもよい。
このようにすれば、振動装置35と制御装置U1とバッテリ8との配線を短くすることができ、バックパンF22への取り付けが容易となる。
【符号の説明】
【0069】
F21 クッションパン(座部)
F21a 支柱
F21e 表皮付きパッド部
F22 バックパン(背もたれ)
F22c 連結パイプ(線状の金属フレーム)
F3 脚部材
F30 支柱筒
F31 足部
N1 タッピングネジ(留め具)
N2 固定ネジ
R1,R2 ルート
S 脚付き椅子
U 覚醒機器
U1 制御装置
11 ハーネス
30 背もたれ本体
30a,300 バックフレーム
30b パッド部
30c 樹脂部
30d 表皮
30e 端末
30j,30k,30m リブ(振動拡散部、遮蔽板、突出部)
31a,31b,31c,31d,31e 凹部
32 背もたれカバー
33 ハーネス
34 接続部材
34a 樹脂部
34b 中空部
35 振動装置
36 座部カバー
37 取付部材(金属部)
37a 上端部
37b 下端部
37c 中央部分
37d 両端部分
37e 中央部分
37f 両端部分
37g 中部
38 タッピングネジ
7 ECU
71,74 保持カバー(保持部材)
71a 収容凹溝
71b パン取付部
71c パン取付孔
72 ベース部材
73 カバー部材
8 バッテリ
9 呼吸センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10