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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111333
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
A61B3/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093652
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2017059369の分割
【原出願日】2017-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 尚樹
(57)【要約】
【課題】被検眼に圧縮空気を吹き付けて眼圧を測定する眼圧計において、被検眼への空気の噴射を効果的に抑える。
【解決手段】被検眼に吹き付ける空気を溜めるチャンバー室120と、チャンバー室120を加圧するポンプ110と、チャンバー室120とポンプ110との間に配置された開閉バルブ141と、被検眼に測定光を照射すると共に被検眼からの反射光を検出する光学系123とを備え、開閉バルブ141を開とした状態でポンプ110によりチャンバー室120を加圧することで被検眼に高圧空気を吹き付け、前記反射光の光量に基づき、前記開閉バルブ141が閉鎖される眼科装置100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に吹き付ける空気を溜めるチャンバー室と、
前記チャンバー室につながる加圧室を備え、前記チャンバー室を加圧するポンプと、
前記チャンバー室と前記加圧室との間に配置された開閉弁と、
前記被検眼に測定光を照射すると共に前記被検眼からの反射光を検出する光学系と
を備え、
前記開閉弁を開とした状態で前記ポンプにより前記チャンバー室を加圧することで前記被検眼に高圧空気を吹き付け、
前記反射光を検出することで得た検出信号の波形は、直線状に立ち上がる部分と傾斜が小さくなりピークを迎える部分を有し、前記直線状の部分の終点の部分の波形の傾きの変化または前記直線状に立ち上がる部分の傾きから前記反射光の光量が最大となる時刻tが予想され、
前記開閉弁の閉鎖が前記時刻tとなる前の段階でおこなわれ、
前記開閉弁の閉鎖後に前記チャンバー室と前記加圧室の間が遮断状態とされる眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼圧を測定する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼球に空気を吹き付け、その際の眼球の変形を光学的に計測することで眼圧の測定を行う非接触型の眼科装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この技術では、被検眼に高圧空気が噴射されるので、被検眼への負担が懸念される。この問題に対する対応として、圧縮空気を溜める空気室に外部への内圧の開放を行うための電磁弁を配置し、眼球の変形を見越して予想したタイミングで当該電磁弁を開放し、装置内部から圧縮空気を抜くことで、被検眼に吹き付けられる高圧空気の影響を低減する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-237516号公報
【特許文献2】特開2009-082514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の装置内部の圧力を外部に抜く形態は、動作音、特に外部に抜ける空気の音が被検者に不快感を与える問題がある。また、ポンプは、停止が指示されてもピストン等の可動部が慣性で動き、急にはポンピングの作用が停止しない。そのため、上記の圧力を抜く動作後にも電磁弁からの空気の流出と同時に装置内部の内圧の上昇が生じ、この内圧の上昇に起因する被検眼への噴流がある。この噴流のため、被検者が感じる不快感を低減する効果は十分でない。
【0006】
このような背景において、本発明は、被検眼に圧縮空気を吹き付けて眼圧を測定する眼圧計において、被検眼への空気の噴射を効果的に抑えることができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検眼に吹き付ける空気を溜めるチャンバー室と、前記チャンバー室につながる加圧室を備え、前記チャンバー室を加圧するポンプと、前記チャンバー室と前記加圧室との間に配置された開閉弁と、前記被検眼に測定光を照射すると共に前記被検眼からの反射光を検出する光学系とを備え、前記開閉弁を開とした状態で前記ポンプにより前記チャンバー室を加圧することで前記被検眼に高圧空気を吹き付け、前記反射光を検出することで得た検出信号の波形は、直線状に立ち上がる部分と傾斜が小さくなりピークを迎える部分を有し、前記直線状の部分の終点の部分の波形の傾きの変化または前記直線状に立ち上がる部分の傾きから前記反射光の光量が最大となる時刻tが予想され、前記開閉弁の閉鎖が前記時刻tとなる前の段階でおこなわれ、前記開閉弁の閉鎖後に前記チャンバー室と前記加圧室の間が遮断状態とされる眼科装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検眼に圧縮空気を吹き付けて眼圧を測定する眼圧計において、被検眼への空気の噴射を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の眼科装置の概念図である。
図2】光学系の一例を示す概念図である。
図3】制御系の一例を示すブロック図である。
図4】圧力信号と圧平信号の一例を示す図である。
図5】処理の一例を示すフローチャートである。
図6】処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1の実施形態
(全体構成)
図1には、眼科装置100が示されている。眼科装置100は、眼球の内圧(以下眼圧)を測定する。眼圧の測定は、例えば緑内障の診断に利用される。
【0011】
眼科装置100は、ポンプ110を備える。ポンプ110により、チャンバー室120の加圧が行われ、ノズル121から被検眼に向けて高圧空気が噴射される。
【0012】
ポンプ110は、加圧室116を備える。ポンプ110は筒状のシリンダ111を備え、シリンダ111の内部には、ピストン112が軸方向に摺動可能な状態で納められている。ピストン112は、駆動ロッド113を介して駆動装置114により駆動される。
【0013】
駆動装置114は、クランク機構を用いて駆動ロッド113を軸方向で進退させるロータリーソレノイドである。ピストン112には、軸方向に貫通する吸気孔115が設けられている。吸気孔115の加圧室116の側には非可逆弁117が締結部材119により固定されている。
【0014】
非可逆弁117は、可撓性を有する樹脂フィルムで構成されており、ピストン112が加圧室116の方向に移動する際は、吸気孔115を塞ぎ、加圧室116の圧力が吸気室118の方に抜けないように作用する。ピストン112が加圧室116から離れる方向に動く際は、吸気室118と空気室11の間の圧力差で、フィルム状の非可逆弁117が変形してめくれ、吸気室118から加圧室116に吸気孔115を介して空気が移動する。
【0015】
加圧室116は、連通管103を介してチャンバー室120に繋がっている。ピストン112が図の上方向に動くと、加圧室116の内部が加圧され、連通管103を介して、チャンバー室120が加圧される。
【0016】
連通管103には、バルブ駆動装置142によって開閉が駆動される開閉バルブ141が設けられている。開閉バルブ141により、加圧室116とチャンバー室120の間が開通状態または遮断状態とされる。開閉バルブ141は、バタフライバルブである。開閉バルブ141としては、ボールバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、チャッキバルブ等を利用することが可能である。
【0017】
バルブ駆動装置142は、開閉バルブ141の可動部を動かすモータ、ソレノイド、アクチュエータ等により構成されている。
【0018】
チャンバー室120には細長い円筒形状のノズル121が接続されている。ノズル121は、ガラス等の光透過性の部材124を介して眼科装置100の筐体に固定されている。また、チャンバー室120には、板状の光学フィルタ122を介して、眼球の形状変化を光学的に検出した信号である圧平信号を出力する光学系123が接続されている。チャンバー室120には、チャンバー室120内部の圧力を測定する圧力センサ132が配置されている。圧力センサ132からチャンバー室120の内圧を示す信号である圧力信号が出力される。
【0019】
(光学系)
図2図1の光学系123の構成を示す。光学系123は、測定光を発光する発光部125を備える。発光は、LED等の発光素子によって行われる。発光のタイミング等の制御は、図3の発光制御部302によって行われる。
【0020】
発光波長としては、例えば780nm~1000nmの近赤外光が用いられる。発光部125から出た測定光は、ハーフミラー126で反射され、光学フィルタ122に入射する。光学フィルタ122は、測定光の波長帯域を選択的に透過するバンドパスフィルタ特性を有する。光学フィルタ122は、受光部127で検出される被検眼からの反射光のS/N比を向上させるために配置されている。
【0021】
発光部125から発せられた測定光は、ハーフミラー126で反射され、光学フィルタ122および光透過部材124を介して、被検眼に照射される(図1参照)。被検眼の眼球の表面で反射された測定光は、測定反射光としてハーフミラー126に戻り、そこを透過し、受光部127に至る。受光部127は、フォトダイオード等の光検出素子を有し、測定反射光はそこで電気信号(圧平信号)に変換される。受光部125から出力された圧平信号は、図3の制御系の圧平信号検出部303に送られる。
【0022】
(基本動作)
眼科装置100を用いた被検眼の眼圧の測定では、被検眼に光学系123から測定光を照射した状態でポンプ110を作動させる。ポンプ110が作動すると、チャンバー室120の圧力が上昇する。それに伴い、ノズル121から空気が被検眼に噴出される。チャンバー室120の圧力の上昇に伴い、被検眼に吹き付けられる空気流の風圧が高くなり、この風圧により被検眼の眼球の表面形状が凸状態から平坦な状態に変形する。
【0023】
被検眼の眼球の表面形状が平坦に近づくにつれ、被検眼の眼球の表面形状が測定光に対して垂直面に近づき、反射光の反射方向がそろうので測定反射光の光量が増大する。そして、被検眼の眼球表面が最も平坦に近くなった段階で測定反射光の光量は最大となる。その後、被検眼に吹き付けられる風圧が更に高くなると、眼球表面が風圧で窪むので、反射光の反射方向がそろわなくなり、測定反射光の光量は減少する。
【0024】
こうして、図4に示すように、チャンバー室120の圧力を示す圧力信号と被検眼の眼球表面からの反射光の光量を示す圧平信号の関係が得られる。被検眼の眼圧は、圧平信号のピークが得られた時点におけるチャンバー室120の圧力の値に補正係数を掛けることで得られる。
【0025】
なお、図4の圧力信号1は、圧平信号のピークが検出された段階で開閉バルブ141を閉鎖しない場合の波形である。圧力信号2は、圧平信号のピークが検出された段階で開閉バルブ141を閉鎖した場合の波形である。
【0026】
(制御系)
図3には、眼科装置100の制御系300が示されている。制御系300は、コンピュータとしての機能を有している。制御系300は、専用または汎用の電子回路を用いて構成されている。なお、市販のPC(パーソナル・コンピュータ)に図3に示す各機能を実行するソフトウェアをインストールし、当該PCを用いて制御系300を構成することもできる。
【0027】
制御系300は、処理動作制御部301、発光制御部302、圧平信号検出部303、チャンバー室内圧力検出部304、バルブ制御部305、バルブ開閉タイミング判定部306、ポンプ制御部307、記憶部308、眼圧算出部309を備える。
【0028】
処理動作制御部301は、眼科装置100および制御系300の動作を制御する。特に処理動作制御部301は、後述する図5および図6に示す処理の実行を制御する。発光制御部302は、図2の発光部125の発光動作の制御を行う。
【0029】
圧平信号検出部303は、図2の受光部127の受光素子の出力を受け付け、圧平信号を検出する。図4に圧平信号の一例を示す。図4には、圧平信号と圧力信号の波形が示されている。圧平信号は、受光部127の出力波形である。圧力信号は、チャンバー室120の内部圧力を検知する圧力センサ132の出力波形である。
【0030】
チャンバー室内圧力検出部304は、圧力センサ132の出力に基づき、チャンバー室120の内圧を検出する。バルブ制御部305は、バルブ駆動装置142に制御信号を送り、開閉バルブ141の開閉動作を制御する。バルブ開閉タイミング判定部306は、開閉バルブ141を開閉するタイミング、特に開の状態から閉の状態に移行するタイミングを決定する判定を行う。
【0031】
ポンプ制御部307は、ポンプ110の動作を制御する。記憶部308は、眼科装置100の動作に必要なデータ、プログラム、測定データ(被検眼の眼圧のデータ)、その他動作の過程で得られるデータを記憶する。
【0032】
眼圧算出部309は、時刻tにおける圧力信号の値(チャンバー室120の圧力の値)に基づき検出眼圧値を算出する。時刻tは、圧平信号の重心の位置の時刻、この場合は、圧平信号のピークの時刻を採用する。この処理では、理想模型眼を用いて圧平信号のピークの時点における圧力信号の値と眼球内の圧力の関係を予め求め、補正係数を予め取得しておく。そして、実際の測定に際し、圧平信号がピークとなった時点における圧力信号の値に補正係数を掛けて眼圧値を算出する。この処理が眼圧算出部309で行われる。
【0033】
(バルブ開閉制御)
以下、バルブ開閉タイミング判定部306で行われる処理について説明する。上述したように、眼圧の値は、圧平信号のピークが得られた時点のチャンバー室120の圧力に基づいて算出される。したがって、圧平信号のピークが得られた後における被検眼への空気の吹き付けは不要である。他方で、被検眼への空気の吹き付けにより、被検者が不快に感じる場合があるので、被検眼への空気の吹き付けは必要最小限なものとすることが好ましい。
【0034】
そこで、バルブ開閉タイミング判定部306は、圧平信号のピークを検出したか否か、を判定し、バルブ閉鎖指示信号を出力する。このバルブ閉鎖指示信号がバルブ制御部305に送られ、開閉バルブ141の開放状態から閉鎖状態への動作が実行される。圧平信号のピークは、圧平信号の波形の時間微分(接線の傾き)を刻々と計算し、その値が0になった時点として検出される。
【0035】
こうすることで、眼圧の測定に不要な被検眼への空気の噴射を抑え、被検者が感じる不快感を和らげることができる。
【0036】
(処理の一例)
図5には、制御系300で行われる処理の手順の一例が示されている。図5に示す処理を実行するための動作プログラムは、記憶部308に記憶され、処理動作制御部301によって実行される。この動作プログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、そこから提供される形態も可能である。
【0037】
処理が開始されると、開閉バルブ141を開にした状態でポンプ110の駆動が行われる(ステップS101)。ポンプ110が動き出すと、チャンバー室120の圧力が上昇を初め、図4に例示する圧力信号の出力が開始される。チャンバー室120の圧力が上昇するのに従って、圧力信号の出力レベルが徐々に高くなり、ある段階で圧平信号が得られる。
【0038】
バルブ開閉タイミング判定部306は、圧平信号検出部303が検出する圧平信号の時間微分の値を監視し、圧平信号のピークが得られたか否かの判定を行う(ステップS102)。圧平信号のピークが得られたら、開閉バルブ141を閉鎖する処理を行う(ステップS103)。また、ステップS103の実行と同時にピストン112を後退させての加圧室116の減圧を行う(ステップS104)。この際、加圧室116が大気圧未満になった段階で吸気室118から加圧室116に空気が流れ込む。
【0039】
次いで、ステップS103で取得した圧平信号のピークが得られた時刻における圧力信号の値(チャンバー室120の圧力)に基づき、眼圧の算出を眼圧算出部309で行い(ステップS105)、処理を終了する。
【0040】
(優位性)
上記の処理によれば、被検眼の眼圧の測定に支障が出ない状態で、被検眼への高圧空気の吹き付けに起因する被検者の負担を軽減できる。この動作形態によれば、開閉バルブ141の閉鎖がチャンバー室120の内圧が上昇しきる前(ピーク値になる前)の内圧が上昇している過程において行われるので、図4の圧力信号2の波形にみられるようなチャンバー室120の内圧のピークを抑えることができる。
【0041】
開閉バルブ141の閉鎖を行わない場合、圧力波形1に示すように、圧平信号のピークを得た後もチャンバー室120の内圧は上昇し続け、それに伴うノズル121からの高圧空気の噴出も継続する。しかもこの際のノズル121からの高圧空気の噴出は、時刻tgの時点に比較してより高圧となるので、被検者への負担が大きい。
【0042】
例示するピストン型のポンプに限らず、ポンプは急に停止せず、停止の指示を出した時点以後も惰性により動作し、ポンピングが継続される。上記の処理では、このポンピングの継続があっても加圧室116とチャンバー室120との間が開閉バルブ141により遮断されるので、開閉バルブ141を閉鎖した以後における上記のポンプ110の惰性による加圧室116の加圧が生じても、その影響はチャンバー室120には及ばない。このため、開閉バルブ141の閉鎖後は、チャンバー室120から空気が抜けるだけであり、チャンバー室120の圧力の上昇は有り得ない。
【0043】
仮に、チャンバー室120から外部に内圧を開放する形態とした場合、ポンプを停止したとしても惰性で行われる加圧の影響がチャンバー室120に及ぶ。このため、開放動作以後におけるチャンバー室120内部の圧力の上昇を抑えることが難しい。この点、開閉バルブ141を閉鎖する形態は、開閉バルブ141の閉鎖後におけるチャンバー室120内部の圧力の上昇が原理的に生じない優位性がある。
【0044】
2.第2の実施形態
第1の実施形態において、圧平信号ピーク時刻予想部を設ける構成も可能である。この場合、圧平信号ピーク時刻予想部は、圧平信号がピークとなる時刻を事前に予想する。この予想は、圧平信号の波形の形状に基づき行われる。
【0045】
例えば、多様な状態に設定した複数の模型眼を用いて圧平信号の波形の形状と波形のピークの時刻の関係を解析し、圧平信号のピークの時刻を予想する指標を予め獲得しておき、この指標から圧平信号のピークの時刻を予想する。
【0046】
以下、具体的な一例を説明する。図4に例示するように、圧平信号は、最初はなだらかに立ち上がり、徐々に傾斜が急になり、次いで直線状に立ち上がり、最後に傾斜が小さくなりピークを迎える。そこで、上記の直線状の部分の終点の部分を波形の傾きの変化(時間微分値の変化)から検出し、圧平信号のピークが得られる時刻を予想する。また他の方法として、上記の直線部分の傾きから圧平信号のピークが得られる時刻を予想する形態も可能である。
【0047】
以下、圧平信号のピークが得られる時刻を予想する形態の一例を説明する。図6に処理の一例を示す。この処理では、開閉バルブ141を開放した状態で、ポンプ110の駆動を開始し(ステップS201)、圧平信号が得られたら、上述した方法により圧平信号のピークの時刻を予想する(ステップS202)。
【0048】
ここで、被検眼には個人差があり、また疾患がある場合は模型眼とは異なる状態の場合があるので、圧平信号は必ずしも想定した波形とならない場合がある。そのため、圧平信号の波形からそのピークの時刻(時間軸上の位置)を算出できない場合もある。この場合に備えて、処理時間の上限を設け、規定の時間内に圧平信号のピークの時刻が算出できたか否かの判定が行われる(ステップS203)。また、通常は圧平信号の波形はある程度の範囲に収まるので、明らかに適切でない値(波形を評価する指標)が算出された場合、ステップS203の判定はNOとなる。
【0049】
ステップS203において、圧平信号がピークとなる時刻tが得られた場合、それを取得し(ステップS204)、時刻tとなる前の段階で開閉バルブ141を閉鎖する処理を行う(ステップS205)。この場合、時刻tの予想ができた時刻をt0、開閉バルブ141の閉鎖を開始する時刻をt1とすると、t0≦t1<tの関係が満たされるようにする。
【0050】
他方で、ステップS203において、規定の時間内に圧平信号のピークの時刻が算出できず、あるいは適切でないと判定される値(予想される範囲を外れた値)が算出された場合、ステップS206に進む。ステップS206では、図5の処理と同様に実際の圧平信号のピークを検出し、当該ピークが検出された場合に開閉バルブ141を閉鎖する(ステップS207)。
【0051】
ステップS205またはステップS207と同時(またはそれ以後)に、ポンプ110の減圧処理(シリンダ112の後退)を行い(ステップS208)、更に先に予想された圧平信号のピークの時刻(またはステップS206で判定したピークの時刻)におけるチャンバー室120の圧力に基づく眼圧の算出を行い(ステップS209)、処理を終了する。
【0052】
(優位性)
圧平信号のピークが得られる時刻を予想し、それ以前にバルブの閉鎖処理を開始する形態は、圧平信号のピークを実際に検出した後に開閉バルブ141を閉鎖する形態に比較して、開閉バルブ141の閉鎖のタイミングを早めることができ、被検眼への負担をより抑えることができる。
【0053】
また、何らかの理由により、圧平信号のピークの時刻が予想できない場合、あるいはその予想値が適切でない場合、圧平信号のピークの検出を契機として開閉バルブ141の閉鎖を行うことで、個人差や被検眼の状態が想定されたものでなかった場合にも対応できる。
【0054】
4.その他
ポンプは、シリンダ型に限定されない。また、開閉バルブ141を閉鎖した状態で加圧室116を加圧し、次いで開閉バルブ141を開放してチャンバー室120の内圧を高め、ノズル121から被検眼への高圧空気の噴射を行う形態も可能である。この場合も圧平信号に基づく、開閉バルブ141の閉鎖処理を行い、被検眼への負担を軽減する。また、開閉バルブ141を閉じるタイミングを制御すると共に、開閉バルブ141を閉じるスピードを制御する形態も可能である。
【符号の説明】
【0055】
100…眼科装置、110…ポンプ、111…シリンダ、112…ピストン、113…駆動ロッド、114…駆動装置、115…吸気孔、116…加圧室、117…非可逆弁、118…吸気室、120…チャンバー室、121…ノズル、122…光学フィルタ、123…光学系、124…光透過性の部材、125…発行部、126…ハーフミラー、127…受光部、141…開閉バルブ、142…駆動装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6