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特開2022-111352数学モデルの関数として患者特有の投与を提供するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111352
(43)【公開日】2022-07-29
(54)【発明の名称】数学モデルの関数として患者特有の投与を提供するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20220722BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094292
(22)【出願日】2022-06-10
(62)【分割の表示】P 2020010887の分割
【原出願日】2013-10-07
(31)【優先権主張番号】61/710,330
(32)【優先日】2012-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516060576
【氏名又は名称】ダイアン モールド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダイアン モールド
(57)【要約】
【課題】数学モデルの関数として患者特有の投与を提供するためのシステムおよび方法の提供。
【解決手段】個人特有の特性および特定の個人の観察された応答の関数として、特定の個人のための好適な薬剤投与計画を予測、提案、および/または、評価するためのシステムおよび方法。観察された患者応答の数学モデルが、初期投与量を判定する際に使用される。本システムおよび方法は、特定の患者のために提案された投与計画への期待応答をより正確に予測するように使用するために、モデルを精緻化するように初期投与量への患者の観察された応答を使用する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人化された治療薬投与計画を提供するための薬剤投与計画推奨システムであって、
前記システムは、メモリに結合されているプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
(i)前記メモリに格納されている第1のモデルであって、人口における複数の患者の血液における治療薬の暴露の時間経過に基づいて、前記複数の患者に投与された前記治療薬に対する前記人口における前記複数の患者の応答を示すように構成されている第1のモデルと、
(ii)ある用量の前記治療薬を受信した後の、前記患者の血液における前記治療薬の暴露を示す第1のデータであって、前記治療薬の暴露は、前記患者から採取された血液サンプルから決定される、第1のデータと、
(iii)前記対象患者に具体的に関連付けられている第1の複数の特性を示す第2のデータであって、前記第1の複数の特性は、前記モデルの前記人口における複数の患者によって共有される、第2のデータと、
(iv)前記患者の血液における前記治療薬の標的暴露しきい値を示す第3のデータと
を受信するように構成されており、
前記プロセッサは、
(i)前記第1のデータおよび前記第2のデータに基づいて前記モデルに対してベイジアン更新を実行することによって、患者に特有なモデルを準備することであって、前記患者に特有なモデルは、前記受信された用量の前記治療薬に対する前記患者の応答を考慮に入れた、前記患者の血液における前記治療薬の暴露プロファイルの予測された時間経過を提供する、ことと、
(ii)前記患者の血液における前記治療薬の前記標的暴露を達成するために、1つ以上の提案された投与計画を提供することであって、前記1つ以上の提案された投与計画は、前記患者に特有なモデルおよび前記第2のデータに基づき、前記メモリは、前記プロセッサに結合されているデータベースをさらに含み、前記1つ以上の提案された投与計画を示す情報を前記データベース内に格納することをさらに含む、ことと、
(iii)前記患者に投与するために、前記1つ以上の提案された投与計画のうちの少なくとも1つを出力することと
を行うようにさらに構成されている、薬剤投与計画推奨システム。
【請求項2】
前記患者の血液における前記治療薬の暴露の時間経過は、前記患者の血液における前記治療薬の濃度である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記患者に特有なモデルのパラメータは、前記メモリに格納されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記患者に特有な前記1つ以上の特性は、身体サイズインジケータ、性別、人種、研究室結果、病期、病状、以前の治療、付随して投与される治療薬、付随する病気、人口統計情報のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、投与計画を更新したときに、前記1つ以上の提案された投与計画のサブセットを出力するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記治療薬は、一日目に前記患者に投与され、前記方法は、前記プロセッサが、前記治療薬の投与の後に、前記患者から採取されたサンプル内の前記患者の血液における前記治療薬の濃度を示す第4のデータを受信することをさらに含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記第4のデータを提供する少なくとも1つのサンプルは、前記一日目の前記患者の血液から採取される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記患者の血液における前記治療薬の前記標的暴露しきい値を示す入力信号を受信することと、
前記患者の血液における前記治療薬の前記標的暴露しきい値が達成されるまで、1つ以上の付加的な患者血液サンプルにおける前記治療薬の暴露に基づいて、前記メモリに格納されている前記患者に特有なモデルを周期的に更新することと
を行うように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第4のデータが前記患者の血液における前記治療薬の予測された暴露レベルを上回るかどうかに基づいて、リバイズされた用量を決定するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、用量を増加させることおよび用量間隔を短くすることのうちの1つ以上によって前記患者に特有なモデルを更新した後に、前記投与計画を調整するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、用量を減少させることおよび用量間隔を長くすることのうちの1つ以上によって前記患者に特有なモデルを更新した後に、前記投与計画を調整するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のモデルおよび前記患者に特有なモデルは、PKモデルを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のモデルは、前記人口における前記患者から取得されたデータから導出された複数の数学的モデルから準備される複合モデルである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、ベイジアンモデル平均を用いて、前記複合モデルを準備するようにさらに構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記複数の数学的モデルのそれぞれに対して前記ベイジアン更新を実行するようにさらに構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記患者に特有なモデルおよび前記第2のデータに基づいて前記1つ以上の提案された投与計画のそれぞれに対する典型的な患者の応答を予測するベイジアン予測を実行することによって、ベイジアン分析を実行するようにさらに構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサは、目的関数の最小値に対応する投与計画を選択することによって、前記治療薬の更新された患者に特有な投与計画を計算するようにさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つ以上の提案された投与計画は、4週間よりも小さい治療薬投与間隔を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つ以上の提案された投与計画は、8週間の治療薬投与間隔を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項20】
前記患者に投与される前記治療薬は、インフリキシマブであり、インフリキシマブの前記第1の用量は、ベイジアン複合モデルによって決定される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
インフリキシマブの前記第1の用量は、5~7mg/kgであり、かつ、8週間の治療薬投与間隔を有している、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、生体患者への薬剤の投与に関する。より具体的には、本発明は、特定の患者のための好適な薬剤投与計画を予測、提案、および/または評価するように、観察された患者特有の応答を考慮して、薬剤特有の数学モデルを処理するためのコンピュータ化システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に薬剤ベースの治療計画を始める医師の決定は、処方される薬剤の投与計画の作成を伴う。異なる投与計画が、異なる患者因子を有する、異なる患者に適切であろう。一例として、投与量、投与間隔、治療持続時間、および他の変数が、変動させられ得る。適正な投与計画が、極めて有益であり、治療の効果があり得るが、不適切な投与計画は、効果がなく、または患者の健康にとって有害であり得る。さらに、過小投与および過剰投与の両方は、概して、時間、金銭、および/または他の資源の損失をもたらし、望ましくない転帰のリスクを増加させる。
【0003】
現在の臨床実践では、医師は、典型的には、処方された薬剤の添付文書(PI)に含有される投与情報に基づいて投与計画を処方する。米国では、PIの内容は、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)によって規制される。当業者によって認識されるように、PIは、典型的には、薬剤の外観および薬剤の承認された使用を説明する、基本情報のテキスト説明を含む、印刷された情報リーフレットである。さらに、PIは、典型的には、どのようにして薬剤が体内で機能するか、およびどのようにして代謝されるかを説明する。PIはまた、典型的には、種々の種類の副作用を有する人々の割合に関する試験に基づく統計的詳細、他の薬剤との相互作用、禁忌、特別な警告、過剰摂取に対処する方法、および特別な注意を含む。PIはまた、投与情報も含む。そのような投与情報は、典型的には、異なる症状のため、または小児および成人集団のような異なる集団のための投薬量についての情報を含む。典型的なPIは、ある限定された患者因子情報の関数として、投与情報を提供する。そのような投与情報は、特定の患者のための投薬量を処方する際に、医師にとって基準点として有用である。
【0004】
図1は、従来技術を例示する、患者のための薬剤投与計画を作成するための方法を図示する、フロー図100である。図1に示されるように、典型的な方法は、図のステップ102および104で示されるように、PIで特定される患者因子を有する患者を識別し、次いで、医師が処方することを選択している、選択された薬剤については、PI投与情報を精査することを伴う。一例として、Diovan(登録商標)商標valsartan、すなわち、Novartis Corporation(Summit, NJ, USA)によって製造および/または流通される、高血圧、心不全等を治療するために成人で使用されるアンジオテンシン受容体遮断薬のPI投与情報は、部分的に、以下の投与情報、すなわち、薬剤が好適である患者の種類(高血圧症患者)、薬剤が使用されるべきではない患者の種類(妊婦、体積または塩が枯渇している者)、推奨初期投与量(80mg)、推奨投与間隔(毎日1回)、ならびに合法的および/または倫理的に所望され得る投与量の承認された範囲(80~320mg)を提供する。
【0005】
そのような投与情報は、典型的には、被験者集団への薬剤の投与を伴う臨床試験を行い、患者を注意深く監視し、臨床試験と関連付けられる臨床データを記録した後に、薬剤の製造業者によって作成される。臨床試験データは、後に、PIに含むための投与情報を作成するように、コンパイルおよび分析される。PIに含むための投与情報を作成するように、データを収集、コンパイル、および分析するためのシステム、方法、プロセス、および技法は、当技術分野で周知であり、本発明の範囲を超えるため、本明細書では詳細に議論されない。
【0006】
典型的な投与情報は、ある意味、臨床試験中に収集および追跡された場合がある、いくつかの患者因子を含む、任意の特定の患者の因子のうちの多くに関係なく、「平均」因子および/または「中程度の」レベルの疾患を有する「平均的」患者に好適と見なされる、種々の患者因子を有する個人を含む集団の臨床試験で収集されるデータからの一般的換算または複合物であることに留意されたい。一例として、アバタセプトについて収集される臨床試験データに基づいて、関連PIは、3つの体重範囲(<60kg、60~100kg、および>100kg)および関連する指示された投与計画(それぞれ、500mg、750mg、および1000mg)等の非常に粗い詳細レベルで、指示された投与計画を提供する。限定された患者因子(例えば、体重)に結び付けられる、粗い漸次的変化は、最適またはほぼ最適な投与計画に影響を及ぼし得る、多くの患者特有の因子を無視する。したがって、PIによって推奨される投与計画は、任意の特定の患者にとって最適またはほぼ最適である可能性が低いが、むしろ治療のための安全な開始点を提供し、大部分は試行錯誤プロセスを通して、特定の患者のための投与計画を精緻化することが医師に委ねられることが周知である。
【0007】
それでもなお、次いで、医師は、ステップ106で示されるように、PI情報の関数として、患者のための指示された投与計画を判定する。例えば、指示された投与計画は、60~100kgの体重範囲に入る体重を有する患者にとって、4週間ごとに750mgであると判定されてもよい。次いで、医師は、108で示されるように、指示された投与計画を施行する。これは、例えば、薬剤を処方し、薬剤を投与させ、および/または投与計画と一致する患者に投与量を投与することによって、直接的または間接的に行われ得ることが理解されるであろう。
【0008】
上記で参照されるように、指示された投与計画は、仮想「平均的」患者を治療するための適正な開始点であり得、指示された投与計画は、治療されている特定の患者のための最適またはほぼ最適な投与計画ではない可能性が非常に高い。これは、例えば、PIによって説明されるパラメータ(例えば、体重)によって捕捉されない、治療されている特定の患者の個別因子(例えば、年齢、併用薬剤、他の疾患、腎機能等)によるものであり得る。さらに、これは、(例えば、40kg増分で)推奨投与計画を大まかに満たすことによるものであり得るが、適正な投与は、1つ以上の患者因子の連続可変関数である可能性が高い。
【0009】
現在の臨床実践は、この相違を認識する。したがって、患者および投与計画を再評価するように、初期投与計画期間後に患者を追跡調査することが一般的な臨床実践である。したがって、図1に示されるように、次に、医師は、110で示されるように、指示された投与計画への患者の応答を評価する。一例として、これは、患者を検査すること、採血すること、または患者への他の検査を施行すること、および/または以前に施行された投与計画への患者の応答が治療医師によって観察され得るように、患者フィードバックを求めることを伴ってもよい。評価および観察された応答の結果として、ステップ112で示されるように、例えば、患者応答が不十分であるため、医師は、投与量調整が正当であるかどうかを判定する。そのような判定は、既存の医療処置実践に従って行われてもよく、本発明の範囲を超えるため、ここでは議論されない。
【0010】
ステップ112で、投与量調整が正当ではないことが判定される場合には、ステップ112および118で示されるように、医師は投与量調整を中断してもよく、本方法は終了してもよい。
【0011】
しかしながら、ステップ112で、投与量調整が正当であると判定される場合には、医師は、114で示されるように、臨時的に投与計画を調整するであろう。時として、好適な調整は、医師の判断のみにおいて行われる。多くの場合、調整は、PIに記載されるプロトコルに従って、または教育的実践によって行われる。一例として、PIは、投与量を増加または減少させるため、あるいは投与間隔を増加または減少させるための定量的指示を提供してもよい。いずれの場合にしても、調整は、大部分が臨時基準で、試行錯誤プロセスの一部として、および大部分が最後に施行された投与計画の患者への効果を観察した後に収集されるデータに基づいて、行われる。
【0012】
調整された投与計画を施行した後、ステップ116で示されるように、調整された投与計画への患者の応答が評価される。次いで、医師は、118で示されるように、投与計画を調整するかどうかを判定し、本プロセスは、繰り返される。
【0013】
一般的な指示された投与計画および患者特有の観察された応答に依拠する、そのような試行錯誤ベースのアプローチは、応答の速やかな発現とともに薬剤に合理的に効果を発揮する。しかしながら、このアプローチは、望ましい臨床的応答を発現するためにより長くかかる薬剤にとっては、最適ではなく、多くの場合、満足のいくものではない。さらに、投与計画を最適化する長期化した時間は、患者を望ましくない転帰へのリスクにさらす。
【0014】
必要とされるものは、従来の投与計画作成の試行錯誤側面を排除または低減し、満足できる、または最適な投与計画を作成する時間の長さを短縮し、したがって、薬剤、時間、または他の資源の関連する無駄を排除または低減し、望ましくない転帰のリスクを低減させる、個人特有の特性の関数として、特定の個人のための好適な薬剤投与計画を予測、提案、および/または評価するためのシステムおよび方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、観察された患者応答を説明するように更新される数学モデルの関数として、患者特有の薬剤投与を提供するためのシステムおよび方法を提供する。より具体的には、本発明は、個人特有の特性および薬剤への特定の個人の観察された応答の関数として、特定の個人に対する好適な薬剤投与計画を予測、提案、および/または評価するためのシステムおよび方法を提供する。
【0016】
概念的に、本発明は、直接的な方法で、薬剤への観察された患者応答の数学モデルへのアクセスを提供する。初期投与量を処方する際に、本発明は、患者因子共変量としてモデルで説明される患者特有の特性の関数として、特定の患者の応答を予測するように、公開された数学モデルの使用を可能にする。したがって、処方医師は、PIが提供できるよりもはるかに優れた精度で、特定の患者の特性の関数として、特定の患者のための合理的に調節された初期投与量を作成する際にモデルを活用することができる。
【0017】
任意の特定の患者のこの独自性(BSV)を説明するために、本発明は、投与計画を調整するように、初期投与計画への特定の患者の観察された応答のさらなる使用を可能にする。具体的には、本発明のシステムおよび方法は、数学モデルのみによって説明することができないBSVを説明するために、公開された数学モデルおよび患者特有の特性と併せて、患者の観察された応答を使用する。したがって、本発明は、特定の患者のために提案された投与計画への期待応答をより正確に予測するために使用され得るように、モデルを効果的に個人化するために、特定の患者の観察された応答がモデルおよび関連予測を精緻化するために使用されることを可能にする。モデルを個人化するために観察された応答データを使用することによって、モデルは、患者集団に対する典型的な応答のみ、またはモデルで共変量として説明される、ある特性を有する典型的な患者に対する「共変量に典型的な」応答を表す、従来の数学モデルで説明されない、対象間変動性(BSV)を説明するように修正される。
【0018】
概念的に、本発明は、PIの場合のように、「平均」または「典型的な」患者のための比較的大まかに満たされた一式の推奨への実際の臨床データの抽出に起因する、データおよび/またはモデルの分解能の損失を伴わずに、実際の臨床データを反映する、1つ以上の公開された数学モデルを使用して、処方医師が個人化投与計画を作成することを可能にする。
【0019】
そのような患者特有の薬剤投与計画のモデルベースの作成は、従来の投与計画作成の試行錯誤側面を排除または低減する。さらに、そのようなモデルベースの作成は、満足できる、または最適な投与計画を作成する時間の長さを短縮し、したがって、薬剤、時間、または他の資源の関連する無駄を排除または低減するとともに、患者が望ましくない転帰のリスクにさらされる時間量を削減する。
【0020】
概して、本システムおよび方法は、特定の薬剤が投与された患者から収集される臨床データから作成される数学モデルの収集、患者データが豊富な複合モデルを作成するようにモデルを処理すること、および数学モデルからのデータと併せて処理される、患者特有の観察された応答データの関数として、患者特有の投与計画を判定することを伴う。より具体的には、本システムおよび方法は、一般的な数学モデルおよび共変量患者因子としてモデルで説明される患者特有の特性だけでなく、モデル自体内で説明されず、特定の患者とモデルによって反映される典型的な患者とを区別するBSVを反映する、観察された患者特有の応答の関数としても、患者特有の投与計画を作成するために、ベイジアン平均化、ベイジアン更新、およびベイジアン予測技法を使用する。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
コンピュータ化薬剤投与計画推奨システムを使用して、薬剤を用いた治療のための患者特有の投与計画を提供するための方法であって、前記システムは、マイクロプロセッサと、メモリと、複数の数学モデルとを備え、各モデルは、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表し、前記方法は、
前記複数の数学モデルおよび前記モデルの前記共変量患者因子に対応する特定の患者の特性の関数としての複合モデルであって、前記複合モデルは、共変量患者因子として前記特定の患者の特性を有する典型的な患者についての応答プロファイルを表す、複合モデルを作成し、
前記複合モデルの関数として第1の複数の提案された投与計画の各々についての典型的な患者応答を予測し、
前記特定の患者の特性を有する典型的な患者に好適である推奨される典型的な投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨される典型的な投与計画を提供し、
施行された投与計画への前記特定の患者の観察された応答を反映するデータを受信し、
対応する複数の更新された患者特有の数学モデルを作成するように、前記観察された患者応答データの関数として前記複数の数学モデルの各々を更新し、
更新された患者特有の複合モデルを作り出すように、各更新された患者特有の数学モデルを処理し、
前記更新された患者特有の複合モデルの関数として、第2の複数の提案された投与計画の各々についての患者特有の応答を予測し、
前記特定の患者に好適である、推奨された患者特有の投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨された患者特有の投与計画を提供するように、
前記システムを動作させることを含む、方法。
(項目2)
前記複合モデルは、ベイジアンモデル平均化技法を使用して、前記複数の数学モデルを処理することによって作り出される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記典型的な患者応答は、ベイジアン予測技法を使用して、前記複合モデルを処理することによって予測される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記典型的な患者応答を予測することは、前記システムが、
入力として複数の提案された投与計画を受信することと、
前記複数の提案された投与計画の各々について、対応する典型的な患者応答を予測することと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
推奨される典型的な投与計画を選択することは、前記システムが、前記予測された典型的な患者応答から、前記特定の患者の特性を有する典型的な患者に好適である推奨される典型的な投与計画を選択することを含み、前記推奨される典型的な投与計画は、所定の基準を満たすために選択される、項目4に記載の方法。
(項目6)
出力として前記推奨される典型的な投与計画を提供することは、複数の代替的な推奨される典型的な投与計画を含むリストを出力することを含む、項目4に記載の方法。
(項目7)
典型的な患者応答を予測することは、前記システムが、
所定の論理に従って、複数の提案された投与計画を自動的に選択することと、 前記複数の提案された投与計画の各々についての典型的な患者応答を予測することと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
所定の論理に従って、前記複数の提案された投与計画を自動的に選択することは、提案された投与計画への予測された典型的な患者応答の関数として、次の提案された投与計画を選択することを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記所定の論理は、治療目的を最も良く満たす、対応する予測された典型的な患者応答を提供するように、前記複数の提案された投与計画の選択を提供する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記所定の論理は、目的関数の最小値を見出すように、前記複数の提案された投与計画の選択を提供する、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記所定の論理は、目的関数の大域的最小値を見出すように、前記複数の提案された投与計画の選択を提供する、項目8に記載の方法。
(項目12)
前記システムが、前記予測された典型的な患者応答から、前記特定の患者の特性を有する典型的な患者に好適である推奨される典型的な投与計画を選択することをさらに含み、前記推奨される典型的な投与計画は、所定の基準を満たすために選択される、項目7に記載の方法。
(項目13)
前記システムが、出力として、前記推奨される典型的な投与計画を提供することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記システムが、出力として、複数の推奨される典型的な投与計画を含むリストを提供することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記患者特有の応答を予測することは、前記システムが、
入力として複数の提案された投与計画を受信することと、
前記複数の提案された投与計画の各々について、対応する患者特有の応答を予測することと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
推奨された患者特有の投与計画を選択することは、前記システムが、前記予測された患者特有の応答から、前記特定の患者に好適である、推奨された患者特有の投与計画を選択することを含み、前記推奨された患者特有の投与計画は、所定の基準を満たすために選択される、項目1に記載の方法。
(項目17)
出力として、前記推奨された患者特有の投与計画を提供することは、複数の代替的な推奨された患者特有の投与計画を含むリストを出力することを含む、項目1に記載の方法。
(項目18)
患者特有の応答を予測することは、前記システムが、
所定の論理に従って、複数の提案された投与計画を自動的に選択することと、
前記複数の提案された投与計画の各々についての患者特有の応答を予測することと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
所定の論理に従って、前記複数の提案された投与計画を自動的に選択することは、提案された投与計画への予測された患者特有の応答の関数として、次の提案された投与計画を選択することを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記所定の論理は、治療目的を最も良く満たす、対応する予測された患者特有の応答を提供するように、前記複数の提案された投与計画の選択を提供する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記所定の論理は、目的関数の最小値を見出すように、前記複数の提案された投与計画の選択を提供する、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記所定の論理は、目的関数の大域的最小値を見出すように、前記複数の提案された投与計画の選択を提供する、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記システムが、前記予測された患者特有の応答から、前記特定の患者に好適である、推奨された患者特有の投与計画を選択することをさらに含み、前記推奨される典型的な投与計画は、所定の基準を満たすために選択される、項目17に記載の方法。
(項目24)
前記システムが、出力として、前記推奨された患者特有の投与計画を提供することをさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記システムが、出力として、複数の推奨された患者特有の投与計画を含むリストを提供することをさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記複数の数学モデルの各々は、ベイジアン更新技法を使用して前記複数の数学モデルの各々を処理することによって更新される、項目1に記載の方法。
(項目27)
各更新された患者特有の数学モデルは、ベイジアンモデル平均化技法を使用して処理される、項目1に記載の方法。
(項目28)
前記患者特有の応答は、ベイジアン予測技法を使用して前記更新された患者特有の数学モデルを処理することによって予測される、項目1に記載の方法。
(項目29)
前記推奨される典型的な投与計画は、一式の典型的な投与計画の間から選択され、前記推奨される典型的な投与計画は、所定の基準に密接に合致する、関連する予測された患者応答を提供するために選択される、項目1に記載の方法。
(項目30)
前記所定の基準は、標的患者応答である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記推奨された患者特有の投与計画は、一式の患者特有の投与計画の間から選択され、前記推奨された患者特有の投与計画は、所定の基準に密接に合致する、関連する予測された患者応答を提供するために選択される、項目1に記載の方法。
(項目32)
前記所定の基準は、標的患者応答である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記共変量患者因子は、血液濃度レベル、血圧示度、および、ヘマトクリットレベルから成る群から選択される少なくとも1つの共変量患者因子を含む、項目1に記載の方法。
(項目34)
コンピュータ化薬剤投与計画推奨システムを使用して、薬剤を用いた治療のための患者特有の投与計画を提供するための方法であって、前記システムは、マイクロプロセッサと、メモリと、複数の数学モデルとを備え、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表し、前記方法は、
前記複数の数学モデルおよび前記モデルの前記共変量患者因子に対応する特定の患者の特性の関数としての複合モデルであって、前記複合モデルは、共変量患者因子として前記特定の患者の特性を有する典型的な患者についての応答プロファイルを表す、複合モデルを作り出すようにベイジアンモデル平均化を行い、
ベイジアン予測を行うことにより、前記複合モデルの関数として第1の複数の提案された投与計画の各々についての典型的な患者応答を予測するように、前記複合モデルを処理し、
一式の予測された典型的な患者応答から、前記特定の患者の特性を有する典型的な患者に好適である推奨される典型的な投与計画であって、前記推奨される典型的な投与計画は、所定の標的応答を達成するように選択される推奨される、典型的な投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨される典型的な投与計画を提供し、
施行された投与計画への前記特定の患者の観察された応答を反映するデータを受信し、
前記観察された患者応答データの関数として前記複数の数学モデルの各々を更新することにより、対応する複数の更新された患者特有の数学モデルを作成するように、ベイジアン更新を行い、
更新された患者特有の複合モデルを作り出すように、前記複数の更新された患者特有の数学モデルのベイジアンモデル平均化を行い、
前記更新された患者特有の複合モデルの関数として、第2の複数の提案された投与計画の各々についての患者特有の応答を予測するように、ベイジアン予測を行い、
一式の予測された患者特有の応答から、前記特定の患者に好適である、推奨された患者特有の投与計画であって、前記推奨された患者特有の投与計画は、前記所定の標的応答を達成するように選択される、推奨された患者特有の投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨された患者特有の投与計画を提供するように、
前記システムを動作させることを含む、方法。
(項目35)
コンピュータ化薬剤投与計画推奨システムを使用して、薬剤を用いた治療のための患者特有の投与計画を提供するための方法であって、前記システムは、マイクロプロセッサと、メモリと、複数の数学モデルとを備え、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表し、前記方法は、
前記複数の数学モデルおよび前記モデルの前記共変量患者因子に対応する特定の患者の特性の関数としての複合モデルであって、前記複合モデルは、共変量患者因子として前記特定の患者の特性を有する典型的な患者についての応答プロファイルを表す、複合モデルを作り出すようにベイジアンモデル平均化を行い、
ベイジアン予測を行うことにより、前記複合モデルの関数として第1の複数の提案された投与計画の各々についての典型的な患者応答を予測するように、前記複合モデルを処理し、
一式の予測された典型的な患者応答から、前記特定の患者の特性を有する典型的な患者に好適である推奨される典型的な投与計画であって、前記推奨される典型的な投与計画は、所定の標的応答を達成するように選択される、推奨される典型的な投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨される典型的な投与計画を提供するように、前記システムを動作させることを含む、方法。
(項目36)
コンピュータ化薬剤投与計画推奨システムを使用して、薬剤を用いた治療のための患者特有の投与計画を提供するための方法であって、前記システムは、マイクロプロセッサと、メモリと、複数の数学モデルとを備え、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表し、前記方法は、
前記複数の数学モデルおよび前記モデルの前記共変量患者因子に対応する特定の患者の特性の関数としての複合モデルであって、前記複合モデルは、共変量患者因子として前記特定の患者の特性を有する典型的な患者についての応答プロファイルを表す、複合モデルを作り出すようにベイジアンモデル平均化を行い、
施行された投与計画への前記特定の患者の観察された応答を反映するデータを受信し、
対応する複数の更新された患者特有の数学モデルを作成するように、前記観察された患者応答データの関数として、前記複数の数学モデルの各々にベイジアン更新を行い、
更新された患者特有の複合モデルを作り出すように、前記複数の更新された患者特有の数学モデルのベイジアンモデル平均化を行い、
前記システムからの出力として、前記更新された患者特有の複合モデルを提供するように、
前記システムを動作させることを含む、方法。
(項目37)
コンピュータ化薬剤投与計画推奨システムを使用して、薬剤を用いた治療のための患者特有の投与計画を提供するための方法であって、前記システムは、マイクロプロセッサと、メモリと、少なくとも1つの数学モデルとを備え、各数学モデルは、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表し、前記方法は、
ベイジアン予測を行うことにより、前記モデルの関数として、第1の複数の提案された投与計画の各々についての典型的な患者応答を予測するように、前記モデルを処理し、
一式の予測された典型的な患者応答から、前記特定の患者の特性を有する典型的な患者に好適である推奨される典型的な投与計画であって、前記推奨される典型的な投与計画は、所定の標的応答を達成するように選択される、推奨される典型的な投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨される典型的な投与計画を提供し、
施行された投与計画への前記特定の患者の観察された応答を反映するデータを受信し、
対応する更新された患者特有の数学モデルを作成するように、前記観察された患者応答データの関数として、各数学モデルにベイジアン更新を行い、
各更新された患者特有のモデルの関数として、第2の複数の提案された投与計画の各々についての患者特有の応答を予測するように、ベイジアン予測を行い、
一式の予測された患者特有の応答から、前記特定の患者に好適である推奨された患者特有の投与計画であって、前記推奨された患者特有の投与計画は、前記所定の標的応答を達成するように選択される、推奨された患者特有の投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨された患者特有の投与計画を提供するように、
前記システムを動作させることを含む、方法。
(項目38)
コンピュータ化薬剤投与計画推奨システムを使用して、薬剤を用いた治療のための患者特有の投与計画を提供するための方法であって、前記システムは、マイクロプロセッサと、メモリと、少なくとも1つの数学モデルとを備え、各数学モデルは、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表し、前記方法は、
施行された投与計画への前記特定の患者の観察された応答を反映するデータを受信し、
対応する更新された患者特有の数学モデルを作成するように、前記観察された患者応答データの関数として、各数学モデルにベイジアン更新を行い、
各更新された患者特有のモデルの関数として、第2の複数の提案された投与計画の各々についての患者特有の応答を予測するように、ベイジアン予測を行い、
一式の予測された患者特有の患者応答から、前記特定の患者に好適である推奨された患者特有の投与計画であって、前記推奨された患者特有の投与計画は、前記所定の標的応答を達成するように選択される、推奨された患者特有の投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨された患者特有の投与計画を提供するように、
前記システムを動作させることを含む、方法。
(項目39)
コンピュータ化薬剤投与計画推奨システムを使用して、薬剤を用いた治療のための患者特有の投与計画を提供するための方法であって、前記システムは、マイクロプロセッサと、メモリと、少なくとも1つの数学モデルとを備え、各数学モデルは、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表し、前記方法は、
ベイジアン予測を行うことにより、前記モデルの関数として、第1の複数の提案された投与計画の各々についての典型的な患者応答を予測するように、前記モデルを処理し、
一式の予測された患者特有の患者応答から、前記特定の患者の特性を有する典型的な患者に好適である推奨される典型的な投与計画であって、前記推奨される典型的な投与計画は、所定の標的応答を達成するように選択される、推奨される典型的な投与計画を選択し、
前記システムからの出力として、前記推奨される典型的な投与計画を提供し、
施行された投与計画への前記特定の患者の観察された応答を反映するデータを受信し、
対応する更新された患者特有の数学モデルを作成するように、前記観察された患者応答データの関数として、各数学モデルにベイジアン更新を行い、
前記システムからの出力として、前記更新された患者特有の数学モデルを提供するように、
前記システムを動作させることを含む、方法。
(項目40)
薬剤を用いた治療のために患者特有の投与計画を提供するためのシステムであって、前記システムは、
マイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに動作可能に接続されたメモリと、
複数の数学モデルであって、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表す、複数の数学モデルと、
項目1に記載の方法を実行するように前記システムを動作させるための、前記メモリに記憶されたマイクロプロセッサ実行可能命令と
を備える、システム。
(項目41)
薬剤を用いた治療のために患者特有の投与計画を提供するためのシステムであって、前記システムは、
マイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに動作可能に接続されたメモリと、
複数の数学モデルであって、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表す、複数の数学モデルと、
項目34に記載の方法を実行するように前記システムを動作させるための、前記メモリに記憶されたマイクロプロセッサ実行可能命令と
を備える、システム。
(項目42)
薬剤を用いた治療のために患者特有の投与計画を提供するためのシステムであって、前記システムは、
マイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに動作可能に接続されたメモリと、
複数の数学モデルであって、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表す、複数の数学モデルと、
項目35に記載の方法を実行するように前記システムを動作させるための、前記メモリに記憶されたマイクロプロセッサ実行可能命令と
を備える、システム。
(項目43)
薬剤を用いた治療のために患者特有の投与計画を提供するためのシステムであって、前記システムは、
マイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに動作可能に接続されたメモリと、
複数の数学モデルであって、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表す、複数の数学モデルと、
項目36に記載の方法を実行するように前記システムを動作させるための、前記メモリに記憶されたマイクロプロセッサ実行可能命令と
を備える、システム。
(項目44)
薬剤を用いた治療のために患者特有の投与計画を提供するためのシステムであって、前記システムは、
マイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに動作可能に接続されたメモリと、
複数の数学モデルであって、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表す、複数の数学モデルと、
項目37に記載の方法を実行するように前記システムを動作させるための、前記メモリに記憶されたマイクロプロセッサ実行可能命令と
を備える、システム。
(項目45)
薬剤を用いた治療のために患者特有の投与計画を提供するためのシステムであって、前記システムは、
マイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに動作可能に接続されたメモリと、
複数の数学モデルであって、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表す、複数の数学モデルと、
項目38に記載の方法を実行するように前記システムを動作させるための、前記メモリに記憶されたマイクロプロセッサ実行可能命令と
を備える、システム。
(項目46)
薬剤を用いた治療のために患者特有の投与計画を提供するためのシステムであって、前記システムは、
マイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに動作可能に接続されたメモリと、
複数の数学モデルであって、前記複数の数学モデルの各々は、前記薬剤を用いて治療される患者集団についての応答プロファイルを表し、各モデルはさらに、共変量患者因子の関数として典型的な患者応答を表す、複数の数学モデルと、
項目39に記載の方法を実行するように前記システムを動作させるための、前記メモリに記憶されたマイクロプロセッサ実行可能命令と
を備える、システム。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の説明の理解は、添付図面を参照することによって促進されるであろう。
【0022】
図1図1は、患者のための薬剤投与計画を作成するための例示的な従来技術の方法を図示する、フロー図である。
【0023】
図2図2は、本発明の例示的実施形態による、観察された患者応答を説明するように更新される数学モデルの関数として、患者特有の薬剤投与を提供するための例示的方法を図示する、フロー図である。
【0024】
図3図3は、本発明の例示的実施形態による、観察された患者応答を説明するように更新される数学モデルの関数として、患者特有の薬剤投与を提供するための例示的システムの概略図である。
【0025】
図4図4は、16人の例示的な患者に対する最終投与量(TSLD)以降の時間と観察/予測された患者応答との間の関係を示す、一連のグラフである。
【0026】
図5A図5A-5Dは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図5B図5A-5Dは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図5C図5A-5Dは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図5D図5A-5Dは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
【0027】
図6図6A-6Dは、反復ベイジアン更新プロセスを図示する、例示的なグラフである。
【0028】
図7図7Aおよび7Bは、ベイジアンモデル平均化および更新の影響を図示する、時間の関数としての血中レベル濃度の例示的なグラフである。
【0029】
図8A図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図8B図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図8C図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図8D図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図9A図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図9B図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図9C図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図9D図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
図9E図8A-8Dおよび図9A-9Eは、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度を示す、例示的なグラフである。
【0030】
図10A図10A-10Fは、様々な投与間隔の影響を図示する、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度の共変量に典型的な予測および患者特有の予測を示す、例示的なグラフである。
図10B図10A-10Fは、様々な投与間隔の影響を図示する、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度の共変量に典型的な予測および患者特有の予測を示す、例示的なグラフである。
図10C図10A-10Fは、様々な投与間隔の影響を図示する、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度の共変量に典型的な予測および患者特有の予測を示す、例示的なグラフである。
図10D図10A-10Fは、様々な投与間隔の影響を図示する、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度の共変量に典型的な予測および患者特有の予測を示す、例示的なグラフである。
図10E図10A-10Fは、様々な投与間隔の影響を図示する、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度の共変量に典型的な予測および患者特有の予測を示す、例示的なグラフである。
図10F図10A-10Fは、様々な投与間隔の影響を図示する、時間の関数としてのインフリキシマブ血中レベル濃度の共変量に典型的な予測および患者特有の予測を示す、例示的なグラフである。
【0031】
図11図11は、本発明が採用され得る、例示的なネットワークコンピューティング環境を示す、システム図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、血液濃度レベル等の観察された患者応答、または血圧あるいはヘマトクリット等の測定値を説明するように更新される、数学モデルの関数として、患者特有の薬剤投与を提供するためのシステムおよび方法を提供する。より具体的には、本発明は、個人特有の特性、および薬剤への特定の個人の観察された応答の関数として、特定の個人に対する好適な薬剤投与計画を予測、提案、および/または評価するためのシステムおよび方法を提供する。概念的に、本発明は、直接的な方法で、薬剤を特定の患者に処方するときに、薬剤への観察された患者応答の数学モデルへのアクセスを処方医師に提供する。初期投与量を処方する際に、本発明は、患者因子共変量としてモデルで説明される患者特有の特性の関数として、特定の患者の応答を予測するように、公開された数学モデルの使用を可能にする。したがって、処方医師は、PIが提供できるよりもはるかに優れた精度で、特定の患者の特性の関数として、特定の患者のための合理的に調節された初期投与量を作成する際にモデルを活用することができる。
【0033】
しかしながら、モデルに基づく予測および結果として生じる投与計画は、同一の患者特性を有する、仮想の典型的な患者の応答に基づくという点で、多少限定される。したがって、予測および結果として生じる投与計画は、公開された数学モデルが患者の独自性を説明することができない、すなわち、患者の応答が独特であり、典型的ではない可能性が高いという事実により、最適ではない可能性が高い。この独自性または対象間変動性(BSV)を説明するために、本発明は、投与計画を調整するように、初期投与計画への特定の患者の観察された応答のさらなる使用を可能にする。具体的には、本発明のシステムおよび方法は、数学モデルのみによって説明することができないBSVを説明するために、公開された数学モデルおよび患者特有の特性と併せて、患者の観察された応答を使用する。したがって、本発明は、特定の患者のために提案された投与計画への期待応答をより正確に予測するために使用され得るように、モデルを効果的に個人化するために、特定の患者の観察された応答がモデルおよび関連予測を精緻化するために使用されることを可能にする。モデルを個人化するために観察された応答データを使用することによって、モデルは、患者集団に対する典型的な応答のみ、またはモデルで共変量として説明される、ある特性を有する典型的な患者に対する「共変量に典型的な」応答を表す、従来の数学モデルで説明されない、対象間変動性(BSV)を説明するように修正される。
【0034】
概念的に、本発明は、PIの場合のように、「平均」または「典型的な」患者のための比較的大まかに満たされた一式の推奨への実際の臨床データの抽出に起因する、データおよび/またはモデルの分解能の損失を伴わずに、実際の臨床データを反映する、1つ以上の公開された数学モデルを使用して、処方医師が個人化投与計画を作成することを可能にする。
【0035】
そのような患者特有の薬剤投与計画のモデルベースの作成は、従来の投与計画作成の試行錯誤側面を排除または低減する。さらに、そのようなモデルベースの作成は、満足できる、または最適な投与計画を作成する時間の長さを短縮し、したがって、薬剤、時間、または他の資源の関連する無駄を排除または低減するとともに、患者が望ましくない転帰のリスクにさらされる時間量を削減する。
【0036】
概して、本システムおよび方法は、特定の薬剤が投与された患者から収集される臨床データから作成される数学モデルの収集、患者データが豊富な複合モデルを作成するようにモデルを処理すること、および数学モデルからのデータと併せて処理される、患者特有の観察された応答データの関数として、患者特有の投与計画を判定することを伴う。より具体的には、本システムおよび方法は、一般的な数学モデルおよび共変量患者因子としてモデルで説明される患者特有の特性だけでなく、モデル自体内で説明されず、特定の患者とモデルによって反映される典型的な患者とを区別するBSVを反映する、観察された患者特有の応答の関数としても、患者特有の投与計画を作成するために、ベイジアン平均化、ベイジアン更新、およびベイジアン予測技法を使用する。
【0037】
換言すると、本発明は、従来の数学モデル(例えば、投与計画および患者因子のみに基づいて予測されていないであろう患者応答)によって解説および/または説明されていない個々の患者の間の変動性を考慮する、システムおよび方法を提供する。さらに、本発明は、体重、年齢、人種、検査室検査の結果等のモデルによって説明される患者因子が、カテゴリ(カットオフ)値としてよりもむしろ連続関数として扱われることを可能にする。そうすることによって、本システムおよび方法は、特定の患者のために個人化される投与計画を予測、提案、および/または評価するよう、患者特有の予測および分析を行うことができるように、既知のモデルを特定の患者に適合させる。顕著には、本システムおよび方法は、患者に以前に施行された投与計画を遡及的に査定するためだけでなく、提案された投与計画を患者に施行する前に提案された投与計画を予め査定するため、または所望の転帰を達成するであろう患者のための投与計画(投与量、投与間隔、および投与経路)を識別するためにも使用することができる。
【0038】
概念的に、観察された患者特有の応答データは、患者特有の投与計画を患者特有の基準で予測、提案、および/または評価することができるように、患者特有の応答を正確に予測することが可能な患者特有のモデルへの典型的な患者応答を表す、一般的モデルを適合させるために、「フィードバック」として効果的に使用される。
【0039】
さらに、一般的モデルを適合させるように観察された応答データを組み込む前でさえも、本発明は、PIまたはいずれか1つの数学モデルによって示唆されるであろうよりも良好である、初期投与計画の識別を可能にする。より具体的には、一実施形態では、初期投与計画は、複数の患者データが豊富な数学モデルから成る複合モデルに基づく。そのような実施形態では、初期投与計画は、「平均的」患者のためのPIの一般的推奨より密接に特定の患者の必要性に合致させられる。
【0040】
複合数学モデルを考慮して、観察された患者特有のデータの関数として、特定の患者の初期投与計画を精緻化することによって、個人化された患者特有の投与計画が作成され、さらに、迅速に作成される。例示的な方法は、医師等の人間のオペレータによって提供される入力を用いて、コンピュータ化モデルベースの患者特有の薬剤投与計画推奨システム200によって実装および実行され、したがって、処方医師による考慮のために情報を提供する、推奨エンジンおよび/または医師のエキスパートシステムとしての役割を果たすことが、理解されるであろう。
【0041】
本発明の例示的方法は、図2を参照して以下で議論される。図2は、患者集団に対する応答を表す数学モデルだけでなく、治療される特定の患者に対する観察された応答データにも基づく、患者特有の投与を提供するための例示的な方法を図示する、フロー図150を示す。ここで図2のフロー図150を参照すると、例示的な方法は、152で示されるように、数学モデルベースの患者特有の薬剤投与計画推奨システム200を提供することから始まる。例示的なシステム200が、図3に示され、以下でさらに詳細に議論される。一例として、システム200は、汎用デスクトップ、ラップトップ/ノートブック、またはタブレットコンピュータの典型である、従来のハードウェアおよびソフトウェアを含んでもよい。さらに、本発明によると、システム200はさらに、以下で説明される方法を実行するようにシステム200を特別に構成するためのマイクロプロセッサ実行可能命令を備える、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを伴って特別に構成される。
【0042】
図2を再度参照すると、次に、本方法は、154で示されるように、少なくとも1つの数学モデルを本システムに提供することを伴う。一実施形態では、数学モデルは、本質的にモジュール式であり、以下で説明される方法を実行するようにシステム200を特別に構成するためのマイクロプロセッサ実行可能命令を備える、ソフトウェアプログラムによって操作される、ソフトウェアモジュールまたはライブラリの一部として提供される。一例として、これらのモデルは、本システム上に事前に記憶されてもよく、周期的に、例えば、本システム上に周期的に記憶される配信された更新の一部として、本システムに追加されてもよく、または要求に応じてインターネットあるいは別のネットワーク、もしくは他の電子媒体からダウンロードされてもよい。代替として、数学モデルは、ソフトウェアモジュールまたはライブラリの一部ではなくてもよいが、むしろ、ユニタリソフトウェアプログラムにハードコード化され、または別様にその一体部分であってもよい。いずれの場合にしても、モデルは、図2のステップ154で示されるように、入力として本システムに提供され、システムのメモリに、例えば、図3の数学モデルデータ記憶部218aに記憶される。
【0043】
任意の好適な数学モデルが使用されてもよい。好適な数学モデルは、投与計画と、特定の薬剤に対する観察された患者暴露および/または観察された患者応答(集合的に「応答」)との間の関係を表す、数学関数(または一式の関数)である。したがって、数学モデルは、患者集団についての応答プロファイルを表す。概して、数学モデルの作成は、当業者によって理解されるように、観察された臨床データに最も良く「適合する」か、またはそれを表す曲線を画定する、数学関数/方程式を作成することを伴う。
【0044】
典型的なモデルはまた、応答への特定の患者特性の期待影響を表すとともに、患者特性のみによって説明することができない、解明されていない変動性の量を定量化する。そのようなモデルでは、患者特性は、数学モデル内の患者因子共変量として反映される。したがって、数学モデルは、典型的には、基礎的臨床データ、および患者集団で見られる関連変動性を表す、数学関数である。これらの数学関数は、「平均的」または典型的な患者からの個別患者の変動を表す項を含み、モデルが所与の投与量に対する種々の転帰を表すか、または予測することを可能にし、モデルを数学関数だけでなく統計関数にもするが、モデルおよび関数は、本明細書では一般的かつ非限定的に、「数学」モデルおよび関数と称される。
【0045】
多くの好適な数学モデルがすでに存在し、医薬品開発等の目的で使用されていることが理解されるであろう。患者集団についての応答プロファイルを表し、患者因子共変量を説明する、好適な数学モデルの実施例は、当業者に周知である、薬物動態(PK)モデル、薬力学(PD)モデル、および暴露/応答モデルを含む。そのような数学モデルは、典型的には、薬剤製造業者、論文審査のある文献、およびFDAまたは他の規制機関から公開されるか、または別様に入手可能である。代替として、好適な数学モデルは、元の研究によって調製されてもよい。
【0046】
好ましい実施形態では、単一の薬剤に対する複数の数学モデルが、利用可能である程度に、入力としてシステム200に提供されることに留意されたい。各数学モデルは、数学関数として、および/またはコンパイルしたライブラリモジュールの形態で、システム200のメモリ218に記憶されてもよい。
【0047】
次に、本方法は、ステップ156で示されるように、患者特有の特性を有する特定の患者を識別することを伴う。このステップは、医師または他の人間によって行われてもよく、例えば、患者の検査、および性別、年齢、体重、人種、病期、病状、以前の治療、他の合併症、および/または人口統計および/または検査室検査の結果情報等の患者特有の因子を収集および/または測定することを伴ってもよい。より具体的には、これは、数学モデル内の患者因子共変量として反映される、患者特性を識別することを伴う。例えば、モデルが、重量および性別共変量の関数として典型的な患者応答を表すように構築される場合、このステップは、患者の重量および性別特性(例えば、175ポンド、男性)を識別することを含むであろう。応答を予測し、したがって、数学モデルで患者因子共変量として反映されることが示されている、任意の他の特性が識別されてもよい。一例として、そのような患者因子共変量は、体重、性別、人種、研究室結果、病期、ならびに他の客観的および主観的情報を含んでもよい。
【0048】
次に、本方法は、ステップ158で示されるように、入力として患者特有の特性をシステム200に提供することを伴う。一例として、これは、図3に示されるように、システム200のキーボード208、マウス210、またはタッチスクリーン、バーコード/スキャナ、または他のインターフェースデバイス212を介して、入力を提供することによって、本システムの医師または他の人間のオペレータによって行われてもよい。患者特有の特性は、データベース記録の形態で、システム200のメモリ218に、例えば、図3の患者因子データ記憶部218bに記憶されてもよい。したがって、入力された患者特性は、以下で議論されるように、特定の患者の必要性に密接に適した投与計画を識別するために、モデルと併せて使用されることができる。より具体的には、入力された患者特性は、「共変量に典型的」である投与計画を識別するために、モデルと併せて、使用することができ、すなわち、モデルは、典型的なPIより良好な投与計画を提供する可能性が高い、特定の患者の共変量特性を有する典型的な患者(例えば、典型的な175ポンドの男性患者)に好適であると予測する。「共変量に典型的な」投与計画を作成するためのそのようなモデルの使用は、以下で議論される。
【0049】
本実施例では、単一の薬剤に対する患者応答を表す、複数の異なる数学モデルが、入力としてシステム200に提供される。したがって、次に、本システムは、ステップ160で示されるように、入力として本システムに提供される数学モデル、および患者因子共変量としてモデルによって説明される患者特有の特性の関数として、複合数学モデルを作成するように、ベイジアンモデル平均化を行う。より具体的には、次いで、単一の薬剤に対する複数の数学モデルが、ベイジアンモデル平均化を使用して、薬剤に対する複合数学モデルを作成するように、システム200によって処理される。複合数学モデルは、図3に示されるように、システム200のメモリ218に、例えば、RAMに、または複合モデルデータ記憶部218cに記憶されてもよい。
【0050】
概して、ベイジアンモデル平均化は、仕様の不確実性を分析し、1人の患者の結果のロバスト性を代替的なモデル仕様に対してチェックするための系統的方法を提供する。ベイジアンモデル平均化は、不良なパラメータ精度から生じ得るモデルの不確実性、モデルの誤った仕様、または単一のモデルを使用することから生じる他の欠陥を説明する。ある部類のモデルから単一のモデルを選択し、次いで、このモデルに基づいて推論するという標準実践は、予測性能を損ない、証拠の強度を過大評価し得る、モデルの不確実性を無視する。ベイジアンモデル平均化は、推論へのモデルの不確実性の組み込みを可能にする。ベイジアンモデル平均化の基本理念は、いくつかのモデルを含むモデル空間にわたる加重平均に基づいて、推論することである。このアプローチは、予測およびパラメータ推定の両方におけるモデルの不確実性を説明する。結果として生じる推定値は、モデルの不確実性を組み込み、したがって、推定値における真の不確実性をより良く反映し得る。いくつかの数学モデルが公開されたとき、これらのモデルのベイジアン平均化は、元の個々のモデルを作成するために使用されるデータの量、モデルの精度および性能、ならびにベイジアン平均化ステップに組み込まれるモデルの数に対して加重される、患者応答の加重推定値を生成し、または代替として、加重は、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)アプローチを使用して、ユーザによって設定され、または本システムに組み込まれてもよい。したがって、単一の薬剤に対する複数の数学モデルからの複合数学モデルの作成は、任意の単一のモデルに存在し得る制限を補償し、典型的にはPIの調製で使用される、より完全かつロバストな数学モデルを提供する。
【0051】
ベイジアンモデル平均化技法は、当技術分野で周知である。ベイジアンモデル平均化のために実装される本方法は、平均化されているデータおよびモデルの種類に応じて変動するが、最も一般的には、マルコフ連鎖モンテカルロモデル組成(MC3)方法を使用して平均化される。ベイジアンモデル平均化に使用される例示的な方法の説明は、その開示全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、Hoeting JA, Madigan D, Raftery AE, Volinsky CT. Bayesian Model Averaging: A Tutorial. Statistical
Science 1999, 14(4)382-417で提供されている。
【0052】
ベイジアン平均化を数学モデルに適用するための技法は、当技術分野で周知である。一例として、数学的技法としてのベイジアン平均化は、政治学(例えば、Bartels,
Larry M. “Specification Uncertainty and
Model Averaging.” American Journal of Political Science 41:641-674; 1997参照)、交通流量および事故率の評価(例えば、Demirhan H Hamurkaroglu C
“An Application of Bayesian Model Averaging Approach to Traffic Accidents Data Over Hierarchical Log-Linear Models” Journal of Data Science 7:497-511; 2009参照)、および毒物学評価(例えば、Morales KH, Ibrahim JG, Chen C-H Ryan LM “Bayesian Model Averaging With Applications to Benchmark Dose Estimation for Arsenic in Drinking Water” JASA 101(473):9-17, 2006参照)との関連で周知である。
【0053】
さらなる実施例として、ベイジアンモデル平均化は、例えば、異なるモデルによって予測される異なる経路の関数として、熱帯低気圧の最も可能性が高い経路を予測するように、例えば、天気予報の分野で周知であるような、予測するために複数の数学モデルを使用する方法である。例えば、Raftery AE, Gneiting T, Balabdaoui F, and Polakowski M “Using Bayesian Model Averaging to Calibrate Forecast
Ensembles” Mon. Wea. Rev., 133, 1155-1174; 2005を参照されたい。
【0054】
本発明によると、ベイジアンモデル平均化アプローチは、複数の患者応答モデルが利用可能であるときに患者応答を予測するために使用される。複数の数学的患者応答モデルのベイジアンモデル平均化を伴う実施例が、図7Aに示されている。ここで図7Aを参照すると、赤色(A)および緑色(B)の鎖線は、2つの異なる数学モデルからの期待濃度時間プロファイルを表す。赤色の鎖線(A)は、Xu Z, Mould DR, Hu C, Ford J, Keen M, Davis HM, Zhou H, “A Population-Based Pharmacokinetic Pooled Analysis of Infliximab in Pediatrics”によって公開されるような第1の数学モデルから導出される。緑色の鎖線(B)は、Fasanmade AA, Adedokun OJ, Ford J, Hernandez D, Johanns J, Hu C, Davis HM, Zhou H, “Population pharmacokinetic analysis of infliximab in patients with ulcerative colitis.” Eur J Clin Pharmacol. 2009; 65(12):1211-28によって公開されるような第2の数学モデルから導出される。本実施例では、両方のモデルから生じる濃度時間プロファイルが利用され、加重平均を表す(青色の鎖線(C)で示される)複合モデルが、図7Aに示されるように、ベイジアンモデル平均化によって生成される。
【0055】
しかしながら、本発明の方法およびシステムは、図2の実施例で説明されるような複数のモデルを必要としないことに留意されたい。代替実施形態では、単一のモデルが、複合モデルの代わりに使用されてもよく、対応するベイジアンモデル平均化ステップが省略されてもよい。
【0056】
さらに、明確にするために、1つ以上の数学モデルを、複数の薬剤のそれぞれについて、入力としてシステム200に提供し、その中に記憶することができるが、図2の実施例では、単一の薬剤のみが例証目的で議論されることに留意されたい。
【0057】
図2を再度参照すると、次に、システム200は、ステップ162で示されるように、複数の提案された投与計画の各々についての典型的な患者応答を予測するように、ベイジアン予測を行う。このステップは、モデルおよび複合数学モデル内の患者因子共変量として説明される、患者特有の特性の関数として、特定の患者のための投与計画を試験するために、本システムのベイジアン予測技法の使用を伴う。予測患者応答は、システムのメモリ218に、例えば、投与計画予測データ記憶部218eに記憶されてもよい。複合モデルに基づく、この予測は、「共変量に典型的な」値と称され得る、患者特有の特性を伴う典型的な患者に対する予測応答に基づいて、投与計画を評価することを伴う。ベイジアン予測を数学モデルに適用するための技法は、当技術分野で周知である。
【0058】
概して、ベイジアン予測は、特定の患者が様々な投与計画を用いて呈するであろう、起こり得る応答を予測するために、数学モデルパラメータを使用することを伴う。顕著には、このステップでは、予測は、提案された投与計画の実際の施行前に、提案された投与計画への起こり得る患者応答の判定を可能にする。したがって、予測は、複数の異なる提案された投与計画(例えば、様々な投与量、投与間隔、および/または投与経路)を試験して、モデル/複合モデルにおける患者特有の因子および/またはデータによって予測されるように、各投与計画がどのように患者に影響を及ぼす可能性が高いであろうかを判定するために、使用することができる。
【0059】
換言すると、この予測ステップは、公開されたモデルが、特定の患者の患者因子共変量を有する典型的な患者に対する分析に限定される、投与計画の評価が可能である程度に、投与計画を評価するための公開されたモデルの使用を伴う。結果として生じる投与計画(満足できる、または最良予測患者応答に対応する)は、PIによって提供することができるものより正確である可能性が高いが、治療されている患者の独特の特性を説明しないため、治療されている特定の患者のために正確には個人化されない。例えば、特定の175ポンドの男性患者は、典型的な175ポンドの男性とは異なって、特定の投与計画に応答し得る。したがって、複合モデルは、患者特有の特性を伴う典型的な患者に好適および/または最適であることが期待されるであろう、投与計画を予測するために使用される。
【0060】
より具体的には、本システムは、複合モデルを参照および/または処理することによって、患者の特性に基づいて複数の提案された投与計画を評価するように、患者応答の複数の予測を行う。本システムは、各投与計画が治療目的または標的プロファイルを満たすために十分または不十分であると判定してもよい。例えば、標的プロファイルは、治療閾値を上回るトラフ血液濃度レベルの維持を伴ってもよい。さらに、本システムは、種々の投与計画への患者応答の予測を比較し、治療目的または標的プロファイルを達成するための一式の満足できる、または最良の投与計画を作成してもよい。
【0061】
一実施形態では、複数の提案された投与計画は、手動で、および/または恣意的に、ユーザによって入力として本システムに提供される。例えば、ユーザは、評価される投与計画を提案するように、タイプされた入力を提供してもよく、それに応答して、本システムは、提案された投与計画への患者の応答を予測するようにベイジアン予測を行うであろう。ユーザは、後に、評価される別の投与計画を提案するように、他の入力を提供してもよい。例えば、投与量、投与間隔、および/または投与経路は、評価される提案された投与計画の間で変動させられ得る。これは、本質的に試行錯誤アプローチであるが、医師が複合モデルに対して提案された投与計画を試験することを可能にする、患者因子共変量を説明する、連続関数数学モデルに基づく洗練されたものである。
【0062】
別の実施形態では、本システムは、提案された投与計画を自動的に提案して試験し、公開された臨床経験の範囲内で投与計画を最適化するように、自動検索アルゴリズムに従う。好ましい実施形態では、最適化アルゴリズムは、ベイジアン予測を使用するが、投与量、投与間隔、および/または投与経路を系統的に提案する。所望の目標を達成する計画は、実現可能としてマークされ、本システムによって記憶される。結果として生じる出力は、複合数学モデルおよび患者因子共変量によって予測されるように、所望の臨床転機を達成することが期待される、一連の可能性として考えられる初期投与計画である。
【0063】
例証的実施例が、図4A-4Pを参照して以下で提供される。ここで図4A-4Pを参照すると、16人の異なる患者(ID:1-ID:16)のそれぞれに対する患者応答が、最終投与量(TSLD、時間)以降の時間の関数として示されている。より具体的には、インフリキシマブに対する上記で参照される公開された数学モデルを使用して、青色線(Y)が作成される(Xuら)。より具体的には、各青色線(Y)は、数学モデルおよび公開されたモデル内で共変量として提供される患者特有の因子(体重等)を使用して予測される、平均的(「典型的」)患者応答のプロットである。したがって、この青色線(Y)は、複数の患者についてコンパイルされる臨床データを表し、したがって、多少「平均的」または「典型的」表現である。したがって、図4では、いくつかの個々の患者応答(白丸記号)は、(ID:1およびID:5に関して)青色線より高く、他の個々の患者応答は、(ID:3、ID:7、およびID:9に関して)青色線より低いことが分かる。
【0064】
したがって、青色線(「共変量に典型的な」)推奨は、多くの場合、患者因子、または重要な患者因子の全てを考慮しない、または期待患者応答を大まかに満たすことに基づき得る、PIにおける投与指示より良好である可能性が高い。したがって、青色線(Y)は、時として対象間変動性または「BSV」と称される、同一の患者因子を伴う患者の間で見られる応答の変動性を考慮しないため、特定の患者のための最適な投与計画を必ずしも提供するわけではない。したがって、同一の患者因子を伴う2人の患者は、公開されたモデルで個々の患者因子によって説明されない変動性の結果として、治療薬の特定の用量への異なる観察された応答を有し得る。
【0065】
本明細書の教示によると、本発明のシステムは、図4Aに示される青色線(Y)に基づいて、提案された投与計画に対する患者応答を予測するであろう(図2Bのステップ162)。具体的には、図4のID:3については、患者因子(共変量)のみに基づいて本システムによって提供される初期投与計画は、青色線を反映する応答を生じることが期待されるであろう。
【0066】
図4を再度参照すると、以下で議論される赤色線(Z)は、モデル内の共変量である患者特有の因子だけでなく、本発明と一致する観察された患者特有の応答も説明するように、本発明の教示に従って作成される。より具体的には、赤色線(Z)は、観察された患者特有の応答を反映するようにベイジアン更新されている、数学モデルに基づく。したがって、赤色線(Z)は、治療されている特定の患者のための適正な投与を表す可能性が高い。本発明によると、以下でさらに詳細に説明されるように、ID:3のための(ベイジアン予測を使用した)後続の投与計画推奨は、以下で議論されるように、観察された患者データ(例えば、白丸)を説明する、ベイジアン更新された複合モデル(例えば、図7Bの青色の実線(D)または図4の赤色線Z)に基づくであろう。
【0067】
したがって、図4の実施例では、各患者ID:1-ID:16に対する患者応答として予測される青色(Y)および赤色(Z)線は、モデル内の共変量である患者特有の因子および観察された患者応答データに基づいて異なる。
【0068】
1つ以上の予測された典型的な患者応答を提供するように、1つ以上のベイジアン予測を行った後に、医師および/または本システムは、適切な投与計画が識別され得るように、種々の予測を比較してもよい。
【0069】
図2を再度参照すると、次に、例示的な方法は、ステップ164で示されるように、本システムが、予測応答の関数として、推奨される典型的な投与計画を判定することを伴う。例えば、推奨される典型的な投与計画は、実現可能性および実行可能性等に基づいて、治療目的を達成するために試験された複数のベイジアン予測のうちの1つとして、システム200によって選択されてもよい。例えば、推奨される典型的な投与計画は、治療レベルを上回る暴露(すなわち、薬剤濃度)を維持することができるものとして識別された、いくつかの試験/予測された提案投与計画のうちの1つとして選択されてもよい。例えば、図10B-10Fでは、「困難な患者」については、ベイジアン予測を使用して、複数の投与間隔が試験された。図10B-10Fから理解されるように、予測は、1、2、および4週間の投与間隔を含む投与計画が、(黒色の鎖線によって表される)標的レベルで薬剤濃度を維持するできることを示す。
【0070】
1つの例示的方法では、システム200は、その表示デバイス214を介して、推奨される典型的な投与計画のリストを医師に表示するか、または関連プリンタを介して推奨された投与計画のリストを印刷させ、あるいはリンク219を介した電子データ伝送によって、医師のモバイルコンピュータデバイス、薬局、病院、診療所、患者等のコンピュータシステムに伝送させる。例えば、試験投与計画の選択されたサブセット(例えば、上位3、上位10等)が、推奨または提案投与計画として、本システムによってユーザに出力されてもよい。「最良」投与計画の特性は、薬剤特性および/または治療目的に従って変動するであろうことが、当業者によって理解されるであろう。したがって、図10B-10Fの実施例では、標的濃度(鎖線)(すなわち、1、2、および4週間の投与間隔)を上回る濃度(黒丸)を維持することが期待されるものとして識別された、「困難な患者」のための投与計画が、ステップ164の推奨される典型的な投与計画として、表示、印刷、または伝送されるであろう。
【0071】
この例示的方法では、次いで、医師は、本システムによって出力として提供される、推奨される典型的な投与計画を閲覧し、次いで、患者に施行するための初期投与計画を判定してもよい。そうすることで、医師は、リストから投与計画を選択してもよく、または医師の判断に従って、推奨された投与計画を修正してもよい。
【0072】
種々の考慮事項が、推奨された投与計画および/または初期投与計画を判定する際に、医師および/または本システムによって考慮されてもよい。例えば、主要な考慮事項は、最小血中レベル濃度を維持すること、標的血圧を維持すること等の特定の治療目的を満たすことであってもよい。しかしながら、コンプライアンスの容易性、スケジューリングの考慮、薬剤/治療費等の他の考慮事項もまた、考慮されてもよい。本システムは、推奨される典型的な投与計画を判定するときに、そのような他の考慮事項を考慮するための効用関数を含んでもよい。
【0073】
次いで、医師は、ステップ166で示されるように、初期投与計画を直接的または間接的に施行する。図1を参照して上記で議論される従来技術の技法と比較して、この初期投与計画は、患者の個人特性の関数として、基礎的複合数学および統計モデルの解釈に基づくため、それが施行される特定の患者にとってより良く個人化される。換言すると、初期投与計画は、モデルによって判定される、共変量に典型的な投与計画を反映し、したがって、特定の患者の特性を有する典型的な患者に好適である。したがって、初期投与計画は、一般的PI投与情報で反映されるような基礎的モデルの大まかな解釈のみに基づかない。さらに、それは、種々の投与量、投与間隔、および投与経路の評価に続く、予測転帰に基づき、ベイジアン予測プロセスの一部として、および単一のモデルで、または複数の数学モデルのベイジアンモデル平均化によって生成される複合モデルで、患者因子共変量として捕捉される患者特性の関数としてのものである。
【0074】
初期期間後に、医師は、この例示的な方法では、患者を追跡調査し、ステップ168および170に示されるように、初期投与計画への患者の応答を評価し、例えば、患者応答が不十分であるため、投与量調整が正当であるかどうかを判定する。これらのステップは、図1を参照して上記で議論されるように、従来的に行われてもよい。したがって、例えば、これは、施行された投与計画への患者の応答を反映する、検査室検査の結果を取得すること、患者を検査すること、および/または患者がどのような気分であるかを尋ねることを伴ってもよい。
【0075】
この例示的方法では、ステップ170で、投与量調整が正当ではないことが判定される場合には、170、186、および188で示されるように、投与量調整が中断され、本方法が終了する。
【0076】
しかしながら、ステップ170で、投与量調整が正当であると判定される場合には、170および172で示されるように、評価に起因する患者応答が、入力としてシステム200に提供される。例えば、そのような入力は、定量的および/または定性的検査室結果試験データおよび/または医師査定をシステム200に入力することを含んでもよい。加えて、変化した場合がある患者特性もまた、評価され、および/または入力としてシステムに提供されてもよい。具体的には、このステップは、更新された観察測定患者応答、および特定の患者から取得される更新された患者特有の特性を入力することを伴う。
【0077】
随意に、本システムは、主要な個別化モデルパラメータが、主要な典型的パラメータ値から±3標準偏差以上離れている場合、患者が提案された治療に十分に応答しないであろうことを特定の患者の応答が示唆するため、この患者での治療薬のさらなる治療が正当ではない場合があることを本システムが示すように、構成されてもよい。
【0078】
図2を再度参照すると、システム200は、ステップ174で示されるように、入力された患者応答データに基づく(モデル内で患者因子共変量として追跡される)入力された患者特有の特性の関数として、各モデルを更新するように、基礎的数学モデルのそれぞれにベイジアン更新を行う。好ましくは、このステップは、反復ベイジアン更新を使用して行われ、さらに、次の投与計画の作成および/または施行の直前に行われる。観察された患者特有のデータを用いた、この更新は、特定の患者の観察された応答を考慮し、したがって、モデル自体で説明されない対象間変動性(BSV)を説明するように、モデルを更新する。したがって、ベイジアン更新の適用は、ソフトウェアが変化する患者状態または患者因子を説明することを可能にし、したがって、投与計画予測および推奨を暗示的に補正する。
【0079】
ベイジアン更新を数学モデルに適用するための技法は、当技術分野で周知である。例えば、Duffull SB, Kirkpatrick CMJ, and Begg EJ Comparison of two Bayesian approaches
to dose-individualization for once-daily aminoglycoside regimens Br J Clin Pharmacol. 1997; 43(2): 125-135を参照されたい。
【0080】
概して、ベイジアン更新は、付加的な証拠が取得されると、仮説の確率推定を更新するためにベイズ規則が使用される方法である、ベイジアン推測を伴う。ベイジアン更新は、経時的に(連続的に)収集されるデータの動的分析において特に重要である。ここで適用されるような方法は、暴露および/または応答の時間経過を表すだけでなく、暴露および応答の解明されていない(ランダムな)変動性を表す項も含む、モデルを使用する。それは、基礎的仮説を形成するように「事前」を適用することを伴う。「事前分布」は、任意のデータが観察される前のパラメータの分布である。我々の実施例では、事前分布は、観察された個別患者データの影響を伴わずに、薬剤の投与後の期待暴露および/または応答を表す、基礎的な一連の数学モデルである。我々の実施例では、これは、初期投与計画のために生成される初期推定値であろう。「標本分布」は、そのパラメータを条件とする、観察されたデータの分布である。これはまた、特にパラメータの関数と見なされ、観察された応答データであるときに、「尤度」とも称される。限界尤度(時として、証拠または「事後」とも称される)は、パラメータにわたって周縁化される、観察されたデータの分布である。我々の実施例では、これは、入力した観察された応答データによって更新された後のモデルであろう。したがって、ベイズ規則を反復して適用することができる。つまり、観察応答データを入力した後、次いで、結果として生じる事後確率を、次の観察された応答の事前確率として扱うことができ、新しい事後確率を新しい証拠から算出することができる。この手順は、「ベイジアン更新」と称される。ベイジアン更新の結果は、観察されたデータを条件とする、一式のパラメータである。本プロセスは、事前分布(我々の実施例では、これは基礎的モデルの全てである)からパラメータをサンプリングし、基礎的モデルに基づいて期待応答を計算することを伴う。各基礎的モデルについては、モデル期待と観察されたデータとの間の差異が比較される。この差異は、「目的関数」と称される。次いで、パラメータは、目的関数に基づいて調整され、新しいパラメータは、新しいモデル期待と観察されたデータとの間の差異を比較することによって、観察されたデータに対して試験される。このプロセスは、目的関数が可能な限り低く(目的関数を最小限化する)、パラメータが現在のデータを表すために最良であることを示唆するまで、反復して実行する。したがって、全ての基礎的モデルは、ベイジアン更新を受ける。いったん全てのモデルが更新されると、ベイジアン平均化が行われ、新しい複合モデルが生成される。
【0081】
目的関数の大域的最小値が取得されていることを確実にするために、本方法は、目的関数表面が十分に探索され、(観察された患者応答データの最良の説明を反映しないであろう、極小ではなく)真の大域的最小値が達成されていることを確実にするように、本プロセスにおいてある変動を差し挟むためのランダム関数の使用を伴ってもよい。モデルが真の大域的最小値を達成することを確実にするためのランダム関数の使用は、確率的近似期待方法の分野で周知である。しかしながら、そのようなランダム関数の使用は、ベイジアン更新との関連では新規であると考えられる。
【0082】
例証目的で、反復ベイジアン更新を伴う実施例が、3つのパラメータ(CL、V、およびσ)を伴う単純な例示的モデルについて、図6A-6Dを参照して以下で議論される。ここで図6A-6Dを参照すると、各図の下方の数字は、パラメータの尤度(li)を表し、尤度は、各反復における選択されたモデルパラメータ(Θσ)を与えられた、観察されたデータ(yij)の確率である{li=P(yij|Θσ)}。反復プロセスでは、本システムは、最初に、事前(典型的な)パラメータ値(CL、V、およびσ図6A)を試験し、これらのパラメータ値を使用して関数を計算する。次いで、システムは、計算された値(曲線)を観察されたデータ(黒丸)と比較し、(例えば、図Aに示されるような)尤度を算出する。次いで、本システムは、試験するように、特定された事前分布から一式の異なるパラメータを選択し(CL、V、およびσ図6B)、再度、第2の一式のパラメータを使用して関数を計算する。観察されたデータ(黒丸)と予測値(曲線)との間の一致がより良好である(例えば、尤度がより大きい)場合には、ソフトウェアは、第2の一式のパラメータの選択に使用されたもの同一の動向に従う、第3の一式のパラメータを選択するであろう。したがって、第2の一式のパラメータが第1の一式のパラメータより小さかった場合、第3の一式のパラメータは、依然として値が小さい(低い)であろう。観察されたデータと予測された関数との間の一致が不良である(例えば、尤度がより小さい)場合、本システムは、自動的に異なる経路を選択し、この場合、第2のパラメータより大きいが第1のパラメータより小さい、新しい推定値を選ぶであろう。このプロセスは、本システムが観察された値と予測値との間の一致をさらに向上させることができなくなるまで、反復して繰り返される(CL、V、およびσ図6D)。全てのパラメータが必ずしも同様に動向するわけではなく、いくつかのパラメータ値は、初期値より大きくあり得、いくつかのパラメータ値は、より小さくあり得ることに留意されたい。
【0083】
図2を再度参照すると、次に、システム200は、ステップ176で示されるように、更新された基礎的モデルから更新された患者特有の複合モデルを作り出すように、ベイジアンモデル平均化を行う。このベイジアン平均化プロセスは、ステップ160を参照して上記で説明されるものに類似するが、このステップ176でのベイジアン平均化は、観察された患者応答に基づいて更新された基礎的更新モデルで行われる。ステップ176でのベイジアン平均化は、更新された複合モデルを生成する。一例として、更新されたモデルは、本システムによって、更新モデルデータ記憶部218d等のメモリ218に記憶されてもよい。この時点で、取得される更新された患者特有の複合モデルパラメータは、治療されている特定の患者の観察された応答を反映し、したがって、個別患者をより正確に反映し、年齢および体重等の患者因子によって説明されない、応答に関する変動を組み込む。したがって、更新された患者特有の複合モデルは、後続の投与量への期待患者応答をより良く表す。
【0084】
これは、図4および7の実施例で反映される。図4を再度参照すると、ID:3に初期投与量を投与し、患者ID:3から観察された応答を取得した後に、個別患者応答(白丸)は、平均期待応答(青色線、Y)から導出されたことが示されるであろう。次いで、ID:3に対するモデルは、患者ID:3に対する観察された応答に基づいて(ベイジアン更新を使用して)更新され、(ベイジアン平均化を使用して)複合モデルに組み込まれるであろう。図7Bでは、ベイジアン更新およびベイジアンモデル平均化の結果が示されている。緑色の鎖線(E)は、ベイジアン更新前のFasanmadeモデルであり、緑色の実線(F)は、ベイジアン更新後のFasanmadeモデルであり、赤色の鎖線(G)は、ベイジアン更新前のXuモデルであり、赤色の実線(H)は、ベイジアン更新後のXuモデルであり、青色の鎖線(I)は、ベイジアン更新前のベイジアン平均モデルであり、青色の実線(D)は、ベイジアン更新後のベイジアン平均モデルであり、白丸は、初期投与計画の施行後の観察されたデータである。これらの図で見ることができるように、青色の実線(D、更新された複合モデル)は、観察されたデータ(白丸)を反映する。したがって、本発明に従って投与計画の次の予測に使用されるものは、青色の実線(D)で反映される、更新された複合モデルである。
【0085】
図2を再度参照すると、次に、システム200は、178で示されるように、複数の提案された投与計画の各々についての患者特有の応答を予測するように、ベイジアン予測を行う。この予測は、観察された患者特有の応答データを反映する、患者特性および患者特有の複合モデルの関数として行われる。これは、概して、ステップ162を参照して上記で説明されるものと同一のプロセスを伴うが、更新された複合モデルがステップ178で使用される。一例として、これは、患者への提案された投与量の投与に先立って、複数の提案された投与量を試験して、提案された投与量のそれぞれに対する患者応答を予測するために、ベイジアン予測を使用することを伴ってもよい。より具体的には、そのようなベイジアン予測は、各提案された投与計画に対する患者応答を予測するために、更新された複合モデルを使用する。
【0086】
次に、システム200は、図2のステップ180で示されるように、予測患者応答の関数として、推奨された患者特有の投与計画を判定する。ステップ164を参照して上記で説明される方法と同様に、推奨された患者特有の投与計画を判定するプロセスは、本システムが、ユーザによる入力として提案された投与計画を受信し、関連期待応答を投影する、手動ベイジアン予測プロセスを伴ってもよく、または代替として、提案された投与計画を自動的に選択して試験し、市販の製品を考慮して、投与量、投与間隔、および投与経路を評価することによって、公開された臨床経験の範囲内で投与計画を最適化する、自動検索アルゴリズムを伴ってもよい。例えば、提案された患者特有の投与計画の推奨のリストが、事前特定された臨床標的(図8および9の実施例では、特定の標的トラフ濃度)を達成するために試験された複数のベイジアン予測から、本システムによって選択されてもよい。さらなる一例として、治療目的は、各薬剤について、事前定義されてもよく、本システムによって記憶されてもよい。例えば、治療目的は、所定の治療閾値を上回る血中レベル濃度を維持することであってもよい。
【0087】
次に、医師は、システム200から取得される、推奨された患者特有の投与計画情報を精査し、予測応答の関数として、調整された患者特有の投与計画を判定する。これは、本システムの複数の予測応答の比較を精査し、調整された投与計画として、推奨された患者特有の投与計画のうちの1つを選択または修正することを伴ってもよい。
【0088】
投与計画を予め評価するツールとしてのベイジアン予測の影響が、図8A-8Gを参照して、例証目的で以下に議論される。図8A-8Gは、全ての他の関連患者因子が平均的である、中程度の疾患がある患者(添付文書の医薬品表示が基づいた、「集団患者」または「典型的な」患者)における投与計画調整を示す。これらの図では、影付きの領域は、標的濃度であり、黒丸は、個々の予測濃度である。したがって、観察されたデータは、モデル(本実施例ではFasanmadeらおよびXuらのモデル)を使用して適合され、モデルは、ベイジアン更新され、次いで、(ベイジアン平均化を使用して)平均化され、結果として生じる複合モデルは、各提案された投与計画について、その患者の期待患者応答トラフ(本実施例では治療効果のための重要な考慮事項)を予測するために使用される。十字は、患者因子(典型的な予測濃度)のみに基づいて予測される(すなわち、ベイジアン更新を用いることなく、モデル共変量の関数のみとしてモデルによって予測される)予測濃度であり、赤色の三角形Jは、実際の投与量、水色の三角形Kは、予測投与量である。図8Aは、ステップ176でベイジアン予測を使用して予測されるように、提案された表示投与量(8週間ごとに5mg/kg)を用いて達成される、予測トラフ濃度を反映する。中程度の疾患があるこの患者については、表示濃度が標的を上回る濃度を維持しないことが分かる。
【0089】
ここで図8Bを参照すると、8週間ごとに与えられる6mg/kgの提案された投与計画が、標的レベルにあり、患者が初期治療に応答できなかった場合に医師が患者に試すであろう、第2の試行を反映し得る、濃度を提供する、ステップ176の一部として試験される。
【0090】
ここで図8Cを参照すると、8週間ごとに与えられる7mg/kgの提案された投与計画が、ステップ176の一部として試験される。図8Cから留意されるように、この提案された投与計画は、標的濃度より適切に高く、この患者への投与時に第3の試行のために試される投与量を反映し得る、濃度を提供するように予測される。ここで図8Dを参照すると、7週間ごとに与えられる5mg/kgの提案された投与計画が試験され、予測結果は、十分な濃度を提供することが図8Dで示されている。
【0091】
図8A-8Dの実施例については、56週間の治療間隔にわたって、満足できる結果(すなわち、最小濃度を維持する)、すなわち、患者にとって費用の追加節約、および薬剤暴露の全体的な低減による、より高い安全域を反映する、総投与量の20%低減を提供しながら、8週間ごとに与えられる7mg/kg投与量(図8C)が、49mg/kgの総投与量を利用するであろう一方で、7週間ごとに与えられる5mg/kg投与量は、40mg/kgの総投与量を利用するであろう(図8D)ことが留意され得る。したがって、ステップ178は、図8Dと関連付けられる投与計画の選択を伴ってもよい。
【0092】
別の例証的実施例が、図5A-5Dを参照して以下で説明される。ここで図5A-5Dを参照すると、黒丸は、検査室検査等の結果としての観察された血中レベル濃度を表し、赤色線(W)は、この場合は論文審査のある文献および現在の臨床実践によって判定されるような標的濃度であり、実線(X)は、ステップ174で更新され、ステップ176で平均化されるような数学モデルによって判定されるような、更新された複合モデルを使用する、個別予測濃度であり、鎖線(V)は、(図4に示され、ステップ160で図2において参照される、青色線と概念が類似する、いかなる更新も伴わずに共変量情報のみを考慮して計算される)典型的な予測濃度である。図5Aおよび5Bは、中程度の疾患がある患者(「集団」または「典型的な」患者)からのデータを表し、図5Cおよび5Dは、重度の疾患がある患者(「困難な患者」)からのデータを表す。
【0093】
図5Aでは、実線および鎖線X、Vは、ベイジアン更新がまだ行われていないため重ね合わせられている。図5Bでは、ベイジアン更新が完了しており、更新された複合モデルは、上記で議論されるように、共変量および観察された患者応答に基づく。したがって、患者因子情報のみを伴う複合モデルから生じる、共変量に典型的な濃度と、患者因子情報および観察された患者特有の患者応答データに基づく更新された複合物から生じる、患者特有の予測濃度との間に差異がある(すなわち、モデルは、ベイジアン平均化に加えてベイジアン更新を受けている)。
【0094】
ここで図5Cを参照すると、観察された値(黒丸)と典型的な予測値(実線、X)との間の差異は、重度の疾患により、より顕著である。図5Dでは、影付きの領域Wは、標的濃度であり、黒丸は、ベイジアン更新されたモデルによって予測される患者特有の予測濃度であり、十字は、患者因子のみに基づいて予測される濃度であり(典型的な予測濃度であり、したがって、ベイジアン更新の結果としてではなく、モデル内の共変量のみに基づく)、三角形は、実際の投与量である。
【0095】
図5Cおよび5Dでは、投与の直前に得られる患者特有の予測濃度(すなわち、本実施例では投与の測定基準であるトラフ濃度)は、図5Dで最も良く見られるように、臨床応答のために達成されなければならない標的濃度Wを下回っていることが分かる。共変量に典型的な(「平均」)予測濃度(十字、ベイジアン更新を伴わずに行われる予測に基づく)は、図5Dに示されるように、十字が標的レベル(赤色帯域)の上方にあり、典型的な濃度が赤色線Wより高いという点で、評価されている投与量から生じる濃度が適切なはずであることを示唆することに留意されたい。しかしながら、モデルを更新して患者特有の応答データおよび対象間変動性を説明するためのモデルのベイジアン更新(黒丸、図5D)に続いて、モデルは、青色ドットが標的濃度(赤色帯域、W)の下方にあるため、評価されている投与量が適切ではなく、したがって、標的応答/治療目標が満たされないであろうことを示す。
【0096】
投与計画を評価することの付加的な実施例が、図9A-Eを参照して以下で議論される。ここで図9A-9Cを参照すると、図は、重度の疾患がある患者(以前に示された典型的な「集団患者」から実質的に逸脱する「困難な患者」)における投与量調整を表す。これらの図では、影付きの領域は、標的濃度であり、黒丸は、(ベイジアン更新された複合モデルに基づく)個々の予測濃度であり、十字は、患者因子のみに基づいて予測される濃度(患者因子を説明するモデルによって反映されるような典型的な予測濃度、すなわち、共変量を伴う典型)であり、赤色の三角形Lは、実際の投与量であり、水色の三角形Mは、予測投与量(すなわち、患者因子を説明する複合モデルに基づき、観察された患者応答/暴露データを反映するように更新される、ベイジアン予測された結果)である。図9Aは、表示投与量(8週間ごとに5mg/kg)を用いて達成されるトラフ濃度を反映する。重度の疾患があるこの患者については、表示投与量が標的を上回る濃度を維持しないため、この投与計画を処方するかどうかを考慮する医師は、それを拒否し、治療されている特定の患者のより良好な結果を提供することが予測される投与計画を見出そうとする可能性が高いであろうことが分かる。したがって、患者がこの効果のない計画を試そうとする従来の必要性が、このようにして回避される。
【0097】
図9Bでは、8週間ごとに与えられる10mg/kgの提案された投与計画に対する予測応答が示されている。図9Bから留意されるように、この提案された投与計画は、標的レベルを下回るが、患者が応答できなかった場合に、医師が従来技術の治療アプローチで患者に試すであろう、第2の試行を反映し得る、濃度を予測する。図9Cでは、8週間ごとに与えられる20mg/kgの提案された投与計画に対する予測応答が示されている。この投与計画は、医師が従来技術の治療アプローチで患者において応答を達成しようとするであろう、第3の試行を反映し得る。図に示されるように、8週間ごとに与えられる投与量を利用する、これらの投与計画のうちのいずれも、標的レベルを上回った濃度を提供しないであろう。本発明によって提供される予測の結果として、これらの効果のない投与計画が回避され、患者への関連有害作用が回避される。加えて、患者は、従来技術の治療アプローチの典型である、これらの投与計画を患者で試験するための関連時間の損失を伴わずに、効果的な投与計画を即時に提供されてもよい。
【0098】
図9Dおよび9Eは、より頻繁な投与計画と関連付けられる予測応答を示す。図9Dは、4週間ごとに与えられる5mg/kgの提案された投与計画(8週間ごとに与えられる5mg/kgのための実行可能な代替投与計画でもある)に対する予測応答である。図9Dから、この投与計画では、濃度が標的トラフを上回らないことが理解されるであろう。したがって、この投与計画は、満足のいくものではなく、したがって、最適ではない。図9Eでは、4週間ごとに与えられる10mg/kgの提案された投与計画に対する予測応答が示されている。図9Eから、この投与計画が標的レベルを上回る濃度を提供することが理解されるであろう。したがって、図9Eの投与計画は、満足のいくものであり、期待濃度が標的濃度(影付きの線)であるか、またはそれを上回るため、自動投与計画評価中に許容投与計画としてシステム200によって識別されるであろう。
【0099】
図9A-9Eの実施例によると、少なくとも3~4つの投与計画が従来技術の治療技法に従って患者で試験されるまで、適切な投与計画が医師によって識別されていないであろう。しかしながら、本システムは、患者への投与に先立って、医師が提案された投与計画を試験し、それらを患者で試験する前に、成功する可能性が高い投与計画を識別することを可能にする。
【0100】
本システムがステップ180で(推奨された患者特有の投与計画のリストであり得る)推奨された患者特有の投与計画を判定した後に、次いで、医師は、本システムによって出力として提供される、推奨された患者特有の投与計画を閲覧し、患者に施行するための調整された投与計画を判定してもよい。これは、本システムの複数の予測応答の比較を精査し、治療目的を最も良く満たすことが予測され、また、実行可能かつ実現可能でもある、投与計画を選択することを伴ってもよい。そうすることで、医師は、リストから投与計画を選択してもよく、または医師の判断に従って、推奨された患者特有の投与計画を修正してもよい。上記で説明されるように、種々の考慮事項が、推奨された投与計画および/または調整された投与計画を判定する際に、医師および/または本システムによって考慮されてもよい。
【0101】
次いで、医師は、ステップ182で示されるように、調整された投与計画を直接的または間接的に施行する。例えば、これは、薬剤量を増加または減少させるように、投与間隔を増加または減少させるように、投与経路を変更するように等、処方を訂正することによって行われてもよく、上記で議論されるように、医師によって直接的または間接的に行われてもよい。
【0102】
ステップ168を参照して上記で議論される初期投与計画である、図1を参照して上記で議論される従来技術の技法と比較して、この患者特有の調整された投与計画は、患者の個人因子、また、初期治療への患者自身の応答の関数として、基礎的複合数学および統計モデルの解釈に基づくため、それが施行される特定の患者にとってより良く個人化される。さらに、それは、種々の投与量、投与間隔、および投与経路の評価に続く、予測転帰に基づき、ベイジアン予測プロセスの一部としてのものであり、更新されたモデルの結果として、公開されたモデルで説明されない、観察された患者特有の応答および対象間変動性を説明する。したがって、調整された投与計画は、特定の患者の必要性に対して高度に個人化される。
【0103】
調整された患者特有の投与計画を使用した治療の期間後に、医師は、この例示的な方法では、患者を追跡調査し、ステップ184および170に示されるように、調整された投与計画への患者の応答を評価し、例えば、患者応答が不十分であるため、投与量調整が正当であるかどうかを判定する。上記で議論されるように、そのような評価は、従来的に観察および/またはデータを収集することによって行われてもよい。したがって、例えば、これは、施行された投与計画への患者の応答を反映する、検査室検査の結果を取得すること、患者を検査すること、および/または患者がどのような気分であるかを尋ねることを伴ってもよい。
【0104】
ステップ170で、例えば、患者が満足に応答していないため、投与量調整が正当ではないことが判定される場合には、ステップ186および188で示されるように、投与量調整が中断され、例示的な方法が終了する。
【0105】
しかしながら、ステップ170で、例えば、患者の応答が不十分または準最適であるため、さらなる投与量調整が正当であることが判定される場合には、ステップ170-184で示されるように、新しい患者応答データがシステムに入力されてもよく、本方法は繰り返されてもよい。
【0106】
患者の状態(病期または病状)および人口統計が経時的に変化し得るため、各患者の更新された状態および因子、暴露および/または応答挙動に基づいて、最適な投与量を繰り返し更新するために、本システムを使用することができるため、治療経過の全体を通して、投与量を最適なレベルに調整することができ、または十分な暴露を達成することができない場合に治療を中断することができる。さらに、したがって、本システムは、次の薬剤の投与量を患者に投与する前に、医師が潜在的投与方略(投与量を増加/減少させる、投与間隔を短縮/延長する、または両方)を評価することを可能にする。このアプローチは、1~2回の投与計画サイクル内で投与計画が最適化される(またはほぼ最適化される)ことを可能にし、患者の状態が治療中に変化するにつれて、適切な投与計画の連続監視および選択を可能にする。このアプローチは、治療医師が、既知の影響因子について広く調整される初期投与計画を提供することを可能にし、後続の投与計画が各患者の個別挙動に基づいて調整され、投与計画を急速に最適化することができ、適切な薬剤適用範囲が現在の実践より迅速に達成されることを可能にし、患者への投与前に推定投与量をコンピュータ上で試験することができ、必要に応じて、投与計画を患者の状態に基づいて治療中に調整することができ、過剰投与および過小投与を回避することができるため、革新的である。
【0107】
図3は、本発明による、(例証を容易にするために単一の代表的なサーバとして論理的に示される)例示的な医師のエキスパートシステム(PES)200のブロック図である。PES200は、本発明による方法を集合的に実行する、種々の特別に構成された機能的従属構成要素を有する、特定の特殊用途マシンとしてハードウェアを構成する、特別に構成されたコンピュータソフトウェアを記憶および/または実行する、従来のコンピュータハードウェアを含む。したがって、図3のPES200は、汎用プロセッサと、既知の技法に従って、プロセッサ202とPES200の構成要素との間の通信を接続して可能にするために採用される、バス204とを含む。PES200は、典型的には、バス204を介して、キーボード208、マウス210、および/またはタッチセンサ式スクリーン、デジタル化入力パッド等の任意のユーザインターフェースデバイスであり得る、他のインターフェースデバイス212等の1つ以上のインターフェースデバイスにプロセッサ202を接続する、ユーザインターフェースアダプタ206を含む。バス204はまた、ディスプレイアダプタ216を介して、LCDスクリーンまたはモニタ等の表示デバイス214をプロセッサ202に接続する。バス204はまた、ハードドライブ、ディスケットドライブ、テープドライブ等を含むことができる、メモリ218にプロセッサ202を接続する。
【0108】
PES200は、例えば、通信チャネル、ネットワークカード、またはモデム219を介して、他のコンピュータまたはコンピュータのネットワークと通信してもよい。PES200は、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)内のそのような他のコンピュータと関連付けられてもよく、別のコンピュータ等とのクライアント/サーバ配列でサーバとして動作する。そのような構成、ならびに適切な通信ハードウェアおよびソフトウェアは、当技術分野で公知である。
【0109】
PESソフトウェアは、本発明に従って特別に構成される。したがって、図3に示されるように、PES200は、本明細書で説明される方法を実行するためのメモリに記憶されたコンピュータ可読プロセッサ実行可能命令を含む。さらに、メモリは、1つ以上のハードウェアまたはソフトウェア構成要素における任意の特定の実施形態に関係なく、例えば、例証目的で図3に論理的に示されるデータベースまたは他のデータ記憶部に、あるデータを記憶する。例えば、図3は、ライブラリモジュールとしての数学モデルデータ記憶部218aの中のPES200数学モデルデータ、患者因子データ記憶部218bに記憶された、観察された応答および投与量の情報、複合モデルデータ記憶部218cに記憶された複合データモデル、更新モデルデータ記憶部218dに記憶された、更新されたモデル、および投与計画予測データ記憶部218eに記憶された投与計画予測結果のメモリ218内の記憶を概略的に示す。
【0110】
代替実施形態では、本明細書で説明される方法およびシステムは、ネットワークコンピューティングモデルを介して、ウェブサービスとして配信される。そのような実施形態では、本システムは、上記で説明される機能性の多くを実行する、医師/ユーザ操作可能クライアントデバイスおよび集中型サーバを介して実装されてもよい。そのような実施形態は、本発明が採用され得る、例示的なネットワークコンピューティング環境10を示すシステム図である、図11を参照して以下で説明される。ここで図11を参照すると、ネットワークコンピューティング環境は、インターネットまたは専有無線携帯電話ネットワーク等の通信ネットワーク50を介して、複数のクライアントデバイス20、40、60、80に動作可能に接続される、PESサーバシステム200aを含む。PESサーバシステム200aは、ウェブ/アプリケーションサーバのために従来的なハードウェアおよびソフトウェアを含んでもよいが、本発明によると、PESシステム200を参照して上記で説明される処理機能性を提供するように、およびクライアントデバイスと相互作用するためにさらに構成される。一例として、クライアントデバイスは、通信ネットワーク50を介してPESサーバシステム200aと通信するための実質的に従来的なハードウェアおよびソフトウェアを有し得る、パーソナルコンピュータ20、携帯電話/スマートフォン40、またはタブレットPCであってもよい。例えば、そのようなデバイスは、医師/ユーザがクライアントデバイスを操作して、入力を提供し、および/または上記で説明される出力を受信し、および本明細書で説明される関連処理を行うPESサーバシステム200aと通信し得るように、PESサーバシステム200aによって維持されるウェブサイトまたはウェブインターフェースにアクセスするために構成されてもよい。これらの実施形態では、クライアントデバイスは、いかなる特殊用途ソフトウェアも必要としなくてもよく、むしろ、全ての特殊用途ソフトウェアが、PESサーバシステム200aに組み込まれ、クライアントデバイスは、本発明のPESサーバシステム200aと通信するためだけに使用される。
【0111】
代替として、クライアントデバイスは、クライアントデバイス80上で作動する、特別に構成されたネイティブソフトウェアアプリケーションを伴って構成され、PESサーバシステム200aと通信する、スマートフォン、タブレットPC、または他のコンピュータデバイス80であってもよい。そのような実施形態では、PESシステム200を参照して上記で説明される構造および/または処理の一部または全体は、ユーザ/医師によって操作され得、かつ本明細書で説明される機能性を提供するようにPESサーバシステム200aと通信し得る、クライアントコンピュータデバイス80で提供されてもよい。
【0112】
したがって、本発明のいくつかの特定の実施形態が説明されたが、種々の変更、修正、および改良が、当業者に容易に想起されるであろう。本開示によって明白にされるような、そのような構成、修正、および改良は、本明細書で明示的に記述されていないが、本説明の一部であることを目的としており、かつ本発明の精神および範囲内にあることを目的としている。したがって、前述の説明は、一例にすぎず、限定的ではない。本発明は、以下の請求項およびそれらの均等物で定義されるようにのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11