(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111395
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】物品検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
G01N21/956 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006786
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】597028081
【氏名又は名称】株式会社メガトレード
(71)【出願人】
【識別番号】592101585
【氏名又は名称】株式会社木田鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】笹井 昌年
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AB11
2G051CA04
2G051CB01
2G051EA14
2G051EA16
2G051EA17
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】設計データを用いて検査対象物の形成状態を検査する際に、その検査対象物に形成された部位ごとに検査を行えるようにした物品検査装置を提供する。
【解決手段】商品パッケージをCADなどで設計する際に、輪郭線や罫線、切り込み線、ハーフカット線、エンボス線、模様、色彩ごとに異なる属性の線で設計データを生成しておく。そして、その商品パッケージから画像を取得するとともに、当該商品パッケージを設計する際に使用された設計データの線のうち、同じ属性の線種ごとに、検査プログラムやパラメーターを変えて、前記画像取得手段2で取得された画像による画像データと比較して検査する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の画像を取得する画像取得手段と、
当該検査対象物を設計する際に使用された設計データの線の属性ごとに検査方法を変えて、前記画像取得手段で取得された画像に基づく画像データと比較して検査する検査手段と、
を備えたことを特徴とする物品検査装置。
【請求項2】
前記線の属性が、設計データのレイヤ、線の太さ、線種、線の色である請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項3】
前記検査対象物が紙であり、
前記設計データの線が、輪郭線、罫線、切れ込み線、ハーフカット線、エンボス線の少なくとも2つ以上に分けて属性を持たせるように設けられるものである請求項1に記載の物品検査装置。
【請求項4】
検査対象物の画像を取得するステップと、
設計データを読み出し、当該設計データの線のうち、同じ属性の線に対応した検査方法を用いて、前記取得された画像の検査対象部位を検査するステップと、
を備えたことを特徴とする物品検査方法。
【請求項5】
前記線の属性が、設計データのレイヤ、線の太さ、線種、線の色である請求項4に記載の物品検査方法。
【請求項6】
前記検査対象物が平面状のものであり、
前記設計データの線が、輪郭線、罫線、切れ込み線、ハーフカット線、エンボス線の少なくとも2つ以上に分けて属性を持たせるように設けられるものである請求項4に記載の物品検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の形成状態を検査できるようにした物品検査装置に関するものであって、例えば、展開された状態の紙製包装容器などの輪郭線や罫線、切れ込み線、ハーフカット線、エンボス線などを、それぞれ最適な方法で検査できるようにした物品検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、検査対象物の形成状態を検査する場合、検査対象物から取得された画像データと検査基準データとを比較して検査するようにしているが、このような検査基準データを用いて検査する場合、目視検査などによって良品と判断された画像のデータを用いる方法や、もしくは、設計時に使用されたCADデータなどの設計データを用いる方法などが用いられている(特許文献1など)。このうち、設計時に使用された設計データを用いる方法では、目視検査によって生成された検査基準データを用いる場合と比べて、正確な検査を行うことができるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような設計データを用いて検査を行う場合、次のような問題がある。
【0005】
すなわち、CADデータなどの設計データは線で構成されているため、検査対象物の表面に形成された線の位置や輪郭線模様などを検査するには有効であるが、その設計データ上での線の種類に応じた部位の状態の検査を行うことができない。具体的には、厚紙やダンボールなどの紙製包装容器の表面には、アウトライン部分である輪郭線のみならず、折り返し部にあらかじめ型押しされた溝状の罫線や、開封のためのフラップに設けられた連続した切り込み線、厚紙を半分まで切り込んで折りやすくしたハーフカット線、製品のロゴなどを表示した凸状のエンボス線など、種々の線が形成されているが、これらの線はいずれも設計データ上では単なる線として表現されるため、輪郭線や、罫線、切れ込み線、ハーフカット線、エンボス線ごとにプログラムや検査基準データなどを変えて検査することができない。
【0006】
また、紙製包装容器だけに限らず、他の検査対象物を検査する場合においても、その検査対象物に形成されている種々の線や模様などに特性がある場合、設計データを用いて正確に検査することができないといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するために、設計データを用いて物品の形成状態を検査する際に、その物品に形成された部位ごとに検査を行えるようにした物品検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、検査対象物の画像を取得する画像取得手段と、当該検査対象物を設計する際に使用された設計データの線の属性ごとに検査方法を変えて、前記画像取得手段で取得された画像に基づく画像データと比較して検査する検査手段とを備えるようにしたものである。
【0009】
このように構成すれば、検査対象部位ごとに描かれた線の属性に基づいて、その部位に応じた最適な方法で検査することができるようになる。
【0010】
また、このような発明において、前記線の属性として、レイヤ、線の太さ、線種、線の色を用いるようにする。
【0011】
さらに、前記検査対象物が平面状のもので構成されている場合、前記設計データの線として、輪郭線、罫線、切れ込み線、ハーフカット線、エンボス線の少なくとも2つ以上に分けて属性を持たせるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検査対象物の画像を取得する画像取得手段と、当該検査対象物を設計する際に使用された設計データの線の属性ごとに検査方法を変えて、前記画像取得手段で取得された画像に基づく画像データと比較して検査する検査手段とを備えるようにしたので、検査対象部位ごとに描かれた線の属性に基づいて、その部位に応じた最適な方法で検査することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態である物品検査装置の外観図
【
図3】同形態における検査対象物である商品パッケージを示す図
【
図6】同形態における検査のフローチャートを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
この実施の形態における物品検査装置1は、CADなどの設計データを用いて、物品である検査対象物の形成状態の良否を検査できるようにしたものであって、
図2に示すように、その検査対象物の表面画像を取得する画像取得手段2と、この画像取得手段2で取得された画像に基づく画像データと設計データとを比較して良否を検査する検査手段4とを設けて構成される。そして、特徴的に、その設計データを作成する際、検査対象部位ごとに属性の異なる線で作成しておき、検査の際に、
図4に示すように、その線の属性に応じて検査方法を変えて検査できるようにしたものである。以下、本実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態で、検査対象となる検査対象物として、平面状に展開された商品パッケージなどの物品を例に挙げて説明し、その商品パッケージの表面に形成された輪郭線、罫線、切れ込み線、ハーフカット線、エンボス線、模様、色彩などを検査するものとする。
【0016】
まず、検査対象物の表面画像を取得する画像取得手段2は、
図1に示すように、カメラ21を用いて検査対象物の表面画像を取得するものであって、照明装置22から照射された光のうち、反射した光を受光することによって、その表面に形成された検査対象部位の画像を取得する。このとき、検査対象部位によっては、光の照射角度や色などを変えて検査する方が良い場合もあるため、光の照射角度や色などを変えられるようにしておく。そして、このように取得された画像を、記憶手段3に画像データとして記憶させる。
【0017】
この記憶手段3には、検査対象物から取得された画像データのみならず、
図5に示すように、線の属性に応じた異なる検査プログラムやパラメーターなどが記憶されており、取得された検査対象物の画像データを、設計データのその線の属性に対応する検査プログラムやパラメーターなどを用いて検査できるようにしている。このとき、例えば、属性に応じたパラメーターとしては、例えば、線の属性に応じて検査領域生成時に使用される線の「太らせ幅」や、線の属性に応じてマスター画像の各画素に対応する画素が存在するか否かを検査する「探索距離」や、良品とすべき輝度の「しきい値」、不良領域の「膨張量」、不良と判定する面積や長さの「しきい値」などが記憶される。
【0018】
検査手段4は、検査プログラムによって実行されるものであって、
図5に示すように、線の属性に対応して記憶された検査プログラムやパラメーターを用いて検査される。この検査プログラムとしては、それぞれ別の検査アルゴリズムを有する検査プログラムを記憶させておいてもよく、あるいは、プログラム自体を共通にしておき、パラメーターを用いて異なる検査方法として検査するようにしてもよい。このような検査を行う場合、あらかじめ取得された画像の輪郭線と設計データによる輪郭線とをパターンマッチングや基準マークなどを用いて位置合わせしておき、その状態で、輪郭線や罫線、切り込み線、ハーフカット線、エンボス線、模様、色彩の検査を行うようにする。この検査方法の一例について下記に述べる。
【0019】
まず、検査を行う場合、設計データから線の種類、色、太さなどの属性情報を取り出す。このとき、複数種類の線が使用されている場合は、すべての線の属性情報を取り出す。
【0020】
そして、取り出された線に対して、その線の属性情報に基づき、記憶手段3からパラメーターを読み出し、その線を太らせて検査領域を設定する。このとき、例えば、輪郭線については「太らせ領域」を小さくしておき、また、エンボス線などのように凹凸を有する部分については、「太らせ領域」を大きくしておく。
【0021】
このように検査領域を設定して検査を行う場合、マスター画像の色と、検査対象物の色(RGBの輝度)を画素ごとに比較し、その線の属性に対応する「しきい値」に属していない画素を取り出す。
【0022】
そして、そこで取り出された画素(不良画素)に対して、あらかじめ設定されている「不良領域の膨張量」だけ膨張させ、カスレなどの途切れによって良画素と判定されないようにする。
【0023】
そして、このように取り出された不良画素に対してラベリング処理を行い、不良画素の塊である領域を取り出して、あらかじめ線の属性に対応して登録されている面積や長さの「しきい値」によって、不良領域に該当するか否かを判定する。
【0024】
そして、これらの処理を、その線の属性に対応して登録されている探索量の範囲内で、前後左右方向に画像をずらして判定を行い、OKであれば、その領域をOKとして判定処理を行う。逆に、不良であれば、その領域を不良として判定処理する。
【0025】
この検査の際に使用される設計データは、検査対象部位ごとに線の属性を変えて設計されるものであって、例えば、
図4に示すように、輪郭線については、CADの第一レイヤに記載し、罫線については第二レイヤに記載し、切り込み線やハーフカット線については第三レイヤに線種や太さを変えて記載し、エンボス線や模様は第四レイヤに輪郭として記載される。
【0026】
線種情報抽出手段5は、設計データから抽出された線のうち、その線が有している属性を抽出できるようにしたものであって、検査対象部位に対応するレイヤ、線の太さ、種類(実線、破線、一点鎖線、二点鎖線など)、色などが抽出される。
【0027】
また、出力手段6は、検査結果を出力するものであって、良品である場合は、その旨を報知可能に出力し、また、不良である場合は、「不良」である旨の結果だけでなく、不良領域などの情報も出力する。
【0028】
このように構成された物品検査装置1を用いて検査する場合の処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。なお、検査を行うに際しては、事前に輪郭線や罫線、切り込み線、ハーフカット線、エンボス線、模様、色彩ごとに、線の属性を変えて設計データを生成しているものとする。
【0029】
検査対象物の検査を行う場合、検査対象物である検査対象物をカメラ21の前に位置させ、画像取得手段2によってその表面画像を取得する(ステップS1)。このとき、検査対象部位ごとに異なる光の照射角度で検査した方がよい場合や、異なる色で検査した方がよい場合は、複数の照射角度や色で光を照射してその画像を取得し、その画像を記憶手段3に記憶させておく。
【0030】
次に、このように画像を取得した後、記憶手段3から設計データを読み出し(ステップS2)、その設計データのうち、線種情報抽出手段5を用いて、検査の対象となる部位に対応する設計データの線の属性を抽出する(ステップS3)。そして、その抽出された線の属性に対応する検査プログラムやパラメーターを記憶手段3から読み出す(ステップS4)。
【0031】
そして、このように読み出された検査プログラムやパラメーターを用いて、線に対応する検査対象部位が適正であるか否か、あるいは、不良であるか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、取り出された線に対して、設定されている属性情報のパラメーターに基づいて、その線を太らせて検査するための検査領域を設定する。そして、太らせた検査領域について検査を行うようにするが、このとき、検査の際に基準となるマスター画像の色と、取得された検査対象物の色(RGBの輝度)とを画素ごとに比較し、その線の属性に対応して記憶されている「しきい値」に属していない画素を取り出す。そして、取り出された画素(不良画素)に対して、あらかじめ線の属性として設定されている「不良領域の膨張量」だけ膨張させ、かすれなどの途切れによって良画素と判定されないようにする。そして、画素に対してラベリング処理を行って不良領域を取り出し、あらかじめ登録している面積や長さのしきい値によって、不良領域を判定する。そして、これらの処理を、その線の属性に対応して登録されている探索量の範囲内で前後左右に画像をずらして判定を行い、OKであれば、その領域をOKとして処理を行う。
【0032】
そして、すべての検査対象部位の検査が適正であると判断された場合、「良品」であると判断して、これを出力手段6に出力し(ステップS7)、また、不良であると判断された場合は、その不良個所とともに「不良」である旨を出力して、目視検査などを行えるようにする(ステップS6)。
【0033】
このように上記実施の形態によれば、検査対象物の画像を取得する画像取得手段2と、当該検査対象物を設計する際に使用された設計データの線の属性ごとに検査方法を変えて、前記画像取得手段2で取得された画像に基づく画像データと比較して検査する検査手段4とを備えるようにしたので、検査対象部位ごとに描かれた線の属性に基づいて、その部位に応じた最適な方法で検査することができるようになる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0035】
例えば、上記実施の形態では、商品パッケージの形成状態を検査する場合を例に挙げて説明したが、これ以外の検査対象物における平面状の検査対象物の形成状態を検査する場合にも適用することができる。
【0036】
また、上記実施の形態では、設計データの線として、直線や曲線などを想定して説明したが、これ以外に、矩形、円、多角形状のものであってもよい。また、その属性として、レイヤ、線の太さ、線種、色などを例に挙げて説明したが、これ以外に、直線や曲線、単点、矩形、円、多角形状を属性としてもよい。また、設計データに、中心線などの補助線が設けられている場合は、その線種を検査対象から除外するようにして用いても良い。
【0037】
さらに、上記実施の形態では、パラメーターを変えて検査するようにしたが、検査プログラム自体をそれぞれ別に設けておき、その線の属性に応じた検査プログラムで検査するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1・・・物品検査装置
2・・・画像取得手段
21・・・カメラ
22・・・照明装置
3・・・記憶手段
4・・・検査手段
5・・・線種情報抽出手段
6・・・出力手段