(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111410
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/68 20060101AFI20220725BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20220725BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220725BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220725BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220725BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20220725BHJP
A61K 31/035 20060101ALI20220725BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20220725BHJP
A61K 31/25 20060101ALI20220725BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20220725BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20220725BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220725BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K31/164
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P17/06
A61P17/00
A61K31/575
A61K31/035
A61K31/015
A61K31/25
A61K31/685
A61K31/19
A61Q19/00
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006809
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東浦 英莉
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 嘉延
(72)【発明者】
【氏名】内山 雅普
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD531
4C083AD611
4C083BB01
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4C083BB41
4C083BB46
4C083BB47
4C083BB51
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4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】化粧料組成物等の組成物を提供する。
【解決手段】アシル鎖の長さの異なる2種またはそれ以上のセラミドNHを含有する組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(X)を含有する組成物:
(X)アシル鎖の長さの異なる2種またはそれ以上のセラミドNH。
【請求項2】
前記アシル鎖の長さが、C14、C16、C18、およびC22から選択される2つまたはそれ以上の長さの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
化粧料組成物または医薬組成物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、化粧品用または医薬品用の成分を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記化粧品用または医薬品用の成分が、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、希釈剤、界面活性剤、pH調節剤、ビタミン、ミネラル、香料、色素、防腐剤、テルペノイド、脂質、脂肪酸、アルコール、水、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、老化防止剤、抗セルライト剤、皮膚美白剤、皮膚日焼け剤、UVフィルター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも、テルペノイド、脂質、脂肪酸、またはそれらの組み合わせが選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記テルペノイドが、コレステロール、コレステロール硫酸、スクアレン、プリスタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
前記脂質が、トリオレイン、フォスファチジルエタノールアミン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノレン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記成分(X)における前記2種またはそれ以上のセラミドNHの量が、それぞれ、該成分(X)の総量に対して0.01~99.99重量%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記2種またはそれ以上のセラミドNHが、それぞれ、C18:1アルキル鎖および前記長さのアシル鎖を有するセラミドNHを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記2種またはそれ以上のセラミドNHが、それぞれ、C18:1アルキル鎖および前記長さの飽和アシル鎖を有するセラミドNHを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記C18:1アルキル鎖が、C1位、C3位、およびC6位にヒドロキシル基を有し、C1位、C3位、およびC6位以外に追加のヒドロキシル基を有さない、請求項11または12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物等の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミド(ceramide)は、スフィンゴイド塩基と脂肪酸がアミド結合で共有結合した構造を有する化合物である。すなわち、セラミドは、スフィンゴイド塩基部位(すなわちアルキル鎖)と脂肪酸部位(すなわちアシル鎖)を含み、それら部位は互いにアミド結合で共有結合している。セラミドとしては、スフィンゴイド塩基と脂肪酸の種類に応じて、種々のグループのものが知られている(非特許文献1)。セラミドには、医薬品や化粧品等の成分として用いられるものがある。
【0003】
セラミドNH(ceramide NH)は、6-ヒドロキシスフィンゴシン(6-hydroxysphingosine;以下、「6HS」ともいう)のセラミドである。すなわち、セラミドNHは、スフィンゴイド塩基部位が6HSであるセラミドである。すなわち、セラミドNHは、6HS部位(すなわちアルキル鎖)と脂肪酸部位(すなわちアシル鎖)を含み、それら部位は互いにアミド結合で共有結合している。セラミドNHとしては、C18等の種々のアシル鎖長のものが知られている(非特許文献1および2)。
【0004】
しかしながら、アシル鎖長の異なる2種またはそれ以上のセラミドNHの混合物は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Masukawa Y. et al., J Lipid Res. 2008 Jul;49(7):1466-76. Characterization of overall ceramide species in human stratum corneum.
【非特許文献2】Vielhaber G. et al., J Invest Dermatol. 2001 Nov;117(5):1126-36. Localization of ceramide and glucosylceramide in human epidermis by immunogold electron microscopy.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化粧料組成物等の組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アシル鎖長の異なる2種またはそれ以上のセラミドNHの併用により、それらセラミドNHを含有する組成物の性質が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
下記成分(X)を含有する組成物:
(X)アシル鎖の長さの異なる2種またはそれ以上のセラミドNH。
[2]
前記アシル鎖の長さが、C14、C16、C18、およびC22から選択される2つまたはそれ以上の長さの組み合わせである、前記組成物。
[3]
化粧料組成物または医薬組成物である、前記組成物。
[4]
さらに、化粧品用または医薬品用の成分を含有する、前記組成物。
[5]
前記化粧品用または医薬品用の成分が、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、希釈剤、界面活性剤、pH調節剤、ビタミン、ミネラル、香料、色素、防腐剤、テルペノイド、脂質、脂肪酸、アルコール、水、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、老化防止剤、抗セルライト剤、皮膚美白剤、皮膚日焼け剤、UVフィルター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[6]
少なくとも、テルペノイド、脂質、脂肪酸、またはそれらの組み合わせが選択される、前記組成物。
[7]
前記テルペノイドが、コレステロール、コレステロール硫酸、スクアレン、プリスタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[8]
前記脂質が、トリオレイン、フォスファチジルエタノールアミン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[9]
前記脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノレン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[10]
前記成分(X)における前記2種またはそれ以上のセラミドNHの量が、それぞれ、該成分(X)の総量に対して0.01~99.99重量%である、前記組成物。
[11]
前記2種またはそれ以上のセラミドNHが、それぞれ、C18:1アルキル鎖および前記長さのアシル鎖を有するセラミドNHを含む、前記組成物。
[12]
前記2種またはそれ以上のセラミドNHが、それぞれ、C18:1アルキル鎖および前記長さの飽和アシル鎖を有するセラミドNHを含む、前記組成物。
[13]
前記C18:1アルキル鎖が、C1位、C3位、およびC6位にヒドロキシル基を有し、C1位、C3位、およびC6位以外に追加のヒドロキシル基を有さない、前記組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、化粧料組成物等の組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】アシル鎖長の異なるセラミドNHの併用による融点の変化を示す図。数値は、融点差Δ[℃]を示す。C14, C16, C18, およびC22は、セラミドNHのアシル鎖長を示す。
【
図2】アシル鎖長の異なるセラミドNHの併用によるマルテーゼクロス像の数の変化を示す図。数値は、マルテーゼクロス像の数を示す。
【
図3】融点の測定結果とマルテーゼクロス像の観察結果の総合評価を示す図。数値は、総合評価のスコアを示す。
【
図4】アシル鎖長の異なるセラミドNHの併用による皮膚状態の回復効果の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の組成物は、アシル鎖の長さ(アシル鎖長)の異なる2種またはそれ以上のセラミドNH(ceramide NH)を含有する組成物である。これらのセラミドNHを総称して「有効成分」ともいう。
【0013】
本発明の組成物は、例えば、化粧料組成物または医薬組成物であってよい。本発明の組成物は、特に、化粧料組成物であってよい。化粧料組成物とは、化粧用途に用いられる組成物をいい、化粧品と同義であってもよい。医薬組成物とは、医薬用途に用いられる組成物をいい、医薬品と同義であってもよい。「化粧料組成物」および「医薬組成物」には、いずれも、特記しない限り、薬用化粧品等の医薬部外品が包含されてよい。
【0014】
本発明の組成物は、例えば、生物に適用することにより使用することができる。「本発明の組成物の生物への適用」とは、所望の効果が得られるように本発明の組成物を生物の所望の部位へ接触させることを意味してよい。本発明の組成物は、具体的には、後述する本発明の方法に記載の態様で生物に適用することができる。本発明の組成物の適用対象および適用箇所は、本発明の組成物の使用目的等の諸条件に応じて適宜選択できる。生物(すなわち本発明の組成物の適用対象)としては、哺乳類が挙げられる。哺乳類としては、ヒト、サル、チンパンジー等の霊長類、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ等のその他の各種哺乳類が挙げられる。哺乳類としては、特に、ヒトが挙げられる。本発明の組成物の適用箇所としては、生物の体表面が挙げられる。体表面としては、皮膚や体毛が挙げられる。体表面としては、特に、皮膚が挙げられる。皮膚は、いずれの部位の皮膚であってもよい。皮膚としては、顔、頭、体の皮膚が挙げられる。体としては、手、腕、足、脚、肩、胸、腰、尻、背中、その他の任意の部位が挙げられる。体毛は、いずれの部位の体毛であってもよい。体毛としては、毛髪が挙げられる。
【0015】
生物は、健常個体であってもよく、非健常個体であってもよい。生物は、例えば、皮膚や体毛等の体表面における状態の悪化が認められる個体であってもよく、そうでなくてもよい。生物は、具体的には、例えば、皮膚や体毛等の体表面における状態の悪化に関連する症状を呈している個体であってもよく、そうでなくてもよい。
【0016】
本発明の組成物の適用箇所は、健常部位であってもよく、非健常部位であってもよい。本発明の組成物の適用箇所は、例えば、皮膚や体毛等の体表面であって状態の悪化が認められる部位であってもよく、そうでなくてもよい。本発明の組成物の適用箇所は、具体的には、例えば、皮膚や体毛等の体表面であって状態の悪化に関連する症状を呈している部位であってもよく、そうでなくてもよい。
【0017】
本発明の組成物の使用における「所望の効果」としては、有効成分の使用(例えば生物への適用)により得られる効果が挙げられる。すなわち、本発明の組成物の使用(例えば生物への適用)により、有効成分の使用(例えば生物への適用)により得られる効果が得られてよい。言い換えると、本発明の組成物は、有効成分の使用(例えば生物への適用)により得られる効果を達成する機能を有していてよい。有効成分の使用(例えば生物への適用)については、上述した本発明の組成物の使用(例えば生物への適用)についての記載を準用できる。
【0018】
有効成分を使用することにより、具体的には有効成分を生物に適用することにより、当該生物において有効成分の適用箇所の状態が改善されてよい、すなわち、当該生物において有効成分の適用箇所の状態を改善する効果が得られてよい。よって、本発明の組成物を使用することにより、具体的には本発明の組成物を生物に適用することにより、当該生物において有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態が改善されてよい、すなわち、当該生物において有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の
適用箇所)の状態を改善する効果が得られてよい。言い換えると、本発明の組成物は、有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態を改善する機能を有していてよい。よって、本発明の組成物は、適用箇所の状態を改善するための組成物、例えば、適用箇所の状態を改善するための化粧料または医薬組成物であってよい。
【0019】
状態の改善としては、皮膚や体毛等の体表面の状態の改善が挙げられる。状態の改善としては、特に、皮膚の状態の改善が挙げられる。よって、本発明の組成物は、皮膚や体毛等の体表面の状態を改善するための組成物、例えば、皮膚や体毛等の体表面の状態を改善するための化粧料または医薬組成物であってもよい。本発明の組成物は、特に、皮膚の状態を改善するための組成物、例えば、皮膚の状態を改善するための化粧料または医薬組成物であってもよい。
【0020】
皮膚の状態の改善としては、皮膚のラメラ構造の改善(例えばラメラ構造の秩序性の増大)、皮膚のバリア機能の改善(例えば増大)、皮膚の保湿性の改善(例えば増大)が挙げられる。よって、本発明の組成物は、皮膚のラメラ構造の改善用、皮膚のバリア機能の改善用、または皮膚の保湿性の改善用の組成物、例えば、皮膚のラメラ構造の改善用、皮膚のバリア機能の改善用、または皮膚の保湿性の改善用の化粧料または医薬組成物であってもよい。これらの指標は、いずれか1つのみが改善されてもよく、2つまたはそれ以上が改善されてもよい。また、いずれかの指標の改善に起因して他の指標が改善されてもよい。例えば、ラメラ構造の改善により、皮膚のバリア機能や皮膚の保湿性等の皮膚の機能が改善されてもよい。言い換えると、皮膚のバリア機能の改善用または皮膚の保湿性の改善用の組成物は、皮膚のラメラ構造の改善用の組成物の一態様であってもよい。また、例えば、皮膚のバリア機能の改善により、皮膚の保湿性が改善されてもよい。言い換えると、皮膚の保湿性の改善用の組成物は、皮膚のバリア機能の改善用の組成物の一態様であってもよい。皮膚の状態として、具体的には、皮膚の角層の状態があげられる。すなわち、皮膚のラメラ構造の改善は、具体的には、皮膚の角層のラメラ構造の改善であってもよい。また、皮膚のバリア機能の改善は、具体的には、皮膚の角層のバリア機能の改善であってもよい。また、皮膚の保湿性の改善は、具体的には、皮膚の角層の保湿性の改善であってもよい。
【0021】
皮膚や体毛等の体表面の状態の改善を測定する手法は、特に制限されない。体表面の状態の改善は、体表面の状態を反映するパラメータを指標として測定することができる。例えば、皮膚の状態を反映するパラメータとしては、経皮水分蒸散量(transepidermal water loss;TEWL)やオーダーパラメータSが挙げられる。すなわち、皮膚の状態の改善は、例えば、TEWLの減少として測定できる。TEWLは、常法により測定できる。TEWLの減少は、具体的には、例えば、皮膚のバリア機能の改善を意味してよい。また、TEWLの減少は、具体的には、例えば、皮膚の保湿性の改善を意味してもよい。また、皮膚の状態の改善は、例えば、オーダーパラメータSの増大として測定できる。オーダーパラメータSは、常法により測定できる。オーダーパラメータSは、例えば、電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance;ESR)法により測定することができる。オーダーパラメータSは、具体的には、例えば、実施例に記載の通りに測定できる。オーダーパラメータSは、脂質鎖の配列の秩序性(例えばラメラ構造の秩序性)を意味し、オーダーパラメータSが高い程、脂質鎖がより整然と配列されていることを意味する。オーダーパラメータSの増大は、具体的には、例えば、皮膚のラメラ構造の改善を意味してよい。
【0022】
上記例示したような指標は、いずれも、有効成分の非使用時(具体的には本発明の組成物の非使用時)と比較して、有効成分の使用時(具体的には本発明の組成物の使用時)に改善していればよい。なお、上記例示したような指標についての「改善」には、有効成分の非使用時(具体的には本発明の組成物の非使用時)に当該指標が悪化する場合にあっては、有効成分の使用時(具体的には本発明の組成物の使用時)に当該悪化が軽減されるこ
とも包含されるものとする。
【0023】
有効成分を使用することにより、具体的には有効成分を生物に適用することにより、当該生物において有効成分の適用箇所の状態の改善に基づく効果が得られてよい。有効成分の適用箇所の状態の改善により、例えば、同箇所の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療することができると期待される。すなわち、有効成分の適用箇所の状態の改善に基づく効果としては、同箇所の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する効果が挙げられる。有効成分の適用箇所の状態の悪化に関連する症状は、疾患であってもよく、そうでなくてもよい。有効成分の適用箇所の状態の悪化に関連する症状としては、同箇所の状態の悪化に起因する症状や同箇所の状態の悪化を伴う症状が挙げられる。よって、本発明の組成物は、適用箇所の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の組成物、例えば、適用箇所の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の化粧料または医薬組成物であってもよい。
【0024】
状態の悪化としては、皮膚や体毛等の体表面の状態の悪化が挙げられる。状態の悪化としては、特に、皮膚の状態の悪化が挙げられる。よって、本発明の組成物は、皮膚や体毛等の体表面の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の組成物、例えば、皮膚や体毛等の体表面の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の化粧料または医薬組成物であってもよい。本発明の組成物は、特に、皮膚の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の組成物、例えば、皮膚の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の化粧料または医薬組成物であってもよい。
【0025】
皮膚の状態の悪化としては、皮膚のラメラ構造の悪化(例えばラメラ構造の秩序性の低下)、皮膚のバリア機能の悪化(例えば低下)、皮膚の保湿性の悪化(例えば低下)が挙げられる。皮膚の状態の悪化に関連する症状としては、肌荒れ、乾燥肌、鱗屑、落屑、皮膚炎、乾癬が挙げられる。
【0026】
有効成分は(具体的には本発明の組成物は)、治療目的で使用されてもよく、非治療目的で使用されてもよい。すなわち、上記例示したような効果は、いずれも、特記しない限り、治療目的で得られてもよく、非治療目的で得られてもよい。非治療目的の場合、「症状の治療」は、「症状の改善」と解釈してもよい。「治療目的」とは、例えば、治療のための人体への処置行為を含むことを意味してよく、特に、医療行為として実施されることを意味してもよい。「非治療目的」とは、例えば、治療のための人体への処置行為を含まないことを意味してよく、特に、非医療行為として実施されることを意味してもよい。非治療目的としては、健康増進や美容等の目的が挙げられる。
【0027】
有効成分の併用により、いずれかの有効成分を単独で用いる場合と比較して、組成物の性質を改善することができる、すなわち、組成物の性質を改善する効果が得られる。同効果を「有効成分の併用効果」ともいう。すなわち、例えば、本発明の組成物において、有効成分の併用効果が得られる。性質としては、物理的性質、化学的性質、生理学的性質が挙げられる。性質の改善として、具体的には、組成物の融点の低下や組成物のラメラ構造形成能の増大が挙げられる。また、性質の改善として、具体的には、有効成分の使用により得られる効果を達成する機能の増大も挙げられる。そのような機能としては、有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態を改善する機能や、有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する機能が挙げられる。組成物のラメラ構造形成能の増大は、例えば、マルテーゼクロス像の出現の増大として測定できる。これらのパラメータは、常法により測定できる。融点は、例えば、実施例に記載の通りに測定できる。マルテーゼクロス像は、例えば、実施例に記載の通りに観察できる。有効成分の併用により、これらの効果のいずれか1つのみが得られてもよく、2つまたはそれ以上が得られてもよい。また、いずれかの効果に起因して他の効果が得られてもよい。例えば、ラメラ構造形成能の増大により、有効成分の使用により得られる効果を達成する機能が増大してもよい。
【0028】
セラミドNHは、6-ヒドロキシスフィンゴシン(6-hydroxysphingosine;6HS)のセラミドである。セラミドNHは、「セラミド8(ceramide 8)」とも呼ばれている。セラミドNHの各バリエーションを「セラミドNH種」ともいう。6HSの各バリエーションを「6HS種」ともいう。
【0029】
「6HS」とは、スフィンゴイド塩基と呼ばれる長鎖アミノアルコールであって、下記のような構造を有するものをいう。6HSは、アルキル鎖を含み、該アルキル鎖が、アミノ基をC2位に有する。すなわち、アルキル鎖の一方の末端の炭素であって、アミノ化されている炭素(C2位)に結合している炭素がアルキル鎖のC1位とみなされる。アルキル鎖は、ヒドロキシル基をC6位に有し、さらに1つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する。アルキル鎖は、例えば、C1位、C3位、およびC6位にヒドロキシル基を有していてよい。アルキル鎖は、C1位、C3位、およびC6位以外に、追加のヒドロキシル基を有していてもよく、いなくてもよい。典型的には、アルキル鎖は、C1位、C3位、およびC6位以外に、追加のヒドロキシル基を有していなくてよい。アルキル鎖の長さや不飽和度は、可変であってよい。アルキル鎖の長さ(アルキル鎖長)は、例えば、C14~C26(C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26等)であってよい。アルキル鎖長は、例えば、特に、C16、C18、またはC20であってよい。アルキル鎖長は、例えば、さらに特には、C18であってよい。アルキル鎖長は、特記しない限り、アルキル鎖の炭素数(炭素原子の数)と解釈できる。アルキル鎖は、C4位(すなわちC4-C5間)に不飽和二重結合を有する。C4位の不飽和二重結合は、例えば、トランス二重結合であってよい。アルキル鎖は、C4位以外に、追加の不飽和二重結合を有していてもよく、いなくてもよい。典型的には、アルキル鎖は、C4位以外に、追加の不飽和二重結合を有していなくてよい。すなわち、6HSおよびセラミドNHについての「アルキル鎖」とは、特記しない限り、アルケニル鎖やアルケジエニル鎖等の、少なくとも1つの不飽和二重結合を有するものをいう。キラル中心の構成は、天然のセラミドNHの6HS部位と同一であってもよく、そうでなくてもよい。C2位は、例えば、2Sであってよい。C3位は、例えば、3Rであってよい。C4位は、例えば、4E(すなわちトランス二重結合)であってよい。C6位は、例えば、6Rまたは6Sであってよい。C6位は、例えば、特に、6Rであってよい。キラル中心の構成は、例えば、2S,3R,4E,6Rまたは2S,3R,4E,6Sであってよい。キラル中心の構成は、例えば、特に、2S,3R,4E,6Rであってよい。炭素数「n」のアルキル鎖を有する6HSを、「Cn 6HS」または「Cnアルキル6HS(Cn-alkyl 6HS)」ともいう。例えば、「C18 6HS」とは、長さがC18のアルキル鎖を有する6HSを総称する。炭素数「n」で不飽和二重結合数が「m」のアルキル鎖を有する6HSを、「Cn:m 6HS」または「Cn:mアルキル6HS(Cn:m-alkyl 6HS)」ともいう。6HSとしては、そのような、長さおよび/または不飽和度の異なる6HSのバリアント種が挙げられる。6HSとして、具体的には、不飽和二重結合を1つ含むC18アルキル鎖を有するC18:1 6HSが挙げられる。6HSとして、より具体的には、C18:1 6HSであって、C1位、C3位、およびC6位にヒドロキシル基を有し、C1位、C3位、およびC6位以外に追加のヒドロキシル基を有さないものが挙げられる。このように、「6HS」とは、上記例示した6HS種等の、6HSの各種バリアント種を総称してよい。
【0030】
「セラミドNH」とは、6HSと脂肪酸が互いにアミド結合で共有結合した構造を有する化合物をいう。すなわち、セラミドNHは、6HS部位(6HSに相当する部位)と脂肪酸部位(脂肪酸に相当する部位)を含み、それら部位は互いにアミド結合で共有結合している。6HS部位を、「アルキル鎖」ともいう。脂肪酸部位を、「アシル鎖」ともいう。アミド結合は、6HSのC2位のアミノ基と脂肪酸のカルボキシル基との間で形成されてよい。6HSに関する上記の説明は、6HS部位に準用できる。すなわち、例えば、アルキル鎖(すなわち6HS部位)の長さや不飽和度は、6HSの場合と同様に、可変であってよい。すなわち、セラミドNHとしては、上記例示した6HS種のセラミドが挙げられる。セラミドNHとして、具体的には、C18 6HSのセラミドが挙げられる。セラミドNHとして、より具体的には、C18:1 6HSのセラミドが挙げられる。セラミドNHとして、さらに具体的には、C18:1 6HSのセラミドであって、C18:1 6HSがC1位、C3位、およびC6位にヒドロキシル基を有し、C1位、C3位、およびC6位以外に追加のヒドロキシル基を有さないものが挙げられる。アシル鎖(すなわち脂肪酸部位)の長さや不飽和度は、可変であってよい。アシル鎖長は、例えば、C14~C26(C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26等)であってよい。アシル鎖長は、例えば、特に、C14、C16、C18、またはC22であってよい。アシル鎖長は、特記しない限り、アシル鎖の炭素数(炭素原子の数)と解釈できる。アシル鎖は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。アシル鎖は、1つまたはそれ以上の不飽和二重結合を有していてよい。アシル鎖は、官能基(すなわち置換基)を有していてもよく、いなくてもよい。アシル鎖は、1つまたはそれ以上の官能基(置換基)を有していてよい。官能基(置換基)としては、ヒドロキシル基が挙げられる。ただし、アシル鎖は、C2位にはヒドロキシル基を有さないものとする。なお、アミド結合を構成する炭素(元のカルボキシル基の炭素)がアシル鎖のC1位とみなされる。典型的には、アシル鎖は、官能基(置換基)を有していなくてよい。炭素数「n」のアルキル鎖を有するセラミドNH(すなわちCn 6HS部位を有するセラミドNH)を、「CnアルキルセラミドNH(Cn-alkyl ceramide NH)」ともいう。炭素数「x」のアシル鎖を有するセラミドNH(すなわちCxアシル部位を有するセラミドNH)を、「CxアシルセラミドNH(Cx-acyl ceramide NH)」ともいう。炭素数「n」のアルキル鎖と炭素数「x」のアシル鎖を有するセラミドNH(すなわちCn 6HS部位とCxアシル部位を有するセラミドNH)を、「Cnアルキル/CxアシルセラミドNH(Cn-alkyl/Cx-acyl ceramide NH)」ともいう。例えば、「C18アルキルセラミドNH」とは、長さがC18のアルキル鎖と任意のアシル鎖を有するセラミドNHを総称する。また、例えば、「C14アシルセラミドNH」とは、長さがC14のアシル鎖と任意のアルキル鎖を有するセラミドNHを総称する。また、例えば、「C18アルキル/C14アシルセラミドNH」とは、長さがC18のアルキル鎖と長さがC14のアシル鎖を有するセラミドNHを総称する。炭素数「n」で不飽和二重結合数が「m」のアルキル鎖を有するセラミドNH(すなわちCn:m 6HS部位を有するセラミドNH)の場合、上記名称における「Cn」は「Cn:m」と記載することができる。アシル鎖と「Cx」についても同様である。例えば、「C18:1アルキル/C14:0アシルセラミドNH」とは、長さがC18で不飽和二重結合が1つのアルキル鎖と長さがC14で飽和のアシル鎖を有するセラミドNHを総称する。上記名称で特定されるセラミドNHは、特記しない限り、1種のセラミドNH種からなるものであってもよく、2種またはそれ以上のセラミドNH種の組み合わせからなるものであってもよい。例えば、CxアシルセラミドNHは、1種のCxアシルセラミドNH種からなるものであってもよく、2種またはそれ以上のCxアシルセラミドNH種の組み合わせからなるものであってもよい。そのような組み合わせは、異なるアルキル鎖および/または異なるアシル鎖(例えば、長さおよび/または不飽和度の異なるアルキル鎖および/または不飽和度の異なるアシル鎖)を有する2種またはそれ以上のCxアシルセラミドNH種からなるものであってよい。このように、「セラミドNH」とは、上記例示したセラミドNH種等の、セラミドNHの各種バリアント種を総称してよい。
【0031】
セラミドNHの一例として、C18:1アルキルセラミドNHの典型的な構造を下記構造式(I)に示す。式中の「n」は、上記セラミドNHの説明における「x-2」に相当する。すなわち、例えば、同式は、式中の「n」が12, 14, 16, または20の場合、アシル鎖長がC14, C16, C18, またはC22であるC18:1アルキルセラミドNHの典型的な構造を示す。
【0032】
【0033】
有効成分の組み合わせおよび有効成分の含有量比は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。
【0034】
有効成分を構成するセラミドNHのアシル鎖長の組み合わせ(以下、単に「アシル鎖長の組み合わせ」ともいう)は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。アシル鎖長の組み合わせとしては、上記例示したアシル鎖長から選択される2つまたはそれ以上の長さの組み合わせが挙げられる。アシル鎖長の組み合わせとして、具体的には、C14、C16、C18、およびC22から選択される2つ、3つ、または4つの長さの組み合わせが挙げられる。すなわち、有効成分として、具体的には、C14アシルセラミドNH、C16アシルセラミドNH、C18アシルセラミドNH、およびC22アシルセラミドNHから選択される2つ、3つ、または4つのセラミドNHの組み合わせが挙げられる。アシル鎖長の組み合わせとして、より具体的には、C14とC16の組み合わせ、C14とC18の組み合わせ、C14とC22の組み合わせ、C16とC18の組み合わせ、C16とC22の組み合わせ、C18とC22の組み合わせ、C14とC16とC18の組み合わせ、C14とC16とC22の組み合わせ、C14とC18とC22の組み合わせ、C16とC18とC22の組み合わせ、C14とC16とC18とC22の組み合わせが挙げられる。すなわち、有効成分として、より具体的には、C14アシルセラミドNHとC16アシルセラミドNHの組み合わせ、C14アシルセラミドNHとC18アシルセラミドNHの組み合わせ、C14アシルセラミドNHとC22アシルセラミドNHの組み合わせ、C16アシルセラミドNHとC18アシルセラミドNHの組み合わせ、C16アシルセラミドNHとC22アシルセラミドNHの組み合わせ、C18アシルセラミドNHとC22アシルセラミドNHの組み合わせ、C14アシルセラミドNHとC16アシルセラミドNHとC18アシルセラミドNHの組み合わせ、C14アシルセラミドNHとC16アシルセラミドNHとC22アシルセラミドNHの組み合わせ、C14アシルセラミドNHとC18アシルセラミドNHとC22アシルセラミドNHの組み合わせ、C16アシルセラミドNHとC18アシルセラミドNHとC22アシルセラミドNHの組み合わせ、C14アシルセラミドNHとC16アシルセラミドNHとC18アシルセラミドNHとC22アシルセラミドNHの組み合わせが挙げられる。アシル鎖長の組み合わせとしては、特に、C14とC18の組み合わせや、C14、C16、C18、およびC22から選択される3つまたは4つの長さの組み合わせが挙げられる。すなわち、有効成分としては、特に、アシル鎖長がC14とC18のセラミドNHの組み合わせや、アシル鎖長がC14、C16、C18、およびC22から選択される3つまたは4つの長さの組み合わせであるセラミドNHの組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明の組成物における各有効成分(各アシル鎖長のセラミドNH)の含有量は、有効成分の総量に対して、例えば、0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、または90重量%以上であってもよく、100重量%未満、99.99重量%以下、99.9重量%以下、99重量%以下、97重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、または10重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。本発明の組成物における各有効成分の含有量は、有効成分の総量に対して、具体的には、例えば、0.01~99.99重量%、0.1~99.9重量%、1~99重量%、5~95重量%、10~90重量%、15~85重量%、20~80重量%、25~75重量%、1~90重量%、5~80重量%、10~70重量%、15~60重量%、20~50重量%、25~40重量%、1~60重量%、5~50重量%、10~40重量%、15~35重量%、または20~30重量%であってもよい。本発明の組成物における各有効成分の含有量は、有効成分の総量に対して、具体的には、例えば、0.01~10重量%、0.1~10重量%、1~10重量%、10~20重量%、20~30重量%、30~40重量%、40~50重量%、50~60重量%、60~70重量%、70~80重量%、80~90重量%、90~99重量%、90~99.9重量%、または90~99.99重量%であってもよい。
【0036】
また、言い換えると、本発明の組成物は、例えば、下記成分(A)~(D)を含有する組成物であってよい:
(A)成分(A)~(D)の総量に対してa重量%の量のC14アシルセラミドNH;
(B)成分(A)~(D)の総量に対してb重量%の量のC16アシルセラミドNH;
(C)成分(A)~(D)の総量に対してc重量%の量のC18アシルセラミドNH;
(D)成分(A)~(D)の総量に対してd重量%の量のC22アシルセラミドNH。
【0037】
ここで、a、b、c、およびdの内の2つ、3つ、または4つ全てが0超(more than 0)であり、且つ、a、b、c、およびdはいずれも100未満である。言い換えると、a、b、c、およびdの内の1つまたは2つは0であってもよい。この場合、成分(A)~(D)(具体的には成分(A)~(D)の内の含有量が0超であるもの)を有効成分とみなす。
【0038】
本発明の組成物における成分(A)~(D)の含有量は、それぞれ、有効成分の総量に対して、例えば、0重量%以上であってもよく、上記例示した各有効成分の含有量の範囲であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。
【0039】
各有効成分(各アシル鎖長のセラミドNH)は、1種のセラミドNH種からなるものであってもよく、2種またはそれ以上のセラミドNH種の組み合わせからなるものであってもよい。各有効成分を構成する1種のセラミドNH種または2種またはそれ以上のセラミドNH種は、いずれも、セラミドNHであって、各アシル鎖長のものである。各有効成分のアシル鎖長を「各有効成分に対応するアシル鎖長」または「対応するアシル鎖長」ともいう。各有効成分が2種またはそれ以上のセラミドNH種の組み合わせからなる場合、「各有効成分の量」とは、当該組み合わせの総量を意味する。
【0040】
各有効成分(各アシル鎖長のセラミドNH)は、例えば、上記例示したセラミドNHであって、各アシル鎖長のものを含んでいてよい。各有効成分は、具体的には、例えば、各アシル鎖長のC18アルキルセラミドNHを含んでいてよい。各有効成分は、より具体的には、例えば、各アシル鎖長のC18:1アルキルセラミドNHを含んでいてよい。各有効成分は、さらに具体的には、例えば、各アシル鎖長のC18:1アルキルセラミドNHであって、アルキル鎖がC1位、C3位、およびC6位にヒドロキシル基を有し、C1位、C3位、およびC6位以外に追加のヒドロキシル基を有さないものを含んでいてよい。各有効成分は、さらに具体的には、例えば、各アシル鎖長のC18:1アルキルセラミドNHであって、アシル鎖が置換基を有さないものを含んでいてよい。各有効成分は、特に具体的には、例えば、各アシル鎖長のC18:1アルキルセラミドNHであって、アルキル鎖がC1位、C3位、およびC6位にヒドロキシル基を有し、C1位、C3位、およびC6位以外に追加のヒドロキシル基を有さず、且つアシル鎖が置換基を有さないものを含んでいてよい。「各有効成分(各アシル鎖長のセラミドNH)が或るセラミドNHを含む」とは、少なくとも当該或るセラミドNHが当該有効成分として用いられることを意味し、当該有効成分が当該或るセラミドNHからなる場合や、当該有効成分が当該或るセラミドNHと他の1種またはそれ以上の対応するアシル鎖長のセラミドNH種との組み合わせからなる場合を包含する。例えば、「成分(A)(すなわちC14アシルセラミドNH)がアシル鎖長C14のC18:1アルキルセラミドNH(すなわちC18:1アルキル/C14アシルセラミドNH)を含む」とは、少なくともC18:1アルキル/C14アシルセラミドNHが成分(A)として用いられることを意味し、成分(A)がC18:1アルキル/C14アシルセラミドNHからなる場合や、成分(A)がC18:1アルキル/C14アシルセラミドNHと他の1種またはそれ以上のC14アシルセラミドNH種との組み合わせからなる場合を包含する。「各有効成分(各アシル鎖長のセラミドNH)が或るセラミドNHを含む」という場合、当該有効成分の総量に対する当該或るセラミドNHの量の比率は、例えば、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.9重量%以上、または100重量%であってよい。
【0041】
有効成分としては、いずれも、市販のセラミドNHを用いてもよく、適宜製造して取得したセラミドNHを用いてもよい。セラミドNHの製造方法は、特に制限されない。セラミドNHは、例えば、公知の方法により製造できる。セラミドNHは、例えば、化学合成法、酵素法、生物変換法、発酵法、抽出法、またはそれらの組み合わせにより製造することができる。セラミドNHは、具体的には、例えば、6HSからの変換により製造できる。セラミドNHの製造方法は、各有効成分について独立に選択できる。
【0042】
6HSの製造方法は、特に制限されない。6HSは、例えば、公知の方法により製造できる。6HSは、例えば、化学合成法、酵素法、生物変換法、発酵法、抽出法、またはそれらの組み合わせにより製造することができる。6HSは、具体的には、例えば、FR2843589A1に記載の方法により製造できる。
【0043】
6HSをセラミドNHに変換する方法は、特に制限されない。6HSは、例えば、脂肪酸との化学反応によりセラミドNHに変換することができる(US patent 5,869,711)。化学反応は、例えば、アミンとカルボン酸を縮合しアミド結合を形成するための典型的な条件で実施することができる。化学反応は、具体的には、例えば、縮合剤を用いて実施することができる。縮合剤としては、水溶性カルボジイミド(water soluble carbodiimides;WSCs)等のカルボジイミドが挙げられる。WSCsとして、具体的には、1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochlorideが挙げられる。脂肪酸は、製造するセラミドNHのアシル鎖を提供するものであれば、特に制限されない。すなわち、脂肪酸として、具体的には、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、アラキドン酸(20:0)、ベヘン酸(22:0)、リグノセリン酸(24:0)、セロチン酸(26:0)、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)が挙げられる。脂肪酸としては、特に、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、ベヘン酸(22:0)が挙げられる。6HSとしては、1種の6HS種を用いてもよく、2種またはそれ以上の6HS種を組み合わせて用いてもよい。脂肪酸としては、1種の脂肪酸を用いてもよく、2種またはそれ以上の脂肪酸を組み合わせて用いてもよい。2種またはそれ以上の6HS種および/または2種またはそれ以上の脂肪酸の併用により、2種またはそれ以上のセラミドNH種の混合物が製造される。
【0044】
有効成分としては、いずれも、所望の程度に精製されたセラミドNHを用いてもよく、セラミドNHを含有する素材を用いてもよい。
【0045】
本発明の組成物は、有効成分からなるものであってもよく、有効成分以外の成分を含むものであってもよい。すなわち、有効成分は、そのまま、あるいは他の成分と組み合わせて、本発明の組成物として用いてよい。有効成分以外の成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
有効成分以外の成分は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。有効成分以外の成分としては、本発明の組成物の用途に応じて許容可能な成分を用いることができる。有効成分以外の成分としては、生理学的に許容される成分が挙げられる。生理学的に許容される成分としては、化粧品用の成分や医薬品用の成分、例えば、化粧品用途や医薬品用途に通常用いられるもの、が挙げられる。「化粧品用の成分」とは、化粧品の成分として使用可能な成分をいう。「医薬品用の成分」とは、医薬品の成分として使用可能な成分をいう。有効成分以外の成分として、具体的には、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、希釈剤、界面活性剤、pH調節剤、ビタミン、ミネラル、香料、色素、防腐剤、テルペノイド、脂質、脂肪酸、アルコール、水が挙げられる。有効成分以外の成分としては、特に、テルペノイド、脂質、脂肪酸が挙げられる。テルペノイドとしては、ステロール、スクアレン、プリスタンが挙げられる。ステロールとしては、コレステロールやコレステロール硫酸が挙げられる。脂質としては、トリアシルグリセロールやグリセロリン脂質が挙げられる。トリアシルグリセロールとしては、トリオレインが挙げられる。グリセロリン脂質としては、フォスファチジルエタノールアミンが挙げられる。脂肪酸としては、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、アラキドン酸(20:0)、ベヘン酸(22:0)、リグノセリン酸(24:0)、セロチン酸(26:0)、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)が挙げられる。脂肪酸としては、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノレン酸が挙げられる。脂肪酸として、さらに特には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸が挙げられる。脂肪酸として、さらに特には、ラウリン酸が挙げられる。また、有効成分以外の成分として、具体的には、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、老化防止剤、抗セルライト剤、皮膚美白剤、皮膚日焼け剤、UVフィルターも挙げられる。また、有効成分以外の成分として、具体的には、有効成分として選択されなかったセラミドNH等のセラミドも挙げられる。有効成分以外の成分としては、例えば、少なくとも、上記例示した1種またはそれ以上の成分が選択されてよい。言い換えると、有効成分以外の成分は、例えば、上記例示した1種またはそれ以上の成分を含んでいてよい。「有効成分以外の成分として或る成分が選択される」または「有効成分以外の成分が或る成分を含む」とは、少なくとも当該或る成分が有効成分以外の成分として用いられることを意味し、有効成分以外の成分が当該或る成分からなる場合や、有効成分以外の成分が当該或る成分と他の1種またはそれ以上の成分との組み合わせからなる場合を包含する。上記例示したような成分は、いずれも、例えば、化粧品用の成分および医薬品用の成分のいずれとしても用いることができる。
【0047】
有効成分以外の成分が塩の形態を取り得る場合、有効成分以外の成分は、フリー体、その塩、またはそれらの混合物であってよい。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩(例えば、脂肪酸の塩)としては、アンモニウム塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム、亜鉛等の他の金属との塩が挙げられる。
【0048】
本発明の組成物の形状は、所望の効果が得られる限り、特に限定されない。本発明の組成物の形状は、有効成分の種類、他の成分の種類、成分の量、本発明の組成物の使用目的、本発明の組成物の使用態様等の諸条件に応じて設定することができる。本発明の組成物は、所望の形状に製剤化されていてよい。本発明の組成物は、例えば、皮膚に適用可能な任意の化粧料組成物または医薬組成物の形状で提供されてよい。化粧料組成物または医薬組成物としては(特に化粧料組成物としては)、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ポイントメイク化粧品、ヘアケア製品、整髪剤、染毛剤、脱色剤、パーマネント剤、ウェーブ剤、ボディケア化粧品、UVケア化粧品が挙げられる。スキンケア化粧品としては、洗浄用化粧品(洗顔料、メイク落とし、等)、ローション、美容液、パック、マッサージクリーム、乳液、クリーム、エッセンスが挙げられる。メイクアップ化粧品としては、ファンデーション、コンシーラー、おしろい、メイクアップベースが挙げられる。ポイントメイク化粧品としては、口紅、ほお紅、アイメイク(アイシャドー、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、等)が挙げられる。ヘアケア製品としては、シャンプーやコンディショナー(リンスまたはトリートメントともいう)が挙げられる。なお、ヘアケア製品は、例えば、毛髪および/または頭皮において上記例示したような効果を得るためのものであってよい。整髪剤としては、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアリキッド、ヘアスプレーが挙げられる。染毛剤または脱色剤としては、ヘアマニュキアやヘアカラーが挙げられる。ボディケア化粧品としては、ボディクリーム、石鹸、ボディソープ、ハンドソープ、制汗剤が挙げられる。UVケア製品としては、日焼け止め化粧品、サンタン化粧品、セルフタンニング化粧品、アフターサン化粧品が挙げられる。化粧料組成物または医薬組成物としては(特に医薬組成物としては)、皮膚外用剤等の外用剤が挙げられる。外用剤としては、固形剤(粉末等)、液剤(ローション剤やリニメント剤等)、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤(テープ剤やパップ剤等)が挙げられる。本発明の組成物は、そのまま皮膚に適用可能な形状で提供されてもよく、使用前に皮膚に適用可能な形状に調製されてもよい。
【0049】
成分(すなわち、有効成分および任意で他の成分)の含有量は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。成分の含有量は、有効成分の種類、他の成分の種類、本発明の組成物の形状、本発明の組成物の使用目的、本発明の組成物の使用態様等の諸条件に応じて設定することができる。
【0050】
本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、または30重量%以上であってもよく、100重量%以下、99.9重量%以下、70重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または1重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、具体的には、例えば、0.01~10重量%、または0.01~5重量%であってもよい。
【0051】
本発明の組成物が有効成分以外のセラミドを含有する場合、本発明の組成物におけるセラミドの総含有量に対する有効成分の総含有量の比率は、例えば、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、または99.9重量%以上であってよい。
【0052】
また、本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、本発明の組成物を皮膚や体毛等の体表面に適用した際の有効成分の総適用量が所望の範囲となるような量であってよい。
【0053】
なお、有効成分の含有量は、有効成分を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の有効成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。
【0054】
<2>本発明の方法
本発明の方法は、本発明の組成物を生物に適用する工程を含む方法である。
【0055】
本発明の方法により、具体的には本発明の組成物を生物に適用することにより、当該生物において本発明の組成物の適用箇所の状態を改善することができる、すなわち、当該生物において本発明の組成物の適用箇所の状態を改善する効果が得られる。すなわち、本発明の方法は、本発明の組成物の適用箇所の状態を改善する方法であってよい。
【0056】
状態の改善については上述した通りである。すなわち、本発明の方法は、皮膚や体毛等の体表面の状態を改善する方法であってもよい。本発明の方法は、特に、皮膚の状態を改善する方法であってもよい。本発明の方法は、皮膚のラメラ構造を改善する、皮膚のバリア機能を改善する、または皮膚の保湿性を改善する方法であってもよい。皮膚のバリア機能を改善する、または皮膚の保湿性を改善する方法は、皮膚のラメラ構造を改善する方法の一態様であってもよい。また、皮膚の保湿性を改善する方法は、皮膚のバリア機能を改善する方法の一態様であってもよい。
【0057】
本発明の方法により、具体的には本発明の組成物を生物に適用することにより、当該生物において本発明の組成物の適用箇所の状態の改善に基づく効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、本発明の組成物の適用箇所の状態の改善に基づく効果を得る方法であってよい。
【0058】
本発明の組成物の適用箇所(すなわち有効成分の適用箇所)の状態の改善に基づく効果については上述した通りである。すなわち、本発明の方法は、本発明の組成物の適用箇所の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する方法であってもよい。本発明の方法は、皮膚や体毛等の体表面の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する方法であってもよい。本発明の方法は、特に、皮膚の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する方法であってもよい。
【0059】
本発明の組成物の適用態様(例えば、適用対象、適用箇所、適用時期、適用期間、適用回数、適用量、その他適用に係る条件)は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物の適用態様は、有効成分の種類や含有量、その他の成分の種類や含有量、組成物の種類や形状(剤形)、適用対象の種類、年齢、および健康状態、本発明の組成物の使用目的等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0060】
本発明の組成物の適用対象および適用箇所については上述した通りである。すなわち、本発明の組成物は、例えば、上記例示したような適用対象に適用することができる。また、本発明の組成物は、例えば、上記例示したような適用箇所に適用することができる。本発明の組成物は、例えば、塗布、貼付、噴霧等の適切な方法により生物に適用できる。
【0061】
有効成分の適用期間は、例えば、1時間以上、6時間以上、1日以上、3日以上、1週間以上、4週間以上、2ヵ月以上、6ヵ月以上、12ヵ月以上、2年以上、5年以上、または10年以上であってよい。有効成分は、例えば、日常的に適用してもよく、特定の期間にのみ適用してもよい。有効成分は、例えば、継続的に適用してもよく、間欠的に適用してもよい。有効成分は、例えば、所望の効果が得られるまで適用してよい。有効成分は、例えば、1日当たり1回適用してもよく、1日当たり複数回に分けて適用してもよい。また、有効成分は、例えば、毎日適用してもよく、数日に1回適用してもよい。各適用時の有効成分の適用量は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。有効成分の1回の適用量は、例えば、0.1μg/cm2以上、0.5μg/cm2以上、1μg/cm2以上、5μg/cm2以上、または10μg/cm2以上であってもよく、500mg/cm2以下、100mg/cm2以下、50mg/cm2以下、10mg/cm2以下、5mg/cm2以下、1mg/cm2以下、0.5mg/cm2以下、または0.1mg/cm2以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。有効成分の1回の適用量は、具体的には、例えば、0.1μg/cm2~500mg/cm2であってもよい。
【実施例0062】
以下、非限定的な実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0063】
実施例1:融点およびラメラ構造形成能の評価
<サンプルの調製>
下記構造式(I)においてn=12, 14, 16, または20である(すなわち、アシル鎖の長さがC14, C16, C18, またはC22である)4種のセラミドNH(表1)を東京化成工業(株)より購入した。それらセラミドNHを表3に示す混合比率となるように計量し、乳鉢で粉砕混合し、セラミドNH混合品を得た。
【0064】
【0065】
【0066】
<融点測定>
セラミドNH混合品2mgを専用アルミ容器に量り取り成型した。アルミ容器を示差走査熱量計(DSC7000X, 日立ハイテクサイエンス製)にセットし、表2に示すプログラムで融点測定を実施した。
【0067】
【0068】
昇温2で得られた吸熱部分の接線とベースラインとの交点を融点とした。各セラミドNH混合品について、該混合品に含有されるセラミドNHの融点の内の最大の融点(例えば、C14-CeramideNHを含有する混合品の場合はC14-CeramideNH単品の融点)から混合品の融点を差し引いた値(Δ)を求め、スコア(A)を算出した。スコア(A)は、融点差Δが3℃未満の場合を1点、3℃~6℃の場合を2点、6℃超の場合を3点とした。また、単独品のスコア(A)は、一律に1点とした。
【0069】
<ラメラ構造形成能測定>
ラメラ構造形成能の指標として、以下の手順で、マルテーゼクロス像を観察した。表4に示す混合比率でセラミドNH混合品、コレステロール、及びラウリン酸を混合し、サンプルとした。サンプルをガラスチューブに入れ、サーモシェーカー(Thermo Shaker for Mi
crotubes, TS-100, Biosan製)で90℃に加温し、全体を溶融させた。スライドガラスに溶融物を乗せてカバーガラスをかぶせた。100℃のホットプレート(C-MAGHP4, IKAジャパン製)上で再度サンプルを溶融させて偏光顕微鏡(DX51-P, オリンパス製)にセットし、サンプルが固化した後でマルテーゼクロス像を観察した。20倍の対物レンズにて観察像を取込み、A4サイズに印刷した。200μm×200μmの領域に観察されたマルテーゼクロス像の数を目視でカウントし、スコア(B)を算出した。スコア(B)は、マルテーゼクロス像の数が60未満の場合を1点、60~120の場合を2点、120超の場合を3点とした。
【0070】
<結果>
融点の測定結果を表3および
図1に示す。セラミドNHの併用により、融点の低下が認められた。すなわち、アシル鎖の長さの異なる2種またはそれ以上のセラミドNHの併用により、1種のセラミドNHを単独で使用する場合と比較して、それらを含有する組成物の性質が向上することが示された。
【0071】
マルテーゼクロス像の観察結果を表4および
図2に示す。セラミドNHの併用により、マルテーゼクロス像の数の増大(すなわちラメラ構造形成能の増大)が認められた。すなわち、アシル鎖の長さの異なる2種またはそれ以上のセラミドNHの併用により、1種のセラミドNHを単独で使用する場合と比較して、それらを含有する組成物の性質が向上することが示された。
【0072】
また、総合評価として、スコア(A)とスコア(B)を乗算した値を算出した。結果を表4および
図3に示す。特に、C14-CeramideNHとC18-CeramideNHを併用した場合や、3種または4種のセラミドNHを併用した場合に、総合評価が高くなる傾向が認められた。
【0073】
【0074】
【0075】
実施例2:皮膚状態の回復効果の評価
<評価サンプルの調製>
セラミドNHの単品または混合品(表5) 18wt%、スクアレン 7wt%、トリオレイン 25wt%、コレステロール硫酸 2wt%、コレステロール 14wt%、フォスファチジルエタノールアミン 5wt%、プリスタン 4wt%、脂肪酸および脂肪酸塩の混合物 25wt%を混合し、評価サンプルを得た。脂肪酸および脂肪酸塩の混合物は、オレイン酸(35wt%)、ミリスチン酸(15wt%)、パルミチン酸(36wt%)、ステアリン酸(10wt%)、リノレン酸(4wt%)を混合し、水酸化ナトリウムで41%中和することにより調製した。脂肪酸および脂肪酸塩の混合物は
、脂肪酸100重量部に対して水30重量部を含有する。
【0076】
【0077】
<オーダーパラメータSの測定>
以下の手順で、オーダーパラメータSを測定し、皮膚状態の回復効果を評価した。オーダーパラメータSは、脂質鎖の配列の秩序性(例えばラメラ構造の秩序性)を意味し、オーダーパラメータSが高い程、脂質鎖がより整然と配列されていることを意味する。すなわち、オーダーパラメータSの増大は、皮膚状態の改善を意味し、具体的には、皮膚のラメラ構造の改善を意味してよい。
【0078】
(1)皮膚サンプル(Frozen dermatomed human skin、腹部由来;製品番号TRA002;BPI社)を0.001% 5-DSA(5-doxyl stearic acid)溶液に37℃条件下で30分間浸し、脂質膜構造の中に5-DSAを浸透させた。5-DSAはESR測定用のラベル化剤である。
(2)皮膚サンプルをPBS溶液で洗浄し、皮膚サンプルの外側に付着した5-DSAを取り除いた。
(3)皮膚サンプルを室温乾燥後、5% SLS水溶液に37℃条件下で1時間浸漬し、荒れ肌状態を誘導した。
(4)皮膚サンプルを室温乾燥後、JES-X310型電子スピン共鳴装置(JEOL社)を用いたESR測定によりオーダーパラメータSを算出し、「塗布前データ」とした。ESR測定は、既報(Mizushima J. et al., Int J Pharm. 2000 Mar 20;197(1-2):193-202. Effect of surfactants on human stratum corneum: electron paramagnetic resonance study.)の方法で実施した(測定条件はPower: 10 mM、Center Field: 336 mT、Sweep: 7.5 mT、Modulation width: 0.5 mT、Scan time: 2 min、Time constant: 0.3 sec;以下同じ)。
(5)皮膚サンプルにスパチュラで評価サンプルを3μg/cm2で塗布した。
(6)皮膚サンプルから評価サンプルをふき取り、室温乾燥後、ESR測定によりオーダーパラメータSを算出し、「塗布後データ」とした。
【0079】
コントロールとして、評価サンプルを塗布せずに同様の実験を実施した。
【0080】
各評価サンプルおよびコントロールについて、塗布前データに対する塗布後データの比率を算出し、皮膚状態の「回復率」とした。各評価サンプルでの回復率について、コントロールでの回復率に対する相対値を算出し、皮膚状態の「回復効果」とした。実験は2連で実施し、結果は平均値として得た。
【0081】
<結果>
結果を
図4に示す。セラミドNHの併用により、皮膚状態の回復効果の増大が認められた。具体的には、mixA(C14+C16+C22)は、C14-CeramideNH、C16-CeramideNH、およびC22-CeramideNHのいずれよりも高い皮膚状態の回復効果を示した。また、mixB(C16+C22)は、C16-CeramideNHおよびC22-CeramideNHのいずれよりも高い皮膚状態の回復効果を示した。また、mixC(C16+C18)は、C16-CeramideNHおよびC18-CeramideNHのいずれよりも高
い皮膚状態の回復効果を示した。すなわち、アシル鎖の長さの異なる2種またはそれ以上のセラミドNHの併用により、1種のセラミドNHを単独で使用する場合と比較して、それらを含有する組成物の性質が向上することが示された。